説明

トナーの製造方法、トナーおよび現像剤

【課題】通常の製造方法を用いながらもさらなる製造方法を改良して、均一にしかも強固に外添剤をトナー母体に付着させた、トナー(たとえば一成分トナー)の提供。
【解決手段】結着樹脂と着色剤と離型剤を含むトナー材料を用いて得られたトナー母体粒子と、外添剤とを混合する混合工程後に、前記混合工程により得られた混合物を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするトナーの製造方法、それにより得られたトナーおよび現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に使用可能なトナーの製造方法、トナーおよび現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタなどの画像形成装置では、近年SOHOを含むオフィス向け、コンシューマ向けに、低コストで、小型で、しかも高速の装置が開発され、さらなる品質が向上した製品の開発が行われている。このような画像形成装置に使用される現像装置では、従来から、二成分現像剤よりも、部品点数が少なく、小型化が望める一成分現像剤が用いられている。
一成分現像剤を用いた現像装置を有する画像形成装置では、規制部材により現像剤の層を形成し、摩擦帯電させる方式のものが用いられている。一成分現像剤は二成分現像剤に比べて現像剤にかかるストレスが大きい。このため、熱及び機械的摩擦などの外的ノイズ(外的ストレス)に対して、その変化が少ない現像剤が求められている。
そのためにはトナー母体粒子の表面に、均一にかつ強固に、外添剤を固定化させる必要がある。
【0003】
従来このような現像剤の製造方法としては、粉砕法または重合法によりトナー母体粒子を作製した後、母体粒子と外添剤とを撹拌混合して外添剤を添加する方法が知られている。しかしながらこの方法によると、外添剤の一部が単独で残るため、作成した画像にスジが発生し、フィルミングが発生することがあった。
【0004】
また、たとえば粉砕法による現像剤の製造方法として、トナーの粒径の大きさを得るための工程の前に外添剤を添加する方法がある。トナーとして粉砕トナーを使用する場合、粉砕には、通常、粗粉砕及び微粉砕があり、微粉砕によって製品となる粒径のトナーが得られる。この第1の方法においては、粗粉砕が行われた後に、かつ、微粉砕が行われる前に外添剤が添加されること、また、通常の方法で微粉砕を行い、微粉砕の工程に続く分級工程において、製品となるトナーの粒径と比べて極めて小さい外添剤を除去する第2の方法が知られている(例えば特許文献1の段落0033および0035参照)。
【0005】
また、重合法による製造方法として、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で着色樹脂粒子の造粒を行う湿式法により結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子を形成して着色樹脂粒子水分散液を得る工程、該着色樹脂粒子水分散液中の着色樹脂粒子を洗浄する工程、洗浄した着色樹脂粒子水分散液を脱水する脱水工程、及び脱水して得られた湿潤状態の着色樹脂粒子を乾燥する乾燥工程を含み、着色樹脂粒子と外添剤とを含有する静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、
該乾燥工程において、該脱水工程において得られた湿潤状態の着色樹脂粒子を、さらに攪拌手段を有する乾燥機により含水率3%以下となるまで乾燥すると共に、該乾燥機内において、該着色樹脂粒子を含水率15%以下とした後、該着色樹脂粒子と該外添剤の全量の50重量%以上とを、該攪拌手段により攪拌し、
該乾燥工程により得られた着色樹脂粒子を、高速攪拌機により攪拌することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法の発明が知られている(例えば特許文献2の請求項参照)。
【0006】
また合成樹脂を主成分とし所定の粒子径を成す静電潜像用トナー粒子本体と、この静電潜像現像用トナー粒子本体に被着し被覆する外添剤とを具備し、
前記外添剤が静電潜像現像用トナー粒子本体およびこのトナー粒子本体よりも小さな粒子径を有する外添剤を含む混合分散液中で、分散液の温度を、トナー粒子本体を構成する合成樹脂のガラス転移温度より高い温度に保ちつつ攪拌・被覆して形成されたことを特徴とする静電潜像現像用トナーの発明が知られている(特許文献3の特許請求の範囲参照)。
しかしながら、この発明では、分散液の温度を、トナー粒子本体を構成する合成樹脂のガラス転移温度より高い温度に保って行っているため、離型剤であるワックスがブリードアウトしてしまい、問題がある。
【0007】
さらに、本願出願人による発明として、大粒径と中粒径と小粒径のそれぞれの外添剤をトナー母体粒子にそれぞれ別個に添加して、大粒径の外添剤を有するトナーと、中粒径の外添剤を有するトナーと、小粒径の外添剤を有するトナーとを作製し、それぞれのトナーの比率を調整して混合し一体のトナーとして製造する発明、あるいは材質を変えた外添剤のそれぞれをトナー母体粒子にそれぞれ別個に添加して材質の異なる外添剤を有するトナーを作製し、これら作製したトナーをそれぞれのトナーの比率を調整して混合し一体のトナーとして製造する発明も知られている(例えば特許文献4参照)。
【0008】
特許文献4の発明によって、小粒径・中粒径・大粒径の外添剤をトナー母体に一緒に投入して混合する同時添加方式(1)、 大粒径の外添剤を投入して予め混合しておいてから、小粒径・中粒径の外添剤を投入してさらに混合する大粒径先添方式(2)、小粒径・中粒径の外添剤を予め混合しておいてから、大粒径の外添剤を投入してさらに混合する大粒径後添方式(3)、のいずれの方式でも起きる、外添剤の混合時の埋め込み等の挙動を解決し、その機能を十分に発揮させることができるようになった。また安定した帯電性、流動性を得ることができるトナー及び現像剤を提供することができるようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記公報に記載されたいずれの発明も、トナー製造におけるトナー母体粒子と外添剤の混合工程の際にのみ工夫がなされており、通常の製造方法を用いながらもさらなる製造方法を改良して、均一にしかも強固に外添剤をトナー母体に付着させた、トナー(たとえば一成分トナー)の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るトナーの製造方法およびトナーは、下記の技術的手段を講じた。
(1) 結着樹脂と着色剤と離型剤を含むトナー材料を用いて得られたトナー母体粒子と、外添剤とを混合する混合工程後に、前記混合工程により得られた混合物を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
(2) 前記(1)に記載のトナーの製造方法において、前記洗浄工程は、実質的に加熱しないで行う工程であることを特徴とする。
(3) 前記(1)または(2)に記載のトナーの製造方法において、前記洗浄工程は、分散剤を用いて攪拌する工程を含むことを特徴とする。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載のトナーの製造方法において、前記洗浄工程は、超音波を印加する工程を含むことを特徴とする。
