説明

トナーの製造方法、トナーの製造装置及びトナー

【課題】トナー組成液から形成される液滴に効率よく熱を伝え、溶媒をとばして液滴を固化させるトナーの製造方法及びこれを実施するトナーの製造装置を提供する。
【解決手段】振動を用いて、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液10を、複数の吐出孔11から周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、放出されたトナー組成液10の液滴35を、固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを行うトナーの製造方法において、放出されたトナー組成液10の液滴35を、赤外線放射による加熱手段25で固化させてトナー粒子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真における静電荷像を現像する現像剤として使用されるトナーの製造方法、トナーの製造装置及び製造されたトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真記録方法に基づく複写機、プリンター、ファックス、およびそれらの複合機に使用される電子写真用トナーの製法としては粉砕法のみであったが、近年、重合法と呼ばれる水系媒体中で形成される方法が広く行なわれ、粉砕法を凌駕する勢いである(例えば特許文献1参照)。
なお、重合法によるトナーは「重合トナー」、または国によっては「ケミカルトナー」と呼ばれるが、重合法には必ずしも重合過程を伴わない製造方法も便宜上含んでいる。現在実用化されている重合方法は、懸濁重合、乳化凝集、ポリマー懸濁(ポリマー凝集)、エステル伸長の各方法である。
【0003】
粉砕法に比べ、重合法は総じて、小粒径トナーが得易い、粒径分布がシャープである、形状が球形に近い等の利点がある反面、通常、水系媒体中でトナー粒子から脱溶剤するため、脱溶剤効率が悪く、また重合過程に長時間を必要とする。さらに固化終了後、トナー粒子と水とを分離し、その後、洗浄乾燥を繰り返す必要が有り、多くの時間と、多量の水、多くのエネルギーを必要とする。
【0004】
これに代わるトナーの製造方法として、水を使わずにトナー組成液を気相中で液滴化した後に固化する、いわゆるスプレードライ法も提案されているが、粒度分布が広いといった欠点がある。
トナー組成液を気相中で液滴化し粒度分布を狭くする試みとして、圧電パルスを利用して微小液滴を形成し、さらにこれを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献2参照)。
更に、ノズル内の熱膨張を利用し、やはり微小液滴を形成し、さらにこれを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献3参照)。
更には、音響レンズを利用し、同様の処理をする方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらの方法では、一つのノズルから単位時間あたりに吐出できる液滴数が少なく、生産性が悪いという問題があると同時に、液滴同士の合一による粒度分布の広がりが避けられず、単一分散性という点においても満足のいくものではなかった。
高周波数の振動と複数吐出孔を利用して微小液滴を形成することで生産性を向上させることが提案されている。しかし、高周波数の振動と複数ノズルを利用すると、吐出される液滴が非常に多くなり、溶媒除去部の気体の溶媒濃度が容易に上がるため、乾燥固化に時間がかかる。それの対策として液滴を加熱し、溶媒の蒸発を加速させることが考えられた。
その手段として従来使われてきたのは温風を溶媒除去部内へ送り込むことである。気体から熱が液滴へ伝わり、溶媒の蒸発が加速する。
【0005】
しかし、この手段では液滴をある温度まで暖めるのに、周囲の気体をその温度まで暖める必要がある。つまり、気体にある熱から、液滴へ伝わる熱の量が僅かな量であるため、この手段のエネルギーの無駄が多いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、トナー組成液から形成される液滴に効率よく熱を伝え、溶媒をとばして液滴を固化させるトナーの製造方法及びこれを実施するトナーの製造装置を提供することである。
さらに、このトナーの製造方法及びこれを実施するトナーの製造装置によって製造されるトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明のトナーの製造方法は、振動を用いて、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、複数の吐出孔から周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、放出されたトナー組成液の液滴を、固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを行うトナーの製造方法において、前記粒子化工程は、放出されたトナー組成液の液滴を、赤外線放射による加熱手段で固化させてトナー粒子を形成することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記トナー組成液の液滴の加熱が、該液滴中のトナー組成とトナー組成の分布とが変化しない温度以下にあることを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記トナー組成液の液滴の加熱が、該液滴中の溶媒が沸騰しない温度以下にあることを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記周期的液滴化工程は、振動噴射法を採用することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記周期的液滴化工程は、液共振法を採用することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記周期的液滴化工程で機械的縦振動手段を利用することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記周期的液滴化工程で円環状機械的振動手段を利用することを特徴とする。
【0008】
本発明のトナーの製造装置は、振動を用いて、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、複数の吐出孔から周期的に液滴化して放出させて、前記放出されたトナー組成液の液滴を固化させてトナー粒子を形成するトナーの製造装置において、前記トナーの製造装置は、前記放出されたトナー組成液の液滴を、赤外線放射による加熱手段で固化させてトナー粒子を形成することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造装置は、さらに、振動噴射法を採用して、トナー組成液を複数の吐出孔から周期的に液滴化することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造装置は、さらに液共振法を採用して、トナー組成液を複数の吐出孔から周期的に液滴化することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造装置は、さらに、前記振動噴射法で、機械的縦振動手段を利用することを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造装置は、さらに、前記振動噴射法で、円環状機械的振動手段を利用することを特徴とするトナーの製造装置。
【0009】
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナーにおいて、上記のいずれかに記載のトナー製造方法によって、または、上記のいずれかに記載のトナーの製造装置によって製造されることを特徴とするトナー。
また、本発明のトナーは、さらに、前記トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)が、1.00以上1.15以下であることを特徴とする。
また、本発明のトナーは、さらに、前記トナーの重量平均粒径が、1[μm]以上20[μm]以下であることを特徴とする。
また、本発明のトナーは、さらに、前記トナーの円形度が0.95以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記課題を解決する手段である本発明によって、以下のような特有の効果を奏する。
