説明

トナー回収装置

【課題】 モータ自体に変更を加えることなく、容易にモータから発生する音鳴きを防止することができる廃トナー回収装置を提供する。
【解決手段】 廃トナー容器2内に回収された使用済みトナーを攪拌するトナー回収装置1において、前記廃トナー容器2の両側壁に回転可能に支持された軸部材3と、該軸部材3と一体に設けられた羽根3Aと、前記廃トナー容器2の外側に設けられ、前記軸部材3の一端を回転駆動するためのモータ4と、前記モータ4と前記軸部材3の一端との間に設けられ、モータ4の回転を前記軸部材3に伝達するとともにモータ軸4Aにスラスト力を発生させる円筒ウォームギア16と、前記軸部材3の一端側に設けられ前記軸部材3を他端方向へ付勢する弾性部材17とを備え、前記モータ4による前記軸部材3の回転駆動時、前記弾性部材17が前記軸部材3に付与する付勢力による前記軸部材3の回転トルクの増大を利用して前記モータ軸4Aに発生するスラスト力を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナー回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
像担持体に形成された静電潜像を粉体状のトナーによって可視像化する複写機、ファクシミリ、プリンタ又はこれらの少なくとも2つの機能を備えた複合機などとして構成される画像形成装置においては、各種の目的で、トナーを或る場所から他の場所へ移送することが行われている。トナー貯留部から現像装置へトナーを移送し、或いはクリーニング装置において像担持体から回収した転写残トナーを廃トナー容器又は現像装置へ移送するなどがその代表例である。
【0003】
このようなトナーの移送のためにトナー移送装置が用いられる。トナー移送装置は、例えば、内周面に螺旋状溝が形成された筒状のステータと、ステータ内に配置され、かつ該ステータの内周面との間にトナー移送用の空間が形成されるように螺旋状に延びたロータと、該ロータを回転駆動する駆動装置とを具備し、前記ステータは弾性体より成り、かつ前記ロータは剛体により構成されている。このように筒状のステータとロータとを有するポンプは一軸偏心ねじポンプないしはモーノポンプと称せられ、従来より周知なものであるが、かかるポンプを粉体状のトナーを移送する装置に用いることによって、省スペース化と、トナーの移送効率の向上を図ることができる。
【0004】
ところで、この形式のトナー移送装置のロータは剛体により構成され、そのロータを包み込むように配置されたステータは弾性体により構成され、該ロータが駆動装置により回転駆動されることによりトナーが移送される。ところが、トナー移送装置がこのように作動するとき、大きなうなり音が発生し、かかる騒音が画像形成装置周辺の環境を悪化させ、画像形成装置の操作者に不快感を与えるおそれがあった。うなり音の発生は、ロータの回転と、これに伴うロータの振動及びステータの振動に起因することを示唆しており、ステータの振動に起因することを示唆している。
【0005】
そこで、特許文献1には、前記ステータの外周部に、その軸線方向に延びる少なくとも1つの突起を一体に設けることによって、その振動が不均一な振動から安定した振動に変化し、これによってうなり音の発生が低減することが記載されている。
【特許文献1】特開平11−352778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使用済みトナーを回収する廃トナー容器はトナー移送装置のトナー移送路の出口に直結される。このため、廃トナー容器内に移された粉体状の廃トナーは、トナー移送路の出口近傍に集まって塊を作りやすい。トナーは粉体状であり本来的に流動性に富むが、塊のまま放置されると冷えて固くなり、トナー移送路の出口を塞ぐおそれがある。このため、廃トナー容器には羽根を有する軸部材が回転可能に支持されており、モータにより軸部材を回転させることにより、軸部材に設けられた羽根でトナーを攪拌し、空気を入れながら平らにならすことで、トナーの流動性を確保し、回収率を高めるようにしている。以下、この構成を備えた装置をトナー回収装置と称する。
【0007】
ところが、トナー回収装置がこのように作動するとき、モータ自体が音鳴きをし、この騒音が画像形成装置の環境を悪化させ、画像形成装置の使用者に不快感を与えるおそれがあった。音鳴きの原因は、モータの軸がぶれによってモータ軸とその軸受やベアリングとの金属同士の接触が生じ、メタルノイズが発生することであった。この場合、特許文献1に記載された方法ではこのようなモータ自体から発生する音鳴きは防ぐことができない。
【0008】
