説明

トマト果実におけるアントシアニン蓄積の形質を判別するためのDNAマーカー

【課題】トマト果実におけるアントシアニン蓄積の形質を判別し、アントシアニン産生トマトを効率よく判別できる方法を提供する。
【解決手段】アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトのANT1ゲノム遺伝子の配列を解析し、該解析結果に基づいてアントシアニン産生トマトであるか否かを判別する、アントシアニン産生トマトの判別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト果実におけるアントシアニン蓄積の形質を判別するためのDNAマーカーに関する。また、本発明は、該DNAマーカーを用いたアントシアニン産生トマトの判別方法に関する。また、本発明は、該DNAマーカーを用いてアントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトの果実におけるアントシアニン蓄積の形質を判別するための方法に関する。また、本発明は、該方法に用いられるプライマーやキットに関する。
【背景技術】
【0002】
アントシアニンは、シダ植物以上の高等植物に広く分布して存在しているフラボノイド系の色素である。アントシアニンは、退色や変色しやすいものの、合成着色料に比べて安全性が高いことや自然な色合いを有することから、古くから種々の食品に着色料として利用されている。また、最近になって抗酸化能を示すことが見出され、単に食品の着色機能だけでなく、生体内酸化ストレスを防止する食品因子としても再評価されている。さらに、抗変異原性、血圧降下作用、肝機能障害軽減効果、視覚改善作用、抗糖尿病作用などの機能があることが明らかにされるにつれ、その健康維持機能や生活習慣病などの疾患改善機能などが注目されている色素である。
【0003】
食用されているトマトはアントシアニンを生成しないものであるが、野生種の中にはアントシアニンを生成するものも存在する。そこで、機能性食品として有用なアントシアニンを生成する食用トマトを作製するために品種の掛けあわせが試みられている。しかしながら、得られるトマトがアントシアニン産生トマトであるかを判別するにはトマトの果実が生育するまで待たねばならず、早期にアントシアニン産生トマトを判別することのできる判別法の開発が望まれていた。
【0004】
非特許文献1にはActivation Taggingによる、アントシアニン非産生トマト由来のANT1遺伝子の単離が報告されており、ANT1遺伝子はアントシアニン非産生トマトでは発現していないものの、強制発現させるとアントシアニンが蓄積することが開示されている。また、特許文献1にもANT1遺伝子の単離と強制発現が開示されている。
【0005】
しかしながら、植物におけるアントシアニン蓄積という形質とANT1遺伝子との関係は明らかにされておらず、アントシアニン生産株を判別するためのマーカーはこれまで同定されていない。
【0006】
【特許文献1】特表2004−517621号公報
【非特許文献1】Plant Cell. 2003 Aug;15(8):1689-703.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、トマト果実におけるアントシアニン蓄積の形質を判別するためDNAマーカーを提供することを課題とする。また、本発明は、該DNAマーカーを用いたアントシアニン産生トマトの判別方法を提供することを課題とする。また、本発明は、該DNAマーカーを用いてアントシアニン産生トマトとアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトがアントシアニン産生トマトであるか否かを効率よく判別できる方法を提供することを課題とする。また、該方法に用いるプライマーやキットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、アントシアニン産生トマトとアントシアニン非産生トマトのANT1遺伝子には塩基配列に違い、すなわち多型が存在すること、そして、トマトに、アントシアニン産生トマトのANT1遺伝子が存在する場合は、トマト果実にアントシアニンが蓄積し、アントシアニン産生トマトのANT1遺伝子が存在しない場合は、トマト果実にアントシアニンが蓄積しないことを見出した。
【0009】
このことから、トマトがアントシアニン産生トマトのANT1遺伝子を有するか否かを調べることによって、該トマトがアントシアニン生産トマトであるか否かを効率よく判別できることが明らかなり、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)トマトのANT1ゲノムDNAの塩基配列が、配列番号13に示す塩基配列の、
位置22に対応する位置の塩基としてa、
位置29に対応する位置の塩基としてt、
位置30に対応する位置の塩基としてg、
位置33に対応する位置の塩基としてt、
位置110に対応する位置の塩基としてa、
位置219に対応する位置の塩基としてt、
位置263に対応する位置の塩基としてc、
位置344に対応する位置の塩基としてt、
位置409に対応する位置の塩基としてt、
位置417に対応する位置の塩基としてc、
位置419に対応する位置の塩基としてg、
位置439に対応する位置の塩基としてc、
位置444〜445に対応する位置の塩基としてtg、
位置457に対応する位置の塩基としてa、
位置468に対応する位置の塩基としてt、
位置469に対応する位置の塩基としてt、
位置473に対応する位置の塩基としてc、
位置476に対応する位置の塩基としてt、
位置704に対応する位置の塩基としてa、
位置745に対応する位置の塩基としてa、
位置826に対応する位置の塩基としてt、
位置834に対応する位置の塩基としてc、
位置888に対応する位置の塩基としてc、
位置892に対応する位置の塩基としてa、
位置920に対応する位置の塩基としてa、
位置933に対応する位置の塩基としてt、
位置972に対応する位置の塩基としてa、
位置1017に対応する位置の塩基としてa、
位置1122に対応する位置の塩基としてa、
位置1212に対応する位置の塩基としてa、
位置1287に対応する位置の塩基としてg、
位置1337に対応する位置の塩基としてa、
位置1380に対応する位置の塩基としてg、
位置1427に対応する位置の塩基としてt、
位置1434に対応する位置の塩基としてc、
位置1469に対応する位置の塩基としてc、
位置1489に対応する位置の塩基としてc、
位置1496に対応する位置の塩基としてt、
位置1498〜1509に対応する位置の塩基としてtatttctaga、
位置1532に対応する位置の塩基としてa、
位置1589に対応する位置の塩基としてa、および
位置1598に対応する位置の塩基としてt
から選択される少なくとも1つを有する場合、該トマトをアントシアニン産生トマトであると判別する、アントシアニン産生トマトの判別方法。
【0011】
(2)トマトのANT1ゲノムDNAの塩基配列が、配列番号13または2に示す塩基配列である場合、該トマトをアントシアニン産生トマトであると判別する、アントシアニン産生トマトの判別方法。
【0012】
(3)トマトのANT1ゲノムDNAを得ること、
得られたANT1ゲノムDNAをシークエンシングして塩基配列を得ること、および
得られたANT1DNAの塩基配列と配列番号13に示す塩基配列をアライメントすること、
を含む、(1)または(2)に記載のトマトの判別方法。
【0013】
(4)トマトのANT1ゲノムDNAを得ること、および
配列番号13に示す塩基配列の、
位置22の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置29の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置30の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置33の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置110の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置219の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置263の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置344の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置409の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置417の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置419の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置439の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置444〜445の塩基がtgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置457の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置468の塩基がtである塩基配列に特異的オリゴヌクレオチド、
位置469の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置473の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置476の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置704の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置745の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置826の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置834の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置888の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置892の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置920の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置933の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置972の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1017の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1122の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1212の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1287の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1337の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1380の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1427の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1434の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1469の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1489の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1498〜1509の塩基がatatttctagaaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1532の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1589の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、および