本発明のトナーの製造方法及びトナーの製造装置によって、吐出されたトナーを、短時間で固化することで生産性を向上させ、かつ、、乾燥工程中に互いに衝突することによる合着を効率よく防止し、得られるトナー群は合一物が極めて少なく、歩留などを含む生産性を向上させることができる。
本発明のトナーは、吐出された短時間で固化することで、合一物が極めて少なく、粒度分布を非常に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るトナーの製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】同トナーの製造装置の液滴噴射ユニットの説明に供する拡大説明図である。
【図3】図2を下側から見た底面説明図である。
【図4】同液滴噴射ユニットの振動発生手段を構成するステップ型のホーン型振動子の例を示す模式的説明図である。
【図5】同液滴噴射ユニットの振動発生手段を構成するエクスポネンシャル型のホーン型振動子の例を示す模式的説明図である。
【図6】同液滴噴射ユニットの振動発生手段を構成するコニカル型のホーン型振動子の例を示す模式的説明図である。
【図7】同トナーの製造装置の液滴噴射ユニットの他の例の説明に供する拡大説明図である。
【図8】同トナーの製造装置の液滴噴射ユニットの更に他の例の説明に供する拡大説明図である。
【図9】同トナーの製造装置の液滴噴射ユニットの更にまた他の例の説明に供する拡大説明図である。
【図10】図9の液滴噴射ユニットを複数個配置した例の説明に供する説明図である。
【図11】本発明に係るトナーの製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図12】同トナーの製造装置の液滴噴射ユニットの説明に供する拡大説明図である。
【図13】図13を下側から見た底面説明図である。
【図14】同液滴噴射ユニットの液滴化手段の拡大断面説明図である。
【図15】比較例構成に係る液滴化手段の拡大断面説明図である。
【図16】同トナーの製造装置の具体的適用の説明に供する要部説明図である。
【図17】同液滴噴射ユニットによる液滴化の動作原理の説明に供する薄膜の模式的説明図である。
【図18】同じく基本振動モードの説明に供する説明図である。
【図19】同じく2次振動モードの説明に供する説明図である。
【図20】同じく3次振動モードの説明に供する説明図である。
【図21】同じく薄膜の中央部に凸部を形成した場合の説明図である。
【図22】本発明に係る液共振方式のトナーの製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図23】図22のトナーの製造装置の液滴噴射ユニットの説明に供する拡大説明図である。
【図24】本発明に係る液共振方式のトナーの製造装置におけるノズルの断面形状を2段型とする方法の説明図である。
【図25】本発明のトナー捕集に係る膜振動方式のトナーの製造装置を示す概略構成図である。
【図26】噴射出口側に凸加工が施してあるノズルの形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0013】
(トナー製造方法)
従来のトナーの製造方法である粉砕法と本発明の製造方法である噴霧法及び振動噴射法について説明する。
(粉砕法)
従来から行われている一般的なトナーの製造方法であり、トナー組成物を二本ロールや二軸押し出し機などにより溶融混練し、冷却後、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じてヘンシェルミキサーなどで流動化剤などの外添剤の混合を行う方法である。粗粉砕ではロートプレックスやパルペライザー、微粉砕ではジェットミルやターボミル、分級ではエルボジェットや各種の風力分級装置等の公知の製造装置を用いることができる。
【0014】
(噴霧法)
液体を加圧してノズル11から噴霧する一流体ノズル(加圧ノズル)噴霧機や液体と圧縮気体を混合して噴霧する多流体スプレーノズル噴霧機、回転する円盤を用いて液体を遠心力により液滴化する回転円盤型噴霧機等を用いて、トナー組成液10を気相中で液滴化する方法である。噴霧と乾燥を同時に行うスプレードライシステムとして市販の装置を用いることができるが、十分な乾燥ができない場合は流動床乾燥等の二次乾燥を行い、必要に応じてヘンシェルミキサーなどで流動化剤などの外添剤の混合を行う方法である。
【0015】
(振動噴射法)
同じ開口径の複数のノズルを有する薄膜を機械的に振動させることによって、該ノズルからトナー組成液10を周期的に放出することにより均一粒径の液滴を生成し、乾燥してトナー粒子を得る方法である。
機械的振動手段は、ノズルを有する膜に対して垂直方向に振動すればどのような配置でもよいが、本発明においては次の二通りの方式が好ましく用いられる。
一つは、複数のノズルを有する薄膜に対して平行な振動面を有し、垂直方向に縦振動する機械的手段(機械的縦振動手段)を用いる方式であり、他の一つは、複数のノズルを有する薄膜のノズルを設けた領域の周囲に円環状に形成された機械的振動手段(円環状機械的振動手段)を設ける方式である。
以下、各方式について説明する。
【0016】
(機械的縦振動手段)
まず、機械的縦振動手段を設けたトナーの製造装置の一例について説明する。
図1は、機械的縦振動手段を設けたトナーの製造装置の構成を説明する模式図である。
トナーの製造装置1はトナー組成液10を同じ開口径の複数のノズルから周期的に放出し、気相中で液滴化する周期的液滴化工程における液滴化手段としての液滴噴射ユニット2と、この液滴噴射ユニット2が上方に配置され、液滴噴射ユニット2から放出される液滴化されたトナー組成液10の液滴を固化してトナー粒子Tを形成する粒子形成工程における粒子化手段としての粒子形成部3と、粒子形成部3で形成されたトナー粒子Tを捕集するトナー捕集部4と、トナー捕集部4で捕集されたトナー粒子Tが誘導管5を介して移送され、移送されたトナー粒子Tを貯留するトナー貯留手段としてのトナー貯留部6と、トナー組成液10を収容する原料収容部7と、この原料収容部7内から液滴噴射ユニット2に対してトナー組成液10を送液する配管(送液管)8と、稼動時などにトナー組成液10を圧送供給するためのポンプ9とを備えている。
また、原料収容部7からのトナー組成液10は、液滴噴射ユニット2による液滴化現象により自給的に液滴噴射ユニット2に供給されるが、装置稼働時等には上述したように補助的にポンプ9を用いて液供給を行う構成としている。
【0017】
次に、液滴噴射ユニット2について図2、3に基づいて説明する。
図2は、液滴噴射ユニットの概略断面説明図である。
図3は、液滴噴射ユニットを下側から見た要部底面説明図である。
この液滴噴射ユニット2は、複数のノズル(吐出口)11が形成された薄膜12と、この薄膜12を振動させる機械的振動手段(以下「振動手段という)13と、薄膜12と振動手段13との間にトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)14を形成する流路部材15とを備えている。
前記複数のノズル11を有する薄膜12は、前記振動手段13の振動面13aに対して平行に設置されており、薄膜12の一部がハンダまたはトナー組成液10に溶解しない樹脂結着材料によって流路部材15に接合固定されており、振動手段13の振動方向とは実質的に垂直な位置関係となる。本発明の要諦はノズルの形状にあるが、それは別途解説する。前記振動手段13の振動発生手段21の上下面に電圧信号が付与されるように、通信手段24が設けられており、駆動信号発生源23からの信号を機械的振動に変換することができる。電気信号を与える通信手段としては、表面を絶縁被覆されたリード線が適している。また、振動手段13は後述する各種ホーン型振動子、ボルト締めランジュバン型振動子など、振動振幅の大きな素子を用いることが、効率的かつ安定なトナー生産には好適である。
【0018】
振動手段13は、振動を発生する振動発生手段21と、この振動発生手段21で発生した振動を増幅する振動増幅手段22とで構成され、駆動回路(駆動信号発生源)23から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が振動発生手段21の電極21a、21b間に印加されることによって、振動発生手段21に振動が励起され、この振動が振動増幅手段22で増幅され、薄膜12と平行に配置される振動面13aが周期的に振動し、この振動面13aの振動による周期的な圧力によって薄膜12が所要周波数で振動する。
