説明

トナーとその製造方法、トナーを用いた現像剤および画像形成方法

【課題】着色剤の分散性が良好で、帯電性や色特性に優れると共にOHP透過性の良いトナーとその製造方法、現像剤および画像形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、「有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂と、有機溶媒に難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルからなる着色剤分散用樹脂を溶融混練して得られる着色剤マスターバッチ」、および「離型剤」を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成される母体粒子によりトナーを構成する。前記トナーを用いて一成分系または二成分系現像剤とし、これを用いて画像形成装置により画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するための高画質化に対応できるトナーに関し、詳しくは、低温定着性、耐熱保存性を維持しつつ帯電性に優れると共に透過性(OHP透過性等)が良好なトナーとその製造方法、該トナーを用いた現像剤および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置や静電記録装置等において、電気的または磁気的潜像は、トナーを用いて顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成し、次いで、トナーを用いて潜像を現像して、トナー像を形成している。トナー像は、通常、紙等の転写材上に転写され、次いで、加熱等の方法で定着されている。現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、その他の添加剤を含有する着色粒子であり、その製造方法には、大別して粉砕法と懸濁重合法がある。粉砕法では、熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤等を溶融混合して分散させ、得られた組成物を粉砕、分級することによりトナーを製造している。粉砕法によれば、ある程度優れた特性を有するトナーを製造することができるが、トナー用材料の選択に制限がある。例えば、溶融混合により得られる組成物は、経済的に使用可能な装置により粉砕し、分級できるものでなければならない。このため、粒子径分布が広くなりやすく、良好な解像度と階調性のある複写画像を得るためには、例えば、粒子径が5μm以下の微粉と20μm以上の粗粉を分級により除去しなければならず、収率が非常に低くなるという欠点がある。また、粉砕法では、着色剤、帯電制御剤等を熱可塑性樹脂中で均一に分散することが困難である。さらに、着色剤がトナーの表面に露出するため、トナー表面の帯電が不均一となり、現像特性が低下するという問題がある。したがって、粉砕法では、高性能化の要求に対して十分対応できないのが現状である。
【0003】
近年、これらの粉砕法における問題点を克服するために、懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案され、実施されている。しかし、このような公知の重合法、例えば、懸濁重合法で得られるトナーは、球形であり、クリーニング性に劣るという欠点がある。懸濁重合法によるトナーでは、画像面積率の低い現像・転写では、転写残トナーが少なく、クリーニング不良が問題となりにくいが、写真画像等の画像面積率の高い場合、または給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとして発生する場合に、転写残トナーが蓄積すると、画像の地汚れが発生する。また、転写残トナーが感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染して、本来の帯電能力が発揮できなくなることがある。さらに、トナーの製造時に、重合を行うため、従来、トナーに用いていた材料が使用できない場合が多い。従来の材料を用いることができる場合でも、樹脂、着色剤等の添加剤の影響を受けて粒子径の制御が十分にできない場合があり、材料選択の自由度が低いという問題がある。
このため、乳化重合法により得られる樹脂粒子を会合させて不定形のトナーを得る方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、乳化重合法で得られるトナーは、従来混練粉砕法で優れた定着性能やカラー適性を発現していたポリエステル樹脂が基本的に使用できず、装置の小型化、高速化、カラー化等に十分対応することができない点が問題である。
【0004】
そこで、本出願人は先に、溶解樹脂懸濁法により、透明性、機械的強度、低温定着性に優れたポリエステル樹脂前駆体を反応させたポリエステル変性樹脂をトナー材料に用いてトナーを得る方法を提案した(特許文献2参照)。これにより、上記問題を解決し、クリーニング性を維持しつつ、低温定着システムに対応し、耐オフセット性が良好で、定着装置および画像の汚染が抑制されたトナーとしている。しかし、特許文献2の溶解懸濁法で製造されるトナーは着色剤をトナー中に均一に分散させることが難しく、着色剤(顔料)のトナー表面偏在や、トナー毎の着色剤含有量の差異が生じやすいため、帯電の不均一性が生じて、長期間使用した場合の帯電安定性が低下するという問題もある。また、カラー出力の場合、現像性や転写性のわずかな悪化がカラーバランスや階調性の悪化を引き起こす。さらに、トナー中の着色剤は、一般に樹脂と相溶しないため、着色剤の分散が悪いと、界面で透過光を乱反射してOHP等の透過性を阻害するという難点がある。
【0005】
このような状況を踏まえて本出願人は、溶解樹脂懸濁法により、トナーを得る方法を種々提案した(特許文献3〜10参照)。
例えば、オフセット性、帯電性、保存性、発色性が良好でOHP透過性を有する、着色力、耐熱性の優れたイエロートナーを得る方法として、結着樹脂と特定の構造を有する着色剤を用いて形状係数を制御する方法(特許文献3)、あるいは結着樹脂の一部をなす樹脂と混練してなるマスターバッチ加工された特定の着色剤を用いる方法(特許文献4)、あるいは結着樹脂、特定の構造を有する着色剤、およびN,Nジ置換アミノ基および酸性基を有するアクリル系重合体からなる分散剤を用いて形状係数を制御する方法(特許文献5)を提案した。また、着色剤の分散性を向上したトナーを得る方法として、酸価とアミン価を規定した分散剤を使用する方法(特許文献6)を提案した。また、クリーニング性の維持、低温定着システムへの対応、良好な耐オフセット性、定着装置および画像の汚染抑制を図ったトナーを得る方法として、樹脂微粒子と無機微粒子を含む水系媒体中で造粒して表面に樹脂微粒子を残存させる方法(特許文献7)を提案した。また、組成の均一性、帯電安定性、カブリやトナー飛散が少なく高画質が得られる小粒径で粒度分布の狭いトナーを得る方法として、水系媒体中で形成した水中油滴型分散液の体積平均粒径を増大させる方法(特許文献8)を提案した。また、低温定着性と耐オフセット性を両立させ、高精細画像の形成が可能なトナーを得る方法として、2種以上の結着樹脂の一方および他方の溶解度パラメータを規定する方法(特許文献9)を提案した。また、低温定着性、耐オフセット性、色再現性を確保したトナーを得る方法として、結晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂とフラッシング法により顔料を樹脂中に分散させて得られる着色剤を用いる方法(特許文献10)を提案した。
上記特許文献3〜10により、それぞれの課題に対して一定の効果がもたらされるが、帯電性の更なる向上並びに透過性(OHP等)の向上に対する要求特性は一層高度化しており、着色剤の分散性の改善が望まれている。
なお、正帯電の帯電特性にすぐれたイエロートナーを得る方法として、溶解樹脂懸濁法において、アクリル樹脂、着色剤およびアミン化合物を用いる方法(特許文献11)が提案されている。あるいは、イエロートナーを得る方法として、溶解樹脂懸濁法において、樹脂材料、着色剤および有機溶剤を含む分散質が水性分散媒中に分散した分散液を合一させる方法(特許文献12)が提案されている。いずれの提案も、一層高度化する着色剤の分散性の要求特性に対して十分とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、着色剤の分散性が良好で、帯電性や色特性に優れると共に透過性(OHP透過性)の良好なトナーとその製造方法、現像剤および画像形成方法を提供することを目的とする。なお、トナーの低温定着性、ホットオフセット性、耐熱保存性の維持も図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔14〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0008】
〔1〕:上記課題は、少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、着色剤と着色剤分散用樹脂とを含む着色剤マスターバッチおよび離型剤を前記有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成される母体粒子を有するトナーであって、
前記着色剤分散用樹脂として下記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルを含有していることを特徴とするトナーにより解決される。
[難溶性]:前記有機溶媒10質量部に前記アミド結合構造を含むポリエステル4質量部を加えて混合したときに25℃にて白濁化するもの、もしくは一度透明な溶解液になった後、12時間以内に白濁化するもの。
【0009】
〔2〕:上記〔1〕に記載のトナーにおいて、前記着色剤マスターバッチが、有機顔料からなる着色剤と前記着色剤分散用樹脂を溶融混練してなるものであることを特徴とする。
【0010】
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載のトナーにおいて、前記結着樹脂と前記着色剤分散用樹脂が相溶性を有することを特徴とする。
【0011】
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のトナーにおいて、前記着色剤が、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー185およびピグメントレッド122から選択されるいずれかの有機顔料を含有することを特徴とする。
【0012】
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載のトナーにおいて、前記トナー組成液中に、活性水素基を有する化合物と、該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体からなる樹脂前駆体を含み、該樹脂前駆体の反応により結着樹脂とされることを特徴とする。
【0013】
〔6〕:上記〔5〕に記載のトナーにおいて、前記活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体が、活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルであることを特徴とする。
【0014】
〔7〕:上記〔6〕に記載のトナーにおいて、前記トナー組成液中に、活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルと共に、未変性のポリエステルを含み、前記未変性のポリエステル(A)に対する前記活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル(B)の質量比[(B)/(A)]が、1/19以上3/1以下であることを特徴とする。
【0015】
〔8〕:上記〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載のトナーにおいて、前記結着樹脂が、スチレン変性ポリエステルまたはオレフィン変性ポリエステルを含有することを特徴とする。
【0016】
