説明

トナー粒子の製造方法

【課題】重合法によるトナーの製造において、重合容器内壁に生じる重合体スケールの付着を効率よく除去し、画像特性に優れたトナー粒子を高い生産性で製造するトナーの製造方法を提供することにある。
【解決手段】重合性単量体および着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を無機分散安定剤を含有した水系媒体(液体A)に加え、該液体A中で該重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程、および該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合してトナー粒子を得る重合工程を含むトナー粒子の製造方法であって、
あらかじめ該重合工程に用いる重合容器内壁の少なくとも一部に難水溶性無機化合物を含む液体(液体B)を塗布させ、かつ該重合工程終了後に該重合容器の内容物を排出した後、該重合容器内壁にpH9以上の水溶液(液体C)を接触させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真、静電印刷、磁気記録のような、画像形成方法において静電荷画像を顕像化するためのトナーおよびトナー粒子の製造方法に関するものである。特に、重合によってトナー粒子を製造する際に、重合器内壁面等への重合体スケールの付着を防止するトナー粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トナー粒子の製造方法として、重合性単量体を重合する段階で着色剤及び電荷制御剤を重合体粒子中に包含させトナー粒子とする重合法がある。たとえば懸濁重合法では、重合性単量体、着色剤、離型剤及び重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤およびその他の添加剤を均一に溶解または分散せしめて重合性単量体組成物とする。これを、分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌機を用いて分散させ、重合性単量体を重合させて、所望の粒径を有するトナー粒子の懸濁液を得る。懸濁液は必要であれば酸またはアルカリで処理してトナー粒子の表面から分散安定剤を取り除いた後、固液分離工程で水系媒体を分離して、トナー粒子を得る。さらなる含水率の低減が必要な場合には、既知の乾燥手段によりトナー粒子から水分の除去を行う。
【0003】
機械的粉砕法によらないこれらの方法によって得られるトナー粒子は球形で表面が均一である。そのため流動性及び転写性が良好で、多数回の連続現像を行っても良好な現像特性を示し、トナーへのストレスが少なく、そして感光体へのフィルミングの発生が少ない。また、得られるトナー粒子の粒度分布はシャープであり、たとえ分級工程が必要な場合でも、希望する粒径を有するトナー粒子の歩留まりが高い。
【0004】
前述の懸濁重合法によるトナーの製造において、重合工程は通常撹拌手段および加熱冷却手段を有する重合容器を用いて行われるが、重合中に容器内壁、撹拌手段表面、邪魔板表面などに重合体組成物が付着すると、その場で重合し、スケール付着物となる。スケール付着物は、重合工程終了後も重合容器内に残留する。この付着物を放置した場合、その量は重合工程回数を重ねる度に増大し、著しい場合には重合容器の伝熱性能を低下させ重合反応の安定性に悪影響を与える。また、このスケール付着物が剥離して脱落し製品であるトナーに混入すると、不定形の異形粒子として観察される。トナー中における異形粒子の存在割合が大きくなると摩擦帯電性などのトナー特性および画像評価した場合の現像特性に悪影響が現われ、画像濃度の変動、白い筋、カブリの発生が見られるなど製品性状の低下を招くため好ましくない。
【0005】
また、上記スケール付着物が十分な大きさに成長してから剥離/脱落した場合、重合容器に接続された配管部やバルブ等で、詰まりや固着の原因となる。このため付着物の頻繁な除去作業が必要となり製造装置の稼働率の低下を招く。さらには重合容器内部がグラスライニングやフッ素樹脂コーティングなどの表面処理されていた場合、ハツリなどの作業によって処理表面が傷つけられ補修作業が必要となる可能性もある。これらのことは結果として製品であるトナーのコストアップにつながる。
【0006】
このような重合反応におけるスケール付着を防止する方法として、例えば特許文献1には、重合容器内壁面にコロイダルシリカとアルキルシリケートを混合した粘着性のある無機化合物層に無機分散粉末層を形成しスケール防止性塗膜を形成する方法が提案されている。しかし、この方法では、無機分散粉末層と重合性単量体の分散液滴との反発が不十分であり、満足するスケール防止効果は得られない。
【0007】
特許文献2にはアルデヒド化合物とヒドロキシナフタリン系化合物との縮合反応生成物とビニルフェノール系重合体を含有するスケール防止剤を重合容器内壁に塗布することで重合体スケールの付着を防止する方法が開示されている。この手法では、使用したスケール防止剤が製品であるトナー粒子に混入し、現像性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
また、特許文献3には重合容器内の気相部および気液界面へのスケール防止方法として、重合中に重合容器内の気相部の内壁に水または分散安定剤を含有した水系分散媒体を散布する方法が提案されている。しかしながら、この方法では気相部でのスケール防止効果はある程度得られるものの、重合容器液中の重合体スケール抑制には何ら効果が得られない。
【0009】
更に、特許文献4によれば分散安定剤を含有した水系分散媒体の重合容器内壁への散布と、重合性単量体組成物の分散液に、別途調製した分散安定剤を含有した水系分散媒体を混合した調製液の重合容器への投入を同時に行うことでスケールを防止する方途が開示されている。しかしながら、昇温及び/又は重合中の液面低下に伴って発生するスケール防止の効果は得られない。また、本出願人の検討ではこの方法では十分なスケール防止効果が得られなかった。
【0010】
一方、発生してしまったスケール付着物を効率よく除去するための方法がいくつか提案されている。例えば、有機溶剤やアルカリ水溶液などの除去剤を重合容器内に散布する、または重合容器に満たし加熱および撹拌を併用する方法は簡便であり一般的である。しかしこれらの方法はいずれもスケール付着物をいかによく液中に溶解または膨潤させるかが主眼点であり、加熱するなどしても付着物を全て除去するためにはある程度長い時間を要する。また、使用済みの除去剤は付着物に著しく汚染されるためそのままでは再使用に適さず、大量の廃液を出す結果となるか、除去剤の大掛りな再生手段を講じる必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−287564号公報
【特許文献2】特開2006−160960号公報
