説明

トナー製造装置、トナー製造方法およびトナー

【課題】トナー粒径のばらつきを抑制することができ、かつ、単位時間当りのトナー製造量を増加させることのできるトナー製造装置およびトナー製造方法を提供することである。また、かかるトナー製造装置およびトナー製造方法によって製造されたトナーを提供する。
【解決手段】液収容部14の底部に設けられた段差14aが設けらた段差部14aに、複数の吐出孔15を有する振動板16を弾性部材の層14bを挟んで接着接合している。これにより、振動発生部20で振動板16を振動させたとき、弾性部材が変形し、振動板16の端部を振動板16の中央部と同程度振動させることができる。これにより、振動板16の全面をほぼ平坦な状態で振動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを製造するトナー製造装置、トナー製造方法に関するものである。また、かかるトナー製造装置またはトナー製造方法によって製造されたトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真記録方法に基づく複写機、プリンタ、ファックス、およびそれらの複合機に使用される電子写真用トナーの製造方法として、近年重合法と呼ばれる(重合法によるトナーは「重合トナー」、または「ケミカルトナー」と呼ばれる)水系媒体中で形成される方法が広く行なわれ、粉砕法を凌駕する勢いである。なお、重合法には必ずしも重合過程を伴わない製造方法も便宜上含んでいる。現在実用化されている重合方法は懸濁重合、乳化凝集、ポリマー懸濁(ポリマー凝集)、エステル伸長等の各方法である。重合法による従来のトナー製造方法としては、引用文献1〜引用文献4に記載のものが挙げられる。
【0003】
重合法は粉砕法に比べて、総じて、小粒径トナーが得易い、粒径分布がシャープ、形状が球形に近い等の利点がある。しかし、その反面、重合過程に長時間を必要とし、さらに固化終了後溶媒とトナー粒子を分離し、その後洗浄乾燥を繰り返す必要が有り、その間多くの時間と、多量の水、エネルギーを必要とするなどの課題がある。
【0004】
このような課題に対して、本願出願人は、特許文献5に記載されている噴射造粒によるトナー製造方法を提案した。具体的には、このトナー製造方法は、トナーの原料となるトナー組成液を液滴噴射する液滴噴射ユニットにてトナー組成液を液滴噴射し、液滴噴射ユニットから噴射された液滴に乾燥気体を吹き付けて液滴中の溶媒を蒸発させることで、固形のトナー粒子を得る製造方法である。
【0005】
図7は、特許文献5に記載の液滴噴射ユニット102の概略構成図である。
液滴噴射ユニット102は、複数の吐出孔115が形成された薄膜の振動板116と、振動板116と当接して、振動板116を振動させる円環状の振動発生手段117とを備えている。振動板116の最外周部は、ハンダなどによって、液収容部113に接合固定している。振動板116を振動発生手段117によって振動させることにより、トナー組成液における吐出箇所に吐出孔からせん断力が加わり、その吐出箇所のトナー組成液を切断して液滴が吐出孔から噴射される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献5に記載の液滴噴射ユニット102においては、振動板116の接合部である端部が液収容部113に移動不能に接合固定されているため、振動板116を振動発生手段117で振動させても、端部は、振動することはない。このため、図8に示すように、振動板116を振動させたときにおける振動板116の変位が端部と中央部とで異なってしまう。吐出孔115から噴射される液滴の直径は、振動板16の変位の大きい箇所ほど大きくなるため、振動板116の中央部付近の吐出孔から吐出した液滴の直径と、端部付近の吐出孔から吐出した液滴の直径とが異なってしまう。その結果、粒径のばらつきが抑えられたトナーを製造できないという問題があった。このような液滴の直径のばらつきを抑制するため、特許文献5においては、図9に示すように、振動板116の中央部付近にのみに吐出孔115を形成しているが、これでは、単位時間当たりのトナー製造量が減少してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、トナー粒径のばらつきを抑制することができ、かつ、単位時間当りのトナー製造量を増加させることのできるトナー製造装置およびトナー製造方法を提供することである。また、かかるトナー製造装置およびトナー製造方法によって製造されたトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の吐出孔が形成された振動板と、該振動板が接合されて、該振動板の吐出孔に連通し、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を収容する液収容部と、該振動板を振動させる振動発生手段と、該振動板の吐出孔から周期的に液滴化されて吐出される該トナー組成液の液滴を固化させてトナー粒子を形成する粒子形成手段とを備えたトナー製造装置において、前記振動板の前記液収容部との接合部を、該液収容部に対して可動にしたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のトナー製造装置において、弾性部材を介して前記振動板の接合部を前記液収容部に接合させたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のトナー製造装置において、前記弾性部材のヤング率を、5[GPa]以下としたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかのトナー製造装置において、前記振動板のヤング率を、30[GPa]以上にしたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかのトナー製造装置において、前記振動板の厚みを、50[μm]以上1000[μm]以下にしたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、複数の吐出孔が形成された振動板と、該振動板を振動させる振動発生手段とを備えた液滴化手段を用いて、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、前記複数の吐出孔から周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、前記放出されたトナー組成液の液滴を固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを行うトナーの製造方法において、前記振動板の全面を平坦に振動させて、周期的液滴化工程を行うことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至5いずれかのトナー製造装置、または、請求項6のトナー製造方法によって製造されることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7のトナーにおいて、粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)が、1.00以上1.15以下であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7または8のトナーにおいて、重量平均粒径が、1[μm]以上20[μm]以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、振動板の液収容部との接合部を、液収容部に対して可動にしたので、振動板を振動発生手段で振動させたとき、振動板の接合部を振動させることができる。これにより、振動発生手段で振動板を振動させたとき、振動板の接合部付近の変位量を、接合部付近以外の変位量とほぼ同じにすることができる。その結果、接合部付近の吐出孔から吐出した液滴の直径と、接合部付近以外の吐出孔から吐出した液滴の直径とを、ほぼ同じすることができる。これにより、トナー粒径のばらつきを抑制することができる。また、接合部付近にまで吐出孔を設けることができ、特許文献5に記載のトナー製造装置に比べて、単位時間当りのトナー製造量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のトナー製造装置の概略説明図。
【図2】同トナー製造装置の具体的適用について説明する図。
【図3】同トナー製造装置の液滴噴射ユニットを示す拡大構成図。
【図4】同液滴噴射ユニットの振動板を示す拡大平面図。
【図5】振動している振動板を示す模式図。
【図6】同液滴噴射ユニットの液滴噴射のについて説明する模式図。
【図7】従来のトナー製造装置の液滴噴射ユニットを示す拡大構成図。
【図8】従来の液滴噴射ユニットの振動板を示す拡大平面図。
【図9】従来の振動板の振動の様子を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用したトナー製造方法の実施形態について説明する。図1は、実施形態に係るトナー製造装置を示す概略構成図である。
このトナー製造装置1は、液滴噴射ユニット2、原料収容部7、粒子形成部3、トナー捕集部4などを備えている。
【0012】
