説明

データ送信装置、データ送信方法、データ送信プログラム、測位装置、測位方法及び測位プログラム

【課題】電子基準点が衛星から取得したデータから生成された補正データを用いて測位を行う場合に、電子基準点の切り替えに伴う測位結果の不連続性を回避することを目的とする。また、測位に使用する補正データのデータ送信量を低減することを目的とする。
【解決手段】データ送信装置101は、各電子基準点が衛星から取得したデータから上記各電子基準点に固有の誤差量を示す基準点固有誤差を計算する。データ送信装置101は、計算した上記各電子基準点の基準点固有誤差を補正データとして測位装置201へ送信するとともに、任意の1つの電子基準点の擬似距離と搬送波位相とを測位装置201へ送信する。測位装置201は、受信した補正データと、擬似距離と搬送波位相とに基づき、測位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、測位に使用する補正データを送信するデータ送信装置及びデータ送信方法及び測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位置を測位する際に測位位置を補正する場合、測位位置と基準点との間の距離が大きくなると補正し切れなくなり位置精度が劣化するため、測位位置により近い別の基準点に切り替える必要がある。基準点の切り替えに伴い、測位処理の初期化処理(整数値バイアスの決定)が行われる。そのため、初期化処理が完了するまでの間は測位解を得ることが出来ない。よって、測位結果の連続性は損なわれる(特許文献1)。
また、衛星経由で広域に渡って補正データを配信する場合には、多数の基準点の観測データを伝送する必要がある。そのため、データ伝送量に制約がある衛星経由での補正データの配信は不可能である。
【特許文献1】特開2005−189059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、例えば、基準点の切り替えに伴う測位結果の不連続性を回避することを目的とする。また、この発明は、例えば、測位に使用する補正データのデータ送信量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係るデータ送信装置は、例えば、複数の衛星の各衛星から受信した信号に基づき複数の電子基準点の各電子基準点が出力する電子基準点情報を収集して記憶装置に記憶する収集部と、
上記収集部が取得した電子基準点情報から上記各電子基準点に固有の誤差量を示す基準点固有誤差を上記各電子基準点について処理装置により計算する計算部と、
上記計算部が計算した基準点固有誤差を測位装置の位置を補正するための補正情報として通信装置から送信するデータ送信部と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明に係るデータ送信装置は、各電子基準点の固有の誤差量を補正データとして送信する。これにより、従来の基準点間の誤差量を送信する方法に比べ、送信する補正データのデータ量を低減することができるとともに、測位位置と基準点との間の距離が大きくなっても使用する基準点の切り替えをすることなく精度の高い補正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
実施の形態1.
この実施の形態では、測位に使用する「補正データ3」を配信する測位用補正データ配信システムについて説明する。特に、測位位置と基準点との間の距離が大きくなった場合であっても、基準点の切り替えをする必要のない補正データ3を配信する測位用補正データ配信システムであって、配信する補正データ3のデータ量を低減させた測位用補正データ配信システムについて説明する。
「補正データ3」とは、後述するように、GPS(Global Positioning System)衛星の衛星位置誤差Eと、GPS衛星の送信する測位情報1(L1波、L2波)の電離層遅延量Iと、基準点の観測量である各GPS衛星に関する擬似距離と搬送波位相とを含むデータである。
【0007】
図1は、この実施の形態に係る測位用補正データ配信システム500の構成を示す図である。
測位用補正データ配信システム500は、測位情報1を送信するGPS衛星300a・・・300nと、測位情報1を受信し電子基準点情報2を出力する電子基準点10a・・・10n(基準点)と、電子基準点情報2を収集して処理するセンター局100(データ送信装置101)と、センター局100からの補正データ3を中継する準天頂衛星400と、GPS衛星300a等の測位情報1と準天頂衛星400の配信する補正データ3とを受信して位置を測位する測位装置201とを備える。
【0008】
センター局100は、図1に示すようにデータ送信装置101を備える。センター局100における処理は、データ送信装置101が実行する。また、GPS衛星は、GPS衛星300a,300nの2機のみ図示しているが、例示であり2機に限らない。通常、4機以上を想定する。また、電子基準点は、電子基準点10a,10nの2点を図示しているが、例示であり2点に限らない。電子基準点は、例えば日本各地に1000点以上設置されているものとする。
【0009】
次に、この実施の形態に係る測位用補正データ配信システム500が送信する補正データ3の伝送量について説明する。
図2は、各補正データ3のビット数と(最適化した)更新周期を示す図である。
図3は、日本における使用基準点の例を示す図である。
上述したように1000点以上設置された電子基準点から、使用する基準点を、基準点間の距離が約70km程度であり、概ね格子状の配置となるように選択する。観測点における衛星位置誤差と電離層遅延量は、後述するように、基準点でのそれぞれの値を線形補間して求める。そのため、この線形補間が空間的に成り立つ範囲から、基準点の間隔を約70km程度とする。日本の電子基準点網は、上述のように密に設置されているので、各格子点の近傍には適当な電子基準点が存在する。なお、図3では、使用基準点数は日本全国で138点程度であるが、ここでは150点として見積りを行う。また、観測衛星数は10衛星としてデータの伝送量の見積りを行う。
なお、図2に示す補正データ3のうち、更新間隔が1秒と短い基準点擬似距離、基準点擬似距離変化率、基準点搬送波位相については、ある1つの基準点のデータのみを送信するものとし、更新間隔が30秒と長い衛星位置誤差E、電離層遅延量Iは上記138点(見積りでは150点)のデータを送信する。
【0010】
図4は、各補正データ3の伝送量を示す図である。
従来の方式では、日本全国のデータを配信するのに、1Mbps以上のデータ通信容量が必要であったのが、図4に示すように、更新間隔が短くデータ容量の大きな観測データは1ヶ所の基準点の観測データのみを送信することにより、2.02Kbpsにまでデータ量を縮減できる。
【0011】
つまり、測位用補正データ配信システム500の一つの特徴は、データ送信装置101の送信する補正データ3の伝送量が、従来1Mbps以上必要であったのに対して2kbps程度のデータ量となる点である。
