説明

データ転送プログラム、データ転送方法及び情報処理装置

【課題】データ転送速度を高速化するデータ転送プログラム、データ転送方法及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】消失訂正符号を用いて符号化したデータを、エラー訂正機能を持たないプロトコルを利用して転送するデータ転送プログラムであって、転送対象となるデータのデータサイズを取得するデータサイズ取得ステップS13と、取得したデータサイズにおける、前記転送対象となるデータを符号化する際の符号長と転送時間との関係を取得する関係取得ステップS15と、前記取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、前記転送対象となるデータを符号化する符号長を決定する符号長決定ステップS17と、決定した符号長を用いて前記データの符号化を行う符号化ステップS19と、をコンピュータに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、データ転送プログラム、データ転送方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットなどのネットワークを通じて様々なサービスを提供するクラウドコンピューティングが注目されている。クラウドコンピューティングでは、クラウドを構成するサーバ間や、利用者とクラウドとの間で、頻繁にデータの転送が発生するため、データ転送速度の高速化が求められている。データ転送速度を高速化する方法としては、ハードウェアによる高速化と、ソフトウェアによる高速化が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−287598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラウドコンピューティングでは、クラウドを構成するサーバ間や、利用者とクラウドとの間で転送されるデータのデータサイズも様々である。このような環境において、特許文献1の技術では、十分なデータ転送速度を得られない可能性がある。
【0005】
本件は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、データ転送速度を高速化するデータ転送プログラム、データ転送方法及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、明細書開示のデータ転送プログラムは、消失訂正符号を用いて符号化したデータを、エラー訂正機能を持たないプロトコルを利用して転送するデータ転送プログラムであって、転送対象となるデータのデータサイズを取得するデータサイズ取得ステップと、取得したデータサイズにおける、前記転送対象となるデータを符号化する際の符号長と、転送時間との関係を取得する関係取得ステップと、前記取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、前記転送対象となるデータを符号化する符号長を決定する符号長決定ステップと、決定した符号長を用いて前記データの符号化を行う符号化ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0007】
上記課題を解決するために、明細書開示のデータ転送方法は、消失訂正符号を用いて符号化したデータを、エラー訂正機能を持たないプロトコルを利用して転送するデータ転送方法であって、転送対象となるデータのデータサイズを取得するデータサイズ取得ステップと、取得したデータサイズにおける、前記転送対象となるデータを符号化する際の符号長と転送時間との関係を取得する関係取得ステップと、前記取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、前記転送対象となるデータを符号化する符号長を決定する符号長決定ステップと、決定した符号長を用いて前記データの符号化を行う符号化ステップと、を有する。
【0008】
上記課題を解決するために、明細書開示の情報処理装置は、転送対象となるデータのデータサイズを取得するデータサイズ取得部と、取得したデータサイズにおける、前記転送対象となるデータを符号化する際の符号長と転送時間との関係を取得する関係取得部と、前記取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、前記転送対象となるデータを符号化する符号長を決定する符号長決定部と、決定した符号長を用いて、前記転送対象のデータを消失訂正符号を用いて符号化する符合化部と、前記符合化したデータを、エラー訂正機能を持たないプロトコルを利用して転送する転送部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
明細書開示のデータ転送プログラム、データ転送方法、及び情報処理装置によれば、データ転送速度を高速化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本件のデータ転送方法を適用する情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図2】データ転送処理の概要を示す図である。