【特許文献3】特開平10−153878号公報
【特許文献4】特開2003−287928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の如き問題を解決したトナー粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
即ち、本発明は、重合法によるトナー粒子の製造方法において、重合性単量体組成物の分散液滴を重合する際に重合容器内壁での重合体スケールの付着の発生を抑制し、かつ発生した重合体スケールの付着物を容易に除去することが可能なトナー粒子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは重合工程時における重合体スケールの発生の抑制、およびその除去について鋭意検討を行った結果、以下の方法を見出した。
(1)重合性単量体および着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を無機分散安定剤を含有した水系媒体(液体A)に加え、該液体A中で該重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程、および該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合してトナー粒子を得る重合工程を含むトナー粒子の製造方法であって、
あらかじめ該重合工程に用いる重合容器内壁の少なくとも一部に難水溶性無機化合物を含む液体(液体B)を塗布させ、かつ該重合工程終了後に該重合容器の内容物を排出した後、該重合容器内壁にpH9以上の水溶液(液体C)を接触させることを特徴とするトナー粒子の製造方法。
(2)該液体Bを塗布させた後に、該重合容器内壁を加温することを特徴とする(1)に記載のトナー粒子の製造方法。
(3)造粒工程で用いる該液体A中の無機分散安定剤と、該液体B中の難水溶性無機化合物が同じものであることを特徴とする(1)または(2)に記載のトナー粒子の製造方法。
(4)該液体Aに対する無機分散安定剤の濃度Ca(質量%)と、該液体Bに対する難水溶性無機化合物の濃度Cb(質量%)が1.0×Ca≦Cb≦40.0×Caの関係を満たすことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のトナー粒子の製造方法。
(5)該液体Bを重合容器内壁の少なくとも一部に塗布させた後に、該難水溶性無機化合物が該重合容器内壁表面に0.05mg/cm2以上7.50mg/cm2以下で存在することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のトナー粒子の製造方法。
(6)該液体B中の難水溶性無機化合物に難水溶性金属化合物を用いることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のトナー粒子の製造方法。
(7)該液体B中の難水溶性無機化合物に難水溶性リン酸金属塩を用いることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載のトナー粒子の製造方法。
(8)該重合容器内壁に該液体Cを接触させる方法が、該重合容器を液体Cで満たした後にこれを加熱撹拌することであることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載のトナー粒子の製造方法。
(9)該液体Cが炭酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする(1)乃至(8)のいずれかに記載のトナー粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば懸濁重合法トナー製造時の重合工程において、重合容器内に生成する重合体スケールの発生を抑制し、かつスケールが発生した場合にも容易に除去できることにより、重合体付着物に起因する異形粒子の製品トナーへの混入を防止することができる。このため、画像形成を行った際に画像濃度に変動や濃度ムラがなく、鮮明且つ定着性の優れたトナーを得ることができる。また、堆積した重合体付着物による熱伝導の阻害、重合体付着物の脱落による配管の閉塞などが起こらないため、重合体付着物の頻繁な除去作業が本質的に不要になり生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に用いる好適な重合容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法に好適に用いることができる。懸濁重合法とは、重合性単量体及び着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、水系媒体中で重合性単量体組成物を造粒し該重合性単量体組成物の粒子を形成し、重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合してトナー粒子を得る製造方法である。
【0018】
以下に、懸濁重合法による本発明のトナーの製造方法について説明する。
【0019】
(重合性単量体組成物調製工程)
重合性単量体および着色剤を少なくとも含む重合性単量体組成物を調製する。着色剤は予め媒体撹拌ミルなどで重合性単量体中に分散させた後に他の組成物と混合してもよいし、全ての組成物を混合した後に分散させてもよい。
【0020】
(造粒工程)
無機分散安定剤を含む水系媒体に重合性単量体組成物を投入し、分散させることにより造粒し、水系媒体中に重合性単量体組成物の粒子を形成することによって重合性単量体組成物分散液を得る。造粒工程は例えば高剪断力を有する撹拌機を設置した竪型撹拌槽で行なうことができる。高剪断力を有する撹拌機としてはウルトラタラックス(IKA社製)、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業社製)、T.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)の如き市販のものを用いることができる。
【0021】
無機分散安定剤としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛等のリン酸多価金属塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩;シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄の無機水酸化物;等を挙げることができる。これらは、単独、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらは、水系媒体中に微粒子として存在することにより分散安定剤としての機能を発揮する。
【0022】
(重合工程)
