説明

トナーの製造方法及びトナー

【課題】一次粒径が100nm以上1μm以下である粒子を母体粒子の表面に一定量以上固定することが可能なトナーの製造方法及びトナーを提供する。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、一次粒径が100nm以上1μm以下である粒子Aを有するトナーを製造する方法であって、回転することが可能な軸状部材101と、軸状部材101の表面に設けられている複数の攪拌部材102と、複数の撹拌部材102を覆うことが可能なケーシング103を有する混合装置100を用いて、母体粒子と、粒子Aを混合する工程を有し、ケーシング103は、内周面の軸状部材101の回転軸に対して垂直な断面が、複数の撹拌部材102を覆っている状態において、軸状部材101の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面に冷却ジャケット104が設けられており、トナーは、母体粒子に対する粒子Aの質量比が1.5%以上10%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの製造方法及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の画像形成装置において高速化および高画質が追求されており、一成分現像剤及び二成分現像剤によらず、トナーの熱的及び/又は機械的な耐ストレス性の向上が求められている。電子写真プロセスにおいては、現像時に、トナー・キャリア間又はトナー・現像剤担持体間の物理的付着力が現像に寄与する。
【0003】
しかしながら、現像部に、熱的及び/又は機械的なストレスを受けることによって、トナーは、母体粒子の表面に存在する添加剤が母粒粒子中に埋没すると、物理的付着力が増大し、現像性及び/又は転写性の低下、転写ムラ、流動性低下、帯電量変動、環境性変動等の問題を引き起こす。
【0004】
このような問題を解決するため、添加剤よりも粒子径が大きい粒子を併用する方法が知られているが、母体粒子の表面に一定量以上固定しないと、添加剤の埋没を抑制することができない。添加剤よりも粒子径が大きい粒子は、比表面積が小さいため、添加量をある程度多くすると共に固定する必要がある。特に、離型剤が母体粒子の表面に存在しない低温定着用の母体粒子であるコアシェル構造を有する重合トナーでは、母体粒子に粒子径が大きい粒子を固定することは困難である。
【0005】
一方、母体粒子の表面に添加剤を固定する方法としては、種々の方法が知られている。
【0006】
特許文献1には、衝撃力を主体とする機械的熱的エネルギーを加えて無機微粉末を芯材の表面に付着させる方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、トナーに未付着のケイ酸微粉末を除去する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、熱可塑性樹脂の軟化温度Sp+0℃〜+300℃の雰囲気中で非接触で熱可塑性粒子と添加剤の混合物を瞬間加熱する方法が開示されている。
【0009】
特許文献4には、球状容器内の底面に沿って回転する下段回転羽と容器中央部に周速度40m/s以上で回転する上段回転羽を設けた球状ミキサーを使用する方法が開示されている。
【0010】
特許文献5には、複数の攪拌部材を外周部に設けた回転軸と、攪拌部材に対して微小間隙を隔てて位置する内周部を有したケーシングとを備え、回転軸の回転に伴い移動する攪拌部材によってケーシング内の処理物を攪拌処理する処理装置であって、回転軸の軸方向と直交する方向から見て、回転軸の軸方向と平行な方向における複数の攪拌部材夫々の端部位置が、隣接する他の攪拌部材の端部位置よりも当該他の攪拌部材の内側に位置している処理装置を用いる方法が開示されている。
【0011】
特許文献6には、攪拌羽根を有する回転体を具備する流動攪拌型混合装置内で回転体を回転することによって、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤とからなる母体粉子と帯電制御剤とを攪拌混合し、母体粉子の表面に帯電制御剤を固定して電子写真用トナーを製造する方法であって、Tg−10>T>Tg−35(T:攪拌混合時の装置内雰囲気温度(℃)、Tg:樹脂粉体のガラス転移温度(℃))の温度範囲で、65〜120m/sの周速度で回転体を回転する方法が開示されている。
【0012】
特許文献7には、帯電制御剤を、流動攪拌型混合装置によりトナー母体の表面に固定する電子写真用トナーの製造方法であって、トナー母体100重量部と一次粒子径が5〜1000nmの帯電制御剤0.3〜1.0重量部と比表面積径が5〜300nmの無機微粒子を含む処理物を、式
Tg−50<T<Tg−15
(但し、Tは、攪拌時の流動攪拌型混合装置内の雰囲気の温度[℃]であり、Tgは、トナー母体のガラス転移温度[℃]である。)
を満たす範囲で攪拌して電子写真用トナーを製造する方法が開示されている。このとき、流動攪拌型混合装置は、回転軸と、複数の攪拌部材と、ケーシングと、を備え、ケーシングは、回転軸から内壁までの垂直方向距離が一定である円形状壁面と、冷却ジャケットと、を有する。また、複数の攪拌部材は、異なる3以上の円軌道上を回転するように回転軸に設けられ、且つ、各々の円軌道の直径が90〜1000mmの範囲で、10〜150m/sの周速度で回転する。さらに、複数の攪拌部材のうちの少なくとも1つと円形状壁面とのクリアランスC[mm]は、各々の円軌道のうち最大の円軌道の直径D[mm]に対して、式
2.5≦D1/2/C<9.0
を満たす。一方、トナー母体は、結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含み、重量平均粒径D4が3〜9μmである。
【0013】
特許文献8には、少なくとも樹脂及び着色剤とからなる着色粒子に微粒子を添加混合してなる静電荷像現像用トナーの製造方法に於いて、トナーが体積平均粒径50〜1000nmで、摩擦帯電部材との摩擦帯電性が前記着色粒子と同極性の有機微粒子を着色粒子表面に固定化し、その後さらに体積平均粒径が5〜50nmの無機微粒子を添加混合する方法が開示されている。
【0014】
しかしながら、これらの方法を用いても、添加剤よりも粒子径が大きい粒子を母体粒子の表面に一定量以上固定することができないという問題がある。このため、長期に亘って画像を形成すると、添加剤の埋没を抑制することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である粒子を母体粒子の表面に一定量以上固定することが可能なトナーの製造方法及び該トナーの製造方法により製造されているトナーを提供することを目的とする。また、本発明は、長期に亘って画像を形成しても、母体粒子の表面に存在する平均一次粒径が10nm以上100nm未満である粒子の埋没を抑制することが可能なトナーの製造方法及び該トナーの製造方法により製造されているトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である粒子を有するトナーを製造する方法であって、回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記粒子を混合する工程を有し、前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、前記トナーは、前記母体粒子に対する前記粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトナーの製造方法において、前記ケーシング内の雰囲気の温度は、前記結着樹脂のガラス転移点よりも50℃低い温度以上前記結着樹脂のガラス転移点よりも15℃低い温度以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法において、前記複数の攪拌部材は、第一の攪拌部材及び第二の攪拌部材を有し、前記第一の攪拌部材は、前記軸状部材の回転軸に対して略平行な向きに前記粒子を送り、前記第二の攪拌部材は、前記第一の撹拌部材が前記粒子を送る向きとは反対の向きに前記粒子を戻すことを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、互いに隣接する攪拌部材は、前記軸状部材の回転軸に対して略平行な方向において重なり合い、前記軸状部材が回転する方向において離間するように配置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記ケーシングは円筒状であることを特徴する。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記軸状部材の回転軸は、鉛直方向に対して略垂直であることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記母体粒子は、離型剤をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記母体粒子は、ガラス転移点が40℃以上65℃以下であることを特徴する。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記母体粒子は、体積平均粒径が3μm以上9μm以下であることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載の発明は、結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である第一の粒子と、平均一次粒径が10nm以上100nm未満である第二の粒子を有するトナーを製造する方法であって、回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記第一の粒子と、前記第二の粒子を混合する工程を有し、前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第一の粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とする。
