説明

トノカバー装置を備えた車両の後部車体構造

【課題】この発明は、トノカバー装置の不要時に容易に広い荷室空間を確保することができ、かつ荷室の車両前後方向の幅に影響されることなく、巻取り装置を回動させることができるトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】トノカバー装置50は、荷室4の底面を構成するトランクボード13上に展開するトノカバー本体51と、該トノカバー本体51を巻取り収納する巻取り装置52を有し、該巻取り装置52は、車幅方向で複数に分割されて配設されると共に、車幅方向外側が荷室4の側面に支持されており、車幅方向に亘って配設される第一位置と、荷室4の側面の近傍に前後方向に亘って配設される第二位置との間を回動可能に支持された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックと、該シートバックの後方に配設された荷室と、トノカバー装置とを備えた車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内の後部に荷室が形成された車両において、積載した荷物を隠すために荷室にトノカバー装置を配設することが知られている。
【0003】
トノカバー装置は、一般的に、シート状のカバー部材を有するトノカバー本体と、該トノカバー本体を巻取り状態で収納する巻取り装置とを有している。トノカバー装置を備えた車両では、トノカバー本体を巻取り装置から引出し、荷室フロア上に展開させることで、荷室に積載した荷物を隠すことが可能になっている。
【0004】
また、従来、トノカバー装置の不要時において、上記巻取り装置を車体から取り外すことができるように構成されたものも知られている。例えば、荷室前方のシートバックが前倒可能に構成されている場合、該シートバックを前倒させ、かつ上記巻取り装置を車体から取り外すことで、広い荷室空間を形成することが可能になる。
【0005】
しかしながら、上記巻取り装置を取り外し可能に構成した場合、取り外した後の巻取り装置を邪魔にならないように収納するための収納スペースを確保することが問題となっていた。
【0006】
そこで、従来、シートクッションとシートバックとが折り畳み可能に構成されたシート装置を備えるものにおいて、トノカバー装置の巻取り装置を収容する収容部をシートクッションの底面部に形成したものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0007】
上記特許文献1では、単一の巻取り装置が、車幅方向に亘って配設された第一位置と、車両前後方向に亘って配設された第二位置との間を回動可能に支持されている。そして、トノカバー装置の不要時には、上記巻取り装置を第二位置に回動させることで、これを容易にシートクッションの底面部に収容できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−52546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術では、荷室の車両前後方向の幅が短く設定された車両に適用した場合、巻取り装置を第二位置に回動させる際、その回動範囲が荷室の車両前後方向の幅によって制約を受けるという問題がある。
【0010】
この発明は、トノカバー装置の不要時に容易に広い荷室空間を確保することができ、かつ荷室の車両前後方向の幅に影響されることなく、巻取り装置を回動させることができるトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造は、車室内の底面を形成するフロアパネルと、該フロアパネル上に配設されたシートクッションと、該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックと、該シートバックの後方に配設された荷室と、トノカバー装置とを備えた車両の後部車体構造であって、上記トノカバー装置は、上記荷室の底面を構成する荷室フロア上に展開するトノカバー本体と、上記荷室フロア上に展開した上記トノカバー本体を巻取り収納する巻取り装置とを有し、該巻取り装置は、車幅方向で複数に分割されて配設されると共に、車幅方向外側が上記荷室の側面に支持されており、車幅方向に亘って配設される第一位置と、上記荷室の側面の近傍に前後方向に亘って配設される第二位置との間を回動可能に支持されたものである。
【0012】
この構成によれば、巻取り装置を車体(荷室)の側面に回動可能に支持することで、トノカバー装置の不要時に巻取り装置を荷室の側面に向かって回動させ、かつシートバックを前倒させることにより、容易に広い荷室空間を確保することができる。
【0013】