これは、上述したようにデータ送信装置101が、更新間隔が短くデータ容量の大きな観測データは1ヶ所の基準点の観測データのみを送信すること、誤差要因をそれぞれのダイナミックレンジに最適化すること、誤差要因ごとのダイナミクスを考慮することにより更新周期を最適化すること等により、送信するべき補正データ3の伝送量の大幅な削減が実現可能となったことによる。
また、測位用補正データ配信システム500のもう一つの特徴は、測位位置と基準点との間の距離が大きくなった場合であっても、基準点の切り替えをする必要がないという点である。
これは、データ送信装置101が、基準点間の誤差量を補正データ3として送信するのではなく、上述したように基準点に固有の誤差量である基準点固有誤差(衛星位置誤差E、電離層遅延量I)を補正データ3として送信することで、測位装置201が遠くにある基準点についての基準点間の誤差データであっても高精度に算出可能となったことによる。
【0012】
次に、図2から図4までに基づき説明した補正データ3により測位装置201が測位することで、測位位置と基準点との間の距離が大きくなった場合であっても基準点の切り替えをすることなく高い精度で測位することが可能となる理由とその方法とについて説明する。
まず、図1を参照して、測位用補正データ配信システム500の概要を説明する。
(1)GPS衛星300a・・・300n等は測位情報1(信号)を送信する。
(2)電子基準点10a・・・10n等は、(1)で各GPS衛星が送信した測位情報1を受信して所定の情報を電子基準点情報2として出力する。所定の情報は、電子基準点とGPS衛星との擬似距離及び搬送波位相などを含む。
(3)センター局100の備えるデータ送信装置101は、電子基準点10a等のそれぞれの電子基準点が出力する電子基準点情報2を収集し、収集した電子基準点情報2に基づいて補正データ3を作成する。そして作成した補正データ3を、例えば準天頂衛星400を介して配信する。なお、準天頂衛星400を介して補正データ3を配信するのは一例である。他の衛星を介して配信しても構わない。また、衛星によらず地上波で配信しても構わない。また、インターネットなどのネットワークを介して配信しても構わない。
【0013】
図5は、センター局100の備えるデータ送信装置101の機能を示す機能ブロック図である。図5に示すように、データ送信装置101は、源泉データ収集処理部102(収集部)、補正データ計算部103(計算部)、データ送信部104、電子基準点データ記憶部105とを備える。また、補正データ計算部103は、固有誤差データ生成部1031と観測データ生成部1032とを備える。
【0014】
(1)源泉データ収集処理部102は、通信装置を介して電子基準点情報2を収集し処理する。
(2)固有誤差データ生成部1031は、電子基準点情報2と電子基準点データ記憶部105が記憶装置に記憶した電子基準点の座標を表したデータを使用して、後述の衛星位置誤差と電離層遅延量などの固有誤差データ(基準点固有誤差)を処理装置により計算する。
(3)観測データ生成部1032は、電子基準点の観測量である各GPS衛星に関する擬似距離と搬送波位相などの観測データを処理装置により計算する。
(4)データ送信部104は、固有誤差データ生成部1031が生成した衛星位置誤差と電離層遅延量などの固有誤差データとともに、観測データ生成部1032が生成した擬似距離と搬送波位相などの観測データを測位に使用する補正データ3として通信装置を介して配信(送信)する。
(5)電子基準点データ記憶部105は、電子基準点の座標を表したデータを記憶装置に記憶する。
【0015】
図6は、データ送信装置101の動作を示すフローチャートである。図6を参照して、データ送信装置101の動作の概略を説明する。
【0016】
<S11:源泉データ収集ステップ(収集ステップ)>
源泉データ収集処理部102は、複数の電子基準点のそれぞれの電子基準点から電子基準点情報2を収集して記憶装置に記憶する。
【0017】
<S12:固有誤差データ生成ステップ(固有誤差データ計算ステップ)>
固有誤差データ生成部1031は、源泉データ収集処理部102が収集した電子基準点情報2を使用することにより、基準点固有誤差を処理装置により計算する。具体的には、固有誤差データ生成部1031は、基準点固有誤差として、
(1)GPS衛星の衛星位置誤差E
(2)GPS衛星の送信する測位情報1の電離層遅延(Ionospheric delay)による電離層遅延量I
を計算する。
ここで、(1)衛星位置誤差Eと、(2)電離層遅延量Iは、個々のGPS衛星とそれぞれの電子基準点の位置に依存するGPS衛星と電子基準点とに固有な誤差である。それぞれの電子基準点を「添え字i」で表現するとすれば、各電子基準点における衛星位置誤差Eと電離層遅延量Iは、「衛星位置誤差Ei」、「電離層遅延量Ii」と表すことができる。固有誤差データ生成部1031は、それぞれの電子基準点iごとに「衛星位置誤差Ei」、及び「電離層遅延量Ii」を計算する。「衛星位置誤差Ei」は、電子基準点iの位置を測位する場合の測位精度に影響する誤差量である。同様に「電離層遅延量Ii」は、電子基準点iの位置を測位する場合の測位精度に影響する誤差量である。なお、固有誤差データ生成部1031の処理の詳細は後述する。
【0018】
<S13:観測データ生成ステップ(観測データ計算ステップ)>
観測データ生成部1032は、源泉データ収集処理部102が収集した電子基準点情報2を使用することにより、各GPS衛星に関する観測データを処理装置により計算する。具体的には、観測データ生成部1032は、観測データとして、
(1)基準点の観測量である各GPS衛星に関する擬似距離と搬送波位相と
を生成する。
ここで、(1)基準点の観測量である各GPS衛星に関する擬似距離と搬送波位相とは、1ヶ所の電子基準点における個々のGPS衛星の観測データである。この「基準点の観測データ(擬似距離と搬送波位相)」は、観測点の位置を測位する場合に観測点の観測データ(擬似距離と搬送波位相)との差分をとるために必要である。なお、「基準点の観測データ(擬似距離と搬送波位相)」は、データ圧縮を施してもよい。
【0019】
<S14:データ送信ステップ>
データ送信部104は、固有誤差データ生成部1031により生成された「衛星位置誤差Ei」、及び「電離層遅延量Ii」とを含む送信対象データと、観測データ生成部1032により生成された「基準点の観測データ」を含む送信対象データとを、「補正データ3」として送信する。
【0020】
次に、図6のS12の説明で述べた(1)衛星位置誤差E、(2)電離層遅延量Iについて順に説明する。
まず、図7を参照して「衛星位置誤差Ei」の求め方について説明する。
図7は、各基準点における衛星位置誤差の計算過程を示すフローチャートである。ここでは、衛星をX個、基準点をY個として説明する。
【0021】
<S21:第1の基準点固有誤差(衛星位置誤差)計算ステップ>
衛星mと基準点1との間の衛星位置誤差は、電子基準点情報2の擬似距離(L1波、L2波)、幾何学的距離、基準点時計誤差、及び衛星時計誤差を使用して次式のように計算する。
【0022】
【数1】

