説明

トナーの製造方法およびトナー

【課題】 地球環境保全を考慮しつつ、低温定着性に優れ、定着可能温度幅が広く、さらに耐久性に優れたトナーの製造方法およびトナーを提供する。
【解決手段】
トナーの製造方法は、ジカルボン酸とジオールとの反応によって、ポリエステル樹脂を作製する工程と、前記ポリエステル樹脂と着色剤とを有するトナー母粒子を作製する工程とを含み、前記ジカルボン酸は、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマールから選ばれる1種または2種以上のモノカルボン酸の末端に、カルボキシル基を導入したバイオマスモノマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの製造方法およびトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
潜像を顕像化するトナーは、種々の画像形成プロセスに用いられており、たとえば電子写真方式の画像形成プロセスに用いられる。
【0003】
電子写真方式の画像形成プロセスを利用する画像形成装置においては、一般に、潜像担持体である感光体ドラム表面の感光層を均一に帯電させる帯電工程、帯電状態にある感光体ドラム表面に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラム表面の静電潜像に電子写真用トナーを供給して顕像化する現像工程、感光体ドラム表面のトナー像を紙やOHPシートなどのメディアに転写する転写工程、トナー像を加熱、加圧などによりメディア上に定着させる定着工程、およびトナー像転写後の感光体ドラム表面に残留するトナーなどをクリーニングブレードにより除去して清浄化するクリーニング工程を実行してメディア上に所望の画像を形成する。メディアへのトナー像の転写は、中間転写媒体を介して行われることもある。
【0004】
このような画像形成装置に使用される現像剤としては、トナーのみを主成分とする一成分現像剤と、トナーとキャリアとを混合して使用する二成分現像剤とがある。
【0005】
また、これらの現像剤に用いられるトナーは、たとえば混練粉砕法、懸濁重合法および乳化重合凝集法などに代表される重合法などによって製造される。このうち混練粉砕法では、結着樹脂および着色剤を主成分とし、必要に応じて離型剤、帯電制御剤などを添加して混合したトナー原料を溶融混練し、冷却して固化させた後、粉砕分級することでトナーを製造する。
【0006】
近年、地球環境保全の観点から、様々な技術分野において多くの取り組みがなされている。現在、多くの製品の材料が石油から製造されているが、これらの材料の製造時や焼却時には、エネルギーが必要であり、また、二酸化炭素が発生する。このようなエネルギーや二酸化炭素などを削減する取り組みは、地球温暖化対策として非常に重要である。
【0007】
地球温暖化対策としての省エネルギー化は、様々な角度から検討されており、電子写真の分野においては、紙やOHPシートなどのメディア上に転写されたトナーの定着温度を下げることによる定着エネルギーの低減が有効である。一方、コピー機やファクシミリ機のさらなる高速化も望まれており、トナーの低融点化は必要不可欠である。
【0008】
紙やOHPシートなどのメディア上に転写されたトナー像を定着する方法としては、ヒートロールなどによってトナー像を加熱溶融し、加圧して定着させる接触加熱型定着方式がよく用いられている。この方式におけるトナーの定着性は、定着下限温度から高温オフセット開始温度までの定着可能温度幅によって評価することができる。前述のトナーの低融点化により、定着下限温度を下げることが可能となり、これにより低温定着化が達成できる。
【0009】
トナー用結着樹脂としては、架橋構造をもつ樹脂や、高分子成分と低分子成分とを含む樹脂などが用いられている。このような結着樹脂において、耐高温オフセット性を向上させるために架橋成分や高分子成分の含有量を多くすると、樹脂の溶融粘度が大きくなりすぎてトナーの低温定着性が不充分になるおそれがある。一方、低温定着性を向上させるために低分子成分の含有量を多くすると、樹脂の溶融粘度は小さくなるものの、トナーの弾性が低下し、その結果耐高温オフセット性が低下するおそれがある。したがって、トナーの低融点化と高温における耐オフセット性とを両立させるためには、トナー用結着樹脂の設計が特に重要である。
【0010】
また、地球温暖化対策としての二酸化炭素削減の新たな取り組みとして、バイオマスとよばれる植物由来の資源の利用が大いに注目されている。バイオマスを燃焼させる際に発生する二酸化炭素は、もともと植物が光合成により取り込んだ大気中の二酸化炭素であるため、大気中の二酸化炭素の収支はゼロである。このように、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない性質はカーボンニュートラルと呼ばれており、カーボンニュートラルであるバイオマスの利用は、大気中の二酸化炭素量を増加させないと考えられている。このようなバイオマスから製造されるバイオマス材料は、バイオマスポリマー、バイオマスプラスチック、非石油系高分子材料などの名称でよばれており、このようなバイオマス材料は、バイオマスモノマーとよばれるモノマーを原料とする。
【0011】
電子写真の分野においても、環境安全性に優れ、二酸化炭素の増加の抑制に有効な資源であるバイオマスを利用する取り組みがなされている。
【0012】
たとえば、特許文献1には、松類から得られるロジンと不飽和カルボン酸とを反応させた反応混合物を含有するカルボン酸成分と、アルコール成分とを縮重合させて得られるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−98534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示の方法で製造されるポリエステル樹脂を含むトナーは、保存安定性に優れているものの、カルボン酸成分に含まれる2つのカルボキシル基の反応性の違いから、ポリエステル樹脂の重合度を大きくすることが難しいため、十分な耐高温オフセット性および耐久性が得られないという問題がある。
【0015】
本発明の目的は、地球環境保全を考慮しつつ、低温定着性および耐高温オフセット性に優れ、定着可能温度幅が広く、さらに耐久性に優れたトナーの製造方法およびトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ジカルボン酸とジオールとの反応によって、ポリエステル樹脂を作製する工程と、
前記ポリエステル樹脂と着色剤とを有するトナー母粒子を作製する工程とを含むトナーの製造方法であって、
前記ジカルボン酸は、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマールから選ばれる1種または2種以上のモノカルボン酸の末端に、カルボキシル基を導入したバイオマスモノマーであることを特徴とするトナーの製造方法である。