【図3】利用者端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】利用者端末のソフトウェア構成の一例を示す図である。
【図5】利用者端末が備える機能の一例を示す機能ブロック図である。
【図6】符号長と符号化時間・復号時間及び送信時間との関係の一例を表す図である。
【図7】利用者端末が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】転送時間算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0012】
まず、図1を参照して、本件のデータ転送方式を適用する情報処理システムのシステム構成の一例について説明する。情報処理システム100では、利用者端末(情報処理装置)10とサーバ20とが、インターネット、WAN(Wide Area Network)等のネットワーク30を介して接続されている。なお、ネットワーク30に接続する利用者端末10の数およびサーバ20の数は、本実施形態に限られるものではない。
【0013】
サーバ20は、ネットワーク30を介して、利用者端末10にソフトウェア、プラットフォーム、及びハードウェアやインフラ等をサービスとして提供する。ユーザは、利用者端末10にインストールされたアプリケーションを使用して、サーバ20から様々なサービスの提供を受けることができる。
【0014】
次に、図2を参照して、本実施形態における、利用者端末10とサーバ20との間におけるデータの転送方法について説明する。図2は、データ転送処理の概要を示す図である。本説明では、利用者端末10を送信側とし、サーバ20を受信側とする。本実施形態では、利用者端末10は、サーバ20へのデータ転送に、UDP(User Data Protocol)を用いる。UDPは、転送制御プロトコルの一種であり、TCP(Transmission Control Protocol)と違い、エラー訂正機能を持たない。したがって、UDPは、TCPよりも信頼性に劣るが、エラー訂正機能を持たない分、TCPよりも高速なデータ転送が可能である。
【0015】
本実施形態では、UDPのデータ消失を保証するために、利用者端末10は、消失訂正符号を用いてデータの符号化を行い、符号化したパケットデータをサーバ20に送信する。消失訂正符号とは、本来のデータとは別に冗長なデータを付加することで、何らかの原因でデータの一部が消失してしまった場合でも本来のデータを復元することを可能にするための技術である。本実施形態では、消失訂正符号として、RPS(Random Parity Stream)符号を用いる。なお、消失訂正符号はRPS符号に限られるものではなく、消失したデータの復元に特化した符号であればよい。
【0016】
利用者端末10は、転送対象のデータを、複数のデータブロックに分割し、さらに、各データブロックを情報ブロックに分割する。利用者端末10は、情報ブロックをRPS符号化して得られたパケットを、サーバ20にUDPを用いて送信する。サーバ20は、受信したパケットを復号し、データを復元する。
【0017】
次に、利用者端末10のハードウェア構成について説明する。図3は、利用者端末10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0018】
利用者端末10は、例えば、入出力部101、ROM(Read Only Memory)102、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)103、RAM(Random Access Memory)104、及びハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)105を備える。入出力部101は、サーバ20との間でデータの送受信を行う。ROM102は、利用者端末10からサーバ20へデータを転送する際に使用される転送プログラム(詳細は後述)等を格納する。CPU103は、ROM102に格納されたプログラムを読み込んで実行する。RAM104は、プログラムを実行する際に使用される一時的なデータを保存する。また、HDD105は、データサイズ毎の符号長と転送時間との関係を管理するテーブル(詳細は後述)を格納する。
【0019】
次に、図4を参照して、利用者端末10のソフトウェア構成の一例について説明する。利用者端末10には、アプリケーションソフトウェア(以後、アプリケーションと略す)111、注入DLL112、及び転送ソフトウェア113がインストールされている。
【0020】
アプリケーション111は、利用者が利用者端末10上で実行したい作業を実施するための機能を提供する。なお、以下の説明では、アプリケーション111の利用者が、サーバ20のアプリケーション212を宛先として、データを送信すると仮定する。
【0021】
注入DLL112は、アプリケーション111が実行するプロセスのアドレス空間に注入(インジェクト)されるDLL(Dynamic Link Library)である。DLLの注入には、APIのフック等を使用できる(Jeffrey Richter等著 Advanced Windows(登録商標) 第5版 下 第22章)。注入DLL112は、アプリケーション111が実行するプロセスのアドレス空間に注入されると、転送ソフトウェア113を起動する。また、注入DLL112は、アプリケーション111がデータを送信する際にコールする送信関数をインターセプトする。注入DLL112は、インターセプトした送信関数から、送信関数にパラメータとして与えられた転送対象データのデータサイズを取得し、RAM104等の共有メモリ106に書き込む。