(5) 前記(4)に記載のトナーの製造方法前記超音波を印加する工程は、超音波ホモジナイザーを用いることを特徴とする。
(6) 前記(1)〜(5)に記載のトナーの製造方法により得られるトナーである。
(7) 前記(6)に記載のトナーを有する現像剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、トナー母体表面に外添剤を付着させる外添工程の後に外添剤洗浄工程により、余剰な外添剤と所定付着強度より低い外添剤とを選択的に取り除くことにより、均一、かつ強固に、外添剤をトナー母体表面に付着させたトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トナー母体粒子表面の断面の外添剤の付着状態を模式的に示した図である。
【図2】同じく、トナー母体粒子表面の断面の外添剤の付着状態を模式的に示した図であり、外添剤が一部凝集し、あるいは付着力の小さい外添剤の付着状態を模式的に示す図である。
【図3】トナーの製造工程のフローを示すフローチャートである。
【図4】画像形成装置の要部構成を模式的に表した図である。
【図5】プロセスカートリッジとしての現像装置の要部構成を模式的に表した断面図である。
【図6】現像装置がプロセスカートリッジとして使用された画像形成装置の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂と着色剤と離型剤を含むトナー材料を、粉砕法または重合法などの方法により得られたトナー母体粒子と、外添剤を混合した後、所定条件で洗浄した後に乾燥等して、得られるものである。前記粉砕法では、結着樹脂と着色剤と離型剤を含むトナー材料を溶融混練し、粉砕、分級してトナー母体粒子を得ることができる。また前記重合法では、有機溶媒中にポリエステル樹脂と活性水素基を有する化合物と反応可能な基を有する重合体と、着色剤と離型剤を含むトナー材料を、有機溶媒中で溶解または分散した溶解物または分散物を、水系媒体中に分散等させて造粒(伸長反応による造粒)させてトナー母体粒子を得ることができる。この際に洗浄等を行うことができる。
【0014】
図1は、トナー母体粒子をx−y方向に切断したときのx−y面に垂直な方向から、トナー母体粒子表面を見たときのトナー母体粒子表面に存在する外添剤の付着状態の概略説明図である。図中、(1)〜(2)は、同程度の大きさの外添剤がトナー母体粒子表面に付着しているケースを示している。(2)では、トナー母体粒子全面に満遍なく外添剤が付着している様子を示す。これに対して(1)では、外添剤がトナー母体粒子表面に付着してはいるが、まばらな状態で付着している様子を示す。トナー母体粒子に大径の外添剤が付着している場合、ストレスがその大径のトナーに印加された場合、(3)に示すように、外添剤の埋没はするものの、トナー母体粒子の表面自体が露出しないために、外添剤による効果が残留する。このため、トナーの粒状性、帯電性などは、変化しない。一方、小径の外添剤のみがトナー母体粒子に付着している場合、ストレスがそのトナーに印加された場合、(4)に示すように、トナー母体粒子に埋没する部分が大きくなり、トナー母体粒子の表面が露出してしまう。すなわち、このトナーは外的なストレスに弱いということになる。
その他、トナー母体表面に凝集した外添剤や、付着力の小さな外添剤が付着している場合を示す(5)のようなトナーのケースでは、(6)に示すように、ストレスがトナーに印加されると、トナー母体粒子から、分離してしまう。
【0015】
図2は、図1と同じく、トナー母体粒子をx−y方向に切断したときのx−y面に垂直な方向から、トナー母体粒子表面を見たときの概略説明図である。図2の(1)に示すように、付着力の小さな外添剤や凝集した外添剤が付着したトナーにストレスが印加されると、トナー自体の表面は、図1の(6)のケースのように、トナーと、外添剤が分離される。本発明では、これを防止するため、図2の(1)に示す例のトナー粒子に湿式の洗浄処理が行われる。この洗浄処理は所定の条件で行われ、これにより付着力の小さな外添剤を取り除くことができる。これによって、均一に、かつ、トナー母体粒子に万遍なく外添剤が付着したトナーが得られるものと考えられる。
【0016】
本発明のトナーの製造方法に関して、図3にその製造工程をフローチャートによって示す。
図3に示すように、本発明のトナーの製造方法は、トナー母体粒子と外添剤の混合物を、シェアを印加して混合することによりトナー母体粒子表面に外添剤を付着させる外添工程と、付着力が弱いかトナー母体粒子表面に付着しない外添剤を除去するための外添剤洗浄工程とを含んでいる。外添剤洗浄工程後に、解砕工程と、篩工程を行うことができる。
外添工程は、乾式でも湿式でもよい。
【0017】
外添工程におけるトナー母体粒子と外添剤との混合方法としては、ミキサーなどの混合機を稼動させてシェアを加えて混合する方法、あるいは高速気流中にトナー母体粒子と外添剤との混合物を投入し、前記混合物を加速させて衝突板に衝突させることを繰り返して混合する方法などを挙げることができる。
以下に、本発明を、より具体的に実施の形態により、説明する。
【0018】
[実施の形態1]
実施の形態1では、まず、粉砕法による製造方法によってトナー母体粒子が作製される例を示す。
<粉砕法によるトナー母体粒子の製造工程>
粉砕法によって形成されるトナーは、画質への影響を考慮する上で、そのトナー母体粒子の体積平均粒径が、5〜12μm、好ましくは6〜10μmである。トナー母体粒子の体積平均粒径は、コールター製マルチサイザーIIIを用いて測定される。トナー母体粒子に添加される離型剤は、混練時に、あるいは予め結着樹脂中に分散しておくが、予め結着樹脂中に分散しておくことが、より好ましい。実施の形態1を構成するトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、荷電制御剤とを有するトナー材料を常法に従い前混合処理工程後に溶融混練工程を行い、固化した後に粉砕工程を行い、分級工程を経て、トナー母体粒子を得ている。
次にトナー材料に用いられる結着樹脂について、説明する。
【0019】
(結着樹脂)
トナー材料に用いられる結着樹脂としては、その種類は特に制限されない。フルカラートナーの分野で公知の結着樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、エポキシ系樹脂、COC(環状オレフィン樹脂(例えば、TOPAS−COC(Ticona社製)))等であってよいが、オイルレス定着の観点から、ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
【0020】
実施の形態1において好ましく使用されるポリエステル系樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られたポリエステル樹脂が使用可能である。多価アルコール成分のうち2価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0021】
多価アルコール成分のうち3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0022】
また、多価カルボン酸成分のうち2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物あるいは低級アルキルエステルが挙げられる。
【0023】
