説明

トップエミッション型有機EL素子およびその製造方法。

【課題】反り軽減されたトップエミッション型有機EL素子を提供する。
【解決手段】非透光性基材1の一方の面上に、少なくとも一対の電極層2、有機化合物層3を有し、前記非透光性基材から遠い側の電極上に接着層または平滑化層4を介してガスバリア層5が積層されてなる有機EL素子において、前記非透光性基材の他方の面上にアンチカール層6が設けられていることを特徴とするトップエミッション型有機EL素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップエミッション型有機EL素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機EL素子の薄膜化等に伴う反りの防止が検討されている。例えば、特許文献1には、ボトムエミッション型有機EL素子であって、透明な基板の有機化合物層とは反対側にアンチカール層(反り防止層)が設けられた有機EL素子が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−317937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らが検討した結果、有機EL素子の反りは、ボトムエミッション型有機EL素子よりも、トップエミッション型有機EL素子の方が著しいことが分かった。本発明はかかる問題点を解決することを目的とするものであって、反りが軽減されたトップエミッション型有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが、トップエミッション型有機EL素子の反りが著しい理由について、検討したところ、ボトムエミッション型有機EL素子は、有機EL素子の基板として、ガラスや透明プラスチック等の透明基板が用いられ、該透明基板側が、液晶表示装置等のバックライトとして貼り付けられるため、反りの影響が小さいことがわかった。すなわち、トップエミッション型有機EL素子では、このような貼り付けがないため、反りの影響がさらに深刻になる。
本発明は、上記問題点を見出されたことによって成し遂げられたものであって、具体的には、下記手段により、成し遂げられた。
(1)非透光性基材の一方の面上に、少なくとも一対の電極層、該電極層の間に設けられた有機化合物層を有し、前記非透光性基材から遠い側の電極上に接着層または平滑化層を介してガスバリア層が積層されてなる有機EL素子において、前記非透光性基材の他方の面上にアンチカール層が設けられていることを特徴とするトップエミッション型有機EL素子。
(2)前記接着層または平滑化層の硬化時の体積収縮率の3乗根、弾性率、層厚み(単位:μm)を、順に、x1、y1、z1とし、アンチカール層の硬化時の体積収縮率の3乗根、弾性率、層厚み(単位:μm)を、順に、x2、y2、z2としたときの、(x1)×(y1)×(z1)の、(x2)×(y2)×(z2)に対する比が0.1〜10である、(1)のトップエミッション型有機EL素子。
(3)(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比が0.3〜3である、(2)に記載のトップエミッション型有機EL素子。
(4)接着層は、重合性(メタ)アクリレートモノマーの重合物を主成分とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のトップエミッション型有機EL素子。
(5)アンチカール層の含水時の弾性率の低下が30%以下である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のトップエミッション型有機EL素子。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法であって、予め非透光性基材をアンチカール層側にカールさせてアンチカール層を設けた後、接着層または平滑化層を介してガスバリアフィルムを設ける、有機EL素子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、トップエミッション型有機EL素子における反りが軽減し、反りによる有機EL素子の破壊が低減された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
【0008】
最初に、図1に従って、代表的なトップエミッション型有機EL素子について説明するが、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでも無い。
本発明のトップエミッション型有機EL素子は、非透光性基材1と、該非透光性基材上に設けられた一対の電極2と、該電極間に設けられた有機化合物層3と、電極上であって非透光性基材とは反対側に接着層あるいは平滑化層(以下、「接着層等」と略記することがある)4を介して設けられたガスバリア層5と、非透光性基材上であって電極とは反対側に設けられたアンチカール層6とを有する。ここで、アンチカール層は表面の接着層の引っ張り応力と拮抗する応力層を支持体に対して反対側に設けることで反りを相殺している。
そして、本発明では、接着層等の硬化時の体積収縮率の3乗根、弾性率、層厚み(単位:μm)を、順に、x1、y1、z1とし、アンチカール層の硬化時の体積収縮率の3乗根、弾性率、層厚み(単位:μm)を、順に、x2、y2、z2としたときの、(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比が0.1〜10であることを特徴とする。トップエミッション型有機EL素子の場合、これらの比が0.1未満または10より大きい場合、バランスが悪くなり反りを抑止することができない。
ここで、接着層等の硬化時の体積収縮率とは、硬化前の接着層等の接着剤の体積と硬化後の接着層等の接着剤の体積の差を硬化前の接着層等の接着剤の体積で除した値をいい、アンチカール層の硬化時の体積収縮率とは、硬化前のアンチカール層のモノマー体積と硬化後のアンチカール層のモノマーの体積の差を硬化前の接着剤の体積で除した値をいう。この値は実測することも可能であるが、素材によってほぼ一定であるので、文献値を使用することができる。文献値としては技術情報協会編集の「UV硬化における硬化不良・阻害要因とその対策」の100頁、図6や光硬化技術デ−タブック、材料編、テクノネット社記載の値を使用することができる。文献により値が変化するので、x1、x2の値は同一の文献から参照することが好ましい。
アンチカール方向に基材をカールさせて別のフィルムを貼合する場合の体積収縮率の3乗根の値は、予めカールさせた基材の曲率半径の逆数(基材カールの半径)をAcm、フィルム貼合用接着剤の厚みをBcm、貼合用フィルムの厚みをCcmとすると1−(A/(A−B−C/2))で求めることができる。この値は3乗根を求める必要は無くこのまま式の値を使用することができる。
弾性率は同一の素材であっても、硬化の条件、膜の厚みで弾性率が変化するため、当該層を直接市販の微小硬度計で測定することによって微小硬度として求めることができる。y1、y2の値は同一の測定器、測定条件で測定することが好ましい。またアンチカール方向に基材をカールさせて別のフィルムを貼合する場合の弾性率は別のフィルムの弾性率を別に測定し、使用することができる。
