説明

トラッキング制御方法

【課題】 光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に敵したトラッキング制御方法を提供する。
【解決手段】 4分割センサー1からプッシュプル方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成するプッシュプル信号生成回路5と、トラッキングコイル6に対物レンズを偏倚させるべく供給される直流電圧を検出する対物レンズ偏倚電圧検出回路7と、該対物レンズ偏倚電圧検出回路7にて検出される直流電圧に基づいてオフセット補正信号を生成するオフセット補正信号生成回路8を設け、前記オフセット補正信号生成回路8から出力されるオフセット補正信号にて前記プッシュプル信号生成回路5より出力されるトラッキングエラー信号のオフセットを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置のトラッキング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
信号記録層に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を信号記録層に照射させ、該信号記録層から反射されるレーザー光の変化を光検出器によって検出することによって行われている。
【0004】
レーザー光によって信号記録層に記録されている信号を読み出すためには、レーザー光を信号記録層に渦巻き状に設けられている信号トラックにレーザー光を追従させるトラッキング制御動作を正確に行う必要がある。
【0005】
斯かるトラッキング制御方法としては種々あるが、メインビームを使用するプッシュプル法や位相差法に加えて2つのサブビームが各々照射される2つのサブビーム用受光部とメインビームが照射されるメインビーム用受光部が組み込まれている光検出器を設け、この光検出器から得られる信号によりトラッキングエラー信号を生成させる差動プッシュプル法と呼ばれるトラッキング制御方法が一般に採用されている。(特許文献1参照。)
そして、最近では、信号記録層が1層ではなく複数、例えば4つの層が設けられている4層式の光ディスクが製品化されており、斯かる複数の信号記録層が設けられている光ディスクの各信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る光ピックアップ装置も製品化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−84415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
差動プッシュプル法によるトラッキング制御は、2つのサブビームを受光するサブビーム用受光部とメインビームを受光するメインビーム用受光部から得られる信号を利用してトラッキングエラー信号を生成しているためメインビーム用受光部のみから得られる信号を利用してトラッキング制御動作を行うプッシュプル法にて発生するオフセットの問題を解決することが出来るという利点を有している。
【0008】
しかしながら、斯かる差動プッシュプル法は、レーザービームをメインビームとサブビームに分離させる回折格子を設ける必要があるので、高価になるだけでなく光学構成が複雑になるという問題がある。
【0009】
また、前述した複数の信号記録層が設けられている光ディスクに記録されている信号の再生動作を行う場合には、信号の再生動作を行う信号記録層と異なる信号記録層から反射される反射光、即ち迷光がサブビーム用受光部に照射されてサブビームの検出動作に悪影響を与えるという問題が発生している。
【0010】
斯かる迷光による問題を解決する方法としてサブビーム用受光部の形状を八角形にする等の技術が多く提案されているが、高価になるとともに精度が要求されるという問題がある。
【0011】
斯かる問題を解決するためにメインビームのみを使用したプッシュプル方式のトラッキング制御方法を採用することが考えられるが、斯かるトラッキング制御方式は対物レンズの径方向への偏倚動作によってオフセットが発生するという問題がある。
【0012】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来るトラッキング制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光ディスクに設けられている信号記録層から反射される戻り光を受光する4分割センサーから得られる信号にてプッシュプル方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成するプッシュプル信号生成回路と、対物レンズを光ディスクの径方向に偏倚させるトラッキングコイルに対物レンズを偏倚させるべく供給される直流電圧を検出する対物レンズ偏倚電圧検出回路と、該対物レンズ偏倚電圧検出回路にて検出される直流電圧に基づいてオフセット補正信号を生成するオフセット補正信号生成回路を設け、前記オフセット補正信号生成回路から出力されるオフセット補正信号にて前記プッシュプル信号生成回路より出力されるトラッキングエラー信号のオフセットを補正するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、対物レンズ偏倚電圧検出回路にて検出される直流電圧の大きさに対応した大きさのオフセット補正信号をオフセット補正信号生成回路にて生成するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