【0026】
請求項11に記載の発明は、結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である第一の粒子と、平均一次粒径が10nm以上100nm未満である第二の粒子を有するトナーを製造する方法であって、前記母体粒子と、前記第二の粒子を混合する工程と、回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、該混合された前記母体粒子及び前記第二の粒子と、前記第一の粒子を混合する工程を有し、前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第一の粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とする。
【0027】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のトナーの製造方法において、前記混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記第二の粒子を混合することを特徴とする。
【0028】
請求項13に記載の発明は、結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である第一の粒子と、平均一次粒径が10nm以上100nm未満である第二の粒子を有するトナーを製造する方法であって、回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記第一の粒子を混合する工程と、該混合された前記母体粒子及び前記第一の粒子と、前記第二の粒子を混合する工程を有し、前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第一の粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とする。
【0029】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のトナーの製造方法において、前記混合手段を用いて、前記混合された前記母体粒子及び前記第一の粒子と、前記第二の粒子を混合することを特徴とする。
【0030】
請求項15に記載の発明は、請求項10乃至14のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第二の粒子の質量比が0.1%以上5%以下であることを特徴とする。
【0031】
請求項16に記載の発明は、トナーにおいて、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のトナーの製造方法により製造されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である粒子を母体粒子の表面に一定量以上固定することが可能なトナーの製造方法及び該トナーの製造方法により製造されているトナーを提供することができる。また、本発明は、長期に亘って画像を形成しても、母体粒子の表面に存在する平均一次粒径が10nm以上100nm未満である粒子の埋没を抑制することが可能なトナーの製造方法及び該トナーの製造方法により製造されているトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明で用いられる混合装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1の攪拌部材を示す概略図である。
【図3】図1の攪拌部材の溝状部が形成されている場合を示す概略図である。
【図4】図1の攪拌部材の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0035】
図1に、本発明で用いられる混合装置の一例を示す。混合装置100は、軸状部材101と、軸状部材101の表面に設けられている複数の攪拌部材102と、複数の撹拌部材102を覆うことが可能なケーシング103を有する。このとき、ケーシング103は、複数の撹拌部材102を覆っている状態において、軸状部材101の回転軸との間の距離が一定である円筒形状であると共に、冷却媒体を流す冷却ジャケット104が外周面に設けられている。このため、複数の撹拌部材102がケーシング103により覆われている状態において、ケーシング103内に粒子を入れた後、軸状部材101を回転させることにより、効率よく粒子を混合することができると共に、効率よく粒子を冷却することができる。また、軸状部材101は、回転軸が鉛直方向に対して略垂直であるため、粒子を均一に混合することができる。
【0036】
なお、略垂直(又は略水平)は、誤差として、垂直(又は水平)から5°程度のブレが許容される。
【0037】
攪拌部材102は、図2に示すように、ケーシング103の内壁に対して、クリアランスCを隔てて配置されており、複数の攪拌部材102が表面に設けられている軸状部材101が回転することにより、ケーシング103内の粒子を混合することができる。このとき、クリアランスCは、通常、0.3〜50mmである。
【0038】
ケーシング103の内径が、軸状部材101の外径の2倍以下であることが好ましい。これにより、攪拌部材102による撹拌力を粒子に強く伝達することができる。
【0039】
軸状部材101は、軸受部105によって片側で支持され、モーター等の駆動部(不図示)と連結している。混合する粒子を投入する投入口106は、ケーシング103の軸受部105が設置されている側の端部の上部に設置されており、混合された粒子を排出する排出口107は、ケーシング103の投入口106に対して反対の端部にあたるケーシング103の軸受部105が設置されている側と反対側の端部の下部に設けられている。
【0040】
軸状部材101は、回転軸に対して略平行な方向の一端側(図1中、左側)のみで支持され、ケーシング103は、軸状部材101の回転軸に対して略平行な方向の一端側(図1中、左側)のみで開口し、他端側(図1中、右側)で閉塞した有底円筒状である。また、ケーシング103は、ガイド棒108及びボス109によって支持され、複数の撹拌部材102を覆う作動位置(図1参照)と、複数の撹拌部材102を覆わない非作動位置(不図示)に、軸状部材101の回転軸に対して略平行な方向に移動可能に設置されている。
【0041】
ケーシング103には、ケーシング103内での温度上昇による空気の膨張に伴う圧力を開放したり、軸状部材101の軸シール部(不図示)のシールエアを逃がしたりするために、排気管110が設置されている。また、排気管110には、粉塵の飛散を抑制するために、フィルタ111が設置されている。さらに、軸状部材101は、冷却媒体を流す流路112が内部に形成されている。
【0042】
攪拌部材102は、軸状部材101の回転軸に対して略平行なパドル状であり、軸状部材101の表面に6個設けられている。このとき、攪拌部材102は、軸状部材101の回転軸に対して略平行な方向に3個、軸状部材101の回転方向に2個設けられている。また、攪拌部材102は、それぞれ回転軸上に対称点が存在するように点対称に設けられている。
【0043】
なお、攪拌部材102は、軸状部材101の回転軸に対して略平行な方向に3個以上設けられていてもよい。攪拌部材102が軸状部材101の回転軸Aに対して略平行な方向に1個又は2個設けられている場合は、粒子の攪拌に偏りが生じて、粒子を均一に分散させることができなったり、粒子Aを母体粒子に均一に固定できなくなったりすることがある。
【0044】
