説明

トイレットロール製品の製造方法及びトイレットロール製品

【課題】薬液が付与されたトイレットロール製品を効率良く生産する。
【解決手段】抄紙設備で製造した一次原反ロールJRを、プライマシンにて薬液が付与された二次原反ロールRとし、二次原反ロールRを用いてワインダーにて二次原反ロールから薬液が付与された二次連続シートを巻き出し、二次連続シートに対して流れ方向に所定間隔で二次連続シートの幅方向に沿ってミシン目線を形成し、その後にミシン目線が形成された二次連続シートをトイレットロールの巻き径となるようにまき直して、トイレットロール用のログを製造し、ログをログカッターに移送して、ログカッターにてトイレットロールの幅となるように裁断して個々のトイレットロールとし、トイレットロールを包装設備にて、単数又は複数個を包装袋に収納してトイレットロール製品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が塗布されたクレープを有するトイレットペーパーを巻取ったトイレットロールを包装してなるトイレットロール製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーは、一般的に、連続する帯状のものを紙管と称される管芯に巻取とったトイレットロールの形態とされ、これを複数個包装した状態のトイレットロール製品として市販に供されている。
【0003】
上記トイレットペーパーにおいては、需用者は、価格ととともに、保湿性(しっとり感)、柔軟性(柔らかさ感)、表面の滑らかさ性(滑らかさ感)といった点に関心があり、この点において高品質なトイレットペーパーを求める。
【0004】
また、痔疾患患者等においては、排泄後の清拭作業において強く擦るといった清拭が行ない難い。このためかかる痔疾患患者においては、拭取り性、嵩高性と保湿性、柔軟性、表面の滑らかさ性が高められたトイレットペーパーに極めて関心があり、それらの機能に優れる製品を求める。
【0005】
また、トイレットペーパーは、排便後のみならず特に女性においては排尿後の清拭用にも用いられ、この女性における排尿後の清拭は敏感な陰部への接触を伴うため、保湿性、柔らかさのあるトイレットペーパーの潜在的需要がある。
【0006】
ここで、トイレットペーパーの中には、保湿性(しっとり感)、柔軟性(柔らかさ感)、表面の滑らかさ性(滑らかさ感)を高めるべく、かかる各特性を向上させる薬液が付与されたものがある。
【0007】
しかし、従来の薬液が付与されたトイレットロールは、生産性が極めて悪く、高価でもあり、そのうえ各特性のすべてが十分に向上されたものではなく、需用者の要求を満足するものではなかった。
【0008】
このため従来の薬液が付与されたトイレットロール製品は広く普及するに至っていない。
【0009】
ここで、従来の通常のトイレットロールは、抄紙設備で製造した原反ロールをワインダーに移送し、このワインダーにてトイレットロールの直径にまき直して、トイレットロール幅の複数倍幅以上のログを製造し、その後にかかるログをトイレットロールの幅に裁断してトイレットロールとしている。複数プライの製品を製造する場合にはワインダーにおいて巻き直しの前に複数の原反ロールから巻き出した連続シートを積層するようにしている。
【0010】
そして、薬液が付与されたトイレットロールの製造方法は、例えば、下記特許文献1〜3に開示されている。
【0011】
特許文献1の技術は、ワインダーにセットした原反ロールからログを製造する際に、スチールラバー方式でエンボスを付与することとし、その凸エンボスロールのエンボス凸部に薬液を付与して原反ロールから巻き出される連続シートに薬液を転写して付与する技術である。
【0012】
しかし、特許文献1の技術は、エンボス凸部の頂点にのみ薬液を付与して連続シートに薬液を付与することから薬液使用量が少なく、さらにエンボス凹面には薬液が付与されていない部分が生ずるおそれがあり、表面の滑らかさの向上、保湿性の向上が十分なものとならない。さらに、最も紙力が低下する薬液付与時と連続シートに所定圧で挟持するエンボス付与時とが同時であるため断紙が発生しやすく、低速で加工する必要があり生産性を高めがたい。
【0013】
他方、特許文献2の技術は、ワインダーにセットした原反ロールからログを製造する際に、エンボスを付与した後、スプレー方式で薬液を付与する技術である。
【0014】
しかし、特許文献2の技術も薬液付与直後にログとするためログ製造後に紙中への薬液拡散が生じ、クレープの伸びによる紙の伸びによってログの巻きずれ型くずれがし易いという欠点がある。特にログは後に裁断してトイレットロールとなるものであるためログにおいて巻きずれ、型くずれが発生すると不良品のトイレットロールとなり歩留まりも悪化するため生産効率を極めて低下させる要因となる。
【0015】
また、特許文献1と同様に、薬液付与直後にログを製造するため、テンションコントロールが難しく、ミシン目線を付与時の断紙が発生しやすく、連続シートのテンションを低くし、低速で加工せざるを得ず、生産性が高められない。
【0016】
また、特許文献2の技術では、エンボス後に特にスプレー塗布で薬液を付与するためエンボスの型くずれもしやすい。さらに、ワインダーにてスプレー方式では吐出量が制限されるため、低速加工でないと連続シートへの薬液付与量が少なくなってしまい、生産性が高められない。
【0017】
特許文献3の技術は、トイレットペーパー製品用の原紙としてエンボス加工クレープ紙を得る技術であり、複数の原反ロールから連続シートを巻きだしそれらを重ね合わせた後にそれら積層連続シートに薬液を付与し、さらにスプレーで水を付与して湿紙にした後にエンボスを付与する。そして、再度巻き取りを行なう前に積層された各連続シートの分離を行なうという技術である。
【0018】
しかしながら、引用文献3の技術では、エンボス付与前にスプレーで水を付与するため、薬液或いは水が連続シートに対し十分に浸透する前にエンボス加工がされるため、連続シート表面の浸透していない薬液がエンボスを付与する凸エンボスロールおよび受けロールに付着してしまい、断紙や掃除によるライン停止の要因となり得るため、生産性を高めることができない。
【0019】
また、薬液付与時の紙力の低下の小さい薬液として油性の薬液が知られ、かかる油性の薬液を使用したトイレットロールも知られるが、かかるトイレットロールは表面の滑らかさの改善は十分であるものの保湿性については不十分であり、また、薬液の中でも紙層内に浸透し難い油性の薬液が用いられていることによる。また、このトイレットロールに必要な水解性の点でも難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平11−323787
【特許文献2】特開2009−183411号公報
【特許文献3】特開2007−15379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、本発明の主たる課題は、トイレットペーパーに必要な水解性等の性能を十分なものとしつつ、保湿性(しっとり感)、柔軟性(柔らかさ感)、表面の滑らかさ性(滑らかさ感)を十分に向上させ、さらに生産性よく生産できるトイレットロール製品の製造方法を提供することにある。また、上記生産性の向上、保湿性等の機能を向上とともに、エンボスによる意匠性、嵩高性等の機能をも向上させることができるトイレットロール製品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するための手段及びそれらの作用効果は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法であって、
抄紙設備により抄造され巻き取られた一次原反ロールからプライマシンを用いて連続的にトイレットロール製品用の二次原反ロールを製造することとし、
そのプライマシンが、複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層手段と、
前記積層手段の後段にあって連続シートに対して薬液を塗布する薬液付与手段と、
薬液が塗布された積層連続シートを巻き取ってトイレットロールの複数倍幅以上の二次原反ロールを形成する巻き取り手段と、が組み込まれたものであり、
前記プライマシンにより製造された薬液が塗布されたトイレットロール製品用の二次原反ロールを、ワインダーの原反ロール支持部にセットして、前記ワインダーにおいて、二次原反ロールから薬液が付与された二次連続シートを巻き出し、その二次連続シートに対して流れ方向に所定間隔で二次連続シートの幅方向に沿ってミシン目線を形成し、その後にミシン目線が形成された二次連続シートをトイレットロールの巻き径となるように巻き直して、トイレットロール用のログを製造し、
前記ワインダーにて製造されたログをログカッターに移送して、前記ログカッターにてトイレットロールの幅となるように裁断して個々のトイレットロールとし、
そのトイレットロールを包装設備にて、単数又は複数個を包装袋に収納してトイレットロール製品を得る、
ことを特徴とする、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0023】
〔請求項2記載の発明〕
前記プライマシンは、エンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、薬液付与後又は薬液付与前の積層連続シートに対してシングルエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【0024】
〔請求項3記載の発明〕
前記プライマシンは、積層手段の前段にエンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、各一次連続シートに対してエンボスを付与した後、エンボスが付与された各一次連続シートを積層手段で積層する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【0025】
〔請求項4記載の発明〕
前記プライマシンは、重ね合わせ部、プライ剥離手段、エンボス付与手段、積層手段である再重ね合わせ部をこの順で有し、
各一次連続シートを重ね合わせ部で一時的に積層した後、前記プライ剥離手段で積層連続シートを各連続シートにプライ剥離し、そのプライ剥離された連続シートに対して、エンボス付与手段でエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【0026】
〔請求項5記載の発明〕
前記ワインダーは、エンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、二次原反ロールから巻き出された薬液が付与された二次連続シートに対して積層された状態でシングルエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【0027】
〔請求項6記載の発明〕
前記プライマシンは、前記薬液付与手段と巻き取り手段との間にスリット手段を有し、
前記スリット手段にて前記薬液が塗布された二次原反ロールをトイレットロールの複数倍幅以上にスリットした後、前記巻き取り手段においてスリットされた複数倍幅以上の積層連続シートを同軸で巻取る、請求項1記載の薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0028】
〔請求項7記載の発明〕
前記プライマシンは、前記積層手段の後段に積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス手段を有し、
そのコンタクトエンボス手段において、トイレットロールの幅に対応するコンタクトエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0029】
〔請求項8記載の発明〕
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段にエンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、二次原反ロールから巻き出された薬液が付与された二次連続シートに対して積層された状態でシングルエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【0030】
〔請求項9記載の発明〕
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段にプライ剥離手段、エンボス付与手段、再重ね合わせ部をこの順で有し、二次原反ロールから巻き出された薬液が付与された二次連続シートを前記プライ剥離手段で各連続シートにプライ剥離した後、そのプライ剥離された連続シートに対して、エンボス付与手段でエンボスを付与し、再重ね合わせ部で再度積層する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【0031】
〔請求項10記載の発明〕
前記プライマシンは、前記再重ね合わせ部の後段に積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス手段を有し、
そのコンタクトエンボス手段において、トイレットロールの幅に対応するコンタクトエンボスを付与する、請求項4に記載の、薬液が塗布されたトイレットペーパー製品の製造方法。
【0032】
〔請求項11記載の発明〕
薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法であって、
抄紙設備により抄造され巻き取られた一次原反ロールからプライマシンを用いて連続的にトイレットロール製品用の二次原反ロールを製造することとし、
前記プライマシンとして;
複数の一次原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層手段と、
前記積層手段の後段にあって連続シートに対して薬液を塗布する薬液付与手段と、
薬液が塗布された連続シートを巻き取ってトイレットロールの複数倍幅以上の二次原反ロールを形成する巻き取り手段と、がシートの流れ方向に組み込まれたものを用い;