さらに、巻取り装置を車幅方向で複数の巻取り装置に分割したことで、巻取り装置を第二位置に配設した時、その車両前後方向の長さを短縮することができる。このため、荷室の車両前後方向の幅に影響されることなく、巻取り装置を第二位置に向かって回動させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記巻取り装置が、該巻取り装置を第二位置の方向に付勢する付勢手段を介して上記荷室の側面に支持されたものである。
【0015】
この構成によれば、巻取り装置を第二位置に向かって容易に回動させることができる。さらに、付勢手段の付勢力を調整することで、巻取り装置を第二位置に保持する保持手段として上記付勢手段を利用することができる。このため、別途保持手段を設ける必要がなく、部品点数の低減を実現できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記巻取り装置が、上記第二位置にある状態から上記トノカバー本体を車幅方向に引出し可能に構成されたものである。
【0017】
この構成によれば、巻取り装置を第二位置に配設した状態であっても、必要に応じてトノカバー本体を荷室フロア上に展開させることができ、荷室を覆うことができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記シートバックの背面に、第一位置にある上記巻取り装置の車幅方向内側を支持する支持部が配設されたものである。
【0019】
この構成によれば、巻取り装置の一端側を車体側(荷室の側面)で支持しつつ、他端側をシートバックで支持するため、巻取り装置を安定して支持することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記シートバックが、車幅方向で複数に分割されたものであって、上記支持部は、上記複数に分割されたシートバックのうち車幅方向の寸法が最も大きなシートバックに配設されたものである。
【0021】
この構成によれば、支持部によって巻取り装置が支持される状態を解除しなくても、シートバックを容易に前倒させることができる。これにより、荷室空間を広げることが可能になる一方で、着座スペースを確保することもできる。
そして、車幅方向の寸法が最も大きいシートのシートバックに支持部が配設されることで、支持部によって巻取り装置が支持される状態では、車幅方向の寸法が最も大きいシートバックが起立状態に保持されることになるため、広い着座スペースを確保することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記トノカバー本体が、車幅方向に分割して配設されたものであって、分割された上記トノカバー本体同士を連結する連結部を備えたものである。
【0023】
この構成によれば、巻取り装置を第一位置に配設した状態でトノカバー本体を引出す時、分割された上記トノカバー本体同士を連結することで、トノカバー本体同士の隙間を減らすことができ、荷室を確実に覆うことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、巻取り装置を車体(荷室)の側面に回動可能に支持することで、トノカバー装置の不要時に巻取り装置を荷室の側面に向かって回動させ、かつシートバックを前倒させることにより、容易に広い荷室空間を確保することができる。
【0025】
さらに、巻取り装置を車幅方向で複数の巻取り装置に分割したことで、巻取り装置を第二位置に配設した時、その車両前後方向の長さを短縮することができる。このため、荷室の車両前後方向の幅に影響されることなく、巻取り装置を第二位置に向かって回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施形態に係る車両の後部車体構造を示す側面図。
【図2】車両後部を車両後方から見た斜視図。
【図3】車両後部を荷室側から見た図。
【図4】車両後部を示す平面図。
【図5】支持部材とその周辺を示す要部拡大図。
【図6】支持部材とその周辺を示す断面図。
【図7】巻取り装置の車幅方向外側端部の支持構造を示す断面図。
【図8】連結部を構成する嵌合凸部及び嵌合凹部を示す斜視図。
【図9】連結部においてトノカバー本体同士を連結する手順を説明するための図。
【図10】巻取り装置が第二位置にある状態を示す図であり、車両後部を荷室側から見た図。
【図11】巻取り装置が第二位置にある状態を示す平面図。
【図12】巻取り装置が第二位置にある状態を示す図であり、トランクサイドトリムとその周辺を示す断面図。
【図13】右側シートのシートバックのみを起立状態にし、かつ巻取り装置を第一位置に配設した状態で、車両後部を荷室から見た図。
【図14】この発明の他の実施形態に係る車両の後部車体構造を示す図2相当の斜視図。