互いに隣接する攪拌部材102は、軸状部材101の回転軸に対して略平行な方向において重なり合い、軸状部材101の回転方向において離間するように配置されている。これにより、攪拌部材102の端部から、隣接する攪拌部材102の中側に粒子が移動し、その結果、攪拌部材102による攪拌力を粒子に強く伝達することができる。
【0045】
攪拌部材102の形状としては、パドル状に限定されず、板状、溝形状等が挙げられる。
【0046】
撹拌部材102は、図3に示すように、ケーシング103の内壁に対向するように溝状部Dが形成されていてもよい。なお、図3(a)及び(b)は、それぞれ側面図及び上面図である。撹拌部材102は、2個の溝状部Dにより、ケーシング103の内壁に対向する領域が3個の領域に分割されている。このように、ケーシング103の内壁に対向する領域を分割すると、撹拌部材102を大きくしても、粒子を撹拌する作用が低下したり、攪拌部材102とケーシング103の内壁と間で母体粒子に印加されるせん断力に伴う摩擦熱が局所に集中したりすることを抑制できる。
【0047】
ケーシング103の内壁に対向する領域の表面積に対する溝状部Dが形成されている領域の表面積の比は、通常、15〜50%であり、20〜40%が好ましい。
【0048】
ケーシング103の形状としては、内周面の軸状部材101の回転軸に対して垂直な断面が、複数の撹拌部材102を覆っている状態において、軸状部材101の回転軸との間の距離が略一定である円状であれば、円筒状に限定されず、球形状、円錐形状等が挙げられる。
【0049】
軸状部材101を回転させる際の攪拌部材102の周速は、通常、10〜150m/秒であり、10〜120m/秒が好ましい。
【0050】
また、軸状部材101を回転させる際の攪拌部材102の円軌道の直径は、通常、0.09〜1mであり、0.12〜0.75mが好ましい。
【0051】
混合装置100を用いて、(粒子Bと混合された)母体粒子と粒子A(及び粒子B)を混合すると、攪拌部材102と母体粒子の衝突力や、攪拌部材102とケーシング103の内壁と間で母体粒子に印加されるせん断力により、粒子A(及び粒子B)が母体粒子の表面に埋没又は展延するため、母体粒子に粒子A(及び粒子B)を固定することができる。
【0052】
このとき、冷却ジャケット104に、冷却媒体を流すことにより、ケーシング103内の雰囲気の温度上昇を抑制することができる。
【0053】
ケーシング103内の雰囲気の温度は、結着樹脂のガラス転移点よりも50℃低い温度〜結着樹脂のガラス転移点よりも15℃低い温度であることが好ましい。ケーシング103内の雰囲気の温度が結着樹脂のガラス転移点よりも50℃低い温度未満であると、母体粒子に粒子Aを固定することが困難になることがあり、結着樹脂のガラス転移点よりも15℃低い温度を超えると、攪拌部材102による撹拌力が母体粒子に伝達されることにより、母体粒子が融解したり、離型剤が露出したりすることがある。
【0054】
また、軸状部材101の内部に形成されている流路112に冷却媒体を流すことにより、軸状部材101の回転に伴う発熱により、軸状部材101や攪拌部材102に母体粒子が融着することを抑制できる。
【0055】
図4に、攪拌部材102の変形例を示す。攪拌部材102'は、軸状部材101の回転軸Aに対して略平行な向き(図4中、右向き)に粒子を送るあぶみ状の攪拌部材102a及び攪拌部材102aが粒子を送る向きとは反対の向き(図4中、左向き)に粒子を戻すあぶみ状の攪拌部材102bから構成されている。これにより、ケーシング103内において、粒子の流動を活発にすることができ、例えば、攪拌部材102とケーシング103の内壁と間で、粒子が凝集したり、融着したりすることを抑制できる。また、ケーシング103内における粒子の移動経路が複雑になると共に長くなり、その結果、攪拌部材102'による撹拌力を粒子にさらに強く伝達することができる。
【0056】
また、軸状部材101の投入口106及び排出口107が形成されている側の端部に、それぞれ撹拌部材102a及び102bが設けられている。これにより、攪拌部材102'の作用が及びにくい軸状部材101の両端部側への粒子の移動を抑制し、その結果、攪拌部材102'による攪拌力が十分に伝達されていない粒子が排出口107から排出されることを抑制できる。
【0057】
攪拌部材102a及び攪拌部材102bは、それぞれ軸状部材101の表面に6個設けられている。このとき、攪拌部材102a及び102bは、それぞれ軸状部材101の回転軸Aに対して略平行な方向に3個、軸状部材101の回転方向Bに2個設けられている。また、攪拌部材102a及び102bは、それぞれ回転軸A上に対称点が存在するように点対称に設けられている。
【0058】
なお、攪拌部材102a及び102bは、軸状部材101の回転軸Aに対して略平行な方向に3個以上設けられていてもよい。攪拌部材102a及び102bが軸状部材101の回転軸Aに対して略平行な方向に1個又は2個設けられている場合は、粒子の攪拌に偏りが生じて、粒子を均一に分散させることができなったり、粒子Aを母体粒子に均一に固定できなくなったりすることがある。
【0059】
互いに隣接する攪拌部材102a及び攪拌部材102bは、軸状部材101の回転軸Aに対して略平行な方向において重なり合い、軸状部材101の回転方向Bにおいて離間するように配置されている。具体的には、攪拌部材102b(1)の両端部から、軸状部材101の回転方向Bに曲線L1及びL2を引くと、L1及びL2は、それぞれ攪拌部材102b(1)に隣接する攪拌部材102a(1)及び102a(2)と交わる。また、攪拌部材102a(1)、102a(2)、102a(3)、102b(2)及び102b(3)等についても同様の位置関係にある。これにより、攪拌部材102a(又は102b)の端部から、隣接する攪拌部材102b(又は102a)の中側に粒子が移動し、その結果、攪拌部材102a及び102bによる攪拌力を粒子に強く伝達することができる。
【0060】
攪拌部材102a及び102bの形状としては、あぶみ状に限定されず、板状、溝形状、パドル状等が挙げられる。
【0061】
本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm〜1μmである粒子(以下、粒子Aという)を有するトナーを製造する方法である。
【0062】
このとき、母体粒子に対する粒子Aの質量比は1.5〜10%であり、2〜8%が好ましく、3〜6%がさらに好ましい。母体粒子に対する粒子Aの質量比が1.5%未満であると、母体粒子の表面に粒子Aを一定量以上固定させることができない。このため、母体粒子の表面に平均一次粒径が10〜100nmである粒子(以下、粒子Bという)を固定した場合に、長期に亘って画像を形成すると、母体粒子の表面に存在する粒子Bの埋没を抑制することが困難になる。一方、母体粒子に対する粒子Aの質量比が10%を超えると、長期に亘って画像を形成すると、母体粒子の表面に存在する粒子Aの脱離を抑制することが困難になる。
【0063】
粒子Aの平均一次粒径は、100nm〜1μmであるが、200〜900nmが好ましく、300〜800nmがさらに好ましい。粒子Aの平均一次粒径が100nm未満であると、母体粒子の表面に粒子Bを固定した場合に、長期に亘って画像を形成すると、粒子Bの埋没を抑制することが困難になり、1μmを超えると、母体粒子に粒子Aを固定することが困難になる。
【0064】
粒子Bの平均一次粒径は、10〜100nmであるが、20〜90nmが好ましく、30nm〜80nmがさらに好ましい。粒子Bの平均一次粒径が10nm未満であると、母体粒子に粒子Bを固定することが困難になり、100nmを超えると、トナーの流動性が低下する。
【0065】
本発明のトナーの製造方法の第一の実施形態は、混合装置100を用いて、母体粒子と、粒子Aを混合する工程を有する。
【0066】
また、本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm〜1μmである粒子(以下、粒子Aという)と、平均一次粒径が10〜100nmである粒子(以下、粒子Bという)を有するトナーを製造する方法である。
【0067】
このとき、母体粒子に対する粒子Aの質量比は1.5〜10%であり、2〜8%が好ましく、3〜6%がさらに好ましい。母体粒子に対する粒子Aの質量比が1.5%未満であると、母体粒子の表面に粒子Aが一定量以上固定されず、長期に亘って画像を形成すると、母体粒子の表面に存在する粒子Bの埋没を抑制することが困難になり、10%を超えると、長期に亘って画像を形成すると、母体粒子の表面に存在する粒子Aの脱離を抑制することが困難になる。
【0068】
また、母体粒子に対する粒子Bの質量比は、0.1〜5%であることが好ましく、0.5〜4%がさらに好ましく、1〜3%が特に好ましい。母体粒子に対する粒子Bの質量比が0.1%未満であると、トナーの流動性が低下することがあり、5%を超えると、母体粒子に粒子Bを固定することが困難になることがある。