位置1598の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
から選択される少なくとも1つを、プライマーとして用いて該トマトのANT1ゲノムDNAを増幅させること
を含む、(1)または(2)に記載のトマトの判別方法。
【0014】
(5)さらに、配列番号13に示す塩基配列の、
位置22の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置29の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置30の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置33の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置110の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置219の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置263の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置344の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置409の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置417の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置419の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置439の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置444〜445の塩基がtttctgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置457の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置468の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置469の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置473の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置476の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置704の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置745の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置826の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置834の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置888の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置892の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置920の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置933の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置972の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1017の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1122の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1212の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1287の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1337の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1380の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1427の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1434の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1469の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1489の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1498〜1509の塩基がaaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1532の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1589の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、および
位置1598の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド
から選択される少なくとも1つを、
プライマーとして用いてトマトのANT1DNAを増幅させること
を含む、(4)に記載のトマトの判別方法。
【0015】
(6)トマトが、Solanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトである、(1)〜(5)のいずれか1つに記載のトマトの判別方法。
【0016】
(7)アントシアニン非産生トマトが、Solanum lycopersicum Micro-Tom、Solanum lycopersicum M82、Solanum lycopersicum Ailsa Craig、Solanum lycopersicum nv-1、Solanum lycopersicum IRB301、Solanum lycopersicum Small Fry、Solanum lycopersicum Money Maker、Solanum lycopersicum Manapal、Solanum lycopersicum LS89、Solanum lycopersicum E6203、Solanum lycopersicum LA4013、Solanum lycopersicum LA3810、Solanum lycopersicum LA3771、Solanum lycopersicum ハウス桃太郎、Solanum lycopersicum 桃太郎コルト、Solanum lycopersicum トゥインクル、Solanum lycopersicum フルーツイエロー、Solanum lycopersicum 麗容、Solanum lycopersicum オレンジキャロル、Solanum lycopersicum スイートミニオレンジ、Solanum lycopersicum ふりこま、Solanum lycopersicum 桃太郎ヨーク、Solanum lycopersicum イエローキャロル、Solanum lycopersicum おどりこ、Solanum lycopersicum サンロード、Solanum lycopersicum ルネッサンス、Solanum lycopersicum 麗夏、Solanum lycopersicum、Solanum lycopersicum ボンデローザ、Solanum lycopersicum スーパーサンチェリー、Solanum lycopersicum Evergreenである、(6)に記載の方法。
【0017】
(8)配列番号7、配列番号11、配列番号14〜97の塩基配列のオリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも1つの、トマトのアントシアニン産生判別用プライマー。
【0018】
(9)(8)に記載のプライマーと、配列番号6、配列番号10、配列番号98〜181の塩基配列のオリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも1つを含むプライマーセット。
【0019】
(10)(8)記載のプライマーまたは(9)に記載のプライマーセットを含む、アントシアニン産生トマト判別用キット。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法によれば、トマトがアントシアニン生産トマトであるか否かを効率よく正確に判別できる。特に、アントシアニン産生トマトとアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトがアントシアニン生産トマトであるか否かを効率よく正確に判別できる。また、苗の段階で選別できるため、アントシアニン生産株を選択的に育成して効率的に機能性トマトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の方法は、トマトのANT1ゲノム遺伝子の配列を解析し、該解析結果に基づいてアントシアニン産生トマトであるか否かを判別することを特徴とする。また本発明は、アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトのANT1ゲノム遺伝子の配列を解析し、該解析結果に基づいてアントシアニン産生トマトであるか否かを判別することを特徴とする、アントシアニン産生トマトの判別方法である。
【0022】
ANT1遺伝子とは、myb転写調節因子のひとつであるANT1転写調節因子(anthocyanin 1)をコードする遺伝子を意味する。例えば、トマトのANT1遺伝子のcDNA配列は、DNAデータベースGenBankにaccession no AY348870として登録されている。アミノ酸配列は、AAQ55181として登録されている。
【0023】
また、Solanum lycopersicum LA1996のANT1転写調節因子のアミノ酸配列は、以下の配列番号182の配列である。
MNSTSMSSLGVRKGSWTDEEDFLLRKCIDKYGEGKWHLVPIRAGLNRCRKSCRLRWLNYLRPHIKRGDFEQDEVDLILRLHKLLGNRWSLIAGRLPGRTANDVKNYWNTNLLRKLNTTKIVPREKTNNKCGEISTKIEIIKPQPRKYFSSTMKNITNNIVILDEEEHCKEIKSEKQTPDASMDNVDQWWINLLENCNDDIEEDEEVVINYEKTLTSLLHEEKSPPLNIGEGNSMQQGQISHENWGEFSLNLQPMQQGVQNDDFSAEIDLWNLLD(配列番号182)
【0024】
ANT1遺伝子には、mRNA(cDNA)およびゲノム(染色体)DNAが含まれる。好ましくは、ゲノム(染色体)DNAである。
【0025】
ANT1遺伝子が、mRNA(cDNA)に由来する場合、ANT1遺伝子には、ANT1転写調節因子たんぱく質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、5’−非翻訳領域、終止コドンとポリAテイルなどが含まれる3’−非翻訳領域が含まれる。mRNAに由来する場合のANT1遺伝子は、オープンリーディングフレーム、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域のすべてであっても、その一部であっても良い。
【0026】
また、ANT1遺伝子が、ゲノム(染色体)に由来する場合、ANT1ゲノムDNA(またはANT1ゲノム遺伝子)と呼び、ANT1ゲノムDNAには、3つのエクソン、2つのイントロン、プロモーター領域などが含まれる5’−非翻訳領域、終止コドンとポリアデニレーションシグナル配列などが含まれる3’−非翻訳領域が含まれる。ここで、5’−非翻訳領域とは、翻訳開始コドンの上流約1kbの領域を意味し、3’−非翻訳領域は、終止コドンの下流約1kbの領域を意味する。ANT1ゲノムDNAは、エクソン、イントロン、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域のすべてであっても、その一部であっても良い。
【0027】