造粒工程により得られた重合性単量体組成物分散液中の重合性単量体を重合することにより、重合体微粒子分散液を得る。本発明における重合工程には撹拌手段を有し、温度調節可能な一般的な重合容器を用いることができる。
【0023】
重合温度は40℃以上、一般的には50乃至90℃で行われる。重合温度は終始一定でもよいが、所望の分子量分布を得る目的で重合工程後半に昇温してもよい。重合容器に用いられる撹拌手段は分散された重合性単量体組成物を滞留させることなく浮遊させ、かつ槽内の温度を均一に保てるようなものならばどのようなものを用いても良い。撹拌手段としては撹拌翼が適しており、例えば、パドル翼、傾斜パドル翼、三枚後退翼、プロペラ翼、ディスクタービン翼、ヘリカルリボン翼、アンカー翼のごとき一般的な撹拌翼、フルゾーン(神鋼パンテック社製)、ツインスター(神鋼パンテック社製)、マックスブレンド(住友重機社製)、スーパーミックス(佐竹化学機械工業社製)、Hi−Fミキサー(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0024】
本発明に用いる好適な重合容器の断面図の一例を図1に示すが、これに限定されるわけではない。
【0025】
図1において、1は重合容器、2は撹拌翼、3は邪魔板、4は撹拌モーター、5は気液界面、6は温度調節用のジャケットである。
【0026】
重合工程を行う前に、重合容器1内壁表面に、難水溶性無機化合物を含む液体(液体B)を塗布することによって重合容器内壁を難水溶性無機化合物で被覆させる。液体Bを塗布した後に、これを乾燥させることが好ましい。これによって、重合容器内壁への難水溶性無機化合物の密着性が高まる。乾燥を行なわない場合には難水溶性無機化合物の密着性が十分でないため、所望の効果が得られない。乾燥の方法は特に限定されないが、図1に示す装置のように温度調節用のジャケットを有する場合には、ジャケットを利用して重合容器内壁を加温することにより、乾燥させることが有効である。難水溶性無機化合物による被覆が十分に行なわれた重合容器内へ、造粒工程により得られた重合性単量体組成物分散液を導入し重合工程を行う。重合性単量体組成物の液滴を覆っている無機分散安定剤と、重合容器内壁表面の難水溶性無機化合物との斥力によって、重合容器内壁への重合体スケールの付着を抑制することができる。また、撹拌装置2、バッフル3等の付帯機器表面にも同様の処理を行うことで重合容器内の付帯機器表面へのスケールの付着を抑制することもできる。
【0027】
液体Bの液体成分としては難水溶性無機化合物が不溶で揮発性を有するものであればよく、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類を用いることができる。更に、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、n−ヘキサン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を挙げることができる。また、これらを単独、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。上記に例示したものの中でも、水単独またはアルコール類との組み合わせでの使用が工業的、経済的観点から見て好適である。
【0028】
難水溶性無機化合物としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛等のリン酸多価金属塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩;シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄の無機水酸化物;等を挙げることができる。これら難水溶性無機化合物は、単独、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの難水溶性無機化合物のうち、難水溶性金属化合物がより好適に用いられる。さらにその中でもリン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛等の難水溶性リン酸金属塩が好適に用いられる。
【0029】
無機分散安定剤としての難水溶性無機化合物と、液体B中に含有する難水溶性無機化合物はそれぞれ異なるものを用いてもよいが、重合後の分散安定剤の除去工程の簡素化の観点から、酸もしくはアルカリに可溶なもの同士の組み合わせにすることが好ましい。更には、同組成の難水溶性無機化合物を用いることが好ましい。
【0030】
重合性単量体組成物を水系分散媒体中で行う造粒工程に使用する分散安定剤は無機分散安定剤であることが好ましい。重合性単量体組成物の分散液滴に集る無機分散安定剤と、重合容器内壁に固着させる難水溶性無機化合物による静電気的反発によって、分散液滴の重合容器内壁への付着が抑制される。これにより、スケールを効果的に抑制することができる。
【0031】
分散安定剤として水溶性高分子を用いる場合、分散液滴と重合容器の間に十分な斥力が発生しないため重合体スケールの付着防止効果としては満足しうるものではない。
【0032】
液体Bを重合容器内壁に塗布する方法は、均一に塗布できればどのような方法もとりうるが、例えばシャワーノズルやスプレーノズルを用いて散布する、重合容器内を液体Bで満たした後排出する、刷け等で塗りつける方法などが挙げられる。
【0033】
無機分散安定剤を含有した水系分散媒体(液体A)に対する無機分散安定剤の濃度Ca(質量%)と、難水溶性無機化合物を含む液体(液体B)に対する難水溶性無機化合物の濃度Cb(質量%)が1.0Ca≦Cb≦40.0Caの関係を満たしていることが好ましい。
【0034】
液体Bに対する難水溶性無機化合物の濃度Cb(質量%)が1.0Caより小さい場合、重合性単量体組成物の分散液滴の周囲を覆った分散安定剤との斥力が小さくなり十分な効果が得られにくい。濃度Cb(質量%)が40.0Caより大きい場合、重合容器内壁の難水溶無機化合物の一部が、重合性単量体組成物分散液中に移行し、重合性単量体組成物分散液の液滴径の分布を乱し、結果的に得られるトナー粒子の画像特性に悪影響となることがある。また、後工程での負荷を大きくするために好ましくない。
【0035】
該重合容器内壁表面に難水溶性無機化合物が0.05mg/cm2以上7.50mg/cm2以下の密度で存在することが好ましい。0.05mg/cm2より小さい場合、部分的に難水溶性無機化合物が存在しない部分が生じ、難水溶性無機化合物の重合性単量体組成物の液滴に対する静電気的な斥力が低下するため、スケール付着抑制効果が小さくなるため好ましくない。7.50mg/cm2より大きい場合、難水溶性無機化合物の層にクラックが生じ剥離しやすくなる。剥離した難水溶性無機化合物の層は、重合性単量体組成物分散液中に移行し、重合性単量体組成物分散液の液滴径の分布を乱し、結果的に得られるトナー粒子の画像特性に悪影響となることがある。また、後工程での負荷を大きくするために好ましくない。また、難水溶性無機化合物の層が厚すぎると重合容器の伝熱効率が低下する。
