説明

トナー用ポリエステル樹脂の製造方法

【課題】 本発明の目的は、樹脂物性の経時変化を抑制させるとともに、混合機等を使用しなくても、均一な樹脂物性を有するトナー用ポリエステル樹脂の製造方法を提供することである。
【解決手段】 2価以上の酸成分と2価以上のアルコール成分を反応させてポリエステル樹脂を製造する方法において、重合釜内の樹脂を1〜100℃/h以下の冷却速度で強制冷却しながら、反応物を重合釜から吐出させることを特徴とするトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用ポリエステル樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂の製造工程においては、重合反応を行った後、不活性ガスで重合釜内を加圧し、ポリエステル樹脂を吐出させ、冷却装置によって冷却固化した後、粉砕機にて粉砕することが行われている。
【0003】
このうち、ポリエステル樹脂を重合釜内から吐出させる際、吐出時間に対応するポリエステル樹脂の重合釜内での滞在時間の差によって、吐出されるポリエステル樹脂の粘度、溶融弾性等の樹脂物性は変化し、結果として得られるポリエステル樹脂は、吐出経時に対応した異なる樹脂物性を有するものの混合物となることが知られている。このような、異なる樹脂物性を有するポリエステル樹脂の混合物では、樹脂物性の均一性が低い為に、これをトナー用バインダー樹脂に用いた場合、トナーの紙への定着不良あるいは、感光体汚染が発生するといった問題点があった。
【0004】
この吐出経時変化に対応する樹脂物性の不均一性を改良する為に、特許文献1には反応温度より樹脂排出温度を低く設定し、かつ、排出開始時の樹脂粘度と排出終了時の樹脂粘度の差を特定の範囲とする方法が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、得られるポリエステル樹脂の釜からの排出中の樹脂粘度、溶融弾性等の樹脂物性の経時変化が大きいため、十分な樹脂物性を得るためには、さらに、排出された樹脂粉砕物を混合機により混合する必要があり、より煩雑な工程が必要となるといった問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−157074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、重合釜内の樹脂を特定の冷却条件にて強制冷却して、樹脂物性の経時変化を抑制させるとともに、混合機等を使用しなくても、均一な樹脂物性を有するトナー用ポリエステル樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2価以上の酸成分と2価以上のアルコール成分を反応させてポリエステル樹脂を製造する方法において、重合釜内の樹脂を1〜100℃/以下の冷却速度で強制冷却しながら、反応物を重合釜から吐出させることを特徴とするトナー用ポリエステル樹脂の製造方法に関するものである。
【0008】
また、本発明は、重合釜中の反応物を混合しながら吐出させることを特徴とする上記トナー用ポリエステル樹脂の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法を用いることにより、樹脂物性の経時変化を抑制させるとともに、混合機等を使用しなくても、均一な樹脂物性を有するトナー用ポリエステル樹脂の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における強制冷却とは、加熱源を遮断し、放冷による自然冷却ではなく、能動的な方法を用いて冷却する冷却方法である。本発明の重合釜内の樹脂を強制冷却する際の冷却速度の下限値としては、1℃/h以上である。1℃/h以上で強制冷却した場合、重合釜から吐出した反応物の樹脂粘度、溶融弾性等の樹脂物性の吐出経時に対する変化を抑制することができ、この冷却速度の下限値は3℃/h以上がより好ましく、6℃/h以上がさらに好ましく、9℃/h以上が特に好ましい。
また、冷却速度の上限値としては、100℃/h以下である。100℃/h以下で強制冷却した場合、吐出中の反応物の溶融粘度の変化を抑制でき、安定した吐出を行うことができる。この強制冷却の冷却速度の上限値は90℃/h以下がより好ましく、70℃/h以下がさらに好ましく、50℃/h以下が特に好ましい。
【0011】
重合釜内の樹脂を強制冷却させながら吐出する方法としては、熱交換器により熱媒体を強制冷却する方法や、加熱源となる熱媒体を遮断しエアーによる強制冷却を行う方法、熱媒体を抜き取り予め冷却した媒体に置き換える方法、常温ないし冷却した金属ブロック等を重合釜内に連続的に投入する方法、常温ないし冷却した樹脂を重合釜内に連続的に投入する方法、水等の冷媒を連続的に重合釜に投入し、その潜熱を利用する方法等があげられるが、工業的な設備の簡素化、冷却速度の制御の容易さの観点から、熱交換器により熱媒体を強制冷却させながら吐出する方法が好ましい。この強制冷却方法を用いると、作業性が良く、また重合釜から反応物を吐出する際に、重合釜内の樹脂の増粘や樹脂物性の吐出経時に対する変化をより効果的に抑制することができる。さらに、吐出中の樹脂温度は、軟化温度に対して30℃以上高いほうが好ましい。この温度を保つことにより、吐出する際に閉塞なく吐出することができる。