多価カルボン酸成分のうち3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸,1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0024】
また、本発明においてはポリエステル系樹脂として、ポリエステル樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとの混合物を用い、同一容器中でポリエステル樹脂を得る縮重合反応およびビニル系樹脂を得るラジカル重合反応を並行して行わせて得られた樹脂(以下、単に「ビニル系ポリエステル樹脂」という(並行とは、ラジカル重合反応と縮重合反応とを同時に、あるいは時間を隔てて別々に行わせる))も好適に使用可能である。なお、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとは、換言すれば縮重合反応およびラジカル重合反応の両反応に使用可能なモノマーである。即ち縮重合反応し得るカルボキシル基(あるいはOH基)とラジカル重合反応し得るビニル基の両方の基を有するモノマーなどであり、例えばフマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アリル酸、メタリル酸等(以上、カルボキシル基とビニル基の両方の基を有するモノマーあるいはオリゴマー)、あるいはヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)、アリルアルコール、メタリルアルコール(以上、ヒドロキシ基とビニル基の両方の基を有するモノマーあるいはオリゴマー)などが挙げられる。
【0025】
ポリエステル樹脂の原料モノマーとしては上述した多価アルコール成分および多価カルボン酸成分が挙げられる。またビニル系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレンまたはスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3−(メチル)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3−(メチル)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルおよびビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
ビニル系樹脂の原料モノマーを重合させる際の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0027】
結着樹脂は単一のものを用いても良いし、低分子量体、高分子量体の2種、若しくはその各々複数種の組合せを用いても良いが、オイルレス定着用トナーとしての分離性および耐オフセット性をさらに向上させる観点から、低分子量体と高分子量体を少なくとも1種使用することがより好ましい。
【0028】
より好ましい樹脂は、上述した多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させて得られたポリエステル樹脂、特に多価アルコール成分としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を用い、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸およびフマル酸を用いて得られたポリエステル樹脂である。
また、高分子量体は、ビニル系ポリエステル樹脂、特にポリエステル樹脂の原料モノマーとしてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸およびコハク酸を用い、ビニル系樹脂の原料モノマーとしてスチレンおよびブチルアクリレートを用い、両反応性モノマーとしてフマル酸を用いて得られたビニル系ポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0029】
(離型剤)
トナー材料に用いられる離型剤としては、特に限定されないが、炭化水素系パラフィンが挙げられる。炭化水素系パラフィンとしては、例えば、アルケンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のポリアルケン;高分子量のポリアルケンを熱分解して得られるポリアルケン;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法を用いて得られる炭化水素、さらに水素添加して得られる炭化水素が挙げられる。このような離型剤を用いることにより、定着時に、現像剤から離型剤が十分に染み出し、優れた定着特性を発揮することができる。
トナー材料として添加する方法としては、トナー製造時に添加する他に、上述した結着樹脂の合成時に添加しても良い。この場合、上述のポリエステル樹脂を結着樹脂として用いる場合には、炭化水素系離型剤を用いることが好ましい。結着樹脂に炭化水素系離型剤を予め内添するには、結着樹脂を合成する際に、結着樹脂を合成するためのモノマー中に炭化水素系離型剤を添加した状態で結着樹脂の合成を行えば良い。例えば、結着樹脂としてのポリエステル系樹脂を構成する酸モノマーおよびアルコールモノマーに炭化水素系離型剤を添加した状態で縮重合反応を行えば良い。結着樹脂がビニル系ポリエステル樹脂の場合には、ポリエステル樹脂の原料モノマーに炭化水素系離型剤を添加した状態で、当該モノマーを撹拌および加熱しながら、これにビニル系樹脂の原料モノマーを滴下して重縮合反応およびラジカル重合反応を行えばよい。
【0030】
(離型剤分散剤)
上記した離型剤をトナー材料として分散などにより混合させる際に、離型剤の分散を助ける離型剤分散剤を含有させても良い。離型剤分散剤としては特に限定はなく、公知のものを使用することができ、離型剤との相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットがブロック体として存在するポリマーやオリゴマー、離型剤との相溶性の高いユニットと樹脂との相溶性の高いユニットのうち一方に他方がグラフトしているポリマーもしくはオリゴマー、エチレン・プロピレン・ブテン・スチレン・α−スチレンなどの不飽和炭化水素と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸やそのエステルもしくはその無水物との共重合体、ビニル系樹脂とポリエステルとのブロック重合体、もしくはグラフト重合体などが挙げられる。
【0031】
上記の離型剤との相溶性の高いユニットとしては、炭素数が12以上の長鎖アルキル基を有する重合体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエンとそれらの共重合体などの樹脂が挙げられ、これらの樹脂と相溶性の高いユニットとして、ポリエステル、ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0032】
(荷電制御剤)
トナー材料として、トナー粒子の帯電量を制御する荷電制御剤を混ぜることができる。このような荷電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0033】