そこで従来は、この音鳴きを防止するためモータの設計そのものに変更を加え、モータ軸と、その軸受やベアリングとのクリアランスを少なくする方法をとっていた。しかし、この方法では今まで定格として生産されていたモータ全てに変更をかけなければならず、コストが掛かるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、モータ自体に変更を加えることなく、容易にモータから発生する音鳴きを防止することができるトナー回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、廃トナー容器内に回収された使用済みトナーを攪拌するトナー回収装置において、前記廃トナー容器の両側壁に回転可能に支持された軸部材と、該軸部材と一体に設けられた羽根と、前記廃トナー容器の外側に設けられ、前記軸部材の一端を回転駆動するためのモータと、前記モータと前記軸部材の一端との間に設けられ、前記モータの回転を前記軸部材に伝達するとともにモータ軸にスラスト力を発生させる手段と、前記軸部材の一端側に設けられ前記軸部材を他端方向へ付勢する弾性部材とを備え、前記モータによる前記軸部材の回転駆動時、前記弾性部材が前記軸部材に付与する付勢力による前記軸部材の回転トルクの増大を利用して前記モータ軸に発生するスラスト力を増大させることを特徴とする。
【0011】
モータ軸にスラスト力を発生させる手段としては、はすば歯車や円筒ウォームギアを用いることができる。
【0012】
また、前記弾性部材が耐摩耗性の発泡材料から成ることを特徴とする。或いは、前記弾性部材が発泡材料から成り、その摺擦面に耐摩耗性シートを貼り付けたことを特徴とする。さらに、前記発泡材料が連続気泡を有する発泡材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、モータ自体の設計を直接変更することなく、モータ軸にスラスト力を発生させ、モータ軸のスラスト方向位置を決めることができ、モータ軸のぶれに起因するモータ駆動時の異音を抑えることができる。また、弾性部材が軸部材や廃トナー容器の側壁と摺動する関係にあっても、弾性部材の摩耗を気にすることなく軸部材の回転トルクを高めることができる。また、弾性部材が圧迫されることによって、元に戻らなくなることを気にすることなく、常に一定の弾発力を得ることができるので、回転トルクの変動を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナー回収装置の一例を示す断面図であり、図2は、そのトナー回収装置要部の斜視図である。これらの図に示すように、トナー回収装置1は、粉体状の使用済みトナーを貯留する廃トナー容器2と、廃トナー容器2の両側壁に回転可能に支持された軸部材3と、軸部材3と一体に設けられた羽根3Aと、廃トナー容器2の外側に設けられ、軸部材3の一端を回転駆動するためのモータ4とを有している。
【0016】
軸部材3の一端は、廃トナー容器2の一方の側壁に設けられた貫通穴(図示せず)に挿通されており、その先端には軸方向に延びる一枚の遠心翼5Aを有する従動側回転部材5が取付けられている。軸部材3の一端部には、廃トナー容器2の一方の側壁の内面との間に所定の距離を維持する円盤3Bが軸部材3と一体に設けられている。円盤3Bの面には、弾性部材17が接着剤等で貼り付けられている。
【0017】
弾性部材17はウレタン等の発泡材料から成り、中心の穴に軸部材3の一端を挿通することのできるリング状部材であって、円盤3Bの面に当接して廃トナー容器2の一方の側壁の内面と円盤3Bとの間に弾性部材17に弾発力を発生することのできる厚みに選ばれている。この弾性部材17によって軸部材3はその一端から他端へ向かう方向へ付勢され、これによって軸部材3の回転トルクが増大される。
【0018】
しかしながら、軸部材3が回転するとき、弾性部材17は廃トナー容器2の一方の側壁の内面に摺擦される。このため、弾性部材17の発泡材料の耐摩耗性が脆弱であると発泡材料が削れ、弾性部材17の寿命が短くなる問題が生じる。そこで、弾性部材17として耐摩耗性の発泡材料から成るものを使用したり、弾性部材17の摺擦面に耐摩耗性シートを貼り付けたもの用いることによって軸部材3の回転トルクを高める効果を維持するとともに、耐摩耗性に優れた弾性部材17を得ることができる。
【0019】
また、弾性部材17に大きな回転トルクのアップを求める場合、独立気泡型の発泡材料から成るものでは、長期間の使用により廃トナー容器2の一方の側壁の内面と円盤3Bとの間で弾性部材17が圧迫され、その力で気泡が押しつぶされた形で固定されるため、弾性が失われ回転トルクの増大が見込めなくなる。そこで、連続気泡型の発泡材料から成る弾性部材17を使用することにより、弾性を維持するとともに、大きな回転トルクを安定して得ることができるようになる。
【0020】
軸部材3の他端は、廃トナー容器2の他方の側壁の内面に設けられた軸受2Aに支持されている。廃トナー容器2の一方の側壁には、ギアケーシング6が取付けられている。ギアケーシング6には、カバー7がはめ込まれる。カバー7の内壁には、軸8,9が凸設されている。
【0021】
ギアケーシング6は、廃トナー容器2の一方の側壁と平行に所定の間隔を維持する隔壁6Aを有している。隔壁6Aには、軸部材3の軸心と同心となる丸穴6Bが貫通して設けられている。軸8には円筒型の駆動側回転部材10が回転自在に取付けられている。この駆動側回転部材10は、隔壁6Aの丸穴6Bに挿入されている。駆動側回転部材10は、円筒側面に内接して中心角180°の位置に、軸方向に突出する一対の円柱型の遠心棒10Aを有している。さらに駆動側回転部材10は、ストッパー11及び平歯車12を一体に備えており、ストッパー11が隔壁6Aの裏面に当接することにより、平歯車12はギアケーシング6内部に配置されるようになっている。