【図15】巻取り装置が第二位置にある状態を示す平面図。
【図16】この発明の他の実施形態に係る巻取り装置の車幅方向側端部の支持構造を示す図7相当の断面図。
【図17】巻取り装置が第二位置にある状態を示す図であり、トランクサイドトリムとその周辺を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両Vの後部車体構造を示す側面図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。図1に示すように車両Vには、車室1の底面を形成するフロアパネル2が設けられ、このフロアパネル2の後部には、後方に向けて水平に延びる荷室フロア3が形成され、この荷室フロア3の上方に荷室4が形成されている。
【0028】
さらに、上述の荷室フロア3の車幅方向の中央部、または中間部には、スペアタイヤを収納する凹状のスペアタイヤパン5が段下げ形成され、このスペアタイヤパン5の後端開放側には車幅方向に延びるリヤエンドパネル6が取付けられている。
【0029】
一方、荷室4の後方に形成された後部荷室開口7が、リヤゲート8によって開閉可能に覆うように構成されており、このリヤゲート8は、リヤゲートインナパネル8aと、リヤゲートアウタパネル8bと、リヤウインド8cとを備えている。
【0030】
また、ルーフパネル9の後端部には車幅方向に延びるリヤヘッダ10(車体剛性部材)が接合固定され、ルーフパネル9の後端部とリヤヘッダ10との間には、車幅方向に延びるヘッダ閉断面を形成している。そして、このヘッダ閉断面の直後に設けられた図示しないヒンジ部材を介して、上述のリヤゲート8は開閉可能に支持されている。
【0031】
また、フロアパネル2において、荷室フロア3の前端部下面にはリヤクロスメンバ11(車体剛性部材)が接合固定されるとともに、上面には、荷室4側に突出するクロスメンバ12が接合固定されている。そして、荷室フロア3と各クロスメンバ11、12との間には車幅方向に延びる閉断面が形成され、下部車体剛性を確保すべく構成されている。
【0032】
ここで、クロスメンバ12には、荷室4の底面を構成するトランクボード13の前端部が載置されており、上述したスペアタイヤパン5は、トランクボード13により覆われている。そして、荷室4は、その底面がトランクボード13によって略水平に形成されている。
【0033】
また、荷室4は、その車幅方向両側面がトランクサイドトリム41、41により形成されており、上述したトランクボード13とトランクサイドトリム41、41とにより荷室空間が形成されている。そして、荷室4の側面の下部には、該荷室4内に膨出するホイールハウス14が形成されると共に、ホイールハウス14の上方には、上部が車外側に凹む段部42が形成されている。本実施形態では、この段部42において、一部を車両前後方向に亘って車外側に凹ませた収納部43(後述)が形成されている。
【0034】
図2は、車両Vの後部を車両後方から見た斜視図であり、図3は、車両Vの後部を荷室4側から見た図、図4は、車両Vの後部を示す平面図である。車室1内には、車両前後方向に亘って複数列のシートが備えられており、そのうち上述のフロアパネル2の上方においてリヤクロスメンバ11と対応する位置には、図1〜図4に示すようなリヤシート20が配設されている。なお、図3に示すシート20R′、20L′は、リヤシート20の前列に位置するシートである。
【0035】
リヤシート20は、図2〜図4に示すように、左側シート20Lと、右側シート20Rと、左側、右側シート20R、20Lの間に設定された中央シート20Cとを備え、各シート20L、20R、20Cは、共通のシートクッション21と、このシートクッション21の後部から上方に起立したシートバック22、22、32と、シートバック22、22、32の上部中央に設けられて乗員の頭部をサポートするヘッドレスト23、23、33とをそれぞれ備えている。
【0036】
また、リヤシート20では、中央シート20Cの車幅方向の長さが、左側、右側シート20L、20Rよりも短く設定されている。
【0037】
また、リヤシート20では、シートバック22、32が、図1に示すリクライニング支点としてのヒンジ軸24によって、図1にて二点鎖線で示すように個別に車両前後方向に回動可能に支持されている。このため、ヒンジ軸24を中心とした回動により、シートバック22、32は、乗員が着座可能な起立状態の位置からシートクッション21上に前倒可能とされている。
【0038】
また、リヤシート20は、車室1において最も後方に配設され、シートバック22、32の後方には、荷室4が配設されている。シートバック22、32を前倒させた時には、図1にて二点鎖線で示すように、シートバック22、32の各背面部と、荷室4のトランクボード13とが略同一平面をなすように構成され、荷室4からシートバック22、32の背面に亘って車両前方に連続する底面が形成されるようになっている。