層厚み(単位:μm)は、接着層等、アンチカール層、アンチカール用貼合フィルムの厚みであって、各層の設置の際の理論層厚、あるいは直接測定により求めることができる。
(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比は、0.3〜3であることが好ましく、0.5〜2であることがより好ましく、0.75〜1.3であることがさらに好ましい。
(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比を本発明の範囲内にする方法としては、(A)接着層等の厚さを薄くする、(B)接着層等の弾性率を下げる、(C)接着層等の硬化収縮率を下げる、(D)アンチカール層の弾性率を高める、(E)アンチカール層の硬化収縮率を高める、(F)アンチカール層の厚さを厚くする、(G)予めアンチカール層を希望方向にカールさせる際のカール量を調節する方法が、単独で、または、組み合わせて用いられる。
【0009】
以下、本発明の有機EL素子について、さらに詳細に説明する。
(接着層)
本発明における接着層は、公知の接着層を広く採用することができ、溶剤を除去する工程が不要なことから、重合型接着層が好ましく採用される。
本発明では、接着層は、重合性(メタ)アクリレートモノマーの重合物を主成分とすることができる。ここで、「主成分とする」とは、(メタ)アクリレートの重合物が接着層の第一の成分であることをいい、通常、重量比が最も多い成分をいう。本発明における(メタ)アクリレートモノマーとしては、市販のモノマー、オリゴマー、場合によってはポリマーやこれらの混合物のいずれも使用することができる。
硬化収縮は硬化に伴うアクリレート基の体積収縮に起因するため、(1)アクリレート含率の低いモノマーの使用、により硬化収縮率を低減することができる。また、(a)硬化速度が遅いほど、(b)架橋点密度が低いほど、(c)架橋点間距離が長いほど弾性率の低い膜を作製できる。
またエポキシ系の接着剤を使用することもできる。
【0010】
また、接着剤として、硬化収縮の少ない接着剤を用いることもでき、具体的には、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の重合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物の重合物を主成分とする接着剤や顔料がより好ましい。また、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合の官能基とカチオン重合可能な官能基の両方を分子内に有する化合物も好ましく用いることができる。モノマー重合法としては特に限定は無いが、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせが好ましく用いられる。加熱重合を行う場合、基材フィルムは相応の耐熱性を有する必要がある。この場合、少なくとも、加熱温度よりもプラスチックフィルムのTg(ガラス転移温度)が高いことが必要である。
光重合を行う場合は、光重合開始剤を併用する。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えばイルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えばダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、サートマー(Sartomer)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えばエザキュアTZM、エザキュアTZTなど)等が挙げられる。
照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.5J/cm2以上が好ましく、2J/cm2以上がより好ましい。アクリレート、メタクリレートは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0011】
このとき、モノマーの重合率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。
【0012】
本発明の様にトップエミッション型の素子の接着剤に顔料を分散して使用する場合、接着層の膜厚を一定に保てる利点がある反面、顔料の形状、大きさ、添加量、顔料/接着剤の屈折率の調整に注意を払う必要がある。両者の屈折率が大きく異なったり、顔料の粒子形状が異方性であったり、粒径が大きかったり、あるいは粒径分布が広いと接着層による光の散乱が顕著になり、表示画像の品位が低下する可能性がある。
【0013】
本発明においては、接着層として、上記電極とガスバリアフィルムの間に設けられた接着層以外に、他の接着層を含んでいてもよい。該接着層には、封止フィルムを有機EL素子に貼合するための層以外に、有機EL素子の表面にエンカプシュレーション膜を設ける構成の場合の、表面を平滑化するために用いられる平滑化層としての役割を果たすものも含まれる。
【0014】
本発明における接着層の体積収縮率は、5〜20%であることが好ましい。また、本発明における接着層の弾性率は、0.1〜1.0Gpaであることが好ましい。さらに、本発明における接着層の層厚みは、0.1〜100μmであることが好ましい。
【0015】
(アンチカール層)
本発明のおけるアンチカール層の素材は、特に定めることはく、公知の材料から広く選択することができる。ここで、本発明のトップエミッション型有機EL素子の場合、アンチカール層はむき出しの状態で使用される可能性が高いため、使用時または組み立て時における温度・湿度環境において、反りが変化しない材料が選ばれることが好ましい。接着層は有機EL素子のセル内に位置することから環境湿度の影響を受けないのに対し、アンチカール層は外界に接する構造になっていることから直接、迅速に環境湿度の影響を受ける。しかしながら、他の要因により、そのような材料の選択が困難な場合も多い。そこで、本発明では、温度・環境湿度によりアンチカール層が大きく膨張/収縮したり、弾性率が大きく変化することを避けるために、弾性変化率についても考慮し、上記(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比という条件を設定したものである。従って、本発明では、アンチカール層の材料は制限されることはない。樹脂フィルムの他、金属箔、(メタ)アクリレートモノマー硬化物等の中から広く選択することができる。
樹脂フィルムや金属箔をアンチカール層として使用する場合には、(1)基材を予めアンチカール方向にカールさせて接着する、(2)貼り合わせを行う1組のニップロールの内、アンチカールをつけたい側のロールの弾性率を他方のロールの弾性率より高くする、(3)貼り合わせを行う1組のニップロールの内アンチカールをつけたい側のロールの径を他方のロールの径より小さくする、等の方法で貼り合せの後、接着剤の乾燥あるいは硬化を行うことで実現可能である。