【0023】
衛星mと基準点p(≧2)との間の衛星位置誤差は、この計算過程を衛星mと基準点pについて順番に処理することによって求められる。
【0024】
<S22:第2の基準点固有誤差(衛星位置誤差)計算ステップ>
衛星nと基準点1との間の衛星位置誤差は、電子基準点情報2の擬似距離(L1波、L2波)、幾何学的距離、基準点時計誤差、及び衛星時計誤差を使用して次式のように計算する。
【0025】
【数2】

【0026】
衛星nと基準点p(≧2)との間の衛星位置誤差は、この計算過程を衛星mと基準点pについて順番に処理することによって求められる。
【0027】
<S23:一重差計算ステップ>
衛星m、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差の一重差は、電子基準点情報2の擬似距離(L1波、L2波)、幾何学的距離及び基準点時計誤差を使用して次式のように計算する。
【0028】
【数3】

【0029】
<S24:二重差計算ステップ>
衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差のニ重差は、電子基準点情報2の搬送波位相(L1波、L2波)、幾何学的距離及び整数値バイアス(L1波、L2波)を使用して次式のように計算する。この値は、搬送波位相と整数値バイアスを使用して求めているので精密な値である。
【0030】
【数4】

【0031】
<S25:第3の基準点固有誤差(衛星位置誤差)計算ステップ>
衛星mと基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差は、<S21>で求めた衛星mと基準点pとの間の衛星位置誤差、及び<S23>で求めた衛星m、基準点pと基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差の一重差を使用して次式のように計算する。
【0032】
【数5】

【0033】
<S26:第4の基準点固有誤差(衛星位置誤差)計算ステップ>
衛星nと基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差は、<S22>で求めた衛星nと基準点pとの間の衛星位置誤差、<S23>で求めた衛星m、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差の一重差、及び<S24>で求めた衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差のニ重差を使用して次式のように計算する。
【0034】
【数6】

【0035】
このとき、衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の衛星位置誤差のニ重差は、式5と式6とを用いて次式のように得られるので、<S24>で求めた値に一致して精密な値となることがわかる。
【0036】
【数7】

【0037】
つまり、<S21>と<S22>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S25>と<S26>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とから計算した二重差は、精密な値となることがわかる。すなわち、<S21>と<S22>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S25>と<S26>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とを補正データ3として送信すれば、基準点pと基準点q(=p+1)との間の精密な衛星位置誤差の二重差の値を測位装置201が計算することができる。
【0038】
そして、以下に説明する<S27>と<S28>とのループにより<S21>から<S26>までの処理を繰り返すことで、各衛星についての各基準点における「衛星位置誤差Ei」を設定する。
<S27:衛星選択ステップ>
固有誤差データ生成部1031は、m=Xであるか否かを処理装置により判定する。つまり、固有誤差データ生成部1031は、全ての衛星を衛星mとして選択したか否かを処理装置により判定する。m=Xである(全ての衛星を衛星mとして選択した)場合(S27でYES)、<S28>へ進む。一方、m≠Xである(全ての衛星を衛星mとして選択していない)場合(S27でNO)、次の衛星を衛星mとして選択して(m=m+1)、<S21>へ戻り、改めて処理を行う。
<S28:基準点選択ステップ>
固有誤差データ生成部1031は、q(=p+1)=Yであるか否かを処理装置により判定する。つまり、固有誤差データ生成部1031は、全ての基準点について衛星位置誤差を計算したか否かを処理装置により判定する。q=Yである(全ての基準点について衛星位置誤差を計算した)場合(S28でYES)、処理を終了する。一方、q≠Yである(全ての基準点について衛星位置誤差を計算していない)場合(S28でNO)、m=1(m初期化)として、次の基準点を基準点pとして選択して(p=p+1)、<S21>へ戻り、改めて処理を行う。
【0039】
以上の処理を行うと、衛星毎に、各基準点について、<S21>と<S22>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S25>と<S26>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とが基準点誤差として設定される。
【0040】
ここで、衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(>p)との間の衛星位置誤差のニ重差は、次式のように精密な値の和となる。したがって、任意の基準点の間の衛星位置誤差のニ重差は、「衛星位置誤差Ei」を用いて、精密な値が得られることがわかる。
【0041】
【数8】