原料収容部7は、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解せしめるか、トナー組成物を分散せしめるかしたトナー組成液10を収容している。この原料収容部7内は、液滴噴射ユニット2よりも高い位置に配設されており、原料収容部7と液滴噴射ユニット2とは配管8によって接続されている。原料収容部7内のトナー組成液10は、自然流下によって液滴噴射ユニット2に送られるが、装置稼働時等には補助的にポンプ9を用いてトナー組成液10を液滴噴射ユニット2へ圧送供給する。この液滴噴射ユニット2は、筒状構造の粒子形成部3の上壁に固定されている。そして、後述する複数の吐出孔からトナー組成液10を液滴として鉛直方向下方にある粒子形成部3の筒内に向けて噴射する。噴射された液滴は、粒子形成部3内でごく短時間のうちに固化して粒子になりながら落下する。粒子形成部3の下部には、テーパ構造のトナー捕集部4が接続されており、粒子形成部3内で粒子化しながら落下した粒子は、このトナー捕集部4内のテーパ上に落下して集められる。そして、トナー捕集部4で捕集されたトナー粒子Tがチューブ5を介してトナー貯留部6に送られる。なお、液滴噴射ユニット2を粒子形成部3の上端に固定した例を示したが、粒子形成部3の側面又は底部に固定してもよい。
【0013】
ここでは、液滴噴射ユニット2が1個配置されている例で図示しているが、図2に示すように、複数、例えば制御性の観点からは100〜1,000個(図2では4個のみ図示)の液滴噴射ユニット2を、粒子形成部3の上壁3Aに並べて配置するのが好ましい。図2に示すように、各液滴噴射ユニット2には配管8Aを原料収容部7(共通液溜め)に通じさせてトナー組成液10を供給するようにする。これによって、一度により多くの液滴を放出させることができて、生産効率の向上を図ることができる。
【0014】
図3は、液滴噴射ユニット2を示す拡大構成図である。また、図4は、液滴噴射ユニット2の振動板16を示す拡大平面図である。液滴噴射ユニット2は、振動発生部20、液収容部14、振動板16などを有している。液収容部14には、液滴噴射ユニット2に送られてくるトナー組成液10を受け入れるための受入流路13a、筒状の収容空間12、気泡抜き流路13b、が形成されている。また、液収容部14の底部には、段差14aが設けられている。そして、液収容部14の段差部14aには例えばSi(珪素)からなり、複数の吐出孔15を有する振動板16が、弾性部材14bを挟んで接着接合されており、筒状の収容空間12における下壁として機能している。振動発生部20は、筒状の収容空間12内に収容されているトナー組成液を介して振動板16に対向するように、液収容部14の中空部に配設されている。また、弾性部材14bと収容空間の下壁とを接合する接着剤および弾性部材14bと振動板16とを接合する接着剤としては、接着後、弾性を有する(柔らかい)接着剤を用いるのが好ましい。
【0015】
受入流路13aの開口部と気泡抜き流路13bの開口部とを覆う蓋部材17が設けられている。そして、蓋部材17には液供給チューブ18及び気泡排出チューブ19がそれぞれ貫通して取り付けられている。液供給チューブ18の一端は、受入流路13aに接続されており、他端は、図1に示す配管8に接続されている。気泡排出チューブ19の一端は、気泡抜き流路13bに接続されており、他端は、図1に示す開放弁21に接続されている。
【0016】
自然流下によって液滴噴射ユニット2内に送られたトナー組成液10は、受入流路13aを通った後、筒状の収容空間12内に進入して振動板16に受け止められる。振動発生部20に交流電圧を与えることにより、圧電効果により振動が発生し、この振動がトナー組成液10を介して振動板16に伝わる。これにより、振動板16が振動する。本実施形態においては、振動板16は、弾性部材14bを挟んで液収容部14に接合されているため、振動板16の接合部である端部が液収容部14に対して可動になっている。よって、振動発生部20により振動板16を振動させたとき、弾性部材14bが変形し、振動板16の接合部である端部が、中央部と同程度振動する。その結果、図5に示すように、振動板16の全面がほぼ平坦に振動する。振動板16は、振動波がトナー組成液10を伝達するためにかかる時間だけ移送が遅れて振動し、振動発生部20との振動の位相差により、収容空間12に圧力の変動が起きる。この圧力の変動により、図6に示すように、吐出孔15から液滴31が吐出(噴射)される。粒子形成部3内には、図中矢印35に示すような、液滴落下方向と同方向に送気される乾燥気体によって溶媒が除去されて、トナー粒子となる。また、初速を持って吐出された液滴31が粒子形成部3内の気体の粘性抵抗により減速され、液滴の落下速度が、乾燥気体の流速と同じ速度となる。
【0017】
形成される液滴31の直径は、振動板16の複数の吐出孔15が形成された領域における振動変位が大きいほど大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、または液滴化しない。しかし、本実施形態においては、振動板16の全面がほぼ平坦に振動する。よって、先の図4に示すように、端部付近にまで吐出孔15を設けても、端部付近の吐出孔から噴射される液滴の直径と、中央部付近の吐出孔から噴射される液滴の直径とをほぼ同じすることができる。これにより、従来装置に比べて生産効率を飛躍的に向上させることができる。
【0018】
振動板16の全面が平坦に振動するためには振動板16は撓みが生じないような硬い部材のものが好ましく、例えば、縦弾性係数(ヤング率)が30[GPa]以上の部材が好ましい。本実施形態においては、縦弾性係数(ヤング率)120[GPa]の振動板を用いた。また、振動板16は撓みが生じないように大きな厚みを有するものが好ましい。しかし、吐出孔15の加工や吐出孔15の長さによるトナー組成液10に対する流体抵抗を考慮すると、厚すぎても問題が生じる。具体的には、振動板の厚みが50〜1000[μm]、かつ、吐出孔15の開口径が3〜35[μm]であることが、吐出孔15からトナー組成液10の液滴を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴31を発生させることができる観点から好ましい。振動板16及び吐出孔15の形状としては、その他特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができる。なお、吐出孔15の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。また、複数の吐出孔15の個数は、2〜3000個が好ましい。
【0019】
ここで、液滴化を可能とする振動板16の振動周波数としては20[KHz]〜2.0[MHz]の領域が好ましく、40[KHz]〜400[KHz]の範囲がより好ましい。20[KHz]以上の振動周期であれば、液体の励振によって、トナー組成液10中の顔料やワックスなどの微粒子の分散が促進される。また、圧力が10[KPa]以上となることによって、微粒子分散促進作用がより好適に発生する。
【0020】
また、振動板16の全面が平坦に振動するためには弾性部材14bとしては、変形しやすい部材が好ましく、具体的には、縦弾性係数(ヤング率)が、5[GPa]以下の部材が好ましい。
【0021】
上述したように、形成される液滴31の直径は、振動板16の複数の吐出孔15が形成された領域における振動変位が大きいほど圧力の変動が大きく吐出される液滴が大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、または液滴化しない。
【0022】
トナー組成液の条件を変更して実験を行ったところ、粘度20[mPa・s]以下、表面張力20〜75[mN/m]の領域においてサテライトが発生した。このことから、圧力が、10[Pa]以上500[KPa]以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは100[KPa]以下である。圧力をこの範囲にすることでサテライトの発生を抑制できる。なお、サテライトとは、狙いの液滴に対して明らかに小さな液滴のことである。
【0023】
次に、このように構成したトナー製造装置1によるトナーの製造工程の概要について説明する。先に示した図1において、原料収容部7内のトナー組成液を液滴噴射ユニット2に送り込みながら、液滴噴射ユニット2の振動発生部20に交流電圧を与えることにより、圧電効果により振動発生部20を振動させる。そして、この振動によって振動板16を周期的に振動させて複数の吐出孔15からトナー組成液を周期的な液滴として噴出する。この液滴を粒子形成部3内に放出する。このとき、液滴噴射ユニットの複数の吐出孔15からは液滴が短周期で放出される(周期的液滴化工程)。先の図4に示すように、振動板16の端部付近にまで吐出孔15を形成しても、端部付近の吐出孔15の目詰まりがないことから、従来装置に比べて生産効率を飛躍的に向上させることが可能になった。また、安定した大きさの液滴を噴射することから、粒径のバラツキの少ないトナーを製造することができる。
【0024】
粒子形成部3内に放出された液滴31は、落下方向と同方向に送気される乾燥気体35によって溶媒が除去されて、トナー粒子となる。つまり、周期的液滴化工程で得られた液滴を固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程を実施する。乾燥気体としては、大気圧下の露点温度が−10[℃]以下の状態の気体を用いる。液滴31を乾燥可能な気体であればよく、例えば、空気、窒素ガスなどを例示することができる。