〔9〕:上記〔1〕乃至〔8〕のいずれかに記載のトナーにおいて、前記結着樹脂として、有機溶媒に不溶な結晶性ポリエステルを含有することを特徴とする。
【0017】
〔10〕:上記〔9〕に記載のトナーにおいて、前記結晶性ポリエステルの示差走査熱量分析(DSC)により測定される吸熱ピーク温度に対応する融点が、60℃以上110℃以下であることを特徴とする。
【0018】
〔11〕:上記課題は、〔1〕乃至〔10〕のいずれかに記載のトナーの製造方法であって、
少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、有機顔料からなる着色剤と下記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルからなる着色剤分散用樹脂を溶融混練してなる着色剤マスターバッチと、離型剤と、を前記有機溶媒に溶解乃至分散させてトナー組成液(油相)を調製する工程、および、該油相を樹脂微粒子を分散させた水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、乳化・分散液を脱溶剤して母体粒子を形成する工程を備えたことを特徴とするトナーの製造方法により解決される。
[難溶性]:前記有機溶媒10質量部に前記アミド結合構造を含むポリエステル4質量部を加えて混合したときに25℃にて白濁化するもの、もしくは一度透明な溶解液になった後、12時間以内に白濁化するもの。
【0019】
〔12〕:上記課題は、〔1〕乃至〔10〕のいずれかに記載のトナーからなることを特徴とする現像剤により解決される。
【0020】
〔13〕:上記課題は、〔1〕乃至〔10〕のいずれかに記載のトナーと、キャリアからなることを特徴とする現像剤により解決される。
【0021】
〔14〕:上記課題は、少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を〔12〕または〔13〕に記載の現像剤を用いて現像する工程と、該像担持体上に形成されたトナー像を画像支持体に転写する工程と、該転写されたトナー像を定着部材により定着させる定着工程とを含むことを特徴とする画像形成方法により解決される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のトナーは、少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、有機顔料からなる着色剤と前記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルからなる着色剤分散用樹脂とを溶融混練してなる着色剤マスターバッチ、および離型剤を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液(油相)を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、脱溶剤して形成した母体粒子から構成されるため、着色剤の分散性が良好であり、帯電性や色特性、および透過性(OHP等の透過性を阻害しない)に優れ、低温定着性やホットオフセット性および耐熱保存性も良好であることから、電子写真装置や静電記録装置等による画像形成において高画質化に対応できる。
本発明のトナーからなる現像剤(一成分現像剤)あるいは本発明のトナーとキャリアからなる現像剤(二成分現像剤)を用いて、例えば、複写機、レーザープリンターあるいはファクシミリ等の電子写真プロセスを用いる画像形成方法(オイルレス定着方式)により、画像形成しても、画像濃度ムラや低下、地肌汚れなどの少ない高品質画像を継続的に安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例で製造したトナー母体粒子(YA)、(YE)、(YG)、(MA)、(ME)、(MG)、の顔料分散状態を示すTEM観察像である。
【図2】比較例で製造したトナー母体粒子(YH)、(YJ)、(MH)、(MJ)の顔料分散状態を示すTEM観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述のように本発明におけるトナーは、少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、着色剤と着色剤分散用樹脂とを含む着色剤マスターバッチおよび離型剤を前記有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成される母体粒子を有するトナーであって、
前記着色剤分散用樹脂として下記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルを含有していることを特徴とするものである。
[難溶性]:前記有機溶媒10質量部に前記アミド結合構造を含むポリエステル4質量部を加えて混合したときに25℃にて白濁化するもの、もしくは一度透明な溶解液になった後、12時間以内に白濁化するもの。
なお、本発明において、「トナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成される母体粒子から構成されたトナー」を「母体粒子を有するトナー」と呼称する。また、「母体粒子を有するトナー」を「トナー」と称することがある。
【0025】
上記のように本発明におけるトナー材料組成分として、少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、着色剤マスターバッチおよび離型剤を含有する。このようなトナー材料組成分を有機溶媒に溶解乃至分散させてトナー組成液(油相)とし、油相を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、脱溶剤して造粒し、形成される母体粒子により、本発明のトナーを構成することができる。母体粒子は、乳化・分散液を脱溶剤して造粒された粒子を乾燥して得られるか、もしくは、脱溶剤と乾燥を同時に行って得られる。
すなわち本発明者が鋭意検討した結果、トナー材料組成分として、有機顔料からなる着色剤と、前記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルを、予め溶融混練して調製した着色剤マスターバッチを用いることにより、有機顔料からなる着色剤を母体粒子の表面に偏在させることなく、母体粒子中に均一に分散させることができ、これによって母体粒子を有するトナーの均一な帯電性が発揮され、長期間の使用においても帯電安定性が維持され、色特性に優れた画像が形成でき、さらに、界面での透過光の乱反射が抑制されてOHP等の透過性が向上する効果があることを見出した。
また、本発明のトナーにおいては、少なくともポリエステルを主成分として含む結着樹脂により、後述のように低温定着性、ホットオフセット性、耐熱保存性を維持しつつ、上記帯電特性や色特性が発揮される。
以下、本発明の母体粒子を有するトナーに用いられるトナー材料組成分(トナー材料)について順次説明する。
なお以降、「前記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステル」を略して、「アミド結合構造を含むポリエステル」と呼称することがある。
【0026】
〔着色剤分散用樹脂〕
本発明における着色剤マスターバッチには、有機顔料からなる着色剤と着色剤分散用樹脂を溶融混練したものが使用される。この着色剤分散用樹脂としてアミド結合構造を含むポリエステルが用いられる。すなわち、本発明の着色剤分散用樹脂(アミド結合構造を含むポリエステル)はポリエステル中のカルボキシル基にアミンを反応させたアミド結合を含むものであり、前記アミンとしてはこれに限られるものではないが、脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、2−アミノブタン、2−アミノ−2−メチルプロパン、1−アミノペンタン、イソペンチルアミン、2−アミノ−2−メチルブタン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、1−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、アミノエチレンなどの第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソブチルアミンなどの第二級アミンが挙げられる。また、芳香族アミンとしては、アニリン、トルイジンエチルアニン、クミジン、p-tert-ブチルアニリン、p-tert-ペンチルアニリン、キシリジン、チミルアミン、プソイドクミジン、2,4,6―トリメチルアニリン、ペンタメチルアニリン、アミノスチレン、N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、ジフェニルアミン、ジ−p−トリルアミン、N−メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、N−ベンジル−N−メチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、ジアミノベンゼン、トルエンジアミン、N−メチルフェニレンジアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、N,N’−ジメチルフェニレンジアミン、アミノジフェニルアミン、ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、ベンゼントリアミン、1,2−ジアニリノエタン、1,2−ジアニリノプロパン、スチルベンジアミンなどが挙げられる。
ここで、上記アミド結合構造を含むポリエステルの重量平均分子量(Mw)が、5,000以上50,000以下であるものが好適に使用される。Mwが5,000未満のときは立体障害の機能が不十分になることから顔料分散性が低下し、Mwが50,000を超えると溶融混練時の粘度が高くなり、良好な分散性を得るための温度が150℃を超えるため、樹脂の酸化、分解、有機顔料の分解などが発生してそれぞれの機能を維持することができなくなる。また、混練エネルギーが大きくなるため、環境負荷が高くなる。更に好ましい重量平均分子量(Mw)は10,000以上30,000以下である。
また、Mwが、5,000未満の場合には、顔料がトナー表面に偏在してトナー中における顔料分散状態(TEM観察)が不均一となり、顔料粒径も大きく、一方、50,000を超えると、顔料粒径が大きくなり(例えば、300nm以上)、いずれも着色剤の均一な分散性を損ない、良好な帯電性や色特性、および透過性の実現が困難になる。
なお、アミド結合構造を含むポリエステルは、低温定着性、機械的強度、動的粘弾性の観点からも好適である。
また前述のように、本発明における着色剤マスターバッチとしては、有機顔料からなる着色剤とアミド結合構造を含むポリエステルとを予め溶融混練したものを用いることを特徴とするものである。溶融混練は、例えば、加熱(100℃〜150℃程度)により行われ、溶融混練後に圧延冷却し、粉砕したものが好ましく用いられる。
着色剤マスターバッチとして、例えば、有機顔料からなる着色剤と、アミド結合構造を含むポリエステルを有機溶媒(例えば、酢酸エチル等)に溶解し、ビーズミルなどで調整したものを用いた場合には、顔料がトナー表面に偏在し、顔料粒径も大きく、着色剤の均一な分散性が発揮されず、本発明のような効果は得られない。
【0027】
上記着色剤分散用樹脂(アミド結合構造を含むポリエステル)のガラス転移点温度(Tg)は、50℃以上100℃以下が好ましく、更に好ましくは60℃以上80℃以下である。Tgが50℃未満の場合トナー耐熱保存性が低下する。また、100℃より高いと混練エネルギーが大きくなるため、環境負荷が高くなってトナーの低温定着性にも影響を与える。
なお、樹脂のガラス転移点温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて求めた吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0028】
また、着色剤分散用樹脂(アミド結合構造を含むポリエステル)は、例えば、トナー組成液の調製や母体粒子の形成において用いられる有機溶媒に対して、50℃以下では難溶であることが好ましい。
