説明

トノカバー装置

【課題】簡便に把持ボードを水平保持可能なトノカバー装置を提供する。
【解決手段】本発明のトノカバー装置10は、車両の荷室を遮蔽するトノカバーシート40と、トノカバーシート40の後端が固着されており、トノカバーシート40を巻取る巻取り軸70と、巻取り軸70を内蔵し、トノカバーシート40が出入りする開口部60が形成されたケース50と、トノカバーシート50の先端に結合された把持ボード20と、把持ボード20の幅方向の両端部に設けられ、車両に設けられた係止装置と係止できる係止フック30と、を備える。また、ケース50は、開口部60の長手方向に延びる縁を形成し、トノカバーシート40の引出し方向に延びる端部51を有している。係止フック30には、端部51を挟持し保持するための挟持部80が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室を遮蔽するトノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷室が乗員室と区切られておらず、リヤシートの後部に荷室が設けられているハッチバック型の自動車などでは、荷室に載置した荷物を外部から視認されないようにするために荷室のリヤシート後部近くにトノカバー装置が設けられている。
【0003】
トノカバー装置は一般的に、荷室全体を遮蔽するためのトノカバーシートと、トノカバーシートを収納するケースと、トノカバーシートの後端が固着しており、ケースの内部に回転可能に支持されている巻取り軸と、を有している。また、ケースの1つの面には、長手方向に延びるスリット状の開口部が形成されている。巻取り軸を巻取り方向に回転付勢させることで、展張していたトノカバーシートを、開口部を介して巻取ることができる。トノカバーシートの先端には、板状の把持ボードが結合されている。この把持ボードは、トノカバーシートをケース内から引出す際にユーザが手で掴むための把持部と、幅方向の両端部に設けられている係止フックとを有している。また、把持ボードが開口部よりも大きくなっているため、トノカバーシートが巻取り軸によって巻取られた状態でも、把持ボードは開口部を介してケース内に入らず、開口部から突出した状態になる。そのため、トノカバーシートの全てが巻取り軸に巻取られてしまうことがない。
【0004】
また、自動車の荷室の後端部を形成するバックドアは通常、車両後方に湾曲した形状となっているため、把持ボードをバックドアの形状に対応した形状とすることで荷室全面を覆い隠すことが可能な構成とすることができる。
【0005】
トノカバー装置を使用する際には、ユーザが把持ボードに設けられた把持部を掴み、巻取り軸の巻取り方向への付勢力に抗してケースの開口部からトノカバーシートを引出し、把持ボードの両端部の係止フックを荷室側部に設けられた係止装置へ係止させる。係止フックが係止装置に係止されると、トノカバーシートは展張状態を維持する。
【0006】
上述の把持ボードは、一般的に一定の厚みを有した樹脂などの成形体と補強プレートなどからなるため、トノカバーシートが巻取り軸に巻取られた状態において、ケースの開口部から突出している把持ボードが自重によって垂れ下がった状態となる。そのため、車両走行時には振動等によって、把持ボードがケースなどと干渉して異音が発生するという不具合が生じていた。
【0007】
そこで、この問題を解決する従来技術のトノカバー装置の一例の構成が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のトノカバー装置は、把持ボードの幅方向の両端部に、係止フックの代わりにエンドキャップを設けるとともに、ケースの開口部の幅方向の両端側部に係合孔が設けられている。エンドキャップは、荷室側部に設けられた係止装置と係止する役割とともに、係合孔と嵌合する役割がある。特許文献1では、トノカバーシートが巻取られ、ケースに収納されたときに、エンドキャップと係合孔とが嵌合することによって、把持ボードを水平状態に保持可能であり、上記の問題を解決することができるとしている。しかしながら、この特許文献1に記載のトノカバー装置においては、ケースの開口部の幅方向の両端側部に係合孔を形成する必要があり、その分、加工工数が増え、コストが増加するという問題が残っていた。
【0008】
特許文献1のトノカバー装置で生じていた問題を解決することができる従来技術のトノカバー装置の他の一例の構成が特許文献2に開示されている。図6に、従来技術のトノカバー装置の他の一例の断面の概略図を示す。トノカバーシート100の展張時に不図示の自動車の荷室後方側部に設けられた係止装置に係合して、展張状態を維持するための1対の係止具(係止フック)160が、トノカバーシート100の引出し方向の先端に設けられた把持ボードの幅方向の両端部に設けられている。
