説明

トナーの製造方法

【課題】複数吐出孔の利用に伴うトナーの製造で、メンテナンス等のためにトナーの製造を停止したときのトナー組成液の固化を防止して、粒子形成の生産効率を向上させるトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液10を、複数の吐出孔11から振動させながら周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、放出されたトナー組成液11の液滴31を、固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを有するトナーの製造方法において、前記周期的液滴化工程で液滴化して放出させることを停止した時に、吐出孔11における液表面101を振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真における静電荷像を現像する現像剤として使用されるトナーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真記録方法に基づく複写機、プリンター、ファックス、およびそれらの複合機等の画像形成装置に使用される電子写真用トナーの製法としては粉砕法のみであった。しかし、近年、重合法と呼ばれる水系媒体中で形成される方法が広く行なわれ、粉砕法を凌駕する勢いである(例えば特許文献1参照)。なお、重合法によるトナーは「重合トナー」、または国によっては「ケミカルトナー」と呼ばれるが、重合法には必ずしも重合過程を伴わない製造方法も便宜上含んでいる。現在実用化されている重合方法は、懸濁重合、乳化凝集、ポリマー懸濁(ポリマー凝集)、エステル伸長の各方法である。
【0003】
粉砕法に比べ、重合法は総じて、小粒径トナーが得易い、粒径分布がシャープである、形状が球形に近い等の利点がある。しかし、その反面、通常、水系媒体中でトナー粒子から脱溶剤するため、脱溶剤効率が悪く、また重合過程に長時間を必要とする。さらに、固化終了後、トナー粒子と水とを分離し、その後、洗浄乾燥を繰り返す必要が有り、多くの時間と、多量の水、多くのエネルギーを必要とする。
【0004】
これに代わるトナーの製造方法として、水を使わずにトナー組成液を気相中で液滴化した後に固化する、いわゆるスプレードライ法も提案されているが、粒度分布が広いといった欠点がある。
トナー組成液を気相中で液滴化し粒度分布を狭くする試みとして、圧電パルスを利用して微小液滴を形成し、さらに、これを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献2参照)。
または、吐出孔内の熱膨張を利用し、やはり微小液滴を形成し、これを乾燥固化してトナー化する工法が提案されている(特許文献3参照)。または、音響レンズを利用し、同様の処理をする方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらのトナーの製造方法では、一つの吐出孔から単位時間あたりに吐出できる液滴数が少なく、生産性が悪いという問題があると同時に、液滴同士の合一による粒度分布の広がりが避けられず、単一分散性という点においても満足のいくものではなかった。
そこで、高周波数の振動と複数吐出孔を利用して微小液滴を形成することで生産性を向上させることが提案されている。
しかし、高周波数で複数吐出孔から継続的に安定した微小液滴を放出させることは困難である。染み出した滴の広がり等で吐出孔が影響しあい、正常に吐出する吐出孔の数が時間と共に減少し、生産効率が下がることが確認されている。
さらに、メンテナンス等のためにトナーの製造を停止すると、トナー組成液が固化して、塞がれる吐出孔が出てくるために、メンテナンスをしたにもかかわらず再稼働時に生産効率が下がることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、複数吐出孔の利用に伴うトナーの製造で、メンテナンス等のためにトナーの製造を停止したときのトナー組成液の固化を防止して、粒子形成の生産効率を向上させるトナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明のトナーの製造方法は、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、複数の吐出孔から振動させながら周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、放出されたトナー組成液の液滴を、固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを有するトナーの製造方法において、前記周期的液滴化工程で液滴化して放出させることを停止した時に、吐出孔における液表面を振動させることを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記液表面を振動させる手段が、吐出ヘッドに液滴を放出させない程度の継続的な低振動を与えることを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記振動が、振動振幅を低くした液滴放出時と同周波数の振動であることを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記低振動が、吐出時の振動(共振)から周波数を変更した振動であることを特徴とする。
また、本発明のトナーの製造方法は、さらに、前記周期的液滴化工程は、液柱共鳴吐出法を採用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記課題を解決する手段である本発明によって、以下のような特有の効果を奏する。
本発明のトナーの製造方法では、トナー組成液を複数の吐出孔から吐出させ、乾燥してトナーを得ることで、メンテナンス等のためにトナーの製造を停止したときに吐出孔が乾燥して塞がることを防止することで、粒子形成によるトナーの製造の生産効率を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置の構成を示す図である。
【図2】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの下側の構成を示す図である。
【図4】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置におけるステップ型のホーン型振動子の構成を示す図である。
【図5】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置におけるエクスポネンシャル型のホーン型振動子の例を説明する図である。
【図6】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置におけるコニカル型のホーン型振動子の例を説明する図である。
【図7】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの他の構成を示す図である。
【図8】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの他の構成を示す図である。
【図9】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの他の構成を示す図である。
【図10】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットを複数配列した構成を示す図である。
【図11】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの断面の構成を示す図である。
【図12】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの下側の構成を示す図である。
【図13】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットにおける液滴化手段を説明する図である。
【図14】従来の液滴化手段を説明する図である。
【図15】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の振動を説明する図である。
【図16】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の基本振動モードにおける振動可能領域と薄膜の振動変位との関係を示す図である。
【図17】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の2次振動モードにおける振動可能領域と薄膜の振動変位との関係を示す図である。
【図18】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の3次振動モードにおける振動可能領域と薄膜の振動変位との関係を示す図である。
【図19】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットで、形状の異なる薄膜を示す図である。
【図20】本発明の一実施の形態に係るトナー製造装置の全体構成を示す断面図である。
【図21】図20の液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
【図22】図20の液滴形成ユニットの構成を示すA−A´線断面図である。
【図23】N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図24】液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図25】吐出孔におけるトナー組成液の状態を示す図であり、(a)は吐出孔から吐出したときのトナー組成液の状態を示し、(b)は吐出停止時における吐出孔内のトナー組成液の状態を示している。
【図26】本発明のトナーの製造方法を適用する他のトナー製造装置の構成を示す図である。
【図27】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットを示す図で、(a)は液滴噴射ユニット2の概略断面説明図であり、(b)はより詳細に説明するための組立図であり、(c)は液滴噴射ユニットによる液滴形成の説明図である。
【図28】本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における吐出孔の形状を示す図である。
【図29】本発明のトナーの製造方法を適用する液柱共鳴吐出方式のトナーの製造装置における吐出孔の断面形状を2段型とする方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0010】
(トナー製造方法)
従来のトナー製造方法である粉砕法と、本発明のトナー製造方法である噴霧法及び振動噴射法について説明する。
<粉砕法>
従来から行われている一般的なトナーの製造方法であり、トナー組成物を二本ロールや二軸押し出し機などにより溶融混練し、冷却後、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じてヘンシェルミキサーなどで流動化剤などの外添剤の混合を行う方法である。粗粉砕ではロートプレックスやパルペライザー、微粉砕ではジェットミルやターボミル、分級ではエルボジェットや各種の風力分級装置等の公知の製造装置を用いることができる。