【0022】
転送ソフトウェア113は、共有メモリ106から転送対象データのデータサイズを取得する。また、転送ソフトウェア113は、アプリケーション111が、サーバ20のアプリケーション212を宛先として送信したデータを取得する。転送ソフトウェア113は、転送対象データのデータサイズを用いて、転送対象データの転送に最適な符号長を決定する。転送ソフトウェア113は、最適な符号長で符号化したデータを、UDPを用いてサーバ20に送信する。
【0023】
サーバ20にインストールされた転送ソフトウェア211は、符号化されたデータを受信し復号する。転送ソフトウェア211は、復号したデータを、真の宛先であるアプリケーション212に送信する。
【0024】
次に、図5を参照して、ROM102に格納された転送プログラムのCPU103による演算によって実現される利用者端末10の機能について説明する。
【0025】
利用者端末10は、インターセプト部121、データサイズ取得部122、転送時間算出部(関係取得部)123、符号長決定部124、符号化部125、及び転送部126を備える。
【0026】
インターセプト部121は、アプリケーション111がデータを送信する際にコールする送信関数をインターセプトし、送信関数にパラメータとして与えられたデータサイズを共有メモリ106に書き込む。インターセプト部121は、注入DLL112が、アプリケーション111が実行するプロセスのアドレス空間へ注入されることにより、実現される。
【0027】
データサイズ取得部122は、共有メモリ106に書きこまれた転送対象データのデータサイズを取得する。データサイズ取得部122は、取得したデータサイズを、転送時間算出部123に出力する。
【0028】
転送時間算出部123は、データサイズ取得部122から、転送対象データのデータサイズを受付ける。転送時間算出部123は、HDD105等の記憶装置に格納されている転送時間算出用データと、転送対象データのデータサイズとに基づいて、各符号長における転送対象データの転送時間を算出する。ここで、HDD105等に格納されている転送時間算出用データの一例について、図6を参照して説明する。図6(A)は、HDD105に格納され、各符号長における転送対象データの転送時間の算出に用いられる転送時間算出用データの一例である。また、図6(B)〜(D)は、図6(A)における、符号長ごとのデータ送信時間を、データサイズ別にグラフにしたものである。
【0029】
図6(A)に示すように、HDD105は、転送時間算出用データを、例えばテーブル形式で格納する。図6(A)に示すテーブルには、情報ブロックをRPS符号化する際に用いられる符号長ごとに、転送対象データの符号化に要する時間(符号化時間)及び転送対象データの復号に要する時間(復号時間)が格納されている。また、図6(A)に示すテーブルには、符号長ごとに、その符号長で符号化した転送対象データの送信に要する時間(送信時間)も格納されている。さらに、符号長と送信時間との関係は、データサイズ別(1KB、1MB、100MB)に格納されている。
【0030】
ここで、一般的に、符号化時間及び復号時間はデータサイズに比例して変化する。一方、図6(B)〜(D)のグラフからわかるように、送信時間は転送対象データのデータサイズによって大きく変化する。なお、図6(A)に示すテーブルは、実験又はシミュレーションにより予め求められるものである。なお、本実施形態では、説明を簡略化するために、符号長と送信時間との関係を3つのデータサイズについて格納している。しかしながら、符号長と送信時間との関係については、より多くのデータサイズ(例えば、100KB、10MB等)について求めておくことが望ましい。これにより、転送時間算出部123が算出する転送時間の精度を高めることが可能となる。
【0031】
転送時間算出部123は、データサイズ取得部122から受付けたデータサイズと、図6(A)に示すテーブルを用いて、転送対象データを符号化して送信する際の、符号長と転送時間との関係を取得する。転送時間算出部123は、算出した符号長ごとの転送時間を符号長決定部124に出力する。
【0032】
符号長決定部124は、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を、転送時間算出部123から受付ける。符号長決定部124は、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係から、転送対象データを転送するのに最適な符号長を決定し、符合化部125に出力する。
【0033】
符号化部125は、アプリケーション111が送信した転送対象データを取得する。また、符号化部125は、符合長決定部124から、転送対象データを転送するのに最適な符合長を受付ける。符合化部125は、符号長決定部124から受付けた符号長で、転送対象となるデータを符号化する。符号化部125は、符号化したデータを転送部126へ出力する。