トマトには、Solanum lycopersicum、およびSolanum lycopersicumと交配可能な近縁野生種が含まれる。ここで、Solanum lycopersicumと交配可能な近縁野生種とは、例えばSolanum cheesmaniae、Solanum chilense、Solanum chmielewskii、Solanum galapagense、Solanum habrochaites、Solanum juglandifolium、Solanum lycopersicoides、Solanum neorickii、Solanum ochranthum、Solanum pennellii、Solanum peruvianum、Solanum pimpinellifolium、Solanum sitiensなどが挙げられる。好ましくはSolanum lycopersicumまたはSolanum chilenseを意味する。特に好ましいトマトは、アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトである。
【0028】
交配トマトとは、アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトとを花粉を用いて自然交配させて得られたトマト(F1世代)およびその子孫(F2世代以降)を意味する。
【0029】
子孫(F2世代以降)とは、F2世代を含むF2世代より後の世代を意味し、アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトを先祖とする子孫であれば限定されない。
【0030】
本発明においてアントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996とは、アントシアニンをトマトの果実に蓄積するトマトSolanum lycopersicum LA1996を意味する。アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996は、Tomato Genetics Resource Center (TGRC)(http://tgrc.ucdavis.edu/)から入手できる。
【0031】
Solanum lycopersicum LA1996とは、Solanum lycopersicum とSolanum chilenseとの交配によりアントシアニン生産能が付与されたトマトであり、ANT1ゲノム遺伝子として、配列番号2および13の塩基配列を有するトマトである。配列番号13の塩基配列は、ANT1転写調節因子全体をカバーしており、3つのエクソン、2つのイントロン、5’−非翻訳領域、および3’−非翻訳領域を含む配列である(図2)。配列番号2の塩基配列は、プライマーANT1 F2(配列番号4)とANT1 R2(配列番号5)で増幅されたANT1ゲノム遺伝子断片であり、エクソン1の一部、イントロン1、エクソン2、イントロン2、エクソン3の一部からなる配列である。プライマーANT1 F2(配列番号4)とANT1 R2(配列番号5)の位置は図2において示されている。
【0032】
アントシアニン非産生トマトとは、アントシアニンをトマトの果実に蓄積しないトマトを意味する。アントシアニン非産生トマトは、アントシアニンをトマトの果実に蓄積しないトマトであれば限定されないが、例えば、Solanum lycopersicum Micro-Tom、Solanum lycopersicum M82、Solanum lycopersicum Ailsa Craig、Solanum lycopersicum nv-1、Solanum lycopersicum IRB301、Solanum lycopersicum Small Fry、Solanum lycopersicum Money Maker、Solanum lycopersicum Manapal、Solanum lycopersicum LS89、Solanum lycopersicum E6203、Solanum lycopersicum LA4013、Solanum lycopersicum LA3810、Solanum lycopersicum LA3771、Solanum lycopersicum ハウス桃太郎、Solanum lycopersicum 桃太郎コルト、Solanum lycopersicum トゥインクル、Solanum lycopersicum フルーツイエロー、Solanum lycopersicum 麗容、Solanum lycopersicum オレンジキャロル、Solanum lycopersicum スイートミニオレンジ、Solanum lycopersicum ふりこま、Solanum lycopersicum 桃太郎ヨーク、Solanum lycopersicum イエローキャロル、Solanum lycopersicum おどりこ、Solanum lycopersicum サンロード、Solanum lycopersicum ルネッサンス、Solanum lycopersicum 麗夏、Solanum lycopersicum、Solanum lycopersicum ボンデローザ、Solanum lycopersicum スーパーサンチェリー、Solanum lycopersicum Evergreenなどが挙げられる。好ましくは、Solanum lycopersicum Micro-Tom、Solanum lycopersicum M82、Solanum lycopersicum Ailsa Craig、Solanum lycopersicum nv-1、Solanum lycopersicum IRB301、Solanum lycopersicum Small Fry、Solanum lycopersicum Money Maker、Solanum lycopersicum Manapal、Solanum lycopersicum LS89、Solanum lycopersicum E6203、Solanum lycopersicum LA4013、Solanum lycopersicum LA3810、Solanum lycopersicum LA3771、Solanum lycopersicum ハウス桃太郎、Solanum lycopersicum 桃太郎コルト、Solanum lycopersicum トゥインクル、Solanum lycopersicum フルーツイエロー、Solanum lycopersicum 麗容、Solanum lycopersicum オレンジキャロル、Solanum lycopersicum スイートミニオレンジ、Solanum lycopersicum ふりこまであり、より好ましくは、Solanum lycopersicum Micro-Tomである。
これらのアントシアニン非産生トマトは、Tomato Genetics Resource Center (TGRC)(http://tgrc.ucdavis.edu/)、タキイ種苗(http://www.takii.co.jp/index.html)、日本デルモンテ(http://www.delmonte.co.jp/index.html)、サカタのタネ、(http://www.sakataseed.co.jp/index.html)、カネコ種苗、(http://www.kanekoseeds.jp/)野菜・茶業試験場(現:独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所)、(http://www.vegetea.affrc.go.jp/)から入手できる。
【0033】
Solanum lycopersicum Micro-Tomは、ANT1ゲノム遺伝子として、配列番号1および18の塩基配列を有するトマトである。配列番号12の塩基配列は、ANT1転写調節因子全体をカバーしており、3つのエクソン、2つのイントロン、5’−非翻訳領域、および3’−非翻訳領域を含む配列である(図2)。配列番号1の塩基配列は、プライマーANT1 F2(配列番号4)とANT1 R2(配列番号5)で増幅されたANT1ゲノム遺伝子断片であり、エクソン1の一部、イントロン1、エクソン2、イントロン2、エクソン3の一部からなる配列である。プライマーANT1 F2(配列番号4)とANT1 R2(配列番号5)の位置は図2において示されている。
【0034】
Solanum lycopersicum M82は、ANT1ゲノム遺伝子として、配列番号3の塩基配列を有するトマトである。配列番号3の塩基配列は、プライマーANT1_12F(配列番号8)とANT1_992R(配列番号9)で増幅されたANT1遺伝子断片であり、エクソン1の一部、イントロン1、エクソン2、イントロン2、エクソン3の一部からなる配列である。プライマーANT1_12F(配列番号8)とANT1_992R(配列番号9)の位置は図2で示されている。
【0035】
本発明においてアントシアニン(anthocyanin)とは、抗酸化物質として知られるポリフェノールの一種で、アントシアニジン(anthocyanidin)をアグリコンとする配糖体のことを意味する。トマトのアントシアニンとは、アントシアニジンとしてペチュニジン(petunidin)、マルビジン(malvidin)またはデルフィニジン(delphinidin)をアグリコンにする配糖体を意味し、好ましくは、ペチュニジン(petunidin)、マルビジン(malvidin)およびデルフィニジン(delphinidin)の3-(p-coumaryl-rutinoside)-5-glucosideを意味する(C. M. Jones, P. Mes, and J. R. Myers, Jounal of Heredity 2003: 94(6):449-456)。
【0036】
本発明においては、ANT1遺伝子の多型とアントシアニン産生形質が連鎖することを見出したので、ANT1遺伝子の配列の違い(例えば、図2、5参照)に基づいてトマトがアントシアニン産生形質を有するか否かを判別できる。
【0037】
すなわち、解析対象のトマトのANT1遺伝子の配列が親であるアントシアニン産生トマトのANT1遺伝子の配列と一致する場合、そのトマトはアントシアニンを産生する。ここで、一致とは、トマトが、アントシアニン産生トマトのANT1遺伝子をホモまたはヘテロ接合型で有することを意味し、一致しないとは、トマトが、アントシアニン非産生トマトのANT1遺伝子をホモ接合型で有することを意味する。
【0038】
好ましい、アントシアニン産生トマトのANT1遺伝子は、配列番号2または13に示す塩基配列からなるSolanum lycopersicum LA1996のANT1ゲノム遺伝子である。
【0039】
したがって、トマトが配列番号13または2に示す塩基配列からなるANT1ゲノムDNAを有する場合、すなわち該トマトのANT1ゲノム遺伝子の配列が、配列番号2または13に示す塩基配列と一致する場合、該トマトはアントシアニン産生トマトであると判別することができる。
【0040】
トマトのANT1ゲノム遺伝子の配列が、配列番号2または13に示す塩基配列と一致するか否かは、トマトからANT1ゲノム遺伝子を単離し、シークエンシングを行い、塩基配列を決定し、配列番号2または13に示す塩基配列とアライメントを行うことで判別することができる。これらトマトからANT1ゲノム遺伝子の単離方法、シークエンシング方法、アライメント方法は、すべて当業者に周知な方法である(J. Sambrook and D. W. Russell, 2001, Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)。
【0041】
例えば、トマトからANT1ゲノム遺伝子の単離は、配列番号2または13に示す塩基配列に基づいて設計したプライマーとトマトから単離されたゲノムDNAを用いて、PCRなどの遺伝子増幅により得ることが出来る。シークエンシングは、市販のシークエンシングキットや自動シークエンサーを用いて行うことができる。アライメントは、インターネット上で無料で利用できるコンピューターソフトウェアーCLUSTALW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)や遺伝子情報処理ソフトウェアーGENETYX(ゼネティクス社製)を用いて行うことができる。なお、塩基配列のアライメントとは、複数の配列の位置をあわせることを意味する。
【0042】
トマトが配列番号2または13からなるANT1ゲノム遺伝子を有するか否かは、配列番号2または13のすべての塩基配列を決定しなくとも、表1に示す位置のANT1ゲノム遺伝子の塩基の型(SNP)を決定することにより判別することができる。
【0043】
