説明

トラップ装置

【課題】 ガス流入口近傍以外の箇所における固形物の蓄積を促進させることにより、装置の使用時間を延ばし、かつ、固形物の収集効率を向上させる。
【解決手段】 両端に開口を有した円筒形状の容器22の一方の開口がガス流入口24として、他方の開口がガス流出口26として用いられる。容器の内部のガス流入口とガス流出口との間に、排気経路に接続されるガスの流路が形成されている。この流路は、螺旋状に延在する主流路と、この主流路の一部から分岐して当該主流路の他の部分に接続する副流路とで構成される。主流路は、容器内部の円筒形状の軸体28の表面に接続された薄板30によって形成される。副流路は、薄板の所定の位置に形成された開口32によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空ポンプにより排気される気密容器の排気経路に配置される、ガスの混合によって生じる固形物を除去するためのトラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造用のプラズマCVD装置では、気密容器内でのプラズマCVDプロセスによってa−Si膜やSiN膜などを基板に成膜する。しかし、基板以外の気密容器内壁などにも薄膜が堆積されてしまう。通常、この薄膜を除去するため、NF3 を用いて気密容器内のプラズマクリーニングが行われる。このとき、気密容器には、NF3 ガスの他にSi2 F6 (NH4 )3 ・F* を主体としたガス状の生成物が発生する。プラズマクリーニング中も気密容器は排気され続けるため、気密容器減圧用の真空ポンプの後方に配置された排気経路となる配管などにSi2 F6 (NH4 )3 ・F* を主体とした粉末状の固形物が堆積する。固形物が蓄積すると配管詰まりが引き起こされる。これを防止するため、固形物の収集を目的としたトラップ装置を排気経路に設けてある。
【0003】
以下、従来のトラップ装置につき、図9を参照して説明する。図9は、従来のトラップ装置の構成を示す断面図である。
【0004】
図9(A)に示すトラップ装置は、両端に開口を有した円筒形状の容器10により構成される。容器10の一方の開口がガス流入口12として用いられ、容器10の他方の開口がガス流出口14として用いられる。容器10の内部には、円筒状の遮蔽板16が設けられており、この遮蔽板16の内側に冷却媒体流入口18aおよび冷却媒体流出口18bを具えた冷却管18が設けられている。また、容器10の壁面にも、冷却媒体流入口20aおよび冷却媒体流出口20bを具えた冷却管20が設けられている。これら冷却管18および20には、水などの冷却媒体を循環させる。
【0005】
気密容器から排気されたガスは、容器10のガス流入口12から内部に導入され、容器10の内壁と遮蔽板16との間を通ってガス流出口14から排気経路に流出される。このガスは熱を帯びている。容器10および遮蔽板16は、冷却管18および20により、ガスの温度よりも低い温度に冷却されている。そのため、容器10内においてガスは固体化し、上述の生成物が固形物として析出される。この固形物は容器10の壁面や遮蔽板16の表面に蓄積される。
【0006】
また、図9(B)に示すトラップ装置は、複数回折れ曲がった形状の冷却管21を容器10の内部に具えている。これにより、ガス混合物と冷却管21との接触面積を増大させ、固形物の収集効率の向上を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のトラップ装置では、ガス流入口近傍の冷却管上に局所的に固形物が蓄積し、ガス流入口から離れた冷却管上にはほとんど固形物の蓄積はみられなかった。したがって、固形物の蓄積によるガス流路のコンダクタンスの減少は、流入口近傍で局所的に進行する。このため、トラップ装置を交換、洗浄するまでの使用時間が短くなり、また、収集効率の面においても十分な性能が得られない。
【0008】
したがって、従来より、ガス流入口近傍以外の箇所における固形物の蓄積を促進させることにより、装置の使用時間を延ばし、かつ、固形物の収集効率が向上するトラップ装置の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、この出願に係る発明の発明者は、固形物の発生が温度だけでなく圧力にも依存することに着目して、下記のような独特の構成のトラップ装置を想到するに至った。