【0039】
また、リヤシート20のうち、右側のシート20Rのシートバック22には、図1、図3〜図6に示すように、その背面部において後述する2つの支持部材25、25が取付けられている。この支持部材25、25は、図5、図6に示すようにいずれも中央部に凹部25bが形成された基部25aと、凹部25b内で車幅方向に延びる棒状の被係合部25cとを有している。なお、図5は、支持部材25とその周辺を示す要部拡大図であり、図6は、同断面図である。
【0040】
また、シートバック22、32の背面側の上部には、図1〜図4、図6に示すようにトノカバー装置50が配設されている。トノカバー装置50は、荷室4のトランクボード13上に展開して、荷室4内の荷物を覆い隠すトノカバー本体51と、該トノカバー本体51を巻取り状態で収納する巻取り装置52とを有する。
【0041】
そして、本実施形態では、上述したトノカバー本体51及び巻取り装置52が、車幅方向で複数(ここでは2つ)に分割され、それぞれが左右のトノカバー本体51L、51R、巻取り装置52L、52Rにより構成されている。
【0042】
トノカバー本体51及び巻取り装置52は、図2〜図4に示すように右側シート20Rのシートバック22の車幅方向内側端部と略対応する位置で分割されており、左側のトノカバー本体51L、巻取り装置52Lが、右側のトノカバー本体51R、巻取り装置52Rよりも長尺に設定されている。
【0043】
トノカバー装置50のうち、トノカバー本体51(51L、51R)は、図1〜図4、図6に示すようにシート状のカバー部材51aと、該カバー部材51aの後端部に取付けられた薄板状のカバー先端部51bとを有している。このうち、左側のトノカバー本体51Lのカバー先端部51bには、図2、図4に示すように、トノカバー本体51を巻取り装置52から引出す際、乗員がカバー先端部51bを掴むための孔部51cが形成されている。
【0044】
巻取り装置52(52L、52R)は、図1〜図4、図6に示すようにカバー部材51aの一端側が固定された巻取り軸52aと、該巻取り軸52aを回転可能に支持するケーシング52bとを有している。巻取り装置52では、巻取り軸52aが、図示しない付勢手段によってカバー部材51aを巻取る方向に付勢されている。そして、ケーシング52bでは、図6に示すようにその上面に、カバー部材51aの引出し口52cが形成されている。
【0045】
トノカバー装置50では、乗員の操作に応じて、カバー部材51aを引出し口52cから外部に引出し、または引出したカバー部材51aを上記付勢力によって巻取り軸52aに巻取らせ、ケーシング52b内に収納できるようになっている。
【0046】
また、巻取り装置52L、52Rのケーシング52b、52bは、車幅方向内側の前面に図6に示すような嵌合孔52dを有すると共に、下面には係合部材53が設けられている。係合部材53は、後端側に操作部53a、前端側に係合フック53bを有しており、その中間部が回動軸54によって回動可能に支持されている。そして、係合部材53は、不図示の付勢手段によって図6の時計方向に付勢されている。
【0047】
図1〜図4に示すように、巻取り装置52L、52Rが車幅方向に亘って配設されている状態では、各ケーシング52b、52bの嵌合孔52dが、図6に示すように右側シート20Rのシートバック22の支持部材25と対向する位置に配置される。この時、支持部材25の基部25aの上部がケーシング52bの嵌合孔52dに嵌合することで、巻取り装置52の上下方向の位置決めなされる。そして、係合部材53のフック爪53bが支持部材25の凹部25b内に入り込み、被係合部25cに係合することで、巻取り装置52の車両前後方向の位置決めがなされている。
【0048】
このようにして、左右の巻取り装置52L、52Rは、その車幅方向内側が支持部材25によって支持されている。
【0049】
図7は、巻取り装置52の車幅方向外側端部の支持構造を示す断面図である。なお、図中において矢印(IN)は車体内方、矢印(OUT)は車体外方を示す。トノカバー装置50では、その巻取り装置52L、52Rが、それぞれ左右の車外側端部において荷室4の側面に回動可能に支持されている。
【0050】
具体的には、上述した収納部43の前端部の上部に、図1〜図4、図7に示すように荷室4側に突出する回動軸固定部43aが形成されており、ケーシング52b(巻取り装置52L、52R)の車外側端部は、収納部43の前端部において、その底部と回動軸固定部43aとの間に配設されている。
【0051】
