説明

トラック荷台昇降用ステップ

【課題】トラック荷台のあおりを水平状態に倒した状態で立て掛けても、滑ったりすることなく、安全に自己保持させることができ、梯子があおりの支持脚として水平に倒したあおりを支えることにもなり、あおりの荷重受け強度を増すこともできるトラック荷台昇降用ステップを提供する。
【解決手段】両側一対の支柱1に踏み桟3aを適宜間隔で取り付けてなる梯子本体3の各支柱1に、水平に倒したトラック荷台のあおりR端を上下から挟み込む圧接片による掴み機構7を設ける。また、支柱1は下部に2箇所、2重構造の伸縮部(下部伸縮部22および上部伸縮部23)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック荷台の所要箇所に立て掛けて使用される梯子としてのトラック荷台昇降用ステップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業員が、トラックの荷台での作業のために荷台部に対し昇り降りしたり、荷台部から小荷物等を持っておりたりするための昇降用ステップに関するものである。
【0003】
トラックの荷台専用の梯子としてのトラック荷台昇降用ステップとしては、両側一対の支柱に踏み桟を適宜間隔で取り付けてなる普通の梯子に代わるものとして、下記特許文献のものがある。普通の梯子をトラックの荷台部の所要箇所、例えば、荷台部に取り付けてあるあおりにそのまま立て掛けて使用する場合、梯子があおりから滑り易いため、梯子を昇り降りする作業者以外の他の作業者等がその梯子を保持しなければならず、非常に面倒であったのを、立て掛けても、滑ったりすることなく、安全に自己保持させることができるものとされる。
【特許文献1】特開2005−48381号公報
【0004】
これは図16に示すように、トラック用昇降梯子Aは、両側一対の支柱1、1に踏杆2を所要間隔おきに横架してなる梯子3と、この梯子3の片側の支柱1に取り付けられる手摺4と、梯子3の両支柱1、1の夫々上部側に設けられ、トラックの荷台部5の立て掛け箇所に掛止される掛止具6から構成される。
【0005】
梯子3の各支柱1は、図示は省略するが、支柱本体と、この支柱本体の下端部に伸縮調整自在に連結される伸縮部材とから構成され、伸縮部材の下端部には接地ベース9が枢着されている。接地ベース9の底面には滑り止めが施されている。
【0006】
掛止具6は、梯子3の各支柱1に一端部を枢着された回動自在な回動板10と、この回動板の先端部に固着された略L字状の掛止具本体11と、梯子3が所定の傾斜角度の立て掛け姿勢にある時に掛止具本体11を支柱1から前方へ水平に突出した掛止位置に保持する掛止位置保持手段と、掛止具本体11を支柱1側に退避した退避位置に保持する退避位置保持手段とによって構成される。
【0007】
使用方法について説明すると、昇降梯子Aの使用にあたって、トラック荷台部5のあおりRを倒した状態でそのあおりRの基端部37に昇降梯子Aを立て掛けて使用する場合は、梯子3を地面Gに対して所定傾斜角度になるように前傾させながら、掛止具6の掛止具本体11を荷台部5に枢着されているあおりRの基端部37に掛止させる。
【0008】
あおりRが荷台部5に対し起立させてあって、このあおりRに立設された手摺38の上端部に昇降梯子Aを立て掛けて使用する場合にも、同様に、掛止具6の掛止具本体を手摺38の上横枠に掛止させる。
【0009】
このように昇降梯子Aをトラック荷台部5の所要箇所に立て掛けて使用する際には、梯子3の両支柱1、1の夫々上部側に設けた掛止具6が、トラック荷台部5の立て掛け箇所、即ち図16の例ではあおりRの基端部37、また手摺38の上横枠に掛止されて、自己保持されるから、作業者が梯子3を保持する必要がなく、従って昇降梯子Aの使用に余分な作業員を必要とせず、昇降梯子Aを安全に使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
トラック荷台のあおりは、荷の積み下ろし等の際に水平状態に倒した状態とすることができると、あおり上を作業員が載る作業スペースとして使用でき、荷台いっぱいに荷を積む場合に便利である。