【0025】
この粒子形成部3で固化したトナー粒子はトナー捕集部4にて捕集された後、チューブ5を介してトナー貯留部6に送られて貯留される。トナー捕集部4の断面形状については、開口径が入口部(液滴噴射ユニット2側)から出口部に向けて漸次縮小するテーパ面41を有する形状とする。また、トナー捕集部4の入口部には、粒子形成部3で形成されたトナー粒子Tの電荷を一時的に中和する(除電する)除電手段43を備えている。この除電手段43は、トナー粒子Tに対して軟X線を照射する軟X線照射装置を用いている。なお、除電手段43としてトナー粒子Tに対してプラズマ照射を行うプラズマ照射装置を用いることもできる。そして、例えば、図示しない吸引ポンプなどでトナー捕集部4内から吸引を行うことによってトナー捕集部4内に下流側に向かう渦流である気流42を発生させる。このように渦流(気流42)によって遠心力を発生させることで、確実にトナー粒子Tを捕集して下流側のトナー貯留部6に移送することができる。また、トナー捕集部4、チューブ5、トナー貯留部6を導電性の材料で形成したときには、これらが接地されている(アースに接続されている)ことが好ましい。なお、このトナー製造装置1は全体が防爆仕様であることが好ましい。また、トナー捕集部4からトナー粒子Tをトナー貯留部6に向けて圧送したり、あるいは、トナー貯留部6側からトナー粒子Tを吸い込む構成としたりすることもできる。
【0026】
なお、この実施形態では、トナー組成液10として、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成物を溶剤に溶解又は分散した溶液を用い、液滴に含まれる有機溶媒を粒子形成部3において乾燥気体によって蒸発させ、乾燥による収縮固化を行ってトナー粒子を形成しているが、これに限られるものではない。
【0027】
例えば、加熱した貯留部内にトナー組成物を溶融し液状化してトナー組成液とし、液滴として液滴噴射ユニット2で吐出、放出させた後、落下する液滴31を粒子形成部3で冷却固化してトナー粒子を形成する構成とすることもできる。また、熱硬化性物質を含むトナー組成液を使用して、液滴として放出させた後、落下する液滴31を粒子形成部3で加熱し硬化反応させて固化してトナー粒子を形成する構成とすることもできる。さらに、放射線硬化性物質を含むトナー組成液を、液滴として放出させた後、落下する液滴31を粒子形成部3で光を照射し硬化反応させて固化してトナー粒子を形成する構成としてもよい。
【0028】
次に、本発明に係るトナーについて説明する。本発明に係るトナーは上述したトナー製造装置1を用いたトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これにより、粒度分布が単分散なものが得られる。
【0029】
具体的には、トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)としては、1.00〜1.05の範囲内にあるのが好ましい。また、重量平均粒径としては、1〜20[μm]の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
次に、本発明で使用できるトナー材料(トナー組成液)について説明する。先ず、前述したようにトナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー組成液について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等のトナーバインダーを各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。また、上記材料を熱溶融混練し得られた混練物を各種溶媒に一度溶解乃至分散した液を、トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的のトナーを得ることも可能である。
【0031】
〔トナー用材料〕
トナー用材料としては、少なくとも樹脂と着色剤とを含有し、必要に応じて、キャリア、ワックス等のその他の成分を含有する。
【0032】
〔樹脂〕
樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができる。例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0033】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体、などが挙げられる。
【0034】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0035】
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類、などが挙げられる。
【0036】
ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0037】
本発明に係るトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
【0038】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)が挙げられる。
【0039】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0040】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部用いることが好ましく、0.03〜5質量部用いることがより好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好適に挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0041】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、1,1´−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2´,4´−ジメチル−4´−メトキシバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート、などが挙げられる。
【0042】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0043】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1[mgKOH/g]〜100[mgKOH/g]であることが好ましく、0.1[mgKOH/g]〜70[mgKOH/g]であることがより好ましく、0.1[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが最も好ましい。
【0044】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
【0045】
3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0046】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などがあげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
【0047】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100[%]となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0048】
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1[mgKOH/g]〜100[mgKOH/g]であることが好ましく、0.1[mgKOH/g]〜70[mgKOH/g]であることがより好ましく、0.1[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが最も好ましい。
【0049】
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0050】
本発明に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0051】
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50[mgKOH/g]を有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0052】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0[g]を精秤し、重合体成分の重さを[Wg]とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300[ml]のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150[ml]を加え溶解する。