【0034】
転送部126は、符号化されたデータを符号化部125から受付けると、サーバ20へUDPを用いて転送する。データサイズ取得部122〜転送部126は、ROM10に格納された転送ソフトウェア113を、CPU103が実行することによって実現される。
【0035】
次に、利用者端末10が実行する、データ転送処理の一例について説明する。図7は、利用者端末10が実行するデータ転送処理の一例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、インターセプト部121は、アプリケーション111の送信関数を検知したか否か判定する(ステップS11:監視ステップ)。ステップS11の判定がNOの場合、インターセプト部121は、ステップS11の判定を繰り返す。
【0037】
ステップS11の判定がYESの場合、データサイズ取得部122は、インターセプト部121が共有メモリ106に格納した転送対象データのデータサイズを取得する(ステップS13:データサイズ取得ステップ)。
【0038】
次に、転送時間算出部123は、転送対象データのデータサイズにおける符号長毎の転送時間を算出する(ステップS15:関係取得ステップ)。すなわち、ステップS15では、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を取得する。ここで、転送時間の算出処理の詳細について説明する。図8は、転送時間の算出処理の詳細を示すフローチャートの一例である。
【0039】
転送時間算出部123は、データの転送先であるサーバ20との間で、データサイズと符号長との組み合わせを変えたサンプルデータを用いたテスト転送を行う。転送時間算出部123は、テスト転送において、実際の転送環境での符号化時間、復号時間、及び送信時間を取得する(ステップS151)。
【0040】
転送時間算出部123は、取得した符号化時間、復号時間、及び送信時間を用いて、送信PCの性能比、受信PCの性能比、及び送信性能比を算出する(ステップS152)。具体的には、転送時間算出部123は、取得した実転送環境での符号化時間と、図6(A)に示した符号化時間との関係から、以下の式を用いて、送信PCの性能比を求めることができる。
送信PCの性能比=
(実転送環境での符号化時間−転送時間算出用データの符号化時間)/
転送時間算出用データの符号化時間
【0041】
例えば、10MBのデータを、符号長100で符号化したサンプルデータをテスト転送したとする。図6(A)において、10MBのデータを符号長100で符号化した場合の符号化時間は10[ms]である。この場合、テスト転送の結果得られた符号化時間(実転送環境での符号化時間)が16[ms]であれば、送信PCの性能比は、(16[ms]−10[ms])/10[ms]から0.6と計算される。同様にして、受信PCの性能比は、実転送環境での復号時間と、図6(A)に示した復号時間との関係から求めることができる。また、送信性能比も、実転送環境での送信時間と、図6(A)の送信時間との関係から求めることができる。
【0042】
転送時間算出部123は、転送対象データのデータサイズにおける符号化時間及び復号時間を符号長ごとに算出する(ステップS153)。具体的には、転送時間算出部123は、図6(A)に示した符号化時間を転送対象データのデータサイズに基づいて比例補間し、かつ、送信PCの性能比で補正することにより、転送対象データのデータサイズにおける符号長ごとの符号化時間を求める。また、転送時間算出部123は、図6(A)に示した復号時間を転送対象データのデータサイズに基づいて比例補間し、かつ、受信PCの性能比で補正することにより、転送対象データのデータサイズにおける符号長ごとの復号時間を求める。
【0043】
図6(A)において、各符号長における符号化時間又は復号時間をFとすると、転送時間算出部123は、実転送環境での符号化時間は、以下の式から求めることができる。
実転送環境での符号化時間=
F×(転送対象データのデータサイズ/10MB)/送信PCの性能比
【0044】
また、転送時間算出部123は、実転送環境での復号時間は、以下の式から求めることができる。
実転送環境での復号時間=
F×(転送対象データのデータサイズ/10MB)/受信PCの性能比
【0045】
ここで、転送対象データのデータサイズ=15MB、送信PCの性能比=0.6、受信PCの性能比=0.7である場合、符号化時間及び復号時間は、それぞれ図9(A)に示す値となる。
【0046】
転送時間算出部123は、次に、転送対象データのデータサイズにおける送信時間を符号長ごとに算出する(ステップS154)。具体的には、転送時間算出部123は、図6(A)に示したG1〜G3のデータを転送対象データのデータサイズに基づいて比例補間し、かつ、送信性能比で補正することによって、転送対象データのデータサイズでの送信時間を符号長ごとに算出する。
【0047】
例えば、データのデータサイズが1MB以上、100MB以下の場合、実転送環境での転送時間は、以下の式で求められる。
実転送環境での転送時間=
{(G3−G2)/(100MB−1MB)×
(転送対象データのデータサイズ−1MB)+G2}/送信性能比