【0009】
この係止具160にはそれぞれ、係止装置に係合する不図示の第1係合部のほかに、トノカバーシート100が出入りするケース150の開口部120に係合する第2係合部110が一体形成されている。また、第2係合部110の上面には、ケース150の、開口部120の一部を形成する上縁部170が嵌まり込む溝130が形成されている。第2係合部110の下面には、開口部120の下方において、ケース150の表面と当接するストッパ140が突出して形成されている。ケース150は、開口部120の開口高さ(垂直方向、つまり車両上下方向の幅)を広げる向きに弾性変形可能に形成されている。
【0010】
第2係合部110は、開口部120を変形させつつ開口部120に嵌まり込むことによって、ケース150の、開口部120の一部を形成する上縁部170と、係止具160の第2係合部110の上面の溝130とが係合する。そのため、ケース150の開口部120の幅方向の両端側部に係合孔を設けることなく、また、部品点数を増やすことなく、把持ボードを水平に保持し、把持ボードの垂れ下がりを防止可能としている、また、ストッパ140とケース150とが当接することで、把持ボードの自重による垂れ下がりをさらに効果的に防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−44870号公報
【特許文献2】特開2000−289529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献2に記載の技術においては、第2係合部110の溝130と、ケース150の、開口部120の一部を形成する上縁部170とを係合したり、外したりする際に、開口部120を広げるためにケース150を弾性変形させる必要がある。そのため、ケース150に比較的弾性に富んだ合成樹脂の成形体を用いるとしている。しかしながら、トノカバー装置のケース150には上方から手や片膝をつく場面が想定されそれに耐えうる大きな耐荷重性が求められるものであるため、一般的にアルミニウムなどの金属製であることが多い。そのため、容易にケースを弾性変形させることができないという問題がある。
【0013】
また、トノカバー装置を使用時から非使用時に切り替える際に、自動車の荷室後方側部の係止装置と係止具160との係合を解除するという通常の操作に加え、係止具160の第2係合部110の溝130とケース150の上縁部170とを確実に係合させるために、ユーザが巻取られた把持ボードを持ち開口部120を広げるように上下に動かしながら更に奥へと押し込む操作が必要となり煩わしさがある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、非使用時に従来に比して特別な追加部品や追加工程、さらには特別な操作を必要とすることなく簡便に把持ボードの水平保持を行うことができるトノカバー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のトノカバー装置は、車両の荷室を遮蔽するトノカバーシートと、トノカバーシートの後端が固着されており、トノカバーシートを巻取る巻取り軸と、巻取り軸を内蔵し、トノカバーシートが出入りする開口部が形成されたケースと、トノカバーシートの先端に結合された把持ボードと、把持ボードの幅方向の両端部に設けられ、車両に設けられた係止装置と係止できる係止フックと、を備えている。
【0016】
また、ケースは、開口部の長手方向に延びる縁を形成し、トノカバーシートの引出し方向に延びる端部を有している。さらに、係止フックには、端部を挟持し保持するための挟持部が設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特別な部品や加工工程を追加せず、さらには特別な操作を行うことなく、把持ボードを水平保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のトノカバー装置の一実施形態であって、トノカバーシートの巻取り収納状態を示した概略斜視図である。
【図2】図1のトノカバー装置の係止フック付近の概略断面図である。
【図3】図1のケースと係止フックの断面図であり、(a)はケースの断面図、(b)は係止フックの断面図である。
【図4】上端部と挟持部の作用を説明する概略図である。