前記プライマシンで一つの一次原反ロールを用い、前記積層手段を機能させず単層の連続シートに対して薬液付与を行なった巻き取りを行なって非積層連続シートで構成される二次原反ロールを製造し、
そのプライマシンにより製造された薬液が塗布されたトイレットロール製品用の二次原反ロールを、ワインダーの原反ロール支持部にセットして、前記ワインダーにおいて、二次原反ロールから薬液が付与された二次連続シートを巻き出し、その二次連続シートに対して流れ方向に所定間隔で二次連続シートの幅方向に沿ってミシン目線を形成し、その後にミシン目線が形成された二次連続シートをトイレットロールの巻き径となるように巻き直して、トイレットロール用のログを製造し、
前記ワインダーにて製造されたログをログカッターに移送して、前記ログカッターにてトイレットロールの幅となるように裁断して個々のトイレットロールとし、
そのトイレットロールを包装設備にて、単数又は複数個を包装袋に収納してトイレットロール製品を得る、
ことを特徴とする、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0033】
〔請求項12記載の発明〕
前記プライマシンは、薬液付与手段の後段にエンボス付与手段を有し、薬液付与手段にて薬液が付与された一次連続シートに対してシングルエンボスを付与する請求項11記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0034】
〔請求項13記載の発明〕
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段にエンボス付与手段と積層手段とをこの順で有し、前記ワインダーに複数の二次原反ロールをセットし、各二次原反ロールから巻き出した各連続シートに対して前記エンボス付与手段においてエンボスを付与した後、積層手段で積層する請求項11記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0035】
〔請求項14記載の発明〕
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段に積層手段とエンボス付与手段とをこの順で有し、前記ワインダーに複数の二次原反ロールをセットし、各二次原反ロールから巻き出した各連続シートを積層手段で積層した後、積層された積層連続シートに対して前記エンボス付与手段においてシングルエンボスを付与する請求項11記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0036】
〔請求項15記載の発明〕
前記プライマシンにおける前記薬液付与手段がフレキソ印刷方式によるものである、請求項1又は11に記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0037】
〔請求項16記載の発明〕
フレキソ印刷方式によって薬液の塗布する際の積層連続シートの搬送速度を500m/分以上とする請求項15記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【0038】
〔請求項17記載の発明〕
請求項1〜16の何れか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするトイレットロール製品。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、プライマシンにおいて連続シートに薬液を付与し、それを一度巻き取って二次原反ロールを製造した後に、ワインダーにてログを製造する。
【0040】
プライマシンは、2プライ(2層又は2枚重ね)以上のティシュペーパーを製造するにはよく用いられるが、トイレットロールを製造するにあたっては、2プライの製品であってもワインダーにおいて積層しつつログを製造するのが一般的であり、わざわざプライマシンのような別途の巻き取り工程を行なうようなことは希である。
【0041】
本発明では、かかるプライマシンをわざわざ用いることとし、そのプライマシンにおいて抄造し、巻き取りを行なった一次原反ロールからワインダーに供給するための二次原反ロールを連続的に製造することとし、しかもプライマシン内に、薬液付与手段を組み込んで連続シートに薬液を付与して薬液が付与された二次原反ロールを製造するようにした。
【0042】
したがって、まず、プライマシンを使用する第1の利点としては、トイレットロール製造設備とともにティシュペーパー製品設備を具備する製造工場においては、トイレットロールの製造ラインと汎用ティシュペーパー製造ラインを一部共有することができ、その場合にトイレットロール用の別途の薬液付与設備を必要がなくなる利点がある。この利点は、設備投資費や設備設置面積が少ないもので足りる利点がある。
【0043】
また、既存のプライマシンに、薬液付与手段が無くとも、大幅な設備改造を要することなく、既設のプライマシンのマイナーな改造で足りるので、投資設備費が少ないもので足りる利点がある。
【0044】
他方、プライマシンで薬液が付与された二次原反ロールを製造する工程を介して薬液が付与されたトイレットロール製品を製造する場合、かかる二次原反ロールは、薬液が付与された積層連続シートが多数年輪状に巻かれていることから、二次原反ロールの状態で二次連続シートの紙層内及び接する積層連続シート間において薬液が経時的に拡散し、しかもワインダーでの加工までの移行期間或いは意図的なシーズニング時間が確保することができ積層連続シート内における薬液の均質化が図られる。
【0045】
このためワインダーにおいて、トイレットロールでは必須でありながら、紙力低下を伴うミシン目線付与の際に、薬液付与に伴う連続シートの部分的な強度の高低がなく安定した操業が可能となる。すなわちワインダーにおける生産速度を向上させることができる。
【0046】
なお、特に水系薬液を用いた場合に、紙中への薬液拡散が生ずることとの関係で紙力低下及び短期的な薬液の均質化が困難である。
【0047】
また、二次原反ロールの時点で薬液の拡散、シートへの吸湿、シートのクレープの伸びが十分に行なわれているためワインダーで巻取ったログとした後に、それら薬液拡散、吸湿、クレープの伸びに薬液拡散や吸湿に伴う弊害、つまりログの巻きずれや型くずれが生じがたい。このため、比較的、短い長さのトイレットペーパーを所定径に巻いた所謂ゆるまきの態様でログを製造しても型くずれや巻きずれがし難く、安定した操業、不良ログの発生率の低下させることができる。
【0048】
他方、本発明では、エンボスが付与されたトイレットロールを製造することが可能である。このエンボスは、プライマシン、ワインダーで付与することができる。
【0049】
プライマシンでエンボスを付与する場合、ミシン目線付与手段がなく高速に安定的にエンボスを付与でき、ワインダーでエンボスを付与する場合には、上記薬液が均質化された状態でエンボスを付与できる。いずれにしても薬液付与のトイレットロールにおいて従来以上に高速かつ安定にエンボス付与を行なうことができる。
【0050】
特にプライマシンで、シングルエンボスを付与する場合には、積層状態の比較的引っ張りに強い連続シートにエンボスを付与することからプライマシンの高速可動性を確保できる点で利点がある。また、ダブルエンボスの場合も、片面塗布とすれば、薬液付与に伴う紙力低下を小さくすることができエンボス付与に関する高速化は十分に達成できる。このダブルエンボスの形態では、厚み感、嵩高感のある積層連続シートを製造することができ、かかる質感の点で利点がある。
【0051】
他方、ワインダーでエンボスを付与する場合、薬液が付与された状態の二次原反ロールを介することで、シート内において薬液が均質化された状態でエンボスを付与することができることからしっかりと確実なムラのないエンボス付与が可能となるとともに、安定的な生産ができ高速性も確保できる。
【0052】
他方、本発明においてはプライマシンにおいて積層手段を機能させずにシングルプライの二次原反ロールを製造するようにしてもよい。かかる二次原反ロールを複数用いてワインダーにて積層してログを製造することとしてもよい。或いは非積層のままワインダーでログを製造してもよい。このようにしても、プライマシンの高速な二次原反ロールの製造性の利点が得られる。さらに、ワインダーでエンボスを付与する場合、上記の薬液が付与された状態の二次原反ロールを介することで、シート内において薬液が均質化された状態でエンボスを付与することができることからしっかりと確実なムラのないエンボス付与が可能となる。すなわち、安定的に生産ができ高速性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】抄紙設備における一次原反ロールの製造方法を示す概略図である。
【図2】第1の実施の形態にかかるプライマシンでの二次原反ロールの製造方法例を示す概略図である。
【図3】第1の実施の形態にかかるワインダーでのログ製造方法例を示す概略図である。
【図4】紙管製造工程を示す概略図である。
【図5】コンタクトエンボス付与工程を示す概略図である。
【図6】トイレットロールの斜視図である。
【図7】トイレットロール製品の一例を示す斜視図である。
【図8】トイレットロール製品の他の例を示す斜視図である。
【図9】第2の実施の形態にかかるプライマシンでの二次原反ロールの製造方法例を示す概略図である。
【図10】第2の実施の形態にかかるプライマシンでの二次原反ロールの他の製造方法例を示す概略図である。
【図11】第3の実施の形態にかかるプライマシンでの二次原反ロールの製造方法例を示す概略図である。
【図12】第3の実施の形態にかかるプライマシンでの二次原反ロールの他の製造方法例を示す概略図である。
【図13】第4の実施の形態にかかるワインダーでのログ製造方法例を示す概略図である。
【図14】第5の実施の形態にかかるワインダーでのログ製造方法例を示す概略図である。
【図15】薬液付与手段の一例を説明するための概略図である。
【図16】ドクターチャンバー式フレキソ印刷装置の一例を示す概略図である。
【図17】薬液供給装置の導出部の例を説明するための概略図である。
【図18】薬液供給装置の他の導出部の例を説明するための概略図である。
【図19】薬液供給装置の別の導出部の例を説明するための概略図である。
【図20】薬液供給装置で用いられるドクターチャンバーの構造を説明する図であって、(A)は2つの導入部と1つの導出部を有する構造を示し、(B)は3つの導入部と2つの導出部を有する構造を示し、(C)は導入部及び導出部がそれぞれ同数存在する構造を示している。
【図21】2ロール式フレキソ印刷装置の一例を示す概略図である。
【図22】薬液噴霧装置による薬液付与例を示す概略図である。
【図23】薬液噴霧装置による薬液付与例を示す他の概略図である。
【図24】薬液噴霧装置例の概略図である。
【図25】他の薬液噴霧装置例の概略図である。
【図26】ローターダンプニング方式の薬液噴霧装置例の概略図である。
【図27】インクジェット式印刷装置による薬液付与例を示す概略図である。
【図28】インクジェット式印刷装置のインクヘッドを示す概略図である。
【図29】カーテンコーターを示す概略図である。
【図30】第6の実施の形態にかかるプライマシンでの二次原反ロールの他の製造方法例を示す概略図である。
【図31】第6の実施の形態にかかるワインダーでのログ製造方法例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳説する。図中の矢印HDは水平方向を、矢印LDは上下方向を示している。なお、本発明が実施形態に限定されるわけではない。
【0055】
『第1の実施形態:エンボス非付与の形態』
〔抄紙工程:一次原反ロールの製造方法及び製造設備〕
本発明にかかる一次原反ロールJR(ジャンボロールとも称される)は、図1に示す抄紙設備例X1により、以下のようにして製造することができる。
【0056】
まず、ヘッドボックス31からパルプスラリーに適宜の薬品を添加して予め調整した紙料をワイヤーパート32のワイヤ32w上に供給して湿紙Wを形成し(フォーミング工程)、次にこの湿紙Wをプレスパート33のフェルト33Fに移送したにのち対をなす脱水ロール34,35によって挟持して脱水する(脱水工程)。
【0057】
次いで、脱水された湿紙Wをヤンキードライヤー36の表面に付着させて乾燥させた後にドクターブレード37によって掻き剥がしてクレープを有する乾燥原紙S1(後述の一次連続シート)とする(乾燥工程)。
【0058】
そして、この乾燥原紙S1をワインディングドラム39を有する巻き取り手段38によって、前記乾燥原紙S1の裏面が一次原反ロールJRの軸側に対向するようにして(巻き取り内面となるようにして)巻き取り、一次原反ロールJRとする(一次原反巻き取り工程)。
【0059】
この一次原反ロールJRは、抄紙設備X1の性能によっても相違するが、概ね直径が1000〜5000mm、長さ(幅)が1500〜9200mm、巻き長さが5000〜80000mである。
【0060】
なお、一次原反巻き取り工程の前段にドクターブレード37により掻き剥がした乾燥原紙S1に対してカレンダー工程(図示せず)を設け表裏面の平滑化処理をしてもよい。
【0061】
ここで、乾燥原紙S1の裏面とは、ヤンキードライヤー36のシリンダと接していた面の反対側の面のことを意味する。なお、カレンダー工程の有無にもよるが一般には鏡面のヤンキードライヤーに接していた表面のほうが滑らかで表面性に優れる。
【0062】
ここで、一次原反ロールJRを構成する一次連続シートS1は、後にトイレットペーパー1に加工されるものであり、最終製品を構成するトイレットペーパーとほぼ同等の坪量となる。従って、これを考慮して一次連続シートS1は具体的にはJIS P 8124による坪量が、10〜25g/m2、好ましくは12〜20g/m2、より好ましくは13〜18g/m2とする。坪量が10g/m2未満であると、トイレットペーパーの柔らかさの点においては好ましいが、使用時の適正な強度の確保することが難しくなるとともに、後段のワインダーにおける再巻き取り(ログ製造)が困難となる。他方、坪量が25g/m2を超えると、トイレットペーパーが硬くなりすぎて、肌触りが悪化する。