ここで、有機溶媒に対して難溶であるとは、有機溶媒10質量部に着色剤分散用樹脂4質量部を加えて混合したときに25℃にて白濁化するもの、もしくは一度透明な溶解液になった後、12時間以内に白濁化するものと定義する。本発明では、混合攪拌直後から白濁液となるものについて難溶性とし、また、混合攪拌したときに一時は溶解して透明な溶解液となるものもあるが、放置保管すると透明な溶解液が白濁化するものについても上記定義の範囲に属するものは難溶性とする。
【0029】
着色剤分散用樹脂が、用いられる有機溶媒に可溶な場合、着色剤(有機顔料)が母体粒子の表面に露出する傾向にあり、用いられる有機溶媒に不溶な場合、トナー内で有機顔料が凝集体を形成してしまう傾向にある。
上記着色剤分散用樹脂が用いられる有機溶媒に難溶である場合、有機溶媒に可溶な結着樹脂との相溶性は満たされ、且つ、有機顔料が母体粒子の表面に露出する傾向が抑制される。
なお、アミド結合構造を含むポリエステルにおける該アミド結合構造は、トナー全体の0.01wt%以上3.0wt%未満であり、1%wt以下であることが好ましい。0.01wt%未満ではその機能が発生せずに顔料分散性が低下する。3.0wt%以上ではトナーの帯電性が不安定となる。
【0030】
本発明に用いられる着色剤分散用樹脂(アミド結合構造を含むポリエステル)は、その溶解性を調整する手段としてエポキシ化合物を用いることが好ましい。すなわち、ポリエステル中のカルボキシル基とエポキシ化合物のエポキシ基とを反応させてポリエステル樹脂構造中にエポキシ化合物由来のエーテル結合構造やエステル結合構造を含ませることで溶解性の調整が可能である。
【0031】
前記エポキシ化合物としてはこれに限られるものではないが、ネオデカン酸のモノグリシジルエステルなどのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物が挙げられる。これらは2種以上を併用しても差し支えない。
【0032】
〔有機顔料からなる着色剤〕
前記有機顔料からなる着色剤としては、公知の顔料の中から目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、ジンクグリーン、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、リトボン、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、特に好適に使用することができる有機顔料からなる着色剤としては、限定するものではないが、例えば、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド185等のピグメントレッド;C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー185等のピグメントイエロー;C.I.ピグメントブルー15:3等のピグメントブルーなどが挙げられる。
上記着色剤の一部は分散剤を用いなくてもトナー中の分散性に優れたものもあるが、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントレッド122等は、トナー組成液(油相)を水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後の乳化・分散液を脱溶剤(脱溶媒)する時に有機顔料が母体粒子表面に移動して偏在する傾向があり、トナーの帯電性が大きく損なわれる原因となっている。
【0034】
前述のように本発明のトナーにおける着色剤は、有機顔料と着色剤分散用樹脂(アミド結合構造を含むポリエステル)を加熱混練(溶融混練)した着色剤マスターバッチ(以降、「マスターバッチ」と略称することがある)の形態で用いられる。
マスターバッチの製造手段としては、2本ロールミル、3本ロールミル、ニーダー、1軸エクストルーダー、2軸エクストルーダー、オープンロール連続混練機等の高せん断分散装置を用いることができる。
【0035】
前記マスターバッチにおける前記着色剤の粒径としては、例えば、300nm以下が好ましい。該粒径が300nmを超えると、トナーを製造した場合、画質が低下しやすくなることがあり、特に、OHPの光透過性が低下しやすくなることがある。好ましくは250nm以下であり更に好ましくは150nm以下である(例えば、本発明の実施例ではトナー母体中の顔料分散状態をTEM観察で評価する際、顔料粒径が150nm以下を◎、150nmを超え250nm以下であるものを○とした)。なお、着色剤の粒径は小さくなると耐色性が悪化することがあることから、好ましくは30nm以上更に好ましくは50nm以上である。
【0036】
前記着色剤(有機顔料)の粒径は、TEM観察にてトナー断面を観察することで確認することができる。この場合少なくともトナー粒子30個以上の観察から有機顔料径を判断することが重要となる。
【0037】
また、着色剤マスターバッチを、アミド結合構造を含むポリエステル可溶な有機溶媒に溶解し、これをレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(「LA−920」、堀場製作所製)を用いたレーザー光散乱法により測定して着色剤(有機顔料)の粒径を測定することができる。
【0038】
前記トナー中における着色剤(有機顔料)の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機顔料が3〜15質量%となるように調整するのが好ましく、5〜10質量%がより好ましい。前記有機顔料の含有量が3質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、一方、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こりやすくなり、トナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0039】
〔結着樹脂〕
前述のように、本発明における結着樹脂は、少なくともポリエステルを主成分として含むものである。ポリエステルを主成分とすることで、トナーの低温定着性、帯電性、透明性、硬度などの特性を好適なものとすることができる。
本発明におけるポリエステルとは、アルコール成分とカルボン酸成分(酸成分)とを縮重合させて得られるポリエステル構造を有する樹脂であり、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルも含まれる。なお、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、エステル化触媒の存在下で好ましく行うことができる。
【0040】
ポリエステル(以下、「ポリエステル系重合体」と呼称することがある)を構成するアルコール成分としては、限定するものではないが以下のようなモノマーが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、または、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、またはそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物等が挙げられる。
【0041】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、限定するものではないが以下のようなモノマーが挙げられる。
2価の酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類またはその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類またはその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物等が挙げられる。
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、またはこれらの無水物、部分低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0042】
前記ポリエステルの重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、7,500〜30,000が好ましく、10,000〜20,000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、7,500未満であると、耐熱保存性が悪化することがある。一方、前重量平均分子量(Mw)が30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0043】
前記ポリエステルのガラス転移温度としては、40〜70℃が好ましく、50〜60℃がより好ましい。前記ガラス転移温度(Tg)が40℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が不十分となることがある。
【0044】
前記ポリエステルの酸価としては、1.0〜50.0mgKOH/gが好ましく、1.0〜30.0mgKOH/gがより好ましい。このように前記トナーに酸価をもたせることによって、一般的に負帯電性となり易くなる。
また、酸価および水酸基価がそれぞれ上記範囲を越えるものは高温高湿度下、低温低湿度下の環境下において、環境の影響を受けやすく、画像の劣化を招きやすい。
【0045】
本発明において、結着樹脂成分の酸価は、以下の方法(I)〜(IV)により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(I)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂および架橋された結着樹脂以外の成分の酸価および含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤または磁性体等の酸価および含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(II)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(III)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(IV)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式(1)で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W ・・・(1)
【0046】
前記ポリエステルの水酸基価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、10〜120mgKOH/gがより好ましく、20〜80mgKOH/gが更に好ましい。前記水酸基価が5mgKOH/g未満であると、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがある。
本発明において、結着樹脂成分の水酸基価は、上記同様にJIS K−0070の基本操作に準じて測定される。
【0047】
前述のように、本発明における結着樹脂の主成分として用いられるポリエステルとしては、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステル結合を有する樹脂(未変性ポリエステル)および、ポリエステル結合以外の結合単位を有する変性されたポリエステル(変性ポリエステル)が含まれる。一方、ポリエステル以外の結着樹脂成分としては、必要に応じて、各種樹脂が使用できる。
例えば、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレンおよびその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、これらを単独または混合して、前記ポリエステルと併用することができる。
【0048】
本発明においては、前記ポリエステルとして未変性ポリエステルおよび/または変性ポリエステルを用いることができる。