【0017】
また本発明は、前記バイオマスモノマーは、オゾンガスを用いて前記モノカルボン酸の末端アルケンを酸化して生成する、アルデヒド化合物を経由して得られることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記バイオマスモノマーは、前記アルデヒド化合物のアルデヒド基を、亜塩素酸ナトリウムを用いて酸化することで前記カルボキシル基を導入して得られることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、3000以上30000以下であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記ポリエステル樹脂の軟化温度が、110℃以上140℃以下であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、ジカルボン酸とジオールとの反応によって得られたポリエステル樹脂と、着色剤とを有するトナー母粒子を含み、
前記ジカルボン酸は、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマールから選ばれる1種または2種以上のモノカルボン酸の末端に、カルボキシル基を導入したバイオマスモノマーであることを特徴とするトナーである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ジカルボン酸とジオールとの反応によって、ポリエステル樹脂を作製する工程と、前記ポリエステル樹脂と着色剤とを有するトナー母粒子を作製する工程とを含むトナーの製造方法において、前記ジカルボン酸は、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマール酸から選ばれる1種または2種以上のモノカルボン酸の末端に、カルボキシル基を導入したバイオマスモノマーであるので、植物由来の化合物を原料とすることで、バイオマスの利用を促進することができ、地球環境保全を考慮したトナーの製造方法となる。また、前記バイオマスモノマーは、両端にカルボキシル基を有するので、ジオールとの反応性が高く、ポリエステル樹脂を高分子化でき、その結果、トナーの耐久性および耐高温オフセット性を向上させ、定着域の広いトナーを得ることができる。
【0023】
また本発明によれば、前記バイオマスモノマーは、オゾンガスを用いて前記モノカルボン酸の末端アルケンを酸化して生成する、アルデヒド化合物を経由して得られるので、反応性が極めて高い末端アルケンがオゾンで容易に酸化されてアルデヒドとなり、その他の二重結合部分が酸化されることがなく、目的のジカルボン酸を効率良く得ることができる。その結果、ポリエステル樹脂を効率良く高分子化でき、耐久性および定着性にすぐれたトナーを効率良く得ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記バイオマスモノマーは、前記アルデヒド化合物のアルデヒド基を、亜塩素酸ナトリウムを用いて酸化することで前記カルボキシル基を導入して得られるので、導入されたカルボキシル基の反応性と、もう一方のカルボキシル基の反応性とを同等にすることができる。その結果、ジオールとの反応性が向上し、ポリエステル樹脂の高分子化が容易となり、トナーの耐久性および定着性を向上させることができる。
【0025】
また本発明によれば、前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、3000以上30000以下であるので、非オフセット領域の広いトナーを得ることができる。
【0026】
また本発明によれば、前記ポリエステル樹脂の軟化温度が、110℃以上140℃以下であるので、保存安定性と低温定着性とを両立させたトナーを得ることができる。
【0027】
また本発明によれば、ジカルボン酸とジオールとの反応によって得られたポリエステル樹脂と、着色剤とを有するトナー母粒子を含み、前記ジカルボン酸は、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマールから選ばれる1種または2種以上のモノカルボン酸の末端に、カルボキシル基を導入したバイオマスモノマーであるので、耐久性および定着性にすぐれ、定着域の広いトナーとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のトナーの製造方法の手順の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1、トナーの製造方法
図1は、本発明のトナーの製造方法の手順の一例を示す工程図である。本発明のトナーの製造方法は、ポリエステル樹脂作製工程S1と、トナー母粒子作製工程S2と、外添工程S3とを含む。
【0030】
(1)ポリエステル樹脂作製工程S1
ポリエステル樹脂作製工程S1では、トナー母粒子の原料となるポリエステル樹脂を作製する。
【0031】
ポリエステル樹脂は、透明性に優れ、トナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与できるので、カラートナー用の原料として好適である。ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる。
【0032】
本発明においては、多塩基酸としてジカルボン酸を用い、ジカルボン酸としては、植物由来のモノカルボン酸から得たジカルボン酸を用いる。植物由来の化合物を原料とすることで、バイオマスの利用を促進することができる。
【0033】
植物由来のモノカルボン酸としては、たとえば松脂の成分であるロジン由来のアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸、などが挙げられる。これらのモノカルボン酸のうち、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマール酸を用いることが好ましい。
【0034】
これらのモノカルボン酸からジカルボン酸を得る方法としては、たとえば、オゾンや四酸化オスミウムを用いてモノカルボン酸の末端アルケンを酸化してアルデヒド化合物を生成した後、亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、またはジョーンズ試薬を用いてアルデヒド基を酸化する方法がある。このようにして得られたジカルボン酸をバイオマスモノマーとして使用し、ポリエステルを作成する。
【0035】
多価アルコールとしては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0036】
ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応は、常法に従えば、たとえば、有機溶媒および重縮合触媒の存在下で、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化温度などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。場合によっては、有機溶媒は用いなくてよい。
【0037】
ポリエステル樹脂は、ポリエステルの主鎖および/または側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させることによって、水中で自己分散性を発揮する自己分散性ポリエステルにして使用することができる。またポリエステル樹脂とアクリル樹脂とをグラフト化した樹脂も使用することができる。
【0038】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、3000以上30000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が3000未満であると、樹脂に弾性がないため、高温オフセットが発生しやすく、30000を超えると樹脂の弾性が大きくなりすぎるため、定着強度が低下する。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、3000以上30000以下であることで、非オフセット領域の広いトナーを得ることができる。
【0039】
ポリエステル樹脂の軟化温度は、100℃以上150℃以下であることが好ましく、110℃以上140℃以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の軟化温度が110℃未満であると、トナーの保存安定性が低下し、140℃を超えると、低温オフセットが発生しやすくなる。軟化温度が100℃以上150℃以下の範囲であると、トナーの保存安定性および定着性の両立が可能となる。
【0040】
上述のようなバイオマスモノマーを使用するポリエステル樹脂作製工程S1は、ジカルボン酸作製工程S1aと、重縮合工程S1bとを含む。
【0041】
(1−1) ジカルボン酸作製工程S1a
ジカルボン酸作製工程S1aでは、植物由来のモノカルボン酸に新たにカルボキシル基を導入し、ジカルボン酸を作成する。
【0042】
モノカルボン酸の末端アルケンは、オゾンや四酸化オスミウムなどの酸化剤により酸化され、アルデヒド基に変換される。アルデヒド基は、亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、またはジョーンズ試薬などの酸化剤により、カルボン酸に変換される。
【0043】
植物由来のモノカルボン酸としては、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマール酸を用いることが好ましい。これらのモノカルボン酸は末端にアルケンを有するので、反応性の高い末端アルケンが容易に酸化され、モノカルボン酸中の他の二重結合は酸化されない。よって、新たなカルボキシル基はモノカルボン酸の末端に導入され、得られたジカルボン酸に含まれる2つのカルボキシル基の反応性がほぼ同等となり、多価アルコールとの反応性が高い、ジカルボン酸が得られる。これらのモノカルボン酸は1種を単独で使用でき、または2種以上を使用してもよい。モノカルボン酸を2種以上使用する場合は、2種以上のモノカルボン酸を予め混合しておき、同時に酸化することでジカルボン酸が得られる。
【0044】
(1−2) 重縮合工程S1b
重縮合工程S1bでは、ジカルボン酸作製工程S1aで作成したジカルボン酸と多価アルコールとを重縮合し、ポリエステル樹脂を得る。ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応は、エステル化触媒の存在下で行うことが好ましい。ジカルボン酸と多価アルコールとを、エステル化触媒存在下で反応させた後、反応物を昇温、減圧することにより、ポリエステル樹脂の軟化温度が所望の値となるよう調整する。エステル化触媒としては、たとえば、チタン化合物およびSn-C結合を含まない錫(II)化合物が挙げられ、チタン化合物としては、Ti-O結合を含むチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基またはアシルオキシ基を含むチタン化合物がより好ましい。これらの化合物は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0045】
(2)トナー母粒子作製工程S2
トナー母粒子作製工程S2では、ポリエステル樹脂作製工程S1で作製したポリエステル樹脂、および着色剤を含むトナー母粒子を作製する。トナー母粒子の作製方法は特に限定されることなく、公知の方法によって行うことができる。トナー母粒子の作製方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法が挙げられる。以下、粉砕法によってトナー母粒子を作製する方法を説明する。
【0046】
(粉砕法によるトナー母粒子作製)
粉砕法によるトナー母粒子の作製では、ポリエステル樹脂、着色剤およびその他の添加剤を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕する。その後必要に応じて分級などの粒度調整を行い、トナー母粒子を得る。
【0047】
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0048】
混練機としても公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。
【0049】
粉砕機としては、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、および高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。
【0050】
分級には、遠心力および風力による分級により過粉砕トナー母粒子を除去できる公知の分級機を使用でき、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用できる。
【0051】
トナー母粒子に含まれる着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
【0052】
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
【0053】
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などが挙げられる。
【0054】