【0011】
しかし前記図16に示す従来例は、掛止具6は略L字状の掛止具本体を引っ掛けるもので、トラック荷台のあおりを立てた状態か、もしくはこの立てた状態から180°折り畳んで倒した状態での使用であり、水平状態に倒した場合には、引っ掛ける箇所がなく使用ができなかった。
【0012】
本発明は前記従来例の不都合を解消し、トラック荷台のあおりを水平状態に倒した状態で立て掛けても、滑ったりすることなく、安全に自己保持させることができ、梯子があおりの支持脚として水平に倒したあおりを支えることにもなり、あおりの荷重受け強度を増すこともできるトラック荷台昇降用ステップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明はトラック荷台の所要箇所に立て掛けて使用される梯子としてのトラック荷台昇降用ステップであって、両側一対の支柱に踏み桟を適宜間隔で取り付けてなる梯子の各支柱に、水平に倒したトラック荷台のあおり端を上下から挟み込む圧接片による掴み機構を設けたことを要旨とするものである。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、梯子の各支柱に設けた上下から挟み込む圧接片による掴み機構で水平に倒したトラック荷台のあおり端を上下から挟み込んで取り付くので、梯子があおりの支持脚として水平に倒したあおりを支えることにもなり、しっかりと安定した状態で梯子掛けができ、また、あおりの荷重受け強度を増すこともできる。
【0015】
請求項2記載の本発明は、支柱は、支柱本体に対して、下部伸縮杆を入れ子状に摺嵌する下部伸縮部を有することを要旨とするものである。また、請求項3記載の本発明は、下部伸縮杆には大き目の略正方形の角孔を間隔を存して縦列に形成し、支柱本体にはこの角孔に嵌まる係止角部を有するボックス形の係止部材をバネにより付勢してなる下部固定金具を設けたこと、請求項4記載の本発明は、支柱は、支柱本体に対して、上部伸縮杆を入れ子状に摺嵌する上部伸縮部を有することを要旨とするものである。
【0016】
請求項2および請求項4記載の本発明によれば、支柱は、下部または上部を伸縮部とすることで、先に支柱下端を接地させて、支柱自体を伸ばし、挟み込み機構をあおり位置まで合わせることができる。また、逆に、先に挟み込み機構であおり端を挟み込んでから支柱自体を伸ばし、支柱下端を接地させることもできる。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、下部伸縮部下部伸縮杆は支持脚となるので、安全性を重視し、大き目の略正方形の角孔にボックス形の係止部材の係止角部を嵌めることで支柱本体に対して係止の確実性を期するものであり、係止の段階が細か過ぎ、不十分となることもなくなる。
【0018】
請求項5記載の本発明は、掴み機構は、上部伸縮杆の途中に設け、踏み桟はこの上部伸縮杆の掴み機構より上には設けず、掴み機構より上方は昇降の際の手掛かり部として構成することを要旨とするものである。
【0019】
請求項5記載の本発明によれば、前記従来例のような手摺を設けることがなくてすむものであり、支柱上部を昇降の際の手掛かり部として利用することで、手摺がなくても安全に昇降できる。
【0020】
請求項6記載の本発明は、掴み機構は、固定片と、ラチェット機構による係止手段を備えた可動片からなること、請求項7記載の本発明は掴み機構は、ペンチ式の両可動片からなることを要旨とするものである。
【0021】
請求項6および請求項7記載の本発明は、水平に倒したトラック荷台のあおり端を上下から挟み込む圧接片による掴み機構の具体例を提供するものであり、ラチェット機構やペンチ機構で確実に挟み込みが実現できる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明のトラック荷台昇降用ステップはトラック荷台のあおりを水平状態に倒した状態で立て掛けても、滑ったりすることなく、安全に自己保持させることができ、梯子があおりの支持脚として水平に倒したあおりを支えることにもなり、あおりの荷重受け強度を増すこともできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のトラック荷台昇降用ステップの第1実施形態を示す側面図であり、図2は同上正面図である。