上記のように未変性ポリエステルと変性ポリエステルを併用することができ、未変性ポリエステルを用いることで、例えば、低温定着性やフルカラー装置に用いる場合の光沢性が向上する。なお、後述の未変性ポリエステルと併用する場合に構成成分が類似である変性ポリエステルが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。
本発明において、変性ポリエステルとしては、ワンショット法、プレポリマー法等を用いて製造されているものを用いることができる。
変性ポリエステルは、その高分子成分の分子量を調節しやすく、乾式トナー、特に、オイルレス低温定着特性(定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない広範な離型性および定着性)を確保することができる。
【0049】
変性ポリエステルとしては、スチレン変性ポリエステルまたはオレフィン変性ポリエステルを用いることができる。
スチレン変性ポリエステルまたはオレフィン変性ポリエステルとは、ポリエステル樹脂がスチレン樹脂またはオレフィン樹脂により変性された樹脂、であってもよいし、スチレン樹脂またはオレフィン樹脂がポリエステル樹脂により変性された樹脂であってもよい。このようなスチレン変性ポリエステルまたはオレフィン変性ポリエステルは合成により得ることもできるし、市販品を使用することもできる。
【0050】
また、変性ポリエステルとしては、樹脂前駆体(活性水素基を有する化合物と、該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体)から形成され樹脂を用いることができる。
前記重合体として、活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルが好ましく用いられる。活性水素基を有する化合物と、該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体を反応させることで更にホットオフセット性に優れた母体粒子を有するトナーとすることができる。
前記トナー組成液中に、活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルと共に、未変性のポリエステルを含む場合、未変性のポリエステル(A)に対する前記活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル(B)の質量比[(B)/(A)]が、1/19以上3/1以下であることが好ましい。
(B)/(A)]が1/19未満の場合には、ホットオフセット性への効果が不十分となる場合があり、3/1を超える場合には低温定着性に影響を及ぼす場合がある。
【0051】
前記活性水素基を有する化合物と、前記活性水素基に対して反応性を有する重合体[活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル(「ポリエステルプレポリマー」と略称する)]との反応により変性ポリエステルを得ることができる。
活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルとしては、例えば、イソシアネート基あるいはエポキシ基、カルボキシル基、−COCl基等を有するポリエステルプレポリマーを挙げることができる。中でも、活性水素基を有する化合物(アミン類)との反応により、ウレア変性ポリエステルが得られることからイソシアネート基が好ましい。特に、ウレア変性ポリエステルは、未変性のポリエステル自体の定着温度域での高流動性、透明性を維持したまま、定着用加熱媒体への接着性を抑制することができる。つまり、イソシアネート基を有するポリエステルを活性水素基を有する化合物(アミン類など)と伸長反応させた変性ポリエステルを結着樹脂に含めば、定着下限温度とホットオフセット発生温度の差を広くすることができて、離型幅の向上にも効果を及ぼす。
このような活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルは、従来公知のイソシアネート化剤と、ベースとなるポリエステルプレポリマーとの反応により容易に合成することができる。
【0052】
上記イソシアネート化剤としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0053】
ウレア変性ポリエステルは、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を反応させることにより得られるが、アミン類としては、ジアミン化合物、3価以上のポリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノメルカプタン化合物、アミノ酸化合物、およびこれら化合物のアミノ基をブロックした化合物などが挙げられる。
【0054】
ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)等が挙げられる。
3価以上のポリアミン化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール化合物としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
アミノメルカプタン化合物としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸化合物としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
これら化合物のアミノ基をブロックした化合物としては、前記アミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
これらアミン類のうち好ましいものは、ジアミン化合物およびジアミン化合物と少量のポリアミン化合物の混合物である。また、架橋剤、伸長剤として、アミン類を用いることができる。
さらに、必要により伸長停止剤を用いて変性ポリエステル(ウレア変性ポリエステル)の分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびこれらのアミノ基をブロックしたケチミン化合物などが挙げられる。
【0055】
アミン類の比率は、変性ポリエステル中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満では、伸長反応後のウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0056】
反応時間は、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート基とアミン類の組み合せによる反応性に応じて適宜選択されるが、通常、10分〜40時間であり、2〜24時間が好ましい。反応温度は、通常、0〜150℃であり、40〜98℃が好ましい。また、必要に応じて、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどの公知の触媒を用いることができる。
【0057】
なお、ウレア変性ポリエステルを合成する際に、アミン類の他にアルコール類を添加することにより、ウレタン結合を形成してもよい。このようにして生成するウレア結合に対するウレタン結合のモル比は、0〜9であることが好ましく、1/4〜4/1であることがより好ましく、2/3〜7/3が特に好ましい。この比が9より大きいと、耐ホットオフセット性が低下する。
【0058】
本発明においては、変性ポリエステル(ウレア変性ポリエステル)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、限定するものではないが、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。重量平均分子量が1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。未変性ポリエステルと併用する場合、ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。
上記イソシアネート基を有するポリエステルを得る場合のイソシアネート化剤の比率は、イソシアネート基[NCO]と、ベースとなるポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
この変性ポリエステル中のイソシアネート化剤の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0059】
また、ポリエステルとして、結晶性ポリエステルを結着樹脂中に含有させることができる。
この場合、結晶性ポリエステルは、トナー組成液(油相)を調製する工程と、該油相を水系媒体(水相)中で乳化・分散液として母体粒子を形成する工程において用いられる有機溶媒に不溶であることが重要である。
結晶性ポリエステルは、アルコール成分と酸成分の反応により得られたものであり、少なくとも融点を有するポリエステルである。本発明における結晶性ポリエステルの融点〔示差走査熱量分析(DSC)により測定される吸熱ピーク温度に対応〕は、60℃以上110℃以下であることが好ましい。融点が60℃未満の場合には、耐熱保存性が悪化し、現像装置内部の温度でブロッキングが発生しやすくなる。一方、吸熱ピーク温度が110℃を超える場合には、定着下限温度が高くなるために低温定着性が得られなくなる。
有機溶媒に不溶である結晶性ポリエステルを使用することによって、定着工程における定着性を良好なものとすることができる。
【0060】
限定するものではないが、通常、結晶性ポリエステルのアルコール成分としては、炭素数2〜6のジオール化合物(例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびこれらの誘導体)を含有し、また、酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、およびこれら酸の誘導体の少なくとも1つを含有することが好ましい。結晶性および軟化点を制御する方法としては、例えば、非線状ポリエステルなどを適宜分子設計して使用するなどの方法が挙げられる。このような、非線状ポリエステルは、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行い、合成できる。
【0061】
〔離型剤〕
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類などが好適に挙げられる。
前記ワックス類としては、例えば、炭化水素系ワックス、カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、炭化水素系ワックスが特に好ましい。前記炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどが挙げられる。
前記カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトン等が挙げられる。
【0062】
前記ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート等が挙げられる。
前記ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミド等が挙げられる。
前記ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。
前記ポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。
前記ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。
【0063】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上が好ましく、60〜160℃がより好ましく、70〜120℃が更に好ましい。前記融点が50℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。なお、離型剤の融点は、前記結晶性ポリエステル融点と同様に示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【0064】