(メタ)アクリレートモノマー硬化物を使用する場合の考え方は接着層と同様であり、市販のモノマー、オリゴマー、場合によってはポリマーやこれらの混合物のいずれも使用することができる。
アンチカール層の素材としては極力薄層でアンチカール性の高い素材が求められるため、硬化収縮の大きな材料、工程を選択するのが好ましい。すなわち(1)アクリレート含率の高いモノマーの使用、(2)重合率の向上により硬化収縮率を増大することができる。また(a)硬化速度が速いほど、(b)架橋点密度が高いほど、(c)架橋点間距離が短いほど弾性率の低い膜を作製できる。具体的にはDPHA(ジベンタエリスリトールヘキサアクリレート)、PETIA(ペンタエリスリトール トリアクリレート)、NP(ネオペンチルグリコールジアクリレート)、HD(1,6−ヘキサンジオ−ルジアクリレート)などが好ましく採用される。
【0016】
本発明におけるアンチカール層の体積収縮率は、10〜30%であることが好ましい。また、本発明におけるアンチカール層の弾性率は、0.3〜1.0Gpaであることが好ましい。さらに、本発明におけるアンチカール層の層厚みは、0.1〜5μmであることが好ましい。
尚、本発明におけるアンチカール層の含水時の弾性率の低下は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。また、ここでいう、含水時とは、40℃90%の環境下で1日以上放置された場合のことをいう。
【0017】
また、温度変化に対する反り抑制のためには接着層とアンチカール層の温度膨張係数の差を100〜−100ppm/℃の範囲にするのが好ましい。このためには接着層等とアンチカール層の材質を同じにすることが好ましい。なお、ここでの温度膨張係数とは、10℃と50℃の間で測定される熱膨張曲線の傾きの平均値と定義する。
また、本発明では、アンチカール層を事前にカールさせておくことも好ましい。この場合、アンチカール層は硬化型の樹脂層である必要はなく、金属箔、プラフィルムなどのフィルムを貼合してもよい。
【0018】
(ガスバリア層)
本発明のガスバリア層は、ガスバリアフィルム、あるいはエンカプシュレーションによるガスバリア層で構成され、大気中の酸素、水分を遮断する機能を有する。本発明におけるガスバリア層は、少なくとも1層の無機層を有し、好ましくは、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層が積層したものである。有機層と無機層は、通常交互に積層している。各層を構成する組成が膜厚方向に連続的に変化するいわゆる傾斜材料層であってもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(20005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料等が挙げられる。
カスバリアフィルムを構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、2層〜10層がさらに好ましい。
【0019】
(ガスバリア層基材)
本発明におけるガスバリア層は、基材フィルムを有するいわゆるガスバリアフィルムであっても、有機EL素子上に直接ガスバリアフィルムが積層されたいわゆるエンカプシュレーション膜であってもよい。
ガスバリア層がガスバリアフィルムの場合の基材フィルムは、好ましくは、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機層、無機層等の積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、金属支持体(アルミニウム、銅、ステンレス等)ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0020】
本発明におけるガスバリアフィルムは、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0021】
本発明のガスバリアフィルムを偏光板と組み合わせて使用する場合、ガスバリアフィルムのバリア性積層体がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき偏光板よりセルの内側にガスバリアフィルムが配置されることになるため、ガスバリアフィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリアフィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリアフィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリアフィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0022】
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしてはセルローストリアセテート(富士フイルム(株):富士タック)、ポリカーボネート(帝人化成(株):ピュアエース、(株)カネカ:エルメック)、シクロオレフィンポリマー(JSR(株):アートン、日本ゼオン(株):ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマー(三井化学(株):アペル(ペレット)、ポリプラスチック(株):トパス(ペレット))ポリアリレート(ユニチカ(株):U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学(株):ネオプリム)等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
【0023】
本発明におけるガスバリアフィルムは有機EL素子に利用されることから、プラスチックフィルムは透明であること、すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明のガスバリアフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0024】
(無機層)
無機層は無機物で構成されガスバリア性を有すれば特に制限はない。無機物としては、典型的には、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、亜鉛、スズの酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、水素化物等が挙げられる。これらは純物質でもよいし、混合物でもよい。これらのうち、アルミニウムの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物、または珪素の酸化物、窒化物若しくは酸窒化物が好ましい。ガスバリア層を構成する各無機層の厚みに関しては特に限定されないが、典型的には1層あたり5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1層あたり10nm〜200nmである。
【0025】