【0024】
本発明のトラック荷台昇降用ステップは、一対の支柱1、1間に複数の踏み桟3aを適宜間隔で取り付けてなる梯子3と、トラック荷台のあおりRの端を上下から挟み込む掴み機構7とにより構成する。
【0025】
梯子3は、支柱1を中空角柱状の支柱本体1aに対して、入れ子状に摺嵌する下部伸縮杆22aと入れ子状に摺嵌する上部伸縮杆23aとにより、上部および下部の2箇所において、2重構造の伸縮可能部を備える(下部伸縮部22、上部伸縮部23)。
【0026】
下部伸縮部22、上部伸縮部23は、下部伸縮杆22a、上部伸縮杆23aを支柱本体1aに対して固定する後述の下部固定金具および上部固定金具を備える。
【0027】
なお、支柱本体1aの内側は、後述の下部伸縮杆22aの角孔および上部伸縮杆23aの丸孔を露出させるため、長手方向に沿うスリットにより開口させる。
【0028】
上下の各伸縮可能部のうち、先に上部伸縮部23について説明する。図3に示すように、上部伸縮部23を構成する上部伸縮杆23aには長孔24を縦方向に設け、さらにその下側に丸孔25を適宜間隔で縦列に形成した。
【0029】
図4に示すように、前記掴み機構7は上部伸縮杆23aに設け、上部開口から挿入して摺嵌した上部伸縮杆23aを位置決め固定する上部固定金具13を支柱本体1aに設ける。
【0030】
上部伸縮杆23aはチャンネル状または角管形状に形成するとともに、外管としての支柱本体1aに対して内管となり、四隅の角部を外側にリブ状に突出させ、突出部40を形成する。この突出部40およびその近傍の部分は、他の側壁部分よりも肉厚に形成する。
【0031】
一方、支柱本体1aには、角部の内側に前記突出部40に対応する溝条41を形成する。これにより、外管となる支柱本体1aの内部に内管となる上部伸縮杆23aを挿入した状態で、支柱本体1aの内側面と、上部伸縮杆23aの外側面との間に隙間42が形成される。
【0032】
さらに、支柱本体1aの角部、すなわち前記突出部40に対応する箇所およびその近傍を肉厚に形成することで、この箇所の外側に突出部43を形成する。同様に、支柱本体1aの角部を覆うハウジング16の角部を肉厚に形成することで、この箇所の外側に突出部43aを形成する。
【0033】
このようにすることで、支柱本体1aと上部伸縮杆23aとの間に砂やゴミなどの異物を挟み込んでも、異物は前記隙間42を通って排出されるから、カジリが起こることがなく、上部伸縮杆23aがスライドしなくなるおそれがない。
【0034】
さらに、作業現場で、運搬物や工具などが支柱本体1aにぶつかっても、ぶつかりやすい外側角部には突出部43を設けて肉厚部に形成してあるから変形しにくく、また、変形しても変形が内側の上部伸縮杆23aにまでおよぶことがないから、支柱本体1aの変形によって上部伸縮杆23aがスライドしなくなることがない。
【0035】
そして、支柱本体1aに対して上部伸縮部23を引出し、または押し込むとき、上部伸縮部23に形成してある突出部40が、支柱本体1aに形成してある溝条41に嵌合しているから、突出部40と溝条41とがガイドとして作用し上部伸縮杆23aのスライド方向が規制される。よって、上部伸縮杆23aのスライドがスムーズに行える。
【0036】
なお、図示は省略するが、このような構成は支柱本体1aに対して、入れ子状に摺嵌する下部伸縮杆22aによる下部伸縮部22においても同様であり、下部伸縮杆22aは上部伸縮杆23aと同様の突出部40を有するものとした。
【0037】
図5および図6にも示すように、上部固定金具13は、係止部材20、コイルバネ14およびこれらを収容して支柱本体1aの内側に固定するハウジング16とにより構成する。
【0038】