表1は、アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996(配列番号13)とアントシアニン非産生トマトSolanum lycopersicum Micro-Tom(配列番号12)、M82(配列番号3)、nv-1、IRB301、Small Fry、ハウス桃太郎、桃太郎コルト、麗容、トゥインクル、フルーツイエロー、オレンジキャロル、スイートミニオレンジ、ふりこま、Ailsa Craig、Money Maker、Manapal、LS89、E6203、LA4013、LA3810、LA3771間でのANT1ゲノム遺伝子の塩基配列の異なる箇所を、配列番号13の塩基配列の位置に基づいて示したものである。
【0044】
【表1】

【0045】
例えば、得られたトマトのANT1ゲノム遺伝子の塩基配列が、配列番号13に示すLA1996のANT1遺伝子の塩基配列の位置409に対応する位置の塩基としてtを有する場合は、トマトのANT1ゲノム遺伝子は、アントシアニン産生トマトLA1996のANT1ゲノム遺伝子を有し、このトマトはアントシアニン産生トマトであると判別できる。
【0046】
なお、本発明における塩基がtの場合とは、ANT1遺伝子の対立遺伝子の型がt/tのホモ接合型またはt/cのヘテロ接合型であることを意味し、塩基がcの場合とは、対立遺伝子の型がc/cのホモ接合型であることを意味する。
【0047】
すなわち、この表1に示された少なくとも1つの位置の、トマトの塩基の型を知ることで、トマトが、アントシアニン産生トマトSolanum lycopersicum LA1996のANT1ゲノム遺伝子を有し、アントシアニン産生トマトであるか否かを判別できる。
【0048】
表1に示した位置における塩基の型(SNP)を知る方法には、例えば、先に記載したようにトマトから単離されたANT1ゲノムDNAを用い、配列解読(シークエンシング)を行う方法、表1に示した位置における塩基の型(SNP)に特異的なプローブを用意し、DNAチップなどを用いてトマトから単離されたゲノムDNAまたはANT1ゲノムDNAとハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイゼーションの有無によって解析する方法、または表1に示した位置における塩基の型(SNP)に特異的なプライマーとトマトから単離されたゲノムDNAを用いてPCRを行い増幅の有無によって解析する方法が例示される。
【0049】
配列解読(シークエンシング)を行う方法では、例えば、トマトから単離されたゲノムDNAと実施例で示すANT1F2プライマーとANT1R2プライマーを用いてPCR等によりトマトのANT1遺伝子の増幅を行う。なお、シークエンシングに用いるDNA断片の長さや増幅に用いるプライマーは、配列を決定しようとする表1に示した位置によって、当業者は任意に設定できる。
【0050】
増幅されたDNAのシークエンシングを行い、塩基配列を決定する。決定された塩基配列と、配列番号13または2に示す塩基配列とアライメントを行う。場合によっては、Micro-Tomの配列番号18に示す塩基配列ともアライメントを行ってもよい。アライメントの結果、表1に示す位置のすくなくとも1つにおいて、トマトの塩基配列中にLA1996の塩基の型が認められたならば、トマトはアントシアニン産生トマトであると判別する。
【0051】
また、上記表1に示した位置における塩基の型(SNP)に特異的プライマーを用いたANT1遺伝子の増幅の有無によって、トマトが、アントシアニン産生トマトであるか否かを判別してもよい。
【0052】
判別するためのプライマーとしては、上記表1に示した位置におけるSolanum lycopersicum LA1996のANT1ゲノム遺伝子の塩基の型(SNP)に特異的プライマー、場合によりアントシアニン非産生トマト由来のANT1遺伝子に特異的プライマーを設計する。
【0053】
例えば、Solanum lycopersicum LA1996特異的プライマーとしては、表2−1のように、配列番号13の塩基配列に基づいて、オリゴヌクレオチドの3’末端に上記表1に示したLA1996の塩基の型(SNP)を含む15merのオリゴヌクレオチドを設計することができる。一方、アントシアニン非産生トマト特異的プライマーも、表2−2のように、オリゴヌクレオチドの3’末端に上記表1に示したMicro-Tomの塩基の型(SNP)を含む15merのオリゴヌクレオチドを、配列番号12の塩基配列に基づいて設計することができる。
【0054】
【表2−1】

【0055】
【表2−2】

【0056】
表2−1に示すLA1996に特異的オリゴヌクレオチドの3’末端から2番目の塩基は、非特異的増幅を減らすために、わざと配列番号13に示される塩基以外の塩基を選択している。また、これは、表2−2に示すアントシアニン非産生トマトに特異的オリゴヌクレオチドの3’末端から2番目の塩基は、非特異的増幅を減らすために、わざと配列番号12に示される塩基以外の塩基を選択している。これは、3’末端から2番目の代わりに、3’末端から3番目の塩基においてなされても良い。また、表2(表2−1と表2−2)に示す特異的オリゴヌクレオチドは、さらに5’側に任意の1〜40塩基が付加されてもよい。
【0057】
フォワードプライマーとリバースプライマーのいずれか一方が表2に示す特異的プライマーであればよく、特異的プライマーとともに使用するプライマー(対プライマー)は、Solanum lycopersicum LA1996のANT1ゲノム遺伝子とアントシアニン非産生トマトMicro-TomおよびM82のANT1ゲノム遺伝子間で共通する塩基配列を有する領域に設定してもよい。
【0058】
例えば、表1における位置745の塩基の型を、LA1996のANT1ゲノム遺伝子の特異的増幅で判別しようとするならば、表1に示す位置745のLA1996の塩基aに対応する
配列番号7:5'-gtcacttatt gctggtagac ttcda-3'
の配列からなるオリゴヌクレオチドをLA1996特異的プライマーとして用いることができる。なお、dはa(アデニン)、g(グアニン)、t(チミン)を表す。dの位置は、配列番号13に示す塩基配列に基づけば、c(シトシン)となるが、非特異的増幅を減らすために、わざとシトシン以外の塩基を選択している。配列番号7のオリゴヌクレオチドは、表2に示す配列番号33のオリゴヌクレオチドの5’側が、配列番号13に示す塩基配列に基づいて10mer長くなっている。
【0059】
配列番号7の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとして、具体的には実施例で示す配列番号11の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0060】
また、表1における位置409の塩基の型をアントシアニン非産生トマトのANT1ゲノム遺伝子の特異的増幅で判別しようとするならば、特異的プライマーとしては、表1に示す位置409のアントシアニン非産生トマトの塩基cに対応する
配列番号6:5'-ataaaaataa cgtgatagtt aatttaatbg-3'
の配列からなるオリゴヌクレオチドをアントシアニン非産生トマト特異的プライマーとして用いることができる。なお、bはg(グアニン)、c(シトシン)、t(チミン)を表す。また、bの位置は、配列番号12に示す塩基配列に基づけば、a(アデニン)となるが、非特異的増幅を減らすために、わざとアデニン以外の塩基を選択している。配列番号6のオリゴヌクレオチドは、表2に示す配列番号148のオリゴヌクレオチドの5’側が、配列番号12に示す塩基配列に基づいて15mer長くなっている。
【0061】
配列番号6の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとして具体的には実施例で示す配列番号10の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0062】
特異的プライマーを用いたANT1遺伝子の増幅の有無によるアントシアニン産生トマトであるか否かの判別は、次のように行うことができる。
【0063】
例えば、配列番号7のLA1996特異的プライマーと対プライマー、およびトマトのゲノムDNAを鋳型DNAとして用いて遺伝子増幅を行い、予定の長さのDNAが増幅されたとき、そのトマトのANT1ゲノム遺伝子は、LA1996のANT1ゲノム遺伝子であると判断できるので、そのトマトはアントシアニン産生トマトであると判別することができる。このとき、例えば、配列番号6のアントシアニン非産生トマト特異的プライマーと対プライマーで同様に遺伝子増幅を行い、遺伝子増幅を確認しておくことが好ましい。配列番号6のアントシアニン非産生トマト特異的プライマーと対プライマーで、予定の長さのDNAが増幅されなかったときは、そのトマトは、LA1996のANT1ゲノム遺伝子をホモ接合体で有していることを意味しており、逆に、配列番号6のアントシアニン非産生トマト特異的プライマーと対プライマーで、予定の長さのDNAが増幅されたときは、そのトマトは、LA1996とアントシアニン非産生トマトのANT1ゲノム遺伝子をヘテロ接合体で有していることを意味している。
【0064】
逆に、配列番号7のLA1996特異的プライマーと対プライマーでは、予定の長さのDNAが増幅されないときには、そのトマトのANT1ゲノム遺伝子は、LA1996のANT1ゲノム遺伝子ではないと判断できるので、そのトマトはアントシアニン産生トマトではないと判別することができる。このとき、例えば、配列番号6のアントシアニン非産生トマト特異的プライマーと対プライマーで同様に遺伝子増幅を行い、予定の長さのDNAが増幅され、そのトマトが、アントシアニン非産生トマトのANT1ゲノム遺伝子をホモ接合体で有していることを確認しておくことが好ましい。
【0065】
特異的プライマーとともに使用する対プライマーは、ANT1ゲノム遺伝子上に設定され(センス鎖、アンチセンス鎖いずれでもよい)、特異的プライマーと同時に使用したときにANT1ゲノム遺伝子断片を増幅できるものであれば特に制限されないが、LA1996特異的プライマーで増幅されるDNAとアントシアニン非産生トマト特異的プライマーで増幅されるDNAが、電気泳動上で分離されたとき、区別できる程度に長さが異なるように対プライマーは設計されることが好ましい。例えば、実施例で示す配列番号4または5の塩基配列を有するプライマーなどが挙げられる。
【0066】
特異的プライマーを用いたANT1遺伝子の増幅の有無によるアントシアニン産生トマトであるか否かの判別は、トマトがLA1996とアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトである場合が好ましい。
【0067】
本発明のキットは、上記プライマーを含む、アントシアニン産生トマト判別用キットである。本発明のキットはさらに、PCR用試薬を含むものであってもよい。
【実施例】
【0068】
通常のトマト品種(Solanum lycopersicum)は果実にアントシアニンを蓄積しないが、近縁の野生種には果実にアントシアニンを蓄積するものがある。トマト系統LA1996(注)は、野生種Solanum chilenseとSolanum lycopersicumを交配して作られた系統で、果実にアントシアニンを蓄積する。野生種でアントシアニン蓄積が生ずる原因として、栽培種トマトでは機能が失われている、もしくは栽培種トマトでは存在しないアントシアニン合成関連の遺伝子を野生種が保有していることが考えられる。アントシアニン合成には多数の遺伝子が関わっているが、いくつかの候補と考えられる遺伝子の中から、myb転写調節因子のひとつであるANT1遺伝子を選び、LA1996とトマト品種Micro-TomからANT1遺伝子配列の一部を単離し、両者の間のDNA多型を調べた。
(注)LAとそれに続く数字は、Tomato Genetics Resource Center (TGRC)で付けられた系統名である。
【0069】
1.ゲノムDNAの抽出
LA1996とMicro-Tomの葉を、それぞれ凍結条件下で粉砕した。すなわち、約300mgの葉とジルコニアボールを1.5ml容量のプラスチックチューブに入れ、−80℃の冷凍庫中で凍結し、多検体細胞破砕装置「ShakeMaster」(バイオメディカルサイエンス社製)で粉砕した。粉末に600μlの2%CTAB液(2%w/w 臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、0.1M トリスバッファー、20mM EDTA、1.4M 塩化ナトリウム)と6μlの2−メルカプトエタノールを加えて混合し、56℃で10分間インキュベートした。その後、600μlのクロロホルム−イソアミルアルコールを加えて混合し、さらに、22℃で、20000g、10分間の遠心分離を行った。上層を新しいチューブに移し、600μlのイソプロパノールを加え、混合した。室温で5分間放置した後、22℃で、20000g、10分間の遠心分離を行い、DNAの沈殿を得た。沈殿は、70%エタノールで洗浄した後、50μlのTEバッファー(10μg/mlのRNase Aを含む)に溶解し、PCR反応時の鋳型DNAとした。
