説明

トランスジェニックニワトリ

本発明は、トリPGCの長期培養物から得たトランスジェニックニワトリおよびその産生技術ならびに長期PGC培養物由来のトランスジェニックトリである。いくつかの実施形態では、これらのPGCを、遺伝子構築物でトランスフェクトしてPGCのDNAを改変し、具体的には、外因性タンパク質をコードする導入遺伝子を導入することができる。公知の手順によって宿主トリ胚と組み合わせた場合、これらの改変PGCは、生殖系列を介して伝達されてトランスジェニック子孫が得られる。本発明は、遺伝子ターゲティングによって遺伝子改変することができるPGCの長期培養物を含む組成物を含み、この組成物は、大量の外来DNAを許容することができ、レシピエント胚の生殖系列に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連情報)
本発明は、USDA SBIR 2003−09058およびNIH R44 GM064261、R43 GM073306−01、R44 HD 039583および R43 HD 047995−01の下の政府支援によって行われた。政府は、本発明に対し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
トランスジェニック動物は、抗体などの有益な医薬品の継続的生産を大幅に進歩させる潜在性がある。しかし、トランスジェニック動物の産生は、多くの技術的障害があり、そのうちの少数しか克服されていない。タンパク質をコードする遺伝子改変物を特異的発現のために種のDNAに組み込むには、いくつかの異なるテクノロジーが必要であり、このテクノロジーはそれぞれの種について開発されなければならない。動物の遺伝的および物理的特徴を変化させる1つのアプローチは、動物のレシピエント胚に細胞を導入することである。これらの細胞は、レシピエント胚から誕生した動物の組織に寄与し、得られた動物のトランスジェニック子孫のゲノムに寄与する能力を有する。
【0003】
細胞株の研究開発、細胞ゲノムの操作、およびこのようにして操作された細胞を培養物中に維持する細胞培養技術に相当な時間および資産が費やされてきた。多くの試みが行われているにもかかわらず、ほんの数種のみでしか培養物中に操作細胞の多能性を維持することができていない。維持可能な細胞培養物を容易に利用することができ、多能性を維持しながら遺伝子操作を行い易い場合、新規のテクノロジーを広範に適用することができるであろう。
【0004】
一定の場合、細胞を、タンパク質または抗体などの外因性産物をコードするDNAを含む導入遺伝子で操作することができる。導入遺伝子は、タンパク質産生の青写真を含み、レシピエント胚への細胞の挿入から作製された動物組織中でのタンパク質発現が可能なコードエレメントおよび調節エレメントを十分に含む。いくつかの環境では、発現は、全組織型で発現するように遍在することが望ましい。しかし、有益な抗体の回収などの他の環境では、発現したタンパク質の回収が容易になるように一定の特異的組織型に発現が制限されなければならない。例えば、ウシでは、乳中でのタンパク質発現により、簡単な牛乳の回収および外因性タンパク質の分離によってタンパク質を容易に回収することができる。また、ニワトリでは、卵白中の抗体の大量産生は、抗体の発現および回収のための魅力的なビヒクルを提供する。さらに、組織特異的発現がニワトリの卵管に特異的である場合、発現により、ヒト患者の治療で使用した場合に抗体の治療有用性が増大する一定の特異的な望ましい化学的特性を有する抗体が得られる。したがって、研究的および商業的開発の1つの特に魅力的な分野は、望ましい化学的性質を有するタンパク質の単離および回収を容易にするために卵中で抗体を選択的に発現する遺伝子操作ニワトリである。外因性抗体の産生のために、トリの生体系は、多数の利点(効率的な農場での育成、迅速な成長、および経済的な産生が含まれる)を付与する。さらに、トリの卵は、抗体の大量合成ならびに産物の単離および回収の容易さの両方において理想的な生物学的デザインを付与する。さらに、下記のように、本発明の文脈では、例えば、脊椎動物、植物、または細菌の細胞系と比較したトランスジェニックニワトリ発現系の利点を容易に証明し、大量の抗体産物について固有の有利な化学的性質をもたらすために適用することができる。トランスジェニックニワトリを作製する目的は、何年にもわたって科学者が追求している。この目的は他の種(マウス、ウシ、およびブタなど)で到達しているが、レトロウイルステクノロジーの使用以外でトランスジェニックニワトリは作製されておらず、このテクノロジーは、トランスジェニック動物のDNAに導入することができる導入遺伝子のサイズに固有の限界がある。
【0005】
しかし、細胞培養物が巨大な導入遺伝子を細胞のゲノムに組み込まれるようになるのに十分に安定な場合、抗体の組織特異的発現をコードする導入遺伝子を、標的細胞および導入遺伝子として使用される特異的構築物に応じたいくつかの異なる技術によってトランスジェニック生物に引き継ぐことができる。全ゲノムを細胞ハイブリッド形成よって移入することができ、微小核細胞によってインタクトな染色体を移入することができ、染色体媒介性遺伝子移入によってサブ染色体セグメント(subchromosomal segment)を移入することができ、DNA媒介性遺伝子移入によってキロベース範囲のDNAフラグメントを移入することができる(非特許文献1)。微小核細胞媒介性染色体移入(MMCT)によってインタクトな染色体を移入することができる(非特許文献2)。導入遺伝子の特異的デザインは、抗体をコードするDNA配列の含有量、標的細胞株、発現がターゲティングされる特異的組織、発現が起こる宿主生物、および発現すべき抗体も考慮しなければならない。組織特異的発現のためにデザインされた導入遺伝子は、細胞ゲノムへの首尾のよい組み込みが可能であり、宿主生物の選択された組織中での首尾のよい発現を確実にするためのいくつかのパラメーターを満足しなければならない。
【0006】
導入遺伝子を慎重にデザインし、培養条件を至適化しない限り、組織特異的発現が可能な導入遺伝子の挿入は、細胞の多能性を脅かし得る。したがって、導入遺伝子での使用に適切な細胞株は、必要に応じて組織特異的および高レベルの発現に必要な全てのエレメントを含めるのに十分に大きく且つ複雑な遺伝子構築物で細胞をトランスフェクトする場合、培養中に安定であり、且つ多能性が維持されなければならない。得られたトランスジェニック動物では、導入遺伝子を、必要に応じて、導入遺伝子が発現されるようにデザインされる特定の各組織型で選択的に発現することができる。導入遺伝子の遺伝子含有量に応じて、動物の生存率または得られたタンパク質の有利な化学的性質が危うくなる場合、導入遺伝子を他の組織で発現させることができない。
【非特許文献1】Klobutcher,L.A.およびF.H.Ruddle,Annu.Rev.Biochem.,1981年,第50巻,p.533−554
【非特許文献2】Fournier,R.E.およびF.H.Ruddle,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1977年,第74巻,p.319−323
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、トランスジェニックニワトリおよびトランスジェニックトリを遺伝子操作することができるテクノロジーならびにトランスジェニックニワトリを作製するために使用されるPGCの長期培養物を含む。本発明はまた、ニワトリから産生された抗体およびその固有の化学的性質に関する。具体的には、これらの抗体は、一定の適用においてその治療有用性を増大させる有利な化学的性質を有する。ニワトリから産生された抗体は、脊椎動物、植物、または細菌の細胞系から産生された抗体と比較して、化学改変パターンが異なり、その結果、標的組織(腫瘍など)への毒素の結合を目的として患者に投与した場合、高い治療効力で標的組織が治療される。1つの実施形態では、PCGの長期培養物を、トリに遺伝子改変物を導入するために特別にデザインした遺伝子構築物(外因性タンパク質の組織特異的発現をもたらす導入遺伝子の挿入物が含まれる)によって操作される。本発明のトランスジェニックトリはまた、卵管中で導入遺伝子由来の抗体を発現することができ、卵中に大量の抗体が蓄積する。好ましい実施形態では、外因性抗体タンパク質がヒトDNA配列によってコードされ、その結果、天然のヒト抗体がニワトリ卵管中で発現され、卵から回収することができる。
【0008】
本発明は、抗体の組織特異的発現を示すトリ集団、外因性抗体を発現することができる導入遺伝子構築物、ニワトリで産生され、特別に定義された化学的性質を有する抗体の単離組成物、関連するトリの作製方法、抗体の産生、およびヒトでのその治療的使用を含む。本発明は、長期始原細胞培養物を使用し、そして長期細胞培養物由来のキメラトリまたはトランスジェニックトリを産生するための特別な技術であって、PGCのゲノムが外因性タンパク質を発現する導入遺伝子を安定に組み込み、その結果、培養細胞の子孫が安定に組み込まれた導入遺伝子を含む、技術を使用する。宿主トリ胚に導入する場合、下記手順により、改変されたドナー細胞は、得られた動物の特異的な選択された体細胞組織中で導入遺伝子を発現するトリを産生する。