係止部材20は、支柱1の内側側面に対峙する縦長板状のバネ受け部20eの両側面に側壁板20dを設けて断面コの字型とし、更に、バネ受け部20eの上端を支柱1の内側側面に対して垂直に屈曲させた後に上方に立ち上げて、先端が上向きに屈曲するL字型のレバー18を形成し、バネ受け部20eにはナット20bを介してボルト締めすることにより係合突起20aを外側に向けて複数段設けた。
【0039】
この係止部材20を収容するハウジング16は、断面コの字型の形状によって係止部材20の側壁板20dを両外側から挟み、更にその両端を支柱本体1aの形状に沿って屈曲させて支柱本体1aを前後方向から挟んだ状態で、上下の螺子30によって支柱本体1aに固着する。
【0040】
そして、両端を直線状に形成するとともに更にその先端を巻回させるコイルバネ14を、両端を上向きにして係止部材20の側壁板20d間に配置し、一端を係止部材20のバネ受け部20eに当接させ、他端をハウジング16の内側側面に当接させた状態で、ハウジング16および側壁板20dを左右方向に貫通するボルト32または軸により環状部分を受支させてコイルバネ14を係止部材20に取り付ける。
【0041】
図13に示すように前記係合突起20aが嵌入する丸孔25を上部伸縮杆23aに形成する。この丸孔25は係合突起20aが複数(図示では2個)なので、それに応じて複数設けるが、支柱本体1aに対して上部伸縮部23の伸長は一段のみの係止でよい。係合突起20aを複数としたのは、上部伸縮部23の係止の確実性を期するためである。
【0042】
次に、下部伸縮部22では、下部伸縮杆22aは図7に示すように、内側側面に比較的大き目の略正方形の角孔26を比較的間隔を存して(例えば角孔26の1.5から2個分)縦列に形成し、下端に、滑り止めの溝加工を施し、さらに、接地し易く傾斜下面とした樹脂脚端27を被せ、ボルト等で取り付ける。そして図11に示すように、下部開口から挿入して摺嵌した下部伸縮杆22aを位置決め固定する下部固定金具12を支柱本体1aに設けた。
【0043】
下部固定金具12は、係止部材21、コイルバネ15およびこれらを収容して支柱本体1aの内側に固定するハウジング17とにより構成する。
【0044】
係止部材21は、図8にも示すように、支柱1の内側側面に対峙する縦長板状のバネ受け部21dに側壁板21bを設けて断面コの字型のボックス形とし、更に、バネ受け部21dの下側を内側に向けて折り返すように鋭角に屈曲させて前記角孔26に嵌る係止角部21aを形成し、その後更に下向きに垂下させてL字型のレバー19を形成する。また、2枚の側壁板21bの上部にはボルト孔21cを設ける。
【0045】
なお、バネ受け部21dの長さや形状は、コイルバネ15が安定して当接し、且つ、側壁板21bを保持できるものであれば足り、図のように中央部に切り欠き21eを設けるようにしても良い。これにより、係止部材21内に入った砂などは、切り欠き21eから外に排出することができる。
【0046】
この係止部材21を収容するハウジング16は、断面コの字型の形状によって係止部材21の側壁板21bを両外側から挟み、更にその両端を支柱本体1aの形状に沿って屈曲させて支柱本体1aを前後方向から挟んだ状態で、上下を螺子止めすることにより支柱本体1aに固着する。
【0047】
コイルバネ15は図9および図10に示すように、両端を直線状に形成するとともに更にその先端を屈曲させて形成する。その屈曲方向は、バネ受け部側端15aにおいては内側方向、ケーシング側端15bにおいてはコイルバネ15の幅方向である。
【0048】
そして、コイルバネ14を両端を下向きにして係止部材21の側壁板21b間に配置し、バネ受け部側端15aを係止部材21のバネ受け部21dに当接させ、他端をハウジング17の内側側面に当接させた状態で、ハウジング17および側壁板21bを左右方向に貫通するボルト33または軸により環状部分を受支してコイルバネ15を係止部材21に取り付ける。
【0049】
このようにして上下2箇所に下部伸縮部22、上部伸縮部23を形成した各支柱1に、水平状態に倒したトラック荷台のあおりRの端を挟み込む掴み機構7を設ける。この掴み機構7は上部伸縮杆23aに設けるものとする。