【0069】
粒子Aの平均一次粒径は、100nm〜1μmであるが、200〜900nmが好ましく、300〜800nmがさらに好ましい。粒子Aの平均一次粒径が100nm未満であると、長期に亘って画像を形成すると、粒子Bの埋没を抑制することが困難になり、1μmを超えると、母体粒子に粒子Aを固定することが困難になる。
【0070】
粒子Bの平均一次粒径は、10〜100nmであるが、20〜90nmが好ましく、30nm〜80nmがさらに好ましい。粒子Bの平均一次粒径が10nm未満であると、母体粒子に粒子Bを固定することが困難になり、100nmを超えると、トナーの流動性が低下する。
【0071】
本発明のトナーの製造方法の第二の実施形態は、混合装置100を用いて、母体粒子と、粒子Aと、粒子Bを混合する工程を有する。
【0072】
本発明のトナーの製造方法の第三の実施形態は、母体粒子と、粒子Bを混合する工程と、混合装置100を用いて、混合された母体粒子及び粒子Bと、粒子Aを混合する工程を有する。
【0073】
母体粒子と、粒子Bを混合する際に用いる混合装置としては、内部に処理室が設けられている混合槽の底部を略垂直に貫通し、回転することが可能な軸状部材と、処理室内の軸状部材に設けられている攪拌羽根を有していれば、特に限定されないが、FMミキサー(ヘンシェルミキサー)、スーパーミキサー、メカノハイブリッド(Q型ミキサー)等が挙げられる。また、このような混合装置の代わりに、後述する混合装置を用いてもよい。
【0074】
本発明のトナーの製造方法の第四の実施形態は、混合装置100を用いて、母体粒子と、粒子Aを混合する工程と、混合された母体粒子及び粒子Aと、粒子Bを混合する工程を有する。
【0075】
混合された母体粒子及び粒子Aと、粒子Bを混合する際に用いる混合装置としては、内部に処理室が設けられている混合槽の底部を略垂直に貫通し、回転することが可能な軸状部材と、処理室内の軸状部材に設けられている攪拌羽根を有していれば、特に限定されないが、FMミキサー(ヘンシェルミキサー)、スーパーミキサー、メカノハイブリッド(Q型ミキサー)等が挙げられる。また、このような混合装置の代わりに、後述する混合装置を用いてもよい。
【0076】
本発明のトナーの製造方法は、混合装置100を用いて、混合された母体粒子、粒子A及び粒子Bと、粒子Aを混合する工程又は混合された母体粒子、粒子A及び粒子Bと粒子Bを混合する工程をさらに有していてもよい。
【0077】
混合された母体粒子、粒子A及び粒子Bと、粒子Bを混合する際に用いる混合装置としては、内部に処理室が設けられている混合槽の底部を略垂直に貫通し、回転することが可能な軸状部材と、処理室内の軸状部材に設けられている攪拌羽根を有していれば、特に限定されないが、FMミキサー(ヘンシェルミキサー)、スーパーミキサー、メカノハイブリッド(Q型ミキサー)等が挙げられる。また、このような混合装置の代わりに、後述する混合装置を用いてもよい。
【0078】
粒子Aを構成する材料としては、特に限定されないが、スチレン−アクリル共重合体、ポリエステル等の樹脂;シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の無機化合物が挙げられる。
【0079】
スチレン−アクリル共重合体としては、スチレンと、アクリル酸、アクリル酸のアルキル(炭素数1〜36)エステル、メタクリル酸、メタクリル酸のアルキル(炭素数1〜36)エステル、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸パーフルオロアルキル等の(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0080】
スチレン−アクリル共重合体を構成するスチレンに対する(メタ)アクリル系モノマーの質量比は、通常、95/5〜5/95であり、90/10〜10/90が好ましい。
【0081】
スチレン−アクリル共重合体から構成される粒子Aは、例えば、重合開始剤の存在下、スチレンと(メタ)アクリル系モノマーを共重合させることにより得られる。
【0082】
粒子Aを構成する樹脂の軟化点は、感光体等への融着の観点から、150℃以上であることが好ましい。また、粒子Aを構成する樹脂のガラス転移点は、凝集の観点から、60℃以上であることが好ましい。
【0083】
樹脂から構成される粒子Aは、電気抵抗の観点から、p−トルエンスルホン酸又はその塩で表面処理されていることが好ましい。
【0084】
p−トルエンスルホン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;テトラメチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;ヘキサデシルビリジニウム塩等のピリジニウム塩;1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム塩等が挙げられる。中でも、樹脂から構成される粒子Aへの親和性の観点から、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0085】
p−トルエンスルホン酸又はその塩による表面処理量は、通常、樹脂から構成される粒子Aに対して、0.1〜5質量%であり、0.5〜3質量%が好ましい。
【0086】
p−トルエンスルホン酸又はその塩で表面処理する方法としては、特に限定されないが、樹脂から構成される粒子Aと、p−トルエンスルホン酸又はその塩の水溶液とを混合した後、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0087】
粒子Bを構成する材料としては、特に限定されないが、上述のスチレン−アクリル共重合体、ポリエステル等の樹脂;シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の無機化合物が挙げられる。中でも、トナーの流動性を考慮すると、無機化合物が好ましい。
【0088】
母体粒子に含まれる結着樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル;フェノール樹脂;天然変性フェノール樹脂;天然樹脂変性マレイン酸樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリアミド;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール;テルペン樹脂;クマロンインデン樹脂;石油系樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、スチレン系共重合体又はポリエステルが好ましい。
【0089】
母体粒子に含まれる着色剤としては、イエロー系顔料、マゼンタ系顔料、シアン系顔料等を用いることができる。
【0090】
イエロー系顔料としては、特に限定されないが、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0091】
イエロー系顔料の市販品としては、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、90、93、95、96、97、109、110、111、120、128、129、138、147、155、168、180、181;ネフトールイエローS、ハンザイエローG、C.I.バットイエロー等が挙げられる。
【0092】
マゼンタ系顔料としては、特に限定されないが、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0093】
マゼンタ系顔料の市販品としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48、48:2、48:3、48:4、57、57:1、58、60、63、64、68、81、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、163、166、169、170、177、184、185、187、202、206、207、209、220、251、254;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0094】
シアン系顔料としては、特に限定されないが、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0095】
シアン系顔料の市販品としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、6、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルー等が挙げられる。
【0096】