【0011】
<噴霧法>
液体を加圧して吐出孔から噴霧する一流体ノズル(加圧ノズル)噴霧機や液体と圧縮気体を混合して噴霧する多流体スプレーノズル噴霧機、回転する円盤を用いて液体を遠心力により液滴化する回転円盤型噴霧機等を用いて、トナー組成液を気相中で液滴化する方法である。噴霧と乾燥を同時に行うスプレードライシステムとして市販の装置を用いることができるが、十分な乾燥ができない場合は流動床乾燥等の二次乾燥を行い、必要に応じてヘンシェルミキサーなどで流動化剤などの外添剤の混合を行う方法である。
【0012】
<振動噴射法>
同じ開口径の複数の吐出孔を有する薄膜を機械的に振動させることによって、該吐出孔からトナー組成液を周期的に放出することにより均一粒径の液滴を生成し、乾燥してトナー粒子を得る方法である。機械的振動手段は、吐出孔を有する膜に対して垂直方向に振動すればどのような配置でもよいが、本発明においては次の二通りの方式が好ましく用いられる。
一つは、複数の吐出孔を有する薄膜に対して平行な振動面を有し、垂直方向に縦振動する機械的手段(機械的縦振動手段)を用いる方式であり、他の一つは、複数の吐出孔を有する薄膜の吐出孔を設けた領域の周囲に円環状に形成された機械的振動手段(円環状機械的振動手段)を設ける方式である。
以下、各方式について説明する。
【0013】
(機械的縦振動手段)
まず、機械的縦振動手段を設けたトナー製造装置の一例について、図1に示す模式的構成図を参照して説明する。
図1は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置の構成を示す図である。
トナー製造装置1は、トナー組成液10を同じ開口径の複数の吐出孔11から周期的に放出し、気相中で液滴化する周期的液滴化工程における液滴化手段としての液滴噴射ユニット2と、この液滴噴射ユニット2が上方に配置され、液滴噴射ユニット2から放出される液滴化されたトナー組成液10の液滴を固化してトナー粒子Tを形成する粒子形成工程における粒子化手段としての粒子形成部(溶媒除去部)3と、粒子形成部3で形成されたトナー粒子Tを捕集するトナー捕集部4と、トナー捕集部4で捕集されたトナー粒子Tがチューブ5を介して移送され、移送されたトナー粒子Tを貯留するトナー貯留手段としてのトナー貯留部6と、トナー組成液10を収容する原料収容部7と、この原料収容部7内から液滴噴射ユニット2に対してトナー組成液10を送液する配管(送液管)8と、稼動時などにトナー組成液10を圧送供給するためのポンプ9とを備えている。
また、原料収容部7から送出されるトナー組成液10は、液滴噴射ユニット2による液滴化現象により自給的に液滴噴射ユニット2に供給されるが、装置稼働時等には上述したように補助的にポンプ9を用いて液供給を行う構成としている。図1において、31は液滴、35は乾燥気体、41はトナー捕集部4のテーパ面、42は気流(渦流)、43はトナー粒子の電荷を中和する除電手段である。
【0014】
次に、液滴噴射ユニット2について図2、3に基づいて説明する。
図2は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの構成を示す図である。
図3は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの下側の構成を示す図である。
この液滴噴射ユニット2は、複数の吐出孔(以下で、「吐出口」又は「ノズル」と記すことがある。)11が形成された薄膜12と、この薄膜12を振動させる機械的振動手段(以下「振動手段」という)13と、薄膜12と振動手段13との間にトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)14を形成する流路部材15とを備えている。
前記複数の吐出孔11を有する薄膜12は、振動手段13の振動面131に対して平行に設置されており、薄膜12の一部がハンダまたはトナー組成液に溶解しない樹脂結着材料によって流路部材15に接合固定されており、振動手段13の振動方向とは実質的に垂直な位置関係となる。
なお、この吐出孔の形状にについては後述する。
この振動手段13の振動発生手段21の上下面に電圧信号が付与されるように、通信手段24が設けられており、駆動信号発生源23からの信号を機械的振動に変換することができる。電気信号を与える通信手段としては、表面を絶縁被覆されたリード線が適している。また、振動手段13は後述する各種ホーン型振動子、ボルト締めランジュバン型振動子など、振動振幅の大きな素子を用いることが、効率的かつ安定なトナー生産には好適である。
【0015】
振動手段13は、振動を発生する振動発生手段21と、この振動発生手段21で発生した振動を増幅する振動増幅手段22とで構成され、駆動回路(駆動信号発生源)23から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が振動発生手段21の電極21a、21b間に印加されることによって、振動発生手段21に振動が励起され、この振動が振動増幅手段22で増幅され、薄膜12と平行に配置される振動面131が周期的に振動し、この振動面131の振動による周期的な圧力によって薄膜12が所要周波数で振動する。
この振動手段13としては、薄膜12に対して確実な縦振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができるが、薄膜12を振動させることから、振動発生手段21にはバイモルフ型のたわみ振動の励起される圧電体が好ましい。振動発生手段21である圧電体は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。振動発生手段21として圧電体を用いると、この圧電体に電圧を印加することにより、たわみ振動が励起され、薄膜12を振動させることが可能となる。
【0016】
振動発生手段21を構成する圧電体としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、これらは一般に変位量が小さいため、積層して使用されることが多い。圧電体としては、この他に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などが挙げられる。
振動手段13は、吐出孔11を有する薄膜12に対して垂直方向の振動を与えるものであれば、どのような配置でもよいが、振動面131と薄膜12とは平行に配置される。
図2に示す例では振動発生手段21と振動増幅手段22で構成される振動手段13としてホーン型振動子を用いており、振動増幅手段22としてホーンを用いている。ホーン型振動子は、圧電素子などの振動発生手段21の振幅を、ホーンなどの振動増幅手段22で増幅することができるため、機械的振動を発生する振動発生手段21自体は小さな振動でよく、機械的負荷が軽減するために生産装置としての長寿命化につながる。
【0017】
図4は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置におけるステップ型のホーン型振動子の構成を示す図である。
図5は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置におけるエクスポネンシャル型のホーン型振動子の構成を示す図である。
図6は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置におけるコニカル型のホーン型振動子の構成を示す図である。
振動手段13としてのホーン型振動子としては、公知の代表的なホーン形状でよく、例えば図4に示すようなステップ型のホーン型振動子、図5に示すようなエクスポネンシャル型のホーン型振動子、図6に示すようなコニカル型のホーン型振動子などを挙げることができる。
これらのホーン型振動子は、図2に示すように、ホーン(振動増幅手段22)の面積の大きい面に圧電体(振動発生手段21)が配置され、圧電体(振動発生手段21)は縦振動を利用し、ホーン(振動増幅手段22)の効率的な振動を誘起し、ホーン(振動増幅手段22)に面積の小さい面を振動面131として、この振動面131が最大振動面となるように設計されている。圧電体(振動発生手段21)の上方と下方には通信手段(リード線)24が配置され、駆動回路23より交流電圧信号を与える。これらホーン振動子の最大振動面は、振動面131となるように形状を設計されるものである。
また、振動手段13としては、特に高強度なボルト締めランジュバン型振動子を用いることもできる。このボルト締めランジュバン型振動子は圧電セラミックスが機械的に結合されており、高振幅励振時に破損することがない。
【0018】
次に、図1に示す貯留部14、振動手段13及び薄膜12の構成を、図2の概略図を用いて詳細に説明する。
貯留部14には、液供給チューブ18が少なくとも1箇所設けられており、一部断面図に示されるように、流路を通じて貯留部14にトナー組成液10が導入される。また、必要に応じて気泡排出チューブ19を設けることも可能である。流路部材15に取り付けた図示しない支持部材によって液滴噴射ユニット2が粒子形成部3の天面部に設置保持されている。なお、図1に示すトナー製造装置では、粒子形成部3の天面部に液滴噴射ユニット2を配置している例で説明しているが、粒子形成部3となる乾燥部側面壁又は底部に液滴噴射ユニット2を設置する構成とすることもできる。
【0019】
機械的振動を発生する振動手段13の大きさは、発振振動数の減少に伴って大きくなることが一般的であり、必要な周波数に応じて、適宜振動手段に直接穴あけ加工を施し貯留部を設けることができる。また、貯留部14全体を効率的に振動させることも可能である。
この場合、振動面とは、前記複数の吐出孔を有する薄膜が貼り合わされた面と定義される。
このような構成の液滴噴射ユニットの異なる例について図7及び図8を参照して説明する。
図7は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの他の構成を示す図である。
図7に示す液滴噴射ユニット2は、振動手段として、振動発生部としての圧電体81及び振動増幅部としてのホーン82で構成されるホーン型振動子13を用いて、ホーン82の一部に貯留部(流路)14を形成したものである。この液滴噴射ユニット2は、ホーン型振動子13のホーン82に一体形成した固定部(フランジ部)83によって、図1に示す粒子形成部3(乾燥手段)の壁面に固定されていることが好ましい、振動の損失を防ぐ観点から、図示しない弾性体を用いて固定してもよい。図7において、131は振動面、11は吐出孔、12は薄膜、18は液供給チューブ、19は気泡排出チューブである。
【0020】
図8は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの他の構成を示す図である。
図8に示す液滴噴射ユニット2は、振動発生部としての圧電体211、212及びホーン221、222がボルトで機械的に強固に固定されて構成されるボルト締めランジュバン型振動子13を振動手段として用いて、ホーン221に貯留部(流路)14を形成したものである。周波数条件により、ホーン221が大きくなる場合もあり、図示のようにホーン221の一部に、液供給チューブ18(流体導入/排出路)及び貯留部14を加工し、複数の薄膜を有する金属薄膜を貼り付けることができる。図8において、131は振動面、11は吐出孔、12は薄膜、19は気泡排出チューブである。