そして、回動軸固定部43aには、図1〜図4、図7に示すように回動軸60が設けられ、図7に示すように所定の隙間を空けてケーシング52bの車外側端部を上下に貫通している。これにより、ケーシング52b、つまりは、巻取り装置52(52L、52R)が回動軸60を中心に回動可能に支持されている。
【0052】
ここで、回動軸固定部43aの車外側では、図7に示すように車体の外板を構成するサイドアウタパネル61、サイドインナパネル62が閉断面を形成するように接合され、その閉断面の内部では、レインフォースメント63がサイドインナパネル62に接合されている。
【0053】
また、サイドインナパネル62には、その車内側にホイールハウスインナパネル64が接合され、該ホイールハウスインナパネル64の車内側には、回動軸固定部43aに対応して配設された補強ブラケット65や、レインフォースメント66が接合されている。なお、これらのパネル部材64、65、66はトランクサイドトリム41によって車内側から覆われ隠蔽されている。
【0054】
上述した回動軸60は、その上端部が補強ブラケット65に連結される一方、下端部がホイールハウスインナパネル64やレインフォースメント66に連結されている。これにより、回動軸60における巻取り装置52の支持剛性向上を図っている。
【0055】
また、巻取り装置52と荷室4の側面との間には、付勢手段としてのコイルスプリング67が配設され、巻取り装置52は、このコイルスプリング67を介して荷室4の側面に支持されている。このコイルスプリング67は、その一端側がケーシング52bの車外側端部に固定される一方、その他端側が回動軸固定部43aの下面に固定されている。
【0056】
ここで、図1〜図4、図6に示す状態では、巻取り装置52の車幅方向内側が支持部材25によって支持される一方、車外側端部が回動軸60によって支持されている。この時、巻取り装置52L、52Rは、車幅方向に亘って略一直線上に延びる第一位置に配設される。
【0057】
ところで、トノカバー本体51は、トノカバー本体51L、51R同士を連結する連結部51dをカバー先端部51bに有している。連結部51dは、図8に示すように、トノカバー本体51Lの車幅方向内側端部に形成された嵌合凸部51eと、トノカバー本体51Rの車幅方向内側端部に形成された嵌合凹部51fとにより構成されている。
【0058】
嵌合凸部51eでは、その突出部が、図8、図9に示すように平面視でテーパー状をなし、先(後)端に近づくにしたがってその幅が小さくなるように形成される一方、嵌合凹部51fでは、その凹溝部が、嵌合凸部51eの上記突出部の形状に対応して平面視でテーパー状をなしており、先端に近づくにしたがってその幅が小さくなるように形成されている。
【0059】
巻取り装置52L、52Rが第一位置に配設された状態でトノカバー装置50を使用する時には、先ず、図9(a)に示すように嵌合凸部51eを有する左側のカバー先端部51bを、嵌合凹部51fを有する左側のカバー先端部51bよりも車両後方に引出し、図9(b)に示すように嵌合凸部51eを後方から挿入して嵌合凹部51fに嵌合させる。この連結部51dにおける嵌合により、左右のトノカバー本体51L、51Rは連結される。
【0060】
そして、トノカバー本体51L、51Rが連結された状態で、トノカバー本体51Lのカバー先端部51bに形成された孔部51cを掴んで後方に引張る。この時、嵌合凸部51e、嵌合凹部51fがテーパー状をなしていることにより、トノカバー本体51Lを後方に引張ると、係合凸部51eに嵌合した嵌合凹部51fも後方に引張られることになる。このため、図4にて二点鎖線で示すように、左右のトノカバー本体51L、51Rを後方に向かって一体的に引出すことができ、荷室4のトランクボード13上に展開させることができる。
【0061】
ところで、荷室4の側面後端部には、フック状のトノカバー支持部44(図1、図2参照)が形成されている。上述のようにトノカバー本体51を引出した時には、カバー先端部51b、51bの車幅方向外側部をトノカバー支持部44に係合させることで、カバー部材51aの展開状態を保持できるようになっている。
【0062】
なお、車両Vでは、車体の後端部をなすリヤエンドパネル6やリヤゲート8のデザインに対応して、荷室4のトランクボード13の後端部が、図4に示すように略円弧状をなしている。これに伴い、トノカバー装置50では、トノカバー本体51L、51Rを連結した時、カバー先端部51b、51bの先端が、トランクボード13の後端部の形状に対応して略円弧状をなすように構成されている。
【0063】
また、本実施形態では、巻取り装置52L、52Rが、回動軸60の支持により、車幅方向に亘って配設される第一位置(図1〜図4、図6参照)と、荷室4のトランクサイドトリム41の近傍に前後方向に亘って配設される第二位置(図10〜図12参照)との間を回動できるように構成されている。そして、巻取り装置52L、52Rは、コイルスプリング67の弾性力により、第二位置の方向に付勢されている。
