説明

トナー

【課題】定着性能と耐熱保存性及び画像品質を向上させたトナーを提供する。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に、少なくとも融点が60℃以上の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を被覆しトナーとする。前記トナーを含んで構成される現像剤を、画像形成装置に装着したプロセスカートリッジの現像装置40に充填し、画像形成装置本体に装着して電子写真法で画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置や静電記録装置などの電子写真プロセスにおいて像担持体上の静電潜像を顕像化するために用いられる画像形成用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用した感光体に種々の手段を用いて電気的な潜像を形成する静電潜像形成工程、トナーを用いて潜像を現像してトナー像を形成する現像工程、トナー像を紙等の転写材に転写する転写工程、転写材に転写されたトナー像を加熱、加圧、加熱加圧、溶剤蒸気等により転写材に定着させる定着工程、感光体に残存したトナーを除去するクリーニング工程等から成り立っている。
【0003】
従来、トナーの外添剤としては、平均一次粒径が数nm〜数十nmの微粒子が用いられており、帯電性の付与、流動性の付与、疎水性の付与などの観点からは疎水化処理の行なわれたシリカ微粒子が使用され、温・湿度環境条件下での帯電性の維持、保持帯電量の変動抑制などの観点からは疎水化表面処理された酸化チタンなどが一般的に多く使用されている。
【0004】
上記のような外添剤を複数用いたり、またその添加割合を調整することにより、電子写真プロセスでの安定性、性能向上が図られている。
例えば、トナー母体粒子と非球状の不定形シリカ粒子(長径40〜180nm)を含む外添剤とからなるトナーが知られている(特許文献1参照)。特許文献1の実施例では、外添剤として疎水性チタン、疎水性シリカ及び非球形シリカを組み合せて用いた例が示されている。このようなトナーによれば、トナー母体粒子表面上での外添剤の転動現象や外部ストレスによる外添剤の埋没などが防止され、外添剤の少ない添加量であっても優れたクリーニング性、画像品質、及び耐久性が発揮されるとされている。
また、トナー母体粒子に疎水性微粉末を外添した後のトナー粒子の比表面積が規定された画像形成用トナーが知られている(特許文献2参照)。特許文献2の実施例では、外添剤として疎水性シリカ単独、疎水性シリカと疎水性チタンを組み合せて用いた例が示されている。このようなトナーによれば、使用時の現像剤撹拌によって外添剤の埋没がないほか流動性や帯電特性の変化が少なく、良好な転写性及びクリーニング性が長期間維持され、感光体フィルミングの発生が防止され、画像ムラ等の変動がないとされている。
また、結晶性ポリエステル樹脂と離型剤が接触した構造を含むトナー中の残留アルコール成分を規定した静電荷現像用トナーが知られている(特許文献3参照)。このトナーによれば、高温高湿環境下における放置後の帯電量低下が抑制され、定着性も向上するとされている。
また、着色粒子(トナー母体粒子)の表面に細孔を有する有機粒子を備えたトナーが知られている(特許文献4参照)。特許文献4記載のトナーによれば、画像劣化が抑制され、画像形成装置及び現像剤の寿命が延びるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年の画像形成において要求される高性能化、高速化、長寿命化などに対応するために講じられるトナー母体粒子の多様な特性付与に伴って、従来の外添剤付着手法のままでは不具合が生じる可能性が高まっており、新たな対応技術の開発が求められている。
前述のような従来技術に基づきトナーの設計を行なう際、例えば、定着時に効率よく作用するためにトナー中のワックス添加量を増加させる手法、ワックスをトナー母体粒子の表面近傍に配置するような手法、あるいは定着時のエネルギーを少なくするため、結晶性の材料を内包させ、定着溶融時のエネルギーを下げるような手法を用いた場合、外圧や環境などに付随する熱等の影響を受けやすくなり、感光体表面にワックスが滲み出す現象が発生したり、感光体表面に製造時の残留微量成分(例えば、低分子アルコール成分等)が染み出すことにより不具合を引き起こすことがある。また、本来残留すべきではないトナー成分(例えば、樹脂、外添剤、ワックス等)が感光体表面に微量付着し、時間経過と共に成長し、これが原因となって画像に悪影響が表れたり、あるいは微小な残留物による凹凸を感光体表面に生じさせることになる。トナー成分の付着により、例えば、物理的に接しているクリーニングブレードを持ち上げたり、ブレードエッジ部に欠損を生じさせてしまうことで、そのクリーニング性を低下させるなどの問題を引き起こすことがある。あるいは、感光体表面に付着、残留することで、出力画像上での微妙なムラ、画像欠陥の要因となったりすることもある。
近年、環境配慮の側面から電子写真機器の低消費電力が強く求められており、特に消費電力の大きい定着部で使用される電力の削減、つまり低温での定着性能を確保するため、トナー母体粒子の基材樹脂そのものが軟質、あるいは温度に対して非常に感度がある材料を使用する方向となっており、このことはトナーの保管時における外圧に対して耐久性が低下する傾向にある。すなわち、前述のような従来技術によりトナーの設計を行なう場合、トナーは外圧や環境などに付随する熱等の影響を受けやすくなり、トナー保管時における外圧に対して耐久性が低下する方向になる。母体粒子の物理的外圧に対する耐久性低下は内包する離型剤成分の染み出しにつながることとなり、トナー設計を難しくする。
離型剤は、トナー粒子中の含有量だけでなく、その存在位置が重要であり、定着性能を考慮すればトナー粒子表面近傍に存在することが好ましく、一方外部ストレスによる離型剤の滲み出しを考慮すればトナー表面近傍よりもトナー粒子深層部に存在することが好ましい。また、被記録媒体(紙、その他の記録材料)の定着性を考慮すると、離型剤の含有量を高め、トナー粒子表面の一部に偏ることなく、全表面に均一に存在することが好ましいが、この要求はトナー設計上の安全を見込めば、離型剤の存在量を高めることが難しいといった相反する性質を有し、トナー粒子の製造を困難にしている。
また、ケミカルプロセス(油相/水相による方法)を用いてトナー母体粒子を造粒する(重合トナー)場合、そのケミカルプロセス中で使用できる離型剤の選定が必要となり、その離型剤選定が難しく、かつ限定されるため、トナー母体粒子の設計自由度を制約している。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、トナー母体粒子の設計自由度を高めると共に、定着性能、耐熱保存性及び画像品質を向上させたトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を進めた結果、トナー母体粒子の離型性能に依存するのではなく、トナー表面を被覆する外添剤粒子中に離型剤成分を担持させることにより、離型剤の溶融する温度を与えた時にのみ離型剤成分がトナー表面に滲み出して、従来の不具合問題を回避することができることを知見し本発明に至った。
すなわち上記課題は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と該トナー母体粒子表面を被覆する外添剤を備えたトナーであって、前記外添剤として少なくとも融点が60℃以上の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を有することを特徴とするトナーにより解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トナー母体粒子の設計自由度を高めると共に、定着性能、耐熱保存性及び画像品質を向上させたトナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置本体に着脱自在とされたプロセスカートリッジの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前述のように本発明におけるトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と該トナー母体粒子表面を被覆する外添剤を備えたトナーであって、前記外添剤として少なくとも融点が60℃以上の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明のトナー構成により、従来の課題(トナー母体粒子における離型剤の存在量、離型剤存在位置の制御等)から開放され、離型剤含有多孔質粒子の外添工程において離型剤の存在量を正確に制御でき、またその離型剤の存在位置は離型剤含有多孔質粒子の存在位置と一致することから、トナー母体全表面に離型剤を均一に存在させることができる。すなわち、トナー母体粒子の離型性能(例えば、離型剤成分やその添加量等)に依存するのではなく、多孔質粒子(特に硬質で物理的外圧により大きな変形性を持たない多孔質粒子)の空孔内部に融点が60℃以上の離型剤成分を担持させた離型剤含有多孔質粒子をトナー表面に被覆することで、外圧が負荷されても離型剤成分が滲み出しにくく、離型剤の溶融(液化)する温度を与えた時にのみ、離型剤成分がトナー表面に出現する状態を作りだすことができる。これにより、トナー母体粒子の設計自由度が高められると共に、定着性能(例えば、コールドオフセット性、ホットオフセット性等)、耐熱保存性及び画像品質がバランス良く維持される。そして、電子写真装置や静電記録装置などの電子写真プロセスに本発明のトナーを用いれば、転写不良が無く、地汚れ画像等が抑制され、画像粒状性・鮮鋭性等が優れた画像が長期にわたって安定して得られる。
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
上記のように、本発明は結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と、離型剤含有多孔質粒子を外添剤として有する構成からなるが、トナー母体粒子中には、必要に応じて、離型剤や帯電制御剤等を含有してもよい。以下に本発明のトナー構成について説明する。なお、本発明において、「トナー母体粒子」を「着色粒子」と呼称することがある。
[外添剤]
〈離型剤含有多孔質粒子〉
本発明において、離型剤含有多孔質粒子に含まれる離型剤は、融点が60℃以上であるものが用いられる。特に好ましくは、60℃以上85℃以下である。融点が60℃未満であると、トナーを保存する際にブロッキングを起こしやすくなり、耐熱保存性が低下することがある。なお、融点が85℃を超えると、低温定着性が損なわれる傾向がある。
ここで、融点とは、示差走査熱量分析(Differential scanning calorimetry;DSC)により得られる示差熱曲線において、吸熱量が極大になる吸熱ピークの温度(「極大吸熱ピーク温度」と呼称する)である。
【0013】
離型剤含有多孔質粒子製造に用いられる離型剤としては、特に限定されないが、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
これら以外の離型剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートの単独重合体又は共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等の低分子量の結晶性高分子、側鎖に長鎖アルキル基を有する結晶性高分子等が挙げられる。
【0014】
離型剤含有多孔質粒子(以降、「離型剤含有多孔質体」あるいは「多孔質体」と呼称することがある)を構成するコア材料の多孔質空孔を有する多孔質粒子としては、物理的外圧に対して耐性を有し、外圧が負荷されても内部に含有する離型剤成分が滲み出しにくければ材質に限定はないが、硬質の材質、特に無機質材料からなる多孔質粒子が好ましい。このような機質材料粒子としては、例えば、シリカ粒子、ヒドロキシアパタイト粒子、ハイドロタルサイト粒子等が挙げられる。
【0015】
このような多孔質体は、例えば、多孔質体のコア材料として多孔質シリカ粒子(日本アエロジル製:AEROPERL 300/30)を、離型剤としてカルナバワックス(加藤洋行製 カルナバワックスC1)をそれぞれ選択する場合、以下のようにして製造することができる。
カルナバワックスC1の溶融液中に、AEROPERL 300/30を投入し、溶融状態で保温しながら減圧し、減圧条件下で多孔質内部の気体とカルナバワックスの置換を促進させ、同時に攪拌を施して多孔質体空孔のより内部に離型剤成分が十分含侵するようにする。この含侵工程において、多孔質シリカ粒子表面部分に付着するカルナバワックスC1の被覆量を極力抑制し、可能な限りカルナバワックスC1が内部に含侵して保持されるように制御するのが好ましい。すなわち、投入するAEROPERL 300/30とカルナバワックスC1溶融液の重量比は、10:1〜3:1とすることが好ましい。