(3)0.1[mol/l]のKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS[ml]とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB[ml]とし、以下の式で算出する。ただしfは、KOHのファクターである。
酸価[mgKOH/g]=[(S−B)×f×5.61]/W
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80[℃]であるのが好ましく、40〜75[℃]であるのがより好ましい。Tgが35[℃]より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0053】
本発明で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金。(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
【0054】
磁性体として具体的に例示すると、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0055】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0056】
異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2[μm]が好ましく、0.1〜0.5[μm]がより好ましい。前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0057】
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200[emu/g]、残留磁化2〜20[emu/g]のものが好ましい。
【0058】
磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0059】
〔着色剤〕
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
【0060】
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0061】
本発明に係るトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0063】
マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
【0064】
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30[mgKOH/g]以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20[mgKOH/g]以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30[mgKOH/g]を超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0065】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
【0066】
分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1質量%未満であると、顔料分散性が不十分となることがあり、10質量%より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
【0067】
分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0068】
分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0069】
〔その他の成分〕
<ワックス>
また、本発明では、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。
ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0070】
ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0071】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0072】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0073】
ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0074】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。
【0075】
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば、融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。
【0076】
離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
【0077】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
【0078】
ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャトロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0079】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがより好ましい。
【0080】
ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0081】
なお、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0082】
ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0083】
<流動性向上剤>
本発明に係るトナーに流動性向上剤を添加してもよい。流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0084】
流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0085】
流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2[μm]であることが好ましく、0.002〜0.2[μm]であることがより好ましい。
【0086】
微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0087】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
【0088】
さらには、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0089】
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100[nm]になるものが好ましく、5〜50[nm]になるものがより好ましい。
【0091】
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30[m/g]以上が好ましく、60〜400[m/g]がより好ましい。表面処理された微粉体としては、20[m/g]以上が好ましく、40〜300[m/g]がより好ましい。
【0092】
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
【0093】
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体(感光体)・キャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0094】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。
【0095】
使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
【0096】
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0097】
外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。
無機微粒子の一次粒子径は、5[μm]〜2[μm]であることが好ましく、5[μm]〜500[μm]であることがより好ましい。
【0098】
BET法による比表面積は、20〜500[m/g]であることが好ましい。
【0099】
無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0100】
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0101】