【0064】
巻取り装置52L、52Rを、図1〜図4、図6に示す第一位置から第二位置に回動させる際には、先ず図8、図9に示す連結部51dの嵌合凸部51eを嵌合凹部51fから抜き出して、トノカバー本体51L、51Rの連結を解除する。そして、図6に示す操作部53aを操作して、フック爪53bを上記付勢力に抗して図中二点鎖線に示すように反時計方向に回動させ、被係合部53cとの係合状態を解除する。この時、巻取り装置52L、52Rはそれぞれ、コイルスプリング67の付勢力によって、第二位置に向かって自動的に回動することになり、最終的に各々が図10〜図12に示すように第二位置に配設される。
【0065】
このようにして、巻取り装置52L、52Rが、第二位置に配設されると、各巻取り装置52L、52Rは、左右の収納部43、43に収納される。ここで、左右の収納部43、43は、その車両前後方向及び車幅方向の寸法が、巻取り装置52L、52Rやカバー先端部51b、51bの寸法に応じて設定され互いに異なっており、巻取り装置52L、52Rは、ケーシング52bの側面がトランクサイドトリム41の壁面から突出することがないように、収納部43、43に収納される。
【0066】
さらに、巻取り装置52が第二位置に配設されると、乗員が巻取り装置52を第一位置に向かって回動操作しない限りは、コイルスプリング67の付勢力によって収納部43、43への収納状態が保持されるようになっている。
【0067】
このような構成により、リヤシート20のシートバック22、22、32を前倒させた時には、巻取り装置52L、52Rを第二位置に配設することで、図10に示すように、荷室4の空間をより広く確保することができ、図1中二点鎖線で示す長尺物Xや大きな荷物を容易に積載することが可能になる。
【0068】
また、トノカバー装置50において、カバー部材51aの引出し口52cがケーシング52bの上面に形成されていることで、図10〜図12に示すように、巻取り装置52を第二位置に配設した状態であっても、トノカバー本体51Lのカバー先端部51bの向きを反転させ、これを車幅方向に引出せば、カバー部材51aをトランクボード13上に展開させることが可能になっている。
【0069】
ここで、車室4の右側側面では、図1、図2、図4、図11に示すように、フック状の第二のトノカバー支持部45が取付けられている。上述したように巻取り装置52L、52Rが第二位置に配設された状態で、巻取り装置52Lからトノカバー本体51aを引出した時には、孔部51cを係合部材45に係合させることで、図11にて二点鎖線で示すようにカバー部材51aを展開状態に保持することができる。
【0070】
また、巻取り装置52L、52Rを、図10〜図12に示す第二位置から第一位置に回動させる際には、先ず右側シート20Rのシートバック22を起立状態に復帰させ、巻取り装置52L、52Rをコイルスプリング67の付勢力に抗して収納部43、43から抜き出し、第一位置に向かって回動させる。そして、係合部材53のフック爪53aを支持部材25の凹部25b内に押し込む。
【0071】
この時、フック爪53aが被係合部25cと当接することにより、係合部材53は図6の反時計方向に回動し、さらなるフック爪53aの押し込みにより、該フック爪53aは被係合部25cを乗り越えて、図6にて実線で示すように再び被係合部25cに係合する。そして、同時に支持部材25の基部25aは、巻取り装置52のケーシング52bの嵌合孔52dに嵌合される。これにより、巻取り装置52L、52Rは、図1〜図4、図6に示すように第一位置に復帰することができる。
【0072】
このように、本実施形態では、巻取り装置52が、図1〜4、図6に示すように車幅方向に亘って配設される第一位置と、図10〜図12に示すようにトランクサイドトリム41の近傍に前後方向に亘って配設される第二位置との間を回動可能に支持されることで、トノカバー装置50の不要時に、巻取り装置52を荷室4の側面に向かって回動させ、かつシートバック22、32を前倒させることにより、容易に広い荷室空間を確保することができる。
【0073】
さらに、巻取り装置52を車幅方向で複数の巻取り装置52L、52Rに分割したことで、巻取り装置52L、52Rを第二位置に配設した時、その車両前後方向の長さを短縮することができる。このため、荷室4の車両前後方向の幅に影響されることなく、巻取り装置52L、52Rを第二位置に向かって回動させることができる。
【0074】
