説明

トイレ用組成物

【課題】糞尿臭の発生そのものを抑制し得るトイレ用組成物及び尿臭発生抑制方法の提供。
【解決手段】(a)14〜18員環の大環状化合物から選ばれるβ−グルクロニダーゼ阻害剤の1種以上、及び(b)界面活性剤の1種以上0.001〜5質量%を含有するトイレ用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ用組成物、トイレ用物品及び尿臭発生抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレに用いられる洗浄剤等の物品には、洗浄効果だけではなく、糞尿臭を消臭/防臭する効果が求められる。このような悪臭の消臭方法としては、化学的消臭法、物理的消臭法、生物的消臭法及び感覚的消臭法があるが、他の香りで悪臭をマスキングする方法が一般的である。
【0003】
香料成分を用いて糞尿臭を消臭する技術として、特許文献1〜5には、糞尿臭に消臭効果のある香料を含有する消臭剤が記載されている。また、特許文献6には、香料成分を含有するトイレ用洗浄剤の技術が開示されている。さらにトイレ用洗浄剤の近年の傾向として、瞬間消臭のニーズだけでなく、持続的に発生するこもった臭いの消臭ニーズも高まってきており、例えば特許文献3には、揮発性の低いムスク系の香料も例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−253652号公報
【特許文献2】特開2003−19190号公報
【特許文献3】特開2003−235949号公報
【特許文献4】特開2005−296169号公報
【特許文献5】特開2008−136841号公報
【特許文献6】特開2005−187511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜6に記載されている消臭剤及びトイレ用洗浄剤には、瞬時に悪臭をマスキングする必要があるため、香り立ちの高いトップノートやミドルノートの香料成分が多く使われている。また、上述のように上記特許文献3には、消臭効果に持続性を付与させるように保留性が高く揮発性の低いムスク系の香料の例示もある。しかしながら他の低揮発性香料成分よりもムスク系香料が特に持続的消臭効果に優れていることを示す知見は得られていなかった。これに加えて一般にムスク系香料は高価であることから、香りの嗜好性が極めて高い身体や布製品への消臭剤には用いられているが、トイレ用消臭剤の分野では、敢えてムスク系香料を用いるメリットは小さいと考えられてきた。上記に加えて根本的な問題として、このような香料によるマスキング法では糞尿臭を消し去ることができるわけではなく、糞尿臭の発生そのものを抑制する技術が強く求められている。
【0006】
本発明の課題は、糞尿臭の発生そのものを抑制し得るトイレ用組成物及び尿臭発生抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、糞尿臭、特に持続的に発生するこもった臭いの発生メカニズムを詳細に検討したところ、一般的に糞尿臭の原因と考えられているアンモニアよりも、フェノール系化合物やインドール類が、糞尿臭、特に持続的に発生するこもった尿臭への寄与が高い成分であること、さらには、これらフェノール系化合物やインドール類は、菌体由来のβ−グルクロニダーゼが尿に作用することで発生することを見出した。
【0008】
そして、これまで、保留性が高く揮発性が低いためにトイレ用で第一に求められる瞬時にマスキング消臭できる能力は劣る香料成分の中に、β−グルクロニダーゼの活性を阻害するものがあることを見出し、これらを積極的に対象面に残存させることで、単なる消臭ではなく臭いの原因物質の生成を阻害することで防臭する、すなわち特定の香料成分と排泄直後の尿とを接触させて菌体由来のβ−グルクロニダーゼがフェノール系化合物やインドール類を生成させるのを防ぐことを見出し、本発明に至ったものである。これは、上記特許文献中による効果が、すべて既に発生した悪臭に対する消臭効果であることとは本質的に異なる。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有するトイレ用組成物を提供する。
(a)成分:14〜18員環の大環状化合物から選ばれるβ−グルクロニダーゼ阻害剤の1種以上
(b)成分:界面活性剤の1種以上 0.001〜5質量%
【0010】
また、本発明は、上記本発明のトイレ用組成物を、トリガー式スプレーヤーを具備する容器に充填してなるトイレ用物品に関する。
【0011】
また、本発明は、上記本発明のトイレ用物品により、上記本発明のトイレ用組成物を、尿臭の発生する対象表面に噴霧する、尿臭発生抑制方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトイレ用組成物及びトイレ用物品により、糞尿臭の発生そのものを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られたトイレ用組成物のβ−グルクロニダーゼの相対活性阻害率を示すグラフ
【図2】実施例1で得られたトイレ用組成物について実施例2の方法で評価した尿臭生成抑制効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
[(a)成分]