無機層の形成方法としては、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、ゾルーゲル法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許登録第3400324号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報記載の形成方法を採用することができる。
特に、珪素の化合物を成膜する場合、誘導結合プラズマCVD、電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマを用いたPVDまたはCVDのいずれかの形成方法を採用するのが好ましく、誘導結合プラズマCVDによる形成方法を採用するのが最も好ましい。誘導結合プラズマCVDや電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマとを用いたCVD(ECR−CVD)は、例えば、化学工学会、CVDハンドブック、p.284(1991)に記載の方法にて実施することができる。また、電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマとを用いたPVD(ECR−PVD)は、例えば、小野他、Jpn.J.Appl.Phys.23、No.8、L534(1984)に記載の方法にて実施することができる。前記CVDを用いる場合の原料としては、珪素供給源としてシラン等のガスソースや、ヘキサメチルジシラザン等の液体ソースを用いることができる。
【0026】
(有機層)
本発明におけるガスバリア層は有機層を有することが好ましい。有機層は、上記の無機物からなる無機層の脆性およびバリア性を向上させるために、これと隣接して1層以上設けられる。
【0027】
有機層は、(1)ゾルゲル法を用いて作成した無機酸化物層を利用する方法、(2)有機物を塗布または蒸着で積層する方法等を用いて形成することができる。また、有機物を塗布で積層する場合には常温常厚で固体の有機物を溶媒で溶解し、塗布乾燥することで固体膜を得ることもできる。この場合硬化を行わない方法も取ることができる。(1)および(2)は、組み合わせて使用しても良く、例えば、樹脂フィルム上に(1)の方法で薄膜を形成した後、無機酸化物層を作成し、その後(2)の方法で薄膜を形成しても良い。以下においてこれらの方法を順に説明する。
【0028】
(1)ゾルゲル法
ゾル−ゲル法は、好ましくは溶液中、または塗膜中で金属アルコキシドを加水分解、縮重合させて、緻密な薄膜を得るものである。このとき、樹脂を併用して有機−無機ハイブリッド材料にしても良い。
【0029】
ゾル−ゲル法に用いる金属アルコキシドとしては、アルコキシシランおよび/またはアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを挙げることができる。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等が好ましい。
【0030】
ゾル−ゲル反応時に併用するポリマーは、水素結合形成基を有していることが好ましい。水素結合形成基を有する樹脂の例としては、ヒドロキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、メチロールメラミン等とその誘導体);カルボキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和酸の単位を含む単独または共重合体と、これらのポリマーのエステル化物(酢酸ビニル等のビニルエステル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル等の単位を含む単独または共重合体)等);エーテル結合を有するポリマー(ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、珪素樹脂等);アミド結合を有するポリマー(>N(COR)−結合(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す)を有するポリオキサゾリンやポリアルキレンイミンのN−アシル化物);>NC(O)−結合を有するポリビニルピロリドンとその誘導体;ウレタン結合を有するポリウレタン;尿素結合を有するポリマー等を挙げることができる。
【0031】
また、ゾル−ゲル反応時にモノマーを併用し、ゾル−ゲル反応時、またはその後に重合させて有機−無機ハイブリッド材料を作成することもできる。
【0032】
ゾル−ゲル反応時には、水、および有機溶媒中で金属アルコキシドを加水分解、および縮重合させるが、この時、触媒を用いることが好ましい。加水分解の触媒としては、一般に酸(有機または無機酸)が用いられる。
酸の使用量は、金属アルコキシド(アルコキシシランおよび他の金属アルコキシドを含有する場合には、アルコキシシラン+他の金属アルコキシド)1モル当たり、0.0001〜0.05モルであり、好ましくは0.001〜0.01モルである。加水分解後、無機塩基やアミンなどの塩基性化合物を添加して溶液のpHを中性付近にし、縮重合を促進しても良い。
【0033】
また、中心金属にAl、Ti、Zrを有する金属キレート化合物、スズの化合物等の有機金属化合物、有機酸のアルカリ金属塩等の金属塩類など、他のゾル−ゲル触媒も併用することができる。
ゾルゲル触媒の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるアルコキシシランに対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
【0034】
次に、ゾル−ゲル反応に用いられる溶媒について述べる。溶媒はゾル液中の各成分を均一に混合させ、組成物の固形分調整をすると同時に、種々の塗布方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性および保存安定性を向上させるものである。これらの溶媒は上記目的の果たせるものであれば特に限定されない。これらの溶媒の好ましい例として、例えば水、および水と混和性の高い有機溶媒が挙げられる。
【0035】
ゾル−ゲル反応の速度を調節する目的で、多座配位可能な有機化合物を添加して、金属アルコキシドを安定化しても良い。多座配位可能な有機化合物の例としては、β−ジケトンおよび/またはβ−ケトエステル類、およびアルカノールアミンが挙げられる。
このβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−tert−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。
これらの多座配位可能な化合物は、ゾル−ゲル触媒として前記の金属キレート化合物を用いた場合、その反応速度を調節する目的にも用いることができる。
【0036】