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。
【0102】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
【0103】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1[μm]のものが好ましい。
【0104】
<キャリア>
本発明に係るトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。前記キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアも樹脂コートキャリアも使用することができる。
【0105】
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。
【0106】
被覆材に使用する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が好適に挙げられる。この他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆(コート)材として使用できる樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
【0107】
樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解若しくは懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が適用できる。
【0108】
樹脂コートキャリアに対する樹脂被覆材の割合としては、適宜決定すればよいが、樹脂コートキャリアに対し0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0109】
2種以上の混合物の被覆(コート)剤で磁性体を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものが挙げられる。
【0110】
樹脂中、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂が好適に使用され、特にシリコーン樹脂が好ましい。含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物が挙げられる。
【0111】
シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応することにより生成された、変性シリコーン樹脂が挙げられる。 キャリアコアの磁性材料としては、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金を用いることができる。
【0112】
また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。これらの中でも特に、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが好適に挙げられる。
【0113】
キャリアの抵抗値としては、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して10〜1010[Ω・cm]にするのがよい。
【0114】
前記キャリアの粒径としては、4〜200[μm]のものが使用できるが、10〜150[μm]が好ましく、20〜100[μm]がより好ましい。特に、樹脂コートキャリアは、50%粒径が20〜70[μm]であることが好ましい。
【0115】
2成分系現像剤では、キャリア100質量部に対して、本発明のトナー1〜200質量部で使用することが好ましく、キャリア100質量部に対して、トナー2〜50質量部で使用するのがより好ましい。
【0116】
本発明に係るトナーを用いた現像方法は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できるが、例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体、などが好適に使用可能である。
【0117】
次に、加熱した貯留部内にトナー組成物を溶融し液状化してトナー組成液とし、液滴として液滴噴射ユニット2で吐出、放出させた後、落下する液滴31を粒子形成部3で冷却固化してトナー粒子を形成する場合に使用するトナー組成液について説明する。
加熱溶融して冷却固化して得るトナー組成物としては、溶融したとき低粘度の溶融液が得られる材料を主成分として用いることが好ましい。
【0118】
具体的には、モノアミド、ビスアミド、テトラアミド、ポリアミド、エステルアミド、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸系及びメタクリル酸系高分子、スチレン系高分子、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリケトン、シリコーン、クマロン、脂肪酸エステル、トリグリセライド、天然樹脂、天然及び合成ワックス等から選択された1ないし多成分から成ることが可能である。
【0119】
ポリアミド樹脂として、バーサミド711、バーサミド725、バーサミド930、バーサミド940、バーサロン1117、バーサロン1138、バーサロン1300(以上ヘンケル製)、トーマイド391、トーマイド393、トーマイド394、トーマイド395、トーマイド397、トーマイド509、トーマイド535、トーマイド558、トーマイド560、トーマイド1310、トーマイド1396、トーマイド90、トーマイド92(以上富士化成製)、ポリエステルとして、KTR2150(以上花王製)、ポリ酢酸ビニルとして、AC401、AC540、AC580(以上アライドケミカル製)、シリコーンとして、シリコーンSH6018(東レシリコーン製)、シリコーンKR215、シリコーンKR216、シリコーンKR220(以上信越シリコーン製)、クマロンとして、エスクロンG−90(新日鐵化学製)などが使用できる。
【0120】
脂肪酸類としては、例えばステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などから選ばれる酸及びそれらのエステル類の少なくとも1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0121】
脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸エステルアミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、ブラシジン酸アミドなど、N−置換脂肪酸アミドとしてN,N´−2−ヒドロキステアリン酸アミド、N,N´−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N´−キシレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミド、2−ステアラミドエチルステアレートなどから選ばれる少なくとも1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0122】
N−置換脂肪酸アミドとしてN,N´−2−ヒドロキステアリン酸アミド、N,N´−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N´−キシレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N´−ジステアリルイソフタル酸アミドなどから選ばれる少なくとも1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0123】
脂肪酸エステルとしては一価または多価アルコール脂肪酸エステルが好ましい。例えば、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート等が選ばれる。
【0124】
具体的には、レオドールSP−S10、レオドールSP−S30、レオドールSA10、エマゾールP−10、エマゾールS−10、エマゾールS−20、エマゾールB、レオドールスーパSP−S10、エマノーン3199、エマノーン3299、エキセパールPE−MS(以上花王製)等が使用できる。
【0125】
更に好ましいのは、グリセリンの脂肪酸エステルである。
例えば、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチンモノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどが選ばれる。具体的には、レオドールMS−50、レオドールMS−60、レオドールMS−165、レオドールMO−60、エキセパールG−MB(以上花王製)、脱臭精製カルナバワックスNo.1、精製キャンデリラワックスNo.1(以上野田ワックス製)、シンクロワックスERL−C、シンクロワックスHR−C(以上クローダ製)、KF2(川研ファインケミカル製)が使用できる。また、特殊エステル系ワックスとして、エキセパールDS−C2(花王製)、カワスリップ−L、カワスリップ−R(以上川研ファインケミカル製)等も選ばれる。セロチン酸ミリシル、セロチン酸セリル、モンタン酸セリル、パルミチン酸ミリシル、ステアリン酸ミリシル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル等の高級脂肪酸の高級アルコールエステル類等も選ばれる。