【0036】
重合工程の終了後、重合容器の内容物(重合体微粒子分散液)を払い出した後、pH9以上の液体Cを重合容器内壁に接触させることによりスケール付着物を完全に除去することができる。液体Cを接触させる方法としては、スプレーノズルやシャワーノズルなどで散布する方法、重合容器を液体Cで満たす方法などどのような方法もとりうるが、図1に示すような重合容器の場合には、重合容器を液体Cで満たした後に、撹拌する方法が洗浄性の観点から好ましい。さらにこのとき液体Cを加熱することにより洗浄性がより高まる。液体Cを加熱する温度は常温より高ければ、ある程度の効果は得られるが、50℃以上とするとより効果は顕著となる。
【0037】
液体CにはpHが9以上であればよく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム等を使うことができる。特に炭酸ナトリウムが取り扱いの観点からも好ましい。
【0038】
(蒸留工程)
必要であれば未反応の重合性単量体や副生成物等の揮発性不純物を除去するために、重合終了後に一部水系媒体を蒸留工程により留去してもよい。蒸留工程は常圧もしくは減圧下で行うことができる。
【0039】
(洗浄工程、固液分離工程及び乾燥工程)
重合体粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、重合体粒子分散液を酸またはアルカリで処理をすることもできる。この後、一般的な固液分離法により重合体粒子は液相と分離されるが、酸またはアルカリおよびそれに溶解した分散安定剤成分を完全に取り除くため、再度水を添加して重合体粒子を洗浄する。この洗浄工程を何度か繰り返し、十分な洗浄が行われた後に、再び固液分離してトナー粒子を得る。得られたトナー粒子は必要であれば公知の乾燥手段により乾燥される。
【0040】
(分級工程)
こうして得られたトナー粒子は従来の粉砕法トナーと比較して十分シャープな粒度を有するものであるが、さらにシャープな粒度を要求される場合には風力分級機などで分級を行なうことにより、所望の粒度分布から外れる粒子を分別して取り除くこともできる。
【0041】
[重合性単量体]
本発明のトナーに好適に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性のものまたは多官能性のものを使用することが出来る。単官能性重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
【0042】
スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系モノマー類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体類;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン類。
【0043】
多官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル。
【0044】
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独、あるいは2種以上組み合わせて、または上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。上述の単量体の中でもスチレンまたはスチレン誘導体を単独もしくは混合して、またはそれらとほかの単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性などの点から好ましい。
【0045】
[着色剤]
本発明で用いられる着色剤としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック;C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6の如き染料;黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、ブリリアントカーミン3B、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、キナクリドン、ローダミンレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGの如き顔料。
【0046】
着色剤を選択する上で、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要がある。特に染料やカーボンブラックは重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。好ましくはこれらに表面改質、例えば重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。染料を表面処理する方法としては、予めこれら染料の存在下に重合性単量体を重合させる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物等トナー用原料に添加する。さらにカーボンブラックについては上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えばポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行ってもよい。
【0047】
これらの着色剤は重合性単量体100質量部に対して1乃至20質量部使用することが好ましい。
【0048】
[離型剤]
本発明で用いられる離型剤としては室温で固体状態のワックスがトナーの耐ブロッキング性、多数枚耐久性、低温定着性、耐オフセット性の点でよい。
【0049】
ワックスとしては以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如きポリメチレンワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、及びこれらのブロック化合物。これらは低分子量成分が除去されており、示差走査熱量計によって得られる吸熱曲線の最大吸熱ピークがシャープなものが好ましい。OHPに定着した画像の透光性を向上させるためには特に直鎖状エステルワックスが好適に用いられる。直鎖状エステルワックスは重合性単量体100質量部に対して1乃至40質量部、より好ましくは4乃至30質量部含有されるのがよい。
【0050】
本発明においては、トナー粒子の可塑性を増し、低温領域での定着性をよくするために、融点が80℃より小さい第2の離型剤を併用することができる。第2の離型剤としては炭素数15乃至100個の直鎖状のアルキルアルコール、直鎖状脂肪酸、直鎖状酸アミド、直鎖状エステルあるいはモンタン系誘導体のワックスが好ましく用いられる。これらのワックスから液状脂肪酸の如き不純物を予め除去してあるものはより好ましい。