【0022】
軸9にはウォームホイール13が回転自在に取付けられている。ウォームホイール13は、平歯車12に噛み合う平歯車14を一体に備えている。モータ軸4Aには取付けられたウォームホイール13に噛み合う円筒ウォーム15が取付けられている。円筒ウォーム15とウォームホイール13とは、円筒ウォームギア16を構成しており、モータ4の回転を軸部材3に伝達するとともに、モータ軸4Aにスラスト方向(図2の矢印方向)の力を発生させる。
【0023】
かかるトナー回収装置1の構成で、モータ4を駆動すると、モータ軸4Aの回転とともに円筒ウォーム15が回転し、これに噛み合うウォームホイール13がモータ軸4Aに対して食い違い軸で回転することで、このウォームホイール13と一体に平歯車14が回転する。さらに、平歯車14に噛み合う平歯車12が回転することで、駆動側回転部材10が回転し、遠心棒10Aが遠心翼5Aに当接して従動側回転部材5を円周方向に推進し、従動側回転部材5が回転する。これによって、軸部材3が回転して、羽根3Aによって廃トナー容器2内のトナーが攪拌される。このとき、弾性部材17が軸部材3に付与する付勢力による軸部材3の回転トルクの増大を利用してモータ軸4Aに発生するスラスト力を増大させることができる。これにより、モータ軸4Aのぶれが解消され、モータ軸4Aとその軸受やベアリングとの金属同士の接触が防止されるため、モータ駆動時の異音を抑えることができる。
【0024】
なお本発明は、上記の実施形態に限定されることなく種々の変更を加えて実施することができる。例えば、モータ軸にスラスト力を発生させる手段として、平行軸のはすば歯車や食い違い軸のねじ歯車を使用することもできる。また、弾性部材として、ばね等の他の付勢手段を使用することもできる。また、弾性部材を廃トナー容器の一方の側壁内面に接着する構成としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナー回収装置の一例を示す断面図である。
【図2】は、そのトナー回収装置要部の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 トナー回収装置
2 廃トナー容器
2A 軸受
3 軸部材
3A 羽根
3B 円盤
4 モータ
4A モータ軸
5 従動側回転部材
5A 遠心翼
6 ギアケーシング
6A 隔壁
6B 丸穴
7 カバー
8,9 軸
10 駆動側回転部材
10A 遠心棒
11 ストッパー
12 平歯車
13 ウォームホイール
14 平歯車
15 円筒ウォーム
16 円筒ウォームギア
17 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃トナー容器内に回収された使用済みトナーを攪拌するトナー回収装置において、前記廃トナー容器の両側壁に回転可能に支持された軸部材と、該軸部材と一体に設けられた羽根と、前記廃トナー容器の外側に設けられ、前記軸部材の一端を回転駆動するためのモータと、前記モータと前記軸部材の一端との間に設けられ、前記モータの回転を前記軸部材に伝達するとともにモータ軸にスラスト力を発生させる手段と、前記軸部材の一端側に設けられ前記軸部材を他端方向へ付勢する弾性部材とを備え、前記モータによる前記軸部材の回転駆動時、前記弾性部材が前記軸部材に付与する付勢力による前記軸部材の回転トルクの増大を利用して前記モータ軸に発生するスラスト力を増大させることを特徴とするトナー回収装置。
【請求項2】
モータ軸にスラスト力を発生させる手段が、はすば歯車であることを特徴とする請求項1に記載のトナー回収装置。
【請求項3】
モータ軸にスラスト力を発生させる手段が、円筒ウォームギアであることを特徴とする請求項1に記載のトナー回収装置。
【請求項4】
前記弾性部材が耐摩耗性の発泡材料から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー回収装置。
【請求項5】
前記弾性部材が発泡材料から成り、その摺擦面に耐摩耗性シートを貼り付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー回収装置。
【請求項6】
前記発泡材料が連続気泡を有する発泡材料であることを特徴とする請求項4又は5に記載のトナー回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−11273(P2006−11273A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191644(P2004−191644)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】