【0010】
すなわち、この出願に係る発明のトラップ装置によれば、真空ポンプにより排気される気密容器の排気経路に配置されており、この排気経路内で固体化するガスを固形物として除去するためのトラップ装置において、このトラップ装置は、排気経路に接続されるガスの流路を内部に有した容器により構成されており、流路中のガスの流速が当該流路の位置に応じた所定の流速に制御されることを特徴とする。
【0011】
このように、流路の位置に応じてガスの流速が制御されるので、流速の比較的小さいところでは固形物の蓄積が促進される。一方、流速の比較的大きいところでは固形物の蓄積が回避される。したがって、流路中の所定の位置に固形物を蓄積させることが可能であるとともに、流路のコンダクタンスを低下させたくないところには固形物を蓄積させないようにすることができる。よって、ガス流入口近傍以外の箇所において固形物の蓄積を促進させることができ、これにより装置の使用時間が延び、しかも、固形物の収集効率が向上する。
【0012】
この発明のトラップ装置の好適例によれば、前述の流路が、螺旋状に延在する主流路と、この主流路の一部から分岐して当該主流路の他の部分に接続する副流路とで構成される。
【0013】
このように構成すると、主流路と副流路との合流点において、主流路に流れるガスは副流路から流れ込むガスによって緩行される。それにより、装置内におけるガスの滞留時間が延び、固形物の蓄積が促進される。また、主流路においては装置の使用時間の増加に伴い固形物の蓄積が進行して、流路断面積が減少するが、ガスは副流路を通って後段の主流路に流出するので、主流路の後段も有効に使用される。したがって、装置の使用時間を従来に比べ延長させることが可能である。
【0014】
また、この発明のトラップ装置において、好ましくは、前述の主流路が、容器の内部に設けられた軸体の表面に接続された薄板によって形成されており、前述の副流路が、薄板の所定の位置に形成された開口によって形成されると良い。
【0015】
また、この発明のトラップ装置の他の好適例によれば、前述の流路が、複数の環状の第1流路と、各第1流路の間を接続する第2流路とで構成されており、第1流路の流路断面積を所定の位置で変化させてある。
【0016】
このように構成すると、ガスは各第1流路および第2流路中に流入する。第2流路より第1流路に流入したガスは2系統に分流される。所定の第1流路には、流路断面積が変化するところがあり、ガスは流路断面積の小さい側と流路断面積の大きい側とにそれぞれ進行する。流路断面積の小さい側では、流路断面積の大きい側に比べてガスの流速が速くなる。したがって、流路断面積の小さい側では固形物が蓄積されにくくなり、一方、流路断面積の大きい側では固形物が蓄積されやすい。このように、固形物の蓄積が促進される箇所とコンダクタンスの低下を防ぐ箇所とを所定の位置に設定することができる。よって、固形物の蓄積を非局所的に生じさせることが可能であり、後段の第1流路も有効に使用される。したがって、装置の使用時間が従来に比べて長くなる。
【0017】
また、この発明のトラップ装置において、好ましくは、前述の第1流路が、容器の内部に設けられた軸体の表面に接続された複数枚の薄板によって形成されていて、前述の第2流路が、薄板の所定の位置に形成された開口によって形成されており、薄板の所定の位置に段差を形成することにより、第1流路の流路断面積を変化させると良い。
【0018】
また、上述の薄板は凹凸状または波形状に折り曲げてあるのが好ましい。薄板の表面積が増大して、固形物の蓄積が可能となる有効面積が増加するからである。また、ガスの流路が延長され、装置の使用時間の延長および固形物の収集効率の向上が図れる。
【0019】
さらに、好ましくは、薄板の表面に凹凸構造を形成してあると良い。このためには、例えば、薄板の表面にブラスト加工を施して凹凸面を形成するのが好適である。この結果、薄板の表面積が増大する。
【0020】
さらに、上述した軸体の内部に冷却機構が設けられていると好適である。
【発明の効果】
【0021】