【0051】
[荷電制御剤]
本発明により製造されるトナーは荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては公知のものが利用できる。例えばトナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ系染料金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類。さらに、以下のものが挙げられる。尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、非金属カルボン酸系化合物。
【0052】
トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩;ホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、またはフェロシアン化物)、高級脂肪酸の金属塩。これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも4級アンモニウム塩の如き荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
【0053】
これらの荷電制御剤は重合性単量体100質量部に対して0.01乃至20質量部、より好ましくは0.5乃至10質量部使用するのがよい。
【0054】
[重合開始剤]
本発明に用いることができる重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤がある。アゾ系重合開始剤としては以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル。
【0055】
また、有機過酸化物系開始剤を用いることもできる。有機過酸化物系開始剤としては以下のものが挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド。
【0056】
また、酸化性物質と還元性物質を組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。酸化性物質としては過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)の無機過酸化物、4価のセリウム塩の如き酸化性金属塩が挙げられる。還元性物質としては還元性金属塩(2価の鉄塩、1価の銅塩、3価のクロム塩)、アンモニア、低級アミン(メチルアミン、エチルアミンの如き炭素数1乃至6のアミン)、ヒドロキシルアミン等のアミノ化合物、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの如き還元性硫黄化合物、低級アルコール(炭素数1乃至6)、アスコルビン酸又はその塩、および低級アルデヒド(炭素数1乃至6)。開始剤は10時間半減期温度を参考に選択され単独又は混合して利用される。該重合開始剤の添加量は目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100質量部に対し0.5乃至20質量部が添加される。
【0057】
[架橋剤]
本発明には各種架橋剤を用いることもできる。架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、4,4’−ジビニルビフェニル、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート。
【0058】
[極性樹脂]
懸濁重合のように水系媒体を用いる重合法の場合には、重合性単量体組成物に極性樹脂を添加することにより離型剤の内包化の促進を図ることができる。水系媒体に懸濁した重合性単量体組成物中に極性樹脂が存在した場合、水に対する親和性の違いから極性樹脂が水系媒体と重合性単量体組成物の界面付近に移行しやすいため、トナー表面に極性樹脂が偏在することになる。その結果トナー粒子はコア−シェル構造を有し、多量の離型剤を含有する場合でも離型剤の内包性が良好になる。
【0059】
このような極性樹脂としては、トナー表面に偏在しシェルを形成した際に極性樹脂自身のもつ流動性が期待できることから、特に飽和または不飽和のポリエステル系樹脂が好ましい。
【0060】
ポリエステル系樹脂としては、下記に挙げる酸成分単量体とアルコール成分単量体とを縮合重合したものを用いることができる。酸成分単量体としては以下のものが挙げられる。テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸。アルコール成分単量体としては以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの如きアルキレングリコール類及びポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール。
【0061】
[外添剤]
本発明の製造方法では、トナーへの各種特性付与を目的として外添剤を使用することができる。外添剤はトナーに添加した時の耐久性の点から、トナー粒子の平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。外添剤としては、以下のものが挙げられる。酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛の如き金属酸化物;窒化ケイ素の如き窒化物;炭化物炭化ケイ素の如き炭化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの如き無機金属塩;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムの如き脂肪酸金属塩;カーボンブラック、シリカ。
【0062】
これら外添剤はトナー粒子100質量部に対し0.01乃至10質量部が用いられ、好ましくは0.05乃至5質量部が用いられる。外添剤は単独で用いても、また複数併用しても良いがそれぞれ疎水化処理を行ったものがより好ましい。
【0063】
[磁性材料]
本発明の製造方法は、磁性材料を含有する磁性トナーの製造方法にも適用でき、トナーに含有される磁性材料は着色剤の役割を兼ねることもできる。本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としてはマグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金およびその混合物。
【0064】
これらの磁性体は体積平均粒径(Dv)が0.5μm以下、好ましくは0.1乃至0.5μm程度のものがよい。
【0065】
磁性体の体積平均粒径(Dv)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性体の投影面積に等しい円の相当径を求め、それをもとに体積平均粒径の算出を行う。
