説明

トイレ装置

【課題】
要介護者の排泄を介助する場合において、要介護者及び介護者ともに容易に臀部の清拭を行うことができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】椅子部2上に設置された座部33の座面後方部に凹み形状部10あるいは不連続部11を設けることにより、使用者が着座した状態でも介護者が手を挿し入れ易くなり、使用者及び介護者ともに排便後の清拭作業の負担が軽減される。また、座部33を着座状態で回転可能とする構成にすることにより、介護者がトイレ装置1の後方に移動しなくとも使用者を介助し易い向き回転させた後に排便後の清拭作業を行なうことができ、介護者の清拭作業が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトイレ装置に関するもので、特に体に障害のある方や高齢者等の介護をする場合において、使用者の清拭を容易にかつ安全に行えるトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化時代の到来とともに在宅の寝たきり老人の介護が大きな社会問題となっている。この介護に際しては、特に、排泄物の処理が問題である。このような事情に鑑みて、要介護者が利用しやすく、かつ、介護者の負担が軽くなるトイレ装置として、たとえば特許文献1に開示されるような便器用便座がある。この便器用便座は、図6に示すように、洋式便器の上端部に位置する便座20を水平面内で回動自在とする便座支持体21を構成することにより、要介護者が便座20に腰掛けた状態で体を左右に回転できるため、介護者が作業しやすい位置に要介護者の向きを変えることができる。また、出入り口方向へ体の向きを変えた状態で立ち上がることができるため、要介護者の負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−204125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、要介護者の臀部の清拭をする場合に、要介護者に前傾姿勢をとってもらい、便座部と臀部の隙間に介護者の手を挿しいれる必要があるため、要介護者が前傾姿勢でバランスを崩し、便座から転落・転倒するおそれがあった。
【0005】
そこで、この発明は、かかる不具合を解決するためになされたもので、要介護者の排泄後の臀部の清拭作業を、要介護者及び介護者ともに容易にかつ安全に行うことができることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段は、椅子部と、使用者が着座可能な座部と、を備え、前記座部には、使用者の着座状態において使用者の後方側に凹み形状部あるいは不連続部が形成されているものである。
【0007】
また、本発明の第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段において、前記凹み形状部には、前記座部の内側に向かってテーパ形状が形成されているものである。
【0008】
また、本発明の第3の課題解決手段は、第1の課題解決手段または第2の課題解決手段において、前記座部は、前記椅子部に回転可能に支持され、前記椅子部に対して回転することにより、基本状態と第2の状態をとるものである。
【0009】
また、本発明の第4の課題解決手段は、第1の課題解決手段乃至第3の課題解決手段のいずれか一の解決手段において、前記座部は、前記椅子部を覆う被覆状態と、前記椅子部から離間する開放状態をとり、前記被覆状態において前記椅子部に回転可能に支持されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1あるいは第2の解決手段によれば、着座中の使用者の臀部と座部との間に空間を確保することができるため、例えば、臀部の清拭を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第3の解決手段によれば、座部は椅子部に回転可能に支持されているため、例えば、使用者が座部に着座した状態で座部を基本状態から第2の状態に回転させると、視認性及び作業性が向上し、介護者の負担を軽減することができる。
【0012】
また、本発明の第11の解決手段によれば、座部に腰掛けずに用を足す際に、座部が邪魔にならないようにできるため、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のトイレ装置の構成の一例を示す説明図である。
【図2】本発明のトイレ装置の座部の凹み形状部およびテーパ形状部の例を示す説明図である。
【図3】本発明のトイレ装置の座部の不連続部の例を示す説明図である。
【図4】本発明のトイレ装置の座部の第2の状態を示す説明図である。
【図5】本発明のトイレ装置の座部が椅子部から離間した状態を示す説明図である。
【図6】従来例である便座装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図1〜図5を用いて説明する。図1(a)は本実施の形態のトイレ装置1の上面図、図1(b)は本実施の形態のトイレ装置1の側面図、図2は本実施の形態のトイレ装置の座部33の凹み形状部10およびテーパ形状部12の例を示す斜視図、図3は本実施の形態のトイレ装置の座部33の不連続部11の例を示す斜視図、図4は座部33の第2の状態を示すトイレ装置1の上面図、図5は、座部33が椅子部2から離間した状態を示すトイレ装置1の側面図である。
【0015】
全体の構成について説明する。図1において、トイレ装置1は、椅子部2と、便座3から成っている。椅子部2上には便座3が設けられており、便座3は、本体部31と、ベース部32と、座部33とを備えている。
【0016】
本体部31は、椅子部2の上部後側に固定されており、ベース部32は、本体部31に回転軸部13を中心として図1(b)中矢印方向(時計回り及び反時計回り方向)に回転可能に支持され、本体部31ひいては椅子部2に対して上下動可能とされている。