そして、本発明は、対物レンズ偏倚電圧検出回路にて検出される直流電圧の大きさが所定値より大きいときオフセット補正信号生成回路からオフセット補正信号を出力するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明は、前記所定値がトラッキング制御動作に支障を来たすオフセット量になる大きさに設定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のトラッキング制御方法は、対物レンズを偏倚させるべくトラッキングコイルに供給される直流電圧に基づいてオフセットを補正する信号を生成するようにしたので、トラッキングエラー信号であるプッシュプル信号に含まれるオフセットを正確に補正することが出来、その結果プッシュプル方式によるトラッキング制御動作を正確に行うことが出来るという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のトラッキング制御方法を説明するための構成図である。
【図2】4分割センサーとレーザースポットとの関係を説明するための図である。
【図3】本発明のトラッキング制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
レーザーダイオードから放射されるレーザー光から1つのメインビームと2つのサブビームを生成する回折格子を不要にした光ピックアップ装置のトラッキング制御方法を提供する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明のトラッキング制御方法を説明するための実施例を示すものである。同図において、1は光ディスクの信号記録層から反射される戻り光が照射される光検出器に組み込まれている4分割センサーであり、周知のように4つの受光部A、B、C、Dにて構成されている。
【0021】
斯かる構成において、戻り光のレーザースポットSは図示したように4分割センサー1上に照射生成されるが、光ディスク上の径方向にレーザースポットが変位すると4分割センサー1上のレーザースポットSは外周側である矢印A及び内周側であるB方向に移動するように設けられている。
【0022】
2は前記4分割センサー1を構成する受光部A及び受光部Dから得られる信号を加算する第1加算回路、3は該4分割センサー1を構成する受光部B及び受光部Cから得られる信号を加算する第2加算回路、4は前記第1加算回路2から得られる信号から第2加算回路3から得られる信号を減算する減算回路であり、その出力端子にプッシュプル方式のトラッキング制御方法に使用されるプッシュプル信号を出力するように構成されている。即ち、前記第1加算回路2、第2加算回路3及び減算回路4にて前記プッシュプル信号を生成するプッシュプル信号生成回路5を構成するように構成されている。
【0023】
従来のプッシュプル方式によるトラッキング制御動作は、前記プッシュプル信号生成回路5から出力されるトラッキングエラー信号に基づいて生成されるトラッキング制御信号を対物レンズを光ディスクの径方向へ変位させるべく設けられているトラッキングコイルに供給することによって行うように構成されている。
【0024】
図2は、前記4分割センサー1を構成する受光部A、B、C、DとレーザースポットSとの位置関係を説明するものであり、図2の(A)は4分割センサー1の中央部にスポットSが位置した状態である。
【0025】
斯かる図2の(A)に示す状態は、対物レンズを径方向に偏倚させる直流電圧がトラッキングコイルに供給されていない状態を示すものであり、斯かる状態にてプッシュプル信号生成回路5から得られるトラッキングエラー信号にはオフセットが発生することはない。従って、トラッキングエラー信号に基づいて対物レンズの径方向への周知の変位制御動作が行われ、プッシュプル方式によるトラッキング制御動作を正確に行うことが出来る。
【0026】
斯かる状態にてトラッキング制御動作が行われるが、トラッキング制御動作によってレーザースポットが信号トラックを追従する動作を行うとトラッキングコイルに対物レンズを光ディスクの外周方向へ偏倚させるための駆動信号、即ち直流電圧が供給されることになる。斯かるトラッキングコイルに供給される直流電圧の値は、徐々に大きくなり、対物レンズの偏倚動作によって信号トラックに対するレーザースポットの追従動作が行えない状態になると光ピックアップ装置がスレッド機構と呼ばれるピックアップ移動機構によって外周方向に変移せしめられるように構成されている。