本発明の(a)成分として用いられる14〜18員環の大環状化合物は、β−グルクロニダーゼの活性を阻害する機能を有し、持続的にフェノール系化合物やインドール類の発生を抑制し得る化合物である。本発明における「β−グルクロニダーゼ阻害剤」とは、これを反応液中に0.1質量%添加することによって、1.6units/mLの大腸菌由来β−グルクロニダーゼType VII-Aの活性を60%以上抑制する化合物をいい、好ましくは80%以上抑制する化合物、より好ましくは90%以上抑制する化合物をいう。具体的には、下記実施例(参考例1)に示す方法により測定したβ−グルクロニダーゼの相対活性阻害率が60%以上の化合物をいい、80%以上の化合物が好ましく、90%以上の化合物がより好ましい。
【0015】
また本発明における「14〜18員環の大環状化合物」とは、ヘテロ原子が含まれていてもよい14〜18員環の大環状構造を有する化合物をいい、例えば、「香料と調香の基礎知識」、中島基貴著、産業図書(株)発行、1996年5月30日第2刷の253〜258頁に記載されている化合物、及び「合成香料−化学と商品知識」(印藤元一著、化学工業日報社発行、2005年3月22日増補改定版)の391〜407頁に記載されている化合物などを挙げることができる。
【0016】
また、上記文献に記載の化合物についてはいずれもムスク様の香気を有することが知られているが、本発明において用いられる「14〜18員環の大環状化合物」は、ヘテロ原子が含まれていてもよい14〜18員環の大環状構造を有する化合物であればよく、ムスク香を有するものには限定されず、さらには無香のものであってもよい。
【0017】
本発明の(a)成分として用いられる14〜18員環の大環状化合物は、環内にエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、及び炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。上記のβ−グルクロニダーゼ活性阻害能の点から、環内にエステル結合を含む場合はジエステルよりもモノエステルの方が好ましく、また、環内に炭素-炭素二重結合をもつものが好ましい。具体的な化合物としては3−メチルシクロペンタデカノン、3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、シクロペンタデカノン、4−シクロヘキサデセン−1−オン、5−シクロヘキサデセン−1−オン、8−シクロヘキサデセン−1−オン、9−シクロヘプタデセン−1−オン、7−シクロヘキサデセノリド、11−オキサ−16−ヘキサデカノリド、10−オキサ−16−ヘキサデカノリド等を挙げることができる。これらの中では、β−グルクロニダーゼ活性阻害能の点から、3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン(ムセノンデルタ)、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン(ムセノンデルタ)、4−シクロヘキサデセン−1−オン(ムスクZ4)、5−シクロヘキサデセン−1−オン(ムスクTM II)、8−シクロヘキサデセン−1−オン(グロバノン)、9−シクロヘプタデセン−1−オン(シベトン)、7−シクロヘキサデセノリド(アンブレットリド)、10−オキサ−16−ヘキサデカノリド(オキサリド)が好ましく、3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン(ムセノンデルタ)、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン(ムセノンデルタ)、8−シクロヘキサデセン−1−オン(グロバノン)、9−シクロヘプタデセン−1−オン(シベトン)、7−シクロヘキサデセノリド(アンブレットリド)がより好ましく、β−グルクロニダーゼ活性阻害能の効果及び香りの質も考慮すると8−シクロヘキサデセン−1−オン(グロバノン)が特に好ましい。
【0018】
[(b)成分]
本発明の(b)成分は、界面活性剤の1種以上である。(b)成分は、汚れを除去するばかりでなく、水の中に(a)成分を安定に可溶化させたり、菌や糞尿などの汚れに(a)成分を浸透させたり、あるいは泡スプレーで使用する場合は程よい泡を形成することで(a)成分の揮発蒸散を抑制してβ−グルクロニダーゼ活性阻害効果を高めるなどの重要な作用を有する。
【0019】
(b)成分としては、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び陰イオン界面活性剤から選ばれる化合物を用いることができる。なお、陽イオン界面活性剤のうち、後述する抗菌性を有する陽イオン界面活性剤は、(b)成分ではなく抗菌剤として取り扱うものとする。
【0020】
非イオン界面活性剤としては、下記一般式(Surf−1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、下記一般式(Surf−2)で示されるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤、下記一般式(Surf−3)で示されるアミンオキシド型非イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0021】
4−(OR5n−OH (Surf−1)
〔式中、R4は炭素数8〜16、好ましくは10〜14の炭化水素基、好ましくはアルキル基であり、R5は炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す3〜20の数であり、n個のR5は同一でも異なっていても良い。〕