【0066】
上記磁性体のトナー中への含有量は、重合性単量体100質量部に対して20乃至200質量部、特に好ましくは重合性単量体100質量部に対して40乃至150質量部がよい。
【0067】
また、上記磁性体の800kA/m印加時の磁気特性が、飽和磁化(σs)50乃至200Am2/kg、残留磁化(σr)2乃至20Am2/kgのものが好ましい。磁性体の磁気特性は、振動型磁力計VSM P−1−10(東英工業社製)を用いて、25℃の室温にて外部磁場79.6kA/mで測定する。
【0068】
[疎水化剤]
また、トナー粒子中でのこれらの磁性体の分散性を向上させるために、磁性体の表面を疎水化処理することも好ましい。疎水化処理にはシランカップリング剤やチタンカップリング剤などのカップリング剤類が用いられる。中でもシランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤としては以下のものが挙げられる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン。
【0069】
本発明により製造されるトナーは、前述したように、一成分及び二成分系現像剤のいずれとしても使用できる。
【0070】
一成分系現像剤として磁性体をトナー中に含有させた磁性トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵されたマグネットを利用して磁性トナーを搬送したり帯電する方法が用いられる。また、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いる場合には、ブレード及びファーブラシを用い現像スリーブにて強制的に摩擦帯電しスリーブ上にトナーを付着させることで搬送させる方法がある。
【0071】
本発明の製造方法により得られるトナーを、二成分系現像剤として用いる場合には、トナーと共にキャリアを用い現像剤として使用する。本発明に使用されるキャリアとしては特に限定されるものではないが、主として鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガンおよびクロム原子からなる単独または複合フェライト状態で構成される。
【0072】
飽和磁化、電気抵抗を広範囲にコントロールできる点からキャリア形状も重要であり、たとえば球状、扁平、不定形を選択し、更にキャリア表面状態の微細構造たとえば表面凹凸性をもコントロールすることが好ましい。一般的には上記金属の化合物を焼成、造粒することにより、あらかじめキャリアコア粒子を生成した後、樹脂をコーティングする方法が用いられている。キャリアのトナーへの負荷を軽減する意味合いから、金属化合物と樹脂を混練後、粉砕、分級して低密度分散キャリアを得る方法や、さらには直接金属化合物と重合性単量体との混練物を水系媒体中にて懸濁重合させて真球状に分散した重合キャリアを得る方法も利用することが可能である。
【0073】
キャリアの粒径の測定は、シンパテック(SYNPATEC)社製で乾式分散機(ロドス<RODOS>)を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置(へロス<HELOS>)を用いてキャリアの体積基準の50%平均粒径として測定する。
【0074】
これらキャリアの平均粒径は10乃至100μm、より好ましくは20乃至50μmであることが望ましい。
【0075】
二成分系現像剤を調製する場合のキャリアと本発明におけるトナーとの混合比率は現像剤中のトナー濃度として2質量%乃至15質量%、好ましくは4質量%乃至13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低く実用不可となり、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が増加しやすく、画像の劣化および現像剤の消費量増加が起こりやすい。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
【0077】
本発明で用いた測定方法について以下に述べる。
【0078】
(1)重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
【0079】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0080】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
【0081】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0082】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0083】
具体的な測定法は以下の通りである。
1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
4)前記2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
5)前記4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
6)サンプルスタンド内に設置した前記1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0084】
(2)粒度分布のシャープさの算出方法
粒度分布のシャープさは上述の重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を用い、D4/D1を求めることにより評価した。D4/D1が1に近いほど粒度分布はシャープである。
【0085】
(3)粗粉量の算出方法
トナー中の体積基準の粗粉量(体積%)は、前記のMultisizer 3の測定を行なった後、データを解析することにより算出する。
【0086】
トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%は、以下の手順で算出する。まず、専用ソフトでグラフ/体積%に設定して測定結果のチャートを体積%表示とする。そして、「書式/粒径/粒径統計」画面における粒径設定部分の「>」にチェックし、その下の粒径入力部に「10」を入力する。「分析/体積統計値(算術平均)」画面を表示したときの「>10μm」表示部の数値が、トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%である。このときの10μm以上の体積%を粗粉量とした。
【0087】
(4)スケール付着率の算出方法
重合容器の質量をW0、同じ重合容器でn回重合反応を行った後に水で洗浄し、乾燥させた質量をWとする。トナー粒子の製造処方から計算される総固形分質量をMとした場合、付着率は、