この振動手段13としては、薄膜12に対して確実な縦振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができるが、薄膜12を振動させることから、振動発生手段21にはバイモルフ型のたわみ振動の励起される圧電体21aが好ましい。圧電体21aは、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧を印加することにより、たわみ振動が励起され、薄膜12を振動させることが可能となる。
【0019】
振動発生手段21を構成する圧電体21aとしては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さい為、積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などが挙げられる。
振動手段13は、ノズル11を有する薄膜12に対して垂直方向の振動を与えるものであれば、どのような配置でもよいが、振動面13aと薄膜12とは平行に配置される。
図示した例では振動発生手段21と振動増幅手段22で構成される振動手段13としてホーン型振動子を用いており、このホーン型振動子は、圧電素子などの振動発生手段21の振幅を振動増幅手段22としてのホーン22aで増幅することができるため、機械的振動を発生する振動発生手段21自体は小さな振動でよく、機械的負荷が軽減するために生産装置としての長寿命化につながる。
【0020】
ホーン型振動子としては、公知の代表的なホーン形状でよく、例えば図4に示すようなステップ型、図5に示すようなエクスポネンシャル型、図6に示すようなコニカル型などを挙げることができる。これらのホーン型振動子は、ホーン22aの面積の大きい面に圧電体21aが配置され、圧電体21aは縦振動を利用し、ホーン22aの効率的な振動を誘起し、ホーン22aに面積の小さい面を振動面13aとして、この振動面13aが最大振動面となるように設計されている。圧電体21の上方と下方にはリード線24が配置され、駆動回路23より交流電圧信号を与える。これらホーン振動子の最大振動面は、13aとなるように形状を設計されるものである。
また、振動手段13としては、特に高強度なボルト締めランジュバン型振動子を用いることもできる。このボルト締めランジュバン型振動子は圧電セラミックスが機械的に結合されており、高振幅励振時に破損することがない。
【0021】
貯留部及び前記機械的振動手段、前記薄膜の構成を、図2の概略図を用いて詳細に説明する。
貯留部14には、液供給チューブ18が少なくとも1箇所設けられており、一部断面図に示されるように、流路を通じて液貯留部に液を導入する。また、必要に応じて気泡排出チューブ19を設けることも可能である。この流路部材15に取り付けた図示しない支持部材によって液滴噴射ユニット2が粒子形成部3の天面部に設置保持されている。なお、ここでは、粒子形成部3の天面部に液滴噴射ユニット2を配置している例で説明しているが、粒子形成部3となる乾燥部側面壁又は底部に液滴噴射ユニット2を設置する構成とすることもできる。
機械的振動を発生する振動手段13の大きさは、発振振動数の減少に伴い大きくなることが一般的であり、必要な周波数に応じて、適宜振動手段に直接穴あけ加工を施し貯留部を設けることができる。また、貯留部全体を効率的に振動させることも可能である。
この場合、振動面とは、前記複数のノズルを有する薄膜が貼り合わされた面と定義される。
【0022】
このような構成の液滴噴射ユニット2の異なる例について図7及び図8を参照して説明する。
図7に示す例は、振動手段80(13)として、振動発生部としての圧電体81及び振動増幅部としてのホーン82で構成されるホーン型振動子80を用いて、ホーン82の一部に貯留部(流路)14を形成したものである。この液滴噴射ユニット2は、ホーン型振動子80のホーン82に一体形成した固定部(フランジ部)83によって粒子形成部3(乾燥手段)の壁面に固定されていることが好ましい、振動の損失を防ぐ観点から、図示しない弾性体を用いて固定してもよい。
図8に示す例は、振動手段90(13)として、振動発生部としての圧電体91A、91B及びホーン92A、92Bがボルトで機械的に強固に固定されて構成されるボルト締めランジュバン型振動子90を用いて、ホーン92Aに貯留部(流路14)を形成したものである。周波数条件により、素子が大きくなる場合もあり、図示のように振動子の一部に流体導入/排出路及び貯留部を加工し、複数の薄膜を有する金属薄膜を貼り付けることができる。
【0023】
なお、図1では、液滴噴射ユニット2が1個だけ粒子形成部3に取付けられている例を示しているが、複数個の液滴噴射ユニット2を粒子形成部3(乾燥塔)上部に並列にすることが、生産性向上の観点から好ましく、その個数は100〜1000個の範囲であることが、制御性の観点から好ましい。この場合、液滴噴射ユニット2の各貯留部14には配管8を介して原料収容部(共通液溜め)7に通じ、トナー組成液10が供給される構成とする。トナー組成液10は、液滴化に伴って自給的に供給される構成とすることもできるし、また、装置稼働時等、補助的にポンプ9を用いて液供給を行う構成とすることもできる。
液滴噴射ユニットの他の例について図9を参照して説明する。なお、図9は同液滴噴射ユニットの模式的断面説明図である。
この液滴噴射ユニット2は、前述した例と同様に、ホーン型振動子を振動手段13を用いて、この振動発生手段13の周囲を囲んでトナー組成液10を供給する流路部材15を配置し、振動発生手段13のホーン22に薄膜12と対向する部分に貯留部14を形成している。さらに、流路部材15の周囲に所要の間隔を置いて気流35を流す気流路37を形成する気流路形成部材36を配置している。なお、図示を簡略化するため、薄膜12のノズル11は1個で示しているが、前述したように複数個設けられている。
また、図10に示すように、複数、例えば制御性の観点からは100〜1,000個の液滴噴射ユニット2を、粒子形成部3を構成する乾燥塔の上部に並べて配置する。これにより、より生産性の向上を図ることができる。
【0024】
(円環状機械的振動手段)
図11は、トナーの製造装置の液滴噴射ユニットをリング式のものに代えたものである。
リング式の液滴噴射ユニット2について、図12〜図14を参照して説明する。なお、図12は同液滴噴射ユニット2の断面説明図、図13は図12を下側から見た要部底面説明図、図14は液滴化手段の概略断面説明図である。
この液滴噴射ユニット2は、少なくともトナー組成液10を液滴化して放出させる液滴化手段16と、この液滴化手段16にトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)14を形成した流路部材15とを備えている。
液滴化手段16は、複数のノズル(吐出口)11が形成された薄膜12と、この薄膜12を振動させる円環状の振動発生手段(電気機械変換手段)17とで構成されている。ここで、薄膜12は、最外周部(図14の斜線を施して示す領域)をハンダ又はトナー組成液10に溶解しない樹脂結着材料によって流路部材15に接合固定している。振動発生手段17は、この薄膜12の変形可能領域16A(流路部材15に固定されていない領域)内のノズルを設けた領域の周囲に配されている。図2に示すように、この振動発生手段17にはリード線24を通じて駆動回路(駆動信号発生源)23から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えば撓み振動を発生する。
【0025】
液滴化手段16は、貯留部14に臨む複数のノズル11を有する薄膜12の変形可能領域16A内のノズルを設けた領域の周囲に円環状の振動発生手段17が配されていることによって、例えば図15に示す比較例構成のように振動発生手段17Aが薄膜12の周囲を保持している構成に比べて、相対的に薄膜12の変位量が大きくなり、この大きな変位量が得られる比較的大面積(φ1mm以上)の領域に複数のノズル11を配置することができ、これら複数のノズル11より一度に多くの液滴を安定的に形成して放出することができるようになる。
図11では、液滴噴射ユニット2が1個配置されている例で図示しているが、好ましくは、図16に示すように、複数、例えば制御性の観点からは100〜1,000個(図16では4個のみ図示)の液滴噴射ユニット2を、粒子形成部3の天面部3Aに並べて配置し、各液滴噴射ユニット2には配管8Aを原料収容部7(共通液溜め)に通じさせてトナー組成液10を供給するようにする。これによって、一度により多くの液滴を放出させることができて、生産効率の向上を図ることができる。