この発明のトラップ装置によれば、トラップ装置は、排気経路に接続されるガスの流路を内部に有した容器により構成されており、流路中のガスの流速が当該流路の位置に応じた所定の流速に制御される。
【0022】
このように、流路の位置に応じてガスの流速が制御されるので、流速の比較的小さいところでは固形物の蓄積が促進される。一方、流速の比較的大きいところでは固形物の蓄積が回避される。したがって、流路中の所定の位置に固形物を蓄積させることが可能であるとともに、流路のコンダクタンスを低下させたくないところには固形物を蓄積させないようにすることができる。よって、ガス流入口近傍以外の箇所において固形物の蓄積を促進させることができ、これにより装置の使用時間が延び、しかも、固形物の収集効率が向上する。
【0023】
また、この発明のトラップ装置を、例えば半導体製造用のプラズマCVD装置に適用すれば、このCVD装置の運転効率や生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態のトラップ装置の構成を示す図である。
【図2】冷却機構の構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態のトラップ装置の動作説明に供する図である。
【図4】第1の実施の形態のトラップ装置の変形例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態のトラップ装置の構成を示す図である。
【図6】第2の実施の形態のトラップ装置の動作説明に供する図である。
【図7】第2の実施の形態のトラップ装置の変形例を示す図である。
【図8】トラップ装置の使用例を示す図である。
【図9】従来のトラップ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、図は、この発明が理解できる程度に形状、大きさおよび配置関係を概略的に示しているに過ぎない。また、以下に記載される数値等の条件は単なる一例に過ぎない。よって、この発明は、この実施の形態に何ら限定されることがない。
【0026】
この実施の形態で説明するトラップ装置は、真空ポンプにより排気される気密容器の排気経路に配置され、排気経路内で固体化するガスを固形物として除去する装置である。図8は、トラップ装置の使用例を示すブロック図である。図8(A)に示すように、気密容器(真空容器)50の排気経路には、真空ポンプ52、トラップ装置54およびフィルタ56が気密容器50側からこの順序で設けられている。気密容器50では、例えばプラズマCVDプロセスによってa−Si膜やSiN膜などを基板に成膜することが行われるが、基板以外の気密容器50の内壁などにも薄膜が堆積する。この薄膜を除去するため、NF3 を用いて気密容器50内のプラズマクリーニングが行われる。そのとき、気密容器50には、NF3 ガスの他にSi2 F6 (NH4 )3 ・F* を主体としたガス状の生成物を含むガス混合物が発生する。真空ポンプ52により、プラズマクリーニング中も気密容器50は排気され続けるので、ガス混合物は、真空ポンプ52後方に配置されたトラップ装置54内に導入される。トラップ装置54は、ガス混合物を冷却して上述の生成物を析出する。Si2 F6 (NH4 )3 ・F* を主体とした生成物は、粉末状の固形物としてトラップ装置54内に蓄積される。
【0027】
また、トラップ装置54を真空ポンプ52の前段に配置するように構成しても良い。例えば、図8(B)に示すように、気密容器50の排気経路に、トラップ装置54、フィルタ56および真空ポンプ52を気密容器50側からこの順序で設けると良い。
【0028】
以下、上述したトラップ装置54の構成例について説明する。
【0029】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態のトラップ装置について説明する。図1は、第1の実施の形態のトラップ装置の構成を示す図である。図1(A)はトラップ装置の斜視図を示し、図1(B)はトラップ装置の側面図を示している。
【0030】