【0012】
また、重合釜中の反応物を混合しながら吐出する方法としては、攪拌翼による攪拌や、ヘラなどを使用しての手動混合等の方法があるが、工業的作業性から、攪拌翼による攪拌を行い、反応物を混合しながら吐出する方法が好ましい。この混合方法を用いると、作業性が良く、また釜内の樹脂温度にムラがなくなり、樹脂温度の均一化をはかることができる。
【0013】
攪拌翼の形状としては、十字型、パドル型、ディスクタービン型、ダブルヘリカル型、マックスブレンド、アンカー型、ファウドラー型、フルゾーン型、リボン型等があるが、釜内の樹脂温度の均一化や、縮重合反応による樹脂粘度上昇等から、マックスブレンドが好ましい。
【0014】
本発明の製造方法で製造するトナー用ポリエステル樹脂の構成成分としては、2価以上の酸成分と2価以上のアルコール成分とを基本構成成分とするものである。
【0015】
2価以上の酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物等が挙げられる。これらジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、モノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステル等が挙げられる。また3価以上の多価カルボン酸も使用でき、これらの多価カルボン酸としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物を挙げることができる。
【0016】
2価以上のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール類、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物などの2価のアルコールを挙げることができる。また3価以上の多価アルコール成分として、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げることができる。これら酸成分及びアルコール成分は1種単独で使用しても、2種以上併用しても良い。
【0017】
次に、重合反応について述べる。2価以上の酸成分および2価以上のアルコール成分、さらに所望によりこれらに加えて3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコール成分を反応容器に投入し、加熱昇温して、エステル化反応またはエステル交換反応を行う。エステル化反応またはエステル交換反応の温度は、150〜300℃であることが好ましい。エステル化反応またはエステル交換反応の温度が150℃以上である場合に、反応率を十分上げることができる傾向にあり、300℃以下である場合に分解反応を抑制することができる傾向にある。この反応温度の下限値は180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましく、240℃以上が最も好ましい。また、上限値は290℃以下がより好ましく、280℃以下が特に好ましい。
【0018】
次いで、常法に従って該反応で生じた水またはアルコールを除去する。その後引き続き重合反応を実施するが、このとき150mmHg(20kPa)以下の真空下でジオール成分を留出除去させながら縮重合を行う。縮重合反応の温度は、150〜300℃であることが好ましい。縮重合反応の温度が150℃以上である場合に、反応率を十分上げることができる傾向にあり、300℃以下である場合に分解反応を抑制することができる傾向にある。この反応温度の下限値は180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましい。また、上限値は290℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましく、260℃以下が特に好ましい。
また、真空度は100mmHg(13.3kPa)以下がより好ましく、50mmHg(6.7kPa)以下が特に好ましい。
【0019】
また、エステル化反応、エステル交換反応、縮重合時に用いる触媒としては、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、ニ酸化ゲルマニウム等の公知の触媒を用いることができる。
【0020】
また、架橋構造を有するポリエステル樹脂を製造する場合には、高真空下で脂肪族ジオール成分を留出除去させながら縮重合を進めてゆく過程で、ゲル化反応が生じ反応系内の粘度が急激に上昇するので、この粘度上昇に対応しながら、反応系内の真空度を調整してゲル化反応を制御するのが好ましく、所望の粘度に到達した時に反応系内の圧力を常圧に戻し、強制冷却及び攪拌をさせながら、窒素により加圧して重合釜より樹脂を吐出することが好ましい。