【0070】
2.ANT1ゲノム遺伝子配列の一部を増幅するためのPCRプライマーの設計
DNAデータベース「GenBank」から、Solanum lycopersicum(Micro-Tom)のANT1 mRNAの配列GenBank accession AY348870 を得、その配列を元にANT1ゲノム遺伝子配列の一部を増幅するためのPCRプライマーを設計した。設計したプライマーは、
ANT1 F2:5'-TTCATTGGGAGTGAGAAAAGGTTC-3'(配列番号4)、
ANT1 R2:5'-CATTGTGCTTGAGAAATACTTGCG-3'(配列番号5)である。
ANT1 F2とANT1 R2のゲノム上における位置を図2に示す。
【0071】
3.ANT1ゲノム遺伝子の一部の塩基配列の決定
Micro-TomとLA1996のゲノムDNAを鋳型に、プライマーANT1 F2とANT1 R2を用いてPCRを行った。反応溶液は、10ng/μlに調製した鋳型DNA5μl、3μMプライマー各5μl、10×PCRバッファー5μl、2.5mM dNTPs 4μl、DNAポリメラーゼとして5U/μl TaKaRa Ex Taq HS(タカラバイオ社製)0.25μl、および滅菌蒸留水28.25μlを混合したものとした。反応温度条件は、95℃2分間の熱変性後、95℃30秒間・55℃30秒間・72℃2分30秒間を35サイクル繰り返し、72℃10分間の伸長反応を行うものとした。PCR産物のうち2μlをアガロース電気泳動に用い、産物の有無とおおよそのDNA断片長を測定した(図1)。その結果、Micro-TomとLA1996から、約650bpの一本の明確なPCR産物を得られたことを確認した。残りのPCR産物は、NucleoSpin Extract II(MACHEREY-NAGEL社製)を用いて精製した。シーケンス反応は、精製したPCRの増幅産物を鋳型にし、PCRに使用したプライマーとBigDye Terminator v3.0 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズジャパン社製)を用い、キットのプロトコールに従って行った。シーケンス反応産物を用い、DNAシーケンサーABI3110(アプライドバイオシステムズジャパン社製)によって塩基配列を決定した。決定されたMicro-TomのANT1ゲノム遺伝子の一部配列が、配列番号1:
5'-
gatgaagaag attttcttct aagaaaatgt attgataagt atggtgaagg aaaatggcat 60
cttgttccca taagagctgg taactattaa attaactatc acgttatttt tatttgtctt 120
tctgtctcat tttatttgac gttattacga atatcatctg aaaatgtacg tgcaggtctg 180
aatagatgtc ggaaaagttg tagattgagg tggctgaatt atctaaggcc acatatcaag 240
agaggtgact ttgaacaaga tgaagtggat ctcattttga ggcttcataa gctcttaggc 300
aacaggcatg caagtttatg ttttgacaaa atttgattag tatatattat atatacgtgt 360
gactatttca tctaaatgtt acgttatttt acgtagatgg tcacttattg ctggtagact 420
tcccggaagg acagctaacg atgtgaaaaa ctattggaac actaatcttc taaggaagtt 480
aaatactact aaaattgttc ctcgcgaaaa gattaacaat aagtgtggag aaattagtac 540
taagattgaa attataaaac ctcaacgacg caagtatttc tcaagcacaa tgaagaatgt 600
tacaaacaat aatgtaattt tggacgagga ggaacattgc aaggaaataa taagtgagaa 660
acaaactcca gatgcatcga tggacaacgt agatccatgg tggataaatt tactggaaaa 720
ttgcaatgac gatattgaag aagatgaaga ggttgtaatt aattatgaaa aaacactaac 780
aagtttgtta catgaagaaa tatcaccacc attaaatatt ggtgaaggta actccatgca 840
acaaggacaa ataagtcatg aaaattgggg tgaattttct cttaatttac cacccatgca 900
acaa 904
-3'
に示す配列であり、決定されたLA1996のANT1ゲノム遺伝子の一部配列が、配列番号2:
5'-
gatgaagaag attttctttt aagaaaatgt attgataagt atggtgaagg aaaatggcat 60
cttgttccca taagagctgg taattattaa actgactatc acgttatttt tatctgtctg 120
tctcatttta tatgacgtta ttttgaacat tatctgaaaa tgtacgtgca ggtctgaata 180
gatgtcggaa aagttgtaga ttgaggtggc tgaattatct aaggccacat atcaagagag 240
gtgactttga acaagatgaa gtggatctca ttttgaggct tcataagctc ttaggcaaca 300
ggcatgcaag tttatgtttt gacaaaattt gattagtata tattatatat acgtgtgact 360
atttcatcta aatgttacat tattttacgt agatggtcac ttattgctgg tagacttcca 420
ggaaggacag ctaacgatgt gaaaaactat tggaacacta atcttctaag gaagttaaat 480
actactaaaa ttgttcctcg tgaaaagact aacaataagt gtggagaaat tagtactaag 540
attgaaatta taaaacctca accacgaaag tatttctcaa gcacaatgaa gaatattaca 600
aacaatattg taattttgga cgaggaggaa cattgcaagg aaataaaaag tgagaaacaa 660
actccagatg catcgatgga caacgtagat caatggtgga taaatttact ggaaaattgc 720
aatgacgata ttgaagaaga tgaagaggtt gtaattaatt atgaaaaaac actaacaagt 780
ttgttacatg aagaaaaatc accaccatta aatattggtg aaggtaactc catgcaacaa 840
ggacaaataa gtcatgaaaa ttggggtgaa ttttctctta atttacaacc catgcaacaa 900
-3'
に示す配列である。
【0072】
これら配列番号1と2それぞれには、GenBank accession AY348870 のmRNAとの比較からエクソン1の一部、イントロン1、エクソン2、イントロン2、エクソン3の一部が認められた。
【0073】
さらに、配列番号1と2のそれぞれについて、上流側と下流側の塩基配列を決定した。得られた、Micro-TomのANT1ゲノム遺伝子の配列が、配列番号12:
5'-
aaaaaaatta aaaattattt cgaaaaatca aaattttttt ttgattgaaa tgaaagatgg 60
gtttcccaat cgaggctggc aggataggta cattgggaaa tttggatttg tgtgttgaaa 120
atgattgttc aatttggctt ttataacatt tgtcgtttat aatttgtaga aggctctcta 180
caagttggta gttacaattt aatacactct tttaggcacg tgtataagta tatatagaca 240
ataaaaaagt agtataatat attatcaaat tattatgaac agtacatcta tgtcttcatt 300
gggagtgaga aaaggttcat ggactgatga agaagatttt cttctaagaa aatgtattga 360
taagtatggt gaaggaaaat ggcatcttgt tcccataaga gctggtaact attaaattaa 420
ctatcacgtt atttttattt gtctttctgt ctcattttat ttgacgttat tacgaatatc 480
atctgaaaat gtacgtgcag gtctgaatag atgtcggaaa agttgtagat tgaggtggct 540
gaattatcta aggccacata tcaagagagg tgactttgaa caagatgaag tggatctcat 600
tttgaggctt cataagctct taggcaacag gcatgcaagt ttatgttttg acaaaatttg 660
attagtatat attatatata cgtgtgacta tttcatctaa atgttacgtt attttacgta 720
gatggtcact tattgctggt agacttcccg gaaggacagc taacgatgtg aaaaactatt 780
ggaacactaa tcttctaagg aagttaaata ctactaaaat tgttcctcgc gaaaagatta 840
acaataagtg tggagaaatt agtactaaga ttgaaattat aaaacctcaa cgacgcaagt 900
atttctcaag cacaatgaag aatgttacaa acaataatgt aattttggac gaggaggaac 960
attgcaagga aataataagt gagaaacaaa ctccagatgc atcgatggac aacgtagatc 1020
catggtggat aaatttactg gaaaattgca atgacgatat tgaagaagat gaagaggttg 1080
taattaatta tgaaaaaaca ctaacaagtt tgttacatga agaaatatca ccaccattaa 1140
atattggtga aggtaactcc atgcaacaag gacaaataag tcatgaaaat tggggtgaat 1200
tttctcttaa tttaccaccc atgcaacaag gagtacaaaa tgatgatttt tctgctgaaa 1260
ttgacttatg gaatctactt gattaaaaga tatgttattg taaacttgta ttagggatac 1320
atttgttctt tataatttgt gtcccaacta caagttgtta gggaagtaat taatgttgtt 1380
agaatgggtt accatccaca tacattcatt agggaatgga ccggtggtaa cttattttta 1440
cggacttgga taaatttatc ttcacgaact aatttctgga gttgagttag attcaagttc 1500
caatcaataa gtgcatatgc actatgatat tgttcatgtg atttttaggt tacttatgtt 1560
attatatatt tgcaacgtct ttgtgttact tcctttagtc tatattaagt gaaacgtaag 1620
aaattttt 1628
-3'
の配列であり、LA1996のANT1ゲノム遺伝子の配列が、配列番号13:
5'-
aaaaaaatta aaaattattt caaaaaattg aatttttttt ttgattgaaa tgaaagatgg 60
gtttcccaat cgaggctggc aggataggta cattgggaaa tttggattta tgtgttgaaa 120
atgattgttc aatttggctt ttataacatt tgtcgtttat aatttgtaga aggctctcta 180
caagttggta gttacaattt aatacactct tttaggcatg tgtataagta tatatagaca 240