図1に示すトラップ装置は、両端に開口を有した円筒形状の容器(ケーシング)22により構成されている。容器22の一方の開口がガス流入口24として用いられ、容器22の他方の開口がガス流出口26として用いられる。これらガス流入口24およびガス流出口26はそれぞれ排気経路に接続される。また、容器22の内部の、ガス流入口24とガス流出口26との間に、上述の排気経路に接続されるガス(ガス混合物)の流路が形成されている。このトラップ装置は、ガス流入口24、流路およびガス流出口26が水平方向に配列するように上述の排気経路中に設けられる。
【0031】
そして、この実施の形態のトラップ装置は、上述した流路中のガスの流速が当該流路の位置に応じた所定の流速に制御されるようになっている。そのように構成するために、第1の実施の形態では、上述の流路を、螺旋状に延在する主流路と、この主流路の一部から分岐して当該主流路の他の部分に接続する副流路とで構成する。第1の実施の形態では、上述の主流路が、容器22の内部に設けられた円筒形状の軸体28の表面に接続された薄板30によって形成される。また、上述の副流路は、薄板30の所定の位置に形成された開口32(図1(B)では図示が省略されている。)によって形成される。
【0032】
上述の軸体28は、当該軸体28の中心軸と容器22の中心軸とが一致するような位置に設置されている。軸体28の一端は容器22のガス流入口24側の壁部に接続されており、軸体28の他端は容器22のガス流出口26側の壁部に接続されている。軸体28の内部は、ガス流入口24およびガス流出口26にそれぞれ通じている。また、軸体28の両端近傍の壁面には、開口34および36がそれぞれ形成されている。したがって、これら開口34および36は、ガス流入口24およびガス流出口26にそれぞれ通じている。なお、図1では図示を省略してあるが、軸体28の内部の開口34および36間に、冷却機構38が設けられている。開口34および36間の軸体28の内部は、この冷却機構38によって塞がれている。このため、ガス流入口24に入ったガスは、軸体28の内部を流れてガス流出口26に導出されることはない。すなわち、ガス流入口24に入ったガスは、ガス流入口24側の開口34を経て容器22の内部に導入され、容器22中の流路を通り、ガス流出口26側の開口36を経て、ガス流出口26から排気経路へ導出される。
【0033】
また、上述の薄板30は、ガス流入口24側からガス流出口26側にわたり、軸体28を中心に螺旋状に延在する1枚の板である。この薄板30の、隣接する板の間の空間が、上述の主流路として用いられる。ガス流入口24側から容器22内に導入されたガスは、ガス流出口26側へ向かって、主流路に沿って、軸体28を中心に螺旋状に流れるようになっている。
【0034】
また、上述したように、薄板30の所定の位置に形成された開口32により、副流路が形成されている。つまり、この副流路は、主流路の一部から分岐して当該主流路の他の部分に接続される流路となっている。ガス流入口24側から容器22内に導入されたガスは、ガス流出口26側へ向かって、主流路に沿って流れるとともに、ガスの一部は副流路側にも分流され、軸体28の軸方向に沿って流れるようになっている。
【0035】
ここで、上述した冷却機構38につき、図2を参照して説明する。図2は、冷却機構の構成を示す断面図である。なお、図中、断面を示すハッチングは省略してある。また、図2に示す断面は、図1(B)に示す軸体28の中心軸を含む位置(図1(B)のI−I線の位置)の切り口に相当する断面である。
【0036】
図2(A)に示すとおり、上述の冷却機構38は、円柱形状の棒状部材40により構成される。この棒状部材40は、軸体28の内部に嵌合する形状としてあり、その両端に切欠き部40aおよび40bがそれぞれ形成されている。これら切欠き部40aおよび40bは、棒状部材40が軸体28の内部に嵌合したときに、軸体28の開口34および36がそれぞれ切欠き部40aおよび40bの位置に合わさるように形成されている。このため、棒状部材40が軸体28の内部に挿入されたとしても、ガス流入口24と開口34との間、およびガス流出口26と開口36との間はそれぞれつながった状態になされる。図2では、棒状部材40が軸体28の内部に嵌合されたときの開口34および36の位置を、それぞれ破線aおよびbにより示している。
【0037】