荷電制御剤の使用量は、結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、通常、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5質量部の範囲がよい。10質量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。
【0034】
(着色剤)
トナー材料に用いられる着色剤としては、下記の様な公知のものを用いることができる。カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。
【0035】
(着色剤のマスターバッチ化)
トナー材料に用いられる着色剤は、樹脂(結着樹脂)と複合化されたマスターバッチを用いることもできる。 マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練される結着樹脂としては、先にあげたポリエステル、ビニル系の樹脂のほかに、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィン離型剤などが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0036】
実施の形態1によるトナー母体粒子は、上記した、少なくとも結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、荷電制御剤とを有するトナー材料を図3に示すように、ステップS10の前混合処理工程により混合した後に、ステップS11により結着樹脂の溶融温度以上で溶融し混練する溶融混練工程を行う。このステップS11の溶融混練工程後に冷却して固化してトナー材料をペレット化し、ステップS12の粉砕工程により粉砕後、ステップS13の分級工程により分級して所定の大きさの範囲のトナー母体粒子を得る。このトナー母体粒子にステップS1−1の外添混合工程によりトナー母体粒子と外添剤とを混合して得られたトナーに、ステップS2−1の外添剤洗浄工程を行う。なお上記粉砕工程(ステップS12)は、ペレット化したトナー材料を粗粉砕後に、微粉砕する微粉砕工程の2つの工程を有することができる。また上記した前混合処理工程(ステップS10)、溶融混練工程(ステップS11)、粉砕工程(ステップS12)および外添混合工程(ステップS1−1)は、公知の装置を用い、公知の方法に従って行うことができる。
ステップS2−1の外添剤洗浄工程後のトナーを洗浄・乾燥するステップS3−1の洗浄・乾燥工程と、乾燥されたトナーを解砕するステップS4−1の解砕工程後に、ステップS5−1の篩処理工程を行って、所定の大きさの範囲のトナーを得ることができる。
以下、トナー母体粒子と外添剤との外添工程後の各工程について、説明する。
【0037】
<外添剤洗浄工程>
[分散液馴染み処理]
分散剤を0.5wt%に調整した分散剤溶液(分散剤が溶解した分散液)1L(1リットル)に対し、トナー100gを加える。
トナーが分散液に良くなじむまで、デゾルバーで10分間、撹拌する。
[超音波の印加処理]
その後、ホモジナイザーにより、所定の超音波エネルギーを所定の時間与え、余剰外添剤と付着力の弱い外添剤を取り除く。
この際用いる分散剤は、実施の形態2で後述する界面活性剤を用いることができる。
【0038】
[洗浄・乾燥工程(ステップS3−1)]
遠心分離機などで固液分離した後、得られたトナーケーキを常温の20〜約40℃程度のイオン交換水に再分散させ、再度固液分離する工程を数回繰り返す。これにより、離脱した外添剤と界面活性剤などを除去する。なおあまり低温であると洗浄効率に影響する恐れがある。
その後、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機などにより乾燥することによってトナー粉末を得る。このように本発明では、実質的に加熱処理をせずに洗浄工程を行う。
【0039】
<解砕工程(ステップS4−1)>
公知の技術を用いて解砕工程を行うことができる。
【0040】
<篩工程(ステップS5−1)>
公知の技術を用いて篩工程を行うことができる。
【0041】
[実施の形態2]
<重合トナー>
[トナーの製造方法]
実施の形態2では、重合法によりトナー母体粒子を製造する。重合法によるトナー母体粒子の製造には、図3に示すように、エステル伸長法を用いている。このエステル伸長法は、有機溶媒中に、ポリエステル樹脂、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤および離型剤を含むトナー材料を溶解又は分散させた後、該溶解物又は分散物を水系媒体中に分散させて造粒する造粒工程を少なくとも含むことからなる。
より具体的に、以下に説明する。
【0042】
[造粒工程]
(有機溶媒)
ポリエステル樹脂、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤および離型剤を溶解又は分散させる有機溶媒としては、「POLYMER HANDBOOK」4th Edition,WILEY−INTERSCIENCEのVolume 2,Section VII記載のHansen溶解度パラメーターが19.5以下となるものが好ましく、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の溶剤除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。ポリエステル樹脂、着色剤および離型剤は同時に溶解又は分散させても良いが、通常それぞれ単独で溶解又は分散され、その際使用する有機溶媒はそれぞれ異なっていても同じでも良いが、後の溶媒処理を考慮すると同じ溶媒の方が好ましい。なおポリエステル樹脂は、実施の形態1において説明した結着樹脂のポリエステルに関する事項と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
(ポリエステル樹脂の溶解又は分散)
ポリエステル樹脂の溶解又は分散液は、樹脂濃度が40〜80質量%程度であることが好ましい。濃度が高すぎると溶解又は分散が困難になり、また粘度が高くなって扱いづらい。また、濃度が低すぎるとトナーの製造量が少なくなる。芳香族基含有ポリエステル骨格を有する結着樹脂に前記末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂を混合する場合には、同じ溶解又は分散液に混合しても良いし、別々に溶解又は分散液を作製しても良いが、それぞれの溶解度と粘度を考慮すると、別々の溶解又は分散液を作製する方が好ましい。
【0044】
(着色剤の溶解又は分散)
着色剤は単独で溶解又は分散しても良いし、前記ポリエステル樹脂の溶解又は分散液に混合しても良い。また必要に応じて、分散助剤やポリエステル樹脂を添加しても良いし、前記マスターバッチを用いても良い。これら着色剤およびマスターバッチに関する記載も実施の形態のそれぞれの項と同様であるので、説明を省略する。
【0045】
(離型剤の溶解又は分散)
離型剤としてワックスを溶解又は分散する場合、ワックスが溶解しない有機溶媒を使用する場合は分散液として使用することになるが、分散液は一般的な方法で作製される。即ち、有機溶媒とワックスを混合し、ビーズミルの如き分散機で分散すれば良い。また、有機溶媒とワックスを混合した後、一度ワックスの融点まで加熱し、攪拌しながら冷却した後、ビーズミルの如き分散機で分散した方が、分散時間が短くて済むこともある。また、ワックスは複数種を混合して使用しても良いし、分散助剤やポリエステル樹脂を添加しても良い。なお離型剤に関しても、実施の形態1での記載と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