次にゾル−ゲル反応組成物を塗設する方法について述べる。ゾル液はカーテンフローコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート等の塗布法によって、透明フィルム上に薄膜を形成することができる。この場合、加水分解のタイミングは製造工程中の如何なる時期であっても構わない。例えば、予め必要な組成の液を加水分解部分縮合して目的のゾル液を調製し、それを塗布−乾燥する方法、必要な組成の液を調製し塗布と同時に加水分解部分縮合させながら乾燥する方法、塗布−一次乾燥後、加水分解に必要な水含有液を重ねて塗布し加水分解させる方法等を好適に採用できる。また、塗布方法としては、様々な形態をとることが可能であるが、生産性を重視する場合には多段の吐出口を有するスライドギーサー上で下層塗布液と上層塗布液のそれぞれが必要な塗布量になる様に吐出流量を調整し、形成した多層流を連続的に支持体に乗せ、乾燥させる方法(同時重層法)が好適に用いられる。
【0037】
塗設後の乾燥温度は好ましくは150〜350℃、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは150〜200℃である。
【0038】
塗布、乾燥後のフィルムをさらに緻密にするため、エネルギー線の照射を行っても良い。その照射線種に特に制限はないが、支持体の変形や変性に対する影響を勘案し、紫外線、電子線あるいはマイクロ波の照射を特に好ましく用いることができる。照射強度は30mJ/cm2 〜500mJ/cm2 であり、特に好ましくは50mJ/cm2 〜400mJ/cm2 である。照射温度は室温から支持体の変形温度の間を制限無く採用することが可能であり、好ましくは30℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜130℃である。
【0039】
(2)有機物を塗布または蒸着で積層する方法
(有機層)
本発明における有機層は、有機ポリマーを主成分とする。有機ポリマーとしてはポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、およびポリメタクリレート等が挙げられる。有機ポリマーは付加重合ポリマーでも縮合重合ポリマーでも良い。付加重合ポリマーはホモポリマーでも共重合ポリマーでも良い。有機ポリマーは架橋されていても良い。有機層中に含まれる有機ポリマーは1種でも2種以上の混合物でも良い。本発明の有機ポリマーは有機層を成膜する際、ポリマーの塗布あるいはモノマーおよび/またはオリゴマーの重合反応および/または架橋反応により形成する。
【0040】
本発明において、有機層は液体の有機化合物を実質的に含まないことを特徴とする。液体の有機化合物とは融点が25℃未満で沸点が25℃以上の有機化合物を指す。有機層が液体の有機化合物を実質的に含まないとは、有機層中に含まれる液体の有機化合物の含有率が有機層の0.5質量%未満であることを言う。本発明においては有機層中に含まれる液体の有機化合物の含有率が有機層の0.1質量%未満であることが好ましく、0.01質量%未満であることがさらに好ましい。すなわち、本発明においては、有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であり、有機層に含まれる有機化合物の99.9質量%以上が25℃において固体であることが好ましく、有機層に含まれる有機化合物の99.99質量%以上が25℃において固体であることが特に好ましい。
【0041】
本発明者らの検討によれば、有機ポリマーや固体の有機化合物は有機EL素子に対して悪影響を及ぼさないが、液体の有機化合物は有機EL素子に対して悪影響を及ぼすことがわかっている。いかなる理論にも拘泥するものではないが、この原因は、ガスバリア層上に有機EL素子を作製する際、液体の有機化合物がガスバリア層の有機層から有機EL素子部に拡散するためであると推定される。有機層に含まれる液体の有機化合物とは主として有機層設置の際に用いた液体モノマーの未反応物である。このため、本発明では有機層を設置する際に固体モノマーを用い、実質的に液体モノマーを用いない。また、同じ固体モノマーでも融点が高いほど有機EL素子に対する悪影響が小さい。前記固体モノマーの好ましい融点は40℃〜400℃であり、より好ましくは60℃〜300℃である。
なお、有機層を設置する際に揮発性の有機溶剤を用いることは差し支えないが、前記揮発性の有機溶剤が有機層に残存することは本発明の趣旨に反する。本発明において有機層設置の際に用いる有機溶剤は沸点が200℃以下であり、150℃以下が好ましく、100℃以下がさらに好ましい。これらの有機溶剤を用いるなどして、実質的に有機溶剤が残存しないように製造する。
【0042】
本発明において、無機層と有機層との密着性が高いことは膜強度を維持する上で重要である。このような目的のためには前記固体モノマーとして、カルボキシル基もしくはホスホン酸基を有する固体モノマーを用いることが好ましい。カルボキシル基もしくはホスホン酸基は無機層がSi、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物であるときに特に有効である。有機層設置に用いる全固体モノマーに対するカルボキシル基もしくはホスホン酸基含有固体モノマーの割合は、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0043】
有機層の形成方法としては、例えば、真空成膜法等を挙げることができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましく、成膜速度を制御しやすい抵抗加熱蒸着法がより好ましい。本発明においては成膜中もしくは成膜後に有機化合物を重合することにより、有機ポリマー層を形成させる。有機化合物を重合する方法としては特に限定は無いが、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせが好ましく用いられる。加熱重合を行う場合、基材となるプラスチックフィルムは相応の耐熱性を有する必要がある。この場合、少なくとも、加熱温度よりもプラスチックフィルムのTg(ガラス転移温度)が高いことが必要である。光重合を行う場合、有機層内に光重合開始剤を含ませる必要がある。本発明では光重合開始剤も常温で固体のものが選択される。光重合開始剤は固体モノマーと同時に蒸着される。
未反応モノマーをポリマーに転換するためにポスト重合を行っても良い。ポスト重合は加熱、光(紫外線、可視光線)照射、電子線照射、プラズマ照射、およびこれらの組み合わせを用いて行われる。ポスト重合は有機層を設置した直後に行っても良いし、すべての層を設置した後に行っても良い。有機層を複数層設置する場合は、各有機層設置ごとにポスト重合を行っても良い。
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難となるし、厚すぎると外力によりクラックを発生し、バリア性が低下する。かかる観点から、上記隣接有機層の厚みは、10nm〜2000nmが好ましく、20nm〜1000nmさらに好ましく、50nm〜500nmが最も好ましい。
【0044】
モノマーを架橋させて得られた高分子を主成分とする有機層を形成する方法で用いるモノマーとしては、紫外線あるいは電子線で架橋できる基を含有していれば特に限定は無いが、アクリロイル基またはメタクリロイル基、オキセタン基を有するモノマーを用いることが好ましい。例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのうち、2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる高分子を主成分とすることが好ましい。これらの2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーは2種類以上を混合して用いても、また1官能の(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。