【0063】
また、紙厚(尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージにより測定)は80〜250μm、好ましくは100〜200μm、より好ましくは130〜180μmとするのが望ましい。
【0064】
また、一次連続シートS1は、クレープ率が10〜30%、好ましくは15〜28%、より好ましくは20〜25%である。クレープ率が10%未満であると、後段の加工時に断紙しやすいとともに伸びの少ないコシのないトイレットペーパーとなる。他方、クレープ率が30%超過であると、加工時のシートの張力コントロールが難しく断紙しやすくなり、また、製造後にはシワが発生して見栄えの悪いトイレットペーパーとなりやすくなる。
【0065】
ここで、クレープ率とは、下式で表わされるものとする。
クレープ率:{(製紙時のドライヤーの周速)−(巻き取り手段におけるリール装置のリール周速)}/(製紙時のドライヤーの周速)×100。
【0066】
また、一次連続シートS1は、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)の縦方向が、2プライで300〜900cN/25mm、好ましくは350〜800cN/25mm、特に好ましくは400〜700cN/25mmとし、他方、横方向が、2プライで100〜400cN/25mm、好ましくは130〜350cN/25mm、特に好ましくは150〜300cN/25mmとするのが望ましい。原紙の乾燥引張強度が低すぎると、製造時及び使用時の断紙や伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0067】
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、乾燥紙力増強剤を紙料或いは湿紙に内添する、紙料のフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、原料パルプのNBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する等の既知の手法を適宜組み合わせることができる。
【0068】
なお、乾燥紙力増強剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性塗工PAM等を用いることができる。
【0069】
乾燥紙力増強剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で0.5〜1.0kg/t程度とすることができる。
【0070】
湿潤紙力増強剤は、トイレットペーパーが水解性を要することから、添加しないか添加しても少量とするのが望ましい。但し、添加した場合には、後段のワインダーにおけるログ製造時において有利に作用することから、この点を考慮して、少量、具体的にはパルプスラリーに対する重量比で5kg/t以下とすることができる。
【0071】
ここで、一次原反ロール(一次原反シート)の原料となる紙料について説明すると、紙料は繊維原料としてパルプを主原料とするスラリー(パルプスラリー)に適宜の薬品を添加したものである。
【0072】
本発明においては、原料パルプは特に限定されず、トイレットペーパーに用いられる適宜の原料パルプを選択して使用することができる。
【0073】
好ましくは、原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。また、古紙パルプが配合されていてもよいが、本発明にかかるローション薬液との相性がよく、ワインダーにおけるログ製造が好適に行えるともに、得られるティシュペーパーの風合いの点でも望ましいことから、バージンパルプのNBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合の配合割合(JIS P 8120)としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0074】
紙料に添加する薬品例としては、上記乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤のほか剥離剤、接着剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、粘剤、消泡剤、防腐剤、スライムコントロール剤、染料、などが挙げられる、なお、これらの薬品は、適宜の工程で湿紙に塗工してもよい。
【0075】
〔プライマシンにおける工程:二次原反ロールの製造方法及び製造設備〕
本発明においては、抄紙設備X1で製造された一次原反ロールJRを、特徴的に、図2に例示するプライマシンX2において、薬液が付与された二次原反ロールRを製造する。
【0076】
本形態にかかるプライマシンX2は、一次原反ロールJRを2つ以上セット可能であり、各一次原反ロールJR,JRから繰り出した一次連続シート(図示例ではS11、S12)は、その連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とする重ね合わせ部(積層手段)51に供給されるように構成されている。ここで重ね合わせ部51は一対のニップロールで構成され、各一次連続シートS11,S12を積層するとともにニップして各一次連続シートを積層一体化ならしめる。
【0077】
なお、図示例では、各一次原反ロールJR,JRから繰り出される一次連続シートS11,S12の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面(ここで積層連続シートの「表面」とは積層外面である積層連続シートS2の表裏面のことである)となるようして重ね合わせ部51に供給されるようになっている。一次連続シートS11,S12の裏面がそれぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成してもよいし、一次連続シートS11,S12のどちらか一方の裏面が積層連続シートS2の表面となり、他方の表面が積層連続シートS2の表面となるようしてもよいが、一次原反シートS11,S12の表面は、乾燥時にヤンキードライヤーの表面に接していることから裏面と比較して毛羽立ちが少なく滑らかで肌触りが良いので、一次連続シート(乾燥原紙S1)の表面が積層連続シートS2の表裏面を構成するようにするのが望ましい。
【0078】
また、図示例では一次原反ロールJRを2つセットしていわゆる2プライの積層連続シートを巻き取る例であるが、3セット、4セットとして3プライ、4プライの積層連続シートを巻き取るようにすることも可能である。
【0079】
本第1の実施の形態では、プライマシンX2の重ね合わせ部51の後段に薬液付与手段53を有し、積層連続シートS2に対して連続的に薬液を付与する薬液付与工程を行なうようになっている。なお、重ね合わせ部51と薬液付与手段53との前後関係を入れ替えて、各一次連続シートS11,S12に薬液を付与した後に、薬液付与した一次連続シートを積層するようにしてもよい。
【0080】
プライマシンX2にて積層連続シートS2に対して薬液を塗工するには、フレキソ印刷、スプレー塗工、インクジェット印刷等の薬液付与手段53を採用することができる。但し、プライマシンX2の高速性に対応でき、しかも刷版の柔軟性、高速対応性、薬液の飛散防止、塗工量の調整が容易である等の要件からフレキソ印刷が適する。紙面に刷版ロール等を接触させないことから紙厚の低下を招かないという点では、刷版ロール等を用いず直接的に薬液を紙面に塗工する非接触形の塗工形態であるスプレー塗工、インクジェット印刷、カーテン塗工が望ましい。但し、これらの非接触式の塗工は薬液の均一塗布、塗工量の調整がフレキソ印刷等のロール転写式の付与手段と比較して高速性の点では劣り、また、後述のエンボス付与を行なう各形態では係る欠点が顕著となる。従って、本発明においては、ロール転写方式のほうが望ましく、総合的にはフレキソ印刷が最も望ましい。
【0081】
薬液付与手段53は、単数或いは複数設置することができ。図示例では、二機のドクターチャンバー式フレキソ印刷機53A,53Bを設置して積層連続シートS2の両外面に薬液を付与する態様を示している。薬液付与手段53を、複数設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設しても良く、水平方向を含めたこれらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると抱き角度を小さくすることができるため、加工速度を高速とすることができ、上下方向に並設すると水平方向における設置スペースを小さくすることができる。
【0082】
薬液の塗工量は、両外面(トイレットペーパーの外面となる各面)の合計の薬液塗工量は、0.3〜5.0g/m2、好ましくは1.0〜3.9g/m2、より好ましくは2.0〜3.0g/m2とする。3.9g/m2超過であると、紙力低下や伸びなどにより断紙したり、品質的にべたつき感が過ぎる場合も出てくるとともに、後述のワインダーでの再巻き取り(ログ製造)が困難となる。0.3g/m2未満であると滑らかさやしっとり感など未塗工品との品質差を感じられなくなってしまう。より好ましく、2.0〜3.0g/m2とすると厚み感、しっとり感といった官能評価において極めて優れたものとなる。
【0083】
なお、本発明においては、トイレットペーパーの両外面となる部分への薬液付与の薬液付与量が異なるようにしてもよい。また、トイレットペーパーの外面となる各面の片面ののみに薬液を付与するようにしてもよい。
【0084】
薬液付与工程で付与する薬液については、粘度は40℃で1〜700mPa・sが望ましい。より好ましくは50〜400mPa・s(40℃)である。1mPa・sより小さいと特に、薬液が飛散しやすくなり、逆に700mPa・sより大きいと安定した付与量とするコントロールがしにくくなる。
【0085】
本発明に用いる薬液は、水系のローション薬液であり、その成分は、水及びポリオールを含むものである。特にポリオールを70〜90%、水分を1〜15%を含むのが望ましく、さらに機能性薬品を0.01〜22%含むものであるのがより望ましい。
【0086】
前記ポリオールとしては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類が挙げられる。
【0087】
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、滑らかさ、保湿性等の官能高価、及び薬液の粘度、付与量を安定させる上で好ましい。
【0088】
前記機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0089】
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を助けたり、維持させる薬剤として親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
【0090】
また機能性薬剤として各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え付与を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
【0091】
薬液付与時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0092】
ここで、薬液塗工タイプの製品に用いられる薬液は種々存在するが、大きく本発明にかかる水及びポリオールを含む水系薬液、主に非水溶性のワックス等を含み常温で半固形である油系薬液に大別される。水系薬液は取り扱い性に優れ安価であり水解性の低下がほとんどないという特徴がある。
【0093】
また、水系薬液はシートに塗工した場合にシートを構成するパルプ繊維との親和性に優れ、シートの厚み方向(Z方向とも称される)に含浸し、シート全体及びその表面性を改質するように作用する。これに対して油系薬液は主にその表面をコーティングするように作用し、表面の滑らかさを向上させるように作用し、水解性を悪化させる。他方で、水系薬液は、シートに含浸することから塗工後にシートに塗工されたクレープを伸ばす作用が大きく紙力低下を伴うが、油系薬液ではそのような作用が小さい。
【0094】
本発明はかかる水系の薬液を十分な量、用いつつも安定的かつ高速に生産することができ、保湿性(しっとり感)、柔軟性(柔らかさ感)、表面の滑らかさ性(滑らかさ感)の向上と生産性の向上が図られるのである、
【0095】
上記薬液付与工程53にて薬液が付与された積層連続シートS3は、巻き取り手段56に案内されて巻き取られ二次原反ロールRとされる。巻き取り手段56は、回転可能な管軸に巻かれた積層連続シートS3の外面に接して回転する一対のワインディングドラム56A,56Bを有し、これら2つのワインディングドラム56A,56A及び上記管軸が適宜回転することで、薬液が付与された積層連続シートS3を案内しつつ巻き取る。
【0096】
ここで、二次原反ロールRは、トイレットロールの巻き径(直径)と比較して極めて大径のロールであり、トイレットロールの巻き径と同じ径の所謂ログとは異なるものである。
【0097】
本発明は一次原反ロールJRからログを直接的に製造せずプライマシンX2により薬液が付与された二次原反ロールRを製造する工程を有する点で特徴的である。
【0098】
ここで、本発明におけるプライマシンX2においてされる好ましい種々の加工及び手段の詳細について以下、さらに説明する。
【0099】
プライマシンX2においてトイレットロール用の薬液が付与された二次原反ロールRを製造するにあたっては、加工速度を300〜900m/分、好ましくは500〜900m/分、より好ましくは700〜800m/分とするのが望ましい。300m/分未満だと十分な生産性とは言えない。他方、900m/分超過であると安定的に生産するのが困難となる。特に500m/分、より好ましく700m/分であると後段のワインダーへの供給、十分なストック管理、さらに複数のワインダーの運用が可能になるなど生産性を高めるうえで好ましい。800m/分以下とすると安定性がより優れる。