ataaaaaagt agtataatat atcatcaaat tattatgaac agtacatcta tgtcttcatt 300
gggagtgaga aaaggttcat ggactgatga agaagatttt cttttaagaa aatgtattga 360
taagtatggt gaaggaaaat ggcatcttgt tcccataaga gctggtaatt attaaactga 420
ctatcacgtt atttttatct gtctgtctca ttttatatga cgttattttg aacattatct 480
gaaaatgtac gtgcaggtct gaatagatgt cggaaaagtt gtagattgag gtggctgaat 540
tatctaaggc cacatatcaa gagaggtgac tttgaacaag atgaagtgga tctcattttg 600
aggcttcata agctcttagg caacaggcat gcaagtttat gttttgacaa aatttgatta 660
gtatatatta tatatacgtg tgactatttc atctaaatgt tacattattt tacgtagatg 720
gtcacttatt gctggtagac ttccaggaag gacagctaac gatgtgaaaa actattggaa 780
cactaatctt ctaaggaagt taaatactac taaaattgtt cctcgtgaaa agactaacaa 840
taagtgtgga gaaattagta ctaagattga aattataaaa cctcaaccac gaaagtattt 900
ctcaagcaca atgaagaata ttacaaacaa tattgtaatt ttggacgagg aggaacattg 960
caaggaaata aaaagtgaga aacaaactcc agatgcatcg atggacaacg tagatcaatg 1020
gtggataaat ttactggaaa attgcaatga cgatattgaa gaagatgaag aggttgtaat 1080
taattatgaa aaaacactaa caagtttgtt acatgaagaa aaatcaccac cattaaatat 1140
tggtgaaggt aactccatgc aacaaggaca aataagtcat gaaaattggg gtgaattttc 1200
tcttaattta caacccatgc aacaaggagt acaaaatgat gatttttctg ctgaaattga 1260
cttatggaat ctacttgatt aaaagagatg ttattgtaaa cttgtattag ggatacattt 1320
gttctttata atttgtatcc caactacaag ttgttaggga agtaattaat gttgttagag 1380
tgggttacca tccacataca ttcattaggg aatggaccgg tggtaattta tttctacgga 1440
cttggataaa tttatcttca cgaactaact tctggagttg agttagatcc aagtttcata 1500
tttctagaat caataagtgc atatgcacta taatattgtt catgtgattt ttaggttact 1560
tatgttatta tatatttgca acgtctttat gttactttct ttagtctata ttaagtgaaa 1620
cgtaagaaat tttt 1634
-3'
に示す配列である。
【0074】
これら配列番号12と13それぞれは、GenBank accession AY348870のmRNAとの比較からANT1たんぱく質全体をカバーしていることが明らかとなった。その結果、ANT1ゲノム遺伝子は、3つのエクソン(図2に囲っている領域)と2つイントロンから構成されていることが明らかとなった。また、配列番号12と13それぞれには、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域も含まれている。
【0075】
また、これらの結果からは、ANT1 F2プライマーが、ANT1ゲノム遺伝子のエクソン1に、ANT1 R2プライマーが、エクソン3に位置することが明らかとなった。
【0076】
4.LA1996とMicro-TomのANT1遺伝子を判別するプライマーの設計
遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX(ゼネティックス社製)を用いて、得られたMicro-Tom(配列番号12)の塩基配列とLA1996(配列番号13)の塩基配列の比較を行った(図2)。その結果、LA1996(配列番号13)とMicro-Tom(配列番号12)のANT1遺伝子配列間で複数のDNA多型を検出できた。
【0077】
このDNA多型を判別できるプライマーANT1 F2 MitR2とANT1 F2 LA1996Fを設計した(図2)。
【0078】
Micro-TomのANT1遺伝子配列を特異的に増幅できるプライマーとしては、
ANT1 F2 MitR2:5'-ataaaaataacgtgatagttaatttaatcg-3'(配列番号10)
を設計した。ANT1 F2 MitR2は、ANT1遺伝子の翻訳開始点から135塩基の位置(図2ではLA1996の409番目、Micro−Tomの409番目で、イントロン1に位置する)にあるMicro-Tomではc、LA1996ではtの一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism: SNP)を検出するため、3’末端の塩基をGとし、3’末端から2番目の塩基をミスマッチになるcとしたものである。このミスマッチを入れることでLA1996のANT1遺伝子の非特異的増幅を防ぐことができる。なお、ミスマッチはgまたはtでもよい。
【0079】
ANT1 F2 MitR2は、配列番号1と2の増幅に用いたANT1 F2と組み合わせることで、144bpのDNA断片を増幅できる。
【0080】
LA1996のANT1遺伝子配列を特異的に増幅できるプライマーとしては、
ANT1 F2 LA1996F:5'-gtcacttattgctggtagacttcta-3'(配列番号11)
を設計した。ANT1 F2 LA1996は、LA1996のANT1遺伝子の翻訳開始点から471塩基の位置、Micro−TomのANT1遺伝子の翻訳開始点から475塩基の位置(図2ではLA1996の745番目、Micro−Tomの749番目、エクソン3に位置する)にあるMicro-Tomではc、LA1996ではaの一塩基多型を利用するため、3’末端の塩基をaとし、3’末端から2番目の塩基をミスマッチになるtとしたものである。このミスマッチを入れることでMicro-TomのANT1遺伝子の非特異的増幅を防ぐことができる。なお、ミスマッチはGまたはAでもよい。
【0081】
ANT1 F2 LA1996Fは、配列番号1と2の増幅に用いたANT1 R2と組み合わせることで、193bpのDNA断片を増幅できる。
【0082】
なお、ANT1 R2とANT1 R2からは、配列番号1と2の約650bpの断片が増幅され、このバンドは、図3において共通として示されている、
【0083】
4種のプライマーANT1 F2、ANT1 F2 LA1996F、ANT1 F2 MitR2、ANT1 R2を混合してPCRを行った。鋳型DNAは、Micro−Tom 、LA1996F、Micro−TomとLA1996の交配種(F1世代)を用いた。Micro−TomとLA1996の交配種からの鋳型DNAの調製は、1.に示すMicro−TomとLA1996FからのゲノムDNAの抽出の場合と同様に行った。
【0084】
結果、Micro−Tom(図3のレーン2)では、ANT1 F2 MitR2とANT1 F2による144bpのDNA断片(図3において「Micro−Tom」と矢印で示す)の増幅が確認できたが、ANT1 F2 LA1996FとANT1 R2による193bpのDNA断片(図3において「LA1996」と矢印で示す)の増幅が確認できなかった。一方、LA1996(図3のレーン3)では、ANT1 F2 LA1996FとANT1 R2による193bpのDNA断片の増幅が確認できたが、ANT1 F2 MitR2とANT1 F2による144bpのDNA断片の増幅が確認できなかった。そして、Micro−Tom とLA1996の交配種(F1世代)(図3のレーン4)では、144bpと193bpの両方を確認できた。これらの結果より、これらのプライマーを用いることで、ANT1遺伝子が、Micro-TomタイプであるかLA1996タイプであるかを判別できることがわかった。
【0085】
このとき、PCRの反応溶液は、鋳型DNA1.5μl、3μMプライマー各1μl、10×PCRバッファー1μl、2.5mM dNTPs 0.8μl、DNAポリメラーゼとして5U/μl TaKaRa Taq HS(タカラバイオ社製)0.05μl、および滅菌蒸留水2.65μlを混合したものとした。反応温度条件は、95℃2分間の熱変性後、95℃30秒間・55℃30秒間・72℃1分間を35サイクル繰り返し、72℃5分間の伸長反応を行うものとした。
【0086】
5.果実へのアントシアニン蓄積形質とANT1遺伝子型の関係の調査
Micro-Tomを子房親、LA1996を花粉親として交配を行い、Micro-TomとLA1996のF1個体を得、F1個体を自殖してF2世代の種子を得た。F2世代185個体をポット栽培し、果実における黒色色素の有無を目視で調査した(図4)(LA1996のもつ黒色の色素がアントシアニンであることは、確認されている。(Jones et al. J Hered. 94(6), p449-56. 2003))。また、各個体から葉をサンプリングし、上記の方法と同様にDNAの抽出を行い、PCRの鋳型DNAとした。PCRは上記4の方法と同様の方法で行った。個体番号150番と185番は栽培中に枯死したため、果実の調査を行うことができなかった。果実を調査した183個体において、139個体で果実への黒色色素の蓄積が認められた(表3)。黒色色素の蓄積が認められた個体と認められなかった個体の割合は139:44と、ほぼ3:1となり、黒色色素を蓄積する形質が優性の1因子であることが推定された。黒色色素の蓄積が認められた個体のうち、46個体はANT1遺伝子をLA1996型のホモで、93個体はLA1996型とMicro-Tom型のヘテロで保有していた。また黒色色素の蓄積が認められなかった44個体は全てMicro-Tom型のANT1遺伝子をホモで保有していた。以上のことから、アントシアニン産生トマトであるSolanum lycopersicum LA1996のANT1遺伝子を有していれば、そのトマトはアントシアニン産生トマトになるが、アントシアニン産生トマトであるSolanum lycopersicum LA1996のANT1遺伝子を有しておらず、アントシアニン非産生トマトであるSolanum lycopersicum Micro-TomのANT1遺伝子のみ有している場合、そのトマトはアントシアニン非産生トマトとなることが明らかとなった。また、本プライマーセットを用いて、ANT1遺伝子型を決めることで果実へのアントシアニンを蓄積する個体を効率的に選抜できることが確認できた。
【0087】
【表3】

【0088】
トマト果実にアントシアニンの蓄積がある場合+、ない場合−で示す。
ヘテロは、LA1996とMicro-Tomの両方のANT1遺伝子を有することを、LA1996は、LA1996のANT1遺伝子のみを有することを、Micro-Tomは、Micro-TomのANT1遺伝子のみを有することを示す。
ndは、測定されなかったことを示す。
【0089】
6.アントシアニン非産生トマトのANT1遺伝子の一部の塩基配列の決定