6−(OR7)pq (Surf−2)
〔式中、R6は炭素数8〜16、好ましくは9〜16、特に好ましくは9〜14のアルキル基、R7は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、特にエチレン基であり、Gは還元糖に由来する残基、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す0〜6の数であり、p個のR7は同一でも異なっていても良い。qはグルコースの平均縮合度を示す1〜10、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜2の数である。〕
【0022】
【化1】

【0023】
〔式中、R8は炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基、R9は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、Xは−COO−又は−CONH−、好ましくは−CONH−、rは0又は1の数であり、R10及びR11はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、好ましくはメチル基である。〕
【0024】
両性界面活性剤としては、スルホベタイン型両性界面活性剤及びカルボベタイン型両性界面活性剤が好適であり、具体的には下記一般式(Surf−4)の化合物が好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
〔式中、R12は炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基、R13は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、Yは−COO−又は−CONH−、好ましくは−CONH−、sは0又は1の数であり、R14及びR15はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、好ましくはメチル基であり、R16はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキレン基である。Z-は−SO3-又は−COO-である。〕
【0027】
陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩又は脂肪酸から選ばれる陰イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0028】
本発明では、(b)成分として、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤、アミンオキシド型非イオン界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、及びカルボベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましい。(a)成分を安定に可溶化する能力のみならず(a)成分のβ−グルクロニダーゼ活性阻害能を増大させる効果にも優れた(b)成分が望ましいこと、及び本組成物を便器外を含めた対称面に直接噴霧させて残留させることを考慮すると、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤は、プラスチック面の損傷を起こしにくく、壁紙ののり剤等に作用して変色、シミ等を起こしにくいことから、(b)成分として特に好ましい。従って、(b)成分の少なくとも1つがアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤であることが好ましい。
【0029】
[(c)成分]
本発明では、任意ではあるが、(c)成分として溶剤を含有することが好ましい。(c)成分としては、下記(i)〜(iii)の化合物から選ばれる1種が好ましい。
(i)炭素数1〜3の一級アルコール、
(ii)下記一般式(Solv-1)で示される化合物、
1−(OR2m−OR3 (Solv-1)
〔式中、R1及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜7の炭化水素基であり、R2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、mは1〜6の数であり、m個のR2は同一でも異なっていても良い。〕
(iii)炭素数3〜10の1価アルコールにグリシドール及び/又はエピクロルヒドリンを平均1〜5モル付加させたアルキル(ポリ)グリセリルエーテル
【0030】
(i)の化合物の具体例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられ、(ii)の化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(m1=2〜3)ポリオキシプロピレン(m2=2〜3)ジメチルエーテル(m1及びm2はそれぞれ平均付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(m3=1〜5)フェニルエーテル(m3は平均付加モル数を示す)、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトールを挙げることができる。また、(iii)の化合物の具体例としては、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、アミルグリセリルエーテル等の炭素数4〜10のアルキル基を有するアルキルモノグリセリルエーテル、アルキルジグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0031】