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0055】
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0056】
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
【0057】
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
【0058】
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0059】
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0060】
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。
【0061】
トナー母粒子中の着色剤濃度は、黒色の着色剤の場合、5重量%以上12重量%以下が好ましく、6重量%以上8重量%以下がより好ましい。黒色以外の着色剤の場合は、3重量%以上8重量%以下が好ましく、4重量%以上6重量%以下がより好ましい。
【0062】
着色剤は、ポリエステル樹脂中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。また2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、たとえば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0063】
トナー母粒子には、ポリエステル樹脂および着色剤の他に磁性粉、離形剤、電荷制御剤などが含まれてもよい。
【0064】
磁性粉としては、たとえば、マグネタイト、γ−ヘマタイト、および各種フェライトなどが挙げられる。
【0065】
離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコン系重合体、高級脂肪酸が挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。ワックスの使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できる。離形剤の添加量は、トナー母粒子100重量部に対して1〜10重量部とすることが好ましい。
【0066】
電荷制御剤としては、この分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の電荷制御剤を使用できる。
【0067】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
【0068】
負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸ならびにその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸が挙げられる。電荷制御剤は1種を単独で使用でき、または必要に応じて2種以上を併用できる。電荷制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、トナー母粒子100重量部に対して0.01重量部〜5重量部である。
【0069】
トナー母粒子作製工程S2において得られるトナー母粒子は、体積平均粒径が4μm以上8μm以下であることが好ましい。体積平均粒径が4μm以上8μm以下であると、長期にわたり高精細な画像を安定して形成できる。またトナー母粒子をこの範囲内に小粒径化することによって、付着量が少なくても高い画像濃度が得られ、トナー消費量を削減できる効果も生じる。トナー母粒子の体積平均粒径が4μm未満であると、トナー母粒子の粒径が小さいため、高帯電化および低流動化するおそれがある。トナーが高帯電化、低流動化すると、感光体にトナーを安定して供給できなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。トナー母粒子の体積平均粒径が8μmを超えると、トナー母粒子の粒径が大きいため形成画像の層厚が大きくなり、粒状性の著しい画像となり、高精細な画像を得られない。またトナー母粒子の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
【0070】
(3)外添工程S3
外添工程S3では、トナー母粒子作製工程S2で作製したトナー母粒子に、外添剤を添加する。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタンなどが挙げられる。またこれらは、シリコン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー母粒子100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。
【0071】
2、トナー
本発明の実施形態であるトナーは、上記の実施形態であるトナーの製造方法で製造される。上記のトナーの製造方法によって得られるトナーは、高分子化されたポリエステル樹脂を含むので、耐久性および定着性に優れる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、特に本実施例に限定されるものではない。
【0073】
実施例および比較例における、ポリエステル樹脂の重量平均分子量および軟化温度、ならびにトナーの体積平均粒径および変動係数は、以下のようにして測定した。
【0074】
[ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)]
試料を0.25重量%となるようテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、この試料溶液200μLをGPC装置(商品名:HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)で分析し、温度40℃における分子量分布曲線を求めた。得られた分子量分布曲線から、重量平均分子量Mwを求めた。分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
【0075】
[ポリエステル樹脂の軟化温度(Tm)]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−500C、株式会社島津製作所製)を用い試料1gを昇温速度毎分6℃で加熱し、荷重10kgf/cm(0.980665MPa)を与えてダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
【0076】