【0009】
本発明はまた、トランスジェニックニワトリ中で発現し、脊椎動物、植物、または細菌の細胞系と比較して一定の望ましい化学的性質を有する外因性タンパク質の組成物を含む。具体的には、これらのタンパク質、特に抗体は、フコース、ガラクトース、N−アセチルノイラミン酸、およびN−グリコリルノイラミン酸の濃度を低下させ、マンノース濃度が上昇させた。これらの性質のいくつかまたは全てを有する抗体は、ヒトに投与した場合に治療有用性の増大を示す。具体的には、これらの抗体組成物は、増大した抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を示す。したがって、本発明の方法は、ADCC効果に基づいて、トランスジェニックニワトリ中での抗体組成物の発現によって抗体組成物の治療有用性を増強するためのトランスジェニックニワトリの使用を含む。
【0010】
本発明はまた、外因性抗体が規定される量で卵白中に濃縮されるように卵管組織中で本明細書中に規定される有利な化学的性質を有する外因性抗体を発現するトランスジェニックニワトリを含む。1つの好ましい実施形態では、外因性タンパク質は、トランスジェニックトリのゲノムに組み込まれた導入遺伝子構築物によってコードされるヒト配列モノクローナル抗体である。ポリヌクレオチド配列をコードするヒトモノクローナル抗体は、導入遺伝子内に含まれ、この導入遺伝子は、卵管中での発現のために特異的に構築され、組織特異的発現を容易にするための適切なプロモーターおよび調節配列を含む。
【0011】
本発明はまた、トリ始原生殖細胞(PGC)の長期培養物に関し、いくつかのさらなる発明は、トリPGCが増殖し、PGC培養物を培養物の生存能を40日、60日、80日、100日、またはそれを超えて延長するための複数回の継代によって延長することができる長期培養物の作製によって可能であった。本発明のPGCは、長期培養物中で増殖し、レシピエント胚に注入した場合に生殖系列キメラを産生する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される、用語「ニワトリ胚幹(cES)細胞」は、ES細胞の形態を示し、X段階(E−G&K)の胚(マウス胚盤胞にほぼ等しい)の明域由来のレシピエント胚中の体細胞組織に寄与する細胞を意味する。CES細胞は、マウスES細胞のいくつかのin vitro特性(SSEA−1+、EMA−1+、およびテロメラーゼ+など)を共有する。ES細胞は、全ての体細胞組織をコロニー形成(colonize)する能力を有する。
【0013】
本明細書中で使用される、用語「始原生殖細胞(PGC)」は、PGCの形態を示し、レシピエント胚中の生殖系列に排他的に寄与する細胞を意味し、PGCは、12〜17段階(H&H)の胚から採取した全血に由来し得る。PGC表現型を、(1)生殖系列特異的遺伝子CVHおよびDazlがこの細胞株で強く転写されること、(2)細胞がCVHタンパク質を強く発現すること、(3)X段階や12〜17段階(H&H)のレシピエント胚に注入した場合に細胞が体細胞組織に寄与しないこと、(4)細胞がEG細胞を生じること(以下を参照のこと)、または(5)12〜17段階(H&H)の胚に注入した場合に細胞が生殖系列を介してPGC遺伝子型を伝達すること、によって確立することができる(Tajima et al.(1993)Theriogenology 40,509−519;Naito et al.,(1994)Mol.Reprod.Dev.,39,153−161;Naito et al.,(1999)J Reprod.Fert.117,291−298)。
【0014】
本明細書中で使用される、用語「ニワトリ胚生殖(cEG)細胞」は、PGCに由来し、機能がマウスEG細胞に類似する細胞を意味する。cEG細胞の形態は、cES細胞の形態に類似し、cEG細胞は、X段階(E−G&K)のレシピエントに注入する場合、体細胞組織に寄与する。
【0015】
本明細書中で使用される、用語「トランスジェニック」は、その体細胞および生殖細胞中で導入遺伝子をコードし、トランスジェニック形質をその子孫に伝達することができる動物を意味する。
【0016】
本明細書中の例はニワトリについて記載しているが、実験下でニワトリを他の家禽類(ウズラ、シチメンチョウ、キジなど)に置き換えて、本明細書中に開示の方法が首尾よく実施されることが合理的に予測され得る。
【0017】
組織特異的発現のためにデザインされたDNA構築物の培養物中のES細胞への挿入により、卵白中にモノクローナル抗体などの有益な医薬品を発現するニワトリが作製されている。Zhu et al.のPCTUS03/25270号、WO04/015123号を参照のこと。このような動物のための重要な実現技術は、クローン化細胞の遺伝子型が培養中で操作されるために十分に長く生存し続けることができる、真に長期間のES細胞培養物の作製および維持である。
【0018】
しかし、ES細胞と異なり、始原生殖細胞(PGC)は、短期間を基本としてのみ培養されている。一旦培養期間が数日間を超えて延長されると、これらの細胞は生殖系列に排他的に寄与する能力を失う。典型的には、現在の培養技術を使用して培養物中で維持されたPGCは、増殖および増加しない。力強く成長しない場合、培養物は、「末期」であり、無期限に維持することができない。長期にわたり、これらの末期細胞培養物は分解され、細胞はその固有のPGC形態を失い、EG細胞に戻る。胚生殖細胞は、PGCと異なる形態を獲得し、生殖系列に限定されなくなり、胚発生の初期段階に注入した場合に体細胞組織に寄与する能力を得る。予め決定した遺伝子型をレシピエント胚の生殖系列に導入し、それにより、動物が所望の遺伝子型を次世代に伝達することができるようにするために、PGCは精子および卵の先祖であることが公知であるので、PGCは非常に魅力的である。
【0019】
PGCの長期培養物からいくつかの重要な利益(養鶏業に依存する重要なニワトリ交配株の有益な遺伝子の特徴の維持など)が得られる。現在、有益な交配株を事故または疾患による喪失から回避するために、特別な措置が取られている。これらの措置には、種鶏(breeding stock)としての多数の株メンバーの維持および世界中の複数の場所でのこれらの種鶏の複製が必要である。交配株内の遺伝的多様性の保存も重要であるので、将来のために蓄えている多数の有益な動物を維持する必要がある。PGC細胞培養物中のこれらの遺伝的特徴の保存により、大量の保存用交配集団の費用が回避される。
【0020】
PGCの長期培養物はまた、遺伝子操作されたニワトリの卵からの医薬品の産生に非常に有益である。PGCを使用した遺伝子操作されたニワトリの産生には、培養物中で維持しながら遺伝子改変物をPGCの遺伝子型に導入することが必要である。培養物中の標的細胞の広範な遺伝子操作技術は周知である。しかし、1つの主な困難は、培養物中でPGCの遺伝子型を変化させるために、遺伝子改変物を導入し、首尾よく形質転換した細胞を選択するのに適切な期間、培養物の生存を長期間維持する一方で、トランスフェクトした細胞が培養物中で成長および増殖しなければならないということである。増殖することができる首尾よく形質転換した細胞を、クローンまたはほぼクローンの誘導から数日から数週間以内に、多数の細胞(例えば、10〜10細胞)を生成する能力によって区別する。創始細胞は、所望の遺伝子改変を保有する稀な細胞である。典型的には、これらの細胞が、周知の遺伝子改変テクノロジー(例えば、リポフェクションまたはエレクトロポレーション)の適用後に10−4〜10−7の頻度で培養物中に生成される。したがって、培養物中の細胞の産生には、細胞が増殖し、培養物中の稀な遺伝子改変された細胞を選択するのに十分な数の細胞を生成するための空間および栄養を細胞に提供するように継代することが必要である。
【0021】
さらに、培養条件は、個別の遺伝子改変細胞からin vitroでの遺伝子分析およびキメラ産生のために使用される10〜10個の細胞のコロニーへと細胞が増殖するために十分に頑強でなければならない。したがって、真のPGCとしての細胞の遺伝子型および表現型を保存しながら培養期間を延長することができる場合、細胞を操作し、遺伝子系列コンピテント細胞が生殖腺に移動する胚発生時点でレシピエント胚に導入することができる。これらの操作されたPGCは、得られた動物において成熟時に、精原細胞または卵原細胞の初期集団(すなわち、精子および卵子)に排他的に寄与するであろう。このような得られた動物では、体細胞組織全体はレシピエント胚に由来し、生殖系列はドナー細胞およびレシピエント胚の両方からの寄与を受けるであろう。生殖系列への合わさった寄与(mixed contribution)ゆえに、これらの動物は、「生殖系列キメラ」として公知である。キメラの範囲に応じて、生殖系列キメラの子孫は、ドナー細胞またはレシピエント胚のいずれかに由来する。
【0022】