【0016】
上記により得られるカルナバワックスを内包する多孔質粒子は軽度に凝集した付着体状態であるため、一次粒子レベル(平均粒径100nm程度)まで解砕することが必要である。このような解砕は、例えば、スクラムジェットミル(徳寿工作所製 MN-30)を用いて行うことができる。
スクラムジェットミルは、高圧ガスを用いて、粒子同士の衝突によりナノレベルの超微粉砕をすることができる。円筒型のミル内部で、円周内に均等分割した位置に粉砕ノズルを配置し、そのひとつ、もしくは複数個が原料供給ノズルとなっているため、同心円の渦を作ることができる。このようにミル内部で高圧ジェット気流による同心円の旋回渦形成が可能なため、スクラムジェットには、粒度分布がシャープになるという特徴がある。また、スクラムジェットは粒子間衝突を用いるため、ミル壁面への粒子の衝突が少ない。そのため、スクラムジェットを用いて粉砕して得られる微粉末は、ミル壁面が削れることによるコンタミネーションが低く、好ましい。なお、上記のような粒子表面に離型剤成分が残存する可能性がある場合、軽い相互研磨効果が粒子表面で発揮されることから、多孔質粒子表面に残存する離型剤の除去効果も同時に得られる。
【0017】
〈離型剤含有多孔質粒子以外の他の外添剤〉
本発明のトナーにおける外添剤として、少なくとも融点が60℃以上の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を含むが、他の外添剤を含有しても構わない。このような外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)や酸化チタンなどが挙げられ、特に疎水性処理が施された、疎水性シリカや疎水性酸化チタンなどが好ましく用いられる。これらの具体的例としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ、イソブチルによる疎水性処理が施されたルチル型酸化チタンなどが挙げられる。
ここで、疎水性シリカは、限定されるものではないが帯電性の付与、流動性の付与、疎水性の付与などの機能を担い、平均一次粒径としては8nm〜120nm程度の微粒子が好ましく用いられる。疎水性シリカの外添量〔含有量(重量比)〕は、トナー母体粒子の総量に対して、0.5重量%〜8重量%が好ましい。0.5重量%よりも少ないと、トナーの流動性の低下、帯電性の低下といった現象が生じ、また環境変化、特に高湿条件での帯電低下現象が生じやすくなる問題がある。一方、8重量%を超えるとトナー母体表面に付着していないシリカが遊離しやすくなり、遊離したシリカがキャリア表面に付着して、帯電付与機能を阻害したり、感光体表面に強固に付着するといった、いわゆるシリカフィルミングと言われるような現象を引き起こすことがある。
また、疎水性酸化チタンは、限定されるものではないが温・湿度環境条件下での帯電性の維持、保持帯電量の変動抑制などの機能を担い、平均一次粒径としては12nm〜55nm程度の微粒子が好ましく用いられる。疎水性酸化チタンの外添量〔含有量(重量比)〕は、トナー母体粒子の総量に対して、0.2重量%〜5重量%が好ましい。0.2重量%よりも少ないと、酸化チタンに期待されている異なる環境条件での帯電量の差を抑制するといった機能が発揮されなくなり、出力画像の安定性、特に画像濃度に問題が生じるといった現象が生じ、5重量%を超えると過剰な添加によって、トナー抵抗の低下、帯電量の低下、帯電量分布のブロード化といった現象を引き起こし、白紙部にトナーが飛散したり、画像濃度が安定しないという問題を生じる。
【0018】
また、トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、トナー母体粒子(着色粒子)に外添剤を添加混合する際には、一般の粉体の混合機を用いることができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節することが好ましい。なお、外添剤に与える負荷の履歴を変えるためには、途中又は漸次外添剤を加えていけばよい。この場合、混合機の回転数、転動速度、時間、温度等を変化させてもよい。また、はじめに強い負荷を、次に、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。混合機としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
前述のように、離型剤含有多孔質粒子の含有量(重量比)は、トナー母体粒子の総量に対して2%以上10%以下であることが好ましい。離型剤含有多孔質粒子の含有量(重量比)が2%未満では、離型効果が十分得られず、10%を超えると感光体表面へのフィルミング、高温化での保存特性の悪化、現像器内での現像剤の凝集など画像特性以外のシステム課題が顕在化しやすい問題が生じることがある。
【0019】
[トナー母体粒子]
本発明におけるトナー母体粒子は、粉砕法、あるいは水系媒体中で油相を乳化、懸濁、凝集させて粒子を形成する乳化重合法、懸濁重合法、ポリマー懸濁法等により形成される。すなわち、トナー母体粒子として、トナー組成分を含む混合物を溶融混練機に仕込んで得られた溶融混練物を粉砕した後分級して得られたもの、あるいはトナー組成分〔例えば、結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体、着色剤(必要により、離型剤)を含むトナー材料〕を含むトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー材料液(油相)を水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、脱溶剤して形成されたものなどを用いることができる。なお、本発明において前記「トナー材料」を「トナー組成物」と呼称することがある。
【0020】
〈結着樹脂〉
本発明のトナーを構成するトナー母体粒子に含有される結着樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、単独又は二種以上混合して使用することができる。
上記結着樹脂の中でもポリエステルが好ましい。結着樹脂は、結着樹脂前駆体から誘導されるものであってもよく、エステル結合及び該エステル結合以外の結合単位を含む変性ポリエステルを生成可能な結着樹脂前駆体は好ましく用いられる。このような変性ポリエステルを生成可能な樹脂前駆体として、活性水素基を有する化合物、及び該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルを含有するものが好ましく使用できる。変性ポリエステルの例として、エステル結合及びウレア結合を含むものなどが挙げられる。つまり、結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体として、未変性ポリエステル、エステル結合及び該エステル結合以外の結合単位を含む変性ポリエステル、もしくは該変性ポリエステルを生成可能な樹脂前駆体、及び結晶性ポリエステルから選択される樹脂材料が好ましく用いられる。
【0021】
(未変性ポリエステル)
上記結着樹脂として、エステル結合以外の結合単位を含まない、所謂、変性されていないポリエステル(未変性ポリエステル)を用いることができる。
そして、このような未変性ポリエステルと、前記エステル結合を有する結着樹脂前駆体、エステル結合及び該エステル結合以外の結合単位を含む変性ポリエステル、もしくは該変性ポリエステルを生成可能な樹脂前駆体、及び結晶性ポリエステルなどを組み合せて結着樹脂(トナーバインダー)成分とすることができる。例えば、未変性ポリエステルと、変性ポリエステル〔例えば、ウレア変性ポリエステル〕とをトナーバインダー成分として含有させることもできる。
変性ポリエステルと共に未変性ポリエステルを併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、変性ポリエステルの単独使用より好ましい。前記、変性ポリエステルと未変性ポリエステルは少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、変性ポリエステルを構成するポリエステル成分と未変性ポリエステルを構成する成分は類似であるものが好ましい。
【0022】
(変性ポリエステル)
前記変性ポリエステルは、分子構造中に少なくともエステル結合と該エステル結合以外の結合単位を含むものである。このような変性ポリエステルは、活性水素基を有する化合物、及び該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルを含有する、所謂、変性ポリエステルを生成可能な樹脂前駆体の反応により得ることができる。
活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルとしては、例えば、イソシアネート基あるいはエポキシ基などを有するポリエステルプレポリマーを挙げることができる。このような活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルは、従来公知のイソシアネート化剤やエポキシ化剤(イソシアネート基やエポキシ基を有する化合物)と、ベースとなるポリエステルとの反応により容易に合成することができる。
例えば、イソシアネート基を有するポリエステル(ポリエステルプレポリマー)を活性水素基を有する化合物(アミン類など)と伸長反応させた変性ポリエステル(エステル結合及びウレア結合を含む変性ポリエステル)を結着樹脂に含めば、定着下限温度とホットオフセット発生温度の差を広くすることができて、離型幅の向上にも効果を及ぼす。また、変性ポリエステルとして、ウレア変性ポリエステルを共存させることにより、本発明のトナー母体粒子を有するトナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0023】
上記イソシアネート化剤としては、後述のように、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの、及びこれら2種以上の併用が挙げられる。また、エポキシ化剤としては、エピクロロヒドリンなどをその代表例として挙げることができる。
【0024】
(結晶性ポリエステル)
前述のように、本発明のトナーを構成する母体粒子のエステル結合を有する結着樹脂として、結晶性ポリエステルを含有することができる。
結晶性ポリエステルは、アルコール成分と酸成分の反応により得られたものであり、少なくとも融点を有するポリエステルである。結晶性ポリエステルとしては、限定されるものではないが、例えば、炭素数2〜12の飽和脂肪族ジオール化合物、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−ドデカンジオール又はこれらの誘導体から選択されるアルコール成分と、二重結合(C=C結合)を有する炭素数2〜12のジカルボン酸、もしくは、炭素数2〜12の飽和ジカルボン酸、特にフマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、及び1,12−ドデカン二酸またはこれらの誘導体から選択されるジカルボン酸成分との反応により合成される結晶性ポリエステルが好適である。
結晶性ポリエステルを用いることにより、例えば、定着時の離型性機能を劣化させることなく維持したまま、母体粒子を有するトナー表面に存在するワックスによるキャリアや帯電部材への汚染問題を抑制し、良好な結果が得られる。
【0025】
前記結晶性ポリエステルのトナー母体粒子中における分散粒径として、長軸径と短軸径の比が3以上であり、該長軸径が0.2μm以上3.0μm以下であることが好ましい。長軸径、短軸径比が3未満、粒子径が0.2μm未満であると結晶性が発現しにくく低温定着の効果が出にくく、また帯電付与効果が十分に得られない恐れがある。一方、あまりに結晶径が大きく3.0μmを超えるとトナー形状を大きく歪ませ、機械内部で粉砕されやすくなる。また、トナー表面にも出やすく、極端な場合はトナー外部に独立して存在し、トナーの表面性状悪化により、キャリアを汚染して長期に渡り十分な帯電性を維持することができず、更に機械部品を汚染するなど環境安定性を阻害する恐れがある。
また、前記結晶性ポリエステルの示差走査熱量分析(DSC)により測定される吸熱ピーク温度が、50℃以上150℃以下であることが好ましい。
吸熱ピーク温度が50℃未満の場合には、トナーが高温保管中に凝集し、耐熱保存性が悪化し、現像装置内部の温度でブロッキングが発生しやすくなる。一方、吸熱ピーク温度が150℃を超える場合には、定着下限温度が高くなるために低温定着性が得られなくなる。