【0100】
なお、少なくとも速度は300m/分以上、通常は500m/分以上、好ましくは700m/分以上の加工速度は、従来のトイレットロールの生産性からすると極めて高速な加工速度である。
【0101】
他方、プライマシンX2においては、巻き取り部56の前段にスリット手段55を設けて、薬液が付与された積層連続シートS3を連続方向にスリットして適宜の幅とした後に、それらスリットされた積層連続シートS3を巻取ることで後段のワインダーに適した適宜の幅の二次原反ロールRとすることができる。
【0102】
なお、ここでのスリットは、トイレットロールの幅ではなく後段のワインダーに適した幅であり、概ね積層連続シートS3を半裁、或いは1/3裁程度にスリットすることを意味する。
【0103】
スリット加工を行なうスリット手段55は、積層連続シートS3の幅方向に間隔を開けて並設された複数のロールカッター及び受け部からなるスリット手段とすることができる。
【0104】
他方、プライマシンX2においては、重ね合わせ部51から巻き取り部56までの間にカレンダー部52を一つ以上設けて薬液付与に前後して積層連続シートS2、S3に対してカレンダー加工をすることができる。図示例では、重ね合わせ部51の後段であって薬液付与手段53の前段に設けており、かかる位置に設けるのが望ましい。
【0105】
カレンダー部52におけるカレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーのことである。
【0106】
カレンダー部の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、一つであるとスペースが狭くとも設置可能であるという利点を有する。
【0107】
二つ以上のカレンダー部を設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設することができ、また、これらの設置方向を組み合わせて配置することができる。水平方向に並設すると、抱き角度を小さくなるため加工速度が高速とすることができ、上下方向に並設すると設置スペースを小さくすることができる。なお、ここで言う抱き角度とはロールの軸中心から見てシートが接している間(軸と直行する断面の円弧の一部)の角度を意味する(以下同じ)。
【0108】
カレンダー加工におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、これらの制御要因は、求めるトイレットペーパーの品質すなわち紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
【0109】
〔ワインダーにおける工程:ログ製造工程〕
上記のとおりプライマシンX2にて薬液が付与された積層連続シートS3を巻取った二次原反ロールを製造した後には、これをワインダーX3に移送してログ10Rを製造する。図3には、ログ製造に用いる長尺の紙管11Lを製造する工程(A)、ログ製造工程(B)、裁断工程(C)を示す。(B)に示される部分がワインダーにおけるログ製造工程である。ここでは、長尺紙管11Lの製造工程(A)も合わせて説明する。
【0110】
長尺の紙管11Lを製造する工程(図3中(A))は、図4にも示すように、二枚の帯状の紙管用原紙(板紙)12,12を原反ロール12A,12Aからそれぞれ繰り出しつつ、所定位置に糊付けロール13により糊を付与し、当該糊付けされた部分を重ねつつコアワインダー14によりシャフト15に螺旋状に巻付け、ワインダー或いは二次原反ロールRの幅に合わせた所定長さにスリッター16にて切り揃えることで、円筒の長尺の紙管11Lを形成する。なお、各紙管用原紙12,12は、各々違う原反を使用してもよく、例えば、一方に印刷を施したり、各々の米坪を変えたりしてもよい。本発明においても、必ずしも紙管原紙12,12は、同様のものである必要はない。なお、紙管の直径は35〜50mmとするのが望ましい。
【0111】
次いで、この長尺紙管11Lの製造と平行して又はその後において、ワインダーX3にてログ10Rを製造する。なお、ログ10Rとは、業界においての一般用語であり、トイレットロールの径と同径でありかつ幅がトイレットロールの複数個分ある中間製品である。
【0112】
本第1の実施形態にかかるワインダーX3は、原反ロール支持部、コンタクトエンボス手段54、パーフォレーションロール71を有するミシン目線付与手段70、再巻き取り手段75をこの順で備える。
【0113】
本第1の実施形態におけるログ10Rの製造は、ワインダーX3の原反ロール支持部にセットした薬液が付与された積層連続シートS3が巻き取られた二次原反ロールRから連続的に積層状態の二次連続シートS4を巻きだし、コンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスを付与した後、ミシン目線付与手段70によって二次連続シートS4に対して流れ方向に所定間隔で二次連続シートS4の幅方向に沿ってミシン目線を形成し、その後に再巻き取り手段75でトイレットロールの巻き径となるように巻き直してログ10Rを製造する。
【0114】
前記コンタクトエンボス手段(コンタクトエンボス工程)54は、図5に示すように、金属ロール又は弾性ロールである受けロール154Bと表面に細かい凸部154Cを有する金属製で硬質のコロ154Aとが所定の圧力を有して相互に外周面同士を当接しつつ、それぞれ回転可能に設置されている。そして、二次連続シートS4におけるトイレットロールの幅L1の幅方向中央に該当する部分に対して、左右各2つずつ存在する凸部154Cと、受けロール154Bとの間で二次連続シートS4を挟みつつ搬送することで、二次連続シートS4に対して、二次連続シートS4の連続方向に沿って層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスCEを施すようになっている。
【0115】
尚、このコンタクトエンボスCEを施すコロ154Aと対向した側の面を外周側として後段の再巻き取り手段75において二次連続シートS4を巻き取りログ10Rとするのが望ましい。
【0116】
このようにコンタクトエンボスCEを付与することによって、複数の一次連続シート(S11、S12)を積層して成る二次連続シートS4の層間剥離が防止される。
【0117】
また、このコンタクトエンボス工程54において、本実施形態ではコロ154Aとして表面に細かい凸部154Cを有した金属製で硬質のコロ154Aを用いたが、二次連続シートS4に対して層間剥離を防止するライン状の接合部分が形成できればよく、例えばコロ154Aの替りに、表面に細かい針状の部材を有したローラをコロとすることもできる。
【0118】
さらに、接合する為の手段としては上記例に限定されず、凸部の先端形状が、点状、正方形、長方形、円形、楕円形等の形状のものをコロとして用いても良く、凸部の先端形状が、細長い線状、細く斜めに伸びる線状等のものをコロとして用いても良い。
【0119】
他方、凸部の配列としては等間隔が考えられるが、千鳥状としたり、等間隔としなくとも良く、また、凸部を1列に配置してコンタクトエンボスを連続して付与する他に、凸部を2列以上の複数列配置することも考えられる。そして、コンタクトエンボスを緊密に複数列付与するように凸部が配置された群を複数並べて、複数のコンタクトエンボス群を付与するようにしても良い。尚、接合工程としては、上記のように機械的に圧力を加えて接合する他に、超音波等の他の手段により接合しても良い。
【0120】
なお、図示例においては、コンタクトエンボス手段54は、ワインダーX3に設置したが、本形態では上記プライマシンX2における重ね合わせ部51の後段に設置して予めコンタクトエンボスが付与された二次原反ロールを製造し、これを用いてワインダーX3においてコンタクトエンボスを付与しない態様としてもよい。なお、このようにするプライマシンX2でコンタクトエンボスを付与する場合、プライマシンX2においてスリット工程を行なう場合にはその前段、より好ましくは、さらに薬液付与手段53の後段であるのが望ましい。
【0121】
他方、ワインダーX3におけるミシン目線付与手段70は、周面に軸心方向に沿って多数の刃が配設された刃列を有する所謂パーフォレーションロール71とこのロールと対をなす受けロール72とで構成されており、パーフォレーションロール71と受けロール72との間に二次連続シートS4を通す際に、パーフォレーションロール71の鋸刃が二次連続シートS4に接触して二次連続シートS4に対してミシン目線を付与する。パーフォレーションロール71の鋸刃は、周面に間隔を開けて複数列形成されており、パーフォレーションロール71の回転により、二次連続シートS4の流れ方向に所定間隔でミシン目線が形成される。
【0122】
ここで、本発明にかかるトイレットロールでは、好適にはミシン目線における二次連続シートの長手方向の引張り強さが10〜200cN(好ましくは40〜60cN)であるのがよい。この範囲であると製造時にミシン目線で分断する事故のおそれが格段に小さくなるとともに、トイレットロールとして使用する際にミシン目線で確実に裁断することが好適に行えるようになる。ここで「ミシン目線における二次連続シートの長手方向の引張り強さ」とは、JIS P 8113に規定される引張り特性試験方法に準拠して測定される乾燥時引張り強さを意味し、シート自体、つまりミシン目線のないシートの引張り強さではなく、ミシン目線のあるシートを対象とし、ミシン目線を跨いで測定した引張り強度を意味する。
【0123】
このミシン目線における長手方向の引張り強さの調節は、二次連続シートの紙力、坪量等とともにミシン目線における接続部であるタイ長さと、同分断部であるカット長さとを調節することにより、あるいはこのタイ長さとカット長さとの比であるタイカット比を調節することにより、行うことができる。
【0124】
タイカット比の調整は、より具体的には、所望のタイカット長さ及びタイカット比の刃列を用いることで調節することができる。また、この引張り強さの調節は、パーフォレーションロールのシートへの押付け線圧(シート単位幅当たりのシートへの押付け力(kgf/cm))の調節や、ワインダー速度(巻き取り速度)の調節によっても調節することができる。
【0125】
なお、本発明におけるミシン目線の好適な構成は、カット長さを0.9〜37.5mmにするとともに、タイカット比(タイ:カット)を1:15〜1:1に設定するのが望ましい。
【0126】
他方、ワインダーX3は、前記長尺の紙管製造工程(図3中(A))で製造した長尺の紙管11Lが挿入されるシャフト及びシャフトを回転させる駆動装置及び糊付け装置を有しており、ログ製造10Rにあたっては、まず、長尺の紙管11L内にシャフトが挿入され、シャフトが挿入された紙管外面に適宜糊が付与される。
【0127】
その後に二次連続シートS4の先端縁が前記接着糊を介して長尺紙管11Lに接着され、その後にシャフトが回転駆動されて、長尺紙管11Lに二次連続シートS4が巻き掛けられる。
【0128】
そして、長尺紙管11Lに対してトイレットロールに対応する所定長さの二次連続シートS4が巻き掛けられトイレットロールに対応する巻き径(直径)かつトイレットロールの幅の複数倍幅以上のロールが形成された後、シャフトの回転駆動を停止し、後続の二次連続シートS4との間を切断して、ログ10Rとする。
【0129】
なお、後続の二次連続シートとの切り離しによって自由端となる部分(テールとも称される)は既知のテールシーラー機構により巻き外面に接着糊などにより接着される。
【0130】
ここで、長尺紙管11L外面に二次連続シートS4を接着させるため、或いはテールを巻き外面に接着させるための糊としては、クリル酸系樹脂、PVA(ポリビニールアルコール)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、デンプン、さらに単なる水などトイレットペーパーの水解性を妨げない水性の既知の糊が好適に利用できる。
【0131】
なお、ログは巻径が100〜120mm、巻長が20〜120mとなるようにすると、再巻き取り時における巻きずれがし難く望ましい。
【0132】
〔ログカッターにおける裁断工程〕
ワインダーX3にてログ10Rが製造された後には、これをログアキュームレーターX4に連続的或いは簡潔的に移送する。ログアキュームレーターX4は、ログ10Rを高さ方向、横方向に移動させつつ複数本ストックしつつ後段のログカッターX5に移送する既知の装置である。
【0133】
ログアキュームレーターX4から順次ログカッターX5に移送されたログは、必要に応じて幅方向両端部をトリム除去するとともに、トイレットロールの幅毎に裁断されて個々のトイレットロール10とされる。ログカッターX5は、ログ10R周面に接するように複数間隔を開けて配された回転する丸刃76を有し、かかる丸刃によってログ10Rをトイレットロール10の幅に裁断する。
【0134】
かくして、紙管11にトイレットペーパーS5が巻かれた個々のトイレットロール10が製造される。この製造されるトイレットロールは図6に示すとおり、長尺紙管11Lが裁断された紙管11に二次連続シートS4が裁断されたトイレットペーパーS5が巻かれて成るものである。
【0135】
ここで、本発明にかかるトイレットロール10の好適な例は、図6に示すとおり、幅L1が100〜115mm、直径L4が100〜120mm、巻き長さ(トイレットペーパーの全長)が18〜70m、紙管の直径が35〜50mmである。ミシン目線間隔L2は100〜300mmである。かかる構成のトイレットロール10は、ワインダーX3での薬液付与を行なって製造するとログの紙管に近い芯部分が飛び出す等の巻きずれが生ずる、薬液の浸透に伴うログの型くずれが生ずる、ミシン目線形成時に破断が生ずる等の問題点があり、製造することが極めて困難であるところ、本発明にかかる製造方法を採ることで、製造することが容易に行えるようになる。
【0136】