前記離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5〜500mPa・sが好ましく、10〜100mPa・sがより好ましい。前記溶融粘度が5mPa・s未満であると、離型性が低下することがあり、500mPa・sを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。なお、離型剤の溶融粘度は、B型回転粘度計を用いて測定される。
【0065】
前記離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。前記含有量が40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0066】
前述のように、本発明のトナーの製造方法は、少なくともポリエステルを主成分として含む結着樹脂、有機顔料からなる着色剤と重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルとからなる着色剤分散用樹脂を溶融混練してなる着色剤マスターバッチ、および離型剤を有機溶媒に溶解乃至分散させてトナー組成液(油相)を調製する工程と、該油相を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、乳化・分散液を脱溶剤して母体粒子を形成する工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0067】
本発明においては、結着樹脂、有機顔料からなる着色剤と重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルからなる着色材分散用樹脂を溶融混練したマスターバッチ、および離型剤を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させて樹脂前駆体を含むことができ、樹脂前駆体の反応により結着樹脂とすることができる。すなわち、樹脂前駆体として、活性水素基を有する化合物および活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル(「ポリエステルプレポリマー」と呼称することがある)を含み、該ポリエステルプレポリマーと活性水素基を有する化合物を反応させることにより得られる変性ポリエステルを結着樹脂として含むことができる。
なお、トナー組成液中には、後述するような(例えば、帯電制御剤)上記以外のトナーの原料組成物(以下、「トナー原料」と呼称することがある)を含有してもよい。
【0068】
活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルとしてイソシアネート基を有するポリエステルを用い、活性水素基を有する化合物(アミン類)との反応により変性ポリエステル(ウレア変性ポリエステル)とする場合を例に挙げて説明する。以下、イソシアネート基を有するポリエステル〔ポリエステルプレポリマー(a)〕と、活性水素基を有する化合物〔アミン類(b)〕との反応によりウレア変性ポリエステルとしてトナー母体粒子を得る方法を説明する。
トナー母体粒子を得る方法としては、ポリエステル[組成分の1種としてアミン類(b)、ポリエステルプレポリマー(a)を含む]、有機顔料からなる着色剤と重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルとからなる着色材分散用樹脂を溶融混練した着色剤マスターバッチ、および離型剤を含むトナーの原料組成物(トナー原料)を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水性溶媒(水系媒体)中で乳化または分散させ、ポリエステルプレポリマー(a)とアミン類(b)を反応させた後、あるいは反応させながら、有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥する方法が挙げられる。
ここで、上記トナー原料以外に、未変性のポリエステルや結晶性ポリエステル等を含有してもよく、その他の成分として、例えば、帯電制御剤等が用いられる。その他のトナー原料は、前記トナー組成液を調製する際に、有機溶媒に混合してもよいが、前記原料組成物を用いてトナー組成液を調製した後、このトナー組成液に溶解または分散させることが好ましい。なお、他のトナー原料の一部(例えば、帯電制御剤)は、必ずしも、樹脂微粒子を分散させた水性溶媒(水系媒体:水相)中で乳化または分散する際に混合しておく必要はなく、乳化または分散した後に添加してもよい。
【0069】
〔樹脂微粒子〕
本発明の水性溶媒中に分散される樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。
【0070】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
【0071】
なお、前記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合または共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0072】
また、前記樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。
前記少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業株式会社製)、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどが挙げられる。
【0073】
前記樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、該樹脂微粒子の水性分散液として得るのが好ましい。該樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、
(i)前記ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法および分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法、
(ii)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、または硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法、
(iii)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、
(iv)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、
(v)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、
(vi)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、または予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、
(vii)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱または減圧等によって溶剤を除去する方法、
(viii)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、
などが好適な調製方法として挙げられる。
【0074】
また、前記水系媒体においては、必要に応じて、後述の乳化乃至分散時における、前記溶解乃至分散液の油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布を更にシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0075】
前記界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられる。
前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。前記フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸またはその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)またはその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。該フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子株式会社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M株式会社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業株式会社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
【0076】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、フルオロアルキル基を有する陽イオン界面活性剤等が挙げられる。前記アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。前記四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。前記フルオロアルキル基を有する陽イオン界面活性剤としては、例えばフルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級または三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。
【0077】
前記カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0078】
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体またはその化合物、タングステンの単体またはその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(いずれも、日本カーリット株式会社製);キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
【0080】
前記帯電制御剤は、前記着色剤マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解乃至分散させてもよく、あるいは前記トナーの各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解乃至分散させる際に添加してもよく、あるいは母体粒子を製造後に母体粒子の表面に固定させて母体粒子を有するトナーとしてもよい。
【0081】
前記帯電制御剤の前記トナーにおける含有量としては、前記結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。該含有量が0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0082】
また、母体粒子を有するトナーを構成する場合、目的に応じ、その他の成分として無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸等が用いられる。
母体粒子を有するトナーを構成する場合に必要に応じて用いられる前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、前記無機微粒子のBET法による比表面積としては、20〜500m2/gが好ましい。
前記無機微粒子の前記トナーにおける含有量としては、0.01〜5.0質量%が好ましい。
【0084】
また、母体粒子を有するトナーを構成する場合に必要に応じて用いられる前記流動性向上剤とは、表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0085】