(水系媒体)
用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。更には、上記油相で使用したHansen溶解度パラメーターが19.5以下の有機溶媒を混合してもよく、好ましくは水に対する飽和量付近の添加量が油相の乳化または油相の分散安定性を高めることができる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。トナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000質量部、好ましくは100〜1000質量部である。50質量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。また、2000質量部を超えると経済的でない。
【0047】
(無機分散剤および有機樹脂微粒子)
上記水系媒体中に、前記トナー組成物の溶解物または分散物を分散させる際、無機分散剤または有機樹脂微粒子をあらかじめ水系媒体中に分散させておくことにより、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが用いられる。有機樹脂微粒子を形成する樹脂としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、いかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良い。例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいという観点からビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびそれらの併用である。
【0048】
(有機樹脂微粒子の水系への分散方法)
樹脂を有機樹脂微粒子の水性分散液にする方法は、特に限定されないが、以下の(a)〜(h)の方法が例として挙げられる。
(a)ビニル系樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法。
(b)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下で水性媒体中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えて硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法。
(c)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化しても良い。)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
(d)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等のいずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤の存在下で水中に分散させる方法。
(e)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下で水中に分散させる方法。
(f)あらかじめ前記(e)と同様な高分子化反応により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に溶剤を添加するか、またはあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次いで、溶剤を除去して樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤の存在下で水中に分散させる方法。
(g)あらかじめ前記(e)と同様な高分子化反応により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶剤を除去する方法。
(h)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
【0049】
(界面活性剤)
また、トナー組成物が含まれる油性相を水系媒体中に乳化、分散させるために、必要に応じて、界面活性剤等を用いることもできる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0050】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸、及び、その金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(の炭素数6〜11のアルキル基(C〜C11のアルキル基と記載する。以下、同様。))オキシ]−1−アルキル(C〜C)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C〜C)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0051】
(保護コロイド)
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解など
の操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0052】
(分散の方法:材料分散工程(ステップS20))
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは20〜80℃である。
【0053】
(脱溶剤)
得られた乳化分散体から有機溶剤を除去する脱溶剤工程を行うために、公知の方法を使用することができる。例えば、常圧または減圧下で系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
【0054】
<伸長又は/及び架橋反応(ステップS21)>
ウレア変性ポリエステル樹脂を導入する目的で、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂およびこれと反応可能なアミン類を添加する場合には、水系媒体中にトナー組成物を分散する前に油相中でアミン類を混合しても良いし、水系媒体中にアミン類を加えても良い。上記反応に要する時間は、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート基構造と、加えたアミン類との反応性により選択されるが、通常1分〜40時間、好ましくは1〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは20〜98℃である。この反応は、コア-シェル構造をとらせて造粒する場合のシェル材として用いる樹脂微粒子付着工程の前に行っても良いし、この樹脂微粒子付着工程中に同時に進行させても良い。また、樹脂微粒子付着工程が終了してからでも良い。
また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。
【0055】
[洗浄、乾燥工程]