【0026】
(液滴形成メカニズム)
次に、この液滴化手段としての液滴噴射ユニット2による液滴形成のメカニズムについて説明する。
上述したように液滴噴射ユニット2は、貯留部14に臨む複数のノズル11を有する薄膜12に、機械的振動手段である振動手段13によって発生した振動を伝播させて、薄膜12を周期的に振動させ、比較的大面積(φ1mm以上)の領域に複数のノズル11を配置し、それら複数のノズル11より液滴を周期的に、安定に形成して放出することができるようになる。
図17に示すような単純円形膜12の周辺部12Aを固定した場合、基本振動は周辺が節になり、図18に示すように、薄膜の中心Oで変位ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。
また、図19、図20に示すような、より高次のモードが存在することが知られている。これらのモードは、円形膜内に、同心円状に節を1乃至複数持ち、実質的に軸対称な変形形状である。また、図21に示すように、中心部が凸形状12cとすることで液滴の進行方向を制御し、かつ振動振幅量を調整することが可能である。
【0027】
円形薄膜の振動により、円形膜各所に設けられたノズル近傍の液体には、膜の振動速度Vmに比例した音圧Pacが発生する。音圧は、媒質(トナー組成液10)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、音圧は、放射インピーダンスと膜振動速度Vmの積で下記式(1)の方程式を用いて表される。
Pac(r,t)=Zr・Vm(r,t) (1)
膜の振動速度Vmは時間とともに周期的に変動しているため時間(t)の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形など、様々な周期変動を形成することが可能である。また、前述のとおり、膜の各所で振動方向の振動変位は異なっており、Vmは、膜上の位置座標の関数でもある。本発明で用いられる膜の振動形態は、上述のとおり軸対象である。したがって、実質的には半径(r)座標の関数となる。
【0028】
以上のように、分布を持った膜の振動変位速度に対して、それに比例する音圧が発生し、音圧の周期的変化に対応してトナー組成液10が、気相へ吐出される。
気相へ周期的に排出されたトナー組成液10は、液相と気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生する。
液滴化を可能とする膜の振動周波数としては20kHz〜2.0MHzの領域が用いられ、50kHz〜500kHzの範囲がより好適に用いられる。20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液10中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進される。
更には、前記音圧の変位量が、10kPa以上となることによって、上述の微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
ここで、形成される液滴の直径は、前記膜のノズル近傍における振動変位が大きいほど大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、または液滴化しない。このような、各ノズル部位における液滴サイズのばらつきを低減するためには、ノズル配置を、膜振動変位の最適な位置に規定することが必要である。
【0029】
本発明においては、図18〜20で説明されるように、前記機械的振動手段により発生するノズル近傍における膜の振動方向変位ΔLの最大値ΔLmaxと最小値ΔLminの比R(=ΔLmax/ΔLmin)が、2.0以内である部位にノズルが配置することにより、上記液滴サイズのばらつきを、高画質な画像を提供することのできるトナー微粒子として必要な領域に保てることを見出した。
トナー組成液10の条件を変更し、粘度20mPa・s以下、表面張力20乃至75mN/mの領域においてサテライトの発生開始領域が同様であったことから、前記音圧の変位量が、500kPa以下であることが必要となる更に好適には、100kPa以下である。
【0030】
(複数のノズルを有する薄膜)
ノズルを有する薄膜は、先にも述べたように、トナー組成物の溶解乃至分散液を、吐出させて液滴とする部材である。
この薄膜12の材質、ノズル11の形状としては、別途解説する。
【0031】
(液共振方式)
液共振方式のトナーの製造装置1の一例を図22に、液滴噴射ユニット例を図23に示した。
その基本的な構成は機械的縦振動方式とほぼ同一であるが、機械的縦振動方式が振動発生手段によりノズルを有する薄膜を振動させて液滴化しているのに対して、液共振方式ではノズルを有する薄膜の振動によるのではなく、液の共振により液滴化している点が異なる。
したがって、薄膜は振動しない程度に強度を高めている。材質としては、シリコンやシリコン酸化物などが用いられ、シリコン基板、特にSOI(Silicon
on Insulator)基板を用いることがノズルの形成の面でも望ましい。なお、ノズル形状は本発明の要諦であり別途解説する。
【0032】
図23(a)は液滴噴射ユニット2の概略断面説明図であり、図23(b)はより詳細に説明するための組立図であり、図23(c)は図23(a)、(b)に示した液滴噴射ユニットによる液滴形成の説明図である。
この液滴噴射ユニット2は、複数のノズル(吐出口)11が形成された薄膜12と、振動手段13と、薄膜12と振動手段13との間に少なくとも樹脂、着色剤、及び特定のフェノール系樹脂を含有するトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)14を形成する貯留部構成部材14aとを備えている。振動手段と貯留部壁との間には、振動を伝達させないための、振動分離部材26により位置を固定されている構成が望ましいが、振動手段の、振動振幅の小さい節の部分27を介して壁に直接固定する形態でも構わない。液貯留部14には、液供給、及び液循環に用いる配管18を通じてトナー組成液10が供給される。
振動手段13や振動増幅手段22は前述の機械的縦振動手段を用いる膜振動方式の説明において記述したものが同様に使用できる。
液貯留部の隔壁を構成する部材は金属やセラミックス、プラスチックなど一般的な材質のうち、噴霧液に溶解しない、かつ噴霧液の変性を起こさないようなもので構成される。また、液貯留部14は複数の隔壁によって、複数の液貯留領域29に分割される。このように隔壁で分割することにより数十kHz駆動において、液室内の振動圧力分布が均等になるため均等な吐出が可能となり、また共振周波数を高める効果も期待できる。
【0033】
次に、この液滴化手段としての液滴噴射ユニット2による液滴形成のメカニズムについて図23(c)を参照して説明する。
振動手段により振動面13aに発生した振動は貯留部内の液に伝達し、貯留部内の液は液共振現象を起こす。薄膜12に設けられた複数のノズルにおいて、液は均質に加圧された状態において気体側に放出される。この液全体の共振の作用によって、全てのノズルから均等に液が噴出され、更には、トナー組成液10に多く含有される、分散微粒子が前記薄膜の貯留部面に沈着することなく貯留部を浮遊するため、安定的に液を噴射し続けることができる構成となっている。
振動手段13は、例えば積層型PZTや、後述する超音波振動子と超音波ホーンを組み合わせたものなど、高い振幅において機械的超音波振動を液に与えることができるものであればどのようなものでも構わない。
振動手段により発生した振動は貯留部内の液に伝達し、貯留部内の液は液共振現象を起こす。薄膜に設けられた複数のノズルにおいて、液は均質に加圧された状態において気体側に放出される。この液全体の共振の作用によって、全てのノズルから均等に液が噴出され、更には、トナー組成液10に多く含有される、分散微粒子が前記薄膜の貯留部面に沈着することなく貯留部を浮遊するため、安定的に液を噴射しつづけることができる構成となっている。
複数のノズルを設けた薄膜を機械的に振動させる場合はノズル詰りが発生しづらいという利点があるが、薄膜面積が広いと均一振動が得られずに液滴の粒度分布なる場合がある。これに対し、液共振方式は各ノズルにほぼ等しい振動圧力が与えられるため広い薄膜でも狭粒度分布の液滴が得られやすい。
【0034】
(捕集)
捕集に関してはどの噴射方法においても同様の対処となるため、代表として円環状機械的振動手段での解説を行う。