【0042】
つまり、衛星毎に、各基準点について、<S21>と<S22>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S25>と<S26>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とを補正データ3として送信することにより、どの2つの基準点間であっても、精密な衛星位置誤差の二重差の値を測位装置201が計算することができる。
【0043】
次に、図8を参照して「電離層遅延量Ii」の求め方について説明する。
図8は、各基準点における電離層遅延量の計算過程を示すフローチャートである。ここでは、衛星をX個、基準点をY個として説明する。
【0044】
<S31:第1の基準点固有誤差(電離層遅延量)計算ステップ>
衛星mと基準点1との間の電離層遅延量は、電子基準点情報2の擬似距離(L1波、L2波)、幾何学的距離、基準点時計誤差、及び衛星時計誤差を使用して次式のように計算する。
【0045】
【数9】

【0046】
衛星mと基準点p(≧2)との間の電離層遅延量は、この計算過程を衛星mと基準点pについて順番に処理することによって求められる。
【0047】
<S32:第2の基準点固有誤差(電離層遅延量)計算ステップ>
衛星nと基準点1との間の電離層遅延量は、電子基準点情報2の擬似距離(L1波、L2波)、幾何学的距離、基準点時計誤差、及び衛星時計誤差を使用して次式のように計算する。
【0048】
【数10】

【0049】
衛星nと基準点p(≧2)との間の電離層遅延量は、この計算過程を衛星mと基準点pについて順番に処理することによって求められる。
【0050】
<S33:一重差計算ステップ>
衛星m、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量の一重差は、電子基準点情報2の擬似距離(L1波、L2波)、幾何学的距離及び基準点時計誤差を使用して次式のように計算する。
【0051】
【数11】

【0052】
<S34:二重差計算ステップ>
衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量のニ重差は、電子基準点情報2の搬送波位相(L1波、L2波)、幾何学的距離及び整数値バイアス(L1波、L2波)を使用して次式のように計算する。この値は、搬送波位相と整数値バイアスを使用して求めているので精密な値である。
【0053】
【数12】

【0054】
<S35:第3の基準点固有誤差(衛星位置誤差)計算ステップ>
衛星mと基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量は、<S31>で求めた衛星mと基準点pとの間の電離層遅延量、及び<S33>で求めた衛星m、基準点jと基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量の一重差を使用して次式のように計算する。
【0055】
【数13】

【0056】
<S36:第4の基準点固有誤差(衛星位置誤差)計算ステップ>
衛星nと基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量は、<S32>で求めた衛星nと基準点pとの間の電離層遅延量、<S33>で求めた衛星m、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量の一重差、及び<S34>で求めた衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量のニ重差を使用して次式のように計算する。
【0057】
【数14】

【0058】
このとき、衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(=p+1)との間の電離層遅延量のニ重差は、式13と式14とを用いて次式のように得られるので、<S34>で求めた値に一致して精密な値となることがわかる。
【0059】
【数15】

【0060】
つまり、<S31>と<S32>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S35>と<S36>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とから計算した二重差は、精密な値となることがわかる。すなわち、<S21>と<S22>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S25>と<S26>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とを補正データ3として送信すれば、基準点pと基準点q(=p+1)との間の精密な電離層遅延量の二重差の値を測位装置201が計算することができる。
【0061】
そして、以下に説明する<S37>と<S38>とのループにより、各衛星についての各基準点における「電離層遅延量Ei」を設定する。
<S37:衛星選択ステップ>
固有誤差データ生成部1031は、m=Xであるか否かを処理装置により判定する。つまり、固有誤差データ生成部1031は、全ての衛星を衛星mとして選択したか否かを処理装置により判定する。m=Xである(全ての衛星を衛星mとして選択した)場合(S37でYES)、<S38>へ進む。一方、m≠Xである(全ての衛星を衛星mとして選択していない)場合(S37でNO)、次の衛星を衛星mとして選択して(m=m+1)、<S31>へ戻り、改めて処理を行う。
<S38:基準点選択ステップ>
固有誤差データ生成部1031は、q(=p+1)=Yであるか否かを処理装置により判定する。つまり、固有誤差データ生成部1031は、全ての基準点について電離層遅延量を計算したか否かを処理装置により判定する。q=Yである(全ての基準点について電離層遅延量を計算した)場合(S38でYES)、処理を終了する。一方、q≠Yである(全ての基準点について電離層遅延量を計算していない)場合(S38でNO)、m=1(m初期化)として、次の基準点を基準点pとして選択して(p=p+1)、<S31>へ戻り、改めて処理を行う。
【0062】
以上の処理を行うと、衛星毎に、各基準点について、<S31>と<S32>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S35>と<S36>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とが基準点誤差として設定される。
【0063】
ここで、衛星m、衛星n、基準点p及び基準点q(>p)との間の電離層遅延量のニ重差は、次式のように精密な値の和となる。したがって、任意の基準点の間の電離層遅延量のニ重差は、「電離層遅延量Ii」を用いて、精密な値が得られることがわかる。
【0064】
【数16】