[トナーの体積平均粒径および変動係数(CV)]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学株式会社製)1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)を用い周波数20kHzで3分間分散処理し、測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:20μm、測定粒子数:50000カウントの条件下で測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径および体積粒度分布における標準偏差を求めた。変動係数(CV値、%)は、下記式に基づいて算出した。
CV値(%)=(体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒子径)×100
【0077】
(実施例1)
〔ポリエステル樹脂作製工程S1〕
<ジカルボン酸作製工程S1a>
ピマール酸300gにメタノール1Lおよびトルエン200mLを添加し、この溶液を−10℃において撹拌しながら、オゾン発生器(FAS、株式会社ロキテクノ社製)からオゾンガスを流量1L/分で3時間バブリングした。その後、−10℃において窒素ガスを流量2L/分で20分間バブリングした後、−20℃において粉末亜鉛(キシダ化学株式会社製)100gを溶液に添加し、−20℃において酢酸(キシダ化学株式会社製)200mLを10mL/分で溶液に滴下した。さらに、0℃において飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1Lを100mL/分で溶液に滴下した。その後、酢酸エチル抽出を行い、抽出物を塩析および濃縮して、アルデヒド化合物257gを得た。
【0078】
得られたアルデヒド化合物257gに、t−ブタノール1L、リン酸水素ナトリウム(キシダ化学株式会社製)50g、および2−メチルー2−ブタン(キシダ化学株式会社製)50gを添加した。0℃において、この溶液に40%亜塩素酸ナトリウム水溶液(キシダ化学株式会社製)100mLを添加し、25℃にて、1時間撹拌した。続いて0℃において、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1Lを100mL/分で溶液に滴下し、その後、酢酸エチル抽出を行い、抽出物を塩析および濃縮して、ジカルボン酸250gを得た。
【0079】
<重縮合工程S1b>
上記の工程を複数回行って作成したジカルボン酸4kgを170℃で溶融し、多価アルコールとして、1,3−プロパンジオール0.57kgおよびビスフェノールA1.65kgを添加し、エステル化触媒としてチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートを添加し、10リットル容の四つ口フラスコ中で窒素雰囲気下において、165℃で2時間反応させた。この際、四つ口フラスコには、還流冷却管(25℃の水を通水)を上部に備えた分留管(98℃の温水を通水)、窒素導入管、脱水管、攪拌器および水銀温度計を装備した。続いて反応物を4時間かけて200℃まで昇温し、その後50kPaに減圧して、所望の軟化温度に達するまで反応を行い、ポリエステル樹脂a(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。
【0080】
〔トナー母粒子作製工程S2〕
ポリエステル樹脂a(Mw:20000、Tm:120℃) 85重量部
着色剤(非晶性ポリエステル樹脂中に40重量%で予備混練分散させた銅フタロシアニン顔料混練物、顔料濃度4%) 10重量部
離型剤(ポリエチレンワックス、商品名:PW−600、ベーカーペトロライト社製、融点87℃) 3重量部
帯電制御剤(商品名:Copy Charge N4P VP 2481、クラリアントジャパン株式会社製) 2重量部
【0081】
上記の原料をヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)により10分間前混合し、原材料混合物(THF不溶分15.8%)を得た。この混合物を二軸押出機(商品名:PCM−37、株式会社池貝製)により溶融混練し(設定温度140℃、供給量5Kg/H)、溶融混練物(THF不溶分21.8%)を得た。
【0082】
この溶融混練物を室温まで冷却して固化した後、カッターミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕し、粗粉砕物をカウンタージェットミル(商品名:AFG、ホソカワミクロン株式会社製)により微粉砕した後、さらにロータリー式分級機(商品名:TSPセパレータ、ホソカワミクロン株式会社製)で分級し、トナー母粒子を得た。
【0083】
〔外添工程S3〕
得られたトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ微粉子A(シランカップリング剤およびジメチルシリコンオイル表面処理、BET比表面積140m2/g)1.2重量部、疎水性シリカ微粉子B(シランカップリング剤表面処理、BET比表面積30m2/g)0.8重量部、および酸化チタン(BET比表面積130m2/g)0.5重量部を添加し、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合し、実施例1のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:25%)を得た。
【0084】
(実施例2)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸の代わりにイソピマール酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂b(Mw:20500、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のトナー(体積平均粒径:6.9μm、CV:26%)を得た。
【0085】
(実施例3)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸の代わりにサンダラコピマール酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂c(Mw:19500、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:26%)を得た。
【0086】
(実施例4)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸の代わりに、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマール酸の混合物(混合モル比=1:1:1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂d(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:25%)を得た。