本発明では、(c)成分として、洗浄性能及び仕上がりが良く、溶剤臭も悪くないという点から、特にエタノール、イソプロパノール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、アミルグリセリルエーテルが好ましく、エタノール、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、アミルグリセリルエーテルがより好ましく、エタノールがさらに好ましい。
【0032】
[(d)成分]
本発明では、任意ではあるが、(d)成分として抗菌剤を含有することが好ましい。持続的に発生するこもった尿臭の原因物質であるフェノール系化合物やインドール類の生成には微生物由来の酵素が関与していることから、(d)成分である抗菌剤は酵素を持つ菌体自身の増殖を抑制し、または菌数を減少させることによって、(a)成分との併用により、悪臭の発生抑制に相乗的な効果を有する。
【0033】
本発明において(d)成分の抗菌剤とは、木綿金巾#2003に該化合物1質量%を均一に付着させた布を用いJIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験法」の方法で抗菌性試験を行い阻止帯が見られる化合物である。このような化合物としては「香粧品、医薬品防腐・殺菌剤の科学」(吉村孝一、滝川博文著、フレグランスジャーナル社、1990年4月10日発行)の501頁〜564頁に記載されているものから選択することができる。
【0034】
好ましい抗菌性化合物としては、抗菌性を有する陽イオン界面活性剤、又は、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンズイミダゾール、ポリリジン、ポリヘキサメチレンビグアニド及びグルクロン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、ビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、「アトミボールUA」及び「アトミボールL」(触媒化成社製)等の銀を含有するコロイド組成物、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、トリクロロカルバニリド、8−オキシキノリン、デヒドロ酢酸、安息香酸エステル類、クロロクレゾール類、クロロチモール、クロロフェン、ジクロロフェン、ブロモクロロフェン、ヘキサクロロフェンから選ばれる1種以上である。これらの中では、抗菌性を有する陽イオン界面活性剤が好ましい。抗菌性を有する陽イオン界面活性剤としては、4級窒素原子に結合する4つの基のうち、1つ又は2つが炭素数8〜12のアルキル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩型界面活性剤が好ましい。抗菌性の点から、ジアルキル(好ましくは共に炭素数10)ジメチルアンモニウム塩や、モノアルキル(好ましくは炭素数12)ベンジルジメチルアンモニウム塩が好ましく、ジアルキル(好ましくは共に炭素数10)ジメチルアンモニウム塩がより好ましい。
【0035】
[(e)成分]
本発明では、任意ではあるが(e)成分としてキレート剤を含有することが好ましい。(e)成分は、トイレに付着する燐酸カルシウムなどの無機物質を除去することにより、尿臭発生抑制効果を向上させることができる。(e)成分としては、具体的には下記の化合物を挙げることができる。
(1)フィチン酸などのリン酸系化合物又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(2)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(3)2-ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1-ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸などのホスホノカルボン酸、又はこれのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(4)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシンなどのアミノ酸、又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
(5)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸、アルキル(炭素数1〜3)グリシン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンコハク酸などのアミノポリ酢酸又はこれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩。
(6)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸などの有機酸、又はこれらのアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩。