【0126】
ここで、アルキル基は、脂肪酸およびアルコールの両方に存在する。これらの脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種、または2種以上を混合して用いることができる。この脂肪酸エステル類は溶融粘度が低く、インク溶融時の流動性が安定している他に、炭素−炭素の結合に比べて、可撓性が高く表面保護力が強いため、印刷画像の折り曲げにも耐える。好ましい脂肪酸エステルは、針入度が1より大きく加圧処理し易いものである。更に、噴射時の粘度が20[mPa・s]より小さいものが適している。
【0127】
ポリアミド類は、一般に芳香族ポリアミドとダイマー酸ポリアミドに大別されるが、本発明では特にダイマー(二量体)酸ベースのポリアミドが好ましい。さらに、このベースとなる酸がオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸またはエレオステアリン酸であることが最適である。具体的には、Macromelt 6030、Macromelt 6065、Macromelt 6071、Macromelt6212、Macromelt 6217、Macromelt 6224、Macromelt 6228、Macromelt 238、Macromelt 6239、Macromelt 6240、Macromelt 6301、Macromelt 6900、DPX 335−10、DPX H−415、DPX 335−11、DPX 830、DPX 850、DPX 925、DPX 927、DPX 1160、DPX 1163、DPX 1175、DPX 1196、DPX 1358(以上ヘンケル白水製)、SYLVAMIDE−5(アリゾナケミカル製)、UNIREZ 2224、UNIREZ 2970(以上ユニオンキャンプ製)等が選ばれる。
【0128】
グリセライドとしては、ロジンエステル、ラノリンエステル、硬化ひまし油、部分水添ひまし油、大豆油の極度硬化油、ナタネ油の極度硬化油、植物性極度硬化油などから選ばれる少なくても1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0129】
ワックス系としては、具体的にはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックスに代表される植物系ワックス、ポリエチレンワックスや硬化ひまし油、ステアリン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸、および高級アルコール、ステアロン、ラウロン等のケトン、特に脂肪酸エステルアミド、飽和あるいは不飽和脂肪酸アミド、脂肪酸エステルが好ましい。
【0130】
更に上記の脂肪酸、脂肪酸アミド、グリセライド、ワックス等他のインク成分と適応性である限り、考えられるどの組み合わせにおいても使用できる。
【0131】
なお、着色剤等は前述したと同様である。
【0132】
上記の成分の混合、分散には周知の各種の粉砕又は分散装置が特に制限無く使用できる。これらには、高速回転ミル、ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル等の区分ないしは回転円筒式ミル、振動ボールミル、遠心式ボールミル、媒体撹拌式ミル及びコロイドミル等の区分があり、例えば、カッターミル、ケージミル、ハンマーミル、遠心分級ミル、スタンプミル、フレットミル、遠心ミル、ボールベアリングミル、リングロールミル、テーブルミル、転動ボールミル、チューブミル、コニカルミル、トリコンミル、ポットミル、カスケードミル、遠心流動化ミル、アニュラーミル、ハイスピードデイスパーサ、インペラデイスパーザ、ゲートミキサ、ビーズミル、サンドミル、パールミル、コブラミル、ピンミル、モリネックスミル、撹拌ミル、ユニバーサルミル、センチュリーミル、プレッシャミル、アジテータミル、2本ロールエクストルーダ、2本ロールミル、3本ロールミル、ニッチェミル、ニーダ、ミキサ、ストーンミル、ケーデイミル、遊星ミル、ハイスイングミル、環状ミル、撹拌槽型撹拌ミル、竪型流通管撹拌ミル、ボールミル、パドルミキサ、タワーミル、アトライタ、セントリミル、サンドグラインダ、グレンミル、アトリションミル、プラネタリーミル、振動ミル、フロージェットミキサ、スラッシャーミル、ペグミル、マイクロフルダイザ、クレアミックス、ライノミル、ホモジナイザ、ピン付きビーズミル、横型ビーズミル、ピンミル、マジャックミル等がある。
【0133】
上記の粉砕又は分散装置で、トナー材料を混合、粉砕、分散したトナー組成液を、融解状態を維持したまま収容空間12に導入して吐出孔15から吐出して液滴を形成してもよいし、あるいは、上記の粉砕又は分散装置で得られたトナー組成液をいったん冷却し固化し粗粉砕して取り置き、この粗粉砕物を収容空間12に導入し加熱溶融した後、吐出孔15から吐出して液滴を形成してもよい。
【0134】
次に、放射線硬化性物質を含むトナー組成液を、液滴として放出させた後、落下する液滴31を粒子形成部3で光を照射し硬化反応させて固化してトナー粒子を形成する場合のトナー組成液について説明する。
ここで、放射線硬化性物質としては、一般に感放射線性樹脂あるいは放射線硬化性樹脂として知られている還化ポリイソプレン、還化ポリブタジエン、ポリエーテルのポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルアルコールの桂皮酸エステル、ノボラック樹脂、ポリメタクリル酸グリシジル、塩素化ポリメチルスチレン等が挙げられる。
【0135】
これらの放射線硬化性物質は、溶媒または重合性単量体によって希釈され、放射線架橋剤あるいは放射線重合開始剤が加えられる。重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル芳香族単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル等のアクリル系単量体、蟻酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系単量体、およびジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0136】
これらの重合性単量体は、単独でも、2種以上の組み合わせで用いても良く、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ジビニルベンゼンを0.05〜3重量部含有する。ことが、定着性を維持しつつオフセット現象を防止できるため好適である。
【0137】
放射線架橋剤あるいは放射線重合開始剤としては、芳香族アジド、トリクロロメチルトリアジド等のアジド化合物、ハロゲン化銀、ビスイミダゾール誘導体、シアニン色素、ケトクマリン色素等が挙げられる。また、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ系ラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0138】
また、放射線硬化性物質を含むトナー組成液の液滴31を浮遊中に硬化させるための光の波長は、紫外〜480[nm]、特に250〜410[nm]が好ましく、光源として高圧あるいは低圧水銀灯を用いることができる。この硬化に要するエネルギーは、数[mJ/cm]〜数[J/cm]が好ましい。
【0139】
次に、この実施形態における具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0140】
(実施例1)
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(Regal400;Cabot社製)17質量部、顔料分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、5[μm]以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0141】
−ワックス分散液の調整−
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18質量部、ワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3[μm]以下となるようワックス粒子を析出させた。ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、更にダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が2[μm]以下なるよう調整した。
【0142】
−トナー組成分散液の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成分散液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、ワックス分散液30質量部を、酢酸エチル840質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。なお、この分散液の電気伝導度は1.8×10−7[S/m]であった。