前記結晶性ポリエステルの含有量は、母体粒子100重量部に対して1重量部〜30重量部であることが好ましい。前記含有量が、1重量部未満であると、低温定着効果が十分に得られないことがあり、30重量部を超えると、トナー最表面に存在する結晶性ポリエステル量が多すぎるために感光体、その他部材の汚染により画像品質が低下したり、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。また、トナーの表面性状が悪化し、キャリアを汚染し長期に渡り十分な帯電性を維持することができず、更に、環境安定性を阻害する恐れもある。
【0026】
[着色剤]
本発明におけるトナー材料として用いられる着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、p−クロロ−o−ニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられ、単独又は二種以上混合して使用することができる。
【0027】
トナー母体粒子(着色粒子)中の着色剤の含有量は、1〜15重量%であることが好ましく、3〜10重量%がさらに好ましい。
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。マスターバッチに用いる樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィン等が挙げられ、単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0028】
[離型剤]
トナー母体粒子のトナー材料として、必要に応じて離型剤を用いることができ、特に制限はなく目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。本発明のトナーではトナー母体粒子の表面に離型剤含有多孔質粒子が外添されるため、トナー母体粒子の設計自由度が高まり、トナー母体粒子中の離型剤含有量は必要最小限に留められ、定着性能(コールドオフセット性、ホットオフセット性等)、耐熱保存性及び画像品質がバランスよく効果的に向上される。
トナー母体粒子に用いられる離型剤としては、前述の離型剤含有多孔質粒子製造に用いられる離型剤として挙げたものが同様に挙げられる。
【0029】
[帯電制御剤]
トナー母体粒子を構成するトナー材料として、必要に応じて帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤としては特に制限はなく、感光体に帯電される電荷の正負に応じて正又は負の帯電制御剤を適宜選択して用いることができる。
負の帯電制御剤としては、例えば、電子供与性の官能基を有する樹脂又は化合物、アゾ染料、有機酸の金属錯体等を用いることができる。具体的には、ボントロン(品番:S−31、S−32、S−34、S−36、S−37、S−39、S−40、S−44、E−81、E−82、E−84、E−86、E−88、A、1−A、2−A、3−A)(以上、オリエント化学工業社製)、カヤチャージ(品番:N−1、N−2)、カヤセットブラック(品番:T−2、004)(以上、日本化薬社製))、アイゼンスピロンブラック(T−37、T−77、T−95、TRH、TNS−2)(以上、保土谷化学工業社製)、FCA−1001−N、FCA−1001−NB、FCA−1001−NZ(以上、藤倉化成社製)等が挙げられ、単独又は二種以上混合して使用することができる。
正の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料等の塩基性化合物、4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物、高級脂肪酸の金属塩等を用いることができる。具体的には、ボントロン(品番:N−01、N−02、N−03、N−04、N−05、N−07、N−09、N−10、N−11、N−13、P−51、P−52、AFP−B)(以上、オリエント化学工業社製)、TP−302、TP−415、TP−4040(以上、保土谷化学工業社製)、コピーブルーPR、コピーチャージ(品番:PX−VP−435、NX−VP−434)(以上、ヘキスト社製)、FCA(品番:201、201−B−1、201−B−2、201−B−3、201−PB、201−PZ、301)(以上、藤倉化成社製)、PLZ(品番:1001、2001、6001、7001)(以上、四国化成工業社製)等が挙げられ、単独又は二種以上混合して使用することができる。
【0030】
帯電制御剤の添加量は、結着樹脂の種類、分散方法を含めた着色粒子の製造方法によって決定されるものであり、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100に対して、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%がさらに好ましい。添加量が10重量%を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電気的吸引力が増大し、現像剤の流動性が低下したり、画像濃度が低下したりすることがある。また、添加量が0.1重量%未満であると、帯電立ち上り性や帯電量が十分でなく、トナー画像に影響を及ぼしやすいことがある。
【0031】
[トナー母体粒子の製造方法]
トナー母体粒子(着色粒子)の製造方法は、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的な方法として、(I):粉砕法、(II):水系媒体中で油相を乳化(乳化重合法)、懸濁、凝集させることにより、着色粒子を形成する乳化重合法、懸濁重合法、ポリマー懸濁法等が挙げられる。(II)の製造方法は、球形で粒度分布が制御された着色粒子を得るのに好ましく用いられる。
【0032】
〔粉砕法(I)〕
粉砕法(I)によりトナー母体粒子(着色粒子)を得る場合には、先ず、着色粒子を構成するトナー材料を混合した混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。
溶融混練機としては、例えば、一軸、二軸の連続混練機や、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。具体的には、KTK型二軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型押出機(東芝機械社製)、二軸押出機(ケイシーケイ社製)、PCM型二軸押出機(池貝鉄工所社製)、コニーダー(ブス社製)等が挙げられる。なお、溶融混練は、結着樹脂の分子鎖が切断されないように、適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は、結着樹脂の軟化点より高過ぎると切断が激しくなることがあり、低過ぎると溶融混練が進まないことがある。
次に、溶融混練で得られた混練物を粉砕する。混練物を粉砕する際には、混練物を粗粉砕した後に、微粉砕することが好ましい。具体的には、ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕する方法、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕する方法、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方法等を用いることが好ましい。
さらに、粉砕された粉砕物を分級して、粒径を所定の範囲内に調整する。分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子を取り除く。さらに、250メッシュ以上の篩を用いて、粗大粒子、凝集粒子を除去することにより、着色粒子が得られる。
【0033】
〔重合法(II)〕
重合法(II)によりトナー母体粒子(着色粒子)を得る場合には、例えば、結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体、着色剤(必要により、離型剤)を含むトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させてトナー材料液(油相)を調製する工程と、前記油相を水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、脱溶剤する工程を経て母体粒子を得る。
本発明において、着色粒子は、有機溶媒中に活性水素基を有する化合物、及び該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル(以下、プレポリマー(A)という)を含有するトナー組成物を溶解又は分散させることにより得られる溶液又は分散液を、樹脂粒子を含有する水系媒体中で分散させた後に、プレポリマー(A)と活性水素基を有する化合物を反応させることにより得られることが好ましい。
【0034】
[トナーの製造方法]
前記(I)又は(II)で得られたトナー母体粒子表面を、外添剤として、少なくとも融点が60℃以上の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を用い、前述の外添剤において記載したように、混合機(例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等)により被覆することで本発明のトナーが製造される。外添剤としては必要に応じて、疎水性シリカや疎水性酸化チタンなどの他の外添剤も被覆される。
【0035】
本発明における前記トナー母体粒子の体積平均粒径(Dv)は、3.0μm以上6.0μm未満であることが好ましい。
また、前記トナー母体粒子の個数平均粒径(Dn)に対する体積平均粒径(Dv)の比(Dv/Dn)が、1.05以上1.25以下であることが好ましい。
体積平均粒径(Dv)が3.0μmよりも小さい場合には、転写性やクリーニング性に対しては不利となる。本発明の範囲よりも体積平均粒子径が小さい場合、二成分現像剤(トナーとキャリアからなる)では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、一成分現像剤として用いた場合には、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着を発生させやすくなる。一方、トナー母体粒子の体積平均粒径(Dv)が本発明の範囲よりも大きい場合には、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなる場合が多い。
また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.25よりも大きい場合も同様である。また、Dv/Dnが1.05より小さい場合には、トナーの挙動の安定化、帯電量の均一化の面から好ましい面もあるが、トナーを十分に帯電することができなかったり、クリーニング性を悪化させる場合がある。
【0036】
ここで、トナー材料(トナー組成物)として、活性水素基を有する化合物、及び該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル〔プレポリマー(A)と呼称することがある。〕を含有する樹脂前駆体(変性ポリエステルを生成可能な樹脂前駆体)を用いてトナー母体粒子(着色粒子)を形成する場合を例に挙げてトナーの製造方法を説明する。
【0037】
プレポリマー(A)は、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物からなるポリエステル樹脂(活性水素基を有するポリエステル樹脂)を、さらにポリイソシアネート(3)と反応させることにより、得ることができる。活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられるが、好ましくは、アルコール性水酸基である。
【0038】
上記ポリオール(1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の4,4’−ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類等;上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものは、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0039】
さらに、3価以上のポリオール(1)としては、3価以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
なお、上記ポリオールは、単独又は2種以上の併用が可能であり、上記に限定されるものではない。
【0040】
上記ポリカルボン酸(2)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸等);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、3−フルオロイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸、5−トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物等)等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