また、本発明に係るトイレットペーパーは、少なくともJIS P 4501で規定される、ほぐれやすさの試験方法における水解性の結果が80秒以下を確保できる。通常は80秒を超えると、水解性が遅く、例えば水洗トイレ等に廃棄したときに排水管に詰まるおそれがある。特に、本発明にかかるトイレットペーパーは、従来の薬液付与タイプでは困難であった、35秒以下を達成することが可能である。すなわち、本発明は十分な水解性を有するトイレットペーパーからなるトイレットロールを高効率に生産できるのである。
【0137】
〔収納工程〕
トイレットロール10が製造された後には、これらを適宜数、既知の包装技術により外装フィルム等により包装してトイレットロール製品Sとする。トイレットロール製品Sの形態例は、図7、図8に示す。
【0138】
包装については、筒状の外装フィルム基材を開き、その内側に所定の整列形態で適宜個数のトイレットロールを押し込み、その状態で外装フィルム基材の適宜トイレットロールに係らない部分を熱融着、接着して、上記整列形態が動かないように外装フィルム20がほぼトイレットロールの周面に密着的に又はこれに近い状態で被覆するようにして、内部のトイレットロールの整列状態が崩れないように拘束して包装する。
【0139】
ここで、外装フィルム20の具体例としては、HDPE(高密度ポリエチレン)フィルム、LDPE(低密度ポリエチレン)フィルム、LLDPE(リニア低密度ポリエチレン)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等又はこれらの積層フィルムが挙げられる。安価であり適度な引裂き性を有し、しかも適度な強度を確保できることから、HDPEフィルム、LDPEフィルム、HDPEとLDPE配合フィルムが好適である。 また、これらの樹脂製のフィルムに対して、紙層や不織布層が積層された積層フィルムであってもよい。
【0140】
なお、具体的な包装態様は、既知のガセット包装、キャラメル包装、シュリンク包装などが採用さされる。図7に示すように、4個のトイレットロールを各周面が接するように配し、そのような4個セットが端面を付き合わせるようにして3段に重ねられた整列態様で4×3=12個のトイレットロールをガセット包装し、さらに上端部に持ち手25を形成した包装態様、図8に示すように、2個のトイレットロールを各周面が接するように配し、そのような2個セットが端面を付き合わせるようにして2段に重ねられた整列態様で2×2=4個のトイレットロールをキャラメル包装した包装態様が例示できる。
【0141】
以上の各工程を経て本第1の実施形態にかかるトイレットロール製品が製造される。
【0142】
『第2の実施形態:プライマシンでシングルエンボスを付与する形態』
次いで、本発明の第2の実施形態を図9、図10を特に参照しながら説明する。なお、本形態はプライマシンX2において積層連続シートS2、S3に所謂シングルエンボスを付与する以外の他の構成については上記第1の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。
【0143】
図9に示すように本第2の実施形態にかかるプライマシンX2は、薬液付与手段53の後段にエンボス付与手段60が設けられており、かかるエンボス付与手段60にて、薬液付与手段53によって薬液が付与された後の積層連続シートS3に対してエンボスを付与する。なお、ここでいうエンボスとは、主に層間剥離を防止するための上記コンタクトエンボスCEとは異なる、嵩高さ、意匠性、表面性の改善のために紙面全体に付与されるエンボスを意味し、マイクロエンボス、マクロエンボス、デザインエンボスなどと称されるものである。
【0144】
前記エンボス付与手段60は、周面にエンボス付与凸部を有するエンボスロール61と、これと対となるニップロール62を有し、前記エンボスロール61とニップロール62との間に積層連続シートS3を通すことにより、上記エンボスロール周面のエンボスパターンが積層連続シートS3に転写されてエンボスが付与される。
【0145】
なお、エンボス付与手段60を設ける位置としては、図10のように重ね合わせ部51の後段であれば、薬液付与手段53の前であってもよい。但し、エンボスを付与した後に薬液を付与するとエンボスの形状が崩れやすいことから、好ましくは重ね合わせ部51の後段であって、薬液付与手段53の後段に設ける図9の態様が望ましい。
【0146】
他方、本発明における好適なエンボス付与手段60はスチールラバー方式とも称されるエンボスロール61が金属製であり、ニップロール62が少なくとも表面がゴム等の弾性部材で構成される弾性ニップロール62であるものである。かかるスチールラバー方式のエンボス手段とするとプライマシンX2の高速処理に適する。
【0147】
弾性ニップロール62は、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、40〜60度であるのが好ましい。ショア硬度が低すぎると、つまり弾性ロール表面がやわらかすぎると、シート又はシート地が破断するおそれがあり、プライマシンの高速運転を妨げるおそれが生ずる。他方、ショア硬度が高すぎると、つまり弾性ロール表面が硬すぎると、エンボスが入らなくなるおそれがある。
【0148】
積層連続シートにエンボスを付与するにあたってのニップ圧(エンボス圧、線圧とも言われる)は、5〜30kgf/cm、好ましくは10〜25kgf/cmとなるように行う。ニップ圧が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、エンボス圧が高すぎると、被加工衛生薄葉紙がちぎれてしまうおそれがある。
【0149】
本発明においては、エンボス柄、エンボス深さ、エンボス密度、エンボスを構成する個々の単位エンボスの形状、エンボス付与面積は特に限定されないが、紙面全体に、エンボス密度30〜100個/cm2、エンボス深さ0.2〜2.0mmで付与された所謂マイクロエンボスの形態、エンボス密度で0.1〜10個/cm2、エンボス深さ0.3〜2.5mmで図柄を描くように付与されたデザインエンボスが例示できる。特に好ましいのは前記マイクロエンボスである。
【0150】
ここで、本第2の実施形態におけるエンボス付与態様は、所謂シングルエンボスの態様である。すなわち、積層連続シートS3の一方面からのみエンボス凸部を押し当てる態様であり、エンボス付与後の積層連続シートS3は、一方面にエンボス付与凸部に対応するエンボス凹のみが形成され、反対面には前記エンボス凹部に対応するエンボス凸部のみが存在する態様となっている。シングルエンボスの態様では、比較的紙力が強い積層された状態の積層連続シートS3に対してエンボスを付与するためプライマシンX3を高速に運転する点で優れる。また、積層連続シートS3を構成する各一次連続シートS11,S12の積層一体化が高まる。
【0151】
このため、本第2の実施形態とする場合には、第1の実施の形態で述べたコンタクトエンボスを行なわないようにすることができる。この場合、ワインダーX3における生産速度を向上させることができる。
【0152】
『第3の実施形態:プライマシンでダブルエンボスを付与する形態』
次いで、本発明の第3の実施形態を図11を特に参照しながら説明する。なお、本形態はプライマシンX2において積層連続シートに所謂ダブルエンボスを付与する構成及びかかる構成を採ること関係する構成以外の他の構成については、上記第1の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。また、各エンボス付与手段60及びエンボスの構成、エンボス付与条件等は、上記第2の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。
【0153】
以下、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点につき詳述する。
図11に示す第3の実施形態にかかるプライマシンX2は、一次連続シートS1,S12を積層連続シートとする重ね合わせ部51、重ね合わせ部51で積層連続シートS2に対して薬液を付与する薬液付与手段53、薬液が付与された積層連続シートS3を薬液が付与された各連続シートS13、S14に分離するプライ離れ手段57、プライ離れ手段57によって分けられた各連続シートS13、S14に対して各々エンボスを付与するエンボス付与手段60,60、エンボス付与手段60,60でエンボスが付与された各連続シートS13,S14を再積層する再重ね合わせ部58(積層手段)がこの順に設けられており、薬液付与、各連続シートへのエンボス付与、実質的な積層がこの順で行なわれる。
【0154】
本形態においては、再重ね合わせ部58における再積層工程においては、各連続シートS13、S14が各エンボス付与手段60,60においてエンボスロールに接した面、すなわちエンボス凹が形成されている面同士が積層連続シートの外方となるようにし、エンボス凸面同士が対面するようにして積層するのが望ましい。この形態では、積層後に各連続シート間に空隙ができふっくらとした嵩高感のある積層連続シートが得られる利点がある。
【0155】
なお、本第3の実施形態としては、図12に示すようにプライ離手段57を薬液付与手段53の前段に位置させたプライマシンX2として、プライ離れ後の各連続シートS13,S14に各々薬液の付与とエンボスの付与を行なった後、再重ね合わせ部58で積層するようにしてもよい。この場合、薬液付与手段53においては各積層連続シートS13,S14に対して、後段の再重ね合わせ部58において再積層された後、積層連続シートの外方側の各面を構成する面に薬液を片面塗布するのが望ましい。片面付与とすることで薬液付与による紙力の低下を小さくすることができる。
【0156】
なお、図11、図12の例では、各エンボス付与手段60,60を設ける位置を薬液付与手段53の後段としたが、薬液付与手段53の前段にプライ離れ手段57及びエンボス手段60、60を配する態様としてもよい。また、一次連続シートを重ね合わせ部51で重ね合わせることなく薬液付与、エンボス付与を行ない、再重ね合わせ部58を最初の積層工程として薬液が付与された積層連続シートとしてもよい。
【0157】
但し、エンボスを付与した後に薬液を付与するとエンボスの形状が崩れやすいことから、本第3の形態におけるダブルエンボス付与態様は、エンボス付与手段60は、図11、図12に示されるように、好ましくは再重ね合わせ部58の前段であって、薬液付与手段53の後段に設けるのが望ましい。
【0158】
本第3の実施形態では、プライマシン、ワインダーにおいてコンタクトエンボスを付与するのが望ましい。
【0159】
なお、本第3の実施形態では、プライマシンX2において実質的な積層が行なわれる再重ね合わせ部58が積層手段を意味することになる。
【0160】
『第4の実施形態:ワインダーでシングルエンボスを付与する形態』
次いで、本発明の第4の実施形態を図13を特に参照しながら説明する。なお、本形態はワインダーX3にて所謂シングルエンボスを付与する形態である。かかるワインダーX3にてシングルエンボスを付与する構成及びかかる構成を採ることに関係する構成以外の他の構成については上記第1の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。また、各エンボス付与手段及びエンボスの構成、エンボス付与条件等は、上記第2の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。
【0161】
本第4の実施の形態では、ワインダーX3にて薬液が付与された二次連続シートS4を巻きだした後、ミシン目線付与手段70の前段においてエンボスを付与する。
【0162】
本第4の実施形態では、薬液が付与された後、一度巻取った二次原反ロールから巻きだした二次連続シートS4に対してエンボスを付与するため二次連続シートS4内において薬液が十分に拡散されていることから、速度を向上でき、ミシン目線付与手段における断紙のおそれも小さく安定した操業ができ、さらにエンボス付与手段においてしっかりとしたエンボスを付与することができるようになる。
【0163】
『第5の実施形態:ワインダーでダブルエンボスを付与する形態』
次いで、本発明の第5の実施形態を図14を特に参照しながら説明する。なお、本形態はワインダーX3にて所謂ダブルエンボスを付与する形態である。かかるワインダーにてダブルエンボスを付与する構成及びかかる構成を採ることに関係する構成以外の他の構成については上記第1の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。また、各エンボス付与手段及びエンボスの構成、エンボス付与条件等は、上記第2の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。
【0164】
本第5の実施の形態のワインダーX3は、ミシン目線付与手段70の前段に、プライ離れ手段57、エンボス付与手段60,60、再重ね合わせ部58がこの順で設けられており、薬液が付与された二次連続シートS4を巻きだした後、一度プライ離れ手段57によって、二次連続シートS4を複数の連続シートS13,S14にプライ剥離し、その各連続シートに対してミシン目線付与手段70の前段においてエンボス付与手段60,60にて各連続シートに対してエンボスを付与し、その後に再重ね合わせ部58にて再度各連続シートを再積層する。
【0165】
本第5の実施形態では、第3の実施形態と同様に、一度巻き取った二次原反ロールから巻きだした二次連続シートS4に対してエンボスを付与するため二次連続シートS4(S13,S14)内において薬液が十分に拡散されていることから、速度を向上でき、ミシン目線付与手段における断紙のおそれも小さく安定した操業ができ、さらにエンボス付与手段においてしっかりとしたエンボスを付与することができるようになる。
【0166】
なお、本形態では再重ね合わせ部58の後段かつミシン目線付与手段70の前段にコンタクトエンボス手段54を設け、この段階でコンタクトエンボスを付与してプライ離れを防止するのが望ましい。
【0167】
『第6の実施形態:ワインダーでダブルエンボスを付与する形態』