また、棒状部材40の内部には冷却管42が埋設されている。この冷却管42の両端部分は棒状部材40の外部に導出されており、それぞれが冷却媒体流入口42aおよび冷却媒体流出口42bとして用いられる。軸体28内に設置された棒状部材40は、その長手方向が水平方向に一致しており、冷却媒体流入口42aおよび冷却媒体流出口42bは鉛直方向に配列した状態に設置される。そのとき、上側に冷却媒体流出口42bが配置され、下側に冷却媒体流入口42aが配置される。この冷却管42中には、水などの冷却媒体が流される。これにより、棒状部材40が冷やされ、これに接触する軸体28が冷却される。さらに、この軸体28に接続された薄板30が冷却され、薄板30の温度はガスの温度よりも低い、ガスの固体化に適した温度に調整される。
【0038】
なお、上述の例では、軸体28と冷却機構38とを別体にしたが、これら軸体28および冷却機構38は一体構造であっても構わない。例えば、図2(B)に示すように、上述した軸体28の代わりに、内部に冷却管42が埋設された中密の棒状部材の軸体28aを用いると良い。図2(B)に示す軸体28aの両端には、それぞれ軸体28aの軸方向に沿って延在する中空部29aおよび29bが形成されており、これら中空部29aおよび29bはそれぞれガス流入口24およびガス流出口26に通じている。また、軸体28aの壁面には中空部29aおよび29bに通じる開口が形成されており、上述の中空部29aおよび29bは容器22の内部にそれぞれ通じている。このような軸体28aを容器22の内部に設置すれば、軸体28と冷却機構38とを別体に構成した上述の例と同様のものが実現する。
【0039】
次に、上述した構成のトラップ装置の動作につき、図3を参照して説明する。図3は、第1の実施の形態のトラップ装置の動作説明に供する図である。図3は、上述した容器22内の流路を示すものである。図中の上下の水平方向に延在する2本の線分は容器22を示しており、これら線分の間に互いに平行に配列する複数の線分は薄板30を示している。図中、軸体28などの他の構成成分は図示を省略してある。また、図中左側がガス流入口24側となっており、図中右側がガス流出口26側となっている。さらに、図中の矢印記号は、ガスが流れる方向を表している。
【0040】
容器22内に導入されたガスは、流路を通って、ガス流入口24側からガス流出口26側へ、すなわち、図中左側から図中右側へ向かって流れてゆく。主流路を流れるガスは、図中の記号a、b、c、d、e、f、gおよびhで示された箇所の近傍を、この順に通り過ぎてゆく。主流路を流れるガスの一部は、薄板30に形成された開口32すなわち副流路を通って、主流路の他の部分に流出される。この副流路より流出されたガスの一部は、主流路に流れるガスを緩行させる。よって、副流路と主流路との合流部近傍では、ガスの滞留時間が延び、その結果、固形物の蓄積が促進される。図中、破線記号により固形物の蓄積が促進される箇所を示してある。
【0041】
このように、ガスは薄板30の開口32を通って後段に流出してゆくので、薄板30の全体が固形物の蓄積のために有効に使用される。つまり、固形物の蓄積促進箇所は、薄板30の開口32の位置に対応して流路全体にわたり分散するようになる。したがって、装置の使用時間に伴い固形物の蓄積が進行して流路断面積が減少するが、従来のように局所的に蓄積が進行することはなく、装置の使用時間が延びる。
【0042】
なお、薄板30を凹凸状や波形状に折り曲げてあると良い。図4は、第1の実施の形態のトラップ装置の変形例を示す側面図である。例えば、薄板30の断面を、図4に示すような連続したV字形状や、連続したU字形状や、正弦波形状などになるように折り曲げる。さらに、薄板30の表面に凹凸構造を形成しておくと良い。例えば、薄板30の表面にブラスト加工を施すことにより、薄板30の表面を凹凸面に形成する。このように、薄板30の表面積が大きくなるようにすると、固形物の蓄積が可能となる有効面積が増大し、かつ、ガスの流路が延長される。したがって、装置の使用時間をさらに伸ばすことが可能になるとともに、固形物の収集効率をより向上させることができる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態のトラップ装置について説明する。図5は、第2の実施の形態のトラップ装置の構成を示す図である。図5(A)はトラップ装置の斜視図を示し、図5(B)はトラップ装置の側面図を示している。なお、第1の実施の形態で説明したものと同一の構成成分については、図5中、同じ番号で示してある。