(7)アミノポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)もしくはアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩を挙げることができる。
【0036】
これらの中で、上記(2)、(5)及び(6)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、上記(5)及び(6)からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。最も好ましい(e)成分は、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン−N,N−ジ酢酸、クエン酸である。
【0037】
[トイレ用組成物]
本発明のトイレ用組成物は、上記(a)成分及び(b)成分を含有するものであり、更に(c)成分、(d)成分、(e)成分を含有することが好ましい。
【0038】
本発明のトイレ用組成物中の(a)成分の含有量は、β−グルクロニダーゼ阻害能と組成物の香りバランスの観点から、0.001〜1質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましい。
【0039】
また、本発明のトイレ用組成物中の(b)成分の含有量は0.001〜5質量%であるが、好ましくは0.05〜4質量%、より好ましくは0.1〜4質量%である。(b)成分の含有量は、酵素阻害効果及び臭気発生抑制の観点及び(a)成分の可溶化、安定化と、跡残りの防止、仕上がりの良さ、ミストスプレー時の不要な泡立ちの防止の観点から、この範囲である。
【0040】
また、本トイレ用組成物を便器内部だけでなく、その他の場所、すなわち、便器の外側、便座の表面・裏面、床や便器と床のすきま、トイレマット、トイレの壁なども含めてミスト状にして噴霧する場合は、後に拭き取れない場合や拭き取らない場合が想定され、跡残り防止・仕上がり性が優先され、かつミストスプレーでは泡立ちがない方が好ましく、(b)成分の含有量は(a)成分を可溶化できる最低量に抑えるのが好ましい。このため(b)成分の含有量は好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。
【0041】
また、本トイレ用組成物を便器内部に使用する場合は、泡状にして噴霧しても良い。この場合は、泡立ち及び(a)成分の可溶化、安定化が優先される点から、(b)成分の含有量は好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは0.5〜4質量%である。
【0042】
また、本発明のトイレ用組成物中の(c)成分の含有量は、0.1〜25質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。この範囲であれば、組成物の速乾性に優れ、(a)成分の可溶化、安定化が十分で、引火性や対象面に対する損傷性の問題も生じない。
【0043】
また、本発明のトイレ用組成物中の(d)成分の含有量は、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%がより好ましい。この範囲であれば、酵素阻害効果及び臭気発生抑制に十分な効果が発現し、また、跡残りが防止でき、仕上がりも良くなる。
【0044】
また、本発明のトイレ用組成物中の(e)成分の含有量は、0.0001〜5質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。この範囲であれば、無機物質を除去することにより、尿臭発生抑制効果を向上させるのに十分な効果が発現し、また、跡残りが防止でき、仕上がりも良くなる。
【0045】
本発明のトイレ用組成物は、水を含有する。水の含有量は、組成物中、好ましくは70〜99質量%、より好ましくは80〜98質量%、更に好ましくは80〜95質量%である。
【0046】
また、本発明のトイレ用組成物の20℃におけるpHは、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8であり、pH調整は通常用いられるpH調整剤で行われる。
【0047】
本発明のトイレ用組成物を、尿臭の発生する対象表面に噴霧する場合(例えば、後述するように、トリガー式スプレーヤーを具備する容器から噴霧する場合)には、(a)成分の揮発蒸散を抑制することが好ましく、この目的から、持続性のある泡をトイレの表面に残存させることが好ましい。したがって、本発明では、(b)成分の起泡性に加えて(c)成分を起泡補助剤として使用することが好ましく、(b)成分/(c)成分を好ましくは0.01〜2、より好ましくは0.03〜1.5の質量比で含有することが好適である。
【0048】
[トイレ用物品及び尿臭発生抑制方法]
本発明のトイレ用組成物を用いて尿臭発生を抑制する方法は、(a)成分、(b)成分、及び水、更に必要により(c)成分、(d)成分、(e)成分を含有する本発明のトイレ用組成物を、尿臭の発生する対象表面に接触させる方法である。
【0049】