なお、図1では、液滴噴射ユニット2が1個だけ粒子形成部3に取り付けられている例を示しているが、複数個の液滴噴射ユニット2を粒子形成部3(乾燥塔)上部に並列にすることが、生産性向上の観点から好ましい。液滴噴射ユニットの個数は100〜1000個の範囲であることが、制御性の観点から好ましい。この場合、液滴噴射ユニット2の各貯留部14には配管8を介して原料収容部(共通液溜め)7に通じ、トナー組成液10が供給される構成とする。トナー組成液10は、液滴化に伴って自給的に供給される構成とすることもできるし、また、装置稼働時等に、補助的にポンプ9を用いて液供給を行う構成とすることもできる。
【0021】
液滴噴射ユニットの他の例について図9を参照して説明する。
図9は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの他の構成を示す図である。
図9に示す液滴噴射ユニット2は、振動手段としてホーン型振動子13を用いている。このホーン型振動子13の周囲を囲んでトナー組成液10を供給する流路部材15を配置し、ホーン型振動子13のホーン221に、薄膜12と対向する部分に貯留部14を形成している。さらに、流路部材15の周囲に所要の間隔を置いて気流35を流す気流路37を形成する気流路形成部材36を配置している。なお、図示を簡略化するため、薄膜12の吐出孔11は1個で示しているが、上述したように複数個設けられている。図9において、18は液供給チューブ、211は圧電体である。
図10は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットを複数配列した構成を示す図である。
また、図10に示すように、複数、例えば制御性の観点からは100〜1000個の液滴噴射ユニット2を、図1に示す粒子形成部3を構成する乾燥塔の上部に並べて配置する。これにより、より生産性の向上を図ることができる。
【0022】
(円環状機械的振動手段)
リング式の液滴噴射ユニット2について図11ないし図13を参照して説明する。
なお、図11は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの断面の構成を示す図である。
図12は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの下側の構成を示す図である。
図13は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットにおける液滴化手段を説明する図である。
この液滴噴射ユニット2は、図11に示すように、少なくともトナー組成液10を液滴化して放出させる液滴化手段16と、この液滴化手段16にトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)14を形成した流路部材15とを備えている。
液滴化手段16は、複数の吐出孔(吐出口)11が形成された薄膜12と、この薄膜12を振動させる円環状の振動発生手段(電気機械変換手段)17とで構成されている。ここで、薄膜12は、最外周部(図12の斜線を施して示す領域)をハンダ又はトナー組成液に溶解しない樹脂結着材料によって流路部材15に接合固定している。
振動発生手段17は、図13に示す、薄膜12の変形可能領域161(流路部材15に固定されていない領域)内の吐出孔11を設けた領域の周囲に配されている。図11に示すように、この振動発生手段17には、通信手段(リード線)24を通じて駆動回路(駆動信号発生源)23から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、例えば撓み振動を発生する。図11において、20は支持部材、18は液供給チューブ、19は気泡排出チューブである。
【0023】
液滴化手段16は、貯留部14に臨む複数の吐出孔11を有する薄膜12の変形可能領域161内の吐出孔11を設けた領域の周囲に円環状の振動発生手段17が配されていることによって、例えば図14に示す比較例構成のように振動発生手段17が薄膜12の周囲を保持している構成に比べて、相対的に薄膜12の変位量が大きくなり、この大きな変位量が得られる比較的大面積(φ1mm以上)の領域に複数の吐出孔11を配置することができ、これら複数の吐出孔11より一度に多くの液滴を安定的に形成して放出することができるようになる。
【0024】
図14は、従来の液滴化手段を説明する図である。
(液滴形成メカニズム)
次に、この液滴化手段としての液滴噴射ユニット2による液滴形成のメカニズムについて説明する。
上述したように液滴噴射ユニット2は、貯留部14に臨む複数の吐出孔11を有する薄膜12に、機械的振動手段である振動手段13によって発生した振動を伝播させて、薄膜12を周期的に振動させ、比較的大面積(φ1mm以上)の領域に複数の吐出孔11を配置し、それら複数の吐出孔11より液滴を周期的に、安定に形成して放出することができるようになる。
図15は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の振動を説明する図である。
図16は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の基本振動モードにおける振動可能領域と薄膜の振動変位との関係を示す図である。
図15(a)、(b)に示すように、単純円形の薄膜12の周辺部121を固定した場合、基本振動は周辺が節になり、図16に示すように、薄膜12の中心Oで変位ΔLが最大(ΔLmax)となる断面形状となり、振動方向に周期的に上下振動する。
図17は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の2次振動モードにおける振動可能領域と薄膜の振動変位との関係を示す図である。
図18は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットの薄膜の3次振動モードにおける振動可能領域と薄膜の振動変位との関係を示す図である。
また、図17及び図18に示すような、より高次のモードが存在することが知られている。これらの振動モードは、円形の薄膜12内に、同心円状に1ないし複数の節を持ち、実質的に軸対称な変形形状である。
図19は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットで、形状の異なる薄膜を示す図である。
また、図19に示すように、薄膜12の中心部を凸形状122とすることで液滴31の進行方向を制御し、かつ振動振幅量を調整することが可能である。
【0025】
円形薄膜12の振動により、円形の薄膜各所に設けられた吐出孔11の近傍の液体には、薄膜12の振動速度Vに比例した音圧Pacが発生する。音圧は、媒質(トナー組成液10)の放射インピーダンスZの反作用として生じることが知られており、音圧は、放射インピーダンスと膜振動速度Vmの積で下記の方程式(1)を用いて表される。
ac(r,t)=Z・V(r,t) (1)
薄膜12の振動速度Vは時間とともに周期的に変動しているため時間(t)の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形など、様々な周期変動を形成することが可能である。また、前述のとおり、薄膜12の各所で振動方向の振動変位は異なっており、Vは、薄膜12上の位置座標の関数でもある。本発明で用いられる薄膜12の振動形態は、上述のとおり中心軸に対称である。したがって、実質的には半径(r)座標の関数となる。
以上のように、分布を持った薄膜12の振動変位速度に対して、それに比例する音圧が発生し、音圧の周期的変化に対応してトナー組成液10が、外部に吐出される。
外部へ周期的に排出されたトナー組成液10は、トナー組成液10の液相と外部の空気である気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生する。
【0026】
液滴化を可能とする薄膜12の振動周波数としては20kHz〜2.0MHzの領域が用いられ、50kHz〜500kHzの範囲がより好適に用いられる。20kHz以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液10中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進される。
さらには、音圧の変位量が、10kPa以上となることによって、微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
ここで、形成される液滴31の直径は、薄膜12の吐出孔11近傍における振動変位が大きいほど大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、または液滴化しない。このような、各吐出孔11の部位における液滴サイズのばらつきを低減するためには、吐出孔11の配置を、膜振動変位の最適な位置に規定することが必要である。
【0027】
本発明のトナーの製造方法では、図16ないし18で説明されるように、機械的振動手段13により発生する吐出孔11の近傍における薄膜12の振動方向変位ΔLの最大値ΔLmaxと最小値でΔLminの比R(=ΔLmax/ΔLmin)が、2.0以内である部位に吐出孔11が配置することにより、液滴サイズのばらつきを、高画質な画像を提供することのできるトナー微粒子として必要な粒度分布にすることができる。
トナー組成液10の条件を変更し、粘度20mPa・s以下、表面張力20〜75mN/mの領域においてサテライトの発生開始領域が同様であったことから、音圧の変位量が、500kPa以下であることが必要となる。更に好適には100kPa以下である。
【0028】
(複数の吐出孔を有する薄膜)
吐出孔11を有する薄膜12は、先にも述べたように、トナー組成物10の溶解ないし分散液を、吐出させて液滴とする部材である。この薄膜12の材質、吐出孔11の形状は、後述する。
【0029】
(液柱共鳴方式)
図20は、本発明の液柱共鳴を用いたトナー製造装置の全体構成を示す断面図である。
図21は、図20の液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図22は、図20の液滴形成ユニットの構成を示すA−A´線断面図である。
図20に示す本実施の形態のトナー製造装置1は、主に、液滴形成ユニット10及び乾燥捕集ユニット30を含んで構成されている。液滴形成ユニット10は、吐出孔によって外部と連通する液噴射領域を有する液室であって液柱共鳴定在波が発生する液柱共鳴液室内のトナー組成液を液滴として吐出孔から噴射する液滴化手段である液滴吐出ヘッド11を複数配列して構成されている。各液滴吐出ヘッド11の両側には液滴吐出ヘッド11から吐出したトナー組成液の液滴が乾燥捕集ユニット30側に流出されるように図示していない気流発生手段によって発生する気流が通る気流通路12が設けられている。また、液滴形成ユニット10は、トナー原料であるトナー組成液14を収容する原料収容器13と、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を液供給管16を通して液滴吐出ヘッド11内の液共通供給路17に供給し、更に液戻り管22を通って原料収容器13に戻すために液供給管16内のトナー組成液14を圧送する液循環ポンプ15とを含んで構成されている。更に、液滴吐出ヘッド11は、図21に示すように、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を含んで構成されている。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面にトナー液滴21を吐出する吐出孔19と、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有している。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続されている。