【0087】
(実施例5)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を0.71kgとし、ビスフェノールAの添加量を1.07kgとしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂e(Mw:3000、Tm:115℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のトナー(体積平均粒径:7.1μm、CV:25%)を得た。
【0088】
(実施例6)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を0.77kgとし、ビスフェノールAの添加量を0.83kgとしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂f(Mw:2500、Tm:113℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:24%)を得た。
【0089】
(実施例7)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を0.27kgとし、ビスフェノールAの添加量を2.98kgとしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂g(Mw:30000、Tm:125℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7のトナー(体積平均粒径:6.9μm、CV:24%)を得た。
【0090】
(実施例8)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を0.20kgとし、ビスフェノールAの添加量を3.30kgとしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂h(Mw:30500、Tm:128℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂hを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8のトナー(体積平均粒径:6.9μm、CV:26%)を得た。
【0091】
(実施例9)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を0.86kgとし、ビスフェノールAの添加量を0.42kgとしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂i(Mw:11000、Tm:110℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂iを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例9のトナー(体積平均粒径:7.1μm、CV:25%)を得た。
【0092】
(実施例10)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を1.00kgとし、ビスフェノールAを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂j(Mw:9000、Tm:107℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂jを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例10のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:25%)を得た。
【0093】
(実施例11)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を0.08kgとし、ビスフェノールAの添加量を3.78kgとしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂k(Mw:24000、Tm:140℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂kを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例11のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:24%)を得た。
【0094】
(実施例12)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールの添加量を0.04kgとし、ビスフェノールAの添加量を3.94kgとしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂l(Mw:25500、Tm:143℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂lを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例12のトナー(体積平均粒径:6.8μm、CV:26%)を得た。
【0095】
(実施例13)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、1,3−プロパンジオールおよびビスフェノールAの代わりに1,4−ブタンジオールを0.68kgを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂m(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂mを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例13のトナー(体積平均粒径:7.1μm、CV:26%)を得た。
【0096】
(実施例14)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸の代わりにピマール酸およびイソピマール酸の混合物(混合モル比=1:1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂n(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂nを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例14のトナー(体積平均粒径:6.9μm、CV:25%)を得た。