【0021】
重合釜のスケールとしては、各スケールがあるが、吐出時間や重合釜冷却速度、攪拌翼の攪拌スピード等から、10t/釜以下のスケールが好ましい。
【0022】
また、本発明の製造方法が、最も効果を発現するトナー用ポリエステル樹脂としては、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコール成分が5〜50モル、2価以上のアルコール成分が120〜140モル、軟化温度範囲が130〜150℃、縮重合反応温度が220〜240℃、吐出開始温度が220〜240℃である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例におよび比較例における性能評価は以下の方法を用いて行った。
【0024】
・樹脂の評価方法
(1)軟化温度(℃)
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用いて1mmφ×10mmのノズル、荷重294N(30kgf)、昇温速度3℃/minの等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した時の温度を軟化温度とした。
【0025】
(2)経時変化
吐出開始から終了まで1時間毎に樹脂サンプリングし、軟化温度を測定、以下の基準で判断した。
○(良好) :軟化温度の差が2℃未満
△(可能) :軟化温度の差が2℃以上4℃未満
×(不可能):軟化温度の差が4℃以上
【0026】
(3)トナー評価
ポリエステル樹脂を93質量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製E02)3質量部、カルナバワックス(東洋ペトロライド社製)3質量部、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製E−84)1質量部を使用し、ヘンシェルミキサーで30分間混合した。次いで、得られた混合物を150℃〜200℃内の温度で2軸混練機で溶融混練した。混練後、冷却してトナー塊を得、ジェットミル微粉砕機で微粉砕し、分級機でトナーの粒径を整え、粒径を5μmとした。得られた微粉末100質量部に対して、0.25質量部のシリカ(日本アエロジル社製R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合して付着させ、最終的にトナーを得た。このトナーを0.5mg/cmのトナー濃度にて4.5cm×15cmのベタ画像を印刷した。このベタ画像紙をシリコーンオイルが塗布されていない定着ローラーを有し、ローラー速度100mm/秒、温度170℃に設定したプリンター(カシオ計算機(株)製 SPEEDIA N4−614)にて定着させ、以下の基準で判断した。
○(良好):ホットオフセット(HOS)、コールドオフセット(COS)ともに発生しない
×(劣る):ホットオフセット(HOS)および/またはコールドオフセット(COS)が発生する
【0027】
実施例1
マックスブレンド攪拌翼、蒸留塔、釜内温度検出端、温度計、窒素ガス導入管、コンデンサー、真空装置、真空計、トルク計、吐出口、熱交換器を備えた容積4mの重合釜に、表1に示す仕込み組成にて、モノマー成分を2000kg仕込んだ。さらに重合触媒として、1000ppmの三酸化アンチモンを添加した。次いで、重合釜中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、熱媒ジャケットにより昇温を開始し、反応系内の温度を265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出し、エステル化反応が開始してから約7時間後、水の留出がなくなり、反応を終了した。
【0028】
次いで、反応系内の温度を230℃まで下げ、重合釜内を約1時間かけて1kPaまで減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮重合反応を行った。減圧開始から約2時間後に反応とともに反応系の粘度が上昇してきたため、真空度を10kPaまで下げ反応を続けた。減圧開始から4時間経過後、反応系を常圧に戻した。
次いで、熱交換器の循環水の流量を6m/h、出側の循環水温度を20℃に設定して熱媒体の強制冷却を開始した。攪拌翼の回転数を6rpmで攪拌を行い、吐出速度400kg/hにて、窒素により加圧して吐出口より釜内樹脂の吐出を開始した。吐出しながら冷却ベルトにて樹脂を挟み、ピンクラッシャーで粉砕を行った。吐出開始から1時間毎に釜内の樹脂温度を測定するとともに、粉砕した樹脂をサンプリングし、それぞれの吐出経時の樹脂の軟化温度測定と、この樹脂を用いたトナー評価を行った。結果を表1に示す。
【0029】
実施例2