次いで、本発明の第6の実施形態を図30、図31を特に参照しながら説明する。本形態はプライマシンX2において積層手段を機能させずに単層の連続シートを巻取った二次原反ロールを製造し、ワインダーX3にかかる単層の原反ロールを巻取った複数の二次原反ロールをセットして、かかるワインダーにて各二次原反ロールから巻きだした二次連続シートの積層を行なう形態である。プライマシンX2において積層手段を機能させないようにするには、一つの一次原反ロールから連続シートを巻き出すようにすればよい。積層しない点以外の構成については第1の実施の形態と同様であり、上記説明の通りである。
【0168】
図示の形態では、ワインダーX3にエンボス付与手段60、積層手段58、ミシン目線付与手段がこの順で設けられており、ワインダーにて各二次原反ロールからプライマシンX2にて薬液が付与された単層の二次連続シートを巻き出したのちエンボス付与手段にて各二次連続シートS4、S4にエンボスを付与し、積層する。
【0169】
すなわち、図示の形態は、第5の実施形態においてプライマシンX2において単層の二次連続シートを形成することとし、さらにワインダーX3に複数の二次原反ロールをセットすることとし、さらにプライ剥離部57を設けないようにしたものである。この図示の第6の実施形態も第5の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0170】
なお、本形態では積層手段(重ね合わせ部)58の後段かつミシン目線付与手段70の前段にコンタクトエンボス手段154を設け、この段階でコンタクトエンボスを付与してプライ離れを防止するのが望ましい。
【0171】
他方、本第6の実施形態の他の例として、図示はしないが、エンボス付与手段の前段に重ね合わせ部を設け、積層連続シートに対してエンボス付与手段でシングルエンボスを付与するようにしてもよい。さらに、他の形態としてエンボスを付与しない形態も提案される。
【0172】
なお、ワインダーにおける積層手段58の具体的構成も、プライマシンX2における積層手段の具体的構成も大きく差違はない。上記第1の実施形態のプライマシンX2において説明したものと同様の構成を採ることができる。また、各エンボス付与手段及びエンボスの構成、エンボス付与条件等は、上記第2の実施形態と同様であり、上記説明の通りである。
【0173】
『プライマシンにおける薬液付与手段の具体例』
第1の実施形態から第6の実施形態に共通するプライマシンX2における薬液付与手段(薬液付与工程)53の具体例について以下詳述する。
【0174】
〔フレキソ印刷〕
薬液付与手段53としてフレキソ印刷機を用いた例を図15〜21に示す。フレキソ印刷は樹脂性の弾力性がある刷版を用いるため積層連続シートS2或いは各連続シートS13,S14(以下、単位積層連続シートS2等という)の表面にクレープの多少の凹凸があっても印圧で調整可でありムラのない塗工が可能であり、特に500m/分以上、更に700m/分の高速塗工を行なっても薬液付与後の積層連続シート等S3にシワが入り難くなる。また、一つのロールで幅広い薬液の粘度に対応でき、管理、設備メンテナンスの点で利点があり、生産性向上の点でも優れる。
【0175】
ここで、プライマシンX2において上記高速に積層連続シートS2等に薬液を塗工する場合、フレキソ刷版ロールの線数は5〜60線、好ましくは10〜40線、特に好ましくは15〜35線とする。線数が5線未満であると塗工ムラが多く生じてしまい、他方、線数が60線超過であると紙粉が詰まり易くなる。
【0176】
アニロックスロールの線数は、10〜300線とし、好ましくは25〜200線、特に好ましくは50〜100線とする。線数が10線未満であると高速塗工時に塗工ムラが多く生じてしまい、他方、線数が300線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールのセル容量は、10〜100ccとし、好ましくは15〜70cc、特に好ましくは30〜60ccとする。セル容量が10cc未満であると所望の塗工量が得られず、他方、セル容量が100cc超過であると薬液の飛散量が多くなってしまう。
【0177】
ここで、本発明では、薬液付与工程において安定的に薬液の付与できることが重要であり、操業安定性に関わる上記刷版ロール及びアニロックロールの線数は重要である。なお、貯留タンクに貯留した薬液をアニロックスロールへ薬液を移行させる方式としては、ドクターチャンバー形式、タッチロール形式など適宜の方法が採られる。これらのフレキソ印刷の各方式を採用した形態例を以下、さらに詳述する。
【0178】
(ドクターチャンバー方式の実施形態例)
フキレソ印刷におけるドクターチャンバー形式を本発明に適用した形態例を、特に図15〜図20を参照しながら説明する。
【0179】
本例では、積層連続シートS2の表裏面或いは各連続シートS13、S14に薬液を塗工すべく二つのフレキソ印刷機91A,91Bを用いている。
【0180】
各印刷機91A,91Bにおいては、薬液の入っているドクターチャンバー92A,92Bが回転可能なアニロックスロール93A,93Bと対向して配置されおり、ドクターチャンバー92A,92Bからアニロックスロール93A,93Bに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール93A,93Bと接し且つ積層連続シートS2等の一面とも接する刷版ロール94A,94Bが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール93A,93Bから刷版ロール94A,94Bに薬液を受け渡すようになっている。そして、積層連続シートS2等を挟んでこの刷版ロール94A,94Bと対向する弾性ロール95A,95Bとで積層連続シートS2等に圧力を塗工しつつ、刷版ロール95A,95Bから積層連続シートS2等に薬液を塗工する。
【0181】
各ドクターチャンバー92A,92Bは、供給ホース96及び返送ホース97を介して薬液Lを貯留する貯留タンク98と連結されており、薬液循環経路の一部を構成する(以下、各印刷機91A,91Bについて同様の構成を説明するについては、ドクターチャンバー91A(91B)のように一方を括弧書きで表記する場合がある)。なお、貯留タンク98は、各ドクターチャンバーで92A,92B共有することができる。図示はしないが、薬液循環経路を循環する薬液中に含まれる紙粉やエアーのろ過装置、ドクターチャンバー92A、92B等の塗工装置内で薬液の温度を監視・コントロールし、薬液粘度を安定させるための中間タンクや配管ヒーターを設置することができる。
【0182】
貯留タンク98からドクターチャンバー91A(91B)への薬液供給は、供給ポンプ99によって供給ホース96を介して加圧供給で行われ、薬液の押出量(流量)は、調整弁100の開閉により調整される。また、ドクターチャンバー91A(91B)から、貯留タンク98への薬液の返送は、吸引ポンプ101によって返送ホース97を介して行なわれる。
【0183】
また、ドクターチャンバー91A(91B)は、薬液が貯留されるチャンバー部102及びブレード103,104を具備する。チャンバー部102はアニロックスロール93A(93B)側の端部が開口しているとともに供給ホース96及び返送ホース97とが接続部105,106を介して連結されており、各ホース96,97を介して行なわれる薬液循環の際に薬液Lを貯留してアニロックスロール93A(93B)に供給する。他方、ブレード103,104は、アニロックスロール93A(93B)と当接するように設けられ、アニロックスロール93A(93B)に押しつけた状態で薬液Lの絞りを行い、アニロックスロール93A(93B)への薬液の供給量を一定とする。
【0184】
他方、図17に示すように、薬液Lの返送路となる返送ホース97とチャンバー部102との接続部106の上面には、所定径の開口部分である孔部106aが形成されており、この孔部106aにより接続部内の薬液Lが外気接触し、吸引ポンプ101による薬液Lの吸引を行っても、薬液Lが外気接触して、チャンバー部102内の内圧を外気圧に近づけることができるように構成されている。これによってドクターチャンバー内の内圧変動が抑えられている。なお、当該孔部106aは、チャンバー部102の内圧変動が抑えられればよいため、例えば、チャンバー部102の上面に連通するように形成してもよい。孔部106aは、チャンバー部102の薬液Lの液面より上方であれば、側面に設けてもよい。
【0185】
また、孔部106aにはチャンバー部102への薬液供給過多を判別するための判別手段が設けられる。判別手段は、例えば、孔部106a側を下端として、上方に延伸した透明又は半透明のチューブ状の部材106bが例示でき、薬液Lを循環する過程で、薬液Lが孔部を介して当該チューブ106b内に流入するか否かを目視により確認することができる。チューブ106b内への流入が確認された場合は、チャンバー部102に貯留される薬液量が過多になっている(アニロックスロール91A(91B)に対して薬液Lが過供給状態となっている)ことが把握できる。したがって、上記過多の状態を目視で確認した使用者は、例えば、調整弁100操作して薬液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することができる。なお、チューブ106bは、内部が空洞で上端側が外気に接触しているため、上記孔部106aの作用を相殺してしまうことはない。
【0186】
なお、チューブ106bの上端(自由端)を下向きにして設けることで、孔部106bへの紙粉等の異物の混入を防止することができる。また、チューブ106bの上端或いは孔部にエアーフィルタを設置して紙粉等の異物の混入を防止するように構成してもよい。
【0187】
なお、薬液Lのチャンバー部102への過供給状態は、これを自動的に判別し、使用者に判別結果を報知するように構成してもよい。
【0188】
この例は、図18に示すように孔部106aの周縁を上方向に延出させた円筒状部106cにセンサ106dを取付け、このセンサ106dからの信号を受けて報知部から判別結果を報知する。
【0189】
センサ106dは、例えば、被検知体に向けて発光する発光素子(図示省略)と、被検知体からの反射光を受光する受光素子(図示省略)と、を含み、受光素子からの反射光の受光量に基づいて、円筒状部106cに流入する薬液Lの高さが、当該センサ06dの設けられた高さ位置(図18に示すy1)に達したか否かを検知する。
【0190】
報知部106eは、例えば、スピーカ等であり、センサ106dにより、円筒状部106cに流入する薬液Lの高さが、上記センサ106dの設けられた高さ位置に達したと検知された場合に、音声により使用者への報知を行う。
【0191】
本例では、過多の状態に至った場合には、使用者は報知部106eによりその旨を知ることができ、調整弁100を操作して薬液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
【0192】
さらに、図19に示すように、薬液Lのチャンバー部102への過供給状態の判別は、自動判別機能に加えて、円筒状部106cにニードルバルブ及びオリフィスを備えるニードルバルブ構造の調整部106fを設けて、孔部106bの外気と接触する部分の開口の量を調整するように構成することができる。このように調整部106fにより、孔部106bの実質的な開口量を調整することにで、チャンバー部102内の内圧変動量に応じて、孔部106bの開口量を適宜に調整することができる。従って、センサ103eにより、円筒状部106cに流入する薬液Lの高さが、検出位置に達したときに、薬液Lの押出量の調整で対処するだけでなく、調整部106fによる孔部106bの実質的な開口量の調整によって、孔部106bのエアー抜きの能力を高めて(外気との接触面積を拡張して)、チャンバー部102内の内圧変動を抑える対処が可能となる。これにより、内圧変動によるチャンバー部102内からの薬液Lの噴出や、アニロックスロール93A(93B)上の薬液Lのドクターチャンバー92A(92B)側への吸込み等も好適に防止され、薬液Lの循環が促進される。
【0193】
他方、ドクターチャンバー方式のフレキソ印刷機は、アニロックスロール93A(93B)は、ドクターチャンバー92A(92B)のブレード103,104と当接するように設けられ、ドクターチャンバー92A(92B)のチャンバー部102の開口より供給される薬液Lが周面に吸着されるように構成されている。
【0194】
刷版ロール94A(94B)は、周面がゴム材などの樹脂製材からなる円柱状をなし、左右端部の周面(図4に示す点P1,点P2)がアニロックスロール93A(93B)及び弾性ロール95A(95B)(に巻きつけられる積層連続シートS2等)の周面に当接するように設けられ、回動可能に構成されている。
【0195】
刷版ロール94A(94B)は、弾性ロール95A(95B)がr1方向に回動することでr2方向に回動するとともに、右端で当接するアニロックスロール93A(93B)をr1方向に回動させる。刷版ロール94A(94B)は、アニロックスロール93A(93B)の周面に吸着された薬液Lを点P2にて取得し、r2方向への回動により点P1まで搬送して積層連続シートS2等に転写する。アニロックスロール93A(93B)により吸着された薬液Lがアニロックスロール93A(93B)の周面上に層状に不均一に残ってしまう場合でも、刷版ロール94A(94B)の周面に移送させることで、積層連続シートS2に薬液Lを均一に転写することができる。
【0196】
弾性ロール95A(95B)は、刷版ロール94A(94B)に隣接して設けられ、図示しないモータ等より駆動力が塗工されることで回動する円柱状の部材であり、周面で積層連続シートS2を把持できるように構成されている。そのため、弾性ロール95A(95B)は、r1方向に回動することにより、供給される積層連続シートS2等を周面に巻き付けるとともに、刷版ロール94A(94B)及びアニロックスロール93A(93B)を回動させ、点P1位置まで搬送した時点で刷版ロール94A(94B)より薬液Lを転写させることができる。
【0197】
なお、弾性ロール95A(95B)の回動の向きは、図16においてr1方向としたが、r2方向に回動するように構成しても勿論良い。この場合、アニロックスロール93A(93B)及び刷版ロール94A(94B)は図16とは逆方向(つまり、アニロックスロール93A(93B):r2方向、刷版ロール94A(94B):r1方向)に回動する。