ニワトリの生殖系列は、X段階(E−G&K)の胚の胚盤葉上層由来の細胞として開始され、初期胚盤葉下層に入る(Kagami et al.,(1997)Mol Reprod Dev 48,501−510;Petitte,(2002)J Poultry Sci 39,205−228)。胚盤葉下層が前方に進行するにつれて、前始原生殖細胞(preprimordial germ cell)は、巨大なグリコーゲン負荷細胞として同定することができる生殖三日月環に迅速に進む。これらの形態基準による生殖系列中の細胞の最も早い同定は、インキュベーション開始から約8時間後(Hamburger and Hamilton,(1951)J Morph 88,49−92によって確立された段階別分類を使用した4段階)である。始原生殖細胞は、これらが12〜17段階(H&H)の間に脈管構造を介して移動するまで、4段階(H&H)由来の生殖三日月環に存在する。この時点で、始原生殖細胞は、約200個の細胞の小集団である。脈管構造から、始原生殖細胞が生殖隆起に移動し、性腺が分化するにつれて、卵巣または精巣に組み込まれる(Swift,(1914)Am.J.Anat.15,483−516;Meyer,(1964)Dev Biol.10,154−190;Fujimoto et al.(1976)Anat.Rec.185,139−154)。
【0023】
今まで試験されてきた全ての種では、始原生殖細胞は、EG細胞に分化することなく長期培養物中で増殖しなかった。従来のエレクトロポレーションまたはリポフェクションプロトコールによって遺伝子改変を導入するのに十分な数の細胞を産生するために、長期培養が必要である。典型的には、これらのプロトコールには、10〜10個の細胞が必要であり、したがって、全ての細胞分裂が、(1)同期に起こり、且つ(2)2つの生きた娘細胞を産生すると仮定すると、1つの前駆体からのこれらの細胞の産生には、17〜24回倍増する必要がある。細胞ゲノムへの遺伝子改変物の導入は稀な事象であり、典型的には、1×10〜1×10個の細胞に1回生じる。遺伝子改変後、細胞は、遺伝子改変物を保有および/または発現する1つの細胞からコロニーを確立することができなければならない。コロニーは、PCRまたはサザン分析によって分析して導入遺伝子の信頼性を評価することができる10〜10個の細胞集団に拡大することによって十分な数の細胞が得られなければならならず、次いで、13〜15段階(H&H)のレシピエント胚に注入する。したがって、細胞集団を産生するためにさらに17〜24回の細胞分裂が必要であり、遺伝子改変細胞集団を産生するために全部で34〜58回倍増することが必要である。細胞周期が24時間であると仮定すると、13〜15段階(H&H)レシピエント胚への注入のための遺伝子改変された始原生殖細胞を産生するために、最短で34日間、一般に58日間の培養が必要である。次いで、注入した細胞は、生殖系列をコロニー形成し、機能的配偶子を形成し、受精後に新規の個体に発生することができなければならない。
【0024】
ニワトリPGCの長期培養細胞株を確立するためのいくつかの試みが報告されているが、これらの試みで、維持することができる細胞株が得られたものはなかった。これらのそれぞれの場合では、PGCの培養物がEG細胞(WO00/47717号;WO99/06533号;WO99/06534号;Park et al.,(2003)Mol.Reprod.Dev.65,389−395;Park and Han,(2000)Mol.Reprod.Dev.56,475−482を参照のこと)またはEG細胞表現型を有する細胞(WO01/11019を参照のこと)に分化した。他の場合では、PGC培養物は、たった5日間(Chang et al.,(1997)Cell Biology International 21,495−499;Chang et al.,(1995)Cell Biology International 19,569−576)または10日間(Park et al.,(2003)Biol.Reprod.68,1657−1662)しか維持することができなかった。別の場合、PGCが2ヶ月間培養物中に維持されたが、細胞は非常にゆっくりしか増殖せず、培養物を継代することができなかった(Han et al.,(2002)Theriogenology 58,1531−1539)。PGC培養物の継代する能力は、PGCの遺伝子改変および最も有益な農業および交配テクノロジーのために使用される長期培養物の極めて重要な性質である。
【0025】
PGC細胞培養物の増殖能力は、導入遺伝子の無作為な組み込みまたは部位特異的改変によってゲノムが変化した細胞の選択に不可欠である。両遺伝子改変型では、培養物中の細胞ゲノムへの安定な組み込み物としての遺伝子改変物を獲得した細胞の割合は非常に少なく、1万個〜1億個に1つ(すなわち、1×10−4〜1×10−8)の規模である。したがって、培養物中の細胞ゲノム中に遺伝子改変を作製する稀な事象由来の適切な細胞集団を得るためには、急速に成長する培養物を確立する能力が必要である。
【0026】
ニワトリ始原生殖細胞は、11〜15段階の胚からの単離から数時間以内にレトロウイルスベクターを使用して遺伝子改変されている(Vick et al.,(1993)Proc.R.Soc.Lond.B 251,179−182)。しかし、導入遺伝子のサイズは、一般に、約15kb未満、通常、10kb未満、最も一般的には、8kb未満に制限され、ゲノムの部位特異的変化をこのテクノロジーを使用して作製することができない。培養トリPGCゲノムへの15kbを超える外因性DNAの挿入が必要な安定な遺伝子改変は、以前に報告されていない。
【0027】
長期PGC細胞培養物中に安定に導入することができる外因性DNA導入遺伝子のサイズのいかなる制限も、培養物中のPGCゲノムの有益な遺伝子改変を達成する能力における極めて重要な制約であり、言い換えると、生殖系列を介してレシピエント胚の子孫に伝達することができる遺伝子改変物の型を制限する。例えば、トランスジェニックニワトリのゲノムへのタンパク質をコードする外因性DNAの導入は、非常に望ましい遺伝子改変である。このようなトランスジェニックニワトリ群を作製することができる場合、大量の有益なタンパク質をニワトリ中で発現させ、卵中で回収することができる。トリの卵は、生物活性タンパク質の理想的な貯蔵所を提供し、タンパク質を単離することができる都合のよい環境を提供する。鳥類は、広範な種々のトランスジェニックテクノロジーのための魅力的な候補でもある。しかし、遺伝子改変物を導入して生殖系列に伝達することができる培養細胞集団が存在しないために、トリ種への全範囲の哺乳動物トランスジェニック技術の適用は成功しなかった。最近の論文では、Sang et al.は、「PGCを培養物中で維持し、移入後に発生性腺に移動する能力を喪失することなく遺伝子ターゲティング事象を同定するために必要な長期間にわたって増殖することができる可能性は低い」と述べている。Prospects for Transgenesis in the Chick,Mechanisms of Development,121,1179−1186,(2004)。したがって、今日まで、遺伝的にトランスフェクトされたPGCは作製されておらず、トリPGCに導入された遺伝子改変物の成熟した生きた動物への伝達は証明されていない。
【0028】
始原生殖細胞(PGC)は、精子および卵子の前駆体であり、ほとんどの動物の発生初期段階で体細胞組織から分離される。本発明に従って、生殖系列への関わりを維持しながら、ニワトリPGCを単離し、培養し、遺伝子改変する。さらに、PGCを、胚生殖細胞(RGC)に分化するように誘導するが、これは、その体細胞組織への関わりにおいてニワトリ胚幹細胞(ESC)と類似している。これらのPGCは、体細胞組織および生殖系列に関わり、ニワトリゲノムの遺伝子改変のための固有の資源を提供する。
【0029】
本明細書中に記載の培養物中に維持されたPGCは、培養物中で維持されながら特徴的なPGC形態を維持する。PGC形態を、直接的観察によって観察することができ、培養物中の細胞成長を、培養物中で細胞を確実に増殖させるための一般的な技術によって評価する。増殖する細胞培養物を、非末期と定義し、2つの異なる時点のうちの後の時点の方が培養物中の細胞数が多いことが認められる。本発明の培養物中のPGCは、任意の特定の培養物中に1×10個またはそれを超える細胞を有することができ、この数は、長期にわたって増加することが認められる。したがって、本発明は、培養物の寿命のうちのより早い時点と比較して、数日後、数週間後、または数ヵ月後に多数の細胞を含む増殖PGC培養物を含む。理想的には、培養物は、少なくとも1×10個の細胞を含み、培養物の任意の成長期間後により多数の細胞を有することが認められ得る。さらに、PGCは、培養物中での主な種であることが認められ得、その結果、非ニワトリ支持細胞による最小の寄与を考慮した場合、細胞培養物の増殖成分は、他のニワトリ由来細胞を実質的に除外して、本質的に、ニワトリ始原生殖細胞からなる。
【0030】
培養物は、既存の培養物由来の細胞のサンプルまたはアリコートを分離することができ、且つ、新規の培養培地中に入れた場合に強い成長を示すような継代による増殖特性も示す。定義により、細胞培養物を継代する能力は、細胞培養物が成長および増殖し、且つ末期ではないことを示す。さらに、本発明の細胞は、数回の継代後に生殖系列キメラを作製し、PGC形態を維持する能力を証明する。本明細書中に記載のように、この増殖は、外因性DNA配列の安定な組み込みに適切な任意の細胞培養物の不可欠な特徴である。