【図5】係止フックの他の実施例を示す概略図であり、(a)は支点部にばね部材が設けられた状態の概略図、(b)は上片に窪みが設けられた状態、(c)はケースを上部と前方側部で構成した状態、(d)は突出部が延長した状態、をそれぞれ示す図である。
【図6】従来技術のトノカバー装置の他の一例の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0020】
図1は、本発明のトノカバー装置の一実施形態であって、トノカバーシートの巻取り収納状態を示した概略斜視図である。図2は、図1のトノカバー装置の係止フック付近の概略断面図である。図3は、図1のケースと係止フックの断面図であり、(a)はケースの断面図、(b)は係止フックの断面図である。
【0021】
トノカバー装置10は、荷室を覆うトノカバーシート40と、トノカバーシート40の後端が固着されており、トノカバーシート40を巻取る巻取り軸70が内蔵されているケース50と、が設けられている。ケース50には、トノカバーシート40がケース50に出入りするためのスリット状の開口部60が設けられている。トノカバーシート40の先端には、幅方向の両端部に、係止部31と挟み部36とを有する係止フック30が設けられた把持ボード20が結合されている。
【0022】
トノカバー装置10は不図示の自動車のリヤシート後部に設けられる。ユーザがトノカバー装置10の把持ボード20を掴んで、ケース50内に巻取り収納されていたトノカバーシート40を、巻取り軸70の付勢力に抗して自動車の後部方向に引出す。そして、自動車の荷室後方の両側面に設けられた不図示の係止装置に係止フック30の係止部31を係止させることによってトノカバーシート40の展張状態を維持する。トノカバーシート40の展張状態を維持することで、荷室を遮蔽して、荷室に載置した荷物が車外から視認されないようにすることができる。
【0023】
ケース50には、さらにケース50の両端に取付けられる不図示のホルダを固定するためのネジ溝80が設けられている。また、ケース50は、乗員が上方から手や片膝をつく場面が想定されそれに耐えうる大きな耐荷重性が求められるものであり、アルミニウムなどの金属を、自動車の室内幅と略等しい長さを有する筒状となるように押出成形するとともに、この筒状の押出成形物の両端に、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマ)などの熱可塑性樹脂又は各種ゴムなどからなる図示しないホルダを嵌め合わせることで形成される。
【0024】
ケース50内部にはトノカバーシート40の後端が固着された巻取り軸70が内蔵されており、巻取り軸70の両端部は、ケース50の両端に取り付けられる不図示のホルダによって軸支されている。巻取り軸70は、トノカバーシート40を巻取る方向に付勢されている不図示の巻取り機構を有している。自動車室内にはホルダと略同じ大きさの凹部が設けられており、この凹部にホルダを嵌め込むことでトノカバー装置10は荷室に設置されるため、トノカバー装置10は凹部から着脱可能な構成となっている。
【0025】
トノカバーシート40には、塩化ビニルレザーなどの柔軟で遮光性のある素材が用いられる。
【0026】
把持ボード20は、トノカバーシート40の先端に設けられ、バックドアの形状に沿った形状をしており、ある程度の剛性をもった部材、例えば硬質な樹脂で形成されている。把持ボード20は、トノカバーシート40の引出しを容易にするためだけではなく、上述したように、バックドアの形状に沿って非矩形状をした荷室後部を覆うことを可能としている。
【0027】
図3(a)に示すように、ケース50の断面形状は、車両の側方から見て、上部53、下部55、前方側部56、後方側部54を有する略矩形状をしており、上部53から順に、前方側部56、下部55及び後方側部54がつながっている。上部53の後方側部54側の端部には上端部51が設けられており、後方側部54の上部53側の端部には、下端部52が設けられている。
【0028】
また、上端部51と下端部52とで、トノカバーシート40の幅よりも大きなスリット状の開口部60が、ケース50の長手方向に沿って形成されている。つまり、上端部51と下端部52は、開口部60の長手方向に延びる縁を形成するものである。そのため、例えば後方側部54と上部53と前方側部56と下部55がつながり、後方側部54と下部55とがつながっていない場合、上端部51は、後方側部54の下部55側の端部に形成され、下端部52は、下部55の後方側部54側の端部に形成されることになる。つまり、上端部は、開口部60の上方の縁を形成する端部、下端部は、開口部60の下方の縁を形成する端部を意味する。