着色剤の添加量は、結着樹脂に対して、2〜20質量%であることが好ましく、4〜15質量%がさらに好ましい。着色剤の含有量が、結着樹脂に対して、2質量%未満であると、着色力が低下することがあり、20質量%を超えると、着色力が必要以上に高まり、薄い色等の再現が困難になることがある。
【0097】
母体粒子は、離型剤、帯電制御剤等をさらに含んでいてもよい。
【0098】
離型剤としては、特に限定されないが、カルボニル基を有するワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、カルボニル基を有するワックスが好ましい。
【0099】
カルボニル基を有するワックスとしては、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等のポリアルカン酸エステル;トリメリット酸トリステアリル、マレイン酸ジステアリル等のポリアルカノールエステル;ジベヘニルアミド等のポリアルカン酸アミド;トリメリット酸トリステアリルアミド等のポリアルキルアミド;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン等が挙げられる。中でも、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
【0100】
ポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
【0101】
長鎖炭化水素としては、パラフィンワックス、サゾールワックス等が挙げられる。
【0102】
離型剤の融点は、通常、40〜160℃であり、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。離型剤の融点が40℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、160℃を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0103】
母体粒子中の離型剤の含有量は、通常、結着樹脂100に対して、3〜15質量%である。
【0104】
帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸及びその誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0105】
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0106】
母体粒子は、ガラス転移点が40〜65℃であることが好ましい。母体粒子のガラス転移点が40℃未満であると、トナーの保存安定性が低下することがあり、65℃を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0107】
なお、母体粒子のガラス転移点は、TA−60WS及びDSC−60(島津製作所社製)を用いて測定することができる。
【0108】
母体粒子は、体積平均粒径が3〜9μmであることが好ましい。母体粒子の体積平均粒径が3μm未満であると、トナーの融着が発生しやすくなることがあり、9μmを超えると、高画質画像を形成することが困難になることがある。
【0109】
なお、母体粒子の体積平均粒径は、コールターカウンターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて測定することができる。
【0110】
母体粒子の平均円形度は、通常、0.90〜1.0であり、0.92〜1.0が好ましく、0.94〜1.0がさらに好ましい。母体粒子の平均円形度が0.90未満であると、粒子A及び粒子Bを均一に固定しにくくなることがある。
【0111】
母体粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(シスメックス社製)を用いて測定することができる。
【0112】
母体粒子の製造方法としては、特に限定されないが、粉砕法、重合法等が挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により、本発明をさらに説明するが、本発明は実施例に限定されない。以下、部は質量部を意味する。
【0114】
[母体粒子1の作製]
1/2流出開始温度が126℃のポリエステル100部、含フッ素4級アンモニウム塩3部及び銅フタロシアニンC.I.Pigment Blue 15:3(大日精化社製)3部を、ブレンダーを用いて混合した後、100〜110℃に加熱した2本ロールを用いて溶融混練し、自然放冷した。次に、カッターミルを用いて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕した。さらに、風力分級装置を用いて分級し、母体粒子1を得た。母体粒子1は、ガラス転移点が60℃、体積平均粒径が7.4μmであった。
【0115】
[母体粒子2の作製]
加熱乾燥した三つ口フラスコに、セバシン酸ジメチル98mol%及び5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム2mol%からなる酸モノマーと、エチレングリコールからなるアルコールモノマーとをmol比1:1で入れ、全モノマーに対して、0.3質量%のジブチルスズオキサイドを入れた後、容器内の空気を窒素により置換し、180℃で5時間還流した。次に、減圧下、230℃まで昇温して2時間攪拌した後、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステルを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、結晶性ポリエステルの重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、9700であった。また、結晶性ポリエステルは、融点が72℃であった。
【0116】
得られた結晶性ポリエステル90部、カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.8部及びイオン交換水210部を100℃に加熱して、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させた後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて1時間分散させ、体積平均粒径が200nm、固形分が20質量%の結晶性ポリエステル分散液を得た。
【0117】
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた5Lのフラスコに、テレフタル酸30mol%、フマル酸70mon%、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物20mol%及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物80mol%を入れた後、1時間で190℃まで昇温した。次に、全モノマーに対して、1.2質量%のジブチルスズオキサイド1.2部を加えた。さらに、生成する水を留去しながら、6時間で240℃まで昇温した後、3時間保持し、非晶性ポリエステルを得た。非晶性ポリエステルは、酸価が12.0mg/KOH、重量平均分子量が9700、ガラス転移点が61℃であった。
【0118】
得られた溶融状態の非晶性ポリエステルを、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)に100g/分で移送すると同時に、0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換器で120℃に加熱しながら、キャビトロンCD1010に0.1L/分で移送した。さらに、回転子の回転速度を60Hz、圧力を5kg/cmとして、キャビトロンを運転し、体積平均粒径が0.16μm、固形分が30質量%の非晶性ポリエステル分散液を得た。
【0119】
銅フタロシアニンC.I.Pigment Blue 15:3(大日精化社製)45部、カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製)5部及びイオン交換水200部を混合した後、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させ、体積平均粒径が168nm、固形分が22質量%の着色剤分散液を得た。
【0120】
融点が75℃のパラフィンワックスHNP9(日本精鑞社製)45部、カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製)5部及びイオン交換水200部を混合した後、95℃に加熱した。次に、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させた後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散させ、体積平均粒径が200nm、固形分が20質量%の離型剤分散液を得た。