【0031】
本発明のPGCを、任意の公知の技術によって得て、本明細書中に記載の培養条件で成長させることができる。しかし、全血を15段階の胚から取り出し、下記の培養培地に直接入れることが好ましい。このアプローチは、PGCを培地に入れる前に処理および分離工程に供する文献に記載の他のアプローチと異なる。従来の培養技術と異なり、本発明の培養物および方法は、最初は培地中に共存し得る全血由来のPGCと他の細胞との間の頑強な差分成長に依存し、それにより、本明細書中に記載の培養物中のPGCの巨大集団が得られる。したがって、本発明は、培養物中で巨大な細胞濃縮物に成長し、無制限の回数の継代を行うことができ、培養物中のPGCが本質的に成長および増殖している細胞のみであるような頑強な成長および増殖を示す、全血に直接由来するPGCの培養物を提供する。これらの培養条件によって本発明の重要な利点が得られ、それにより、培養物中のPGCが特に簡潔且つ効率的に回収、保存、および維持されることを可能にし、培養PGC細胞の遺伝子型が子孫に伝達される生殖系列キメラを作製するためのドナー細胞の容易に利用可能な供給源が得られる。
【0032】
本発明者らによって培養物中に維持されたPGCは、非末期培養物の存在を証明し、現在、培養物中で少なくとも327日間存在している。これらの細胞は、40、60、80、または100日目(およびその間の全ての整数値)に認められた様式と同一の様式で成長および増殖し、細胞は、下記のように生殖系列キメラに寄与し続け、したがって、真のPGCの主に際立った特徴(すなわち、レシピエント胚に導入した場合の生殖系列への排他的寄与)を示す。本発明の培養方法は、赤血球および他の代謝活性細胞型を含む全血を使用すること、細胞の混合物を始原生殖細胞と共に培養物中に入れること、および本質的に本明細書中に記載の長期培養の特徴を示すトリPGCからなるように培養物を進化させることを含む。本明細書中に記載の細胞培養テクノロジーにより、任意の細胞分離過程または技術が回避され、このテクノロジーは、培養物中に主にPGCを得るための差分成長条件のみに依存する。確立され、培養されたPGC細胞の供給源としての全血の使用により、培養物の確立および農業またはトランスジェニック目的での細胞の使用の有効性および有用性において実用上の利点が得られる。したがって、本発明の1つの態様では、培養培地は、BRL(バッファローラット(buffalo rat)肝細胞)で馴化され、線維芽細胞成長因子、幹細胞因子、およびニワトリ血清を含む。培地の特徴を、以下により詳細に記載する。
【0033】
本発明の1つの態様では、遺伝的に同一であり、増殖して長期細胞培養物が得られる多数のPGCを有する培養物を確立する。これらのPGCを繰り返し使用して、レシピエント胚への増殖長期培養物由来のPGCの導入によって生殖系列キメラを作製することができる。生殖系列キメラを作製するためにPGCを使用する以前の試みでは、作製することができるキメラ数は、PGC表現型を保持した真のPGCの長期培養物を成長させることが不可能であることにより、本質的に制限される。本発明によって長期培養が可能であるので、かなり多数の生殖系列キメラを同一の細胞培養物から作製することができ、遺伝的に同一のPGC由来生殖系列を有する生殖系列キメラの全集団を確立することができる。したがって、本発明の1つの態様は、多数の(3個超、4個超、5、10、15、および20個超が含まれる)生殖系列キメラ動物の作製であり、これらは全てその生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する。本発明の別の態様は、年齢差を集団内で有する、その生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する生殖系列キメラ集団の作製であり、このことは、生殖系列キメラを作製するための同一の長期細胞培養物の使用を反映する。年齢差は、始原生殖細胞を長期間培養するための現在利用可能な能力を超え、それは凍結することなく190日間にもなる。したがって、本発明は、細胞を凍結することなく、40日間、60日間、80日間、100日間、190日間などまたはその間の任意の他の整数値を超えて年齢が異なる、その生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する2個またはそれを超える生殖系列キメラを含む。本発明はまた、これらの生殖系列キメラを作製するために使用される非末期PGC培養物の存在と共にその生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する性的に成熟した生殖系列キメラの存在を含み、これらからさらなる生殖系列キメラを作製することができる。
【0034】
PGCを非常に安定な様式で培養物中に維持することができるので、細胞を低温保存し、解凍して、培養物中に維持されたPGCの表現型によって定義された子孫を作製する能力を有する生殖系列キメラを作製するための長期保存方法を得ることもできる。
【0035】
多数の生殖系列キメラを産生する能力により、生殖系列キメラの子孫にPGC由来遺伝子型を伝達する能力も得られる。したがって、本発明は、生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する生殖系列キメラの両集団を含むが、その遺伝子型および表現型が培養物中で成長したPGCの遺伝子型によって完全に決定される生殖系列キメラの子孫も含む。生殖系列を介したPGC由来の表現型の伝達は、20羽を超えるトリで認められ、86%もの伝達率であった。したがって、本発明は、培養物中に保持された始原生殖細胞の遺伝子型の生殖系列伝達によって作製された生殖系列キメラの子孫を含む。したがって、本発明は、定義された表現型のPGCを含む始原生殖細胞培養物、その生殖系列の一部と同一の始原生殖細胞を有する生殖系列キメラ、ならびに培養物中のPGCによって決定される遺伝子型および表現型を有する生殖系列キメラの子孫のそれぞれの存在を含む。
【0036】
前に記載のように、長期PGC培養物の存在によって培養物中の細胞を外因性タンパク質をコードするDNAで安定にトランスフェクトする能力、または他の望ましい遺伝子操作物を導入すること(遺伝子挿入およびトランスジェニック動物のノックアウトなど)ができる。したがって、培養物中の上記PGC集団、生殖系列キメラ、および生殖系列キメラの子孫の全てはまた、始原生殖細胞のゲノムに安定に組み込まれ、生殖系列キメラの生殖系列に伝達され、生殖系列キメラの子孫から構成される後の世代に伝達されるDNA構築物から構成され得る。
【0037】
始原生殖細胞は、実質的に任意の操作遺伝子構築物を含むことができ、これを使用して、現在レトロウイルステクノロジー(ゲノムの部位特異的改変および/またはモノクローナル抗体などの全長外因性タンパク質をコードする導入遺伝子の挿入が含まれる)に課されているサイズの制約を超える遺伝子改変物をトリに導入することができる。好ましい実施形態では、遺伝子操作されたニワトリは、卵中に外因性タンパク質を発現するために組織特異的様式で卵管中に外因性タンパク質を発現する。
【0038】
本発明のPGC培養物は、導入遺伝子をPGCのゲノムに安定に組み込むようになり、培養物中の非改変細胞から遺伝子操作細胞を単離し、レシピエント胚に改変細胞を導入するのに十分に安定である一方で、培養されたPGCが得られたキメラ中の生殖系列に寄与する能力が維持される。導入遺伝子の発現が組織特異的プロモーターによって調節される場合、導入遺伝子は、PGC中に発現されないであろう。これらの場合、導入遺伝子は、生殖系列キメラのトランスジェニック子孫中の選択された組織中で発現するであろう。全ゲノムを細胞ハイブリッド形成によって移入することができ、微小核細胞によってインタクトな染色体を移入することができ、染色体媒介性遺伝子移入によってサブ染色体セグメントを移入することができ、DNA媒介性遺伝子移入によってキロベース範囲のDNAフラグメントを移入することができる(Klobutcher,L.A.and F.H.Ruddle,Annu.Rev.Biochem.,50:533−554,1981)。微小核細胞媒介性染色体移入(MMCT)によってインタクトな染色体を移入することができる(Fournier,R.E.and Ruddle,F.H.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74:319−323,1977)。
【0039】
遺伝子操作されたニワトリが得られるPGCの安定な長期培養物は、トリ遺伝子組換えにおけるいくつかの適用(医薬産業のためのタンパク質の産生、その卵中にヒトモノクローナル抗体を蓄積するニワトリの産生、およびかなり多数の他の適用(ヒト配列ポリクローナル抗体が含まれる)のためのトリゲノムの部位特異的変化が含まれる)のために必要である。
【0040】