【0065】
つまり、衛星毎に、各基準点について、<S31>と<S32>とで計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と、<S35>と<S36>とで計算した第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とを補正データ3として送信することにより、どの2つの基準点間であっても、精密な電離層遅延量の二重差の値を測位装置201が計算することができる。
【0066】
図9は、基準点固有誤差のデータの配信フォーマットを示す図である。データ送信装置101は、各衛星についての各基準点の衛星位置誤差Eiと電離層遅延量Iiとを配信する。つまり、図7と図8とに基づき説明した処理により計算した各衛星についての各基準点の第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と第3の基準点固有誤差と第4の基準点固有誤差とを配信する。
【0067】
次に、センター局100のデータ送信装置101が送信する補正データ3を用いて自己の位置を測位する測位装置201について説明する。
図10は、測位装置201の機能を示す機能ブロック図である。図10に示すように、測位装置201は、補正データ受信部202(受信部)、固有誤差計算部203、測位部204を備える。
【0068】
(1)補正データ受信部202は、データ送信装置101が計算した各電子基準点の基準点固有誤差と所定の基準点の擬似距離と搬送波位相とを補正データ3として、データ送信装置101から通信装置を介して受信する。
(2)固有誤差計算部203は、補正データ受信部202が受信した補正データ3を線形補間して現在の概略位置における固有誤差を処理装置により計算する。固有誤差計算部203は、生成した現在の概略位置における固有誤差に基づき、現在の位置における観測データを補正する。また、固有誤差計算部203は、測位する際の差分に使用する所定の基準点の基準点固有誤差が上記受信部が受信した補正データ3に含まれていない場合、上記受信部が受信した補正データ3に含まれる基準点固有誤差を線形補間して上記所定の基準点の基準点固有誤差を計算する。固有誤差計算部203は、計算した基準点固有誤差により補正データ受信部202が受信した観測データ(擬似距離と搬送波位相)を補正する。
(3)測位部204は、補正した現在の位置における観測データと、補正した基準点の観測データとを使用して処理装置により測位する。
【0069】
つまり、図1に示すように、測位装置201は、準天頂衛星400を介して補正データ3(固有誤差データ(衛星位置誤差Eiと電離層遅延量Ii)、観測データ(擬似距離と搬送波位相)等)を受信する。測位装置201は、この補正データ3と、GPS衛星300a・・・GPS衛星300n等からの測位情報1とにより位置を測位する。補正データ3のうち、衛星位置誤差Ei、及び電離層遅延量Iiについては、各衛星についての各基準点における「衛星位置誤差Ei」と「電離層遅延量Ei」とを受信する。また、電子基準点の擬似距離と搬送波位相とについては、ある1つの電子基準点についての各衛星の擬似距離と搬送波位相とのみを受信する。
測位装置201は、単独測位による単独測位位置を求める。そして、測位装置201は、この単独測位位置に基づいて、受信した各基準点のうち、例えば近傍の3点の基準点1、基準点2、及び基準点3に関する衛星位置誤差Ei、及び電離層遅延量Iiを選択する(i=1,2,3)。図11に電子基準点(基準点)と観測点(測位装置201)との位置関係を示す。そして、選択した衛星位置誤差Ei、及び電離層遅延量Ii(i=1,2,3)から、測位計算に使用するべき衛星位置誤差Ep、及び電離層遅延量Ipを次式のように計算する。
【0070】
【数17】

【0071】
測位装置201は、これら変換した衛星位置誤差Ep、電離層遅延量Ipを使用して観測点の観測データを補正する。
【0072】
また、測位装置201は、測位する際の差分に使用する任意の基準点0の位置に基づいて、受信した各基準点のうち近傍の3点の基準点1、基準点2、及び基準点3に関する衛星位置誤差Ej、及び電離層遅延量Ijを選択し(j=1,2,3)、そして、選択した衛星位置誤差Ej、及び電離層遅延量Ij(j=1,2,3)から、測位計算に使用するべき衛星位置誤差Er、及び電離層遅延量Irを次式のように計算する。
【0073】
【数18】