アントシアニンを蓄積しない別の加工用トマト「M82」(配列番号3)のANT1遺伝子の一部を増幅した。1の方法でDNAを抽出し、PCRの鋳型DNAとした。PCRプライマーには、新たに設計したANT1_12F:5'-ATCTATGTCTTCATTGGGAGTGAGA-3'(配列番号8)とANT1_992R:5'-CCATAAGTCAATTTCAGCAGAAAAATCATC-3'(配列番号9)を使用した(これらのプライマーの位置は図2に示されている)。3の方法でPCRを行い、PCR産物は、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ社製)で精製した。精製したPCRの増幅産物を鋳型にし、3の方法で塩基配列を決定した。さらに、同様にアントシアニンを蓄積しない別のトマトnv-1、IRB301、Small Fry、ハウス桃太郎、桃太郎コルト、麗容、トゥインクル、フルーツイエロー、オレンジキャロル、スイートミニオレンジ、ふりこま、Ailsa Craig、Money Maker、Manapal、LS89、E6203、LA4013、LA3810、LA3771のANT1遺伝子の一部を増幅し、表1に示す位置344、位置409、位置417、位置419、位置439、位置444〜445、位置457、位置468、位置469、位置473、位置476、位置704、位置745、位置826、位置834、位置888、位置892、位置920、位置933、位置972、位置1017、位置1122、位置1212の塩基の型を決定した。その結果、調べたすべてのアントシアニン非産生トマトの塩基の型はMicro-Tomの型と一致し、LA1996の型とは異なることが確認された。これより、表1に示す位置の塩基の型を決定するだけで、トマトがアントシアニン産生トマトであるか、あるいはアントシアニン非産生トマトであるかの判別が可能となることが明らかとなった。
【0090】
Solanum lycopersicum M82のANT1遺伝子(配列番号3)
5'-
gatgaagaag attttcttct aagaaaatgt attgataagt atggtgaagg aaaatggcat 60
cttgttccca taagagctgg taactattaa attaactatc acgttatttt tatttgtctt 120
tctgtctcat tttatttgac gttattacga atatcatctg aaaatgtacg tgcaggtctg 180
aatagatgtc ggaaaagttg tagattgagg tggctgaatt atctaaggcc acatatcaag 240
agaggtgact ttgaacaaga tgaagtggat ctcattttga ggcttcataa gctcttaggc 300
aacaggcatg caagtttatg ttttgacaaa atttgattag tatatattat atatacgtgt 360
gactatttca tctaaatgtt acgttatttt acgtagatgg tcacttattg ctggtagact 420
tcccggaagg acagctaacg atgtgaaaaa ctattggaac actaatcttc taaggaagtt 480
aaatactact aaaattgttc ctcgcgaaaa gattaacaat aagtgtggag aaattagtac 540
taagattgaa attataaaac ctcaacgacg caagtatttc tcaagcacaa tgaagaatgt 600
tacaaacaat aatgtaattt tggacgagga ggaacattgc aaggaaataa taagtgagaa 660
acaaactcca gatgcatcga tggacaacgt agatccatgg tggataaatt tactggaaaa 720
ttgcaatgac gatattgaag aagatgaaga ggttgtaatt aattatgaaa aaacactaac 780
aagtttgtta catgaagaaa tatcaccacc attaaatatt ggtgaaggta actccatgca 840
acaaggacaa ataagtcatg aaaattgggg tgaattttct cttaatttac cacccatgca 900
acaa 904
-3'
【0091】
遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX(ゼネティックス社製)を用いて、得られた塩基配列の比較を行った(図5)。その結果、各配列間にDNA多型を確認できた。これらのDNA多型(SNP)の一部を表1に示す。
【0092】
[その他]
国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)」
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】Micro-Tom(レーン1)とLA1996(レーン2)のDNA断片の増幅結果を示す図(写真)。
【図2−1】Micro-TomのANT1遺伝子(配列番号12)とLA1996のANT1遺伝子(配列番号13)の配列アラインメントとプライマーの位置を示す図。プライマーANT1 F2、プライマーANT1 R2、プライマーANT1 F2 MitR2 、プライマーANT1 F2 LA1996F、プライマーANT1_12F、プライマーANT1_992Rの位置を矢印で示した。なお、プライマーANT1_12FとプライマーANT1 F2は上流側に設定されたMicro-TomとLA1996に共通の配列を有するフォワードプライマーであり、プライマーANT1 R2、プライマーANT1_992Rは下流側に設定されたMicro-TomとLA1996に共通の配列を有するリバースプライマーである。−は、ギャップを表す。*は、両配列で塩基が一致していることを表す。□(囲い)がエクソンを表す。矢印がプライマーの結合部位とDNAの合成方向を表す。配列番号12において、開始コドンは275〜277番目、終止コドンは1283〜1285番目である。配列番号13において、開始コドンは275〜277番目、終止コドンは1279〜1281番目である。
【図2−2】Micro-TomのANT1遺伝子(配列番号12)とLA1996のANT1遺伝子(配列番号13)の配列アラインメントとプライマーの位置を示す図。プライマーANT1 F2、プライマーANT1 R2、プライマーANT1 F2 MitR2 、プライマーANT1 F2 LA1996F、プライマーANT1_12F、プライマーANT1_992Rの位置を矢印で示した。なお、プライマーANT1_12FとプライマーANT1 F2は上流側に設定されたMicro-TomとLA1996に共通の配列を有するフォワードプライマーであり、プライマーANT1 R2、プライマーANT1_992Rは下流側に設定されたMicro-TomとLA1996に共通の配列を有するリバースプライマーである。−は、ギャップを表す。*は、両配列で塩基が一致していることを表す。□(囲い)がエクソンを表す。矢印がプライマーの結合部位とDNAの合成方向を表す。配列番号12において、開始コドンは275〜277番目、終止コドンは1283〜1285番目である。配列番号13において、開始コドンは275〜277番目、終止コドンは1279〜1281番目である。
【図3】本発明のプライマーセット(プライマーANT1 F2、プライマーANT1 F2 LA1996F、プライマーANT1 F2 MitR2、プライマーANT1 R2)を使用したPCRの結果を示す図。レーン1がDNAマーカー、レーン2がMicro-TomのゲノムDNAを鋳型としたPCRの結果、レーン3がLA1996のゲノムDNAを鋳型としたPCRの結果、レーン4がMicro-TomとLA1996の掛けあわせによって得られたF1世代のゲノムDNAを鋳型としたPCRの結果を示す。
【図4】Micro-TomとLA1996の掛けあわせによって得られたF2世代のトマトの果実の写真。Aがアントシアニン産生トマト、Bがアントシアニン非産生トマトを示す。
【図5−1】各種トマトのANT1遺伝子の配列アラインメントを示す図。−は、ギャップを表す。*は、両配列で塩基が一致していることを表す。
【図5−2】各種トマトのANT1遺伝子の配列アラインメントを示す図。−は、ギャップを表す。*は、両配列で塩基が一致していることを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマトのANT1ゲノムDNAの塩基配列が、配列番号13に示す塩基配列の、
位置22に対応する位置の塩基としてa、
位置29に対応する位置の塩基としてt、
位置30に対応する位置の塩基としてg、
位置33に対応する位置の塩基としてt、
位置110に対応する位置の塩基としてa、
位置219に対応する位置の塩基としてt、
位置263に対応する位置の塩基としてc、
位置344に対応する位置の塩基としてt、
位置409に対応する位置の塩基としてt、
位置417に対応する位置の塩基としてc、
位置419に対応する位置の塩基としてg、
位置439に対応する位置の塩基としてc、
位置444〜445に対応する位置の塩基としてtg、
位置457に対応する位置の塩基としてa、
位置468に対応する位置の塩基としてt、
位置469に対応する位置の塩基としてt、
位置473に対応する位置の塩基としてc、
位置476に対応する位置の塩基としてt、
位置704に対応する位置の塩基としてa、
位置745に対応する位置の塩基としてa、
位置826に対応する位置の塩基としてt、
位置834に対応する位置の塩基としてc、
位置888に対応する位置の塩基としてc、
位置892に対応する位置の塩基としてa、
位置920に対応する位置の塩基としてa、
位置933に対応する位置の塩基としてt、
位置972に対応する位置の塩基としてa、
位置1017に対応する位置の塩基としてa、
位置1122に対応する位置の塩基としてa、
位置1212に対応する位置の塩基としてa、
位置1287に対応する位置の塩基としてg、
位置1337に対応する位置の塩基としてa、
位置1380に対応する位置の塩基としてg、
位置1427に対応する位置の塩基としてt、
位置1434に対応する位置の塩基としてc、
位置1469に対応する位置の塩基としてc、
位置1489に対応する位置の塩基としてc、
位置1496に対応する位置の塩基としてt、
位置1498〜1509に対応する位置の塩基としてtatttctaga、
位置1532に対応する位置の塩基としてa、
位置1589に対応する位置の塩基としてa、および
位置1598に対応する位置の塩基としてt、
から選択される少なくとも1つを有する場合、該トマトをアントシアニン産生トマトであると判別する、アントシアニン産生トマトの判別方法。
【請求項2】
トマトのANT1ゲノムDNAの塩基配列が、配列番号13または2に示す塩基配列である場合、該トマトをアントシアニン産生トマトであると判別する、アントシアニン産生トマトの判別方法。
【請求項3】
トマトのANT1ゲノムDNAを得ること、
得られたANT1ゲノムDNAをシークエンシングして塩基配列を得ること、および
得られたANT1DNAの塩基配列と配列番号13に示す塩基配列をアライメントすること、
を含む、請求項1または2に記載のトマトの判別方法。
【請求項4】
トマトのANT1ゲノムDNAを得ること、および
配列番号13に示す塩基配列の、
位置22の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置29の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置30の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置33の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置110の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置219の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置263の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置344の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置409の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置417の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置419の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置439の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置444〜445の塩基がtgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置457の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置468の塩基がtである塩基配列に特異的オリゴヌクレオチド、