【0121】
丸型のステンレス製フラスコに、非晶性ポリエステル分散液256.7部、結晶性ポリエステル分散液33.3部、着色剤分散液27.3部及び離型剤分散液35部を入れ、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させた。次に、ポリ塩化アルミニウム0.20部を加え、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させた後、48℃まで昇温し、60分間保持した。さらに、非晶性ポリエステル分散液70部を加えた後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。次に、ステンレス製フラスコを密閉し、96℃まで昇温し、5時間保持した後、冷却した。さらに、濾過し、残渣をイオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離した。次に、残渣を40℃のイオン交換水1Lに加え、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて、300rpmで15分間攪拌した後、濾過する操作を繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度が7.0μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過により、ろ紙No.5Aを用いて固液分離した。さらに、12時間真空乾燥して、母体粒子2を得た。母体粒子2は、ガラス転移点が56℃、体積平均粒径が5.9μmであった。
【0122】
[母体粒子のガラス転移点]
母体粒子のガラス転移点は、TA−60WS及びDSC−60(島津製作所社製)を用いて、以下の測定条件で測定した。
【0123】
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/分)
(昇温条件1)
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/分
終了温度:150℃
保持時間:なし
(降温条件1)
降温温度:10℃/分
終了温度:20℃
保持時間:なし
(昇温条件2)
昇温速度:10℃/分
終了温度:150℃
測定結果は、データ解析ソフトTA−60、バージョン1.52(島津製作所製)を用いて解析した。具体的には、2度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線の最も低温側に最大ピークを示す点を中心として、±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いて、ピーク温度を求めた。次に、DSC曲線でピーク温度+5℃及び−5℃の範囲で、解析ソフトのピーク解析機能を用いて、DSC曲線の最大吸熱温度を求めた。
【0124】
[母体粒子の体積平均粒径]
母体粒子の体積平均粒径は、コールターカウンターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて測定した。具体的には、まず、約1質量%塩化ナトリウム水溶液ISOTON−II(コールター社製)100〜150ml中にポリオキシエチレンアルキルエーテルを0.1〜5ml加えた。次に、母体粒子2〜20mg加えた後、超音波分散機を用いて、約1〜3分間分散させた。さらに、100μm角のアパーチャーを用いて、母体粒子の体積平均粒径を求めた。チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを用い、粒径が2.00μm以上40.30μm未満の粒子を測定対象とした。
【0125】
[負帯電性樹脂粒子の作製]
窒素導入管、還流管及び滴下ロートを備えた2Lの三つ口フラスコに、イオン交換水1200部を入れ、80℃に昇温した後、スチレン25.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル3部、メタクリル酸1.5部及びイオン交換水15部に溶解させた過硫酸アンモニウム3部を加え、10分間保持した。次に、スチレン229.5部、メタクリル酸メチル27部及びエチレングリコールジメタクリレート13.5部を90分間で滴下した後、スチレン27部及びメタクリル酸メチル3部を10分間で滴下し、80℃で60分間保持した。さらに、限外ろ過器を用いてろ過し、残渣を洗浄した後、負帯電性樹脂粒子100部に対して、イオン交換水15部に溶解させたp−トルエンスルホン酸ナトリウム3部を加え、攪拌した。次に、スプレードライヤーを用いて乾燥した後、ジェットミルを用いて解砕し、負帯電性樹脂粒子を得た。負帯電性樹脂粒子は、軟化点が204℃、ガラス転移点が97℃、平均一次粒径が500nmであった。
【0126】
[実施例1]
混合装置100としてのノビルタNOB−300型(ホソカワミクロン社製)に2000gの母体粒子1及び負帯電性樹脂粒子100gを入れて、混合し、トナーを得た。このとき、軸状部材101を回転させる際の攪拌部材102の円軌道の直径を0.3m、クリアランスCを3mmとした。また、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事率が6.0kWとなるように、攪拌部材102の周速を10〜150m/秒の範囲で調整しながら、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事が0.5kWhとなるまで混合した。さらに、ケーシング103内の雰囲気の温度が15〜35℃となるように冷却した。
【0127】
なお、攪拌部材102の粒子に対する仕事率(又は仕事)とは、軸状部材101を回転させる電動モーターの、ケーシング103内に粒子を入れて軸状部材101を回転させた時の電力(又は電力量)から、ケーシング103内に粒子を入れない以外は同一の条件で軸状部材101を回転させた時の電力(又は電力量)を差し引いた値である。
【0128】
[実施例2]
ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に2000gの母体粒子1、負帯電性樹脂粒子100g及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れた以外は、実施例1と同様にして、混合し、トナーを得た。
【0129】
[実施例3]
ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に2000gの母体粒子1及び負帯電性樹脂粒子100gを入れ、参考例と同様にして、混合した。
【0130】
次に、ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを加えて、混合し、トナーを得た。このとき、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事率が0.6kWとなるように、攪拌部材102の周速を10〜150m/秒の範囲で調整しながら、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事が0.05kWhとなるまで混合した以外は、実施例1と同様にして、混合した。
【0131】
[実施例4]
ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に2000gの母体粒子1、負帯電性樹脂粒子100g及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れ、実施例1と同様にして、混合した。
【0132】
次に、ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを加えて、混合し、トナーを得た。このとき、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事率が0.6kWとなるように、攪拌部材102の周速を10〜150m/秒の範囲で調整しながら、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事が0.05kWhとなるまで混合した以外は、実施例1と同様にして、混合した。
【0133】
[実施例5]
ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に2000gの母体粒子1及び負帯電性樹脂粒子100gを入れ、実施例1と同様にして、混合した。
【0134】
次に、ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に混合した粒子及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れて、周速30m/秒で5分間混合し、トナーを得た。