また、母体粒子を有するトナーを構成する場合に必要に応じて用いられる前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記母体粒子に添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子等が挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
【0086】
また、母体粒子を有するトナーを構成する場合に必要に応じて用いられる前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0087】
本発明の母体粒子を有するトナー(トナー)は一成分系現像剤または二成分系現像剤として用いることができる。
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いればよく、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。
磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。
磁性キャリアの被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。
また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
また、本発明のトナーはキャリアを使用しない一成分系現像剤(磁性トナーあるいは非磁性トナー)としても用いることができる。
【0088】
前述のように本発明の画像形成方法は、少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を、前記トナーからなる現像剤(一成分現像剤)または前記トナーとキャリアからなる現像剤(二成分現像剤)を用いて現像する工程と、該像担持体上に形成されたトナー像を画像支持体に転写する工程と、該転写されたトナー像を定着部材により定着させる定着工程とを含むことを特徴とするものである。
本発明の画像形成方法により、画像濃度ムラや低下、地肌汚れなどの少ない画像を継続的に安定して形成することができ、またOHPにおいては乱反射などが少なく透過性のよい画像とすることができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」はすべて質量部である。
【0090】
実施例および比較例のトナー母体粒子を得るため、下記の顔料分散体用樹脂材料(着色剤分散用樹脂)を用意し、着色剤マスターバッチの調製、ワックス分散液の調製、トナー組成液の調製、樹脂微粒子エマルションの調製、水系媒体相の調製等を行った。
なお、下記の芳香族系窒素含有化合物変性、脂肪族系窒素含有化合物変性とは、本発明における「アミド結合構造を含むポリエステル」を示し、「難溶」とは前記で定義した「難溶性」であることを示す。
【0091】
顔料分散体用樹脂材料(着色剤分散用樹脂)として以下表1の材料を用い着色剤マスターバッチの作成を行った。
【0092】
【表1】

【0093】
[着色剤マスターバッチ(MB)の調製]
〔イエローマスターバッチA〕
水100部、およびPY185(D1155:BASF社製)200部、およびポリエステルA800部を混合攪拌した。該混合物を二本ロールで150℃にて10分間混練した後、100℃にて20分間混練し、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、イエローマスターバッチAを調製した。
【0094】
〔イエローマスターバッチB〕
エーテル部分構造を含むポリエステルAをエーテル部分構造を含むポリエステルBとした他はイエローマスターバッチAと同様にイエローマスターバッチBを調製した。
【0095】
〔イエローマスターバッチC〕
水100部、およびPY185(D1155:BASF社製)200部、PY74(Hansa Yellow 5GXT:クラリアントジャパン社製)200部、およびポリエステルC600部を混合攪拌した。該混合物を二本ロールで150℃にて10分間混練した後、100℃にて20分間混練し、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、イエローマスターバッチCを調製した。
【0096】
〔イエローマスターバッチD〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルDとした他はイエローマスターバッチCと同様にイエローマスターバッチDを調製した。
【0097】
〔イエローマスターバッチE〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルEとした他はイエローマスターバッチCと同様にイエローマスターバッチEを調製した。
【0098】
〔イエローマスターバッチF〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルFとした他はイエローマスターバッチCと同様にイエローマスターバッチFを調製した。
【0099】
〔イエローマスターバッチG〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルGとした他はイエローマスターバッチCと同様にイエローマスターバッチGを調製した。
【0100】
〔イエローマスターバッチH〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルHとした他はイエローマスターバッチCと同様にイエローマスターバッチHを調製した。
【0101】
〔イエローマスターバッチI〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルIとした他はイエローマスターバッチCと同様にイエローマスターバッチIを調製した。
【0102】
〔イエローマスターバッチJ〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルJとした他はイエローマスターバッチCと同様にイエローマスターバッチJを調製した。
【0103】
〔マゼンタマスターバッチA〕
水100部、およびPR122(Fastgen Red RTS:DIC社製)200部、およびポリエステルA800部を混合攪拌した。該混合物を二本ロールで150℃にて10分間混練した後、100℃にて20分間混練し、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マゼンタマスターバッチAを調製した。
【0104】
〔マゼンタマスターバッチB〕
エーテル部分構造を含むポリエステルAをエーテル部分構造を含むポリエステルBとした他はマゼンタマスターバッチAと同様にマゼンタマスターバッチBを調製した。
【0105】
〔マゼンタマスターバッチC〕
水100部、およびPR122(Fastgen Red RTS:DIC社製)200部、PR122(1022KB:DIC社製)200部、およびポリエステルC600部を混合攪拌した。該混合物を二本ロールで150℃にて10分間混練した後、100℃にて20分間混練し、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マゼンタマスターバッチCを調製した。
【0106】
〔マゼンタマスターバッチD〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルDとした他はマゼンタマスターバッチCと同様にマゼンタマスターバッチDを調製した。
【0107】
〔マゼンタマスターバッチE〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルEとした他はマゼンタマスターバッチCと同様にマゼンタマスターバッチEを調製した。
【0108】
〔マゼンタマスターバッチF〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルFとした他はマゼンタマスターバッチCと同様にマゼンタマスターバッチFを調製した。
【0109】
〔マゼンタマスターバッチG〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルGとした他はマゼンタマスターバッチCと同様にマゼンタマスターバッチGを調製した。
【0110】
〔マゼンタマスターバッチH〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルHとした他はマゼンタマスターバッチCと同様にマゼンタマスターバッチHを調製した。
【0111】
〔マゼンタマスターバッチI〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルIとした他はマゼンタマスターバッチCと同様にマゼンタマスターバッチIを調製した。
【0112】
〔マゼンタマスターバッチJ〕
エーテル部分構造を含むポリエステルCをエーテル部分構造を含むポリエステルJとした他はマゼンタマスターバッチCと同様にマゼンタマスターバッチJを調製した。
【0113】
[ワックス分散液の調製]
次に、結着樹脂としての樹脂、およびワックスを添加した下記組成からなる分散液を調製した。
結着樹脂として後述する未変性ポリエステル100質量部、パラフィンワックス(HPE−11)90質量部、マレイン酸変性パラフィンワックス(P−166)10質量部を、酢酸エチル400質量部に、着色剤分散液調製時と同じく、攪拌羽を有するミキサーを使用して、10分間攪拌を行い、分散させた後、ダイノーミルを用いて8時間分散を施した。
【0114】
[トナー組成液の調製]
(実施例1)〜(実施例16)、(比較例1)〜(比較例6)
〔トナー組成液YA、トナー組成液YB〕
前記で作成したイエローマスターバッチA、イエローマスターバッチBのそれぞれを個別に用いたものについて、各イエローマスターバッチ35部、ワックス分散液30部、未変性ポリエステル樹脂(可溶、Tg62℃、AV10.0、Mw40000、DIC社製)62部を酢酸エチル100部へ投入、攪拌羽を有するミキサーを使用して溶解分散した後、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製した。
生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とし、各トナー組成液を調製した(それぞれトナー組成液YA、トナー組成液YB)。
【0115】
〔トナー組成液YC〜トナー組成液YJ〕
前記で作成したイエローマスターバッチC〜イエローマスターバッチJのそれぞれを個別に用いたものについて、各イエローマスターバッチ17.5部、ワックス分散液30部、未変性ポリエステル樹脂(可溶、Tg62℃、AV10.0、Mw40000、DIC社製)79.5部を酢酸エチル100部へ投入、攪拌羽を有するミキサーを使用して溶解分散した後、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製した。生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とし、各トナー組成液を調製した(それぞれトナー組成液YC〜トナー組成液YJ)。
【0116】
〔トナー組成液MA、トナー組成液MB〕
前記で作成したマゼンタマスターバッチA、マゼンタマスターバッチBのそれぞれを個別に用いたものについて、各マゼンタマスターバッチ50部、ワックス分散液30部、未変性ポリエステル樹脂(可溶、Tg62℃、AV10.0、Mw40000、DIC社製)59部を酢酸エチル100部へ投入、攪拌羽を有するミキサーを使用して溶解分散した後、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製した。生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とし、各トナー組成液を調製した(それぞれトナー組成液MA、トナー組成液MB)。

【0117】
〔トナー組成液MC〜トナー組成液MJ〕