【0198】
ここで、図16に示す例では、チャンバー部102に供給ホース96及び返送ホース97が各一つのみ繋がる構成であるが、チャンバー部102内における幅方向の薬液Lを均質にすべく、好ましく図20(A)〜(C)に示す構造を例示できる。その図20(A)は、幅広に形成されて回転軸R0廻りに回転するアニロックスロール93A(93B)に沿って幅広の長方形状に外枠が形成されたドクターチャンバー92A(92B)の幅方向Dの左右端付近の箇所に、それぞれ供給ホース96が連結され、中央部に返送ホース97に繋がる構造例である。図20(B)は、幅方向Dに3つの供給ホース96と2つの返送ホース97とが交互に等間隔で繋がる構造例である。図20(C)は、チャンバー部102の上側寄りの複数箇所にそれぞれ供給ホース96が繋がり、下側寄りの複数箇所にそれぞれ返送ホース97繋がる構造例である。
【0199】
(2ロール転写方式の実施形態例)
次いで、フキレソ印刷における2ロール転写形式を適用した形態例を図21を参照しながら説明する。本形態例でも、積層連続シートS2等の表裏面に薬液Lを塗工すべく二つのフレキソ印刷機91C,91Dを用いている。各印刷機91C,91Dにおいては、薬液Lの入っている薬液タンク98C,98Dに回転可能な絞りロールでもあるディップロール92C,92Dが浸され、このディップロール92C,92Dが薬液タンク98C,98D外で回転可能なアニロックスロール93C,93Dに接しており、適当に薬液量が調整され量の薬液をアニロックスロール93C,93Dに受け渡す。薬液Lをアニロックスロール93C,93Dに受け渡すに、ディップロール92C,92Dを介することから2ロール転写方式と称される。ここで、ディップロール92C,92Dは薬液タンク98C,98Dから薬液Lを取り上げるとともに過剰な薬液をそのままアニロックスロール93C,93Dに受け渡さないようにする調整する役割を果たす。
【0200】
アニロックスロール93C,93Dは刷版ロール94C,94Dに接しており、ディップロール92C,92Dから転写された薬液Lを刷版ロール94C,94Dに受け渡す。刷版ロール94C,94Dは回転可能に設置され、アニロックスロール93C,93Dと接しているとともに、積層連続シートS2等の一面とも接しており、積層連続シートS2等を挟んで対向する弾性ロール95C,95Dとで積層連続シートS2等に圧力を塗工しつつ積層連続シートS2等に薬液Lを塗工する。
【0201】
この2ロール転写方式においては、アニロックスロール93C、93Dに対してドクターブレードを設けても良く、この場合、薬液Lを均一に塗工できる、アニロックスロール93C、93Dから薬液Lが飛散してしまうことを防止できるなどのメリットを享受できるが、この反面、高速塗工ではドクターブレードを手入れしたり交換したりする頻度が高まるというデメリットはある。
【0202】
なお、薬液タンク98C,98Dには、図示はしないが、薬液中に含まれる紙粉やエアーのろ過装置、薬液の温度を監視・コントロールし、薬液粘度を安定させるための配管ヒーター、積層連続シートS2等の幅方向の水分率で塗工量を管理するための赤外線の検査機等を用いた紙幅方向の水分量とバラツキを監視するセンサ等を設置することができる。
【0203】
(1ロール転写形式の実施形態)
次いで、フキレソ印刷における1ロール転写形式を本発明に適用した場合の形態例を説明する。この例は、前述の2ロール転写形式からディップロールを省略したものである(図面は省略する)。この場合、アニロックスロールが、それぞれ薬液タンクに浸されつつ回転可能に設置される。また、これらのアニロックスロールに対しては、アニロックスロール表面の薬液を掻き取るドクターブレードを設置する。このようなフレキソ1ロール転写形式は、メンテナンスが比較的容易であるという利点や、ブレードの摩耗や薬液中の紙粉等の異物の混入状態を容易に目視できるという利点を有している。
【0204】
〔スプレー塗工〕
薬液付与工程(薬液付与手段)53としてスプレー塗工装置110,110を用いた例を図22〜26を参照しながら説明する。本形態例では、図22に示すように、積層連続シートS2等の表裏面に薬液が塗工されるようにスプレー塗工装置110,110を設けることができる。このようにするには、図10に示されるように側方から積層連続シートS2等の表裏面に噴霧可能にペーパーランを設計する形態、積層連続シートS2等の表裏面に上下から噴霧する形態、上方から表裏面に噴霧するようにペーパーランを設計する形態が例示できる。もちろん、積層連続シートS2等の積層を一度剥離させて、各連続シートにスプレーした後、再度積層する形態等を採ることができる。
【0205】
なお、スプレー塗工では、周囲薬液が飛散しやすいことから、他の工程への影響を防止すべく、薬液付与手段53を被覆するフード53Fを設けるのがよい。
【0206】
ここで、スプレー塗工は、具体的にはノズル式噴霧方式、ローターダンプニング噴霧方式等を採用することができる。ノズル式噴霧方式における噴霧用ノズルの型式としては、環状に噴霧する空円錐型ノズル、円形状に噴霧する充円錐型ノズル、正方形状に噴霧する充角錐型、充矩型ノズル、扇型ノズル等が挙げられ、薬液が二次連続シートの幅方向に対して均一に噴霧されるように、ノズル径、ノズル数、ノズル配列パターン、ノズル配置数、あるいは噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、および噴霧液の濃度、粘度などを適宜選択して使用することができる。
【0207】
また、ノズル式噴霧装置において霧化する方法については、一流体方式、または二流体方式の2種類の方式を選択して使用することができる。このうち一流体噴霧方式は、噴霧する薬液に対して圧搾空気を用いて直接圧力をかけてノズルから霧滴噴射する、または噴出口付近のノズル側面に開けた微細な穴からノズル内に空気を吸引して霧滴噴射する方式である。また、二流体噴霧方式は、ノズル内部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する内部混合型、ノズル外部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する外部混合型、微霧化した霧滴粒子を相互に衝突させて、霧滴粒子をさらに均質化・微粒子化する衝突型等の方式が挙げられる。
【0208】
他方、ローターダンプニング噴霧方式については、高速回転する円盤上に噴霧する液を送り出し、円盤の遠心力によって液を微霧滴化するのであり、円盤の回転数変更によって霧滴粒子径の制御を行い、円盤上への送液量変更によって噴霧液量(塗工量)の制御を行なう。ものである。ローターダンプニング塗工装置は、少ない量の噴霧液量を霧滴の飛散を抑えつつ、顔料塗被紙表面に均一に塗工することができ、かつ噴霧速度や霧の粒子径等の調整が容易である利点がある。
【0209】
薬液を積層連続シートS2等の表面に均一に噴霧塗工するためには、霧化された薬液の霧滴粒子径はできる限り微小であることが好ましい。しかしながら、霧滴が細かくなりすぎると噴霧した空気の跳ね返りや積層連続シートS2等の表面に随伴する空気などによって霧滴が押し流され、霧滴が積層連続シートS2等の表面に付着しにくくなる。このため、噴霧塗工方式においては噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、噴霧速度を、加えて二流体方式の場合には、噴霧用の薬液と圧搾空気の混合比、および薬液の濃度や粘度等を適宜調節し、塗工条件に適した粒子径に調節することができ、さらに噴霧時に随伴空気の影響が大きい場合は、随伴空気を除去するための吸引装置や邪魔板(整流板)、上述のフード等の設置、および噴霧ノズル先端に高電圧を加えて霧滴粒子を帯電させて、顔料塗被紙への霧適の付着性を向上させる荷電電極(静電噴霧方式)などを追加してもよい。
【0210】
二次連続シート表面に塗工されずにミストとして浮遊している霧滴粒子は、吸引・回収して再度噴霧することができる。
【0211】
図24には、ノズル式噴霧方式、特に二流体方式の薬液噴霧装置110を示した。この装置110は、中心に薬液通路110Aが、その周囲にエアー通路110Bが形成され、薬液通路110A先端から噴出された薬液Lを、エアー通路110Bから吐出されたエアーにより微霧化するものであり、ほぼ円錐形状に薬液Lを噴霧するようにしたものである。110Cは外部の保護ケーシングであり、紙粉などからノズルを保護すると共に、必要によりパージエアー通路を通すエアーによりノズルの清掃を行なうことができるようにしたものである。この種の薬液噴霧装置110は積層連続シートS2の幅方向に一つ又は複数間隔を置いて設けることができる。
【0212】
前述のように噴霧した薬液の跳ね返りや積層連続シート表面に随伴する空気などによって霧滴が押し流され、霧滴が積層連続シートS2等表面に付着しにくくなるため、図25に示すように、一流体方式又は二流体方式の薬液噴霧手段(噴霧ノズル)の周囲から、ケーシング153Eに形成したエアー供給路から噴出させるエアー110Gにより、薬液噴霧手段(噴霧ノズル)からの噴霧薬液を取り囲むようにして薬液が積層連続シートS2等に好適に塗工することができる。
【0213】
図26は、ローターダンプニング噴霧装置120の例である。ローターダンプニング噴霧装置120は、噴射部120Cを有する流体室120Bが高速に回転され、その流体室120B内に薬液Lを送り出して、遠心力によって流体室内の薬液を噴射部120Cから放出させて微霧滴化する。前記流体室120Bの回転数変更によって霧滴粒子径の制御を行い、流体室への送液量変更によって噴霧液量(付与量)の制御を行なう。ローターダンプニング噴霧装置は、少ない量の噴霧液量を霧滴の飛散を抑えつつ、シート表面に均一に塗布することができ、かつ噴霧速度や霧の粒子径等の調整が容易である利点がある。
【0214】
図示例の本形態体のローターダンプニング装置120では、好ましく噴霧口120Dの開閉を行なうシャッター120Eが設けられており、このシャッター120Eの開閉により噴霧の有無の制御をすることが可能となっている。
【0215】
〔インクジェット印刷〕
薬液塗付与工程(薬液付与手段)53としてインクジェット印刷機130を用いた例を図27〜28を参照しながら説明する。
【0216】
本実形態のインクジェット印刷機130は、薬液Lの入っているタンク(図示されない)が供給路131を介してインクジェットヘッド132に接続された構造とされ、前記タンクから供給ポンプ(図示しない)によりインクジェットヘッド132に水系薬液が供給されるようになっている。
【0217】
前記インクジェットヘッド132の被塗布材である積層連続シートS2等と対向する部分には、この積層連続シートS2等の幅分に少なくとも対応する形で、複数のノズル孔134を直線的に並んで設けているノズル板133が配置されている。
【0218】
ここで前記ノズル孔134から積層連続シートS2等までの間隔は1〜10mm、より好ましくは1〜3mmとするのが望ましい。インクジェット印刷方式では、各ノズル孔134から噴射される液滴が極少量であるため周辺気流の環境を受けやすいが、1〜10mm、より好ましくは1〜3mmとすれば、その影響は格段に小さい。一般的なフルカラープリンターの紙とノズルの間隔は1〜1.5mmである。人の目は輝度の差異やグラディエーションの表現に敏感であるため、4〜6色の減色混合による十分な色彩表現を得るのにはドット位置の精度は数μm以内を求められている。これに対し本発明の水系薬液付与ではドット位置の精度は100μm以内で十分均一な塗布品質が得られる。
【0219】
そして、このインクジェットヘッド132内には、噴射ユニット135が各ノズル孔に対応して複数配置され、各噴射ユニット135は、ノズル孔134から射出するための水系薬液を一時的に貯める流体室136と、この流体室136を挟んでノズル板133と対向する部分に配置された振動板137とを有し、振動板137に当接して流体室136外に配置され且つピエゾ素子等により形成される圧電素子(図示されない)とを有している。
【0220】
前記圧電素子には、配線を介して制御装置138が接続されていて、この制御装置138から所定の間隔で圧電素子に電圧が付与されるようになっている。
【0221】
かかる構造により、タンクからインクジェットヘッド132に供給された水系薬液は、各ノズル孔134に対応して存在する流体室136内に送り込まれるようになっていて、必要に応じて制御装置138が圧電素子に電圧を加えることで、各ノズル孔134から一斉に水系薬液が噴射されることになり、これに伴い、積層連続シートS2等の一方の面における幅分全体に亘って薬液が付与されことになる。
【0222】
また、本形態のインクジェットヘッド132内に圧空135が送気するように構成され、前記噴射ユニット135から噴射された液滴がノズル孔134から圧空にのってシートS3に向かうように構成され、紙粉がノズル孔に詰まるのを防止するように構成されている。
【0223】
尚、上記実施形態では、インクジェットの形式として、オンデマンド方式でピエゾ素子を採用した構造を説明したが、サーマルジェット型を採用しても良い。更に、オンデマンド方式の替りに連続して噴射可能なコンティニュアス方式の噴射装置を採用しても良い。ただし、好ましいのは、電子制御によるオンデマンド方式であり、これによって幅方向、流れ方向における塗布量変更が容易となる。
【0224】
ここで、本形態においてインクジェット印刷方式を採用して薬液付与する場合のより好ましい条件は、ノズル孔からのインク液滴の粒子速度は5〜20m/秒程度、一つのインク液滴の容量は5〜50pl/個である。
【0225】
さらに、インク液滴は流れ方向、幅方向に20〜200μm間隔で液滴を塗布するのが望ましい。これにより塗布量が増減しても実質的に均一な塗布が可能である。幅方向のノズル間隔は128〜1080dpi(5〜42ライン/mm、128dpi×1段〜360dpi×3段式)とする。
【0226】