また、巻取り装置52が、該巻取り装置52を第二位置の方向に付勢するコイルスプリング67を介して支持されることで、巻取り装置52を第二位置に向かって容易に回動させることができる。さらに、コイルスプリング67の弾性力(付勢力)を調整することで、巻取り装置52を第二位置に保持する保持手段としてコイルスプリング67を利用することができる。このため、別途保持手段を設ける必要がなく、部品点数の低減を実現できる。
【0075】
また、図11に示すように、第二位置に巻取り装置52Lが配設された状態から、トノカバー本体51Lを車幅方向に引出し可能に構成することで、巻取り装置52Lを第二位置に配設した状態であっても、必要に応じてトノカバー本体51をトランクボード13上に展開させることができ、荷室4を覆うことができる。
【0076】
また、第一位置に配設された巻取り装置52の車幅方向内側を支持する支持部材25をシートバック22の背面部に配設したことで、巻取り装置52の一端側を車体側(荷室4の側面)で支持しつつ、他端側をシートバック22で支持するため、巻取り装置52を安定して支持することができる。
【0077】
また、巻取り装置52が、右側シート20Rのシートバック22に支持されていることで、例えば、支持部材25による巻取り装置52によって支持される状態を解除しなくても、図13に示すようにシート20L、20Cのシートバック22、32を容易に前倒させることができる。これにより、図示のように荷室4の空間を広げて例えば長尺物Xや大きな荷物を積載することが可能になる一方で、着座スペースを確保することもできる。
【0078】
そして、本実施形態では、車幅方向の寸法が最も大きい右側シート20Rのシートバック22に支持部材25が配設されることで、支持部材25によって巻取り装置52が支持される状態では、車幅方向の寸法が最も大きいシートバック22が起立状態に保持されることになるため、広い着座スペースを確保することができる。なお、本実施形態では、車幅方向の寸法が最も大きいシートである右側シート20Rのシートバック22に支持部材25を配設したが、同じ寸法に設定された左側シート20Lのシートバック22に支持部材25を配設してもよい。
【0079】
また、図2〜4、図8、図9に示すように、巻取り装置52を第一位置に配設した状態でトノカバー本体51を引出す時、分割された左右のトノカバー本体51L、51R同士を連結部51dによって連結することで、トノカバー本体51L、51R同士の隙間を減らすことができ、荷室4を確実に覆うことができる。
【0080】
ところで、上述した実施形態では、荷室4の側面において収納部43の上部が開放された構成となっている。このため、巻取り装置52L、52Rが第二位置に配設され、収納部43に収納された状態では、後部荷室開口7から荷室4を見た時、トノカバー装置50が目立ってしまい、見栄えを低下させる虞がある。
【0081】
そこで、図14〜図17に示すように、収納部43を上方から覆うカバー部材70(70L、70R)を備えてもよい。図14は、本発明の他の実施形態に係る車両Vの後部車体構造を示す斜視図であり、図15は、巻取り装置52が第二位置にある状態を示す平面図である。また、図16は、本発明の他の実施形態に係る巻取り装置52の車幅方向側端部の支持構造を示す断面図、図17は、巻取り装置52が第二位置にある状態を示す図であり、トランクサイドトリム41とその周辺を示す断面図である。なお、図14〜図17に示す実施形態では、カバー部材70R、70L以外の構成が、図1〜図13に示すものと同様であるため、カバー部材70R、70L以外の構成については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0082】
カバー部材70R、70Lは、例えば樹脂製の板状部材により構成され、その車両前後方向及び車幅方向の寸法は収納部43、43の寸法に応じて設定され互いに異なっている。
【0083】
また、図16、図17に示すように、カバー部材70は、その車外側に縦壁部70aを有しており、下端部がトランクサイドトリム41の段部42に固定されている。これにより、カバー部材70は、所謂片持ち支持の状態で荷室4の側面に取付けられている。
【0084】
また、カバー部材70R、70Lは、その前端部において、図15、図16に示すように回動軸60の上端部を上方から覆っている。そして、巻取り装置52L、52Rが第二位置に配設され、収納部43内に収納された時、カバー部材70R、70Lは、図15、図17に示すようにトノカバー装置50を上方から覆うことができるようになっている。本実施形態では、このように収納部43内に収納されたトノカバー装置50をカバー部材70R、70Lによって覆うことで、荷室4の見栄え低下を抑制できる。
【0085】