【0050】
図12に示すように、掴み機構7は、固定片である上部圧接片28と、その下側に位置する上下可動の下部圧接片29からなる。
【0051】
上部圧接片28は、上下2箇所の螺子31により上部伸縮杆23aの両側面に固着される基部28aに、上部伸縮杆23aの前方に張り出してあおりの上面に圧接する顎部28bを一体的に構成する。
【0052】
下部圧接片29は、上部伸縮杆23aの外周を取り囲む基部29cに、上部伸縮杆23aの前方に張り出す顎部29dを一体的に構成し、基部29cに上部伸縮杆23aの長孔24に係合するピン34を取り付けた。
【0053】
また、基部29cの背面下端を後方下向きに突出させて、下部圧接片29下側を前後に動かすレバー29aとする。さらに、基部29cの背面内側の下部に、2箇所において互いに逆方向に屈曲する板バネ36の上側を貼着し、上部伸縮杆23a背面の上下に沿って設ける窪み段部23cに板バネ36の下側を押し当てるように配置して、上部伸縮杆23aと基部29c下側とを互いに離間方向に付勢する。すなわち、板バネ36によって、下部圧接片29の下側を後方に付勢する。
【0054】
また、顎部29dの下面を金属板により構成し、上部伸縮杆23a側端において金属板の切り口をむき出しにして、上部伸縮杆23aの前面に設けるラチェット歯35に係止する係止断部29bとする。ラチェット歯35は下部圧接片29の下方への移動を許容する。上部圧接片28および下部圧接片29の、トラック荷台のあおりへの当接面は、あおりを傷つけないようゴム板28d、29eを貼り付ける。
【0055】
なお、上部伸縮杆23aの掴み機構7より上の部分は、昇降の際の手掛かり部23bとして機能する部分であり、上部圧接片28のあおりRへの当接面から上部伸縮杆23a上端までの長さを60cm以上とし、この部分には踏み桟3aは設けないようにする。
【0056】
また、上部伸縮杆23a両側面のラチェット歯35下端に対応する箇所には、上部伸縮杆23aがこれ以上支柱本体1aの中に入ってしまってラチェット歯35が隠れてしまうことが無いよう、支柱本体1a上端に当接してストッパーとして機能する突起39をボルト締めして取りつける。
【0057】
次に、動作について説明する。まず、水平に倒したトラック荷台のあおりRの上面に上部圧接片28を当て、昇降用ステップを掛ける位置を決める。その後、レバー29aを押し込むことにより、板バネ36の付勢力に抗して下部圧接片29の下側を前方に移動させ、係止段部29bとラチェット歯35との係止を解除する。これにより可動片である下部圧接片29は長孔24に沿って上下に移動可能となり、あおりRへ当接する位置まで下部圧接片29を移動させる。
【0058】
レバー29aを放すと係止段部29bが再びラチェット歯35に係止して、掴み機構7によりあおりRを上下から挟み込んだ状態で下部圧接片29が位置決め固定される。あおりRの一般的な厚みは40mm以上60mm以下であり、少なくともこの範囲で下部圧接片29を上下移動可能とするように、長孔24の長さを設定する。
【0059】
次に、上部伸縮部23および下部伸縮部22を伸縮させて、支柱1の長さを地面からあおりRまでの高さに対応させて調節する。
【0060】
上部伸縮部23を伸縮させる際には、図13に示すように、まず上部固定金具13のレバー18をコイルバネ14の付勢力に抗して内側へ移動させ、上部伸縮杆23aの丸孔25と係合突起20aとの係合を解除する。その後、支柱本体1aに対して上部伸縮杆23aを上下動させ、適当な位置まで移動したらレバー18を放す。
【0061】
これにより、バネ受け部20eがコイルバネ14によって支柱1側に付勢され、係合突起20aは再び丸孔25に係合し、支柱本体1aに対して上部伸縮杆23aが位置決め固定される。
【0062】
上部伸縮部23の伸縮のみでは支柱1の長さ調節が不充分である場合には、更に下部伸縮部22を伸縮させるため、図14に示すように、下部固定金具12のレバー19をコイルバネ15の付勢力に抗して内側へ移動させ、下部伸縮杆22aの角孔26への係止段部21aの係止を解除する。