【0097】
(実施例15)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸の代わりにピマール酸およびサンダラコピマール酸の混合物(混合モル比=1:1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂o(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂oを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例15のトナー(体積平均粒径:6.9μm、CV:25%)を得た。
【0098】
(実施例16)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸の代わりにイソピマール酸およびサンダラコピマール酸の混合物(混合モル比=1:1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂p(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂pを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例16のトナー(体積平均粒径:7.2μm、CV:24%)を得た。
【0099】
(実施例17)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸からアルデヒド化合物を生成する反応を以下のように行った。
【0100】
過ヨウ素酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)450gに、四酸化オスミウム(キシダ化学株式会社製)5gを含む1,4−ジオキサン200mL液を添加し、さらに、1,4−ジオキサン0.8Lおよび水200mLを添加した。この溶液を−10℃において撹拌しながら、2,6−ルチジン100mLを添加し、次いでピマール酸300gを添加し、その後40℃において12時間撹拌した。さらに、0℃において飽和塩化アンモニウム水溶液1Lを100mL/分で溶液に滴下し、その後、酢酸エチル抽出を行い、抽出物を塩析および濃縮して、アルデヒド化合物217gを得た。
【0101】
このようにして得られたアルデヒド化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてジカルボン酸を得て、さらにこのジカルボン酸を用いてポリエステル樹脂q(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂qを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例17のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:25%)を得た。
【0102】
(実施例18)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸から生成したアルデヒド化合物からジカルボン酸を得る反応を以下のように行った。
【0103】
アルデヒド化合物210gに、アセトン1.5Lを添加し、0℃において、この溶液にクロム酸(VI)の濃硫酸溶液(ジョーンズ試薬)100mLを添加し、1時間撹拌した。続いて0℃において、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1.5Lを100mL/分で溶液に滴下し、その後、酢酸エチル抽出を行い、抽出物を塩析および濃縮して、ジカルボン酸211gを得た。
【0104】
このようにして得られたジカルボン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂r(Mw:20000、Tm:120℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂rを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例18のトナー(体積平均粒径:6.8μm、CV:27%)を得た。
【0105】
(実施例19)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ジカルボン酸、1,3−プロパンジオール、およびビスフェノールAの重合反応の時間を40分としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂s(Mw:3000、Tm:105℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂sを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例19のトナー(体積平均粒径:6.9μm、CV:25%)を得た。
【0106】
(比較例1)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ジカルボン酸を作製せず、ジカルボン酸の代わりにピマール酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂t(Mw:3000、Tm:112℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂tを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:25%)を得た。
【0107】
(比較例2)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、特許文献1に記載された実施例1に記載の方法(段落[0068]、[0069]参照)に準じて、ポリエステル樹脂u(Mw:3500、Tm:115℃)を作製した。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂uを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:25%)を得た。
【0108】
(比較例3)
ポリエステル樹脂作製工程S1において、ピマール酸の代わりにアビエチン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂v(Mw:4500、Tm:113℃)を得た。トナー母粒子作製工程S2において、ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂vを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例3のトナー(体積平均粒径:7.0μm、CV:25%)を得た。