スケール付着率(%)=(W−W0)/M/n×100
で算出される。
【0088】
本発明の実施例で行った画像評価方法とその判断基準について以下に述べる。
【0089】
画像形成装置として、LASER JET2300を用いた。ここで、プロセススピードを150mm/secとし、現像バイアスとして−430Vの直流電圧Vdcに1.6kVpp、周波数2200Hzの交番電界を重畳したものを用いた。この条件において、常温常湿環境下(23℃、60%RH)において8ポイントのA文字を用い印字率を4%とした画像にて間欠モードで6,000枚の画出し耐久試験を行った。なお、記録媒体としてはA4の75g/m2の紙を使用した。
【0090】
(5)画像濃度
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像の濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
【0091】
(6)カブリ
白画像を出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。一方、白画像形成前の転写紙(標準紙)についても同様に反射率を測定した。フィルターは、黒及びマゼンタトナーにはグリーンフィルターを、シアントナーにはアンバーフィルターを、イエロートナーにはブルーフィルターを、それぞれ用いた。白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−白画像サンプルの反射率(%)
【0092】
得られたカブリの値により下の評価基準に従い5段階で評価した。
A:非常に良好なレベル(0.5%未満)
B:良好なレベル(0.5%以上1.0%未満)
C:問題ないレベル(1.0%以上2.0%未満)
D:許容レベル(2.0%以上3.0%未満)
E:悪いレベル(3.0%以上)
【0093】
<実施例1>
(液体Aの調製)
クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた2リットル用4つ口セパラブルフラスコ中にイオン交換水720質量部、0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液450質量部を投入し、15000rpmで撹拌し、60℃に加温した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液67.6質量部を添加することによって、0.56質量%のリン酸カルシウムを含む液体Aを得た。
【0094】
(液体Bの調製および塗布)
0.5モル/リットル−Na3PO4水溶液1354質量部をクレアミックス(エム・テクニック社製)15000rpmで撹拌し60℃に加温した。これに3.0モル/リットル−CaCl2水溶液380質量部を添加しリン酸カルシウムを含む液体を得た。この液体の水を一部除去することによって濃縮し、難水溶性無機化合物であるリン酸カルシウムの濃度が10.00質量%である液体Bを得た。
【0095】
2リットル用4つ口セパラブルフラスコを60℃の湯浴にて加温し、上記調製した液体Bをフラスコに入れ内壁に接触させた。過剰な液体Bを重合容器内から除去後、60℃の湯浴にてフラスコ内部を乾燥し、リン酸カルシウムをフラスコ表面に固着させた。リン酸カルシウムを固着させる前後のフラスコの質量差とフラスコ内壁の表面積から算出したリン酸カルシウムの密度(mg/cm2)を算出した。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。
【0096】
(重合性単量体組成物の調製)
スチレン 74質量部
n−ブチルアクリレート 26質量部
ジビニルベンゼン 0.5質量部
飽和ポリエステル樹脂 10質量部
(ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物、Mn=10000、Mw/Mn=2.6、酸価=12mgKOH/g、Tg=72℃)
E−88(オリエント化学工業社製) 2質量部
負荷電制御剤T−77(保土ヶ谷化学製) 1.5質量部
疎水化処理磁性酸化鉄 90質量部
上記処方を60℃に加温し、均一に溶解、分散した。そこにパラフィンワックス(DSCにおける最大吸熱ピーク78℃)10質量部を添加し混合溶解し、これに重合開始剤t−ブチル−オキシ2−エチルヘキサノエート7.0質量部を溶解して重合性単量体組成物とした。
【0097】
(造粒工程)
前記液体A中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてクレアミックス(エム・テクニック社製)にて15000rpmで10分間撹拌し、造粒し重合性単量体組成物分散液を得た。
【0098】
(重合工程)
上記で調製した重合性単量体組成物分散液を、前述したリン酸カルシウムを固着させたセパラブルフラスコへ移し、プロペラ撹拌羽根を装備する撹拌機の回転数200rpm、温度を70℃に昇温させ4時間重合を行うことにより重合体微粒子分散液を得た。
【0099】
(液体Cによる洗浄)
重合体微粒子分散液をセパラブルフラスコから排出した後、セパラブルフラスコをイオン交換水にて十分洗浄した。このセパラブルフラスコをpH12となるように濃度を調整した炭酸ナトリウム水溶液(液体C)で満たし、85℃で加熱しながら1時間撹拌を行なった。液体Cを排出し、イオン交換水で十分に洗浄した後、セパラブルフラスコを乾燥させ重量を測定した。このセパラブルフラスコを用いてここまでの工程を7回繰り返した後のセパラブルフラスコの重量増加からスケール付着率を求めた。結果を表2に示す。
【0100】
(洗浄、ろ過、乾燥および分級工程)
7回目の重合反応で得られた懸濁液に希塩酸を添加しリン酸カルシウムを溶解させた。これを加圧濾過して固液分離し、次に固形分の質量の3倍のイオン交換水にて再分散して、再び加圧ろ過し水分を10%以下まで低下させた後、40℃の恒温槽で乾燥させトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量を測定した結果を表2に示す。
【0101】
(画像評価)
上記トナー粒子100質量部に、BET比表面積値が120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))を用いて混合し、トナーを調製した。得られたトナーについて画像濃度、カブリの評価を行った結果を表2に示す。
【0102】
<実施例2>
液体CとしてpHが12となるように調整した水酸化ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0103】
<実施例3>
85℃に加熱した2Lの液体Cをセパラブルフラスコ内壁にスプレー散布した以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0104】
<実施例4>