また、本実施形態では、図14に示すカバー部材70Rを例に挙げて説明すると、カバー部材70Rの車両前後方向の中間部が、前後端部よりも高い位置に形成され、カバー部材70Lも同様の形状を有している。これにより、巻取り装置52L、52Rを収納部43に収納した時、ケーシング52bの上方に位置するカバー先端部51bがカバー部材70R、70Lに接触すること防止できる。
【0086】
ところで、上述した実施形態では、巻取り装置52をコイルスプリング67の付勢力のみによって第二位置に保持しているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、荷室4の側面にロック手段を設け、巻取り装置52を係合等の方法でロックすることによって第二位置に保持するようにしてもよい。
【0087】
また、本発明は、中央シートの車幅方向の幅を、左側、右側シートよりも短く設定することに必ずしも限定されない。例えば、全てのシートを同じ幅に設定してもよい。また、シートバックを、左側、右側、中央シート毎にそれぞれ別部材で構成することにも限定されない。例えば、左側、右側シートのいずれかと中央シートのシートバックが一体的に形成されたものであってもよい。
【0088】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、荷室フロアは、トランクボード13に対応し、
以下同様に、
巻取り装置を第二位置に付勢する付勢手段は、コイルスプリング67に対応し、
支持部は、支持部材25に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0089】
2…フロアパネル
4…荷室
13…トランクボード
21…シートクッション
22、32…シートバック
25…支持部材
50…トノカバー装置
51、51L、51R…トノカバー本体
51f…連結部
52、52L、52R…巻取り装置
67…コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の底面を形成するフロアパネルと、
該フロアパネル上に配設されたシートクッションと、
該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックと、
該シートバックの後方に配設された荷室と、
トノカバー装置とを備えた車両の後部車体構造であって、
上記トノカバー装置は、上記荷室の底面を構成する荷室フロア上に展開するトノカバー本体と、
上記荷室フロア上に展開した上記トノカバー本体を巻取り収納する巻取り装置とを有し、
該巻取り装置は、車幅方向で複数に分割されて配設されると共に、車幅方向外側が上記荷室の側面に支持されており、
車幅方向に亘って配設される第一位置と、
上記荷室の側面の近傍に前後方向に亘って配設される第二位置との間を回動可能に支持された
トノカバー装置を備えた車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記巻取り装置は、該巻取り装置を第二位置の方向に付勢する付勢手段を介して上記荷室の側面に支持された
請求項1記載のトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造。
【請求項3】
上記巻取り装置は、上記第二位置にある状態から上記トノカバー本体を車幅方向に引出し可能に構成された
請求項1または2記載のトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造。
【請求項4】
上記シートバックの背面には、第一位置にある上記巻取り装置の車幅方向内側を支持する支持部が配設された
請求項1〜3のいずれか一項に記載のトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記シートバックは、車幅方向で複数に分割されたものであって、
上記支持部は、上記複数に分割されたシートバックのうち車幅方向の寸法が最も大きなシートバックに配設された
請求項4記載のトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造。
【請求項6】
上記トノカバー本体は、車幅方向に分割して配設されたものであって、
分割された上記トノカバー本体同士を連結する連結部を備えた
請求項1〜5のいずれか一項に記載のトノカバー装置を備えた車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−240894(P2011−240894A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116963(P2010−116963)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】