【0044】
第2の実施の形態のトラップ装置は、両端に開口を有した円筒形状の容器(ケーシング)22により構成されている。容器22の一方の開口がガス流入口24として用いられ、容器22の他方の開口がガス流出口26として用いられる。これらガス流入口24およびガス流出口26はそれぞれ排気経路に接続される。また、容器22の内部の、ガス流入口24とガス流出口26との間に、上述の排気経路に接続されるガスの流路が形成されている。
【0045】
そして、この実施の形態のトラップ装置は、上述した流路中のガスの流速が当該流路の位置に応じた所定の流速に制御されるようになっている。そのように構成するために、第2の実施の形態では、上述の流路を、複数の環状の第1流路と、各第1流路の間を接続する第2流路とで構成する。また、この第1流路の流路断面積を所定の位置で変化させる。第2の実施の形態では、上述の第1流路が、容器22の内部に設けられた円筒形状の軸体28の表面に接続された複数枚の薄板44によって形成される。また、上述の第2流路は、薄板44の所定の位置に形成された開口46(図5(B)では図示が省略されている。)によって形成される。さらに、薄板44の所定の位置に段差48を形成することにより、第1流路の流路断面積を変化させている。
【0046】
上述の軸体28については、第1の実施の形態の項で説明したので、ここではその説明を省略する。また、軸体28の内部には、第1の実施の形態の項で図2を参照して説明したものと同じ冷却機構が設けられている。また、軸体28の両端部には、第1の実施の形態で説明したように開口34および36がそれぞれ形成されている。なお、図5では、開口36の図示が省略されている。
【0047】
上述の各薄板44は、軸体28を中心に環状に延在する板である。各薄板44は、ガス流入口24側からガス流出口26側にわたり、軸体28に沿って配列している。隣接する薄板44の間の空間が、上述の第1流路として用いられる。
【0048】
また、上述したように、薄板44の所定の位置に形成された開口46により、第2流路が形成されている。つまり、この第2流路は、第1流路の一部から分岐して当該第1流路に隣接する他の第1流路に接続される流路となっている。したがって、ガス流入口24側から容器22内に導入されたガスは、ガス流出口36側へ向かって、各第1流路を経て、第2流路に沿って流れる。
【0049】
また、薄板44の少なくとも一部を折り曲げることにより、薄板44に段差48が形成されている。このように段差48が形成されたところでは、隣接する薄板44との間の間隙が変化している。したがって、第1流路の流路断面積は段差48を形成した部分で変化するようになっている。段差48の部分では、第1流路のコンダクタンスが変化し、つまり、ガスの流れる速度が変化する。
【0050】
次に、上述した構成のトラップ装置の動作につき、図6を参照して説明する。図6は、第2の実施の形態のトラップ装置の動作説明に供する図である。図6は、上述した容器22内の流路を示すものである。図中の上下の水平方向に延在する2本の線分は容器22を示しており、これら線分の間に互いに平行に配列する複数の線分は薄板44を示している。図中、軸体28などの他の構成成分は図示を省略してある。また、図中左側がガス流入口24側となっており、図中右側がガス流出口26側となっている。さらに、図中の矢印記号は、ガスが流れる方向を表している。
【0051】
容器22内に導入されたガスは、流路すなわち各第1流路および第2流路を通って、ガス流入口24側からガス流出口26側へ、すなわち、図中左側から図中右側へ向かって流れてゆく。第2流路より第1流路へ流出されたガスは、二系統に分流され、例えば、図中、記号aおよびbで示す互いに逆の向きにガスは流れてゆく。第1流路の流路断面積は、薄板44の段差48のところで変化している。流路断面積の大きいところでは、ガス流速が速くなり、固形物の蓄積が進行しにくい。したがって、この部分では、コンダクタンスの減少が防止される。一方、流路断面積の小さいところでは、ガス流速が遅くなり、固形物の蓄積が促進される。図中、破線記号により固形物の蓄積が促進される箇所を示してある。
【0052】