したがって、転送対象データのデータサイズ=15MB、送信性能比=1である場合、送信時間は、図9(A)に示す値となる。
【0048】
転送時間算出部123は、符号化時間、復号時間、及び送信時間を合計して、転送時間を算出し(ステップS155)、処理を終了する。これにより、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係が求まる。図9(B)は、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係をグラフにしたものである。
【0049】
図7に戻り、説明を続ける。符号長決定部124は、転送時間算出部123が算出した転送時間に基づいて、転送対象データを符号化する際の符号長を決定する(ステップS17:符号長決定ステップ)。本実施形態では、符号長決定部124は、転送時間が最小となる符号長を、転送対象データを符号化する際の符号長として決定する。例えば、図9(B)では、転送時間が最小となる符号長は、「700」である。そこで、符号長決定部124は、「700」を、転送対象データを符号化する際の符号長として決定する。
【0050】
符号化部125は、ステップS17で決定された符合長で、送信データを符号化する(ステップS21:符号化ステップ)。転送部126は、符号化されたデータを送信し(ステップS23)、本処理を終了する。
【0051】
RPSとUDPとを組み合わせてデータの転送を行う場合、データをRPS符号化する際の符号長によって、送信時間が大きく変わる(図6(B)〜図6(D))。したがって、RPS符号化を固定符号長で行うと、転送対象データのデータサイズによっては、TCPを用いた転送よりもデータ転送にかかる時間が長くなってしまう可能性がある。この場合、UDPとRPSとを組み合わせたデータ転送の利点(高速なデータ転送)を生かすことができない。
【0052】
しかしながら、本実施形態によれば、データサイズ取得部122が、転送対象データのデータサイズを取得し、転送時間算出部123が、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を取得し、符号長決定部124が、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、転送対象データを符号化する際の符号長を決定する。そして、符合化部125は、決定された符号長で符号化を行う。これにより、転送対象データのデータサイズが転送時間に与える影響を考慮して符号長を決定できるため、転送時間を短縮することができる。クラウドコンピューティングにおいて転送されるデータのデータサイズは様々であるが、本実施形態によれば、転送対象データのデータサイズによって動的に符号長を変えることが可能となるため、データの転送速度を高速化することができる。すなわち、RPS符号化に用いる符号長を固定長ではなく、転送対象データのデータサイズによって動的に変更することで、データ転送時間を最適化できる。したがって、UDPとRPSとを組み合わせたデータ転送において、高速なデータ転送が可能であるという利点を生かすことが可能となる。
【0053】
また、転送時間算出部123は、実験又はシミュレーションに基づいてデータサイズごとに予め作成された符号長と転送時間との関係を補間することによって、取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を取得する。これにより、正確な符号長と転送時間との関係を求めることができるため、適切な符号長を求めることが可能となり、データ転送速度を高速化できる。
【0054】
また、転送時間算出部123は、実際のデータ転送環境においてテストデータを利用して取得した転送時間に基づいて、実験又はシミュレーションに基づいてデータサイズごとに予め作成された符号長と転送時間との関係を補正し、補正後の符号長と転送時間との関係に基づいて、転送対象データのデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を取得する。これにより、実転送環境の状態を考慮に入れた転送時間を算出できるので、転送時間算出用データのみを用いて転送時間を算出するよりも適切な符号長を求めることができ、データ転送速度を高速化できる。
【0055】
また、インターセプト部121は、アプリケーション111からアプリケーション外部の宛先(例えば、アプリケーション212)に向かって転送対象データが送信されたか否かを監視する。そして、インターセプト部121は、転送対象データが送信された場合に、アプリケーション111の送信関数から転送対象データのデータサイズを取得する。これにより、アプリケーション111のプログラムコード内に、転送ソフトウェア113を起動するためのコードや、転送対象データのデータサイズを転送ソフトウェア113に受け渡すためのコード等を記載しておく必要がない。したがって、アプリケーション111の改変を行うことなく、利用者端末10や、サーバ20で実行される様々なアプリケーションから送信されるデータの転送速度を高速化することができる。
【0056】
なお、利用者端末10は、インターセプト部121を備えなくともよい。すなわち、注入DLL112がインストールされなくてもよい。この場合、転送ソフトウェア113を起動し、転送対象データのデータサイズをデータサイズ取得部122に受け渡すようにアプリケーションを改変すれば、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