図25は、本発明のトナー捕集に係る膜振動方式のトナーの製造装置を示す概略構成図である。
本実施形態では、吐出部にはシュラウド部50を有し、トナー流の周囲に搬送気流を有して、この搬送気流により、吐出されたトナー群の群速度を増加させるように、また、吐出初速度が高い場合には逆に減少させるようにする。これにより、吐出されたトナーが固化するまでの乾燥工程中に互いに衝突することによる合着を効率よく防止し、得られるトナー群は合一物が極めて少なく、歩留などを含む生産性を向上させることができる。
本実施形態でも液滴噴射ユニット2を装置上部に有し、液滴を噴射させ乾燥させるチャンバー部47と、そのチャンバー部47で得られたトナーをトナー貯留部6に送るための誘導管5とを有して構成されている。
液滴噴射ユニット2は、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を有機溶媒中に分散ないし溶解させたトナー組成液10を液滴化して放出させる液滴化手段11と、この液滴化手段11にトナー組成液10を供給する貯留部41を形成した容器42とを備えている。
【0035】
液滴化手段11は、前記膜振動方式と同様である。
トナーの容器42には貯留部41にトナー組成液10を供給する液供給孔48及び排出孔49がそれぞれ接続されている。液滴化手段11により、ノズル11から液滴31が放出される。
そして、容器42の外側には、ノズル11に対向する部分を開口した開口部50aを有し、ノズル11からのトナー組成液10の放出方向に沿って流れる液滴31を搬送する気体の気流路を形成するシュラウド部50が取り付けられている。シュラウド部50は、ノズル部が開口した2重の釜状の壁50b、50cからなり、互いが蓋部31で結合されている。シュラウド部50の側面には気体の吹き出し用のパイプ91が嵌入されている。2重の壁の内、内側の壁50cは、容器42の下端近傍で終わっている。2重の壁の内、外側の壁50bはノズル11の下部まで回り込んでおり、ノズル11に対向する下部の円状の開口部50aで終わっている。開口部50aの口径は「D」であり、外側の壁50bの底部50dの内壁とノズル11の下端とはクリアランスGを保っている。Dに比してGのサイズが小さいため、Gが搬送気流の流速を決める主な要因である。
【0036】
液滴31を含む流れ31aは、次に、上部にシュラウド部50及び容器42を取り付けた容積の大きいシュラウド部50内に導かれる。チャンバー部47内には、後述するチャンバー部噴出口61により、図4に示す下方向への気流35が形成されている。この気流35は一様な層流である。流れ31aに含まれる液滴31は、チャンバー部47に配置された赤外線放射手段25により暖められ、液滴31中の溶媒が周囲気体へ蒸発し、層流状態で乾燥、固化される。
複数の赤外線放射手段25をチャンバー部47に(例えば上部、中部、及び下部に)配置することで、液滴の乾燥、固化を更に加速させることができる。上部のみに赤外線放射手段25が配置された場合、液滴31が赤外線放射領域を通過した後、赤外線を吸収しなかった比較的に温度が低い周囲気体へ熱が伝わり、液滴31から溶媒が蒸発する速度が下がる。
しかし、複数の赤外線放射手段25をチャンバー部47の上部から下部に配置した場合、液滴が比較的に高い温度に保たれ、また熱が周囲気体へ常に伝わるため周囲気体の温度も徐々に上がり、周囲気体の溶媒濃度が上がっても液滴31からの溶媒の蒸発速度が常に高い。赤外線放射量は液滴中のトナー組成の分布が溶融、化学反応等により変化する温度、または液的中の溶媒が沸騰する温度を以下になるようする。
トナーの現像性、転写性、及びクリーニング性はトナー粒子の形状に依存する。円形度が高い(1に近い)粒子はクリーニングが困難である。液滴の固化から形成されたトナー粒子は円形度が高い傾向にある。しかし、赤外線放射により乾燥、固化された粒子は他の乾燥、固化方法に比較し粒子の円形度が低いことが実験上観察されている。赤外線放射による速い乾燥速度により、液滴の表面に皮が張られ、そして乾燥が進むと皮の中身の体積が減り異形化してしまうということが起きているから円形度が低くなると考えられる。こうした現象を利用することで、トナー粒子の形状制御ができ、優れた形状特性を持つトナーの製造が可能である。
乾燥、個化されたトナーは底部のトナー捕集部4に連結された誘導管5に送られる。誘導管5は図示しないサイクロンにつながり、さらに乾燥されながら捕集され、トナー貯留部5に送給される。シュラウド部50の上部側面には気体吹き出し用のパイプ91が気密的に嵌入されている。チャンバー部47の反対側側面には圧力計PG1が挿入されている。また、シュラウド部50の吹き出しパイプの側面にも圧力計PG2が挿入されている。
【0037】
次に、本実施形態に係るトナーの製造装置1の動作について説明する。
ここでは、トナー組成液10を循環させる場合について説明する。
適当な圧力でトナー組成液10が容器42に収容されているところに、図示しない駆動装置により、振動手段である円環状振動手段17がたとえば100kHzで振動駆動されると、吐出板45に振動が伝播し、トナー組成液10が複数のノズル11から、振動駆動の周波数と一致した放出振動数で液滴31が放出される。放出された初速度v0はシュラウド部50中の気体の粘性による抵抗を受け減速しようとする。
一方、シュラウド部50中には、吹き出しパイプ91により気体が吹き出され、シュラウド部50中を通って搬送気流61を形成し、開口部50aからチャンバー部47に放出される。形成される搬送気流61は円周方向に均一で下向きであり、シュラウド部50の壁50bの下端部が丸味を帯びているため気流はスムースに横向きに方向を変え、ノズル11下で合流し、さらに開口部50aから放出される。この時の気流は乱流であると液滴31同士の合着が起こり易いので、層流であることが好ましい。
放出された液滴31は、搬送気流61に乗って開口部50aからチャンバー部47内へ放出され、そこで層流である気流35に乗り、合着することなくトナー捕集部4まで送られる。
【0038】
この例では、液滴31の初速度v0より搬送気流61の流速v1が大きく、液滴31は加速されてから搬送気流61に乗って送られる場合を示している。v1は自由落下速度より高ければよく、初速度v0より低くてよい。チャンバー内にはv1より速い流速v2の気流35が形成されている。気流35の流速v2は大きいほど、合着を防止する点で好ましい。チャンバー部47中の気流35は、吹き出し用パイプ59より気体を吹き出すことによりシュラウド部50中と同様に周方向に均一な一様の気流が形成される。チャンバー部47内では層流が好ましい。チャンバー部47中に放出された直後の液滴31を含む液滴の流れ31a(流速はv1)が乱流を起こさず、スムースに流下されるために、チャンバー部47内の気流35の流速v2に対し、v2≧v1であることが好ましい。
シュラウド部50内の搬送気流61及びチャンバー部47内の気流35の流速は圧力計PG1及びPG2によって管理される。シュラウド部50内の圧力P1、チャンバー部47内の圧力P2は、P1≧P2の関係があることが好ましい。この関係でないと液滴31に負圧が作用して逆流する可能性がある。
前述したように、シュラウド部50の搬送気流61の流速を決める律速となるのは、D>Gであるため、G、即ち、壁50bとヘッド2aとのクリアランスである。
以上はシュラウド部50の搬送気流61及びチャンバー部47内の気流35とも、チャンバー部47の上部にある吹き出しパイプ59及びチャンバー部噴出口61から気体を吹き出すことにより形成されたが、チャンバー部47の下部に設けた誘導管5から吸引することによって気流を形成してもよい。
【0039】
シュラウド部50の壁50bの開口部50aの断面は、気体の放出方向に沿って口径が大きくなる、即ち、外側の径が大なる方向にテーパー50eが付いていることが好ましい。このように、開口部50aにテーパー50eを形成することによって、液滴31が開口部50aを通過する際に、液滴31が開口部50aの壁面に接触して付着することを回避できる。
本実施形態では、吹き出される気体として、シュラウド部50、チャンバー部47とも窒素ガスを用いたが、気体であればよく、空気あるいはその他の気体であってもよい。また、図25ではシュラウド部50を2重のお釜状の壁で構成したが、内側50cの壁を、流路部材13を構成する外周壁で兼用してもよい。また、1つのチャンバー部47中に複数の液滴噴射ユニット2とシュラウド部50を並設した構成にすることによってさらにトナーの製造効率を上げることができる。