【0030】
また、図20に示す乾燥捕集ユニット30は、チャンバ31及びトナー捕集部32を含んで構成されている。チャンバ31内では、図示していない気流発生手段によって発生する気流と下降気流33が合流した大きな下降気流が形成されている。液滴噴射ユニット10の液滴吐出ヘッド11から噴射されたトナー液滴21は、重力によってのみではなく、下降気流33によっても下方に向けて搬送されるため、噴射されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。これにより、トナー液滴21を連続的に噴射したときに、前に噴射されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速し、後に噴射されたトナー液滴21が前に噴射されたトナー液滴21に追い付くことで、トナー液滴21同士が合着して一体となり、トナー液滴21の粒径が大きくなることを防止できる。なお、気流発生手段として、上流部分に送風機を設けて加圧する方法と、トナー捕集部32より吸引して減圧する方法のいずれを採用することもできる。また、トナー捕集部32には、鉛直方向に平行な軸周りに回転するような回転気流を発生させる回転気流発生装置(図示せず)が配置されている。更に、トナー捕集部32には、チャンバ31と連通するトナー捕集チューブ34を通った乾燥・固化されたトナー粒子を貯留するトナー貯留部35を有している。
【0031】
次に、本実施の形態のトナー製造装置におけるトナー製造工程について概説する。
図20に示す原料収容器13に収容されているトナー組成液14は、当該トナー組成液14を循環させるための液循環ポンプ15によって液供給管16を通って、図22に示す液滴形成ユニット10の液共通供給路17内に流入し、図21に示す液滴吐出ヘッド11の液柱共鳴液室18に供給される。そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19からトナー液滴21が吐出される。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。なお、液共通供給路17を通過したトナー組成液14は液戻り管22を流れて原料収容器13に戻される。トナー液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻り、液供給管16及び液戻り管22には装置内を循環するトナー組成液14の流れが再び形成された状態となる。一方、液滴噴射ユニット10の液滴吐出ヘッド11から噴射されたトナー液滴21は、図1に示すように、重力によってのみではなく、図示していない気流発生手段によって発生する気流が気流通路12を通り形成される下降気流33によって下方に向けて搬送される。次に、トナー捕集部32における図示していない回転気流発生装置が発生させる回転気流と下降気流33とによって、トナー捕集部32を構成する円錐状内壁面に沿って螺旋気流が形成され、トナー粒子はその螺旋気流にのって層流状態で乾燥、固化される。乾燥、固化されたトナー粒子はトナー捕集チューブ34を通ってトナー貯留部35に収納される。
なお、液滴吐出ヘッド11における液柱共鳴液室18は、金属やセラミックス、シリコンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図21に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、図22に示す液柱共鳴液室18の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、液柱共鳴液室18の長さLの2分の1より小さいことが望ましい。更に、液柱共鳴液室18は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴形成ユニット10に対して複数配置されているほうが好ましい。その範囲に限定はないが、100〜2000個の液柱共鳴液室18が備えられた1つの液滴形成ユニットであれば操作性と生産性が両立でき、最も好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通している。
【0032】
また、液滴吐出ヘッド11における振動発生手段20は所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板に貼りあわせた形態が望ましい。弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。また、ブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が望ましい。吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することは、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなるために好ましい。また、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
次に、本発明のトナー製造装置における液滴形成ユニットによる液滴形成のメカニズムについて説明する。
先ず、図21の液滴吐出ヘッド11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動発生手段20から媒質であるトナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式1)
の関係にある。
また、図21の液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、更に液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1は連通口の高さh2の約2倍あり当該端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(但し、Nは偶数)
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも上記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式2のNが奇数で表現される。
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式1と上記式2より、
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
と導かれる。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0033】
図23は、N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す図である。本来は疎密波(縦波)であるが、図23のように表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図23の(a)からわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図23のような形態の共鳴定在波を生じるが、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、上記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。
なお、図20及び図21に示す本実施の形態の液滴形成ユニットの液滴吐出ヘッドにおける液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図23の(b)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
【0034】
また、吐出孔の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離Leの比がLe/L>0.6であることが好ましい。
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図21の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出孔19において連続的に液滴吐出が発生するのである。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出孔19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。また、吐出孔19は1つの液柱共鳴液室18に1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。また、複数の吐出孔19を開孔する場合、吐出孔間のピッチは20[μm]以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましい。吐出孔間のピッチが20[μm]より大きい場合、隣あう吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながる。
【0035】
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図24を用いて説明する。
なお、図24は、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。図24では、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、図24において、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図21に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図21に示す高さh1)が約2倍以上であるため、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
図24(a)は液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。
また、図24(b)は液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくる。これらの図24(a),(b)に示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図24(c)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
そして、図24(d)に示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図24(e)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図24(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されていることから、当該腹の周期に応じてトナー液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0036】