一例を示せば、加工速度が分速250mの場合、インク液滴の粒子速度10m/秒、一つのインク液滴容量10pl/個、幅方向のノズル間隔1080dpiとして、インクジェット噴射頻度は5×104ドット/秒/ライン程度である。
【0227】
〔カーテン塗工〕
薬液付与工程(薬液付与手段)53としてカーテンコーター150を用いた例を説明する。カーテンコーター150としては、例えば、図29に示される従来既知のカーテンコーターが使用できる。なお、カーテンコーターは、薬液の膜を垂下させることから、二次連続シート等S2の表裏面に塗工する場合には二次連続シートS2等の表裏面が上方に位置するようにペーパーランを設計して各面に塗工する。
【0228】
図29に示されるカーテンコーター150においては、予め調製された薬液Lは、塗液貯蔵タンクより給液ポンプ等によってコーターヘッド151へ送られる。前記コーターヘッド151の内部は、マニホールド151aおよびスリット151bからなり、それぞれ高精度の仕上げが施されている。供給された疑似接着剤は、前記マニホールド151aに満たされ、更にスリット151bに送られるときに通過する狭い間隙において、給液ポンプの送液による動圧の影響が軽減され、幅方向における圧力分布が均一化され、リップ152より流出し、垂直なカーテン膜153Lを形成する。
【0229】
幅方向でプロファイルが均一となった垂直カーテン膜153Lは、連続走行している二次連続シートS2等と接触し、二次連続シートS2等に塗工される。ここでエッジガイド154はコーターヘッド151の幅を超えず、更に二次連続シートS2等の幅を超えて設けられ、垂直カーテン膜は二次連続シートS2の等幅を超えて形成される。垂直カーテン膜153Lが二次連続シートS2等の幅を超えて形成されているのは、垂直カーテン膜153Lの両端部における薬液Lの厚塗りを防止するためである。二次連続シートS2等の幅を超えて流下する薬液Lは、受液槽155に回収され、塗液貯蔵タンクに戻された後再び塗工される。また、二次連続シートS2等が切断され塗工が中断された場合も、薬液Lは受液槽155に回収されるように構成されている。
【0230】
連続走行している二次連続シートS2等と垂直カーテン膜153Lとの接触部(以後、「塗工部」という。)には二次連想シートS2等に同伴する空気流を遮蔽し、カーテン周辺の空気の回流などで垂直カーテン膜153Lが乱れることなく二次連続シートS2等に達するようにするため遮風板156が設けられている。また、二次連続シートS2等の搬送方向は、塗工部の直前でロール157により方向転換することにより、二次連続シートS2等に同伴する空気の塗工部への影響を最小限にとどめるように構成されている。なお、安定した状態で塗工するためには、二次連続シートS2等からコーターヘッド151下部の流出部までの高さがある程度必要とされるが、安定に適した高さは60〜300mm、好ましくは100〜250mm、更に好ましくは120〜180mmである。
【符号の説明】
【0231】
X1…抄紙設備、JR…一次原反ロール(ジャンボロール)、W…湿紙、S1…乾燥原紙(一次連続シート)、31…ヘッドボックス、32…ワイヤーパート、32w…ワイヤ、333…プレスパート、33F…フェルト、34,35…脱水ロール、36…ヤンキードライヤー、37…ドクターブレード、38…巻き取り手段、39…ワインディングドラム。
X2…プライマシン、R…薬液が付与された二次原反ロール、S11,S12,S13…一次連続シート、S2,S3…積層連続シート、S4…二次連続シート、51…重ね合わせ部(積層手段)、53…薬液付与手段(薬液付与工程)、53A,53B…薬液付与装置、56…巻き取り手段、56A,56B…ワインディングドラム、52…カレンダー部(平滑化工程)、55…スリット手段、58…再重ね合わせ部(積層手段)。
X3…ワインダー、10…トイレットロール、10R…ログ、11…紙管、11L…長尺紙管、12…紙管原紙、12A…紙管原反ロール、13…糊付け手段、14…コアワインダー、15…コアシャフト、16…スリッター手段、54…コンタクトエンボス付与手段(コンタクトエンボス工程)、70…ミシン目線付与手段、71…パーフォレーションロール、72…受けロール、75…再巻き取り手段、76…丸刃、L1…トイレットロール幅、X4…ログアキュームレーター、X5…ログカッター。
S…トイレットロール製品、20…外装フィルム、10…トイレットロール、S5…トイレットペーパー、20…外装(包装)フィルム、25…持ち手、
60…エンボス付与手段、61…エンボスロール、62…ニップロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法であって、
抄紙設備により抄造され巻き取られた一次原反ロールからプライマシンを用いて連続的にトイレットロール製品用の二次原反ロールを製造することとし、
そのプライマシンが、複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層手段と、
前記積層手段の後段にあって連続シートに対して薬液を塗布する薬液付与手段と、
薬液が塗布された積層連続シートを巻き取ってトイレットロールの複数倍幅以上の二次原反ロールを形成する巻き取り手段と、が組み込まれたものであり、
前記プライマシンにより製造された薬液が塗布されたトイレットロール製品用の二次原反ロールを、ワインダーの原反ロール支持部にセットして、前記ワインダーにおいて、二次原反ロールから薬液が付与された二次連続シートを巻き出し、その二次連続シートに対して流れ方向に所定間隔で二次連続シートの幅方向に沿ってミシン目線を形成し、その後にミシン目線が形成された二次連続シートをトイレットロールの巻き径となるように巻き直して、トイレットロール用のログを製造し、
前記ワインダーにて製造されたログをログカッターに移送して、前記ログカッターにてトイレットロールの幅となるように裁断して個々のトイレットロールとし、
そのトイレットロールを包装設備にて、単数又は複数個を包装袋に収納してトイレットロール製品を得る、
ことを特徴とする、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項2】
前記プライマシンは、エンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、薬液付与後又は薬液付与前の積層連続シートに対してシングルエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項3】
前記プライマシンは、積層手段の前段にエンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、各一次連続シートに対してエンボスを付与した後、エンボスが付与された各一次連続シートを積層手段で積層する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項4】
前記プライマシンは、重ね合わせ部、プライ剥離手段、エンボス付与手段、積層手段である再重ね合わせ部をこの順で有し、
各一次連続シートを重ね合わせ部で一時的に積層した後、前記プライ剥離手段で積層連続シートを各連続シートにプライ剥離し、そのプライ剥離された連続シートに対して、エンボス付与手段でエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項5】
前記ワインダーは、エンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、二次原反ロールから巻き出された薬液が付与された二次連続シートに対して積層された状態でシングルエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項6】
前記プライマシンは、前記薬液付与手段と巻き取り手段との間にスリット手段を有し、
前記スリット手段にて前記薬液が塗布された二次原反ロールをトイレットロールの複数倍幅以上にスリットした後、前記巻き取り手段においてスリットされた複数倍幅以上の積層連続シートを同軸で巻取る、請求項1記載の薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項7】
前記プライマシンは、前記積層手段の後段に積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス手段を有し、
そのコンタクトエンボス手段において、トイレットロールの幅に対応するコンタクトエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項8】
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段にエンボス付与手段を有し、前記エンボス付与手段において、二次原反ロールから巻き出された薬液が付与された二次連続シートに対して積層された状態でシングルエンボスを付与する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項9】
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段にプライ剥離手段、エンボス付与手段、再重ね合わせ部をこの順で有し、二次原反ロールから巻き出された薬液が付与された二次連続シートを前記プライ剥離手段で各連続シートにプライ剥離した後、そのプライ剥離された連続シートに対して、エンボス付与手段でエンボスを付与し、再重ね合わせ部で再度積層する、請求項1記載の薬液が付与されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項10】
前記プライマシンは、前記再重ね合わせ部の後段に積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス手段を有し、
そのコンタクトエンボス手段において、トイレットロールの幅に対応するコンタクトエンボスを付与する、請求項4に記載の、薬液が塗布されたトイレットペーパー製品の製造方法。
【請求項11】
薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法であって、
抄紙設備により抄造され巻き取られた一次原反ロールからプライマシンを用いて連続的にトイレットロール製品用の二次原反ロールを製造することとし、
前記プライマシンとして;
複数の一次原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層手段と、
前記積層手段の後段にあって連続シートに対して薬液を塗布する薬液付与手段と、
薬液が塗布された連続シートを巻き取ってトイレットロールの複数倍幅以上の二次原反ロールを形成する巻き取り手段と、がシートの流れ方向に組み込まれたものを用い;
前記プライマシンで一つの一次原反ロールを用い、前記積層手段を機能させず単層の連続シートに対して薬液付与を行なった巻き取りを行なって非積層連続シートで構成される二次原反ロールを製造し、
そのプライマシンにより製造された薬液が塗布されたトイレットロール製品用の二次原反ロールを、ワインダーの原反ロール支持部にセットして、前記ワインダーにおいて、二次原反ロールから薬液が付与された二次連続シートを巻き出し、その二次連続シートに対して流れ方向に所定間隔で二次連続シートの幅方向に沿ってミシン目線を形成し、その後にミシン目線が形成された二次連続シートをトイレットロールの巻き径となるように巻き直して、トイレットロール用のログを製造し、
前記ワインダーにて製造されたログをログカッターに移送して、前記ログカッターにてトイレットロールの幅となるように裁断して個々のトイレットロールとし、
そのトイレットロールを包装設備にて、単数又は複数個を包装袋に収納してトイレットロール製品を得る、
ことを特徴とする、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項12】
前記プライマシンは、薬液付与手段の後段にエンボス付与手段を有し、薬液付与手段にて薬液が付与された一次連続シートに対してシングルエンボスを付与する請求項11記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項13】
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段にエンボス付与手段と積層手段とをこの順で有し、前記ワインダーに複数の二次原反ロールをセットし、各二次原反ロールから巻き出した各連続シートに対して前記エンボス付与手段においてエンボスを付与した後、積層手段で積層する請求項11記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項14】
前記ワインダーは、ミシン目線付与手段の前段に積層手段とエンボス付与手段とをこの順で有し、前記ワインダーに複数の二次原反ロールをセットし、各二次原反ロールから巻き出した各連続シートを積層手段で積層した後、積層された積層連続シートに対して前記エンボス付与手段においてシングルエンボスを付与する請求項11記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項15】
前記プライマシンにおける前記薬液付与手段がフレキソ印刷方式によるものである、請求項1又は11に記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項16】
フレキソ印刷方式によって薬液の塗布する際の積層連続シートの搬送速度を500m/分以上とする請求項15記載の、薬液が塗布されたトイレットロール製品の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするトイレットロール製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−170659(P2012−170659A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36484(P2011−36484)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】