【0041】
さらに、3価以上のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)、上記芳香族ポリカルボン酸の無水物、低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)が挙げられる。
なお、上記ポリカルボン酸は、単独又は2種以上の併用が可能であり、上記に限定されるものではない。
【0042】
ポリエステル樹脂を合成する際のポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率については、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]が、通常、2/1〜1/1であり、好ましくは、1.5/1〜1/1、さらに好ましくは、1.3/1〜1.02/1である。
【0043】
ポリエステル樹脂のピーク分子量は、通常、1000〜30000であり、好ましくは、1500〜10000、さらに好ましくは、2000〜8000である。ピーク分子量が1000未満では、耐熱保存性が低下することがあり、10000を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0044】
上記ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等);イソシアヌレート類が挙げられ、フェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックされていてもよい。なお、これらは、2種以上を併用することができる。
【0045】
プレポリマー(A)を合成する際のポリイソシアネート(3)と活性水素基を有するポリエステル樹脂の比率については、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステル樹脂の水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]が、通常、5/1〜1/1であり、好ましくは、4/1〜1.2/1、さらに好ましくは、2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると、低温定着性が低下することがあり、1未満では、変性ポリエステル樹脂中のウレタン基及び/又はウレア基の含有量が低くなり、耐オフセット性が低下することがある。
【0046】
プレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)由来の構成成分の含有量は、通常、0.5〜40重量%であり、好ましくは、1〜30重量%、さらに好ましくは、2〜20重量%である。この含有量が0.5重量%未満では、耐オフセット性が低下することがあり、40重量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
プレポリマー(A)1分子当たりのイソシアネート基数は、通常、1個以上であり、好ましくは、1.5〜3個、さらに好ましくは、1.8〜2.5個である。イソシアネート基数が1個未満では、変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐オフセット性が低下することがある。
【0047】
本発明において、プレポリマー(A)と反応可能な前記活性水素基を有する化合物(伸長剤及び/又は架橋剤)として、アミン類(B)を用いることができる。アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、アミノ基をブロックしたB1〜B5(B6)等が挙げられる。
【0048】
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、テトラフルオロ−p−キシリレンジアミン、テトラフルオロ−p−フェニレンジアミン等);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカフルオロヘキシレンジアミン、テトラコサフルオロドデシレンジアミン等)等が挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン等が挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。
アミノ基をブロックしたB1〜B5(B6)としては、B1〜B5と、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0049】
さらに、伸長反応及び/又は架橋反応には、必要に応じて、停止剤を用いることができ、変性ポリエステル樹脂の分子量を調整することができる。停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、これらをブロックしたもの(ケチミン化合物)等が挙げられる。
【0050】
プレポリマー(A)とアミン類(B)を反応させる際のプレポリマー(A)とアミン類(B)の比率については、プレポリマー(A)のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]が、通常、1/2〜2/1であり、好ましくは、1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは、1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2より大きい場合及び1/2未満である場合は、得られる変性ポリエステル樹脂の分子量が小さくなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0051】
トナー材料(トナー組成物)を溶解又は分散させる有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の除去が容易になることから好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒及び塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。トナー組成物は、同時に溶解又は分散させてもよいが、通常、それぞれ単独で溶解又は分散され、その際使用する有機溶媒はそれぞれ異なっていても同じでもよいが、後の溶媒処理を考慮すると同じ方が好ましい。
【0052】
トナー組成物の溶液又は分散液〔トナー材料液(油相)〕は、樹脂濃度が40〜80重量%であることが好ましい。樹脂濃度が80重量%を超えると、溶解又は分散が困難になり、また粘度が高くなって扱いづらい。また、40重量%未満であると、トナーの製造量が少なくなる。ポリエステル樹脂とプレポリマーを混合する場合は、同じ溶液又は分散液に混合してもよいし、別々に溶液又は分散液を作製してもよいが、それぞれの溶解度と粘度を考慮すると、別々の溶解又は分散液を作製することが好ましい。
【0053】
着色剤は、単独で溶解又は分散してもよいし、ポリエステル樹脂の溶液又は分散液に混合してもよい。また、必要に応じて、分散助剤やポリエステル樹脂を添加してもよいし、マスターバッチを用いてもよい。
【0054】
水系媒体(水相)としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。水と混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。トナー組成物100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常、50〜2000重量部であり、好ましくは、100〜1000重量部である。水系媒体の使用量が50重量部未満では、トナー組成物の分散状態が悪くなることがある。また、2000重量部を超えると、経済的でない。
【0055】
水系媒体中に、トナー組成物の溶液又は分散液を分散させる際、無機分散剤又は樹脂粒子を予め水系媒体中に分散させることが好ましい。これにより、粒度分布が狭くなると共に、安定に分散させることができる。
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイト等が用いられる。
また、樹脂粒子を形成する樹脂としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、いかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を併用しても差し支えない。これらのうち、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいことから、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
【0056】
樹脂粒子の水性分散液を製造する方法は、特に限定されないが、以下の(a)〜(h)が挙げられる。
(a)ビニル系樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、分散重合法等の重合反応により、直接、樹脂粒子の水性分散液を製造する。
(b)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶液を適当な分散剤の存在下で水系媒体中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えたりして硬化させて樹脂粒子の水性分散液を製造する。
(c)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい。)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する。
(d)予め高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい。)により製造した樹脂を機械回転式、ジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、分級することによって樹脂粒子を得た後、適当な分散剤の存在下で水中に分散させる。
(e)予め高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい。)により製造した樹脂の溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂粒子を得た後、適当な分散剤の存在下で水中に分散させる。
(f)予め高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい。)により製造した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂粒子を析出させ、溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、適当な分散剤の存在下で水系媒体中に分散させる。
(g)予め高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい。)により製造した樹脂の溶液を、適当な分散剤の存在下で水性媒体中に分散させた後、加熱、減圧等によって溶剤を除去する。
(h)予め高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等のいずれの重合反応様式であってもよい。)により製造した樹脂の溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する。
【0057】
また、トナー組成物の溶液又は分散液を水系媒体中に乳化、分散させるために、必要に応じて、界面活性剤等を用いることもできる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等の非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルビス(アミノエチル)グリシン、ビス(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0058】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果を上げることができる。フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸、及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0059】