具体的には、本発明のトイレ用組成物を、トリガー式スプレーヤーを具備する容器に充填してなるトイレ用物品により、本発明のトイレ用組成物を、尿臭の発生する対象表面に直接噴霧することが好ましい。効果的に尿臭発生を抑制するには対象表面に(a)成分を1平方メートル当たりに付着残留させる量は、0.1〜50mgが好ましく、0.5〜10mgがより好ましい。トリガー式スプレーヤーを用いる場合には、本発明のトイレ用組成物をミスト状にして噴霧する場合と泡にして噴霧する場合が挙げられ、各方法に応じて本発明の組成物を好適な組成に調製することが好ましい。
【0050】
トイレの尿臭発生の原因として、便器のふち裏部分など従来のトイレ掃除で汚れが落としにくい場所の存在が挙げられるが、それに加えて便器外に飛び散った飛散尿(男性が立って小便したときに生じた飛散尿等)が便座の裏面、床や便器と床の隙間、トイレマット、壁などに残留したままになることが挙げられる。このため、従来のトイレ掃除では対象になりにくかったこれらの対象面についても本組成物を直接噴霧することで効果的に尿臭発生を抑制することができる。
【0051】
対象表面が、便器内部以外である場合、すなわち便器の外側、便座の表面・裏面、床や便器と床のすきま、トイレマット、トイレの壁などである場合には、布やティッシュで拭き取る手間が不要である点で、ミスト状にして噴霧するのが好適である。ミスト状にして噴霧する場合は、市販のスプレー物品、例えば「リセッシュ除菌EX」(花王(株)製)のトリガー式スプレーヤー(1ストロークの噴霧量約0.6g)や「クイックパンチ」(花王(株)製)のトリガー式スプレーヤー(1ストロークの噴霧量約0.3g)などを用い、対象面から20〜50cm程度の距離から1〜3回噴霧する方法が好ましい。また、対象表面が便器内部である場合、例えば悪臭発生場所と考えられるふち裏部分に噴霧する場合は、上述のミスト状のトリガー式スプレーヤーまたは「トイレマジックリン消臭・洗浄スプレー」(花王(株)製)のトリガー式スプレーヤー(1ストロークの噴霧量約1.0g)のような内容物を泡状に排出できるスプレーヤーを用いてもよい。この場合、対象面をミストまたは泡が覆うように噴霧後そのまま放置するのが好ましい。対象表面に組成物が染み込まない場合は、上述のスプレーヤーでミストまたは泡にして噴霧後、布やティッシュで塗り延ばしながら拭き取ってもよい。
【0052】
泡状に排出できるトリガー式スプレーヤーとしては、泡形成機構を有し、吐出口の吐出面積が0.3〜1.0mm2であるトリガー式スプレーヤーが好ましい。このようなトリガー式スプレーヤーについては、特開2006−320845号公報、実公平6−34858号公報、実開平7−9451号公報、特開平8−71463号公報、特開2002−194400号公報などを参考にすることができる。
【0053】
本発明に用いるトリガー式スプレーヤーの泡形成機構については、スピンエレメント及び筒状の構造体、直径4〜8mmの円形状の空間部分に棒状の突起が数個設置された液体通過板を有する構造のものが好適である。ここで「スピンエレメント」とは、当該スピンエレメントを通じて液状物の流れにスピンを与え、最後にノズルから噴出する機構をいう。
【0054】
泡形成機構の部材である液体通過板は、直径4〜8mm、好ましくは直径5〜7mmの円形状の空間部分に、棒状の突起を好ましくは3〜8個設置されたものであり、通過板を平面で見た場合に、好ましくは幅0.8〜1.2mm、長さ2〜4mmの長方形状の棒状突起が好適である。また、棒状の突起部分を除いた空間部分に対する突起部分の占める面積は20〜90面積%、好ましくは30〜80面積%、より好ましくは40〜70面積%が好適であり、このような液体通過板を設置することで、好適な泡が形成する。
【0055】
本発明に係るトリガー式スプレーヤーは、吐出口の吐出面積が0.3〜1.0mm2、好ましくは0.5〜0.8mm2である。通常、液吐出量が少ないトリガー式スプレーヤーは液垂れなどが生じるため吐出面積は非常に小さく、0.2mm2以下であるが、本発明では敢えて吐出口を大きく採ることで、付着性のよい泡を得ることができる。
【0056】
本発明では、上述のトイレ用組成物をトリガー式スプレーヤーによりスプレーした後は、洗い流さずにそのまま放置する。これにより、(a)成分がβ−グルクロニダーゼ活性を効率よく阻害できるため、有効に糞尿臭の発生を抑制することができる。
【0057】
本発明のトイレ用組成物は、トイレ用消臭剤組成物、トイレ用消臭洗浄剤組成物、トイレ用洗浄剤組成物等として好適であり、本発明のトイレ用物品は、トイレ用消臭剤、トイレ用消臭洗浄剤、トイレ用洗浄剤等として好適である。これらは、トイレ(便器)及びその周辺並びにトイレ内に配置される各種物品等に適用されるものである。より好適には、トイレ(便器)の周辺並びにトイレ内に配置される各種物品等に適用されるトイレ用消臭剤組成物としての使用である。
【実施例】
【0058】
参考例1
<β−グルクロニダーゼ活性阻害率の測定>
γ線滅菌済み容器中に、2mMのp−ニトロフェニル−β−D−グルクロニド水溶液100μL、0.5Mリン酸バッファー(pH6.8)40μL、イオン交換水38μL、表1に示す各化合物の10質量%DPG(ジプロピレングリコール)溶液2μLを混合し、続いて16units/mLに調整したβ−グルクロニダーゼ水溶液20μLを加えて、37℃恒温槽中で2時間酵素反応を行った。供した化合物の反応液中での濃度は0.1質量%であった。また、表1に示す各化合物の代わりにDPGを加えたものをコントロールとし、各サンプル及びコントロールごとに、酵素液の代わりにイオン交換水を加えたものをブランクとして、それぞれ同様に2時間反応を行った。上記反応液を0.2Mグリシンバッファー(pH10.4)を用いて希釈し、波長400nmにおける吸光度を測定した。得られた測定値より、次式に従ってβ−グルクロニダーゼの相対活性阻害率を求め、表1に示した。