位置469の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置473の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置476の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置704の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置745の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置826の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置834の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置888の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置892の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置920の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置933の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置972の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1017の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1122の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1212の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1287の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1337の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1380の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1427の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1434の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1469の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1489の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1498〜1509の塩基がatatttctagaaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1532の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1589の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、および
位置1598の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド
から選択される少なくとも1つを、プライマーとして用いて該トマトのANT1ゲノムDNAを増幅させること
を含む、請求項1または2に記載のトマトの判別方法。
【請求項5】
さらに、配列番号13に示す塩基配列の、
位置22の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置29の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置30の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置33の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置110の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置219の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置263の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置344の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置409の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置417の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置419の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置439の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置444〜445の塩基がtttctgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置457の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置468の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置469の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置473の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置476の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置704の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置745の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置826の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置834の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置888の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置892の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置920の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置933の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置972の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1017の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1122の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1212の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1287の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1337の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1380の塩基がaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1427の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1434の塩基がtである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1469の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1489の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1498〜1509の塩基がaaである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1532の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、
位置1589の塩基がgである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド、および
位置1598の塩基がcである塩基配列に特異的なオリゴヌクレオチド
から選択される少なくとも1つを、
プライマーとして用いてトマトのANT1ゲノムDNAを増幅させること
を含む、請求項4に記載のトマトの判別方法。
【請求項6】
トマトが、Solanum lycopersicum LA1996とアントシアニン非産生トマトとを掛け合わせて得られる交配トマトである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトマトの判別方法。
【請求項7】
アントシアニン非産生トマトが、Solanum lycopersicum Micro-Tom、Solanum lycopersicum M82、Solanum lycopersicum Ailsa Craig、Solanum lycopersicum nv-1、Solanum lycopersicum IRB301、Solanum lycopersicum Small Fry、Solanum lycopersicum Money Maker、Solanum lycopersicum Manapal、Solanum lycopersicum LS89、Solanum lycopersicum E6203、Solanum lycopersicum LA4013、Solanum lycopersicum LA3810、Solanum lycopersicum LA3771、Solanum lycopersicum ハウス桃太郎、Solanum lycopersicum 桃太郎コルト、Solanum lycopersicum トゥインクル、Solanum lycopersicum フルーツイエロー、Solanum lycopersicum 麗容、Solanum lycopersicum オレンジキャロル、Solanum lycopersicum スイートミニオレンジ、Solanum lycopersicum ふりこま、Solanum lycopersicum 桃太郎ヨーク、Solanum lycopersicum イエローキャロル、Solanum lycopersicum おどりこ、Solanum lycopersicum サンロード、Solanum lycopersicum ルネッサンス、Solanum lycopersicum 麗夏、Solanum lycopersicum、Solanum lycopersicum ボンデローザ、Solanum lycopersicum スーパーサンチェリー、Solanum lycopersicum Evergreenである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
配列番号7、配列番号11、配列番号14〜97の塩基配列のオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、トマトのアントシアニン産生判別用プライマー。
【請求項9】
請求項8に記載のプライマーと、配列番号6、配列番号10、配列番号98〜181の塩基配列のオリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも1つを含むプライマーセット。
【請求項10】
請求項8記載のプライマーまたは請求項9に記載のプライマーセットを含む、アントシアニン産生トマト判別用キット。

【図2−1】
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【図2−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−55855(P2009−55855A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226425(P2007−226425)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(591014710)千葉県 (49)
【出願人】(000104559)日本デルモンテ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】