また、高分子系保護コロイドにより、分散液滴を安定化させてもよい。高分子系保護コロイドとしては、酸類(アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸等);水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体(アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等);ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等);ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等);アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド又はこれらのメチロール化合物;酸塩化物類(アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物等);窒素原子又はその複素環を有するもの(ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等)等の単独重合体又は共重合体;ポリオキシエチレン類(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等);セルロース類(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)等が使用できる。
【0060】
なお、分散安定剤として、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能な化合物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する等の方法によって、着色粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。その他、酵素による分解等の操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、分散剤が着色粒子の表面に残存した状態で用いることもできるが、洗浄除去する方がトナーの帯電面から好ましい。
【0061】
分散方法は、特に限定されないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波等の公知の方法が適用できる。分散体の平均粒径を2〜20μmにするためには、高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は、特に限定されないが、通常、1000〜30000rpmであり、好ましくは、5000〜20000rpmである。分散時間は、特に限定されないが、バッチ方式の場合は、通常、0.1〜5分である。分散時の温度は、通常、0〜150℃(加圧下)であり、好ましくは、20〜80℃である。
【0062】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、常圧又は減圧下で系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を蒸発除去する方法を採用することができる。また、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶剤を除去し、併せて界面活性剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体を用いることができるが、有機溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。このとき、スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルン等を用いることにより、処理時間を短縮することができる。
【0063】
なお、アミン類(B)は、水系媒体中にトナー組成物を分散する前に有機溶媒中で混合してもよいし、水系媒体中に加えてもよい。プレポリマー(A)とアミン類(B)の反応に要する時間は、プレポリマー(A)とアミン類(B)の反応性により適宜選択されるが、通常、1分〜40時間であり、好ましくは、1〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃であり、好ましくは、20〜98℃である。なお、必要に応じて、公知の触媒を使用することができる。
【0064】
水系媒体に分散された着色粒子を洗浄、乾燥する工程には、公知の方法が用いられる。即ち、遠心分離機、フィルタープレス等で固液分離した後に、得られたトナーケーキを常温〜40℃程度のイオン交換水に再分散させ、必要に応じて、酸やアルカリでpH調整した後、再度固液分離するという工程を数回繰り返す。これにより、不純物、界面活性剤等を除去した後、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機等により乾燥することによって着色粒子を得る。この際、遠心分離等で微粒子成分を取り除いてもよいし、また、乾燥後に、必要に応じて、公知の分級機を用いて所望の粒径分布にすることができる。
【0065】
画像形成の現像工程において用いられる現像剤は、本発明のトナー単独からなる一成分現像剤又は本発明のトナーとキャリアからなる二成分現像剤のいずれであってもよいが、情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命等の点で二成分現像剤を用いることが好ましい。二成分現像剤におけるトナーとキャリアの混合割合は、キャリア100重量部に対して、トナー1〜10重量部であることが好ましい。
【0066】
トナーを一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像器の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明のトナーを用いた二成分現像剤の場合、長期に亘るトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒径の変動が少なく、現像器における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0067】
キャリアは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有することが好ましい。
芯材の材料は、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等であることが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、穂立ち状態となっているトナーの感光体への当たりを弱くすることができ、高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、単独又は二種以上混合して使用することができる。
芯材の重量平均粒径は、10〜200μmであることが好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。重量平均粒径が10μm未満であると、キャリアの微粉成分が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散が発生することがあり、150μmを超えると、比表面積が低下して、トナーの飛散が発生することがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現性が低下することがある。
【0068】
樹脂層の材料は、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとアクリル単量体の共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ素化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂等が挙げられ、単独又は二種以上混合して使用することができる。
【0069】
アミノ系樹脂としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体等が挙げられる。ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0070】
樹脂層には、必要に応じて、導電粉等を添加してもよい。導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。導電粉の平均粒径は、1μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0071】
樹脂層は、例えば、シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布液を調製した後、塗布液を芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼き付けを行うことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法等が挙げられる。
溶剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、酢酸ブチル等が挙げられる。
焼き付けは、特に制限はなく、外部加熱方式及び内部加熱方式のいずれであってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロ波を用いる方法等が挙げられる。
【0072】
キャリア中の樹脂層の含有量は、0.01〜5.0重量%であることが好ましい。含有量が0.01重量%未満であると、芯材の表面に均一に樹脂層を形成することができないことがあり、5.0重量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生することがある。
【0073】
前記現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。また、現像剤を現像剤収容容器に収容した形態で使用することもできる。
【0074】
画像形成方法は、少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を本発明のトナーを含んで構成される現像剤を用いて現像する工程と、該像担持体上に形成されたトナー像を画像支持体(被転写媒体)に転写する工程と、該転写されたトナー像をローラ状もしくはベルト状の定着部材により加熱加圧定着して画像支持体(被転写媒体)上に定着画像を得る工程とを含んで構成される。また、必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等をさらに有してもよい。上記画像形成方法を実施するための手段として、像担持体(感光体)、帯電装置、露光装置、現像装置及び転写装置、定着装置を少なくとも有する画像形成装置が用いられる。必要に応じて適宜選択されるその他の手段として、例えば、除電装置、クリーニング装置、リサイクル装置、制御装置等をさらに有することができる。
【0075】
プロセスカートリッジは、像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像を本発明のトナーを用いて可視像とする現像手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在に構成される。なお、プロセスカートリッジは、必要に応じて、適宜選択したその他の手段をさらに一体に支持してもよい。
図1の概略図に、画像形成装置本体に着脱自在とされたプロセスカートリッジの構成例を示す。このプロセスカートリッジは、像担持体(感光体)10を内蔵し、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、クリーニング装置60及び転写装置80を有する。これらの各部材は、後述する画像形成装置と同様のものを用いることができる。
【0076】
以下、画像形成装置における各工程と手段についてさらに詳しく説明する。
静電潜像形成工程は、感光体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像は、例えば、帯電装置を用いて感光体の表面に電圧を印加することにより、一様に帯電させた後、露光装置を用いて、像様に露光することにより形成することができる。
感光体は、その材質、形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、形状は、ドラム状であることが好ましい。なお、感光体としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)等が挙げられるが、長寿命性の点で、アモルファスシリコン感光体が好ましい。
【0077】