レシピエント胚中のドナー由来PGCとレシピエント由来PGCとの比を変化させて、PGC由来のキメラ中の生殖系列のコロニー形成を助けることができる。発育中のニワトリおよびウズラ胚では、ブスルファンへの曝露により、始原生殖細胞集団が生殖三日月環から生殖隆起に移動するにつれて、始原生殖細胞集団が大幅に減少するか消失する(Reynaud(1977a)Bull Soc.Zool.Francaise 102,417−429;Reynaud(1981)Arch Anat.Micro.Morph.Exp.70,251−258;Aige−Gil and Simkiss(1991)Res.Vet.Sci.50,139−144)。24〜30時間のインキュベーション後にブスルファンを卵黄に注入する場合、50〜55時間のインキュベーション後に始原生殖細胞が脈管構造に再導入され、ドナー由来始原生殖細胞と共に生殖系列が再配置され、その後、ドナー由来配偶子が産生される(Vick et al.(1993)J.Reprod.Fert.98,637−641;Bresler et al.(1994)Brit.Poultry Sci.35 241−247)。
【0041】
本発明の方法は、ニワトリ(15段階の胚の全血など)からPGCを得る工程と、PGCを培養物中に入れる工程と、PGCを増殖させてその数を増加させ、多数の継代を可能にする工程と、これらの長期細胞培養物から生殖系列キメラを作製する工程と、培養されたPGCによって得られる遺伝子型を有する生殖系列キメラの子孫を得る工程とを含む。本発明の方法はまた、培養物中のPGC集団に遺伝子改変物を挿入して安定にトランスフェクトされたPGCを作製する工程と、安定に組み込まれた導入遺伝子を保有するこの集団から細胞を選択する工程と、安定に組み込まれた導入遺伝子を保有する遺伝子改変細胞をレシピエント胚に注入する工程と、胚を生殖細胞中に遺伝子改変を含む生殖系列キメラに発生させる工程と、生殖系列キメラを性的に成熟するまで飼育する工程と、生殖系列キメラを交配してトランスジェニック子孫を得る工程とを含み、ここで、遺伝子改変は培養PGCに由来する。
【0042】
以下に、PGCを12〜17段階(H&H)の胚の血液から単離することができ、細胞が迅速に増殖してそのPGC表現型を維持し、PGCを毎日または2〜3日間隔で継代することができ、少なくとも培養110日後にPGCは生殖系列をコロニー形成するが体細胞組織をコロニー形成せず、110日間の培養物中に存在する細胞から生存能力のある子孫を得ることができ、PGCを導入遺伝子でのトランスフェクションによって遺伝子改変することができ、遺伝子改変されたPGCを単離して遺伝子改変されたPGCのコロニーに増殖することができるという予想外の所見を記載する。
【0043】
本発明によれば、ニワトリPGC細胞株は、14〜16段階(H&H)の胚から採取した血液に由来し、巨大な丸い形態をしている(図1)。これらの細胞は、長期培養後のその形態およびPGC由来子孫を得る能力によってニワトリPGCであることが確認される。さらに、PGC培養物は、生殖系列特異的遺伝子であるDazlおよびCVHを発現し(図2)、CVHタンパク質は、培養物中の細胞によって産生される(図3)。培養物中のPGCはテロメラーゼも発現し(図4)、これらが重要な表現型を有することを示す。さらに、PGCは、適切な培養条件で胚生殖(EG)細胞を生じる(図5)。マウスおよびヒトのPGCは、類似の様式で処理した場合にEG細胞を生じると類推される。マウスEG細胞は体細胞組織に寄与し、キメラの黒色の羽の色素沈着によって示されるように、ニワトリEG細胞も体細胞組織に寄与する(図6)。ニワトリPGCは遺伝子改変されていることが、サザン分析によって示される(図7)。この実施形態では、CXプロモーターをPGCゲノムに安定に組み込み、これを使用してPGCゲノムに共に組み込まれたアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする遺伝子の発現を容易にし、これを使用して培養培地に添加したネオマイシンへの耐性を付与し、遺伝子改変されたPGCを選択する。
【実施例】
【0044】
(実施例1.ニワトリPGC培養物の誘導)
14〜17段階(H&H)の胚の終洞から採取した2〜5μLの血液を、幹細胞因子(SCF、6ng/mlまたは60ng/ml)、ヒト組換え線維芽細胞成長因子(hrFGF、4ng/mlまたは40ng/ml)、10%ウシ胎仔血清、および80%KO−DMEM馴化培地を含む培地を含む96ウェルプレート中でインキュベートした。好ましくは、15〜16段階(H&H)の胚の脈管構造から1〜3μLを採取した。96ウェルプレートのウェルに、照射STO細胞を3×10細胞/cmの濃度で播種した。
【0045】
KO−DMEM馴化培地を、10%ウシ胎仔血清、1%pen/strep、2mMグルタミン、1mMピルビン酸塩、1×ヌクレオシド、1×非必須アミノ酸、および0.1mMβ−メルカプトエタノールを補足し、5%ウシ胎仔血清を含むDMEM中での密集までのBRL細胞の3日間の成長によって調製した。24時間後、培地を除去し、培地の新規のバッチを3日間馴化した。これを3回繰り返し、3つのバッチを合わせてPGC培養培地を作製した。
【0046】
約180日間の培養後、1つのPGC株を、40% KO−DMEM馴化培地、7.5%ウシ胎仔血清、および2.5%ニワトリ血清から構成される培地中で成長させた。これらの条件下で、PGCの倍加時間は約24〜36時間であった。
【0047】
培養開始時の主な細胞型は、胎仔赤血球であった。3週間以内の主な細胞型はPGCの細胞型であった。2つのPGC細胞株は、各胚から開始された18の培養物に由来した。
【0048】
PGC株を9ヶ月にわたって培養し、丸い形状を維持し、付着しないままである(図1AおよびB)。10%血清および10%DMSOを含むCO依存培地中での低温保存後に、PGCは首尾よく解凍された。
【0049】
(実施例2.培養PGCはCVHおよびDazlを発現する)
CVHは、ショウジョウバエ中の生殖系列特異的遺伝子VASAのニワトリホモログであり、その発現はニワトリの生殖系列内の細胞に限定され、生殖三日月環中の約200個の細胞によって発現される(Tsunekawa et al.,2000)。CVH発現は雄の生殖系列の適切な機能に必要であり、CVH機能の喪失により雄マウスが不妊症を引き起こす(Tanaka et al.,2000)。Dazlの発現は、カエル(Houston and King,2000)、アホロートル(Johnson et al.,2001)、マウス(Schrans−Stassen et al.,2001)、ラット(Hamra et al.,2002)、およびヒト(Lifschitz−Mercer et al.,2000)中の生殖系列に制限される。Dazlの欠失により、トランスジェニックマウスの精子形成欠損が起こる(Reijo et al.,1995)。
【0050】
32日後、PGCをPBSで洗浄し、ペレット化し、Oligotex Direct mRNAキット(Qiagen)を使用してmRNAを組織サンプルから単離した。次いで、First−Strand cDNA合成(Invitrogen)のためのSuperScript RT−PCRシステムを使用して、9μlのmRNAからcDNAを合成した。2μlのcDNAを、その後のPCR反応で使用した。CVH配列(アクセッション番号AB004836)、Dazl配列(アクセッション番号AY211387)、またはβアクチン配列(アクセッション番号NM_205518)由来のプライマー配列は、以下であった。
【0051】
【化1】

プライマーV−1およびV−2を使用して、CVH転写物から751bpのフラグメントを増幅させた。プライマーDazl−1およびDazl−2を使用して、Dazl転写物から536bpのフラグメントを増幅させた。プライマーAct−RT−1およびAct−RT−Rを使用して、内因性ニワトリβ−アクチン転写物から597bpのフラグメントを増幅させた。製造者の説明書にしたがってAmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を使用して、PCR反応を行った。
【0052】
(実施例3.PGCはCVHタンパク質を発現する)
T−Per組織タンパク質抽出キット(Pierce)を使用して新たに単離したPGCからタンパク質を抽出した。1% NPO、0.4%デオキシコール酸塩添加した66mM EDTA、10mM,Tris(pH7.4)中での細胞の溶解によって細胞からタンパク質を抽出した。サンプルを、4〜15% Tris−HCLレディゲル(Bio−Rad)で泳動した。膜に移した後、説明書の通りにSuper Signal West Pico化学発光基質キット(Pierce)を使用してウェスタンブロットを行った。一次抗体としてウサギ抗CVH抗体を使用し(300倍希釈)、二次抗体としてHRP抱合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Pierce、100,000倍希釈)を使用した(図3)。
【0053】
(実施例4.培養PGCはテロメラーゼを発現する)
始原生殖細胞をペレット化し、PBSで洗浄し、その後、分析まで−80℃で凍結した。細胞抽出物を調製し、テロメア反復増幅プロトコール(TRAP)(Kim et al.,1994)に基づいたTRAPezeテロメラーゼ検出キット(Serologicals Corporation)を使用して、製造者の説明書にしたがって分析した。図4。