【0063】
その後、支柱本体1aに対して下部伸縮杆22aを上下動させ、適当な位置まで移動したらレバー19を放す。これにより、バネ受け部21dがコイルバネ15によって支柱1側に付勢され、係止角部21aは再び角孔26に係止し、支柱本体1aに対して上部伸縮杆23aが位置決め固定される。
【0064】
このようにして、掴み機構7をあおりRの厚みに容易に対応させて掴み、また、掴み機構7の下部に備える2箇所の伸縮部(下部伸縮部22、上部伸縮部23)によって、掴み位置をあおりRの高さに容易に合わせることができ、効率良く昇降用ステップを掛けて取り付けることができる。
【0065】
また、トラック荷台の上で作業をする際に水平に倒したあおりRの上を人が移動する場合も、その荷重は下部圧接片29とラチェット歯35を介して支柱1によって支えられるので、安全に作業を行うことができる。
【0066】
さらに手掛かり部23bには踏み桟3aがないので、踏み桟3aがあおりRよりも上側に位置してステップの昇降の邪魔になることがなく、充分な長さを有する手掛かり部23bを掴んで安全かつスムーズに昇降することができる。
【0067】
なお、他の実施形態として、図15に示すように掴み機構8をペンチ式に構成するようにしてもよい。
【0068】
図15は本発明のトラック荷台昇降用ステップの第2実施形態を示す側面図であり、掴み機構8は支柱1の後方に向けて取り付けられる握り部8aと、支柱1の前方に張り出す上部圧接片8bおよび下部圧接片8cを備える。
【0069】
握り部8aは上下二股に分かれ、バネなどにより、互いに離間する方向に付勢する。すなわち、上部圧接片8bと下部圧接片8cとが互いに近接する方向に付勢する。
【0070】
あおりRから掴み機構8を放すには、バネなどによる付勢力に抗して上下二股に分かれる握り部8aを握って近接させ、上部圧接片8bと下部圧接片8cとを互いに離間方向に移動させる。
【0071】
掴み機構8によりあおりRを掴むには、逆に握り部8aを放すと、バネなどによる付勢力により上部圧接片8bと下部圧接片8cとが互いに近接方向に移動して、あおりRを上下から挟持して掴むことができる。
【0072】
このように掴み機構8を、上部圧接片8bと下部圧接片8cとの両可動片によるペンチ式とすることにより、掴み機構8をあおりRの高さや厚みに柔軟に対応可能とすることができる。この場合も、あおりRにかかる荷重は下部圧接片8cを介して支柱1によって支えられるので、トラック荷台の上で作業をする際に水平に倒したあおりRの上を人が移動する場合も、安全に作業を行うことができる。
【0073】
また、二股に分かれる握り部8aの下側を、更に二股に分かれるペンチ式に構成して、これにより下部圧接片8cを単独で動かせるようにしてもよい。
【0074】
このようにすることで、例えば本発明の昇降用ステップを常に同じトラックに積んで使用する場合など、地面から同じ高さのあおりRに対して連続して本発明の昇降用ステップを使用する場合、掴み機構8の高さを一定にしたまま下部圧接片8cのみを上下動させるだけであおりRを掴み、昇降用ステップを効率良く取りつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のトラック荷台昇降用ステップの第1実施形態を示す全体側面図である。
【図2】本発明のトラック荷台昇降用ステップの第1実施形態を示す全体正面図である。
【図3】上部伸縮部の側面図である。
【図4】上部固定金具とその付近を示す正面図である。
【図5】上部固定金具とその付近を示す横断平面図である。
【図6】上部固定金具とその付近を示す側面図である。
【図7】下部伸縮部の側面図である。
【図8】下部係止部材の正面図である。
【図9】下部固定金具に使用するコイルバネの正面図である。
【図10】下部固定金具に使用するコイルバネの平面図である。
【図11】下段の伸縮部を示す正面図である。
【図12】掴み機構を示す側面図である。