【0017】
座部33は環状を呈し、ベース部32に図1(a)中矢印方向(時計回り及び反時計回り方向)に回転可能に支持されている。即ち、座部33は、ベース部32及び本体部31を介して椅子部2に対して回転可能に支持されるとともに、ベース部32を介して本体部31及び椅子部3に対して上下動可能とされている。この座部33は使用者が着座した状態で回転可能な強度を有しており、合成樹脂材料等で構成されている。
【0018】
図1、図2において、使用者の着座状態における座部33の後側には、使用者の臀部が座部33と接触する面に対して段差を有する凹み形状部10が設けられている。また、凹み形状部10の底面には更に座部33の外周端部側から中心方向に向かって凹み量が大きくなるようにテーパ形状部12が設けられている。
【0019】
この時、使用者が用を足した後、介護者が使用者の臀部の清拭を行うために手を臀部と座部33の間に挿しいれる際に、使用者がわずかに前傾姿勢をとるか腰を浮かせるだけで、臀部と凹み形状部10の間には手を挿し入れることができる空間が形成されるため、介護者は容易に使用者の臀部の清拭を行うことができる。
【0020】
なお、トイレ装置が設置されている部屋内のトイレ装置の配置に応じて、介護者がトイレ装置の後側へ移動しなくとも作業ができるように、凹み形状部10は座部33の斜め後方側に形成されていてもよく、斜め後方の左右2箇所にそれぞれ形成されていてもよい。
【0021】
更に、凹み形状部10を2箇所形成する場合には、介護者が作業する頻度が低い側の凹み形状部10を覆う着脱式のカバー(図示なし)を設けてもよい。この場合、使用者が座部3に着座した際に、臀部と座部3の接触する面積がカバーのない時よりも増えるため、座り心地がよくなるとともに、トイレ装置を設置するさまざまな部屋に対応できる座部33を一種類の形状で共通化して製造することができる。
【0022】
図1、2において、使用者の臀部の清拭をするために介護者が手を挿し入れる空間を形成する凹み形状部10を設けたが、より大きな空間を形成するために、図3に示すように座部33の後側に不連続部11を設けることもできる。この場合、使用者が前傾姿勢をとったり、腰を浮かせたりしなくとも、介護者は座部33の不連続部11に手を挿し入れて使用者の臀部の清拭を容易にすることができるとともに、使用者の負担をより軽減することができる。
【0023】
図1において座部33は、使用者が座部33に着座した場合に正面を向く初期状態(第1の状態)をとっている。この初期状態から図1中の矢印時計回り方向に座部33が回転されると、図4に示されるように、使用者が座部33に着座した場合に正面から右斜め前方向を向く清拭状態(第2の状態)をとることになる。この場合、介護者がトイレ装置1の後側に移動しなくとも使用者の臀部の清拭ができるとともに、座部33の後側の凹み形状部10に介護者が手を挿入し易くなり、介護者の負担をより軽減することができる。
【0024】
図4においては、座部33の初期状態から図1(a)中或いは図2中の矢印時計回り方向に座部33が回転された状態が示されているが、特にこの構成に限定されるものではなく、座部33の初期状態から図1(a)中或いは図2中の矢印反時計回り方向に座部33が回転されて、使用者が座部33に着座した場合に正面から左斜め前方向を向く清拭状態をとるようにされても良い。
【0025】
また、図1、図2においてはベース部32ひいては座部33は、椅子部2の上部を覆う被覆状態をとっている。トイレ装置1の使用方法が男性の小用等の場合には、図5に示すように、便座3のベース部32を回転軸部13を中心に上方向(図5中矢印方向)に回動させることにより、座部33及びベース部32は椅子部2から離間させる開放状態をとることができる。これにより、使用者は便座3が邪魔にならずに用を足すことができる。
【0026】
以上、本発明を上記実施の形態に則して説明したが、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の原理に準ずる各種態様を含むものである。
【符号の説明】
【0027】
1・・・トイレ装置
2・・・椅子部
3・・・便座
10・・・凹み形状部
11・・・不連続部
12・・・テーパ形状部
33・・・座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子部と、
使用者が着座可能な座部と、
を備え、
前記座部には、使用者の着座状態において使用者の後方側に凹み形状部あるいは不連続部が形成されていることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記凹み形状部には、前記座部の内側に向かってテーパ形状が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記座部は、前記椅子部に回転可能に支持され、前記椅子部に対して回転することにより、基本状態と第2の状態をとることを特徴とする請求項1又は2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記座部は、前記椅子部を覆う被覆状態と、前記椅子部から離間する開放状態をとり、前記被覆状態において前記椅子部に回転可能に支持されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のトイレ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212216(P2011−212216A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82960(P2010−82960)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】