また、オキセタン基を有するモノマーとしては、特開2002−356607号公報の一般式(3)〜(6)に記載されている構造を有するモノマーを使うことが好ましい。この場合、これらを任意に混合しても良い。
【0045】
本発明においては、好ましくはラジカル重合性化合物および/またはエーテル基を官能基に有するカチオン重合性化合物の重合物から構成された有機層である。
(重合性化合物)
本発明で用いる重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物(アクリレートとメタクリレートをあわせて(メタ)アクリレートと表記する)、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
【0047】
以下に、(メタ)アクリレート系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
さらに、本発明で用いるガスバリア層には、上記の他、基材フィルム、有機層、無機層の間、或いは、ガスバリア層と接着層の間、該フィルムの最外側に所望の機能層を設置することができる。このような機能層の例としては、平滑化層・密着改良層、反射防止層、帯電防止層等が挙げられる。
【0054】
本発明で用いるガスバリア層の40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率は、0.01g/m2・day以下であることが好ましく、0.001g/m2・day以下であることがより好ましく、0.0001g/m2・day以下であることが特に好ましい。
また、本発明で用いるガスバリア層の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましい。
【0055】
(有機EL素子)
次に、有機EL素子(以下、「本発明の有機EL素子」と呼ぶ)について説明する。
【0056】
本発明の有機EL素子は、非透光性基材上に一対の電極(陰極と陽極)を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と呼ぶ)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0057】
(非透光性基材)
本発明における非透光性基材は、トップエミッション型有機EL素子に用いられる公知の基板を採用することができる。すなわちバリアフィルムの機材として例示されている樹脂フィルム、アルミ、ニッケル、ステンレスなどの金属箔、ガラス基板などが使用できるが、反射層、乱反射防止層などの光不透過性の機能層が付与された基材を示す。その中でも特に樹脂フィルムに金属の薄層を蒸着、スパッターなどで製膜した基板、この金属面を黒化して乱反射防止を行ったフィルムが好適に用いられる。
【0058】
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0059】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0060】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記非透光性基材上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流または高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0061】
本発明の有機EL素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。前記非透光性基材上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、非透光性基材における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0062】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0063】
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としては1属金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0064】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、1属金属や2属金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%の1属金属または2属金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0065】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種または2種以上を同時または順次にスパッタ法等に従って行うことができる。陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0066】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。また、陰極と前記有機化合物層との間に、1属金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜して、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0067】
(有機化合物層)
本発明の有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0068】
(有機化合物層の形成)
本発明の有機EL素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0069】
(発光層)
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0070】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0071】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
【0072】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0073】
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
【0074】
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
【0075】
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0076】