イオン交換水1159質量部に塩化マグネシウム11質量部を溶解した水溶液にイオン交換水59質量部に水酸化ナトリウム9質量部を溶解した水溶液を滴下することによって水酸化マグネシウムコロイド溶液(液体A)を調製し、液体Aを濃縮して水酸化マグネシウムの濃度が10質量%となるようにしたものを液体Bとした以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0105】
<実施例5>
市販のコロイダルシリカ(日産化学工業製スノーテックス20)を0.56質量%となるように希釈して液体Aとし、同じコロイダルシリカを10%となるように希釈して液体Bとした以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0106】
<実施例6>
0.05モル/リットル−Na3PO4水溶液1354質量部をクレアミックス(エム・テクニック社製)15000rpmで撹拌し60℃に加温し、これに0.3モル/リットル−CaCl2水溶液380質量部を添加して液体Bを得た以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0107】
<実施例7>
液体Bを実施例1と同様に調製した後、リン酸カルシウムの濃度が22.0質量%となるまで濃縮したものとした以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0108】
<実施例8>
0.04モル/リットル−Na3PO4水溶液1354質量部をクレアミックス(エム・テクニック社製)15000rpmで撹拌し60℃に加温し、これに0.25モル/リットル−CaCl2水溶液380質量部を添加して液体Bを得た以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0109】
<実施例9>
液体Bを実施例1と同様に調製した後、リン酸カルシウムの濃度が23.0質量%となるまで濃縮したものとした以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0110】
<実施例10>
液体Bとして実施例4と同じものを使用した以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0111】
<実施例11>
液体Bをセパラブルフラスコの内壁に塗布した後、乾燥を行なわなかった以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0112】
<実施例12>
液体CとしてpH9となるように濃度を調整した炭酸ナトリウム水溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0113】
<実施例13>
液体CとしてpH14となるように濃度を調整した炭酸ナトリウム水溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0114】
<比較例1>
液体CとしてpH8となるように濃度を調整した炭酸ナトリウム水溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0115】
<比較例2>
重合工程終了後に液体Cによる洗浄を行わなかった以外は実施例1と同様の方法によりトナー粒子を得た。液体Aの濃度Ca、液体Bの濃度Cb、フラスコに固着させた難水溶性無機化合物の密度を表1に示す。また、スケール付着率、トナー粒子の重量平均粒径(D4)、粒度分布のシャープさ、粗粉量、画像濃度、カブリの評価を表2に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【符号の説明】
【0118】
1 重合容器、2 撹拌翼、3 邪魔板、4 撹拌モーター、5 気液界面、6 温度調節用のジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体および着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を無機分散安定剤を含有した水系媒体(液体A)に加え、該液体A中で該重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程、および該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合してトナー粒子を得る重合工程を含むトナー粒子の製造方法であって、
あらかじめ該重合工程に用いる重合容器内壁の少なくとも一部に難水溶性無機化合物を含む液体(液体B)を塗布させ、かつ該重合工程終了後に該重合容器の内容物を排出した後、該重合容器内壁にpH9以上の水溶液(液体C)を接触させることを特徴とするトナー粒子の製造方法。
【請求項2】
該液体Bを塗布させた後に、該重合容器内壁を加温することを特徴とする請求項1に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項3】
造粒工程で用いる該液体A中の無機分散安定剤と、該液体B中の難水溶性無機化合物が同じものであることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項4】
該液体Aに対する無機分散安定剤の濃度Ca(質量%)と、該液体Bに対する難水溶性無機化合物の濃度Cb(質量%)が1.0×Ca≦Cb≦40.0×Caの関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項5】
該液体Bを重合容器内壁の少なくとも一部に塗布させた後に、該難水溶性無機化合物が該重合容器内壁表面に0.05mg/cm2以上7.50mg/cm2以下で存在することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項6】
該液体B中の難水溶性無機化合物に難水溶性金属化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項7】
該液体B中の難水溶性無機化合物に難水溶性リン酸金属塩を用いることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項8】
該重合容器内壁に該液体Cを接触させる方法が、該重合容器を液体Cで満たした後にこれを加熱しながら撹拌することであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項9】
該液体Cが炭酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−93658(P2012−93658A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242932(P2010−242932)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】