【0054】
(実施例5.胚生殖(EG)細胞は、PGC培養物に由来し得る)
細胞をプレートに接着させ、FGF、SCF、およびニワトリ血清を除去し、細胞をES細胞培養物について用いられた条件と同一の条件下で培養することによって、ニワトリEG細胞をPGCから誘導した(van de Lavoir et al.,2006 High Grade Somatic Chimeras from Chicken Embryonic Stem Cells,Mechanisms of Development 12,31−41;van de Lavoir and Mather−Love(2006)Chicken Embryonic Stem Cells;Culture and Chimera Production,Methods in Enzymology,印刷中)。cEGの形態は、cES細胞の形態と非常に似ている(図5A、B)。cEG細胞をX段階(E−G&K)の胚に注入する場合、cEG細胞は体細胞組織をコロニー形成して、cES細胞を使用して作製されたキメラと同一と思われるキメラを幼鳥として作製する能力を有する(図6)。新規の誘導されたトランスジェニックPGC株およびクローン誘導されたトランスジェニックPGC株の両方でニワトリEG細胞が認められる。GFP陽性PGC由来のEG細胞のサザン分析(図11)により、EG細胞がPGC起源であることが証明された。
【0055】
(実施例6.培養雄PGCは、雄鶏中で機能的配偶子を生じる)
雄始原生殖細胞株を、各Barred Rock胚から誘導した。株の確立後、細胞を、13〜15段階(H&H)の胚に注入した。表現型的に、孵化したニワトリは白色レグホンに類似していた。雄を性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雌鶏と交配させた(表1)。黒色の子孫は、注入したPGCの生殖系列伝達を示す。雄鶏の生殖系列伝達率は、1%未満から86%まで様々であった。
【0056】
(表1:14〜15段階(H&H)の胚の脈管構造に注入した雄始原生殖細胞の生殖系列伝達)
【0057】
【表1】

各値は、1つのキメラの生殖系列伝達率を示す。
【0058】
PGCを、X段階の胚の胚下腔に注入することもできる。培養209日後に1000個または5000個のPGCを照射した胚に注入した。孵化した雄ニワトリを性的に成熟するまで成長させ、交配して生殖系列伝達を試験した。試験した4羽の雄鶏のうちの3羽で生殖系列伝達が認められ、その頻度は0.15〜0.45%で変化した。これは、原腸形成前に注入した場合にPGCが生殖系列をコロニー形成することができることを示す。雄PGCの生殖系列伝達は、14羽の雌キメラ由来の1,625羽の子孫で認められなかった。
【0059】
(実施例7.培養雌PGCは雌鶏で機能的配偶子を生じる)
66日間培養したBarred Rock胚由来の雌PGCを、13〜16段階(H&H)の白色レグホン胚に注入し、孵化した全ニワトリは、表現型が白色レグホンであった。雌鶏を性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雄鶏と交配した(表1)。雌PGCは雌キメラを介して伝達され、その頻度は69%までであった(表1)。
【0060】
(表2:14〜15段階(H&H)の胚の脈管構造に注入した雌始原生殖細胞の生殖系列伝達)
【0061】
【表2】

各値は、1つのキメラの生殖系列伝達率を示す。
【0062】
雌PGCを、雄レシピエント白色レグホン胚にも注入した。雄キメラを性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雌鶏と交配した。雌PGCの生殖系列伝達は、3羽の試験雄鶏の506羽の子孫で認められなかった。
【0063】
(実施例8.PGC由来の子孫は生殖的に正常である)
3羽の雄および4羽の雌の非トランスジェニックPGC由来の子孫を互いに交配させた。53%と100%との間の卵が受精し(表3)、79%と100%との間の受精卵から胚が孵化胚を生じ(表3)、PGC由来の子孫が生殖的に正常であることを示す。
【0064】
(表3:生殖系列キメラ雄鶏から得たPGC子孫の生殖パラメーター)
【0065】
【表3】

(実施例9.ネオマイシンおよびピューロマイシンに対するPGCの感受性)
全組織中で強く発現するCX−プロモーターの調節下で抗生物質耐性を発現する細胞の成長に必要なピューロマイシンおよびネオマイシンの濃度を確立するために、ネオマイシンおよびピューロマイシンに対するPGCの感受性を決定した(Origen Terapeutics、未発表)。これらの実験は、全ての非トランスフェクション細胞を消失するために10日間に300μg/mlの濃度のネオマイシンが必要であることを証明した。0.5μg/mlの濃度のピューロマイシンは、7〜10日間以内にPGCを消失させるのに十分であった。
【0066】
(実施例10.PGCの遺伝子改変)
20μg(20μl)のNotI線状化cx−neo導入遺伝子(図8を参照のこと)を、167日間培養した5.8×10個のPGC集団に添加した。細胞およびDNAを、800μlのエレクトロポレーション緩衝液に再懸濁し、672ボルトおよび持続時間100μ秒の方形波パルスを8回印加した。10分後、細胞を培養培地中に再懸濁し、24ウェルプレートに等分した。エレクトロポレーションから2日後に、培地1mlあたり300μgのネオマイシンを添加して、cx−neo導入遺伝子を発現する細胞を選択した。細胞を、19日間選択下に維持した。19日後、細胞を選択から取り出し、分析のために拡大した。PGCの比率を、300μg/ml下にさらに31日間保持することにより、PGCが抗生物質に機能的に耐性を示すことが証明された。
【0067】
図8に関して、プラスミドコントロールのために、cx−neoプラスミドDNAをNotIで線状化し、次いで、EcoRIまたはBamHIで消化して、HindIII消化で認められたインタクトなプラスミドよりもわずかに小さなフラグメント(5kb)を産生した。約2kbのcx−neoプラスミドの内部フラグメントを、StyIまたはNcoIでの消化によって放出させた。約2.6kbのより大きな内部フラグメントを、EcoRIおよびKpnIでの消化によって放出させた。EcoRI、BamHI、およびHindIIIでのPGC株由来のゲノムDNAの消化により、6kbを超えるバンドが明らかとなり、これは、cx−neo導入遺伝子がPGCゲノムに組み込まれたことを示す。KpnIとのStyI、NcoI、およびEcoRIでの消化後にプラスミドDNA中に明らかとなった内部フラグメントは、PGCのゲノムDNA中にも存在し、cx−neo導入遺伝子が変化することなくPGCゲノムに組み込まれたことを示す。従来の導入遺伝子構築技術を使用して、調節エレメントなどのさらなるエレメントを組み込むことができ、その例は組織特異的プロモーターおよびタンパク質をコードする外因性DNAである。モノクローナル抗体は、外因性DNAによってコードされるタンパク質の好ましい例であり、ヒトモノクローナルはその好ましい種である。
【0068】
上記のように、トランスジェニック動物を産生するためのPGCの遺伝子改変の能力は、非常に少数の種でのみ証明されている。類似の遺伝子操作を、マウスでES細胞を使用して行われる遺伝子操作を参照することによって、ニワトリPGC中で行うことができる。マウスでは、相同組換えの個別の使用およびその後のキメラ子孫およびトランスジェニック子孫の産生のための胚幹(mES)細胞への染色体移入は周知である。部位特異的相同組換えまたは遺伝子ターゲティングの強力な技術が開発されている(Thomas,K.R.and M.R.Capecchi,Cell 51:503−512,1987;Waldman,A.S.,Crit.Rev.Oncol.Hematol.12:49−64,1992による概説を参照のこと)。クローン化DNAの挿入(Jakobovits,A.,Curr.Biol.4:761−763,1994)ならびにCre−loxP系技術による染色体フラグメントの操作および選択(Smith,A.J.et al.,Nat.Genet.9:376−385,1995;Ramirez−Solis,R.et al.,Nature 378:720−724,1995;米国特許第4,959,317号;同第6,130,364号;同第6,130,364号;同第6,091,001号;同第5,985,614を参照のこと)は、安定な遺伝子キメラを産生するための遺伝子操作およびmES細胞への遺伝子移入に利用可能である。哺乳動物系で有用であることが証明されている多数のこのような技術は、必要な培養物が利用可能である場合、ニワトリPGCに適用することが可能であろう。
【0069】
始原生殖細胞のゲノムは、一般に、静止状態にあると考えられ、したがって、クロマチンは非常に濃縮された状態であり得る。従来のエレクトロポレーションプロトコールによる広範な試験により、PGCゲノムに遺伝子改変物を導入するためには特別な方法が必要であることが示唆される。下記のように、導入遺伝子をニワトリβ−グロビン遺伝子座由来のインスレーターエレメントで取り囲んで発現を増強することができる。β−グロビンインスレーターエレメントを含めることによって成長することができるクローンが日常的に産生され、これを分析し、レシピエント胚に注入する。