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0077】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのがさらに好ましい。電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0078】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔ブロック層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0079】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。本発明の有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号公報、米国特許第5,828,429号、同6,023,308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0080】
以上、本発明の有機EL素子の典型的な応用例について詳細に説明したが、本発明の技術は、有機EL素子以外の用途へも幅広く適用することができる。例えば、液晶表示装置や電子ペーパーなどの画像表示装置などに適用することが可能である。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0082】
[実施例1] ガスバリアフィルムの作製と評価
基材フィルム上に無機層と有機層を設けたガスバリアフィルム(試料No.101〜104)を下記の手順にしたがって作製した。各ガスバリアフィルムの構造の詳細は表1に記載されるとおりである。基材フィルムには、ポリエチレンナフタレート(PEN、厚み100μm、帝人デュポン(株)製、Q65A)フィルムを用いた。
【0083】
[1]無機層(X)の形成
リアクティブスパッタリング装置を用いて、酸化アルミニウムの無機層を形成した。以下に具体的な成膜条件を示す。
リアクティブスパッタリング装置の真空チャンバーを、油回転ポンプとターボ分子ポンプとで到達圧力5×10-4Paまで減圧した。次にプラズマガスとしてアルゴンを導入し、プラズマ電源から電力2000Wを印加した。チャンバー内に高純度の酸素ガスを導入し、成膜圧力を0.3Paになるように調整して一定時間成膜し、酸化アルミニウムの無機層を形成した。得られた酸化アルミニウム膜は、膜厚が40nmで、膜密度が3.01g/cm3であった。
【0084】
[2]有機層(Y、Z)の形成
有機層は、常圧下での溶剤塗布による成膜方法(有機層Y)と、減圧下でフラッシュ蒸着法による成膜方法(有機層Z)の二通りを用いて行った。以下に具体的な成膜内容を示す。
[2−1]常圧下での溶剤塗布による成膜
[2−1−1]有機層(Y)の成膜
光重合性アクリレートとしてトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA、ダイセル・サイテック製)9g、および光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、イルガキュア907)0.1gを、メチルエチルケトン190gに溶解させて塗布液とした。この塗布液を、ワイヤーバーを用いて基材フィルムに塗布し、酸素濃度0.1%以下の窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度350mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して有機層Yを形成した。膜厚は、約500nmであった。
【0085】
[2−2]減圧下でフラッシュ蒸着法による成膜
[2−2−1]有機層(Z)の成膜
ヴァイテックス・システムズ社より市販されているBRS-0101を蒸着液として使用した。この蒸着液を、真空チャンバーの内圧が3Paの条件でフラッシュ蒸着法により基材フィルムに蒸着した。続いて同じ真空度の条件で、照射量2J/cm2の紫外線を照射して有機層Zを形成した。膜厚は、約1200nmであった。有機層Zの形成には、有機無機積層成膜装置(Guardian200、ヴァイテックス・システムズ社製)を用いて実施した。
【0086】
[3]ガスバリアフィルムの作製
ガスバリアフィルムは、基材フィルムに上記の無機層と有機層を表1に記載された各試料の構成に従って順次形成することで作製した。また作製の方法は、次の二通りで行った。
[3−1]溶剤塗布による有機層形成と減圧下での無機層形成を繰り返す方法(積層A)
基材フィルム上に有機層と無機層を交互に積層した。有機層の上に無機層を積層する時は、溶剤塗布で有機層を成膜した後に真空チャンバーに入れて減圧し、真空度が10-3Pa以下の状態で一定時間保持してから無機層を成膜した。また無機層の上に有機層を積層する時は、無機層を成膜後直ちに、溶剤塗布で有機層を成膜した。
[3−2]減圧下で有機層と無機層を一貫成膜する方法(積層B)
上述の有機無機積層成膜装置Guardian200を用い、有機層と無機層を積層した。この装置は、有機層および無機層とも減圧環境下で成膜を行い、且つ有機層と無機層の成膜チャンバーが連結しているので、減圧環境下で連続成膜することが可能である。そのため、バリア層が完成するまで大気に開放されることがない。
【0087】
[4]ガスバリアフィルムの物性評価
下記装置を用いてガスバリアフィルムの諸物性を評価した。
[層構成(膜厚)]
日立(株)製、走査型電子顕微鏡「S−900型」でフィルムサンプルの超薄切片を観察して測定した。
【0088】
[水蒸気透過率(g/m2/day)]
ガスバリアフィルム上に直に金属Caを蒸着し、蒸着Caが内側になるよう該フィルムとガラス基板を市販の有機EL用封止材で封止して測定試料を作成した。次に該測定試料を前記の温湿度条件に保持し、ガスバリアフィルム上の金属Caの光学濃度変化(水酸化あるいは酸化により金属光沢が減少)から水蒸気透過率を求めた。
【0089】
【表1】

【0090】
(有機EL素子の作製)
<基板の作製>
非透光性基材として厚みが150μmのアルミ箔を用い、下記条件で絶縁層を設け、基板を作製した。
非透光性基材を真空チャンバー内に導入し、絶縁層として、RFマグネトロンスパッタ(条件:基材温度50℃)によりSiO2を0.05μm製膜して形成した。
【0091】
<下部電極>
この非透光性基材を真空チャンバー内に導入し、SnO2含有率が10質量%であるITOターゲット(インジウム:錫=95:5(モル比))を用いて、DCマグネトロンスパッタ(条件:基材温度150℃、酸素圧1×10-3Pa)により、透明電極としてITO薄膜(厚み0.2μm)を非透光性基材上に形成した。ITO薄膜の表面抵抗は10Ω/□であった。
次に、透明電極を形成した非透光性基材を洗浄容器に入れ、IPA洗浄した後、これにUV−オゾン処理を30分行った。
<有機化合物層>
この透明電極上に正孔注入層として銅フタロシアニンを真空蒸着法にて1nm/秒の速度で蒸着して0.01μm設けた。
【0092】