前記で作成したマゼンタマスターバッチC〜マゼンタマスターバッチJのそれぞれを個別に用いたものについて、各マゼンタマスターバッチ17.5部、ワックス分散液30部、未変性ポリエステル樹脂(可溶、Tg62℃、AV10.0、Mn5800、Mw40000、DIC社製)79.5部を酢酸エチル100部へ投入、攪拌羽を有するミキサーを使用して溶解分散した後、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製した。生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とし、各トナー組成液を調製した(それぞれトナー組成液MC〜トナー組成液MJ)。
【0118】
〔トナー組成液MK〕
前記で作成したマゼンタマスターバッチCを用いたものについて、マゼンタマスターバッチ17.5部、ワックス分散液30部、スチレン変性ポリエステル樹脂(可溶、Tg52℃、AV16.5、Mw89000、花王社製)79.5部を酢酸エチル100部へ投入、攪拌羽を有するミキサーを使用して溶解分散した後、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製した。生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とし、トナー組成液MKを調製した(トナー組成液MK)。
【0119】
〔トナー組成液ML〕
トナー組成液MKにおいて用いたスチレン変性ポリエステル樹脂(可溶、Tg52℃、AV16.5、Mw89000、花王社製)をオレフィン変性ポリエステル(可溶、Tg52℃、AV18.0、Mw89000、三菱レイヨン社製)とした他はトナー組成液MKと同様にトナー組成液MLを調整した。
【0120】
[樹脂微粒子エマルションの調製]
撹拌棒、および温度計をセットした反応容器内に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業株式会社製)11質量部、スチレン79質量部、メタクリル酸79質量部、アクリル酸ブチル105質量部、ジビニルベンゼン13質量部、および過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液]を得た。
【0121】
得られた[微粒子分散液]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920、堀場製作所製)で測定したところ、体積平均粒径が105nmであった。[微粒子分散液]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のガラス転移温度(Tg)は95℃、数平均分子量140,000、質量平均分子量980,000であった。
【0122】
[水系媒体相の調製]
イオン交換水306質量部、樹脂微粒子分散液60質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4質量部を混合撹拌し、均一に溶解させて水系媒体相(水系媒体)を調製した。
【0123】
[乳化乃至分散液の調製]
前記水系媒体200質量部を容器内に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用い、回転数8,500rpmで攪拌し、これに前記トナー組成液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化・分散液:乳化スラリー)を調製した。
【0124】
〈有機溶剤の除去〉
攪拌機、および温度計をセットしたコルベン内に、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤した。
【0125】
〈洗浄および乾燥〉
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た(イエロートナー母体YA〜YJ、マゼンタトナー母体MA〜MLとした)。
【0126】
すなわち、前記作製したトナー母体は下記実施例と比較例に対応する。
(実施例1:イエロートナー母体YA)、(実施例2:イエロートナー母体YB)、(実施例3:イエロートナー母体YC)、(実施例4:イエロートナー母体YD)、(実施例5:イエロートナー母体YE)、(実施例6:イエロートナー母体YF)、(実施例7:イエロートナー母体YG)、(比較例1:イエロートナー母体YH)、(比較例2:イエロートナー母体YI)、(比較例3:イエロートナー母体YJ)、(実施例8:マゼンタトナー母体MA)、(実施例9:マゼンタトナー母体MB)、(実施例10:マゼンタトナー母体MC)、(実施例11マゼンタトナー母体MD)、(実施例12:マゼンタトナー母体ME)、(実施例13:マゼンタトナー母体MF)、(実施例14:マゼンタトナー母体MG)、(比較例4:マゼンタトナー母体MH)、(比較例5:マゼンタトナー母体MI)、(比較例6:マゼンタトナー母体MJ)、(実施例15:マゼンタトナー母体MK)、(実施例16:マゼンタトナー母体ML)
【0127】
(実施例17:イエロートナー母体YE2)
〔ウレア変性ポリエステルの合成〕
冷却管、撹拌機、および窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、およびジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、10〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、質量平均分子量が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
【0128】
次に、冷却管、撹拌機、および窒素導入管の付いた反応容器内に、前記中間体ポリエステル411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、および酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、ウレア変性ポリエステル(前記活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体)を合成した。
得られたウレア変性ポリエステルの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、ウレア変性ポリエステルの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
【0129】
〔ケチミン(前記活性水素基を有する化合物)の合成〕
撹拌棒、および温度計をセットした反応容器内に、イソホロンジアミン30質量部、およびメチルエチルケトン70質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(前記活性水素基含有化合物)を合成した。
得られたケチミン化合物(前記活性水素機含有化合物)のアミン価は423であった。
【0130】
[トナー材料の溶解乃至分散液の調製]
ビーカー内に、前記ウレア変性ポリエステル10部、未変性ポリエステル69.5部(可溶、SREX−005L:三洋科学社製)、イエローマスターバッチE17.5部、ワックス分散体30部および酢酸エチル100部を入れ、攪拌し溶解させた。ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、前記ケチミン2.7質量部を加えて溶解させ、トナー組成液を調製した。生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とした。
【0131】
[乳化乃至分散液の調製]
前記水系媒体相200質量部を容器内に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用い、回転数8,500rpmで攪拌し、これに前記トナー材料の溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
【0132】
〈有機溶剤の除去〉
攪拌機、および温度計をセットしたコルベン内に、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤した。
【0133】
〈洗浄および乾燥〉
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た(イエロートナー母体YE2とした)。
【0134】
(実施例18:マゼンタトナー母体ME2)
[トナー材料の溶解乃至分散液の調製]
ビーカー内に、前記ウレア変性ポリエステル5部、スチレン変性ポリエステル64.5部(可溶、Tg52℃、AV16.5、Mw90000、花王社製)、マゼンタマスターバッチE17.5部、ワックス分散体30部および酢酸エチル100部を入れ、攪拌し溶解させた。ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、前記ケチミン2.7質量部を加えて溶解させ、トナー組成液を調製した。生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とした。
上記トナー材料の溶解乃至分散液の調製以外はイエロートナー母体粒子YE2と同様に、乳化乃至分散液の調製、有機溶剤の除去、洗浄および乾燥を施してトナー母体粒子を得た(マゼンタトナー母体ME2とした)。
【0135】
(実施例19:イエロートナー母体YE3)
[結晶性ポリエステル分散液の調製]
結晶性ポリエステル(Tm:70℃、花王社製)20部、酢酸エチル80部を混合し、ボールミル(ジルコニア5mmビーズ)にて分散後、スターミル(アシザワ社製)にて微分散し、平均粒径0.7μmの結晶性ポリエステル分散液を作成した。
【0136】
[トナー材料の溶解乃至分散液の調製]
ビーカー内に、前記ウレア変性ポリエステル10部、未変性ポリエステル64.5部(可溶、SREX−005L:三洋科学社製)、イエローマスターバッチE17.5部、ワックス分散体30部、前記結晶性ポリエステル分散液25部および酢酸エチル60部を入れ、攪拌し溶解させた。ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、前記ケチミン2.7質量部を加えて溶解させ、トナー組成液を調製した。
生産性を考量しトナー材料の溶解乃至分散液の固形分は50%とした。
【0137】
[乳化乃至分散液の調製]
前記水系媒体相200質量部を容器内に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用い、回転数8,500rpmで攪拌し、これに前記トナー材料の溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
【0138】
〈有機溶剤の除去〉
攪拌機、および温度計をセットしたコルベン内に、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤した。
【0139】
〈洗浄および乾燥〉
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た(イエロートナー母体YE3とした)。
【0140】
(実施例20:マゼンタトナー母体ME3)。
実施例19においてイエローマスターバッチEを、マゼンタマスターバッチEに代えた以外は実施例19と同様にして、トナー母体粒子を得た(マゼンタトナー母体ME3とした)。
【0141】
上記で得られた実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例6の各トナー母体粒子(略、母体粒子)中の顔料分散状態および顔料粒径をTEM観察により評価した。
実施例1〜実施例20、比較例1〜比較例6の評価結果を下記表2に示す。
なお、実施例で製造した代表的なトナー母体粒子(YA)、(YE)、(YG)、(MA)、(ME)、(MG)の顔料分散状態を図1のTEM観察像に示す。また、比較例で製造した代表的なトナー母体粒子(YH)、(YJ)、(MH)、(MJ)の顔料分散状態を図2のTEM観察像に示す。
下記表1における評価基準として、顔料分散状態がトナー中に均一に分散されている状態が◎、分散状態は均一だが一部表面に偏在している状態を○、全て表面偏在しているものを×とした。顔料粒径としてその分散された顔料粒径が150nm以下を◎、150nmを超え250nm以下であるものを○、250nmより大きい状態を×とした。