【0143】
−トナーの作製−
得られた分散液を、前述したトナー製造装置1の液滴噴射ユニット2の収容空間12に供給した。使用した振動板16は、外径8.0[mm]で厚み500[μm]のシリコン板に、二段の真円形状の直径100[μm]と10[μm]の吐出孔15を、ドライエッチングで作製した。直径6[mm]の面に吐出孔を設けた。この場合の計算上の有効吐出孔数は1500個となる。振動板16と液収容部14の間に設けた弾性部材の層14bには厚みが0.5[mm]、縦弾性係数(ヤング率)が0.1[GPa]のシリコンゴム(信越化学社製SIFEL2614)接着剤を使用した。
【0144】
分散液調製後、以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、液滴を乾燥固化することにより、トナー母体粒子を作製した。吐出孔15通過時に帯電した粒子が捕集時に静電気で壁面に付着しトナー捕集効率が低下することを防止するため、捕集直前に軟X線照射を行い除電した。軟X線照射装置としては、浜松ホトニクス製の防爆型フォトイオナイザ(L9499型)を使用した。軟X線照射による除電を行うことにより、捕集部でのトナー粒子の壁面付着は発生しなかった。
【0145】
―振動板16の評価―
<振動変位測定>
吐出孔15を有する振動板16の振動変位は、レーザードップラー振動変位計(グラフテック社製)を用いて測定した。レーザーを、顕微鏡レンズを通して振動板16上に集光する。そして、同軸光学系で反射光をフォトダイオードで電気的に検知しドップラー効果により振動速度を算出する。振動変位量は振動速度の積分により求められている。信号はオシロスコープ(Tektronik社製)で取り込み、パーソナルコンピュータ(PC)で保存した。
【0146】
〔トナー作製条件〕
分散液比重 :ρ=1.1888[g/cm
乾燥空気流量 :装置内乾燥窒素 30.0[L/分]
装置内温度 :27〜28℃
露点温度 :−20℃
振動板の振動数 :100[KHz]
また、上述した振動変位の測定結果により計算されるトナー組成液10に与えられる圧力は約20[KPa]であった。この条件で、トナー組成液10はノズル目詰まりを生じる(閉塞する)ことなく、安定的に4時間噴射された。
【0147】
乾燥固化したトナー粒子は、軟X線照射による除電をして、1[μm]の細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子の粒度捕集した粒子の粒度分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000)で下記に示す測定条件において測定したところ、重量平均粒径(D4)は5.2[μm]、個数平均粒径(Dn)が4.9[μm]であり、D4/Dnが1.06のトナー母体粒子が得られた。
【0148】
−トナーの評価−
得られたトナーについて、以下の評価を行った。なお、その結果を表1に示している。
<粒度分布>
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。
トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定することができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3[cm]の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60[μm]以上159.21[μm]未満)の粒子数が20個以下の水10[ml]中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5[mg]加え、超音波分散器STM社製UH−50で20[kHz],(50[W]/10[cm])の条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が(4000〜8000個/10−3[cm])(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60[μm]以上159.21[μm]未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200[μm])の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために(1/30)秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、表1に示す通り、0.06−400[μm]の範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60[μm]以上159.21[μm]未満の範囲で粒子の測定を行う。
【0149】
<細線再現性>
現像剤を、市販の複写機(イマジオネオ271;リコー社製)の現像器部分を改良した改造機に入れ、画像占有率7%の印字率でリコー社製6000ペーパーを用いてランニングを実施した。その時の初期10枚目の画像と3万枚目の画像の細線部を原稿と比較し、光学顕微鏡で100倍で拡大観察し、ラインの抜けの状態を段階見本と比較しながら4段階で評価した。表1中、◎>○>△>×の順に画像品質が高い。特に、「×」の評価は製品として採用できないレベルである。負帯電極性のトナーの場合には、有機静電潜像担持体を使用し、正帯電極性のトナーの場合は非晶質シリコン静電潜像担持体を使用した。
【0150】
現像方法1では、トナーを気流で直接現像部位にまで搬送し、パウダークラウドにより現像した。
【0151】
現像方法2では、搬送手段として従来の電子写真で使用される樹脂コートキャリアを使用した。キャリアとしては以下のものを用いた。
〔キャリア〕
芯材:平均粒径50[μm]の球形フェライト粒子
コート材構成材料:シリコーン樹脂
【0152】
そして、シリコーン樹脂をトルエンに分散させ、分散液を調整後、加温状態にて上記芯材にスプレーコートし、焼成、冷却後、平均コート樹脂膜厚み0.2[μm]のキャリア粒子を作成した。
【0153】
(比較例1)
−トナー組成分散液の調製−
着色剤及びワックスの分散液、樹脂を添加した分散液を、実施例1と同様の条件で調製した。
【0154】
−トナーの作製−
実施例1で用いた装置の代わりに、図7に示す液滴噴射ユニット102を使用した以外は実施例1と同様にして、以下のようなトナー作製条件で、液滴を吐出させた後、液滴を乾燥固化することにより、トナーを作製した。
【0155】
〔トナー作製条件〕
分散液比重 :ρ=1.1888[g/cm
乾燥空気流量 :装置内エアー 3.0[L/分]
装置内温度 :27〜28℃
乾燥空気(露点温度): −20℃
圧電パルス周波数 :20[KHz]
【0156】
ここで図7の液滴噴射ユニット102の詳細を説明する。液滴噴射ユニット102は、複数の吐出孔115が形成された薄膜状の振動板116、この振動板116を振動させる円環状の振動発生部117などを有している。ここで、振動板116は、最外周部(端部)をハンダ又はトナー組成液に溶解しない樹脂結着材料によって液収容部113に接合固定している。振動発生部117は、この振動板116の変形可能領域(液収容部113に固定されていない領域)内の周囲に配されている。この振動発生部117にはリード線121、122を通じて駆動回路(駆動信号発生源)123から所要周波数の駆動電圧(駆動信号)が印加されることで、振動する。振動発生部117の振動により、振動板116が、図8に示すように、中央部が端部に比べて大きく変位するような撓み振動し、収容空間112に貯留されるトナー組成液10を液滴化して振動板116の中央部付近に設けられた吐出孔115から噴射する。なお、液収容部113には液供給チューブ118及び気泡排出チューブ119がそれぞれ接続されている。
【0157】
振動発生部117としては、振動板116に確実な振動を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はないが、上述したように、バイモルフ型のたわみ振動の励起される圧電体が好ましい。圧電体としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいことから、積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO、等の単結晶、などが挙げられる。
【0158】
乾燥固化したトナー粒子は、1[μm]の細孔を有するフィルターで吸引捕集した。捕集した粒子の粒度捕集した粒子の粒度分布をフロー式粒子像解析装置(FPIA−2000)で測定したところ、重量平均粒径は7.8[μm]、個数平均粒径が5.2[μm]であり、粒度分布の広いトナー母体粒子が得られた。
また、得られたトナーについて、上述の評価を行った、結果を表1に示す。
【0159】
【表1】

【0160】