【0029】
本実施形態では、上端部51がトノカバーシート40の引出し方向(車両後方)に向いて延びる水平な端部(水平端部)として構成されている。しかしながら、上端部51と下端部52の関係が前述したものと逆の場合、つまり下端部52がトノカバーシート40の引出し方向に向いて延びる水平端部として構成されていてもよく、また、上端部51と下端部52の両方が引出し方向に向いて延びる水平端部として構成されていてもよい。本発明においては、上端部51および下端部52の少なくとも一方がトノカバーシート40の引出し方向に向いて延びる水平端部であることが必須の構成要件となる。
【0030】
図3(b)に示すように、係止フック30は、車両の側方から見て、上片32、下片33、及び前片35を有する断面形状が略コの字形状をしており、上片32から順に前片35と下片33がつながっている。この係止フック30の上片32、下片33、及び前片35とで挿入部37が形成されるとともに、この挿入部37で把持ボード20が挟持固定される。係止フック30は、ネジ止めなどによって把持ボード20の幅方向の両端にそれぞれ取付け固定される。
【0031】
さらに本実施形態における係止フック30には、上片32の上面32aの車両後方で接続され、車両前方側へと延びる挟み部36が形成されており、挟み部36と上面32aとの間に車両前方に向いた隙間38を有するよう構成されている。また、挟み部36と上片32との当接部が支点部39となっている。そして、挟み部36と上片32と支点部39とで上端部51を挟持する挟持部80が構成されている。
【0032】
挟み部36は、前方において下方に突出する凸形状をした保持部30bと、上片32と対向する面であり、保持部30bから前方の端部に向かって上方に反って延びる案内部36aと、を有する。なお、図示していないが、挟み部36の、案内部36aを有する面は保持部30bの位置で窪んでいるが、平坦にしても構わない。
【0033】
なお、この挟持部80は、ケース50の開口部60を形成する上端部51と下端部52のうち、水平となっている端部の1つを挟持できればよい。そのため、挟み部36は係止フック30の下片33の下面33aから延設される構成としてもよい。
【0034】
これにより、トノカバーシート40の巻取り収納状態において、ケース50の上端部51が係止フック30の隙間38内で挟持部80により挟持されて、把持ボード20の水平保持を行うことができる(図2参照)。また、前片35の上端には前方に突出する突出部34が形成されており、ケース50の上端部51を下支えすることで、把持ボード20の重量が大きい場合に把持ボード20の後方が垂れ下がってしまうことを防止できる。また、この突出部34も挟持部80の一部を構成する。
【0035】
また、係止フック30には、トノカバーシート40をケース50から引出した展張状態を維持させる為に、自動車の荷室後方に設けられた係止装置に係止可能な係止部31が一体成形されている(図1参照)。係止フック30はPOM(ポリアセタール)、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの優れた強度特性、耐摩耗性、耐疲労性を備えた材料が好適に用いられる。
【0036】
ここで、ケース50の上端部51と挟持部80の作用を、図4を用いて説明する。図4は、上端部51と挟持部80の動作を説明する概略図である。
【0037】
荷室後方の両側面に設けられた不図示の係止装置と係止フック30の係止部31とが係止したトノカバーシート40の展張状態から、係止装置と係止フック30との係止が解除されると、巻取り軸70の付勢力によってトノカバーシート40は巻取り方向(車両前方)に自動的に巻取られていく。そして、水平端部である上端部51の車両後方の先端が挟み部36の先端に当接する状態となる。なお、このときの挟み部36の位置は、図4の破線で示す位置である。ここで、挟み部36には、車両前方の先端を斜め上方に延びる形状とした案内部36aが形成されているので、把持ボード20の重みによって挟み部36が上端部51に対して下方向に位置ずれした場合においても、上端部51を隙間38の方向へと確実に案内できる。なお、荷室側部にガイドレールなどの案内部36aを配設して係止フック30の軌道を既定してもよい。
【0038】