また、総合評価として、顔料分散状態と顔料粒径が共に◎である場合を◎、一方が◎あるいは○で他方が○である場合を○、一方が◎あるいは○で他方が×である場合を△、いずれも×である場合を×とした。
【0142】
【表2】

【0143】
(実施例21)〜(実施例40)、(比較例7)〜(実施例12)、
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較6で得られた各トナー母体粒子100質量部に対し、H1303(疎水化シリカ)1.5質量部、MA150AI(疎水化チタニア)0.8質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、各母体粒子を有するトナーを得た。なお、前記外添剤は流動性の付与および帯電特性を調整するために混合した。
【0144】
上記により得られた各トナーを下記キャリアと混合して現像剤を製造した。
〔キャリアの作製〕
芯材として体積平均粒径35μmの球形フェライト粒子に、コート材としてのシリコーン樹脂とメラミン樹脂の混合物を被覆してキャリアを作製した。
〔現像剤の製造〕
上記各トナー5質量部と上記キャリア95質量部とをボールミルで混合し、二成分現像剤を製造した。
【0145】
<帯電安定性評価>
上記それぞれの二成分現像剤について、タンデム型カラー画像形成装置(「Imagio Neo C350」、株式会社リコー製)の定着ユニットからシリコーンオイル塗布機構を取り去り、オイルレス定着方式に改造して、温度および線速を調整可能にチューニングした装置と、株式会社リコー製6000ペーパーとを用い、帯電安定性を評価した。
なお、前記タンデム型カラー画像形成装置は、A4サイズの用紙を、毎分35枚連続印刷することができる。このとき、定着ローラの線速を125mm/sとした。
前記画像形成装置におけるそれぞれの各現像ユニットに前記各現像剤を搭載して、画像占有率5%画像にて10,000枚のランニングを実施し画像の評価を行った。なおランニング中のプロセスコントロールはトナー濃度のみとした。帯電特性が不安定なトナーは濃度変動の発生が顕著となることから、[濃度変動]により判定できる。評価結果を下記表3に示す。
[濃度変動]:1から10枚目までのベタパッチ部の平均IDと1000枚ごとに1001から1010枚目のベタパッチ部の平均ID、2001から2010枚目のベタパッチ部の平均IDというようにベタパッチのIDを測定し、IDの変動が±0.1以下であれば◎、±0.1を超え±0.2以下であれば○、±0.2を超えれば×とした。
【0146】
【表3】

【0147】
次に、前記実施例25(イエロートナーYE)、実施例32(マゼンタトナーME)、実施例37(イエロートナーYE2)、実施例38(マゼンタトナーME2)、実施例39(イエロートナーYE3)、実施例40(マゼンタトナーME3)の各トナーを用いて定着性を評価した。
【0148】
上記それぞれのトナーについて、タンデム型カラー画像形成装置(「Imagio Neo C350」、株式会社リコー製)の定着ユニットからシリコーンオイル塗布機構を取り去り、オイルレス定着方式に改造して、温度および線速を調整可能にチューニングした装置と、株式会社リコー製6000ペーパーとを用い、定着性(定着下限温度、ホットオフセット発生温度および定着温度巾)を評価した。なお、前記タンデム型カラー画像形成装置は、A4サイズの用紙を、毎分35枚連続印刷することができる。このとき、定着ローラの線速を125mm/sとし、ローラ温度を変化させて評価を行った。
【0149】
<定着温度幅の比較評価>
画像形成は、前記タンデム型カラー電子写真装置を用いて、前記普通紙に、イエロー、マゼンタの各単色のベタ画像を各単色で、0.85±0.3mg/cm2のトナーが現像されるように調整した。得られた画像を加熱ローラの温度を変えて定着し、得られた定着画像を専用の布パットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度、ホットオフセットの発生する定着温度(オフセット発生温度)を測定し、評価した。評価結果を下記表4に示す。
【0150】
【表4】

【0151】
すなわち、本発明のトナーは、少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、着色剤マスターバッチ、離型剤を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成される母体粒子から構成され、前記着色剤マスターバッチが、有機顔料からなる着色剤と難溶性で特定の分子量(Mw)を有するアミド結合構造を含むポリエステル(着色剤分散用樹脂)とを溶融混練してなるものであることにより、着色剤の分散性が良好であり、優れた帯電性や色特性、OHP等における良好透過性が発揮される。トナーの低温定着性、ホットオフセット性、耐熱保存性等の特性も良好に維持される。なお、着色剤分散用樹脂は、トナー組成液の調製や母体粒子の形成において用いられる有機溶媒に対して50℃以下では難溶であり、また、ガラス転移点温度(Tg)としては50℃以上100℃以下のものが好ましく用いられる。
結着樹脂として、活性水素基を有する化合物と該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体(特に、活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル)からなる樹脂前駆体の反応により得られる樹脂を用いた場合には、更にホットオフセット性に優れたトナーおよび該トナーからなる現像剤が提供される。また、結晶性ポリエステルを含有することにより低温定着性に優れたトナーおよび該トナーからなる現像剤を提供される。
本発明によれば、電子写真装置や静電記録装置などにおける像担持体(感光体)上の静電潜像を顕像化するための画像形成用トナーや現像剤、および画像形成方法が提供でき、連続使用においても濃度ムラなどの発生が抑制された高品質の画像形成を可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0152】
【特許文献1】特許第2537503号公報
【特許文献2】特許第3640918号公報
【特許文献3】特開2007−94351号公報
【特許文献4】特開2007−248746号公報
【特許文献5】特開2007−94352号公報
【特許文献6】特開2006−293304
【特許文献7】特開2005−70187号公報
【特許文献8】特開2007−248979号公報
【特許文献9】特開2008−76453号公報
【特許文献10】特開2006−18018
【特許文献11】特開2009−57399号公報
【特許文献12】特開2008−203370号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、着色剤と着色剤分散用樹脂とを含む着色剤マスターバッチおよび離型剤を前記有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー組成液を、樹脂微粒子を分散させた水系媒体中で乳化または分散させる工程を経て形成される母体粒子を有するトナーであって、
前記着色剤分散用樹脂として下記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルを含有していることを特徴とするトナー。
[難溶性]:前記有機溶媒10質量部に前記アミド結合構造を含むポリエステル4質量部を加えて混合したときに25℃にて白濁化するもの、もしくは一度透明な溶解液になった後、12時間以内に白濁化するもの。
【請求項2】
前記着色剤マスターバッチが、有機顔料からなる着色剤と前記着色剤分散用樹脂を溶融混練してなるものであることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記結着樹脂と前記着色剤分散用樹脂が相溶性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記着色剤が、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー185およびピグメントレッド122から選択されるいずれかの有機顔料を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー組成液中に、活性水素基を有する化合物と、該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体からなる樹脂前駆体を含み、該樹脂前駆体の反応により結着樹脂とされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体が、活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルであることを特徴とする請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー組成液中に、活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルと共に、未変性のポリエステルを含み、前記未変性のポリエステル(A)に対する前記活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル(B)の質量比[(B)/(A)]が、1/19以上3/1以下であることを特徴とする請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
前記結着樹脂が、スチレン変性ポリエステルまたはオレフィン変性ポリエステルを含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
前記結着樹脂として、有機溶媒に不溶な結晶性ポリエステルを含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のトナー。
【請求項10】
前記結晶性ポリエステルの示差走査熱量分析(DSC)により測定される吸熱ピーク温度に対応する融点が、60℃以上110℃以下であることを特徴とする請求項9に記載のトナー。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のトナーの製造方法であって、
少なくとも有機溶媒に可溶なポリエステルを主成分として含む結着樹脂、有機顔料からなる着色剤と下記定義の難溶性を有する重量平均分子量(Mw)5,000以上50,000以下のアミド結合構造を含むポリエステルからなる着色剤分散用樹脂を溶融混練してなる着色剤マスターバッチと、離型剤と、を前記有機溶媒に溶解乃至分散させてトナー組成液(油相)を調製する工程、および、該油相を樹脂微粒子を分散させた水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、乳化・分散液を脱溶剤して母体粒子を形成する工程を備えたことを特徴とするトナーの製造方法。
[難溶性]:前記有機溶媒10質量部に前記アミド結合構造を含むポリエステル4質量部を加えて混合したときに25℃にて白濁化するもの、もしくは一度透明な溶解液になった後、12時間以内に白濁化するもの。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかに記載のトナーからなることを特徴とする現像剤。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかに記載のトナーと、キャリアからなることを特徴とする現像剤。
【請求項14】
少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を請求項12または13に記載の現像剤を用いて現像する工程と、該像担持体上に形成されたトナー像を画像支持体に転写する工程と、該転写されたトナー像を定着部材により定着させる定着工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−203704(P2011−203704A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118370(P2010−118370)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】