水系媒体に分散されたトナー粒子を洗浄する工程(ステップS22)、乾燥する工程(ステップS23)は、公知の技術が用いられる。
即ち、遠心分離機、フィルタープレスなどで固液分離した後、得られたトナーケーキを常温の20〜約40℃程度のイオン交換水に再分散させ、必要に応じて酸やアルカリでpH調整した後、再度固液分離するという工程を数回繰り返すことにより不純物や界面活性剤などを除去した後、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機などにより乾燥することによってトナー粉末を得る。この際、遠心分離などでトナーの微粒子成分を取り除いても良いし、また、乾燥後に必要に応じて公知の分級機を用いて所望の粒径分布にすることができる。洗浄、乾燥工程は、独立して、別々の工程(洗浄工程と乾燥工程)で行うこともできる。なお実施の形態2においても、実質的に加熱処理をせずに洗浄工程を行う。また湿式外添工程(ステップS1−2)は、水中にて外添剤を付着させる工程である。
上記の粉砕法及びエステル伸長法によって得た着色粒子に対して以下の処理を行うことによってトナー母体粒子を得ることができる。
【0056】
<外添工程>
(外添処理)
得られたトナー母体粒子粉体と前記帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子などの異種粒子とともに混合することによってトナー母体粒子表面にこの微粒子である異種粒子(外添剤)を固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)などが挙げられる。
【0057】
(外添剤)
本発明では、トナー粒子の流動性や帯電性/現像性/転写性を補助するための外添剤として、好ましくは1種以上の無機微粒子が用いられる。
無機微粒子のBET法による比表面積としては、30〜300m/gであることが好ましく、1次粒子径として30nm以下であることが好ましく、10〜20nmが最適である。
無機微粒子の具体例としては、例えば酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、酸化チタン、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0058】
外添剤の一次粒子径が10nm以下の場合は、トナーへの外添剤の埋まりこみが悪化し、画質劣化変動が大きくなり、耐久性が悪化する。
外添剤の一次粒子径が30nm以上の場合は、母体表面に均一に付着させづらく、また、母体への付着強度も小さくなるため、意図する外添状態を形成できない。
【0059】
<外添剤洗浄工程(ステップS2−2)>
[分散液馴染み処理]
分散剤を0.5wt%に調整した分散剤溶液(分散剤が溶解した分散液)1L(1リットル)に対し、トナー100gを加える。
トナーが分散液に良くなじむまで、デゾルバーで10分間、撹拌する。
[超音波の印加処理]
0.5wt%に調整した分散剤溶液1L(1リットル)に対し、トナー100gを加える。
トナーが分散液に良くなじむまで、デゾルバーで10分間、撹拌する。
その後、ホモジナイザー(超音波ホモジナイザー)により、所定の超音波を所定の時間印加し、余剰外添剤と付着力の弱い外添剤を取り除く処理を行う。
この際用いる分散剤は、前述した「(界面活性剤)」を用いることができる。
【0060】
[洗浄・乾燥工程]
遠心分離機などで固液分離した後、得られたトナーケーキを常温の20〜約40℃程度のイオン交換水に再分散させ、再度固液分離するという工程を1回以上、数回繰り返すことにより、離脱させた外添剤と界面活性剤などを除去する。
その後、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機などにより乾燥することによってトナー粉末を得る。
【0061】
<解砕工程>
公知の技術が用いられる。
この解砕処理として、たとえば、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)などで、短時間の混合撹拌することにより解砕することができる。
【0062】
<篩処理工程>
公知の技術が用いられる。
【0063】
上記した実施形態のトナー(一成分現像剤)は、以下に説明する画像形成装置に用いられ、画像形成方法を用いられることにより、地汚れが少なく、感光体が汚染されにくく、白筋の発生の少ない画像を得ることができる。このような画像形成装置および画像形成方法などについて、次に説明する。なお本発明のトナーは、一成分現像剤として使用することが好ましいが、二成分現像剤として、使用することもできる。この場合に公知のキャリアを用いて前記したトナーにより、二成分現像剤として使用することができる。
【0064】
〈画像形成装置〉
図4は実施の形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。潜像担持体1は、帯電装置2で一様に帯電され、一様に帯電された潜像担持体1上に図示しない制御部によって制御された露光装置3によって潜像が書き込まれる。現像ローラ40と像担持体1にはバイアスが印加されており、書き込まれた潜像は、供給ローラ41により供給され現像ローラ40上で規制ブレード43により薄層化された現像剤44が接触部を介して像担持体1に接触して像担持体上に形成された潜像にしたがって現像され、可視化される。潜像上に現像剤44により可視化された現像は、中間転写材8に一旦転写され、紙などの記録媒体9に転写され、図示しない定着装置で記録媒体9上に固定化される。一方、現像剤44は、中間転写材通過後に、わずかではあるが潜像担持体1上に残存する。この現像剤44はブレード状のクリーニング部材7で回収されて、廃棄される。
【0065】
次に現像部について以下に説明する。
図5は現像装置(プロセスカートリッジ)4の概略図である。容器内部のトナー補給部の現像剤(トナー)44は、供給ローラ41で攪拌されながら、現像ローラ40のニップ部分に運ばれる。さらに、規制ブレード43で現像ローラ40上の現像剤量が規制され、現像ローラ上のトナー薄層が形成される。また、現像剤44は、供給ローラ41と現像ローラ40のニップ部と規制部材43と現像ローラ40の間で摺擦され、適正な帯電量に制御される。特にクリーナレスプロセスでは、転写トナーを回収するため、帯電性が適正値から大きくずれる。そのため、現像ローラ40で回収したトナーは、供給ローラ41で十分に掻き取り除去できなければならない。
【0066】
本発明の現像剤44は、例えば図6に示すようなプロセスカートリッジを備えた画像形成装置に於いて使用することもできる。
本発明においては、潜像担持体1、帯電手段2、現像手段4及びクリーニング手段等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成する。