【図13】上部固定金具のロックを解除した状態を示す正面図である。
【図14】下部固定金具のロックを解除した状態を示す正面図である。
【図15】本発明のトラック荷台昇降用ステップの第2実施形態を示す側面図である。
【図16】従来のトラック用昇降梯子を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
A 昇降梯子 R あおり
G 地面
1 支柱 1a 支柱本体
2 踏杆 3 梯子
3a 踏み桟 4 手摺
5 荷台部 6 掛止具
7、8 掴み機構 8a 握り部
8b 上部圧接片 8c 下部圧接片
9 接地ベース 10 回動板
11 掛止具本体 12 下部固定金具
13 上部固定金具 14、15 コイルバネ
15a バネ受け部側端 15b ケーシング側端
16、17 ハウジング 18、19 レバー
20 係止部材 20a 係合突起
20b ナット 20d 側壁板
20e バネ受け部 21 係止部材
21a 係止角部 21b 側壁板
21c ボルト孔 21d バネ受け部
21e 切り欠き
22 下部伸縮部 22a 下部伸縮杆
23 上部伸縮部 23a 上部伸縮杆
23b 手掛かり部 23c 窪み段部
24 長孔 25 丸孔
26 角孔 27 樹脂脚端
28 上部圧接片 28a 基部
28b 顎部 28d ゴム板
29 下部圧接片
29a レバー 29b 係止段部
29c 基部 29d 顎部
29e ゴム板 30、31 螺子
32、33 ボルト 34 ピン
35 ラチェット歯 36 板バネ
37 基端部 38 手摺
39 突起
40 突出部 41 溝条
42 隙間 43、43a 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック荷台の所要箇所に立て掛けて使用される梯子としてのトラック荷台昇降用ステップであって、両側一対の支柱に踏み桟を適宜間隔で取り付けてなる梯子の各支柱に、水平に倒したトラック荷台のあおり端を上下から挟み込む圧接片による掴み機構を設けたことを特徴とするトラック荷台昇降用ステップ。
【請求項2】
支柱は、支柱本体に対して、下部伸縮杆を入れ子状に摺嵌する下部伸縮部を有する請求項1記載のトラック荷台昇降用ステップ。
【請求項3】
下部伸縮杆には大き目の略正方形の角孔を間隔を存して縦列に形成し、支柱本体にはこの角孔に嵌まる係止角部を有するボックス形の係止部材をバネにより付勢してなる下部固定金具を設けた請求項2記載のトラック荷台昇降用ステップ。
【請求項4】
支柱は、支柱本体に対して、上部伸縮杆を入れ子状に摺嵌する上部伸縮部を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のトラック荷台昇降用ステップ。
【請求項5】
掴み機構は、上部伸縮杆の途中に設け、踏み桟はもこの上部伸縮杆の掴み機構より上には設けず、掴み機構より上方は昇降の際の手掛かり部として構成する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のトラック荷台昇降用ステップ。
【請求項6】
掴み機構は、固定片と、ラチェット機構による係止手段を備えた可動片からなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のトラック荷台昇降用ステップ。
【請求項7】
掴み機構は、ペンチ式の両可動片からなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のトラック荷台昇降用ステップ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−2108(P2008−2108A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170991(P2006−170991)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(597144484)ジーオーピー株式会社 (50)
【Fターム(参考)】