(初期安定性)
どの方式を採用しても継続的に液滴31を吐出孔11から吐出させていると、時間が経過すると正常に吐出する吐出孔11の数が減少する。何らかの原因により染み出し、液滴が斜めに飛ぶこと、不安定な吐出、吐出停止が起きることがある。
正常に吐出しなくなった吐出孔11は、周囲の吐出孔11の吐出状態に悪影響を与えることがある。例えば、染み出した場合、染み出した滴が成長し周辺の吐出孔を巻き込み、その吐出を停止させる傾向がある。不安定に吐出する場合、液滴31の大きさの均一性が失われ、トナー粒度分布で分布が広くなることがある。また、斜めに吐出し方向性を失った場合、隣の液滴との合一の確率が高まり、それもトナー粒度分布で分布が広くなることに現れる。加えて、斜め吐出や、不安定吐出の異常吐出は、染み出しと吐出停止を招く傾向にあり、染み出しが周辺の吐出孔11へ広がることで、吐出孔11の更なる吐出低下を起こし、トナー製造装置の操業効率が低下し、トナーの生産性を低下させることとなる。
以上の現象を完全に除去することは困難であるが、減らすことは可能である。トナー組成液10のフィルタリングは吐出孔11の目詰まりに、吐出孔11が配置されているプレートの表面処理は染み出しの広がりに効果があり、以前から採用されている。染み出し、異常吐出は吐出開始時の吐出孔11の状況・状態にも依存することがわかった。従って、吐出開始時の吐出孔11の状態を改善することで安定性をさらに向上させることができる。
吐出させるための振動を入れる前の、吐出孔11の内部が液で満たされて吐出が停止している間は、乾燥により吐出孔11の閉塞が起きる。トナー組成液10に揮発性の高い溶剤を利用している場合が特にそうである。吐出孔11が完全に閉塞されている場合は振動を入れたときにも吐出はしない。部分閉塞の場合、振動を入れると液が染み出し周辺の吐出孔11まで広がるか、斜めに飛んだり、不安定に飛んだりし、異常な吐出をする。異常な吐出は染み出しを招く傾向にあり、それが広がると周辺の吐出孔11を巻き込み、液滴噴射ユニット2の全体としての生産性を低下させる。
周期的液滴化工程でメンテナンス等により液滴化して放出させることを停止した時に、この吐出停止時の乾燥による吐出孔11の閉塞を抑制する手段として、吐出孔11における液面(メニスカス)を動かすことが有効である。トナー組成液10を混ぜることと同じ効果があり、表面で革張り、乾燥固化を防ぐか遅らせることができる。
【0037】
図25は、吐出孔におけるトナー組成液の状態を示す図であり、(a)は吐出孔から吐出したときのトナー組成液の状態を示し、(b)は吐出停止時における吐出孔内のトナー組成液の状態を示している。
メニスカスを動かす方法は幾つか考えられる。
次ぎの2方法に限定されないが、例えば、吐出時に使う振動の振幅を低くして継続的に振動手段13を動かすか、又は吐出時に使う振動の周波数を変更して継続的に振動手段13を動かすことでメニスカスを運動させることができる。
振幅を低くして稼動させる場合は、液滴31が吐出されなければ十分なので、発信機等振動源の電圧を下げればよい。液滴31が吐出される最低振幅は粘度等の液特性に依存するので、吐出させるトナー組成液10によって吐出停止時の稼動に設定する振幅は異なる。周波数を変更して、振動手段13を稼動させる場合も振動源で周波数を変えればよい。したがって、(a)に示すように、通常共振周波数で液滴を吐出させている場合は、(b)に示すように、周波数を変更することで振幅が下がるので、十分に下がっていれば液滴31は吐出されないが、(b)の矢印で示すように、この矢印の両端の間でメニスカスを動かすことができる。
なお、周波数特性は、トナー組成液10と振動手段13の構造とによって異なるので、ふさわしい設定周波数もそれに応じて変わる。
これによって、吐出孔11の閉塞を抑制し、初期吐出の状態を改善させ、吐出安定性を向上させ、生産性を向上させることができる。
【0038】
(捕集)
特徴的な噴射によるトナー製造方法について上記で説明してきたが、説明を簡便にするために捕集に関する機構を省略している。捕集に関してはどの噴射方法においても同様の対処となるため、代表として円環状機械的振動手段での説明を行う。
図26は、本発明のトナーの製造方法を適用する他のトナー製造装置の構成を示す図である。
また、このときに、図27は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における液滴噴射ユニットを示す図で、(a)は液滴噴射ユニット2の概略断面説明図であり、(b)はより詳細に説明するための組立図であり、(c)は液滴噴射ユニットによる液滴形成の説明図である。
この液滴噴射ユニット2は、複数の吐出孔(吐出口)11が形成された薄膜12と、振動手段13と、薄膜12と振動手段13との間に、少なくとも樹脂、着色剤、及び特定のフェノール系樹脂を含有するトナー組成液10を供給する貯留部(液流路)14を形成する貯留部構成部材15とを備えている。振動手段13と貯留部14の壁との間には、振動を伝達させないための、振動分離部材26により位置を固定されている構成が望ましいが、振動手段13の、振動振幅の小さい節の部分27を介して壁に直接固定する形態でも構わない。液貯留部14には、液供給及び液循環に用いる配管8を通じてトナー組成液10が供給される。
振動手段13、振動発生手段21、振動増幅手段22としては、前述の機械的縦振動手段を用いる膜振動方式の説明において例示したものを同様に使用することができる。
【0039】
貯留部14の隔壁は、金属やセラミックス、プラスチックなど一般的な材料のうち、トナー組成液10に溶解しない、かつトナー組成液10の変性を起こさないような材料で構成される。また、液貯留部14は複数の隔壁によって、複数の液貯留領域29に分割される。このように隔壁で分割することにより、数十kHz駆動において、液貯留領域29内の振動圧力分布が均等になるため均等な吐出が可能となり、また共振周波数を高める効果も期待できる。(b)において、Aは液室長さ、Bは液室幅であり、Hは液室高さである。
次に、液滴化手段としての液滴噴射ユニット2による液滴形成のメカニズムについて(c)を参照して説明する。
振動手段13により振動面131に発生した振動は貯留部14内の液に伝達し、貯留部14内の液は液共振現象を起こす。薄膜12に設けられた複数の吐出孔11において、トナー組成液10は均質に加圧された状態において外部に放出される。貯留部14内のトナー組成液10全体の共振の作用によって、全ての吐出孔11から均等にトナー組成液10が噴出される。さらには、トナー組成液10に多く含有される分散微粒子が薄膜12の貯留部14の面に沈着することなく貯留部14を浮遊するため、安定的に液を噴射し続けることができる構成となっている。
振動手段13は、例えば積層型PZTや、後述する超音波振動子と超音波ホーンを組み合わせたものなど、高い振幅において機械的超音波振動を液に与えることができるものであればどのようなものでも構わない。
複数の吐出孔11を設けた薄膜12を機械的に振動させる場合は吐出孔11の詰りが発生しづらいという利点があるが、薄膜12の面積が広いと均一振動が得られずに液滴31が広い粒度分布になる場合がある。これに対し、液共振方式は各吐出孔11にほぼ等しい振動圧力が与えられるため広い薄膜12でも狭い粒度分布の液滴31が得られやすい。
【0040】
本実施形態では、液滴噴射ユニット2にはシュラウド部30を有し、液滴31の流れ311の周囲に搬送気流95を有して、この搬送気流95により、吐出された液滴31の流れ311の群速度を増加させるように、また、吐出初速度が高い場合には逆に減少させるようにする。これにより、吐出された液滴31が固化するまでの乾燥工程中に互いに衝突することによる合着を効率よく防止し、得られるトナーは合一物が極めて少なく、歩留などを含む生産性を向上させることができる。
本実施形態でも液滴噴射ユニット2を装置上部に有し、液滴を噴射させ乾燥させるチャンバー部180と、そのチャンバー部180で得られたトナーをトナー貯留部6に送るための誘導管とを有して構成されている。
液滴噴射ユニット2は、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を有機溶媒中に分散ないし溶解させたトナー組成液10を液滴化して放出させる液滴化手段16と、この液滴化手段16にトナー組成液10を供給する貯留部14を形成した容器130とを備えている。
液滴化手段16は、前記膜振動方式と同様である。トナーの容器130には貯留部14にトナー組成液10を供給する液供給孔200及び排出孔210がそれぞれ接続されている。液滴化手段16により、吐出孔11から液滴31が放出される。
そして、容器13の外側には、吐出孔11に対向する部分を開口した開口部301を有し、吐出孔11からのトナー組成液10の放出方向に沿って流れる液滴31を搬送する気体の気流路を形成するシュラウド部30が取り付けられている。シュラウド部30は、吐出孔部が開口した2重の釜状の壁302、303からなり、互いが蓋部310で結合されている。シュラウド部30の側面には気体の吹き出し用のパイプ91が嵌入されている。2重の壁の内、内側の壁303は、容器130の下端近傍で終わっている。2重の壁の内、外側の壁302は吐出孔11の下部まで回り込んでおり、吐出孔11に対向する下部の円状の開口部301で終わっている。開口部301の口径は「D」であり、外側の壁302の底部304の内壁と吐出孔11の下端とはクリアランスGを保っている。Dに比してGのサイズが小さいため、Gが搬送気流の流速を決める主な要因である。
【0041】
液滴31を含む流れ311は、次に、上部にシュラウド部30及び容器130を取り付けた容積の大きいシュラウド部30内に導かれる。チャンバー部180内には、後述するチャンバー部噴出口93により、下方向への気流96が形成されている。この気流96は一様な層流であり、液滴31を含む流れ311は、気流96により層流状態で乾燥、固化されながら底部のトナー捕集部4に連結された誘導管92に送られる。誘導管92は図示しないサイクロンにつながり、さらに乾燥されながら捕集され、トナー貯留部6に送給される。シュラウド部30の上部側面には気体吹き出し用のパイプ91が気密的に嵌入されている。チャンバー部180の反対側側面には圧力計PG1が挿入されている。また、シュラウド部30の吹き出しパイプの側面にも圧力計PG2が挿入されている。
【0042】
次に、本実施形態に係るトナー製造装置の動作について説明する。ここでは、トナー組成液10を循環させる場合について説明する。
適当な圧力でトナー組成液10が容器130に収容されているところに、図示しない駆動装置により、振動手段である円環状振動手段17が、例えば100kHzで振動駆動されると、薄膜12に振動が伝播し、トナー組成液10が複数の吐出孔11から、振動駆動の周波数と一致した放出振動数で液滴31が放出される。放出された初速度Vはシュラウド部30中の気体の粘性による抵抗を受け減速しようとする。
一方、シュラウド部30中には、吹き出しパイプ91により気体が吹き出され、シュラウド部30中を通って搬送気流95を形成し、開口部301からチャンバー部180に放出される。形成される搬送気流95は円周方向に均一で下向きであり、シュラウド部30の壁302の下端部が丸味を帯びているため気流はスムースに横向きに方向を変え、吐出孔15下で合流し、さらに開口部301から放出される。この時の気流は乱流であると液滴31同士の合着が起こり易いので、層流であることが好ましい。