以上、本件の実施形態について詳述したが、本件は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0058】
上述の実施形態では、利用者端末10とサーバ20との間のデータ転送について説明したが、本件はサーバ同士のデータ転送に対しても適用できる。
【0059】
なお、上記の利用者端末10が有する機能は、CPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータによって実現することができる。その場合、利用者端末10が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。
【0060】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0061】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【符号の説明】
【0062】
10…情報処理装置
20…サーバ
121…インターセプト部
122…データサイズ取得部
123…転送時間算出部
124…符号長決定部
125…符号化部
126…転送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消失訂正符号を用いて符号化したデータを、エラー訂正機能を持たないプロトコルを利用して転送するデータ転送プログラムであって、
転送対象となるデータのデータサイズを取得するデータサイズ取得ステップと、
取得したデータサイズにおける、前記転送対象となるデータを符号化する際の符号長と、転送時間との関係を取得する関係取得ステップと、
前記取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、前記転送対象となるデータを符号化する符号長を決定する符号長決定ステップと、
決定した符号長を用いて前記データの符号化を行う符号化ステップと、
をコンピュータに実行させるデータ転送プログラム。
【請求項2】
前記関係取得ステップでは、実験又はシミュレーションに基づいてデータサイズごとに予め作成された符号長と転送時間との関係を補間することによって、取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を取得する請求項1に記載のデータ転送プログラム。
【請求項3】
前記関係取得ステップでは、実際のデータ転送環境においてテストデータを利用して取得した転送時間に基づいて、前記実験又はシミュレーションに基づいてデータサイズごとに予め作成された符号長と転送時間との関係を補正し、補正後の符号長と転送時間との関係に基づいて、取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係を取得する請求項2に記載のデータ転送プログラム。
【請求項4】
アプリケーションからアプリケーション外部の宛先に向かって前記転送対象となるデータが送信されたか否かを監視する監視ステップ、を更に有し、
前記データサイズ取得ステップでは、アプリケーションからアプリケーション外部の宛先に向かって前記転送対象となるデータが送信された場合に、転送対象となるデータのデータサイズを取得する請求項1から3のいずれか1項に記載のデータ転送プログラム。
【請求項5】
消失訂正符号を用いて符号化したデータを、エラー訂正機能を持たないプロトコルを利用して転送するデータ転送方法であって、
転送対象となるデータのデータサイズを取得するデータサイズ取得ステップと、
取得したデータサイズにおける、前記転送対象となるデータを符号化する際の符号長と転送時間との関係を取得する関係取得ステップと、
前記取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、前記転送対象となるデータを符号化する符号長を決定する符号長決定ステップと、
決定した符号長を用いて前記データの符号化を行う符号化ステップと、
を有するデータ転送方法。
【請求項6】
転送対象となるデータのデータサイズを取得するデータサイズ取得部と、
取得したデータサイズにおける、前記転送対象となるデータを符号化する際の符号長と転送時間との関係を取得する関係取得部と、
前記取得したデータサイズにおける符号長と転送時間との関係に基づいて、前記転送対象となるデータを符号化する符号長を決定する符号長決定部と、
決定した符号長を用いて、前記転送対象のデータを消失訂正符号を用いて符号化する符合化部と、
前記符合化したデータを、エラー訂正機能を持たないプロトコルを利用して転送する転送部と、
を備える情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−49757(P2012−49757A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189063(P2010−189063)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】