図6に示したプロセスカートリッジは、潜像担持体1、帯電手段2、現像手段4、クリーニング手段7を備えている。動作を説明すると、潜像担持体1が所定の周速度で回転駆動される。潜像担持体1は回転過程において、帯電手段2によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の像露光手段からの画像露光光を受け、こうして潜像担持体1の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は、次いで現像手段4によりトナー現像され、現像されたトナー像は、給紙部から潜像担持体1と転写手段との間に潜像担持体の回転と同期されて給送された転写材である記録媒体9に、転写手段により順次転写されていく。像転写を受けた記録材である転写材は潜像担持体面から分離されて像定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピー)又は印刷物(プリント)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の潜像担持体1の表面は、クリーニング手段7によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に除電された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0067】
以下、本発明を、実施例、比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例などの記載に拘束されて解釈されるものではない。なお以下の実施例、比較例で使用する「部」および「%」は、特に断らない限り、重量基準を意味する。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
[トナーの作製]
トナー材料
ポリエステル樹脂A(軟化点131℃、AV値 25) ・・・68部
ポリエステル樹脂B(軟化点116℃、AV値 1.9) ・・・32部
シアンのマスターバッチ(C.I.Pigment Blue 15:3を50質量%含有) ・・・8部
カルナウバワックス ・・・8部
上記トナー材料をヘンシェルミキサーで十分混合した後、二軸押出し混練機(PCM−30:池貝鉄工社製)の排出部を取り外したものを使用して、溶融混練し、得られた混練物を冷却プレスローラで厚さ2mmに圧延し、冷却ベルトで冷却した後、フェザーミルで粗粉砕した。
その後、機械式粉砕機(KTM:川崎重工業社製)で平均粒径10〜12μmまで粉砕し、さらに、ジェット粉砕機(IDS:日本ニューマチック工業社製)で粗粉分級しながら粉砕した後、微粉分級をロータ型分級機(ティープレックス型分級機 タイプ100ATP:ホソカワミクロン社製)を使用して分級を行い、体積平均粒径8.1μm、平均円形度0.910のトナー母体粒子Aを得た。
このトナー母体粒子A 100部に対して、外添剤として、表1に記載の外添剤を表1に示す量で添加し、ヘンシェルミキサーで混合処理を行なった。
その後、以下に示す外添剤洗浄工程を行なった。
<外添剤洗浄工程>
イオン交換水を分散媒に、分散剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いて、0.5wt%に調整した分散液1L(1リットル)に対し、トナー100gを加えた。
トナーが分散液に良くなじむまで、デゾルバーで10分間撹拌した。
その後、ホモジナイザー(超音波ホモジナイザー)を、表1に示す超音波出力にして、表1に示す時間で印加し、余剰外添剤と付着力の弱い外添剤を取り除く処理を行った。
得られた現像剤の洗浄・乾燥の後、ヘンシェルミキサーで解砕を行い、250メッシュの篩にて凝集粒子などの粗大粒子を除去して実施例1の現像剤(一成分現像剤)を得た。
【0069】
(実施例2〜実施例5)
実施例1と同様にして得られたトナー母体粒子を用い、表1に示す外添剤を用いて、表1に示す外添処理を行った。
その後、外添剤洗浄工程において、ホモジナイザーによる超音波処理を、表1に示すような条件で行った以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5の各現像剤を得た。
【0070】
(実施例6)
[樹脂1の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物264部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物523部、テレフタル酸123部、アジピン酸173部およびジブチルチンオキサイド1部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で8時聞反応した。その後、反応容器に無水トリメリット酸26部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、樹脂1を得た。樹脂1はガラス転移点Tgが65℃、酸価が12mgKOH/gであった。
[樹脂2の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.9部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム1.1部をイオン交換水45部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー93部、ブチルアクリレート7部、n−オクタンチオール0.1部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。
その後、冷却して白色の樹脂分散体を得た。この分散体を固形分濃度が10質量%になるようにイオン交換水で薄め、[樹脂2の分散液]を作製した。得られた分散液を2mlシャーレに取り、分散媒を蒸発させて得られた[樹脂2]を測定したところ、ガラス転移点Tgは70℃、体積平均径は109nmであった。
【0071】
[プレポリマー1の合成]
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応させ、さらに1.3〜2.0kPa(10〜15mmHg)の減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、質量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価49mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]411部、イソホロンジイソシアネート89部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。
【0072】
[マスターバッチ1の製造]
Pigment Blue 15-3:50部、樹脂1:50部、水:30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルベライザーで1mmの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0073】
(水相の調製)
イオン交換水970部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25wt%水性分散液60部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液180部、酢酸エチル100部を混合撹拌したところpH6.2となった。これに、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH9.5に調整し、[水相1]を得た。
【0074】
(ワックス分散液(WAX分散液とも記載する)作製工程)
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[樹脂1]24部、[パラフィンワックス(融点72℃)]12部、酢酸エチル100部、ワックス分散剤として、スチレン・ポリエチレンポリマー(Tg=72℃、数平均分子量7100)8部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、WAXの分散を行い、[WAX分散液1]を得た。