放出された液滴31は、搬送気流95に乗って開口部301からチャンバー部180内へ放出され、そこで層流である気流96に乗り、合着することなくトナー捕集部4まで送られる。
この例では、液滴31の初速度Vより搬送気流95の流速Vが大きく、液滴31は加速されてから搬送気流95に乗って送られる場合を示している。Vは自由落下速度より高ければよく、初速度Vより低くてよい。チャンバー内にはVより速い流速Vの気流96が形成されている。気流96の流速Vは大きいほど、合着を防止する点で好ましい。チャンバー部180中の気流96は、吹き出し用のパイプ93より気体を吹き出すことによりシュラウド部30中と同様に周方向に均一な一様の気流が形成される。チャンバー部180内では層流が好ましい。チャンバー部180中に放出された直後の液滴31を含む液滴の流れ311(流速はV)が乱流を起こさず、スムースに流下されるために、チャンバー部180内の気流96の流速Vに対し、V≧Vであることが好ましい。
【0043】
シュラウド部30内の搬送気流95及びチャンバー部180内の気流96の流速は圧力計PG1及びPG2によって管理される。シュラウド部30内の圧力P1、チャンバー部18内の圧力P2は、P1≧P2の関係があることが好ましい。この関係でないと液滴31に負圧が作用して逆流する可能性がある。
前述したように、シュラウド部30の搬送気流95の流速を決める律速となるのは、D>Gであるため、G、即ち壁302とヘッド25とのクリアランスである。
以上はシュラウド部30の搬送気流95及びチャンバー部180内の気流96とも、チャンバー部18の上部にある吹き出しパイプ91及びチャンバー部噴出し口93から気体を吹き出すことにより形成されたが、チャンバー部180の下部に設けたパイプ92から吸引することによって気流を形成してもよい。
シュラウド部30の壁302の開口部301の断面は、気体の放出方向に沿って口径が大きくなる、即ち外側の径が大なる方向にテーパー305が付いていることが好ましい。このように、開口部301にテーパー305を形成することによって、液滴31が開口部301を通過する際に、液滴31が開口部301の壁面に接触して付着することを回避できる。
本実施形態では、吹き出される気体として、シュラウド部30、チャンバー部180とも窒素ガスを用いたが、気体であればよく、空気あるいはその他の気体であってもよい。また、シュラウド部30を2重のお釜状の壁302、303で構成したが、内側303の壁を、容器130を構成する外周壁で兼用してもよい。また、1つのチャンバー部180中に複数の液滴噴射ユニット2とシュラウド部30を並設した構成にすることによってさらにトナーの製造効率を上げることができる。
放出された液滴31は粒子形成部3を通過しながら溶媒除去され、固形形態となってトナー貯蔵部6で捕集される。図26において、25はヘッド、32はバルブ、70は送液管、71は排液管、10はポンプ、7は原料収容部である。
【0044】
(乾燥)
必要に応じて、さらに流動床乾燥や真空乾燥といった二次乾燥が行われる。有機溶剤がトナー中に残留すると耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく。加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者及び周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施する。
【0045】
<吐出孔形状>
以上説明したように本発明で適用される、液滴吐出手段には様々なものがある。上述したような液滴吐出手段では吐出孔11及び薄膜12においてトナー組成液10の滲み出しに対する対処を行わないと、噴射中にトナー組成液10が予期しない状態で染み出し、結果として吐出孔11全体をトナー組成液10が覆ってしまい、噴射を妨げる事態に陥ることが明らかとなってきた。また、トナー組成液自体が噴射を妨げなかった場合であっても、やがてトナー組成液10が乾燥し、乾燥物によって吐出孔11の詰まりや形状の変化によって、やはり噴射低下あるいは噴射の停止を引き起こす。このため、吐出孔11には滲み出しを防止するのトナー組成液10の液面101を振動させると共に、吐出孔形状を従来実施してきたような吐出面が平板であることより、吐出面に凸加工を施した形状で、液滴吐出側にタコ口形状を有する吐出孔11を用いる。ここで、タコ口形状とは、液滴吐出側に凸形状を有し、該凸形状が吐出孔孔の内壁周囲に形成された筒状物である形状をいう。筒状物の断面としては、円、楕円、三角形、四角形、六角形、八角形等の多角形などが挙げられる。
図28は、本発明のトナーの製造方法を適用するトナー製造装置における吐出孔の形状を示す図である。
本発明の吐出孔の形状は、図28に示すように噴射出口側に凸加工を施してある。図28に示す吐出孔は、吐出孔Aの口径をa、凸部Bの径をb、凸部高さをhとしたときに下記式(1)及び(2)の関係を満たす。
a<b≦3a (1)
1/2a≦h≦2a (2)
【0046】
図28に示す吐出孔の形状において、式(1)に示すように、吐出孔Aの口径が凸部Bの径以上である場合(a≧b)は、実質的に凸Bは存在し得ない。凸Bの径bは吐出孔Aの口径aの3倍以下(b≦3a)であり、好ましくは2倍以下(b≦2a)である。凸Bの径bは吐出孔Aの口径aの3倍を超えた場合、吐出孔のメニスカス直径が大きくなり過ぎ実質的に凸Bが存在しない様態と変わりなく、更に液滴径が安定せず粒度分布が広くなり好ましい状態ではない。
図28に示す吐出孔11の形状において、式(2)に示すように、凸Bの高さhは、吐出孔A口径の1/2以上が必要である。1/2未満であった場合、メニスカスの振動や気流の乱れなどから実質的に凸Bが無い状態と変わりなく、メニスカスが広がりかつ液滴吐出方向性が安定にならず液滴粒度分布が広くなる。凸Bの高さhは、吐出孔Aの口径の2倍以下であることを要し、好ましくは1.5倍である。2倍を超えた場合、吐出孔プレートの厚さがあるため実質的に吐出孔Aの孔内高さLと口径aとの比(L/a)が大きくなって、吐出孔の加工がしにくいばかりか吐出時の圧力損失が大きくなり、吐出電圧が高くなり。このため、トナーの製造において省エネルギー化を図ることができなくなる。
【0047】
本発明において、吐出孔11の材質は特に制限はなく、適宜選択した材料を用いることができるがトナー組成液に有機溶剤を用いることが多いため、金属板が望ましい。本発明のような孔の加工にはフォトエッチング法や電鋳法が好適に用いられる。またフォトエッチング法に適した材質としてはシリコン、ステンレス、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、りん青銅、ベリウム銅、ニッケル、パーマロイ等が挙げられ、電鋳法に適した材質としてはニッケルと銅が望ましい。中でも、加工精度やフィルターの強度を確保するためには、シリコン、ステンレス及びニッケルが特に望ましい。
【0048】
本発明において、吐出孔11の実際のサイズは目的とする液滴31の大きさによって決定される。本願における図1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17に記載の薄膜12は厚み5〜500μmの金属板で形成され、かつ、吐出孔11の開口径が3〜30μmであることが、吐出孔11からトナー組成液10の液滴を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる観点から好ましい。なお、前記吐出孔11の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。また、複数の吐出孔11の個数は、2〜3000個が好ましい。
【0049】
吐出孔11の開口径に対して膜厚が非常に厚い場合は吐出孔の断面形状を2段型とすることにより吐出性が向上する。
次に、吐出孔の断面形状を2段型とする方法を、図29を用いて説明する。
図29は、本発明のトナーの製造方法を適用する液柱共鳴吐出方式のトナーの製造装置における吐出孔の断面形状を2段型とする方法を説明する図である。
最初に、(a)に示すように、シリコン基板両面にレジスト1110をコートする。
次に、(b)に示すように、吐出孔パターンが形成されたフォトマスクで覆い、紫外線を露光し、レジスト1110を吐出孔パターンとして形成する。
次いで、(c)に示すように、支持層1120面側からICP放電(誘導結合プラズマ放電)を用いた異方性ドライエッチングを行い、第1の吐出孔孔1150を形成し、活性層1140面側を同様の異方性ドライエッチングを行なって第2の吐出孔1160を形成する。
最後に、(d)に示すように、誘電体層1130をフッ酸系エッチング液により取り除き、2段の貫通孔を得る。
この方法は、深堀り吐出孔形状を均等に形成する上で最も好ましい方法である。また、図示しないが、シリコン基板として、単層のシリコン基板を用いた場合でもSOI基板の場合と同様の方法で吐出孔を形成することができる。その際には、エッチング時間を調整することにより、第1の吐出孔の深さ及び第2の吐出孔の深さを調整することが可能である。
【0050】
(トナー)
次に、本発明に係るトナーについて説明する。本発明に係るトナーは上述したトナー製造装置を用いたトナー製造法により製造されたトナーであり、この製造法により、粒度分布が単分散なものが得られる。
具体的には、前記トナーの粒度分布(体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn))としては、1.00〜1.15の範囲内にあるのが好ましい。より好ましくは1.00〜1.05である。また、体積平均粒径としては、1〜20μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは3〜10μmである。
次に、本発明で使用するトナー材料(トナー組成液)について説明する。先ず、前述したようにトナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー組成液について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。また、上記材料を熱溶融混練し得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液を、前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的のトナーを得ることも可能である。
【0051】
〔トナー用材料〕
前記トナー用材料としては、少なくとも樹脂と着色剤とを含有し、必要に応じて、キャリア、ワックス等のその他の成分を含有する。
【0052】
〔樹脂〕
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体などが挙げられる。
【0053】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類などが挙げられる。
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類などが挙げられる。
【0054】
前記ビニル重合体又はビニル共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)ないし(18)が挙げられる。