ケース50の上端部51の車両後方の先端と係止フック30の挟み部36の先端が当接している状態から、さらに巻取り軸70による付勢力Fが働くことで、上端部51が隙間38に入り込むような力が生じ、支点部39を支点とした「てこの原理」によって挟み部36が隙間38を広げる方向に弾性変形する。そして、上端部51が隙間38内に侵入し、挟み部36の内面に突き当たり停止する。このとき、案内部36aからつながり下方に突出する凸形状をした保持部30bが上部53の上面に、係止フック30の上面32aが上部53の下面にそれぞれと当接した状態となり、付勢力Fと挟み部36の弾性力により上端部51が挟持部80に挟持された状態を保持する。
【0039】
なお、本実施形態では挟み部36の保持部36bは1箇所のみとしたが、複数の保持部36bを設け、波打ち状を形成してもよく、この場合、保持部36bと上部53の上面との当接面積が増えるため、より安定して把持ボード20の水平保持を行うことができる。また、上端部51の下側が厚肉部となるよう構成し、上端部51が挟持部80に保持された状態において上端部51の位置に対応する係止フック30の上片32の上面32aに凹部を形成することで、上端部51と係止フック30の凹部とが嵌合し、より安定した把持ボード20の水平保持を行うことができる。
【0040】
以上で説明したように、本発明においては、前述した従来技術とは異なりケースではなくフックの挟み部を弾性変形させる構造であるため、トノカバー装置に必要とされる耐荷重性を犠牲にすることなく把持ボードの水平保持を行うことができる。そして、巻取り軸によるトノカバーシートを巻取る付勢力の方向と、ケースの上端部(水平端部)の延びる方向と、隙間38の方向がそれぞれ車両前後方向に見てほぼ一致しているため、トノカバーシートが巻取られるための付勢力を利用して、ケースの上端部が係止フックの挟持部80に自動的に挟持される。そのため、特別な追加部品や追加工程、また特別な操作を必要とすることなく簡便に把持ボードの水平保持を行うことができる。
【0041】
また、挟持部80でケース50の上端部51を挟持することができるため、係止フック30とケース50の後方側部54が接していない、つまりケース50に係止フック30がぶら下がった状態でも把持ボード20を水平保持することができる。これにより、ケース50の後方側部54を設けないケース50も可能となり、トノカバー装置10の構成要素のなかでは重量があり高価であるケース50の断面積を大幅に低減することができ、軽量化、コストの観点で有利である。さらに、挟持部80でケース50の上端部51を挟持することができるため、車両の走行時に振動が生じても、この振動により係止フック30が揺れ動くことがなく、係止フック30とケース50とがぶつかり合うことがなくなる。その結果、車両走行時にトノカバー装置10からの異音の発生を防止することができる。
【0042】
次に、図5を基に、ケース50と係止フック30の他の実施例について説明する。
【0043】
図5(a)に示すように、係止フック30の上片32と挟み部36とをコイルばねや板ばね等のばね部材90を介して接続させてもよい。ばね部材90は、挟み部36と一体で形成しても、上片32と一体で形成しても、挟み部36および上片32とは別体で形成したてもよい。これにより、ばね部材90が支点部39となるので、挟持部80の上端部51を挟持する力を容易に調整することができ、様々な重量の把持ボード20に対応して水平保持を行うことができる。
【0044】
図5(b)に示すように、上端部51が挟持部80に挟持された状態で、ケース50の上片53の、係止フック30の保持部36bが当接する部分に窪み91を設けてもよい。これにより、保持部36bと窪み91が嵌合し、より安定した把持ボード20の水平保持を行うことができる。
【0045】
図5(c)に示すように、挟持部80でケース50の上端部51を挟持することができるため、ケース50を、上部53と前方側部56のみで形成することも可能である。これにより、トノカバー装置10の構成要素のなかでは重量があり高価であるケース50の断面積を大幅に低減することができ、軽量化、コストの観点で有利である。なお、ケース50を下部55と前方側部56のみで形成し、下部55に水平端部となる端部を形成してもよい。
【0046】
図5(d)に示すように、係止フック30の突出部34を車両前方に延長し、それに対応して挟み部36も延長して、突出部34と挟み部36によってケース50の上端部51を挟持してもよい。さらに、これに合わせて上端部51に上向きの厚肉部92を形成し、上端部51が挟持部80で挟持された状態において、上端部51が保持部36bに引っかかるような構成としてもよい。これにより、突出部34を延長した分だけ上端部51を車両前方に移動させることができるため、ケース50の上部53を車両前方向に短くすることができ、ケース50の断面積を低減しつつ安定した把持ボード50の水平保持を行うことができる。