【0074】
測位装置201は、これら変換した衛星位置誤差Er、電離層遅延量Irを使用して基準点0の観測データを補正する。
【0075】
データ送信装置101が送信する補正データ3のうち、衛星位置誤差Ei及び電離層遅延量Iiは、上述のように、各基準点(基準点p)において次の基準点(基準点q)との間の衛星位置誤差及び電離層遅延のニ重差が精密な値となるように設定されている。そのため、図12に示すように、ある基準点とその次の基準点との間の二重差が精密な値となるので、任意の2つの基準点の間の二重差も精密となる。
また、基準点の間にある観測点における衛星位置誤差Ep及び電離層遅延量Ipや、測位する際の差分に使用する基準点0における衛星位置誤差Er及び電離層遅延量Irは、上述のように、衛星位置誤差Ei及び電離層遅延量Iiをこれらを線形補間して得られる。
したがって、観測点と任意の基準点0との間の衛星位置誤差及び電離層遅延量のニ重差も、高精度に求めることが可能となる。
測位装置201は、これら補正した観測点及び基準点0のそれぞれの観測データを使用して測位する。
【0076】
次に、実験結果について説明する。
図13は、本実施の形態に係るデータ送信装置101による補正データ3のうち、衛星位置誤差と電離層遅延量をそれぞれ個別に使用して、測位装置201で測位した結果(バイアス誤差とランダム誤差(σ値))を示す。
図14は、本実施の形態に係るデータ送信装置101による補正データ3のうち、衛星位置誤差と電離層遅延量との合成値を使用して、測位装置201で測位した結果(バイアス誤差とランダム誤差(σ値))を示す。
図15は、補正データ3を使用しない場合に、測位装置201で測位した結果である。
図16は、図13から図15までに示す測位結果をまとめた図である。なお、図13から図15に示す測位結果は80回の測位結果をプロットしたものである。
補正データ3を使用しないで測位した場合、基線長が長くなる従って測位結果(バイアス誤差とランダム誤差)が劣化する。しかし、図13から図16に示すように、本実施の形態に係る補正データ3を使用して測位した結果、基線長が長くなっても測位結果は劣化することなく、高精度な測位を実現していることがわかる。
なお、観測データは、国土地理院の電子基準点データ(2007年11月3日午前0時0分0秒から40分間)を用いた。
【0077】
以上のようにこの実施の形態に係るデータ送信装置101は、測位する際の差分に使用する基準点の観測データの切り替えが不要となるので、基準点の切り替えに伴う測位結果の不連続性を回避することができる。
【0078】
また、この実施の形態に係るデータ送信装置101は、測位に使用する補正データ3の量が大幅に削減され、データ送信量を低減されるので、補正データ3の衛星配信を実現することができる。
【0079】
なお、データ送信装置101は、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相のそれぞれに対して、データ圧縮を施してデータ形式を変更するデータ形式変更部を備え、データ送信部104が上記データ形式変更部によりデータ形式が変更された観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを含む上記送信対象データを送信するとしてもよい。
【0080】
また、データ送信装置101は、基準点のそれぞれに対して計算した上記基準点固有誤差データを補間することにより、測位する際の差分に使用する基準点における固有誤差データを計算して、計算した固有誤差データを用いて、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相のそれぞれを補正するデータ補正部を備え、データ送信部104が上記データ補正部によりデータが補正された観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを含む上記送信対象データを送信するとしてもよい。
【0081】
また、補正データ計算部103は、1つ以上の電子基準点における電子基準点情報2として、各衛星に関する観測量(擬似距離と搬送波位相)を入力し、予め測定されている上記基準点の位置を取得する。
そして、補正データ計算部103は、入力した上記入力観測量と取得した上記基準点の位置とに対して、測位に使用する誤差を上記基準点における上記基準点固有誤差である衛星位置誤差と電離層遅延量とに分割して計算して、データ送信部104は、補正データ計算部103が計算した上記基準点における衛星毎の衛星位置誤差と電離層遅延量とを、それぞれ上記基準点固有誤差データとして配信するとしてもよい。
また、補正データ計算部103は、入力した上記入力観測量と取得した上記基準点の位置とに対して、測位に使用する誤差を上記基準点における上記基準点固有誤差である衛星位置誤差と電離層遅延量とを合成して計算して、データ送信部104は、補正データ計算部103が計算した上記基準点における各人工衛星毎の衛星位置誤差と電離層遅延量との合成値を、それぞれ上記基準点固有誤差データとして配信するとしてもよい。
【0082】
この実施の形態に係るデータ送信装置101の特徴は以下の通りである。
測位情報1を送信する人工衛星から上記測位情報1を受信して所定の情報を出力する複数の電子基準点のそれぞれから、上記所定の情報を電子基準点情報2として収集する源泉データ収集処理部102と、
上記収集部の収集した上記電子基準点情報2を使用することにより、上記基準点のそれぞれに固有な誤差量を示す基準点固有誤差を上記複数の電子基準点のそれぞれについて計算し、上記基準点のそれぞれに対して計算した上記基準点固有誤差データを送信対象データとして出力するとともに、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを送信対象データとして出力する補正データ計算部103と、
上記計算部が出力した上記送信対象データを送信するデータ送信部104と
を備える。
【0083】
源泉データ収集処理部102と補正データ計算部103とデータ送信部104とを備えたデータ送信装置101が行うデータ送信方法の特徴は以下の通りである。
源泉データ収集処理部102が、測位情報1を送信する人工衛星から上記測位情報1を受信して所定の情報を出力する複数の電子基準点のそれぞれから、上記所定の情報を電子基準点情報2として収集する工程と、
補正データ計算部103が、収集した上記電子基準点情報2を使用することにより、上記基準点の位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに上記基準点のそれぞれに固有な誤差量を示す基準点固有誤差を上記複数の電子基準点のそれぞれについて計算し、上記基準点のそれぞれに対して計算した上記基準点固有誤差データを送信対象データとして出力するとともに、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを送信対象データとして出力する工程と、
データ送信部104が、上記計算部が出力した上記送信対象データを送信する工程と
を備える。
【0084】
この実施の形態に係る測位装置201の特徴は以下の通りである。
データ送信装置101の送信する上記基準点固有誤差データとともに、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを受信する補正データ受信部202と、
受信した上記基準点固有誤差データを現在の概略位置における誤差データに変換し、変換した上記誤差データを用いて現在の位置における観測データを補正するとともに、受信した上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを上記基準点の位置における誤差データに変換し、変換した上記誤差データを用いて上記基準点の観測データを補正する固有誤差計算部203と、