放出された液滴31は粒子形成部3を通過しながら溶媒除去され、固形形態となってトナー貯蔵部5で捕集される。
【0040】
(乾燥)
必要に応じて、さらに流動床乾燥や真空乾燥といった二次乾燥が行われる。有機溶剤がトナー中に残留すると耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく。加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者および周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施する。
【0041】
(ノズル形状)
以上述べてきたように本発明で適用される、液滴吐出手段16は様々なものがある。前記のような液滴吐出手段16ではノズル11および薄膜12においてトナー組成液10の染み出しに対する対処を行わないと、噴射中にトナー組成液10が予期しない状態で染み出し、結果としてノズル全体をトナー組成液10が覆ってしまい、噴射を妨げる事態に陥ることが明らかとなってきた。またトナー組成液10じたいが噴射を妨げなかった場合であっても、やがてトナー組成液10が乾燥し、乾燥物によってノズル11の詰まりや形状の変化、によってやはり噴射低下あるいは噴射の停止を引き起こす。このため、ノズル11には染み出しを防止する措置を適用する必要がある。
ノズル11に發液処理を実施することや、ノズル11の形状を従来実施してきたような吐出面が平板であることより、吐出面に凸加工を施した形状に変更することによってトナー組成液10の染み出しを低減できる。
【0042】
本発明のノズル11の形状は特に制限はない。
図26は、噴射出口側に凸加工が施してあるノズル11の形状の例を示す図である。図26において、aは孔Aの口径、bは凸部Bの径、hは凸部Bの高さである。
本発明のノズル材質は特に制限はなく、適宜選択した材料を用いることができるが、トナー組成液10に有機溶剤を用いることが多いため、金属板であることが望ましい。本発明のような穴の加工にはフォトエッチング法や電鋳法が好適に用いられる。またフォトエッチング法に適した材質としてはシリコン、ステンレス、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、りん青銅、ベリウム銅、ニッケル、パーマロイ等が挙げられ、電鋳法に適した材質としてはニッケルと銅が望ましい。中でも、加工精度やフィルターの強度を確保するためにはシリコン、ステンレスあるいはニッケルが特に望ましい。
本発明のノズル11の実際のサイズは目的とする液滴の大きさによって決定される。
図1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17に記載の薄膜12は厚み5〜500μmの金属板で形成され、かつ、ノズル11の開口径が3〜30μmであることが、ノズル11からトナー組成液10の液滴を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から好ましい。なお、前記ノズル11の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。また、複数のノズル11の個数は、2ないし3000個が好ましい。
【0043】
ノズル11の開口径に対して膜厚が非常に厚い場合はノズル11の断面形状を2段型とすることにより吐出性が向上する。
次に、ノズル11の断面形状を2段型とする方法を図24を用いて説明する。
シリコン基板両面にレジスト111をコートし(11a)、ノズルパターンが形成されたフォトマスクで覆い、紫外線を露光し、レジスト111をノズルパターンとして形成する(11b)。支持層112面側からICP放電を用いた異方性ドライエッチングを行い、第1のノズル孔115を形成し、活性層114面側を同様の異方性ドライエッチングを行なって第2のノズル孔116を形成し(11c)、最後に誘電体層113をフッ酸系エッチング液により取り除き、2段の貫通孔を得る(11d)ことが、深堀りノズル形状を均等に形成する上で最も好ましい。また、図示しないが、シリコン基板としてはSOI基板ではなく、単層のシリコン基板でも同様の方法でノズルを形成することができる。その際には、エッチング時間を調整することにより、第1のノズル孔115の深さ及び第2のノズル孔116の深さを調整することが可能である。
【0044】
(トナー)
次に、本発明に係るトナーについて説明する。
本発明に係るトナーは上述したトナーの製造装置1を用いたトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これにより、粒度分布が単分散なものが得られる。
具体的には、前記トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)としては、1.00〜1.15の範囲内にあるのが好ましい。より好ましくは1.00〜1.05である。また、重量平均粒径としては、1〜20μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは3〜10μmである。
次に、本発明で使用できるトナー材料(トナー組成液10)について説明する。先ず、前述したようにトナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー組成液10について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。また、上記材料を熱溶融混練し得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液を、前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的のトナーを得ることも可能である。
【0045】
(トナー用材料)
前記トナー用材料としては、少なくとも樹脂と着色剤とを含有し、必要に応じて、キャリア、ワックス等のその他の成分を含有する。
(樹脂)
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、などが挙げられる。
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、などが挙げられる。
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0046】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0047】
本発明に係るトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
【0048】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部用いることが好ましく、0.03〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0049】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
【0050】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0051】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。
ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
前記3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0052】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などがあげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0053】
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
本発明に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0054】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であるのが好ましく、40〜75℃であるのがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0055】
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