【0135】
[実施例6]
ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に2000gの母体粒子1及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れ、周速30m/秒で5分間混合した。
【0136】
次に、ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に混合した粒子及び負帯電性樹脂粒子100gを入れた以外は、実施例1と同様にして、混合し、トナーを得た。
【0137】
[実施例7]
負帯電性樹脂粒子の代わりに、平均一次粒径が115nmのオクタデシルトリエトキシシラン(OTES)で表面処理されているコロイダルシリカCAB−O−SIL TG−C190(キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製)を用いた以外は、実施例5と同様にして、トナーを得た。
【0138】
[実施例8]
負帯電性樹脂粒子の代わりに、平均一次粒径が450nmのアナターゼ型酸化チタン粒子TA−300(富士チタン工業社製)を用いた以外は、実施例5と同様にして、トナーを得た。
【0139】
[実施例9]
負帯電性樹脂粒子の代わりに、平均一次粒径が200nmのアルミナ粒子TM−5D(大明化学社製)を用いた以外は、実施例5と同様にして、トナーを得た。
【0140】
[実施例10]
負帯電性樹脂粒子の添加量を184gとした以外は、実施例5と同様にして、トナーを得た。
【0141】
〔実施例11〕
母体粒子1の代わりに、母体粒子2を用いた以外は、実施例4と同様にして、トナーを得た。
【0142】
[比較例1]
ノビルタNOB−300(ホソカワミクロン社製)に2000gの母体粒子1及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れて、混合し、トナーを得た。このとき、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事率が0.6kWとなるように、攪拌部材102の周速を10〜150m/秒の範囲で調整しながら、攪拌部材102の粒子1kgに対する仕事が0.05kWhとなるまで混合した以外は、実施例1と同様にして、混合した。
【0143】
[比較例2]
ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に2000gの母体粒子1及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れて、周速30m/秒で5分間混合し、トナーを得た。
【0144】
[比較例3]
ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に2000gの母体粒子1及び負帯電性樹脂粒子100gを入れて、周速45m/秒で5分間混合し、トナーを得た。
【0145】
[比較例4]
ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に2000gの母体粒子1及び負帯電性樹脂粒子100gを入れて、周速45m/秒で5分間混合した。
【0146】
次に、ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを加えて、周速30m/秒で5分間混合し、トナーを得た。
【0147】
[比較例5]
ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に2000gの母体粒子1及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れ、周速30m/秒で5分間混合した。
【0148】
次に、ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に負帯電性樹脂粒子100gを加えて、周速45m/秒で5分間混合し、トナーを得た。
【0149】
[比較例6]
ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に2000gの母体粒子1、負帯電性樹脂粒子100g及び平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れ、周速45m/秒で5分間混合した。
【0150】
次に、ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス工業社製)に負帯電性樹脂粒子100gを加えて、周速45m/秒で5分間混合し、トナーを得た。
【0151】
[比較例7]
負帯電性樹脂粒子の添加量を14gとした以外は、実施例5と同様にして、トナーを得た。
【0152】
[比較例8]
負帯電性樹脂粒子の添加量を220gとした以外は、実施例5と同様にして、トナーを得た。
【0153】
表1に、トナーの製造条件を示す。
【0154】
【表1】

次に、実施例及び比較例のトナーを評価した。
【0155】
[SEM観察]
SEMを用いて、トナーの表面の粒子の存在状態を観察した。なお、粒子が脱離又は埋没していない場合を○、粒子の一部が脱離又は埋没している場合を△、粒子が脱離又は埋没している場合を×として、判定した。
【0156】
[凝集度]
目開きが22μm、45μm及び75μmのふるいを順次積み重ね、目開きが75μmのふるいにトナー2gを入れた後、パウダーテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて、振幅1mmで10秒間振動させ、トナーを自然落下させた。各々のふるい上に残存したトナーの質量から、式(1)〜(3)を用いて凝集度a+b+c[%]を算出した。
【0157】
a=(目開きが75μmのふるい上に残存したトナーの質量[g])/2×100・・・(1)
b=(目開きが45μmのふるい上に残存したトナーの質量[g])/2×(3/5)×100・・・(2)
c=(目開きが22μmのふるい上に残存したトナーの質量[g])/2×(1/5)×100・・・(3)
なお、凝集度は、10〜60%であればよく、小さい程よい。
【0158】
[耐久試験]
トナー4質量%と、シリコーン樹脂により被覆されている平均粒径が50μmの銅−亜鉛フェライト粒子96質量%からなる現像剤を作製した。
【0159】
imagio Neo 450(リコー社製)を用いて、A4サイズの用紙に45枚/分で印字した。このとき、0〜5000枚は、印字密度が5%で連続印字し、5001〜9000枚は、印字密度が0.5%で連続印字し、9001〜10000枚は、印字密度が20%で連続印字した。このモードを10001枚以降にも実施し、10万枚まで実施した。このとき、以下の評価を実施した。
【0160】
[帯電量]
現像剤6gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込み、ブローして帯電量を求めた。なお、帯電量は、−25〜−40μC/gの範囲が適正である。帯電量の絶対値が25μC/g未満であると、地肌汚れやトナー飛散が発生しやすくなり、40μC/gを超えると、画像濃度が低下する。
【0161】
[かぶり]
白紙画像を現像中に停止させ、現像後の感光体上の現像剤をテープ転写し、未転写のテープの画像濃度との差を、938スペクトロデンシトメーター(X−Rite社製)を用いて測定した。なお、この差が0.005未満である場合を◎、0.005以上0.010未満である場合を○、0.010以上0.030未満である場合を△、0.030以上である場合を×として、判定した。
【0162】
[スペント化率]
10万枚印字後の現像剤からブローオフ法によりトナーを除去し、残存したキャリアの質量W1[g]を測定した。次に、キャリアをトルエン中に入れ、洗浄し、乾燥した後の質量W2[g]を測定した。そして、式
(W1−W2)/W1×100
から、スペント化率を求めた。なお、スペント化率が0.01%未満である場合を◎、0.01%以上0.02%未満である場合を○、0.02%以上0.05%未満である場合を△、0.05%以上である場合を×として、判定した。
【0163】
[フィルミング]
現像ローラ又は感光体上のトナーのフィルミングの有無を観察した。なお、フィルミングがない場合を◎、筋上のフィルミングが見られる場合を○、全体的にフィルミングがある場合を×として、判定した。
【0164】
[画像濃度]
ベタ画像を出力した後、938スペクトロデンシトメーター(X−Rite社製)を用いて、画像濃度を測定した。なお、画像濃度が1.40以上である場合を◎、1.30以上1.40未満である場合を○、1.20以上1.30未満である場合を△、1.20未満である場合を×として、判定した。
【0165】
表2に、実施例及び比較例のトナーの評価結果を示す。
【0166】