【0059】
【数1】

【0060】
「コントロール吸光度変化」=コントロールの吸光度−コントロールのブランクの吸光度
「サンプル吸光度変化」=サンプルの吸光度−サンプルのブランクの吸光度
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1
(1)トイレ用組成物の調製
表2に示すトイレ用組成物を調製した。尚、クエン酸は組成物全体のpHが7となるように微量を添加し、全体量を水で調整した。
【0063】
【表2】

【0064】
表2中の成分は以下のものである。
・a−6:8−シクロヘキサデセン−1−オン
・アルキルグリコシド:花王(株)製、マイドール12、アルキル基の炭素数は12、グルコース平均縮合度1.3
・抗菌剤:ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(花王(株)製、コータミンD−10E)
【0065】
(2)β−グルクロニダーゼ活性阻害
γ線滅菌済み容器中に2mM p−ニトロフェニル−β−D−グルクロニド(PNPG)水溶液500μL、0.5Mリン酸バッファー(pH6.8)200μL、表2の組成物5μLまたは20μLを添加し、さらにイオン交換水を添加混合して、全量を990μLとした。続いて、0.1Mリン酸バッファー(pH6.8)を用いて160units/mLに調製したβ−グルクロニダーゼ溶液10μLを添加混合し、37℃恒温槽中で2時間反応を行った。供した組成物の反応液中での濃度は0.5質量%または2質量%となる。また、組成物の代わりにイオン交換水を加えたものをコントロールとし、各サンプル及びコントロールごとに酵素液の代わりにイオン交換水を加えたものをブランクとして、それぞれ同様に2時間反応を行った。上記反応液を0.2Mグリシン−水酸化ナトリウムバッファー(pH10.4)を用いて希釈し、波長400nmにおける吸光度を測定した。得られた測定値より、参考例1の相対活性阻害率の算出式に従ってβ−グルクロニダーゼの相対活性阻害率を求め、図1に示した。
【0066】
図1の結果より、本発明のトイレ用組成物はβ−グルクロニダーゼ阻害活性を有することがわかる。なかでも、a−6(8−シクロヘキサデセン−1−オン)と抗菌剤(ジデシルジメチルアンモニウムクロリド)を併用した本発明品1−1の組成物は、組成物添加濃度を0.5質量%とした場合においても80%以上の阻害活性を示し、より好ましいものであるといえる。
【0067】
実施例2
実施例1で調製した表2のトイレ用組成物をトリガー式スプレー容器〔花王(株)製「クイックパンチ」の中身を抜き、水で洗浄し乾燥させたもの〕に充填してスプレー式のトイレ用物品を得た。トリガー式スプレー容器によって組成物の各々を、10cm四方のタイル面に0.01g/cm2スプレーして1日乾燥させ、その後、ヒト尿0.5g(5人のヒト尿混合物)を均一に塗布し、12時間乾燥させ、乾燥後の尿臭強度(臭気官能評価)を以下の手法で判定し尿臭生成抑制効果を評価した。
【0068】
臭気官能評価は6名のパネラーによって、臭気の強度を0〜5の評価スコアによる6段階臭気強度表示法に基づいて行った。評価スコアは、「0」無臭、「1」やっと感知できるニオイ(検知閾値)、「2」尿臭であることわかるが弱いニオイ(認知閾値)、「3」楽に尿臭であると感じられるニオイ、「4」強い尿臭、「5」強烈な尿臭を示す。臭気強度の判定は0.5刻みで行い、最高ポイントおよび最低ポイントをつけた2名を除いた4名の評価を平均し、小数点以下の数値を0.25以上0.75未満は0.5とし、0.75以上は整数に切り上げ、0.25未満は整数に切り捨てた。評価結果を図2に示した。
【0069】
図2の結果から、本発明のトイレ用組成物をトリガー式スプレー容器から噴霧することにより、尿臭の生成を抑制する効果が認められることがわかる。
【0070】
実施例3
表1に示す(a)成分、下記の(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分を用い、表3に示す組成の本発明のトイレ用組成物及び比較のトイレ用組成物を調製した。得られたトイレ用組成物について、下記方法で尿臭発生の抑制効果を評価した。結果を表3に示す。
【0071】
<配合成分>
(b)成分
b−1:アルキルグリコシド(花王(株)製、マイドール12、アルキル基の炭素数は12、グルコース平均縮合度1.3)
b−2:N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタイン
b−3:N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボシキメチルアンモニウムベタイン
b−4:N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド
b−5:ポリオキシエチレン(平均8モル)ラウリルエーテル
b−6:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アルキル基の炭素数は11〜15)
b−7:ラウリル硫酸ナトリウム
【0072】
(c)成分
c−1:2−エチルヘキシルグリセリルエーテル
c−2:イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)
c−3:トリエチレングリコールモノフェニルエーテル
c−4:エタノール