磁性体として具体的に例示すると、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0056】
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0057】
(着色剤)
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0058】
本発明に係るトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
【0060】
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
前記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0061】
(ワックス)
また、本発明では、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。
ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0062】
前記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0063】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0064】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
【0065】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0066】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0067】
(流動性向上剤)
本発明に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
前記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0068】
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。 このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。
【0069】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
さらには、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケ
素化合物で処理する方法がよい。
【0070】
前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
シランカップリング剤等の有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0071】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m/g以上が好ましく、60〜400m/gがより好ましい。
表面処理された微粉体としては、20m/g以上が好ましく、40〜300m/gがより好ましい。
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
【0072】
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。 これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0073】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。
使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0074】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
本発明に係るトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【実施例】
【0075】
次に、この実施形態における具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(着色剤分散液の調製)
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(Regal400;Cabot社製)17質量部、顔料分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
(ワックス分散液の調整)
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18質量部、ワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3μm以下となるようワックス粒子を析出させた。ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、更にダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が1μm以下になるよう調整した。
【0076】
(トナー組成分散液の調製)
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成分散液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、ワックス分散液30質量部を、酢酸エチル840質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。
(トナーの作製)
得られたトナー組成液500mlを、前述したトナーの製造装置1の液滴化手段16のノズル11に供給した。使用した薄膜16(ノズルプレート)は、下記のノズルのヘッド仕様に示される、外径15.0mm、50μm厚のニッケル板に、真円形状の直径10μmの吐出孔(ノズル)11を、電鋳法による加工で作製した。吐出孔は各吐出孔間の距離が100μmピッチとなるように千鳥格子状に、薄膜12中心の約5mmφの範囲にのみ設けた。この場合の計算上の有効吐出孔数は1000個となる。
分散液調製後、以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、該液滴を乾燥固化することにより、トナー母体粒子を作製した。
【0077】
(トナー作製条件)
分散液比重:ρ=1.1888g/cm
乾燥空気流量:装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度:27〜28℃
ノズル振動周波数:98kHz
ノズル印加電圧サイン波ピーク値:10.5V
(吐出ヘッド仕様)
薄膜(ノズルプレート)厚:50μm
ノズル径:10μm
ノズル形状:タコ口形状(図26)に従う(凸部高さ:10μm、凸部径b:20μm)
なお、「ノズル振動数」とは、「薄膜16の振動数」の意味である。この条件で、トナー組成液10はノズル目詰まりを生じる(閉塞する)ことなく、安定的に吐出された。乾燥固化工程を終えたトナー粒子は、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子の粒度捕集した粒子の粒度分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000)で下記に示す測定条件において測定したところ、重量平均粒径(D4)は5.3μm、個数平均粒径(Dn)が4.8μmであり、D4/Dnが1.10のトナー母体粒子が得られた。
以上の結果より実施例1は、優れた形状特性を持つトナーの乾燥エネルギーの無駄が少ないトナー製造法を実施できると判断した。
【0078】
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定することができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3cmの水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10ml中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5mg加え、超音波分散器STM社製UH−50で20kHz,50W/10cmの条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000〜8000個/10−3cm(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、表1に示す通り、0.06〜400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