【0075】
(油相作製工程)
[樹脂1]100部、[マスターバッチ1]18部、[WAX分散液1]30部、酢酸エチル80部をTKホモミキサー(特殊機化製)で8,000rpmにて30分間混合した後、[プレポリマー1]15部を加えTKホモミキサーで8,000rpmにて2分間混合して[油相1]を得た。得られた[油相1]の固形分を測定したところ60質量%であった。
【0076】
(粒子作成工程)
[油相1]100部に[水相1]100部を加え、ミキサーのせん断熱による温度上昇を抑えるために水浴で冷却をすることにより液中温度を20〜23℃の範囲になるように調整しながら、TKホモミキサーを用い回転数3,000で調整して2分間混合したのち、アンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数250rpmの間に調整しながら10分間攪拌し、芯粒子となる油相の液滴が水相に分散された[粒子スラリー1]を得た。
[粒子スラリー1]200部を、アンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数350rpmに調整して攪拌しながら、液温が22℃の状態で、[樹脂2の分散液]30部を3分間かけて滴下した。30分間攪拌を続け、[複合粒子スラリー1]を得た。
【0077】
(脱溶工程)
撹拌機および温度計をセットした容器に、[複合粒子スラリー1]を投入し、攪拌を行いながら30℃で8時間脱溶剤を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0078】
(洗浄・乾燥工程)
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した。
(3):(2)のリスラリー液のpHが4となる様に10%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで攪拌30分後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返し[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、体積平均粒径6.2μm、平均円形度0.980のトナー母体粒子Bを得た。
【0079】
以下は、実施例1と同様にして、表1に示す外添剤を用いて、表1に示す外添処理を行った。
その後、外添剤洗浄工程において、ホモジナイザーによる超音波処理を、表1に示すような条件で行った以外は、実施例1と同様にして、実施例6の現像剤を得た。
【0080】
(比較例1)
外添剤洗浄工程を行わない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の現像剤を得た。
【0081】
(比較例2〜4)
粒径が30nmの外添剤を用い、外添剤洗浄工程を表1に示すようにして行った以外は、比較例1と同様にして、比較例2〜4の各現像剤を得た。
【0082】
(比較例5)
外添剤洗浄工程を行わない以外は、実施例6と同様にして、比較例5の現像剤を得た。
【0083】
[評価]
(画像評価)
リコー製Ipsio C220を用いて、得られたトナーを投入し、印字率6%の所定のプリントパターンを、N/N環境下(23℃、45%)にて5000枚連続印字後に全面ハーフ印字画像及び白ベタ(白紙)印字画像を目視により観察し、評価した。
評価項目としては画像白紙上カブリ/ベタ上縦白スジを目視評価し、画像品質上問題のないレベルを○、実使用上問題のあるレベルを×とした。
また、感光体への外添剤汚染も目視にて評価した。
【0084】
(外添剤被覆状態)
SEMにて表面観察を行い、50000倍の画像を下記基準にて目視評価した。
○:ほぼ全面(100%〜80%)が外添剤に覆われている。
×:トナー母体表面が多く露出している。(70以下の被覆状態)
また、余剰外添剤の有無も確認した。
【0085】
(外添剤付着強度測定方法)
外添剤の付着強度は、10倍に希釈した界面活性剤溶液30mLにトナー2gを入れ十分に馴染ませた後、超音波ホモジナイザーを用いて40Wで1分(60秒)間、エネルギーを与えて、トナーを分離、洗浄後、乾燥させる処理を行い、蛍光X線分析装置を用いて処理前後の無機粒子の付着量の比を算出することにより得られる。蛍光X線分析は島津製作所社製波長分散型蛍光X線分析装置XRF1700を用いて上記処理により得られた乾燥トナーと処理前のトナーをそれぞれ2gに1N/cmの力を60秒間加えてトナーペレットを作成して無機微粒子固有の元素(たとえばシリカの場合はケイ素)を検量線法により定量して、上記処理後の無機微粒子量を、上記処理前の無機微粒子量で除すことで、外添剤付着強度を算出した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表2において、比較例1のものは、余剰な外添剤が多い。また比較例2のものは、母体表面の露出が多い(すなわち均一に被覆できない)。また比較例3のものは、比較例2と同様に母体表面の露出が多い。また比較例4のものは、付着力の弱い外添剤が多い。
【符号の説明】
【0089】
1 潜像坦持体(感光体)
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
7 クリーニング部材(クリーニングブレード)
8 中間転写体
9 記録媒体(シート体)
10 支持ローラ
40 現像ローラ
41 供給ローラ
43 規制ブレード
44 現像剤(一成分現像剤)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2007−86812号公報
【特許文献2】特開2007−155860号公報
【特許文献3】特開平04−16860号公報
【特許文献4】特開2006−78632号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と着色剤と離型剤を含むトナー材料を用いて得られたトナー母体粒子と、外添剤とを混合する混合工程後に、前記混合工程により得られた混合物を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記洗浄工程は、実質的に加熱しないで行う工程であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程は、分散剤を用いて攪拌する工程を含むことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記洗浄工程は、超音波を印加する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記超音波を印加する工程は、超音波ホモジナイザーを用いることを特徴とする請求項4に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のトナーの製造方法により得られるトナー。
【請求項7】
請求項6に記載のトナーを有する現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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