補正したデータを用いて測位する測位部204と
を備える。
【0085】
また、補正データ受信部202は、データ送信装置101の送信する上記基準点固有誤差データとともに、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを受信する。
固有誤差計算部203は、受信した上記基準点固有誤差データを現在の概略位置における誤差データに変換し、変換した上記誤差データを用いて現在の位置における観測データを補正する。
測位部204は、補正したデータを用いて測位する。
【0086】
また、補正データ受信部202は、データ送信装置101の送信する上記基準点における各人工衛星毎の衛星位置誤差と電離層遅延量である上記基準点固有誤差データとともに、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを受信する。
固有誤差計算部203は、受信した上記基準点固有誤差データを現在の概略位置における誤差データに変換し、変換した上記誤差データを用いて現在の位置における観測データを補正する。また、固有誤差計算部203は、受信した上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを上記基準点の位置における誤差データに変換し、変換した上記誤差データを用いて上記基準点の観測データを補正する。
測位部204は、補正したデータを用いて測位する。
【0087】
また、補正データ受信部202は、データ送信装置101の送信する上記基準点における各人工衛星毎の衛星位置誤差と電離層遅延量との合成値である上記基準点固有誤差データとともに、上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを受信する。
固有誤差計算部203は、受信した上記基準点固有誤差データを現在の概略位置における誤差データに変換し、変換した上記誤差データを用いて現在の位置における観測データを補正する。また、固有誤差計算部203は、受信した上記基準点の観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相とを上記基準点の位置における誤差データに変換し、変換した上記誤差データを用いて上記基準点の観測データを補正する。
測位部204は、補正したデータを用いて測位する。
【0088】
次に、上記実施の形態におけるデータ送信装置101、測位装置201のハードウェア構成について説明する。
図17は、データ送信装置101、測位装置201のハードウェア構成の一例を示す図である。
図17に示すように、データ送信装置101、測位装置201は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、LCD901(Liquid Crystal Display)、キーボード902、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。
【0089】
ROM913、磁気ディスク装置920は、不揮発性メモリの一例である。RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913とRAM914と磁気ディスク装置920とは、記憶装置の一例である。通信ボード915とキーボード902とは、入力装置の一例である。また、通信ボード915は、出力装置の一例である。さらに、通信ボード915は、通信装置の一例である。また、さらに、LCD901は、表示装置の一例である。
【0090】
磁気ディスク装置920又はROM913などには、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0091】
プログラム群923には、上記の説明において「源泉データ収集処理部102」、「補正データ計算部103」、「データ送信部104」、「電子基準点データ記憶部105」等として説明した機能を実行するプログラムやその他のプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、上記の説明において電子基準点データ記憶部105が記憶するデータや、「補正データ3」等として説明した情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「ファイル」や「データベース」の各項目として記憶される。「ファイル」や「データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPU911の動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPU911の動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、上記の説明におけるフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、その他光ディスク等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0092】
また、上記の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。また、「〜装置」として説明するものは、「〜回路」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。さらに、「〜処理」として説明するものは「〜ステップ」であっても構わない。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ROM913等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、上記で述べた「〜部」としてコンピュータ等を機能させるものである。あるいは、上記で述べた「〜部」の手順や方法をコンピュータ等に実行させるものである。
【0093】
つまり、データ送信装置101の源泉データ収集処理部102、固有誤差データ生成部1031、観測データ生成部1032、データ送信部104、電子基準点データ記憶部105等の各部が行う動作は、ハードウェアのみでも実施することができ、ソフトウェアのみ(ハードウェアと協調して)でも実施することができ、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせでも実施することができる。また、電子基準点データ記憶部105は、磁気記憶装置と考えてもよい。
つまり、上記実施の形態では、データ送信装置101として説明したが、データ送信方法、データ送信プログラムと考えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】補正データ配信システム500の構成を示す図。
【図2】各補正データ3のビット数と(最適化した)更新周期を示す図。
【図3】日本における使用基準点の例を示す図。
【図4】各補正データ3の伝送量を示す図。
【図5】データ送信装置101の機能を示す機能ブロック図。
【図6】データ送信装置101の動作を示すフローチャート。
【図7】各基準点における衛星位置誤差の計算過程を示すフローチャート。
【図8】各基準点における電離層遅延量の計算過程を示すフローチャート。
【図9】固有誤差データの配信フォーマットを示す図。
【図10】測位装置201の機能を示す機能ブロック図。
【図11】電子基準点と観測点(測位装置201)との位置関係を示す図。
【図12】衛星位置誤差や電離層遅延量を求める場合の線形補間の概念を示す図。
【図13】衛星位置誤差と電離層遅延量を個別に使用した場合の測位結果の例を示す図。