【0079】
(実施例2〜9)
表1に示したノズル仕様と用いて、実施例1と同様に評価した実施例2〜16の結果を表2に示す。なお、使用したトナー液や周辺機器は全く同じものを使用している。
以上の結果より、本発明の乾燥、固化方法を用いることによって、高品質のトナーを効率良く生産できることが示された。

<実施例・比較例の評価結果>
【表1】



【0080】
(評価項目の説明)
赤外線放射機設定:赤外線ヒーターに付いているダイヤルの設定。各ヒーターを低、中、高に設定することで、放射量を三段階に振ることができる。
赤外線放射機個数:チャンバー部に赤外線ヒーターを上部、中部、下部に2個ずつ(左右)設置した。ここでいう個数は各部左右の2個のヒーターを1個の放射機として数え、オフ状態にしてあるものを数えていない。実験の簡単のために、ダイヤルの設定は各実験で同じくなるようにした。
トナー乾燥度:捕集したトナーを肉眼で見て、乾燥していそうなものを○、明らかに乾燥していないものを×の二段評価をし、○と評価したもののみの粒度分布を評価する。
粒度分布:捕集されたトナーの平均粒度分布。
粒子平均円形度:捕集されたトナーの粒子円形度の平均値で、0.92以下の値を○、0.95以下0.93以上の値を△、0.95を超える値を×と三段階評価を実施した。

(評価基準)
【表2】



【符号の説明】
【0081】
1 トナーの製造装置
2 液滴噴射ユニット
3 粒子形成部(溶媒除去部)
4 トナー捕集部
5 誘導管
6 トナー貯留部
7 原料収容部
8 配管
8a 送液管
8b 排液管
9 ポンプ
10 トナー組成液
11 ノズル
12 薄膜
13 振動手段
13a振動面
14 貯留部
14a 貯留部構成部材
15 流路部材
16 液滴化手段
17 振動発生手段(電気機械変換手段)
18 液供給チューブ
19 気泡排出チューブ
20 支持部材
21 振動発生手段
21a 圧電体
22 振動増幅手段
22a ホーン
23 駆動回路(駆動信号発生源)
24 通信手段
25 赤外線放射手段
26 振動分離部材
27 振動手段の、振動振幅の小さい節の部分
29 液貯留領域
31 液滴
31a 液滴の流れ
35 気流
36 気流路形成部材
37 気流路
41 貯留部
42 液室(容器)
43 供給路
45 吐出板
47 チャンバー部
48 液供給孔
49 排出孔
50 シュラウド部
50a 開口部
50b 壁
50c 壁
50d 底部
50e テーパー
51 蓋部
52 バルブ
53 クリーニング手段
54 アーム制御装置
55 振動子
56 配管
57 脱気孔
58 超音波液室
59 噴出し用パイプ
61 噴出口
62 搬送気流
35、63 気流
PG1 圧力計
PG2 圧力計
111 レジスト
112 支持層
113 誘電体層
114 活性層
115 第1のノズル孔
116 第2のノズル孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開平7−152202号公報
【特許文献2】特開2003−262976号公報
【特許文献3】特開2003−280236号公報
【特許文献4】特開2003−262977号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を用いて、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、複数の吐出孔から周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、
放出されたトナー組成液の液滴を、固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを行うトナーの製造方法において、
前記粒子化工程は、放出されたトナー組成液の液滴を、赤外線放射による加熱手段で固化させてトナー粒子を形成する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーの製造方法において、
前記トナー組成液の液滴の加熱が、該液滴中のトナー組成とトナー組成の分布とが変化しない温度以下にある
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトナーの製造方法において、
前記トナー組成液の液滴の加熱が、該液滴中の溶媒が沸騰しない温度以下にある
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のトナー製造方法において、
前記周期的液滴化工程は、振動噴射法を採用する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のトナー製造方法において、
前記周期的液滴化工程は、液共振法を採用する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載のトナー製造方法において、
前記周期的液滴化工程で機械的縦振動手段を利用する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載のトナー製造方法において、
前記周期的液滴化工程で円環状機械的振動手段を利用する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項8】
振動を用いて、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、複数の吐出孔から周期的に液滴化して放出させて、
前記放出されたトナー組成液の液滴を固化させてトナー粒子を形成するトナーの製造装置において、
前記トナーの製造装置は、前記放出されたトナー組成液の液滴を、赤外線放射による加熱手段で固化させてトナー粒子を形成する
ことを特徴とするトナーの製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載のトナー製造装置において、
前記トナー製造装置は、振動噴射法を採用して、トナー組成液を複数の吐出孔から周期的に液滴化する
ことを特徴とするトナーの製造装置。
【請求項10】
請求項8のトナーの製造装置において、
前記トナー製造装置は、液共振法を採用して、トナー組成液を複数の吐出孔から周期的に液滴化する
ことを特徴とするトナーの製造装置。
【請求項11】
請求項9に記載のトナーの製造装置において、
前記トナー製造装置は、前記振動噴射法で、機械的縦振動手段を利用する
ことを特徴とするトナーの製造装置。
【請求項12】
請求項9のトナーの製造装置において、
前記トナー製造装置は、前記振動噴射法で、円環状機械的振動手段を利用する
ことを特徴とするトナーの製造装置。
【請求項13】
少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナーにおいて、
前記トナーは、請求項1ないし7のいずれかに記載のトナー製造方法によって、または、請求項8ないし12のいずれかに記載のトナーの製造装置によって製造される
ことを特徴とするトナー。
【請求項14】
請求項13に記載のトナーにおいて、
前記トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)が、1.00以上1.15以下である
ことを特徴とするトナー。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のトナーにおいて、
前記トナーの重量平均粒径が、1[μm]以上20[μm]以下である
ことを特徴とするトナー。
【請求項16】
請求項13ないし15のいずれかに記載のトナーにおいて、
前記トナーの円形度が0.95以下である
ことを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−58438(P2012−58438A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200688(P2010−200688)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】