このように、ガスは薄板44の開口46を通って後段に流出してゆくので、薄板44の全体が固形物の蓄積のために有効に使用される。つまり、固形物の蓄積促進箇所は、薄板44の段差48の位置に対応して流路全体にわたり分散するようになる。したがって、装置の使用時間に伴い固形物の蓄積が進行して流路断面積が減少するが、従来のように局所的に蓄積が進行することはなく、装置の使用時間が延びる。
【0053】
なお、薄板44を凹凸状や波形状に折り曲げてあると良い。図7は、第2の実施の形態のトラップ装置の変形例を示す側面図である。例えば、薄板44の断面を、図7に示すような連続したV字形状や、連続したU字形状や、正弦波形状などになるように折り曲げる。さらに、薄板44の表面に凹凸構造を形成しておくと良い。例えば、薄板44の表面にブラスト加工を施すことにより、薄板44の表面を凹凸面に形成する。このように、薄板44の表面積が大きくなるようにすると、固形物の蓄積が可能となる有効面積が増大し、かつ、ガスの流路が延長される。したがって、装置の使用時間をさらに伸ばすことが可能になるとともに、固形物の収集効率をより向上させることができる。

【符号の説明】
【0054】
10,22 容器
12,24 ガス流入口
14,26 ガス流出口
16 遮蔽板
18,20,21,42 冷却管
18a,20a,42a 冷却媒体流入口
18b,20b,42b 冷却媒体流出口
28,28a 軸体
29a,29b 中空部
30,44 薄板
32,34,36,46 開口
38 冷却機構
40 棒状部材
40a,40b 切欠き部
48 段差
50 気密容器
52 真空ポンプ
54 トラップ装置
56 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプにより排気される気密容器の排気経路に配置されており、該排気経路内で固体化するガスを固形物として除去するためのトラップ装置において、
該トラップ装置は、前記排気経路に接続されるガスの経路を内部に有した容器により構成されており、前記流路が、複数の環状の第1流路と、各前記第1経路の間を接続する第2流路とで構成されており、前記第1流路の流路断面積を所定の位置で変化させてあることを特徴とするトラップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトラップ装置において、
前記第1流路が、前記容器の内部に設けられた軸体の表面に接続された複数枚の薄板によって形成されていて、
前記第2流路が、前記薄板の所定の位置に形成された開口によって形成されており、前記薄板の所定の位置に段差を形成することにより、前記第1流路の流路断面積を変化させていることを特徴とするトラップ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のトラップ装置において、前記薄板を凹凸状に折り曲げてあることを特徴とするトラップ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のトラップ装置において、前記薄板を波形状に折り曲げてあることを特徴とするトラップ装置。
【請求項5】
請求項2に記載のトラップ装置において、前記薄板の表面に凹凸構造を形成してあることを特徴とするトラップ装置。
【請求項6】
請求項2に記載のトラップ装置において、前記薄板の表面にブラスト加工を施して凹凸面を形成していることを特徴とするトラップ装置。
【請求項7】
請求項2に記載のトラップ装置において、前記軸体の内部に冷却機構が設けられていることを特徴とするトラップ装置。

【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−190035(P2009−190035A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135319(P2009−135319)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【分割の表示】特願平11−356334の分割
【原出願日】平成11年12月15日(1999.12.15)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】