【0070】
抗生物質(例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、his−D、ブラストサイジン、ゼオシン、およびgpt)耐性遺伝子の発現を駆動するために使用される従来のプロモーターは、遍在的に発現する。典型的には、プロモーターは、β−アクチン、CMV、またはユビキチンなどの「ハウスキーピング」遺伝子に由来する。全細胞中で典型的に高レベルで発現するので構成的プロモーターが有用である一方で、これらは、ニワトリの全寿命にわたって、全組織といわないまでも、ほとんどの組織で発現し続ける。一般に、発現は、発現を必要とする組織および発生段階のみに制限されるべきである。始原生殖細胞の選択のために、発現を必要とする期間は、培地中に抗生物質が存在する場合、in vitroでその耐性を示す期間である。一旦細胞が胚に挿入されると、選択マーカー(すなわち、抗生物質耐性遺伝子)の発現が終了することが好ましい。抗生物質耐性遺伝子の発現を制限するために、「神経誘導に対する初期応答」(ERNI)プロモーターを使用する。ERNIは、発生の初期段階(例えば、X段階(E−G&K))および培養物中で選択的に発現する遺伝子であり、したがって、このプロモーターを使用して抗生物質耐性遺伝子の発現を駆動し、遺伝子改変物を保有するPGCを選択する。発生の初期段階でERNIのみが発現するので、抗生物質耐性を付与する遺伝子は成熟動物中で発現しない。
【0071】
(実施例11.長期PGC細胞培養物の均質性)
長期培養後のPGC培養物の均質性を決定するために、ES、EG、DT40(ニワトリB細胞株)、およびPGCを、抗CVH、ニワトリ管ホモログに対する抗体、および1B3抗体で染色した(Halfter,W.,Schurer,B.,Hasselhorn,H.M.,Christ,B.,Gimpel,E.,and Epperlein,H.H.,An ovomucin−like protein on the surface of migrating primordial germ cells of the chick and rat.Development 122,915−23.1996))。CVH抗体の発現は生殖細胞に制限され、したがって、抗CVH抗体は生殖細胞の信頼できるマーカーである。1B3抗原は、性腺の移動およびコロニー形成の間にニワトリPGCの表面上に存在するオボムチン様タンパク質を認識する。
【0072】
細胞を、CMF/2%FBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、再度洗浄した。管を染色すべき細胞アリコートに0.1%TritonX−100を1〜2分間浸透させた。一次抗体を20分間添加し、細胞を2回洗浄し、二次抗体(CHVおよびコントロールのためのAlexa 488抗ウサギIgGならびに1B3のためのAlexa 488抗ウサギIgM)と共に15分間インキュベートした。コントロールとして、細胞のアリコートを、二次抗体のみで染色した。さらに2回の洗浄後、FACS分析用の細胞を調製した。
【0073】
図9に関して、DT40細胞、ES細胞、およびEG細胞は、CHVおよび1B3抗体で染色した場合、全てバックグラウンドを示す。しかし、PGCは、CVH抗体および1B3抗体の両方でさらにより強く染色される。CVHおよび1B3のいずれでも染色されないPGCの小集団が存在し、細胞の小集団がPGC表現型を示さないことを示す。2つの親PGC株およびPGC13親細胞株由来の4つのトランスフェクトされた細胞株(G−09、P84、P97/6、およびP97/33)を、管および1B3抗体(PGC13および102)を使用して試験した。全て同一のパターンを示し、これは、種々のPGC培養物が同一の高い比率でPGC表現型を発現する細胞を含むことを示す。
【0074】
(実施例12.始原生殖細胞の遺伝子改変)
環状CX−GFPプラスミドを使用したエレクトロポレーションにより、PGCの一過性トランスフェクション率は1〜30%の間で変動することが明らかとなった。8回の100μ秒および800Vの方形波パルスを使用して、本発明者らは、CX−neo構築物を保有するPGC細胞を得、G−09と命名した。図8を参照のこと。サザンブロット分析を使用して、構築物の組み込みを評価した。しかし、この安定にトランスフェクトされた株の単離は誤った事象であり、その後の実験で再現性がなかった。G−09を除き、方形波パルスおよび指数関数的減衰パルスの両方を使用した37のトランスフェクション実験における線状化構築物を使用した17×10個のPGCのエレクトロポレーション後にPGCは安定にトランスフェクトされなかった。これらの各実験では、PGC数は、1×10〜10×10に変化した。マウス、ニワトリ、およびヒトにおけるES細胞研究で広く使用されている以下のプロモーターを試験した:CAGとも呼ばれるCXプロモーター(Niwa,H.,Yamamura,K.,and Miyazaki,J.,Efficient selection for high−expression transfectants with a novel eukaryotic vector.Gene 108,193−9.1991)、CMVエンハンサーを含むニワトリβ−アクチンプロモーター、PGKプロモーター、MC1プロモーター、およびUbcプロモーターを含む。これらのプロモーターは、トランスフェクション効率を増加させなかった。選択マーカーおよび遺伝子改変細胞株のクローン誘導体を発現させるために、組み込まれた構築物と共にインスレーターを使用した。
【0075】
インスレーターは、不活性なクロマチンドメインから活性なクロマチンドメインを分離し、隣接するエンハンサーの活性化効果または隣接する凝集クロマチンのサイレンシング効果から遺伝子を隔離するDNA配列である。ニワトリでは、β−グロビン遺伝子座の5’側に存在する5’HS4インスレーターが、Felsenfeld and colleaguesによって十分に特徴づけられている(Burgess−Beusse,B.,Farrell,C.,Gaszner,M.,Litt,M.,Mutskov,V.,Recillas−Targa,F.,Simpson,M.,West,A.,and Felsenfeld,G.(2002)).The insulation of genes from external enhancers and silencing chromatin.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99 Suppl.4,16433−7.このインスレーターはβ−グロビン遺伝子座を構成的に凝縮されたクロマチンの上流領域から保護する。本発明者らは、ニワトリβ−アクチン−neoカセットの5’側および3’側の両方のインスレーターとしてニワトリβ−グロビン5’HS4配列を使用したネオマイシン耐性を駆動するニワトリβ−アクチンプロモーターを使用して導入遺伝子をアセンブリした。
【0076】
ニワトリβ−グロビン遺伝子座由来の高感度部位4の250bpコア配列を、以下のプライマー組を使用してPCR増幅した。
【0077】
【化2】

PCR産物を、pGEM−Tにクローン化し、配列決定した。HS4部位の直列重複を、pGRMクローン中のHS4をBamHIおよびBglIIで消化してインサートを放出させ、BglIIで消化してベクターを線状化することによって作製した。HS4フラグメントを、HS4インスレーターのコピーを含むベクターにライゲーションした。クローンをスクリーニングし、2つのHS4コピーが同一方向であるクローンを選択した。これを、2×HS4と呼ぶ。
【0078】
(実施例13.HS4β−アクチン−neoを使用したバルク選択)
β−アクチンneoを、Buerstedde(クローン574)から得て、pBluescriptに移入した。次いで、β−アクチン neoの5’末端および3’末端で2×HS4をクローン化して、HS4−β−アクチンneoを産生した。この構築物を使用して、トランスフェクションを8回行った。各トランスフェクションのために、5×10個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。1回の指数関数的減衰(ED)パルス(200V、900〜1100μF)または8回の方形波(SW)パルス(250〜350V、100μ秒)を印加した。トランスフェクション後、細胞を数日間成長させ、その後、ネオマイシン選択剤(300μg/ml)を添加した。各トランスフェクション物をプールとして成長させた。5〜8個のトランスフェクション物から耐性細胞を単離した。
【0079】