(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0055】
前記ビニル重合体又はビニル共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに替えたものなどが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに替えたものなどが挙げられる。
【0056】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに替えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートなどが挙げられる。変える
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部用いることが好ましく、0.03〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性を付与する点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0057】
本発明で用いるビニル重合体又はビニル共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、1,1´−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2´,4´−ジメチル−4´−メトキシバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレートなどが挙げられる。
【0058】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量分布で、分子量3000〜50000(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布100000以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5000〜30000の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5000〜20000の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0059】
前記ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【0060】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などが挙げられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0061】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3000〜50000(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量100000以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5000〜20000の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
【0062】
本発明に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、前記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくとも一つ中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gである樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求めることかでき、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをW(g)とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mLのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mLを加え溶解する。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(mL)とし、以下の式で算出する。ただしfは、KOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W
【0063】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であるのが好ましく、40〜75℃であるのがより好ましい。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、(3)及びこれらの混合物、などが挙げられる。
磁性体として具体的に例示すると、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、Fe(四三酸化鉄)、γ−Fe(γ−三二酸化鉄)の微粉末が好適である。
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムなどが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン及びジルコニウムから選択される元素である。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0064】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
前記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
また、磁性体の磁気特性としては、10kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0065】
〔着色剤〕
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物などが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、トナー全量中1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0066】
本発明に係るトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先に挙げた変性ポリエステル、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0068】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
前記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。添加量が1質量部未満であると着色剤の分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0069】
<ワックス>
また、本発明では、結着樹脂、着色剤とともにワックスをトナーに含有させることもできる。
ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができ、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
ワックスとしては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0070】
より好適なワックスとしては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0071】
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のものなどが挙げられる。
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせなどが挙げられる。
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
【0072】
前記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャートロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0073】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させて前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0074】
<流動性向上剤>
本発明に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
前記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。
【0075】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
さらには、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0076】
前記有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2〜12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
流動性向上剤のBET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m/g以上が好ましく、60〜400m/gがより好ましい。表面処理された微粉体の比表面面積は、20m/g以上が好ましく、40〜300m/gがより好ましい。
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0078】
トナーを調製する際には、トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の外添剤を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法などが挙げられる。
【0079】
前記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。
無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5〜500nmであることがより好ましい。
無機微粒子の前記BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。
無機微粒子の使用割合は、トナー全量中0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0080】
この他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自体の劣化を防止することができる。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好適に挙げられる。