【0073】
(d)成分
d−1:ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(花王(株)製、コータミンD−10E)
d−2:アルキルベンジルアンモニウムクロリド(花王(株)製、サニゾールC、アルキル基の炭素数は12)
【0074】
(e)成分
e−1:クエン酸
e−2:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
【0075】
<尿臭発生抑制効果の評価方法>
(1)評価サンプルの調製
γ線滅菌済み容器中に、採取後のヒト尿サンプル(5人のヒト尿混合物)500μL、表3のトイレ用組成物500μL、続いて160units/mLに調整したβ-グルクロニダーゼ水溶液10μLを添加混合し、37℃恒温槽に静置して20時間反応させた。また、ヒト尿サンプル500μLに、イオン交換水500μL、及び酵素液10μLを加えて混合したものをコントロールとし、ヒト尿サンプル500μLに、イオン交換水500μLを加え混合したものをブランクとして、それぞれ同様に20時間反応させた。各サンプルについて、それぞれ等量を匂い紙先端に滴下し、これを評価サンプルとした。
【0076】
(2)尿臭発生抑制効果の評価
6人のパネラーが、上記方法で調製された評価サンプルに対して、尿臭の評価を行った。尿臭の強さについては、以下に示す臭気強度レベルを尺度として0.5刻みで採点を行い、最高ポイントおよび最低ポイントをつけた2名を除いた4名の評価を平均し、小数点以下の数値を0.25以上0.75未満は0.5とし、0.75以上は整数に切り上げ、0.25未満は整数に切り捨てた。
【0077】
尿臭の臭気強度の評価基準
0:無臭
1:やっと感知できるニオイ(検知閾値)
2:尿臭であることわかるが弱いニオイ(認知閾値)
3:楽に尿臭であると感じられるニオイ
4:強い尿臭
5:強烈な尿臭
【0078】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有するトイレ用組成物。
(a)成分:14〜18員環の大環状化合物から選ばれるβ−グルクロニダーゼ阻害剤の1種以上
(b)成分:界面活性剤の1種以上 0.001〜5質量%
【請求項2】
(a)成分が、3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オン、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、4−シクロヘキサデセン−1−オン、5−シクロヘキサデセン−1−オン、8−シクロヘキサデセン−1−オン、9−シクロヘプタデセン−1−オン、7−シクロヘキサデセノリド及び10−オキサ―16−ヘキサデカノリドから選ばれる1種以上である、請求項1記載のトイレ用組成物。
【請求項3】
(b)成分が、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤、アミンオキシド型非イオン界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、及びカルボベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載のトイレ用組成物。
【請求項4】
(b)成分の少なくとも1つが、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤である、請求項1〜3いずれかに記載のトイレ用組成物。
【請求項5】
更に、(c)成分として、溶剤を含有する、請求項1〜4いずれかに記載のトイレ用組成物。
【請求項6】
(c)成分が、下記(i)〜(iii)の化合物から選ばれる1種以上である、請求項5記載のトイレ用組成物。
(i)炭素数1〜3の一級アルコール
(ii)下記一般式(Solv-1)で示される化合物
1−(OR2m−OR3 (Solv-1)
〔式中、R1及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜7の炭化水素基であり、R2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、mは1〜6の数であり、m個のR2は同一でも異なっていても良い。〕
(iii)炭素数3〜10の1価アルコールにグリシドール及び/又はエピクロルヒドリンを平均1〜5モル付加させたアルキル(ポリ)グリセリルエーテル
【請求項7】
更に(d)成分として、抗菌剤を含有する、請求項1〜6いずれかに記載のトイレ用組成物。
【請求項8】
更に(e)成分として、キレート剤を含有する、請求項1〜7いずれかに記載のトイレ用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載のトイレ用組成物を、トリガー式スプレーヤーを具備する容器に充填してなるトイレ用物品。
【請求項10】
請求項9記載のトイレ用物品により、請求項1〜8いずれかに記載のトイレ用組成物を、尿臭の発生する対象表面に噴霧する、尿臭発生抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−162321(P2010−162321A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68398(P2009−68398)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】