【0109】
得られた実施例1〜19および比較例1〜3のトナーについて、以下のようにして評価を行った。
【0110】
[保存安定性]
トナー100gをポリ容器に密閉し、50℃で48時間放置した後容器から取出し、200メッシュを備えた振動式ふるい機にて60Hzで1分間振動させた。メッシュ上に残存するトナー重量を測定し、トナー全重量に対する割合(%)を残存量として求め、下記の基準で保存安定性を評価した。
○(良好):トナーの残存量が1%未満
△(実用上問題なし):トナーの残存量が1%以上3%未満
×(不良):トナーの残存量が3%以上
【0111】
[定着性]
各トナーと、体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリアとを、キャリアに対する各トナーの被覆率が60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)で20分間混合することにより、各トナーを含む二成分現像剤を作製した。
【0112】
得られた二成分現像剤を、カラー複合機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製)を改造したものにそれぞれ充填し、未定着画像を作製した。サンプル画像は長方形状のベタ画像部(縦20mm、横50mm)を含み、ベタ画像部における未定着状態でのトナーの記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)への付着量が0.5mg/cmとなるように調整した。作成した未定着画像を、前記カラー複合機の定着部を備えた外部定着器を用いて、100℃から200℃まで10℃刻みで定着し(プロセススピード124mm/sec)、試験紙(A4サイズ、52g/m紙)面上におけるオフセットの有無を目視で確認した。低温オフセットも高温オフセットも起こらない温度域を非オフセット域とし、低温オフセットの起こらない下限温度および高温オフセットの起こらない上限温度の温度差を温度幅として、定着性を以下の基準で評価した。
○(良好):非オフセット域の温度幅が60℃以上
△(実用上問題なし):非オフセット域の温度幅が40℃以上60℃未満
×(不良):非オフセット域の温度幅が40℃未満
【0113】
[耐久性]
10000枚の用紙(A4サイズ)に印字処理を連続して行い、現像剤の凝集状態に基づいて耐久性評価した。各用紙に印字処理された画像の印字率は5%とした。現像剤の凝集は、印字処理を行った後の現像剤の流動性を測定して凝集の有無を測定した。なお、流動性測定は、流動性測定装置(振動移送式流動性測定装置、株式会社エトワス製)を用い、電圧60V、振動数137Hzの試験条件で現像剤の移送時間を測定した。ここで、未使用の現像剤の移送時間は5分未満であった。耐久性について以下の基準で評価した。
○(良好):移送時間が5分未満
△(実用上問題なし):移送時間が5分以上、10分未満
×(不良):移送時間が10分以上
【0114】
[総合評価]
保存安定性、定着性、および耐久性の評価結果を合わせて、以下のような基準で総合評価を行った。
◎(非常に良好):いずれの評価も○である
○(良好):評価結果が○または△で、△が1つである
△(実用上問題なし):評価結果が○または△で、△が2つまたは3つである
×(不良):評価結果に×がある
【0115】
実施例1〜19および比較例1〜3のトナーを表1、各トナーの評価結果を表2に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
実施例1〜19のトナーは、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマール酸のいずれかの化合物から得たジカルボン酸を用いて作製したポリエステル樹脂を含むことで、いずれの評価結果にも×がなく、総合評価としていずれのトナーも実用可能であった。
【0119】
比較例1〜3のトナーは、いずれも定着性に問題があり、総合評価が×となった。比較例1のトナーでは、ジカルボン酸を用いずにポリエステル樹脂を作製したため、ポリエステル樹脂の重合度が十分でなく、また、比較例2および3のトナーでは、カルボン酸に含まれる複数のカルボキシル基の反応性が異なるため、ポリエステル樹脂の重合度が十分でないことが原因であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸とジオールとの反応によって、ポリエステル樹脂を作製する工程と、
前記ポリエステル樹脂と着色剤とを有するトナー母粒子を作製する工程とを含むトナーの製造方法であって、
前記ジカルボン酸は、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマールから選ばれる1種または2種以上のモノカルボン酸の末端に、カルボキシル基を導入したバイオマスモノマーであることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記バイオマスモノマーは、オゾンガスを用いて前記モノカルボン酸の末端アルケンを酸化して生成する、アルデヒド化合物を経由して得られることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記バイオマスモノマーは、前記アルデヒド化合物のアルデヒド基を、亜塩素酸ナトリウムを用いて酸化することで前記カルボキシル基を導入して得られることを特徴とする請求項2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、3000以上30000以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂の軟化温度が、110℃以上140℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
ジカルボン酸とジオールとの反応によって得られたポリエステル樹脂と、着色剤とを有するトナー母粒子を含み、
前記ジカルボン酸は、ピマール酸、イソピマール酸、およびサンダラコピマールから選ばれる1種または2種以上のモノカルボン酸の末端に、カルボキシル基を導入したバイオマスモノマーであることを特徴とするトナー。

【図1】
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【公開番号】特開2011−154133(P2011−154133A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14781(P2010−14781)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】