【0027】
斯かる対物レンズの偏倚動作及びスレッド機構による光ピックアップ装置の移動動作を繰り返し行うことによってレーザースポットを信号トラックに追従させるトラッキング制御動作が行われるが、斯かる動作は周知であるのでその説明は省略する。
【0028】
図2の(B)は、対物レンズがトラッキングコイルへの直流電圧の供給動作によって光ディスクの外周側へ偏倚せしめられた状態における4分割センサー1に対するスポットSの位置関係を示すものであり、同図より明らかなようにレーザースポットSは4分割センサー1の中央部から矢印A方向に変位せしめられる。
【0029】
斯かる状態において、プッシュプル信号生成回路5から生成されるトラッキングエラー信号を利用してプッシュプル方式によるトラッキング制御動作が行われるが、図2の(B)に示すようにスポットSが矢印A方向にずれた状態においてトラッキングエラー信号の生成動作が行われることになる。その結果、トラッキングエラー信号の生成に使用される第1加算回路2と第2加算回路3より得られる信号間に大きなレベル差が生じることになり、このレベル差がオフセットとなり、トラッキング制御動作を正確に行えないという問題が発生することになる。
【0030】
本発明は、このようにして発生するオフセットを補正することが出来るトラッキング制御方法を提供しようとするものである。図3は対物レンズの光ディスクの径方向への偏倚量とオフセット量との関係を示すものであり、同図より明らかなように対物レンズの偏倚量に比例してオフセット量が増大することが分かる。
【0031】
対物レンズの偏倚動作はトラッキングコイルに直流の駆動電圧を供給することによって行われるので、直流電圧の値を検出することによって対物レンズの偏倚量を検出することが出来る。従って、トラッキングコイルに供給される直流電圧を検出することによってオフセット量を検出することが出来ることになる。本発明は、斯かる特性を利用して対物レンズの偏倚に起因して発生するオフセットを補正しようとするものであり、次に斯かる点について説明する。
【0032】
図1において、6は対物レンズを光ディスクの径方向へ変位させるトラッキングコイルであり、対物レンズを径方向へ偏倚させる直流電圧及び対物レンズを高速にて変位させる高周波信号が供給されるように構成されている。7は前記トラッキングコイル6に供給される直流電圧、即ち偏倚電圧を検出する対物レンズ偏倚電圧検出回路であり、検出される偏倚電圧に応じた直流電圧を出力するように構成されている。
【0033】
8は前記対物レンズ偏倚電圧検出回路7から出力される直流電圧が入力されるオフセット補正信号生成回路であり、直流電圧の値に応じたオフセット補正信号を生成出力するように構成されている。即ち、図3に示した特性図にて説明したように対物レンズの偏倚量に対するオフセット量は比例関係にあり、且つ対物レンズの偏倚量はトラッキングコイル6へ供給される直流電圧の大きさによって設定されるので、直流電圧に対するオフセット量は直流電圧を検出することによって検出することが出来る。従って、前記オフセット補正信号生成回路8からトラッキングコイル6に供給される直流電圧の値に応じたオフセット補正信号を生成出力することが出来る。
【0034】
9は前記プッシュプル信号生成回路5から生成されるトラッキングエラー信号及び前記オフセット補正信号生成回路8から出力されるオフセット補正信号が入力されるトラッキング制御信号生成回路であり、前記前記プッシュプル信号生成回路5から生成されるトラッキングエラー信号に含まれるオフセットを前記オフセット補正信号生成回路8から出力されるオフセット補正信号にて補正したトラッキング制御信号を生成出力するように構成されている。
【0035】
10は前記トラッキング制御信号生成回路9から出力されるトラッキング制御信号が入力されるトラッキングコイル駆動信号生成回路であり、トラッキングコイル6に対して偏倚電圧である直流信号及びトラッキング制御信号生成回路9から供給される高周波信号であるトラッキング制御信号に応じた高周波の駆動信号を供給するように構成されている。
【0036】
斯かる構成において、前記4分割センサー1を構成する受光部A及びDから得られる信号を加算した信号から受光部B及びCから得られる信号を加算した信号を減算回路4にて減算することによってトラッキングエラー信号の生成動作が行われるが、光ディスクに設けられている信号トラックに対するトラック追従動作が行われると、トラッキングコイル駆動信号生成回路10から対物レンズを外周側へ偏倚させるための直流信号が供給されることになる。対物レンズを外周側へ偏倚させる動作はスレッドと呼ばれる光ピックアップ装置の本体を径方向へ移動させる機構による送り動作が行われるまで行われるが、斯かる動作は周知であるので、その説明は省略する。
【0037】