帯電装置は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。また、帯電装置は、感光体に対して、接触又は非接触の状態で配置され、直流電圧及び交流電圧を重畳印加することによって、感光体の表面を帯電するものが好ましい。
また、帯電装置は、感光体に対して、ギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流電圧及び交流電圧を重畳印加することによって、感光体の表面を帯電するものが好ましい。
【0078】
露光装置は、帯電装置により帯電された感光体の表面に、像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系等が挙げられる。なお、感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0079】
現像工程は、現像装置を用い、本発明のトナーを含んで構成される現像剤により静電潜像を現像して可視像を形成する工程である。
現像装置は、上記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、本発明の現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像剤担時体を少なくとも有するものが挙げられ、現像剤入り容器(現像剤収容容器)を着脱自在に備えていることが好ましい。
現像装置は、乾式現像方式及び湿式現像方式のいずれであってもよく、また、単色用現像装置及び多色用現像装置のいずれであってもよく、例えば、現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラを有するもの等が挙げられる。現像装置内では、例えば、トナーとキャリアが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、感光体の近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって、感光体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて、感光体の表面に可視像が形成される。なお、トナーを感光体の表面に移動させる際には、交番電界を印加することが好ましい。
【0080】
転写工程は、転写装置を用いて、可視像を被転写体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を被転写体上に二次転写する態様が好ましい。さらに、トナーとして、二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を被転写体上に転写する第二次転写工程を有する態様が好ましい。可視像は、例えば、転写帯電器を用いて、感光体を帯電することにより転写することができる。
転写装置は、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する一次転写装置と、複合転写像を被転写体上に転写する二次転写装置を有する態様が好ましい。転写装置(一次転写装置、二次転写装置)は、感光体上に形成された可視像を被転写体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写装置は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。
中間転写体は、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が挙げられる。
被転写体は、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0081】
定着工程は、定着装置を用いて、被転写体に転写された可視像を定着させる工程であり、各色のトナーに対して、被転写体に転写する毎に定着させてもよいし、各色のトナーを積層した状態で一度に同時に定着させてもよい。
定着装置は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の定着部材を用いて加熱加圧定着させるものが好ましい。定着部材は、ローラ状又はベルト状であることが好ましく、例えば、加熱ローラ及び加圧ローラの組み合わせ、加熱ローラ、加圧ローラ及び無端ベルトの組み合わせ等が挙げられる。このとき、加熱温度は、通常、80〜200℃であることが好ましい。
定着装置としては、発熱体を具備する加熱体、加熱体と接触するフィルム及びフィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材を有し、フィルム及び加圧部材の間に、未定着画像が形成された被転写体を通過させて加熱加圧定着する手段を用いることができる。
なお、目的に応じて、定着装置と共に、又は定着装置に代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0082】
除電工程は、除電装置を用いて、感光体に除電バイアスを印加して除電を行う工程である。
除電装置は、特に制限はなく、感光体に除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が挙げられる。
【0083】
クリーニング工程は、クリーニング装置を用いて、感光体上に残留するトナーを除去する工程である。
クリーニング装置は、特に制限はなく、感光体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が挙げられる。
【0084】
リサイクル工程は、リサイクル装置を用いて、クリーニング工程で除去されたトナーを現像装置にリサイクルさせる工程である。
リサイクル装置は、特に制限はなく、例えば、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0085】
制御工程は、制御装置を用いて、各工程を制御する工程である。
制御装置としては、各工程の動きを制御することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明の形態は、これに限定されるものではない。また、ことわりのない限り、部及び%は重量基準である。
【0087】
〔油相/水相−乳化法によるトナー母体粒子の作製〕
〈微粒子分散液の合成〉
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA−920で測定した重量平均粒径は、105nmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のTgは59℃であり、重量平均分子量は15万であった。
【0088】
〈水相の調整〉
水990部、[微粒子分散液1]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)37部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0089】
〈低分子ポリエステルの合成〉
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、常圧、230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[低分子ポリエステル1]を得た。[低分子ポリエステル1〕は、数平均分子量2500、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25mgKOH/gであった。
【0090】
〈中間体ポリエステル及びプレポリマーの合成〉
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧、230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応して、[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価51mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応して、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は、1.53%であった。
【0091】
〈ケチミンの合成〉
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418mgKOH/gであった。
【0092】
〈マスターバッチの合成〉
水35部、フタロシアニン顔料FG7351(東洋インキ社製)40部、ポリエステル樹脂RS801(三洋化成社製)60部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0093】
〈油相の作成〉
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]378部、カルナバワックス110部、CCA(サリチル酸金属錯体)E−84(オリエント化学工業社製)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し、[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒、粒径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填し、3パスの条件で、ワックス、フタロシアニン顔料の分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料分散液1]を得た。[顔料分散液1]の固形分濃度(測定条件:130℃、30分)は50%であった。
【0094】
〈乳化〉
[顔料分散液1]648部、[プレポリマー1]154部、[ケチミン化合物1]6.6部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化社製)で、5000rpmで1分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、13000rpmで20分間混合し、[乳化スラリー1]を得た。
【0095】
〈形状制御〉
イオン交換水75.6部をTKホモミキサー(特殊機化製)で2,000rpm回転で撹拌しているところにセロゲンBS-H(第一工業製薬株式会社製)3.15部を少量ずつ添加する。添加し終え20℃に保ちながら30分間撹拌する。得られたセロゲン溶液に、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)43.3部加えて添加し終え20℃に保ちながら5分間撹拌する。この中に、[乳化スラリー1]2000部を添加し、TKホモミキサーで2,000rpmで1時間混合し[形状制御スラリー1]を得た。
【0096】
〈脱溶剤〉
撹拌機および温度計をセットした容器に、[形状制御スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
〈洗浄〜乾燥〉
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(12000rpmで10分間)した後、濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(12000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(12000rpmで10分間)した後、濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(12000rpmで10分間)した後、濾過する操作を2回行い、[濾過ケーキ1]を得た。
循風乾燥機を用いて、[濾過ケーキ1]を45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体粒子A]を得た。[トナー母体粒子A]の体積平均粒径(Dv)は5.71μmであった。
【0097】
〔油相/水相−乳化法によるトナー母体粒子Bの作製〕
トナー母体粒子Aの製造工程中、カルナバワックス110部を50部に減らした以外はトナー母体粒子Aの製造とまったく同じ工程にて、[トナー母体粒子B]を得た。トナー母体粒子Bの体積平均粒径(Dv)は5.83μmであった。
【0098】
〔油相/水相−乳化法によるトナー母体粒子Cの作製〕
トナー母体粒子Aの製造工程中、カルナバワックスを含まない以外はトナー母体粒子Aの製造とまったく同じ工程にて、[トナー母体粒子C]を得た。トナー母体粒子C体積平均粒径(Dv)は5.98μmであった。
【0099】
〔粉砕法によるトナー母体粒子Dの作製〕