次にこの上に正孔輸送層を設けた。正孔輸送材としてはN,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニルベンジジン(NPD)を真空蒸着法にて蒸着して0.3μmの正孔輸送層を設けた。
【0093】
この上に燐光発光材料であるトリス(2−フェニルピリジル)イリジウム錯体(Ir(ppy)3)、およびホスト化合物として、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニル(CBP)を蒸着比5/100で、真空蒸着法で共蒸着し、0.03μmの発光層を設けた。
その上にブロック層を設けた。ブロック層に用いる電子輸送材としてはアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)4−フェニルフェノレート(Balq2)を用い、真空蒸着法にて1nm/秒の速度で蒸着して0.01μmのブロック層を設けた。
さらにその上に、電子輸送材としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)を用い、真空蒸着法にて1nm/秒の速度で蒸着して0.04μmの電子輸送層を設けた。
【0094】
さらにこの上に電子注入層としてLiFを1nm/秒の速度で蒸着して0.002μmの電子注入層を設けた。
【0095】
<背面電極>
さらにこの電子注入層上にパターニングしたマスク(発光面積が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、Agを0.015μm蒸着し、透明背面電極を形成した。
上記下部電極及び上記背面電極より、それぞれアルミニウムのリード線を結線し、発光積層体を形成した。
この背面電極上に、接着層として1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズBEI)95%とイルガキュア1700、5%とからなる接着剤を0.08mmの厚みで積層し、さらに、上記で作製したガスバリアフィルムを積層した。また、非透光性基材の他方の面に、アンチカール層として、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズBEI)を0.08mmの厚みで積層して、有機EL素子を得た。(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比は、0.9であった。
【0096】
(実施例2)
実施例1において、アンチカール層として、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズBEI)を0.05mmの厚みで積層した以外は、同様に行って有機EL素子を得た。(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比は、1.8であった。
【0097】
(実施例3)
実施例1において、アンチカール層として、予め曲率半径2(1/m)に反らせた50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを貼り付け、その後、接着層として1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズBEI)を0.01mmの厚みで積層した他は、同様に行って有機EL素子を得た。(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比は、0.5であった。
【0098】
(実施例4、5)
実施例1、3において、以下のように変更した他は、同様に行って有機EL素子を得た。
【表2】

【0099】
(比較例1)
実施例1の有機EL素子において、アンチカール層を形成せず、他は同様に行って、有機EL素子を作製した。
【0100】
上記実施例および比較例で得られた有機EL素子を平らな面に置き、その後の結果を確認した。その結果、本願実施例で得られた有機EL素子はいずれも、(4隅の浮きが0.5mm以内)であったが、比較例1で得られた有機EL素子では、接着層の硬化収縮により、非透光性基材の両端が平面からそれぞれ3mm以上浮いているのが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明により、トップエミッション型有機EL素子において、反りを低減することが可能になった。このため、有機EL素子のさらなる薄膜化が期待できる。
本発明の技術は、太陽電池や電子ペーパーにおいても、採用することができる。また、ガスバリアフィルムを基板として用いる画像表示素子においても、本発明の技術を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のトップエミッション型有機EL素子の概略図を示す。
【符号の説明】
【0103】
1 非透光性基材
2 電極
3 有機化合物層
4 接着層または平滑層
5 ガスバリア層
6 アンチカール層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非透光性基材の一方の面上に、少なくとも一対の電極層、該電極層の間に設けられた有機化合物層を有し、前記非透光性基材から遠い側の電極上に接着層または平滑化層を介してガスバリア層が積層されてなる有機EL素子において、前記非透光性基材の他方の面上にアンチカール層が設けられていることを特徴とするトップエミッション型有機EL素子。
【請求項2】
前記接着層または平滑化層の硬化時の体積収縮率の3乗根、弾性率、層厚み(単位:μm)を、順に、x1、y1、z1とし、アンチカール層の硬化時の体積収縮率の3乗根、弾性率、層厚み(単位:μm)を、順に、x2、y2、z2としたときの、(x1)×(y1)×(z1)の、(x2)×(y2)×(z2)に対する比が0.1〜10である、請求項1のトップエミッション型有機EL素子。
【請求項3】
(x1)×(y1)×(z1)の(x2)×(y2)×(z2)に対する比が0.3〜3である、請求項2に記載のトップエミッション型有機EL素子。
【請求項4】
接着層は、重合性(メタ)アクリレートモノマーの重合物を主成分とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトップエミッション型有機EL素子。
【請求項5】
アンチカール層の含水時の弾性率の低下が30%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトップエミッション型有機EL素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法であって、予め非透光性基材をアンチカール層側にカールさせてアンチカール層を設けた後、接着層または平滑化層を介してガスバリアフィルムを設ける、有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−81123(P2009−81123A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127157(P2008−127157)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】