この表1に示すように、比較例1の装置においては、振動板116の中央部にのみ吐出孔115を設けているため、振動板の端部付近にまで吐出孔を設けた実施例1に比べて、噴射量が、著しく少ないことがわかる。また、実施例1の装置においては、トナー組成液10は吐出孔に目詰まりを生じる(閉塞する)ことなく、安定的に4時間噴射された。一方、比較例1の装置においては、0.6時間経過した時点で振動板の吐出孔に目詰まりを生じていることが確認された。これは、実施例1の装置は、振動板16の端部が液収容部14に対して可動になるように液収容部14に接合されているため、振動板の全面がほぼ平坦に振動する。このため、端部付近の振動変位と中央部付近の振動変位がほぼ同じであるため、目詰まりすることなく、液滴を噴射し続けることができたと考えられる。一方、比較例1の装置においては、振動板116の端部が直接液収容部113に接合されており、振動板116の端部が液収容部113に対して移動不能になっているため、中央部から離れた位置の振動変位が少ない。このため、中央部から離れた位置の吐出孔115では、吐出孔115からのトナー液が滲み出すだけで、液滴として吐出しなかったと考えられる。そして、この滲み出したトナー液が乾燥して吐出孔115を塞ぎ、目詰まりを起こす。そして、このような滲み出しによって目詰まりする吐出孔115の数が徐々に増えていき、0.6時間後には全ての吐出孔115が塞がれ、吐出が完全に止まったと考えられる。
【0161】
また、実施例1の装置は、振動板16の全面がほぼ平坦に振動するため、ほぼ均一な直径の液滴が噴射されるため、粒度分布の狭いトナー母体粒子が得られた。一方、比較例1の装置においては、振動板116が撓み振動するため、中央部から離れた位置の振動変位が中央部の振動変位に比べて小さくなる。その結果、中央部から離れた位置の吐出孔から噴射した液滴の直径が、中央部の吐出孔から噴射した液滴の直径に比べて小さくなり、粒度分布の広いトナー母体粒子が得られたと考えられる。このように、比較例1の装置を用いて製造されたトナーの粒度分布が広いため、実施例1の装置で製造されたトナーに比べて細線再現性が悪い結果が得られたと考えられる。
【0162】
このように、実施例1の装置を用いてトナーを製造することで、トナーの生産効率を飛躍的に向上させることができる。また、実施例1の装置を用いることで、粒径分布の狭いトナーを製造することができるので、実施例1の装置を用いて製造したトナーを用いて現像を行い得られた画像は、静電潜像に忠実な極めて画像品質に優れたものにできる。
【0163】
以上、本実施形態のトナー製造装置は、複数の吐出孔15が形成された振動板16と、振動板16が接合されて、振動板の吐出孔に連通し、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を収容する液収容部14と、振動板16を振動させる振動発生手段たる振動発生部20と、振動板16の吐出孔15から周期的に液滴化されて吐出されるトナー組成液の液滴を固化させてトナー粒子を形成する粒子形成手段たる粒子3形成部とを備えている。そして、振動板16の液収容部14との接合部たる端部を、液収容部14に対して可動にした。これにより、振動板16を振動発生部20で振動させたとき、振動板16の端部を振動させることができ、振動板の全面をほぼ平坦な状態で振動させることができる。従って、振動板16の端部付近の変位量を、中央部の変位量とほぼ同じになり、端部付近の吐出孔を設けても、端部付近から吐出した液滴の直径と、接合部付近以外の吐出孔から吐出した液滴の直径とを、ほぼ同じすることができる。これにより、トナー粒径のばらつきを抑制することができ、かつ、トナーの生産効率を高めることができる。
【0164】
また、弾性部材(本実施形態においては弾性部材の層14b)を介して振動板16の端部を液収容部14に接合させることにより、振動発生部20で振動板16を振動させたとき、弾性部材が変形し、振動板16の端部を振動させることができる。これにより、振動板の全面をほぼ平坦な状態で振動させることができる。
【0165】
また、弾性部材のヤング率を、5[GPa]以下とすることによって、振動発生部20で振動板16を振動させたとき、弾性部材が良好に変形し、振動板16の端部を中央部と同程度振動変位させることができる。これにより、振動板の全面をほぼ平坦な状態で振動させることができる。
【0166】
また、振動板16のとして、ヤング率が30[GPa]以上の部材を用いることで、振動板16が撓みにくくなり、振動発生部20で振動板16を振動させたとき、振動板の全面をほぼ平坦な状態で振動させることができる。
【0167】
振動板16の厚みを、50[μm]以上にすることによって、振動板16が撓みにくくなり、振動発生部20で振動板16を振動させたとき、振動板の全面をほぼ平坦な状態で振動させることができる。また、振動板16の厚みを、1000[μm]以下にすることによって、振動板を振動させたときの収容空間12のトナー組成液に加わる圧力によって、液滴を噴射させることができる。
【0168】
また、振動板の全面を平坦に振動させて、周期的液滴化工程を行うことで、均一な液滴を噴射させることができ、粒径分布の狭いトナーを製造することができる。
【0169】
また、本実施形態のトナー製造装置1または上記トナー製造方法により製造されるので、粒径分布の狭いトナーを得ることができる。
【0170】
また、トナーの粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)が、1.00以上1.15以下、重量平均粒径が、1[μm]以上20[μm]以下であるので、このトナーを画像形成装置に用いることで、先鋭性、高精細性に優れた画像を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0171】
1:トナー製造装置
2,102:液滴噴射ユニット
3:粒子形成部
4:トナー捕集部
6:トナー貯留部
7:原料収容部
9:ポンプ
10:トナー組成液
12,112:収容空間
13a:受入流路
13b:気泡抜き流路
14b:弾性部材の層
14a:段差
14,113:液収容部
15,115:吐出孔
16,116:振動板
17:蓋部材
18:液供給チューブ
19:気泡排出チューブ
20,117:振動発生部
21:開放弁
31:液滴
35:乾燥気体
41:テーパ面
42:気流
43:除電手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0172】
【特許文献1】特開平7−152202号公報
【特許文献2】特公昭57−201248号公報
【特許文献3】特許第3786034号公報
【特許文献4】特許第3786035号公報
【特許文献5】特開2008−292976号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出孔が形成された振動板と、
該振動板が接合されて、該振動板の吐出孔に連通し、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を収容する液収容部と、
該振動板を振動させる振動発生手段と、
該振動板の吐出孔から周期的に液滴化されて吐出される該トナー組成液の液滴を固化させてトナー粒子を形成する粒子形成手段とを備えたトナー製造装置において、
前記振動板の前記液収容部との接合部を、該液収容部に対して可動にしたことを特徴とするトナー製造装置。
【請求項2】
請求項1のトナー製造装置において、
弾性部材を介して前記振動板の接合部を前記液収容部に接合させたことを特徴とするトナー製造装置。
【請求項3】
請求項2のトナー製造装置において、
前記弾性部材のヤング率を、5[GPa]以下としたことを特徴とするトナー製造装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかのトナー製造装置において、
前記振動板のヤング率を、30[GPa]以上にしたことを特徴とするトナー製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかのトナー製造装置において、
前記振動板の厚みを、50[μm]以上1000[μm]以下にしたことを特徴とするトナー製造装置。
【請求項6】
複数の吐出孔が形成された振動板と、該振動板を振動させる振動発生手段とを備えた液滴化手段を用いて、少なくとも樹脂及び着色剤を含有するトナー組成液を、前記複数の吐出孔から周期的に液滴化して放出させる周期的液滴化工程と、
前記放出されたトナー組成液の液滴を固化させてトナー粒子を形成する粒子化工程とを行うトナーの製造方法において、
前記振動板の全面を平坦に振動させて、周期的液滴化工程を行うことを特徴とするトナー製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5いずれかのトナー製造装置、または、請求項6のトナー製造方法によって製造されることを特徴とするトナー。
【請求項8】
請求項7のトナーにおいて、
粒度分布(重量平均粒径/数平均粒径)が、1.00以上1.15以下であることを特徴とするトナー。
【請求項9】
請求項7または8のトナーにおいて、
重量平均粒径が、1[μm]以上20[μm]以下であることを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−256483(P2010−256483A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104157(P2009−104157)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】