結着樹脂[ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸を主成分とするビスフェノールタイプのポリエステル樹脂〔重量平均分子量=1.1×10、数平均分子量=3.9×10、η(140℃)=90Pa・s、ガラス転移温度(Tg)=69℃〕]100質量部、高溶融粘度樹脂(テルペン変性ノボラック樹脂、重量平均分子量=2500、Tm=165℃、η(140℃)=85,000Pa・s)20質量部、カーボンブラック(BPL、キャボット社製)5質量部、帯電制御剤(ボントロンE84、オリエント化学社製)2質量部、及び低分子量ポリプロピレン(ビスコース660P、三洋化成工業社製)5質量部、カルナバワックス4質量部を空冷された2本ロールミルに投入し、投入後15分間溶融混練した、冷却後、ジェットミルにより微粉砕を行い、風力式分級機にて分級を行い、体積平均粒径(Dv)6μmの「トナー母体粒子D」を得た。
【0100】
[離型剤含有多孔質体(離型剤含有多孔質粒子)Aの製造]
離型剤含有多孔質体(離型剤含有多孔質粒子)のコア材料(多孔質体:多孔質粒子)として、日本アエロジル製のAEROPERL 300/30を選択した。この多孔質体(AEROPERL 300/30)をカルナバワックス〔加藤洋行製、カルナバワックスC1、融点(DSCにより測定):79℃〕の溶融液中に投入し、溶融状態で保温しながら減圧し、多孔質体内部の気体とカルナバワックスの置換を促進させると共に、多孔質体のより内部に離型剤成分が保持されるように減圧条件下で攪拌を実施した。この際、カルナバワックスの多孔質粒子表面部分への残存を抑制しつつ、可能な限り内部に保持されるよう、投入する多孔質体(AEROPERL 300/30)とカルナバワックス溶融液の重量比は、10:1〜3:1となるようにした。
【0101】
上記により得られたカルナバワックス内包の離型剤含有多孔質粒子は軽い凝集付着体状態であるため、この凝集付着体を解砕するためスクラムジェットミル(徳寿工作所製 MN-30)を用いて、再度一次粒子レベルまで解砕した。
すなわち、スクラムジェット装置は、高圧ガスを用いて、粒子同士の衝突によりナノレベルの超微粉砕をすることができる。円筒型のミル内部で、円周内に均等分割した位置に粉砕ノズルを配置し、そのひとつ、もしくは複数個が原料供給ノズルとなっているため、同心円の渦を作ることができる。このようにミル内部で高圧ジェット気流による同心円の旋回渦形成が可能なため、スクラムジェットには、粒度分布がシャープになるという特徴がある。また、スクラムジェットは粒子間衝突を用いるため、ミル壁面への粒子の衝突が少ない。そのため、スクラムジェットを用いて粉砕して得られる微粉末は、ミル壁面が削れることによるコンタミネーションが低く、好ましい。また、今回のような粒子表面に離型剤成分が残存する可能性がある場合、スクラムジェットミル粉砕により軽度の相互研磨効果が粒子表面で発揮され、多孔質粒子表面残存離型剤の除去効果も同時に得られた。このような粉砕により平均粒径100nmの離型剤含有多孔質体Aを得た。
【0102】
[離型剤含有多孔質体(離型剤含有多孔質粒子)Bの製造]
離型剤含有多孔質体Aの製造工程中、離型剤溶融液に用いたカルナバワックスをパラフィンワックス〔日本精蝋製 C140、融点(DSCにより測定):61℃〕に替えて使用する以外は、離型剤含有多孔質体Aと同様の工程にて、平均粒径86nmの離型剤含有多孔質体Bを得た。
【0103】
[離型剤含有多孔質体(離型剤含有多孔質粒子)Cの製造]
離型剤含有多孔質体Aの製造工程中、離型剤溶融液に用いたカルナバワックスをマイクロクリスタリンワックス〔日本精蝋製Hi Mic 2065、融点(DSCにより測定):75℃〕に替えて使用する以外は、離型剤含有多孔質体Aと同様の工程にて、平均粒径83nmの離型剤含有多孔質体Cを得た。
【0104】
[離型剤含有多孔質体(離型剤含有多孔質粒子)Dの製造]
離型剤含有多孔質体Aの製造工程中、離型剤溶融液に用いたカルナバワックスをフィッシャートロプシュ〔シェル社製FT−100、融点(DSCにより測定):98℃〕に替えて使用する以外は、離型剤含有多孔質体Aと同様の工程にて、平均粒径96nmの離型剤含有多孔質体Dを得た。
【0105】
[離型剤含有多孔質体(離型剤含有多孔質粒子)Eの製造]
離型剤含有多孔質体Aの製造工程中、離型剤溶融液に用いたカルナバワックスをパラフィンワックス〔日本精蝋製パラフィンワックス 115、融点(DSCにより測定):47℃〕に替えて使用する以外は、離型剤含有多孔質体Aと同様の工程にて、平均粒径97nmの離型剤含有多孔質体Eを得た。
【0106】
[離型剤含有多孔質体(離型剤含有多孔質粒子)Fの製造]
離型剤含有多孔質体Aの製造工程中、離型剤溶融液に用いたカルナバワックスをパラフィンワックス〔日本精蝋製パラフィンワックス 120、融点(DSCにより測定):50℃〕に替えて使用する以外は、離型剤含有多孔質体Aと同様の工程にて、平均粒径111nmの離型剤含有多孔質体Fを得た。
【0107】
上記製造した各離型剤含有多孔質体A〜Fの平均粒径については、動的光散乱法による粒度分布測定機(日機装社製 商品名UPA)を使用して測定し、この粒度分布に基づいて個数平均粒子径データを得た。
【0108】
〈キャリアの作製〉
現像剤の作製及びトナー帯電量の測定に使用するキャリアは、フェライトコア材2500部に対して、シリコーン樹脂溶液(信越化学工業社製)200部、カーボンブラック(キャボット社製)3部をトルエン中で分散させたコート液を流動層式スプレー法で塗布し、コア材の表面を被覆した後、300℃の電気炉で2時間焼成することにより得た。なお、[キャリア]は、粒径分布が比較的シャープで平均粒径が30〜60μmであるものを使用した。
【0109】
(実施例1)
[トナー母体粒子A]100部と、平均粒径が15nmのイソブチルによる疎水性処理されたルチル型酸化チタン0.75部をヘンシェルミキサーで、攪拌翼の周速が35m/秒となる条件で混合した後、平均粒径が8nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ0.8部を、ヘンシェルミキサーで攪拌翼の周速が35m/秒となる条件で混合した。その後、[離型剤含有多孔質体A]2.0部をヘンシェルミキサーで、攪拌翼の周速が35m/秒となる条件で混合し、[トナーA1]を作製した。
得られた[トナーA1]7部と前記[キャリア]93部を混合攪拌し、トナー濃度7wt%の[現像剤A1]を調製した。
トナーA1の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0110】
(実施例2)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子B]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Aを外添した[トナーA2]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーA2]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤A2]を調製した。トナーA2の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0111】
(実施例3)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子D]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Aを外添した[[トナーA3]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーA3]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤A3]を調製した。トナーA3の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0112】
(実施例4)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子B]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Bを外添した[トナーB1]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーB1]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤B1]を調製した。トナーB1の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0113】
(実施例5)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子D]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Bを外添した[トナーB2]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーB2]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤B2]を調製した。トナーB2の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0114】
(実施例6)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子B]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Cを外添した[トナーC1]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーC1]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤C1]を調製した。トナーC1の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0115】
(実施例7)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子D]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Cを外添した[トナーC2]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーC2]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤C2]を調製した。トナーC2の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0116】
(実施例8)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子B]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Dを外添した[トナーD1]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーD1]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤D1]を調製した。トナーD1の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0117】
(実施例9)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子D]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Dを外添した[トナーD2]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーD2]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤D2]を調製した。トナーD2の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0118】
(比較例1)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子B]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Eを外添した[トナーE1]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーE1]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤E1]を調製した。トナーE1の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0119】
(比較例2)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子C]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Cを外添した[トナーE2]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーE2]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤E2]を調製した。トナーE2の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0120】