【表2】

表2より、実施例1〜11のトナーは、耐久試験において、平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)が埋没せず、安定したトナー性能を発揮し、画像品質が良好であることがわかる。
【0167】
一方、比較例1のトナーは、平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)が埋没しており、耐久試験の5001〜9000枚における印字密度が0.5%の連続印字で機械的ストレスを受けることにより、埋没が著しく進行した。その結果、9001〜10000枚における印字密度が20%の連続印字で、帯電不良によりトナー飛散による機内汚染や補給かぶりが一気に発生したため、耐久試験を中止した。
【0168】
比較例2のトナーは、平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)の一部が埋没しており、耐久試験の50000枚を経過した後において、比較例1のトナーと同様の現象が発生し、耐久試験を中止した。
【0169】
比較例3〜6のトナーは、負帯電性樹脂粒子が脱離しており、耐久試験の初期において、負帯電性樹脂粒子が画像に付着したため、耐久試験を中止した。
【0170】
比較例7のトナーは、負帯電性樹脂粒子の添加量が少なく、耐久試験の35000枚を経過した後において、比較例1のトナーと同様な現象が発生したため、耐久試験を中止した。
【0171】
比較例8のトナーは、負帯電性樹脂粒子の添加量が多く、耐久試験の29000枚を経過した後において、比較例3〜6のトナーと同様な現象が発生したため、耐久試験を中止した。
【符号の説明】
【0172】
100 混合装置
101 軸状部材
102、102a、102b 攪拌部材
103 ケーシング
104 冷却ジャケット
A 回転軸
B 回転方向
C クリアランス
D 溝状部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0173】
【特許文献1】特開昭63−85756号公報
【特許文献2】特開昭63−139366号公報
【特許文献3】特開平10−10781号公報
【特許文献4】特開平10−95855号公報
【特許文献5】特開2005−270955号
【特許文献6】特開2004−77593号公報
【特許文献7】特開2009−69640号公報
【特許文献8】特開平9−230622号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である粒子を有するトナーを製造する方法であって、
回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記粒子を混合する工程を有し、
前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、
前記トナーは、前記母体粒子に対する前記粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記ケーシング内の雰囲気の温度は、前記結着樹脂のガラス転移点よりも50℃低い温度以上前記結着樹脂のガラス転移点よりも15℃低い温度以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記複数の攪拌部材は、第一の攪拌部材及び第二の攪拌部材を有し、
前記第一の攪拌部材は、前記軸状部材の回転軸に対して略平行な向きに前記粒子を送り、
前記第二の攪拌部材は、前記第一の撹拌部材が前記粒子を送る向きとは反対の向きに前記粒子を戻すことを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
互いに隣接する攪拌部材は、前記軸状部材の回転軸に対して略平行な方向において重なり合い、前記軸状部材が回転する方向において離間するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記ケーシングは円筒状であることを特徴する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記軸状部材の回転軸は、鉛直方向に対して略垂直であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
前記母体粒子は、離型剤をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
前記母体粒子は、ガラス転移点が40℃以上65℃以下であることを特徴する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
前記母体粒子は、体積平均粒径が3μm以上9μm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である第一の粒子と、平均一次粒径が10nm以上100nm未満である第二の粒子を有するトナーを製造する方法であって、
回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記第一の粒子と、前記第二の粒子を混合する工程を有し、
前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、
前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第一の粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項11】
結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である第一の粒子と、平均一次粒径が10nm以上100nm未満である第二の粒子を有するトナーを製造する方法であって、
前記母体粒子と、前記第二の粒子を混合する工程と、
回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、該混合された前記母体粒子及び前記第二の粒子と、前記第一の粒子を混合する工程を有し、
前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、
前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第一の粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項12】
前記混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記第二の粒子を混合することを特徴とする請求項11に記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
結着樹脂及び着色剤を含む母体粒子と、平均一次粒径が100nm以上1μm以下である第一の粒子と、平均一次粒径が10nm以上100nm未満である第二の粒子を有するトナーを製造する方法であって、
回転することが可能な軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられている複数の攪拌部材と、該複数の撹拌部材を覆うことが可能なケーシングを有する混合手段を用いて、前記母体粒子と、前記第一の粒子を混合する工程と、
該混合された前記母体粒子及び前記第一の粒子と、前記第二の粒子を混合する工程を有し、
前記ケーシングは、内周面の前記軸状部材の回転軸に対して垂直な断面が、前記複数の撹拌部材を覆っている状態において、前記軸状部材の回転軸との間の距離が略一定である円状であると共に、外周面の少なくとも一部に冷却ジャケットが設けられており、
前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第一の粒子の質量比が1.5%以上10%以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項14】
前記混合手段を用いて、前記混合された前記母体粒子及び前記第一の粒子と、前記第二の粒子を混合することを特徴とする請求項13に記載のトナーの製造方法。
【請求項15】
前記トナーは、前記母体粒子に対する前記第二の粒子の質量比が0.1%以上5%以下であることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のトナーの製造方法により製造されていることを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63636(P2012−63636A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208586(P2010−208586)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】