ポリエステル樹脂の製造に用いる無水トリメリット酸の仕込み組成を18モルに変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂の製造を行った。結果を表1に示す。
【0030】
実施例3
ポリエステル樹脂の製造に用いる無水トリメリット酸の仕込み組成を25モルに変更した以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂の製造を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例4
強制冷却に用いる熱交換器の循環水の流量を4m/hに変更した以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂の製造を行った。結果を表2に示す。
実施例5
吐出時に攪拌を行わなかった以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂の製造を行った。結果を表2に示す。
実施例6
吐出弁の開度を小さくし、吐出速度を286kg/hにした以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂の製造を行った。結果を表2に示す。
【0032】
比較例1
強制冷却を行わず、加熱源を遮断し放冷による自然冷却にて冷却した以外は実施例1と同様にポリエステルの製造を行った。結果を表3に示す。
【0033】
比較例2
縮重合反応温度を250℃に変更した以外は比較例1と同様にポリエステル樹脂の製造を行った。結果を表3に示す。
【0034】
比較例3
釜内の樹脂温度の冷却速度が150℃/hとなるように、強制冷却に用いる熱交換器の循環水の流量を100m/hに変更した以外は、実施例1と同様にポリエステル樹脂の製造を行った。
釜内樹脂温度が170℃近辺から吐出口の閉塞がみられ、吐出開始から24分までは可能であったが、24分以降(釜内樹脂温度170℃未満)は吐出できず、釜内に樹脂が残った。
【0035】
実施例、比較例により以下のことが判明した。
1)実施例1〜6の強制冷却をしながら反応物を重合釜から吐出させて製造したポリエステル樹脂は、いずれも吐出経時に対する樹脂の軟化温度の変化が小さく、また得られたポリエステル樹脂を含むトナーは良好な定着特性を示した。
2)強制冷却により、冷却速度を10℃/hとした実施例1は、特に吐出経時に対する軟化温度の変化が小さかった。
3)吐出中に攪拌を実施した実施例1で製造したポリエステル樹脂は、攪拌を実施しなかった実施例5のポリエステル樹脂に比べ、特に吐出経時に対する樹脂の軟化温度の変化が小さかった。
【0036】
4)架橋性成分である無水トリメリット酸の仕込み組成を12モル%および18モル%とした実施例1および2は、特に吐出経時に対する樹脂の軟化温度の変化が小さかった。
5)実施例6は、釜内樹脂温度が168℃近辺から吐出口の閉塞がみられ、吐出開始から6時間までは可能であったが、6時間以降(釜内樹脂温度168℃未満)は吐出ができず、釜内に樹脂が残った。
【0037】
6)吐出中、冷却速度が0.5℃/hとなった比較例1で得られたポリエステル樹脂は、吐出経時に対する樹脂の軟化温度の変化が大きく、特に吐出開始から3時間以降に吐出し回収した樹脂は、これを含むトナーを用いた定着試験において、コールドオフセットが発生し、トナー用バインダー樹脂として必要となる定着特性が得られないため工業的利用価値が低かった。
【0038】
7)縮重合反応温度を250℃とし、釜内の樹脂温度の冷却速度が0.5℃/hである比較例2で得られたポリエステル樹脂は、吐出経時に対する樹脂の軟化温度の変化が大きく、特に吐出開始から2時間以降に吐出し回収した樹脂は、これを含むトナーを用いた定着試験において、ホットオフセットが発生し、トナー用バインダー樹脂として必要となる定着特性が得られないため工業的利用価値が低かった。
8)釜内の樹脂温度の冷却速度が150℃/hとなる比較例3では、吐出中に吐出口の閉塞が発生し、安定した吐出ができなかったため、生産性の観点から工業的利用価値が低い。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価以上の酸成分と2価以上のアルコール成分を反応させてポリエステル樹脂を製造する方法において、重合釜内の樹脂を1〜100℃/h以下の冷却速度で強制冷却しながら、反応物を重合釜から吐出させることを特徴とするトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
重合釜中の反応物を混合しながら、吐出させることを特徴とする請求項1記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2007−293123(P2007−293123A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122339(P2006−122339)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】