(比較例3)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子A]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Fを外添した[トナーF1]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーF1]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤F1]を調製した。トナーF1の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0121】
(比較例4)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子D]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして離型剤含有多孔質体Fを外添した[トナーF2]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーF2]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤F2]を調製した。トナーF2の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0122】
(比較例5)
実施例1において[トナー母体粒子A]はそのままとし、離型剤含有多孔質体Aに替えて大粒径シリカ[X−24(信越化学製) ]を外添した[トナーG1]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーG1]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤G1]を調製した。トナーG1の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0123】
(比較例6)
実施例1において[トナー母体粒子A]を[トナー母体粒子B]に替え、また離型剤含有多孔質体Aに替えて大粒径シリカ[X−24(信越化学製) ]を外添して[トナーG2]を調製し、また、[トナーA1]を[トナーG2]に替えて用いた以外は実施例1と同様にして[現像剤G2]を調製した。トナーG2の主な構成(トナー母体粒子、離型剤含有多孔質体)を下記表1に示す。
【0124】
[評価]
上記実施例、比較例のトナーからなる現像剤を用いて下記形態の画像形成装置により、感光体フィルミング、画像品質、画像粒状性、鮮鋭性、定着性評価(コールドオフセット性、ホットオフセット性)、耐熱保存性評価について評価した。評価項目の条件等は後述による。評価結果を下記表1に示す。
【0125】
(画像形成装置)
評価で用いた画像形成装置の形態について説明する。
像担持体である感光体ドラムの周囲に近接又は接触して、感光体ドラム上に一様な電荷を帯電させる帯電ローラ、感光体ドラム上に静電潜像を形成するための露光手段である露光装置、静電潜像を顕像化してトナー像とする現像装置、トナー像を転写紙に転写する転写ベルト、感光体ドラム上の残留トナーを除去するクリーニング装置、感光体ドラム上の残電荷を除電する除電ランプ、帯電ローラが印加する電圧及び現像剤のトナー濃度を制御するための光センサが配置されている。また、この現像装置には、トナー補給装置よりトナー補給口を介して実施例又は比較例のトナーが補給される。作像動作は、次のように行われる。感光体ドラムは、反時計回転方向に回転する。感光体ドラムは、除電光により除電され、表面電位が0〜−150Vの基準電位に平均化される。次に、帯電ローラにより帯電され、表面電位が−1000V前後となる。次に、露光装置で露光され、光が照射された部分(画像部)は、表面電位が0〜−200Vとなる。現像装置により、スリーブ上
のトナーが上記画像部分に付着する。トナー像が作られた感光体ドラムは、回転移動し、給紙部より、用紙先端部と画像先端部が転写ベルトで一致するようなタイミングで転写紙が送られ、転写ベルトで感光体ドラムの表面のトナー像が転写紙に転写される。その後、転写紙は、定着部へ送られ、熱と圧力によりトナーが転写紙に融着されてコピーとして排出される。感光体ドラム上に残った残留トナーは、クリーニング装置中のクリーニングブレードにより掻き落とされ、その後、感光体ドラムは、除電光により残留電荷が除電されてトナーの無い初期状態となり、再び次の作像工程へ移る。
【0126】
(評価項目)
(1)感光体フィルミング
各現像剤を、30℃・85%RHの高温高湿環境下で、2時間以上調湿した。同環境下において該現像剤を用い市販複写機(imagioNEO450:リコー社製、リサイクル機構搭載機)で50000枚コピーした時の感光体フィルミングと、転写された画像の画質を観察した。
判定基準
◎:感光体のフィルミングはなく、画質も良好
○:感光体に微量のフィルミングがあるものの、画像濃度低下はほとんど無し
△:感光体に微量のフィルミングがあり、画像濃度低下も観察された
×:感光体へのフィルミングが多く、画像濃度低下に加え、画像ボケが入るなど画質低下が顕著
(2)画像品質
画像品質は、通紙後の画像品質の劣化(具体的には、転写不良、地汚れ画像の発生)を総合的に判断した。転写不良は、画像形成装置(リコー社製)で5000枚の通紙を行い、その後、黒ベタ画像を通紙させて、その画像の転写不良レベルを目視でランク付けして判断した。また、地汚れ画像については、画像形成装置(リコー社製)で5000枚の通紙を行い、その後、白紙画像を現像中に停止させ、現像後の感光体上の現像剤をスコッチテープ(住友スリーエム社製)で転写し、未転写のテープの画像濃度との差をスペクトロデンシトメーター(X−Rite社製)により測定して定量評価し、その差が0.30未満のものを良好、0.30以上のものを不良とした。これら2つを総合して画像品質が良好なものを○、画像品質良好ではないが許容なものを△、画像品質不良なものを×として評価した。
(3)画像粒状性・鮮鋭性
デジタルフルカラー複写機(リコー社製imagioColor2800)を用い、単色で写真画像の出力を行ない、粒状性、鮮鋭性の度合を目視にて評価した。良好なものから順に、「◎」はオフセット印刷並、「○」はオフセット印刷よりわずかに悪い程度、「△」はオフセット印刷よりかなり悪い程度、「×」は従来の電子写真画像程度(非常に悪い)、で評価した。
(4)定着性評価
定着ローラとしてテフロン(登録商標)ローラを使用した(株)リコー製複写機 MF2200定着部を改造した装置を用いて、これにリコー製のタイプ6200紙をセットし複写テストを行なった。定着温度を変化させてコールドオフセット温度(定着下限温度)とホットオフセット温度(耐ホットオフセット温度)を求めた。従来の低温定着トナーの定着下限温度は140〜150℃程度である。なお、低温定着の評価条件は、紙送りの線速度を120〜150mm/sec、面圧1.2Kgf/cm、ニップ幅3mm、高温オフセットの評価条件は紙送りの線速度を50mm/sec、面圧2.0Kgf/cm、ニップ幅4.5mmと設定した。各特性評価の基準は以下の通りである。
(1)コールドオフセット性(低温定着性:5段階評価)
◎(良):140℃未満、○:140〜149℃、□:150〜159℃、△:160〜170℃、×(悪):170℃以上
(2)ホットオフセット性(5段階評価)
◎(良):201℃以上、○:200〜191℃、□:190〜181℃、△:180〜171℃、×(悪):170℃以下
(5)耐熱保存性評価
トナーを50℃×8時間保管後、42メッシュのふるいにて2分間ふるい、金網上の残存率をもって耐熱保存性とした。耐熱保存性の良好なトナーほど残存率は小さい。以下の4段階で評価した。
×:30%以上
△:20〜30%
○:10〜20%
◎:10%未満
評価結果は4段階評価にて行った。
【0127】
【表1】

【0128】
本発明の条件を満たす構成[外添剤として少なくとも融点が60℃以上の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を有する]とされたトナーを用いた場合には、定着性能(コールドオフセット性、ホットオフセット性等)と耐熱保存性の両立、及び感光体フィルミングの低減、良好な画像品質(転写不良、地汚れ画像の抑制)と画像粒状性・鮮鋭性の維持がバランス良く効果的に達成されることが分る。
一方、融点が60℃未満の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を用いた比較例1〜4、及び、離型剤含有多孔質体を用いず母体粒子B表面に大粒径シリカを外添した比較例6の場合には、定着性能(コールドオフセット性、ホットオフセット性等)と耐熱保存性が両立できないことが分る。なお、離型剤含有多孔質粒子を用いず母体粒子A表面に大粒径シリカを外添した比較例5の場合には、定着性能及び耐熱保存性の評価結果に×印の評価は無いが、長期使用において像担持体(感光体)表面の摩耗等に影響を及ぼす心配がある。
本発明によれば、電子写真装置や静電記録装置などにおける画像担持体上の静電潜像を顕像化するための定着性能及び耐熱保存性を両立した画像形成用トナーが提供でき、連続使用においても出力画像上での転写不良、地汚れ画像などの画像劣化が抑制された高画質の画像形成を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0129】
10 像担持体(感光体)
20 帯電装置
30 露光装置
40 現像装置
60 クリーニング装置
80 転写装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0130】
【特許文献1】特開2007−279702号公報
【特許文献2】特開2007−156099号公報
【特許文献3】特開2008−116568号公報
【特許文献4】特開2007−248911号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子と該トナー母体粒子表面を被覆する外添剤を備えたトナーであって、前記外添剤として少なくとも融点が60℃以上の離型剤を多孔質空孔内部に含む離型剤含有多孔質粒子を有することを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記離型剤含有多孔質粒子の含有量が、前記トナー母体粒子の総量に対して重量比で2%以上10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナー母体粒子が、結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体、及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー材料液(油相)を水系媒体(水相)中で乳化乃至分散させた後、脱溶剤して形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体が、少なくともエステル結合及び該エステル結合以外の結合単位を含む変性ポリエステル、もしくは該変性ポリエステルを生成可能な樹脂前駆体、及び結晶性ポリエステルから選択される樹脂材料を含有することを特徴とする請求項3に記載のトナー。
【請求項5】
前記変性ポリエステルを生成可能な樹脂前駆体として、活性水素基を有する化合物、及び該化合物の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステルを含有することを特徴とする請求項4に記載のトナー。
【請求項6】
前記変性ポリエステルが、少なくともエステル結合及びウレア結合を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー母体粒子の体積平均粒径(Dv)が、3.0μm以上6.0μm未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を1乃至7のいずれかに記載のトナーを用いて現像する工程と、該像担持体上に形成されたトナー像を画像支持体に転写する工程と、該転写されたトナー像をローラ状もしくはベルト状の定着部材により加熱加圧定着して画像支持体上に定着画像を得る工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−242490(P2012−242490A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110427(P2011−110427)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】