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmであることが好ましく、5〜500nmであることがより好ましい。また、BET法による比表面積としては、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合としては、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0081】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好ましい。
本発明に係るトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【実施例】
【0082】
次に、この実施形態における具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(Regal400;Cabot社製)17質量部、顔料分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0083】
−ワックス分散液の調整−
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18質量部、ワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温し、カルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3μm以下となるようワックス粒子を析出させた。ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、さらにダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が1μm以下になるよう調整した。
【0084】
−トナー組成分散液の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成分散液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、ワックス分散液30質量部を、酢酸エチル840質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。
【0085】
−トナーの作製−
得られたトナー組成液500mLを、前述したトナー製造装置の図26の液滴化手段16の吐出孔11に供給した。使用した薄膜16(吐出孔プレート)は、外径15.0mm、50μm厚のニッケル板に、真円形状の直径10μmの吐出孔11を、電鋳法による加工で作製した。吐出孔は各吐出孔間の距離が100μmピッチとなるように千鳥格子状に、薄膜12中心の約5mmφの範囲にのみ設けた。この場合の計算上の有効吐出孔数は1000個となる。
分散液調製後、以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、該液滴を乾燥固化することにより、トナー母体粒子を作製した。
【0086】
〔トナー作製条件〕
分散液比重:ρ=1.1888g/cm
乾燥空気流量:装置内乾燥窒素 30.0L/分
装置内温度:27〜28℃
振動周波数:98kHz
印加電圧サイン波ピーク値:10.5V
〔吐出ヘッド仕様〕
薄膜(吐出孔プレート)厚:50μm
吐出孔径:10μm
なお、「振動周波数」とは、「薄膜16の振動数」の意味である。この条件で、トナー組成液は吐出孔目詰まりを生じる(閉塞する)ことなく、安定的に吐出された。乾燥固化工程を終えたトナー粒子は、1μmの細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子の粒度捕集した粒子の粒度分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000)で下記に示す測定条件において測定したところ、重量平均粒径(D4)は5.3μm、個数平均粒径(Dn)が4.8μmであり、D4/Dnが1.10のトナー母体粒子が得られた。
【0087】
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定することができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3cmの水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10mL中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加え、さらに、測定試料を5mg加え、超音波分散器STM社製UH−50で20kHz、50W/10cmの条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000〜8000個/10−3cm(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
【0088】
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、表1に示す通り、0.06−400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
以上の結果より実施例1は安定性、生産効率の高いトナー製造法を実施できると判断した。
【0089】
(実施例2〜9)
表1に示した条件を用いて、実施例1と同様に評価した実施例2〜16の結果を表2に示す。なお、使用したトナー液や周辺機器は全く同じものを使用している。
【0090】
−評価項目の説明−
停止時駆動電圧:吐出ヘッドを液で満たし、吐出開始前の吐出を停止させていない間にヘッドに与える吐出正弦波の電気信号の振幅である。実験の精度を確保するために、毎回実験する前に吐出ヘッドを純粋な溶剤で超音波洗浄を行い、吐出液が吐出孔から十分に染み出すまでヘッドを充填させ、染み出している状態で停止時微駆動の振動を入れてから染み出した液を拭き取っていた。
微駆動の信号をオンにした状態で、染み出した液を拭き取ってから30秒間放置してから通常の吐出信号(98kHz、10.5V正弦波)に切り替えた。
尚、ヘッドの振動源は増幅器(nf社製 HSA−4014 10倍設定)を介した発信機(nf社製 WF1973)を利用した。
停止時駆動周波数:出ヘッドを液で満たし、吐出開始前の吐出を停止させていない間にヘッドに与える吐出正弦波の電気信号の周波数である。
吐出時間: 通常の吐出信号(98kHz、10.5V正弦波)を継続してヘッドに与えている時間。液滴を連続吐出させている時間。
吐出レベル:吐出信号を入れた状態で全吐出孔に対して正常に吐出する吐出孔の割合。開始時吐出レベルは吐出開始直後にカメラで取った拡大画像から直接数えて計算した。終了時吐出レベルは吐出時間終了直前にカメラで取った拡大画像から直接数えて計算した。
粒度分布 :捕集されたトナーの平均粒度分布。
【表1】

【0091】
【表2】

以上の結果より、本発明の乾燥、固化方法を用いることによって、高品質のトナーを効率良く生産できることが示された。
【符号の説明】
【0092】
図1〜19、25〜29
1 トナー製造装置
2 液滴噴射ユニット
3 粒子形成部
301 天面部
4 トナー捕集部
5 チューブ
6 トナー捕集部
7 原料収容部
8 配管
9 ポンプ
10 トナー組成液
101 液表面
11 吐出孔
12 薄膜
121 周縁部
122 凸状形状
13 振動手段
131 振動面
14 貯留部
15流路部材
16 液滴化手段
161 変形可能領域
17 振動発生手段(電気機械変換手段)
18 液供給チューブ
19 気泡排出チューブ
20 支持部材
21 振動発生手段
211、212 圧電体
21a、21b 電極
22 振動増幅手段
221、222 ホーン
23 駆動回路(駆動信号発生源)
24 通信手段
25 ヘッド
26 振動分離部材
27 振動振幅の小さい節の部分
29 液貯留領域
30 シュラウド部
301 開口部
302、303 壁
304 底部
305 テーパー
31 液滴
311 液滴の流れ
32 バルブ
35 乾燥気体
36 気流路形成部材
37 気流路
41 テーパ面
42 気流(渦流)
43 除電手段
70 送液管
71 排液管
81 圧電体
82 ホーン
83 固定部
91 噴出し用パイプ
92 誘導管
93 噴出口
95 搬送気流
96 気流
100 ポンプ
130 容器
170 円環状振動手段
180 チャンバー部
200 液供給孔
210 排出孔
310 蓋部
1110 レジスト
1120 支持層
1130 誘電体層
1140 活性層
1150 第1の吐出孔孔
1160 第2の吐出孔孔
PG1 圧力計
PG2 圧力計
T トナー粒子
図20〜24
1 トナー製造装置
10 液滴形成ユニット
11 液滴吐出ヘッド
12 気流通路
13 原料収容器
14 トナー組成液
15 液循環ポンプ
16 液供給管
17 液共通供給路
18 液柱共鳴液室
19 吐出孔
20 振動発生手段
21 トナー液滴
22 液戻り管
30 乾燥捕集ユニット
31 チャンバ
32 トナー捕集部
33 下降気流
34 トナー捕集チューブ
35 トナー貯留部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開平7−152202号公報
【特許文献2】特開2003−262976号公報
【特許文献3】特開2003−280236号公報
【特許文献4】特開2003−262977号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、複数の吐出孔から振動させながら周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、
放出されたトナー組成液の液滴を、固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを有するトナーの製造方法において、
前記周期的液滴化工程で液滴化して放出させることを停止した時に、吐出孔における液表面を振動させる
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーの製造方法において、
前記液表面を振動させる手段が、吐出ヘッドに液滴を放出させない程度の継続的な低振動を与える
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトナーの製造方法において、
前記振動が、振動振幅を低くした液滴放出時と同周波数の振動である
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のトナーの製造方法において、
前記低振動が、吐出時の振動(共振)から周波数を変更した振動である
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のトナーの製造方法において、
前記周期的液滴化工程は、液柱共鳴吐出法を採用する
ことを特徴とするトナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−185411(P2012−185411A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49780(P2011−49780)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】