前述したように直流信号がトラッキングコイル6に供給されると、対物レンズが外周側へ偏倚されるが、斯かる対物レンズの偏倚動作によって4分割センサー1上に生成されるレーザースポットSが矢印A方向へ変位することになる。そして、トラック追従動作が行われることによって対物レンズの偏倚動作は前述したように行われるが、その偏倚量は徐々に大きくなり、その大きさに比例してレーザースポットSの矢印A方向への変位量も次第に大きくなる。
【0038】
そして、レーザースポットSが矢印A方向へ変位すると前述したようにプッシュプル信号生成回路5から出力されるトラッキングエラー信号にオフセットが発生することになる。しかしながら、本発明では、トラッキングコイル6に供給される偏倚電圧である直流電圧に応じたオフセット補正信号がオフセット補正信号生成回路8から生成出力され、斯かるオフセット補正信号によって前記プッシュプル信号生成回路5から出力されるトラッキングエラー信号に含まれるオフセットを補正する動作が行われる。
【0039】
前記オフセット補正信号生成回路8から前記プッシュプル信号生成回路5から出力されるトラッキングエラー信号に含まれるオフセットを補正する補正信号が出力される結果、トラッキング制御信号生成回路9からオフセットが補正されたトラッキング制御信号が出力されることになる。斯かるオフセットが補正されたトラッキング制御信号がトラッキングコイル駆動信号生成回路10に入力されるので、該トラッキングコイル駆動信号生成回路10からトラッキングコイル6に対してトラッキング制御動作を行うために適した駆動信号が供給される。従って、本発明によれば対物レンズの偏倚に起因して発生するオフセットによる影響を排除したトラッキング制御動作を行うことが出来る。
【0040】
尚、本実施例では、対物レンズ偏倚電圧検出回路7にて検出される直流電圧に応じたオフセット補正信号をオフセット補正信号生成回路8から出力するように構成したが、トラッキング制御動作に悪影響を与える大きさのオフセット量が発生する大きさに偏倚電圧が達したときにオフセット補正信号生成回路8からオフセット補正信号を生成出力させるように構成することも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、Blu−ray規格の光ディスクのように複数の信号記録層が近接して設けられている光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に有効であるが、その他の規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に実施することも出来る。
【符号の説明】
【0042】
1 4分割センサー
5 プッシュプル信号生成回路
6 トラッキングコイル
7 対物レンズ偏倚電圧検出回路
8 オフセット補正信号生成回路
9 トラッキング制御信号生成回路
10 トラッキングコイル駆動信号生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに設けられている信号記録層から反射される戻り光を受光する4分割センサーを備えているとともに対物レンズを光ディスクの径方向へ変位させるトラッキングコイルを備えた光ピックアップ装置のトラッキング制御方法であり、前記4分割センサーからプッシュプル方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成するプッシュプル信号生成回路と、前記トラッキングコイルに対物レンズを偏倚させるべく供給される直流電圧を検出する対物レンズ偏倚電圧検出回路と、該対物レンズ偏倚電圧検出回路にて検出される直流電圧に基づいてオフセット補正信号を生成するオフセット補正信号生成回路を設け、前記オフセット補正信号生成回路から出力されるオフセット補正信号にて前記プッシュプル信号生成回路より出力されるトラッキングエラー信号のオフセットを補正するようにしたことを特徴とするトラッキング制御方法。
【請求項2】
対物レンズ偏倚電圧検出回路にて検出される直流電圧の大きさに対応した大きさのオフセット補正信号をオフセット補正信号生成回路にて生成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のトラッキング制御方法。
【請求項3】
対物レンズ偏倚電圧検出回路にて検出される直流電圧の大きさが所定値より大きいときオフセット補正信号生成回路からオフセット補正信号を出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のトラッキング制御方法。
【請求項4】
所定値がトラッキング制御動作に支障を来たすオフセット量になる大きさであることを特徴とする請求項3に記載のトラッキング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−226796(P2012−226796A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91946(P2011−91946)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】