【図14】衛星位置誤差と電離層遅延量の合成値を使用した場合の測位結果の例を示す図。
【図15】補正データ3を使用しない場合の測位結果の例を示す図。
【図16】衛星位置誤差と電離層遅延量による補正データ使用/不使用場合の測位結果のまとめを示す図。
【図17】データ送信装置101、測位装置201のハードウェア構成の一例を示す図。
【符号の説明】
【0095】
1 測位情報、2 電子基準点情報、3 補正データ、10a,10n 電子基準点、100 センター局、101 データ送信装置、102 源泉データ収集処理部、103 補正データ計算部、1031 固有誤差データ生成部、1032 観測データ生成部、104 データ送信部、105 電子基準点データ記憶部、201 測位装置、202 補正データ受信部、203 固有誤差計算部、204 測位部、300a,300n GPS衛星、400 準天頂衛星、500 測位用補正データ配信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星の各衛星から受信した信号に基づき複数の電子基準点の各電子基準点が出力する電子基準点情報を収集して記憶装置に記憶する収集部と、
上記収集部が取得した電子基準点情報から上記各電子基準点に固有の誤差量を示す基準点固有誤差を上記各電子基準点について処理装置により計算する計算部と、
上記計算部が計算した基準点固有誤差を測位装置の位置を補正するための補正データとして通信装置から送信するデータ送信部と
を備えることを特徴とするデータ送信装置。
【請求項2】
上記計算部は、
上記複数の衛星の第1の衛星と上記複数の電子基準点の第1の電子基準点との間の第1の基準点固有誤差と、上記複数の衛星の第2の衛星と上記第1の電子基準点との間の第2の基準点固有誤差と、上記第1の衛星と上記第1の電子基準点と上記複数の電子基準点の第2の電子基準点との間の基準点固有誤差の一重差と、上記第1の衛星と上記第2の衛星と上記第1の電子基準点と第2の電子基準点との間の基準点固有誤差の二重差とを計算して、
計算した第1の基準点固有誤差と第2の基準点固有誤差と一重差と二重差とから、第1の衛星と第2の電子基準点との間の第3の基準点固有誤差と、第2の衛星と上記第2の電子基準点との間の第4の基準点固有誤差とを計算して、
上記第1の基準点固有誤差と上記第2の基準点固有誤差と上記第3の基準点固有誤差と上記第4の基準点固有誤差とを上記第1の電子基準点についての基準点固有誤差とする
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ送信装置。
【請求項3】
上記計算部は、
上記各電子基準点を電子基準点を第1の電子基準点として選択して、基準点固有誤差を計算する
ことを特徴とする請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項4】
上記データ送信部は、上記計算部が計算した基準点固有誤差のうち、補完が成り立つ間隔毎に選択した所定の電子基準点についての基準点固有誤差のみを補正データとして送信する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項5】
上記データ送信部は、上記複数の電子基準点のうち1つの電子基準点についての擬似距離と搬送波位相とを、上記基準点固有誤差とともに補正データとして送信する
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項6】
上記計算部は、衛星位置誤差と電離層遅延量とを合成した値を上記基準点固有誤差として計算する
ことを特徴とする請求項5に記載のデータ送信装置。
【請求項7】
複数の衛星の各衛星から受信した信号に基づき複数の電子基準点の各電子基準点が出力する電子基準点情報を収集する収集ステップと、
上記収集ステップで取得した電子基準点情報から上記各電子基準点に固有の誤差量を示す基準点固有誤差を上記各電子基準点について計算する計算ステップと、
上記計算ステップで計算した基準点固有誤差を測位装置の位置を補正するための補正データとして送信するデータ送信ステップと
を備えることを特徴とするデータ送信方法。
【請求項8】
複数の衛星の各衛星から受信した信号に基づき複数の電子基準点の各電子基準点が出力する電子基準点情報を収集する収集処理と、
上記収集処理で取得した電子基準点情報から上記各電子基準点に固有の誤差量を示す基準点固有誤差を上記各電子基準点について計算する計算処理と、
上記計算処理で計算した基準点固有誤差を測位装置の位置を補正するための補正データとして送信するデータ送信処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とするデータ送信プログラム。
【請求項9】
複数の電子基準点の各電子基準点が出力する電子基準点情報に基づきデータ送信装置が計算した上記各電子基準点の固有の誤差量を示す基準点固有誤差を補正データとして、上記データ送信装置から通信装置を介して受信する受信部と、
上記受信部が受信した補正データを補完して現在の概略位置における固有誤差を処理装置により計算する固有誤差生成部と、
上記固有誤差生成部が補正した現在の概略位置における固有誤差と、所定の電子基準点の基準点固有誤差とに基づき処理装置により測位する測位部と
を備えることを特徴とする測位装置。
【請求項10】
上記固有誤差生成部は、さらに、上記所定の基準点の基準点固有誤差が上記受信部が受信した補正データに含まれていない場合、上記受信部が受信した補正データに含まれる基準点固有誤差を補完して上記所定の基準点の基準点固有誤差を計算する
ことを特徴とする請求項9に記載の測位装置。
【請求項11】
上記測位部は、上記現在の概略位置における固有誤差と、上記所定の電子基準点の基準点固有誤差とから、上記現在の概略位置と上記所定の電子基準点との間の二重差を計算して、計算した二重差と上記所定の電子基準点の位置情報とから測位する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の測位装置。
【請求項12】
複数の電子基準点の各電子基準点が出力する電子基準点情報に基づきデータ送信装置が計算した上記各電子基準点の固有の誤差量を示す基準点固有誤差を補正データとして、上記データ送信装置から受信する受信ステップと、
衛星から受信した信号に基づき自観測データを生成する観測データ生成ステップと、
上記受信ステップで受信した補正データを補完して現在の概略位置における固有誤差を生成する固有誤差生成ステップと、
上記固有誤差生成ステップで補正した現在の概略位置における固有誤差と、所定の電子基準点の基準点固有誤差と、上記所定の基準点の位置情報とに基づき測位する測位ステップと
を備えることを特徴とする測位方法。
【請求項13】
複数の電子基準点の各電子基準点が出力する電子基準点情報に基づきデータ送信装置が計算した上記各電子基準点の固有の誤差量を示す基準点固有誤差を補正データとして、上記データ送信装置から受信する受信処理と、
衛星から受信した信号に基づき自観測データを生成する観測データ生成処理と、
上記受信処理で受信した補正データを補完して現在の概略位置における固有誤差を生成する固有誤差生成処理と、
上記固有誤差生成処理で補正した現在の概略位置における固有誤差と、所定の電子基準点の基準点固有誤差と、上記所定の基準点の位置情報とに基づき測位する測位処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする測位プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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