【0047】
なお、上述したケース50と係止フック30の実施例を複数組合せて構成することも可能である。
【0048】
また、上述の実施形態では、係止フック30は、上片32から順に、前片35と下片33がつながっていた。しかしながら、図1に示すように、係止フック30は、開口部60と対向していない面(車両側部と対向する面)で上片32と下片33とがつながるように形成されているため、前片32と下片33、または上片32と前片35とがつながっていない構成としてもよい。また、一部分のみがつながる構成にすることも可能である。
【0049】
なお、上記の実施形態の説明では、トノカバー装置を自動車に適用して説明したが、いずれの車両であっても構わず、さらには、本発明を適用できるものであるならばいずれであっても構わない。
【符号の説明】
【0050】
10 トノカバー装置
20 把持ボード
30 係止フック
36 挟み部
40 トノカバーシート
50 ケース
51 上端部
52 下端部
53 上部
54 後方側部
55 下部
56 前方側部
60 開口部
70 巻取り軸
80 挟持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室を遮蔽するトノカバーシートと、前記トノカバーシートの後端が固着されており、前記トノカバーシートを巻取る巻取り軸と、前記巻取り軸を内蔵し、前記トノカバーシートが出入りする開口部が形成されたケースと、前記トノカバーシートの先端に結合された把持ボードと、前記把持ボードの幅方向の両端部に設けられ、前記車両に設けられた係止装置と係止できる係止フックと、を備えるトノカバー装置であって、
前記ケースは、前記開口部の長手方向に延びる縁を形成し、前記トノカバーシートの引出し方向に延びる端部を有しており、
前記係止フックには、前記端部を挟持し保持するための挟持部が設けられている、トノカバー装置。
【請求項2】
前記係止フックには、前記引出し方向に延びる片と、前記片に接続され、隙間を形成するように前記トノカバーシートの巻取り方向へと延設する挟み部と、が設けられており、前記片と前記挟み部とで前記挟持部が構成されている、請求項1に記載のトノカバー装置。
【請求項3】
前記挟み部には前記隙間に向かって突出する保持部と、前記引出し方向に延びる片と対向する側の面であり、かつ、前記保持部から前記挟み部の先端に向かって前記引出し方向に延びる片とは反対側に反っている案内部とが設けられている、請求項2に記載のトノカバー装置。
【請求項4】
前記挟持部は、前記挟み部と接続する前記片から前記巻取り方向に向かって突出する突出部をさらに有している、請求項2または3に記載のトノカバー装置。
【請求項5】
前記挟み部は、ばね部材を介して前記片に接続されている、請求項2から4のいずれか1項に記載のトノカバー装置。
【請求項6】
前記挟持部が前記ケースの前記端部を挟持した状態で、前記ケースの、前記保持部と当接する位置に前記保持部と嵌合うための窪みが設けられている、請求項3に記載のトノカバー装置。
【請求項7】
車両の荷室を遮蔽するトノカバーシートと、前記トノカバーシートの後端が固着されており、前記トノカバーシートを巻取る巻取り軸と、前記巻取り軸を内蔵し、前記トノカバーシートが出入りする開口部が形成されたケースと、前記トノカバーシートの先端に結合された把持ボードと、前記把持ボードの幅方向の両端部に設けられ、前記車両に設けられた係止装置と係止できる係止フックと、を備えるトノカバー装置における把持ボードの保持方法であって、
前記ケースに、前記開口部の長手方向に延びる縁を形成するように、前記トノカバーシートの引出し方向に延びる端部を形成し、
前記係止フックに、前記端部を挟持する挟持部を形成し、
前記挟持部で前記端部を挟持し、前記把持ボードを水平保持する、把持ボードの保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103679(P2013−103679A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250720(P2011−250720)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000251060)林テレンプ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】