2プールのトランスフェクション細胞に対してサザン分析を行った(図10)。PGC細胞株P84およびP85由来の2μgのゲノムDNAならびに20pgのプラスミド(HS4−β−アクチンneo)を消化した。消化物を0.7%ゲルで泳動し、10×SSC中でナイロン膜に毛細管現象によって一晩移し、Rapid Hyb(Amersham)中にて放射性標識neo遺伝子配列で2時間探索した。洗浄後、ブロットをフィルムに−80℃で一晩感光した。図10に関して、レーン1はP84であり、レーン2はP85であり、レーン3はプラスミドである。プラスミドコントロールのために、HS4−β−アクチンneoプラスミドDNAを、NotIで線状化した。2.3Kb内部フラグメントを得るために、PGC DNAおよび線状化プラスミドを、BamHIで消化した。P84およびP85の両方は、2.3Kbのサイズの内部フラグメントを示す。約2.6kbのより大きな内部フラグメントを、HindIIIでの消化によって放出させた。さらに、この内部フラグメントは、P84およびP85消化物の両方に存在する。EcoRIおよびBglIIでのP84およびP85のゲノムDNAの消化により、導入遺伝子がゲノムに組み込まれた場合、2.9Kbを超えるバンドが明らかとなるはずである。P84では、連結点フラグメントは認められず、P84がいくつかの異なるクローンの複合物であることを示す。P85では、EcoRI消化物中に4.5〜5Kbの連結点フラグメントが存在し、BglII消化物中に5Kbの連結点フラグメントが存在し、このことは、P85がゲノムに組み込まれ、培養物が実質的に1つのクローンから構成されることを示す。本実施例は、始原生殖細胞中の選択マーカーの信頼できる発現のための構築物の好ましいエレメントとしてのインスレーターの有用性を示す。
【0080】
(実施例14.遺伝子改変PGCのクローン誘導)
以下の実施例は、始原生殖細胞の遺伝子改変株をクローン的に誘導し得ることを示す。
【0081】
第1に、β−アクチン−eGFPを作製した。eGFP遺伝子を、XmmIおよびKpnIを使用してCX−eGFP−CX−puroから放出させ、EcoRIおよびXmmIを使用してHS4−β−アクチン puroからβ−アクチンを放出させ、2つを3方向(3−way)ライゲーションとしてEcoRIおよびKpnIで消化したpBluescriptにクローン化してβ−アクチンEGFPを産生した。次いで、BamHIおよびKpnIを使用してβ−アクチンeGFPを放出させ(T4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化し)、BglIIおよびEcoRVで消化したHS4−β−アクチンpuroにクローン化した。
【0082】
この構築物を使用してトランスフェクションを5回行った。各トランスフェクションのために、5×10個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。EDパルス(150〜200V、900μF)またはSW(350V、8パルス、100μ秒)パルスを印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレートし、数日間成長させた後に選択剤(0.5μg/ml)を添加した。5回のトランスフェクションのうちの4回で全部で5つのクローンが認められた。1つのクローンTP103を、サザンによって分析した(図11)。図11に関して、プラスミドコントロールDNAを、NotIで線状化した。KpnIでのDNAの消化によって内部フラグメントを放出させた。TP103およびプラスミドの両方において、同サイズのフラグメントが放出された。NcoI、MfeI、およびSphIでのTP103のゲノムDNAの消化により、消化したプラスミドDNAの対応するレーンよりも大きなバンドが明らかとなるはずである。MfeI消化したTP103ゲノムDNAのレーンでバンドは認められず、これは、バンドが非常に大きいためであり得る。NcoIおよびSphI消化を示すレーンでは、TP103ゲノムDNA中にプラスミドDNA中に放出されたフラグメントより実質的に大きいフラグメントが放出され、TP103細胞株のゲノムに導入遺伝子が組み込まれたことを示す。
HS4−β−アクチン−puroのクローン誘導
第1に、β−アクチンpuroを、CX−EGFP−CX−puro由来のpuro(XmmI−EcoRI)、pBS中のβ−アクチンneo由来のβ−アクチン(上記を参照のこと)(Sal−XmmI)、およびpBluescript(SalI−EcoRI)の3方向ライゲーションによって作製した。次に、BamHI/SAP処理2×HS4ベクターへのBamHI消化β−アクチンpuroのライゲーションによって2×HS4の2つのコピーを含むpBSにβ−アクチンpuroをクローン化した。
【0083】
この構築物を使用してトランスフェクションを3回行った。各トランスフェクションのために、4〜5×10個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。200V、900μFのEDパルスを印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレートし、数日間成長させた後に選択剤(0.5μg/ml)を添加した。2回のトランスフェクションでクローンは認められなかった。第3のトランスフェクションから2つのコロニーを単離した。
HS4−cx−eGFP−cx−Puroのクローン誘導
HS4−cx−eGFP−cx−Puroを使用してトランスフェクションを3回行った。5×10個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。350Vで100μ秒のSWパルスを、各トランスフェクションに8回印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレートし、数日間成長させた後にピューロマイシン選択剤(0.5μg/ml)を添加した。2回のトランスフェクションから全部で16個のクローンが単離された。
cx−neoのクローン誘導
PGC13細胞株に対し、cx−neo選択マーカーを保有するプラスミドでエレクトロポレーションを行った。ネオマイシンへの曝露後、ネオマイシンに耐性を示す細胞株(G−09)を誘導した。この細胞株の核型を決定し、全ての細胞が第2染色体のpアームを欠失していた(表3および図12)。これらのデータは、G−09が第2染色体のpアーム中にサイン欠失(signature deletion)を保有するPGCにクローン的に由来することを証明する。
【0084】
(表3:G−09細胞株の染色体分析)
【0085】
【表4】

(実施例15.PGC中の選択マーカーの組織特異的発現)
遺伝子ERNIは、ニワトリ胚の前原始線条段階から発現し、ヘンセン結節由来のシグナルに対する初期応答遺伝子である(Streit,A.,Berliner,A.J.,Papanayotou,C.,Sirulnik,A.,and Stem,C.D.(2000).Initiation of neural induction by FGF signalling before gastrulation.Nature 406,74−8)。さらに、ERNIは、ニワトリES細胞中で発現する(Acloque,H.,Risson,V.,Birot,A.,Kunita,R.,Pain,B.,and Samarut,J.(2001).Identification of a new gene family specifically expressed in chicken embryonic stem cells and early embryo.Mech Dev 103,79−91)。ERNI遺伝子(cENS−1とも呼ばれる)は、固有の5’および3’UTR配列に加えて、1つの長い読み取り枠が486bpの直列反復配列に隣接する固有の構造を有する。この構造がレトロウイルスLTR様構造を連想させるという考えに基づいて、Acloque et al.2001は、プロモーター/エンハンサー活性のcDNA配列の異なる部分をアッセイし、3’UTR中の固有の配列領域がプロモーターとして作用することを見出した。PCRプロモーターを、本質的に(Acloque et al.,2001)に記載のように、ERNI遺伝子の3’UTRの822bpフラグメントを増幅するようにデザインした。ERNI配列の増幅後、これらをSV40ポリA部位を使用してネオマイシン耐性遺伝子の上流にクローン化して、ERNI−neo(1.8kb)を作製した。次いで、2×HS4インスレーターを、ERNI−neo選択マーカーカセットのいずれかの側にクローン化した。
【0086】
HS4−Emi−neoを使用してトランスフェクションを2回行った。5×10個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。第1のトランスフェクションでは、175V、900μFのEDパルスを1回印加し、第2のトランスフェクションでは、100μ秒および350VのSWパルスを8回印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレートし、数日間成長させた後にネオマイシン選択剤(300μg/ml)を添加した。第1のトランスフェクションで(EDパルス)、5つのコロニーを単離し、第2のトランスフェクションで(SWパルス)、11個のコロニーを単離した。
【0087】
安定にトランスフェクトされたクローンの単離は、ERNIがPGC中で発現され、これを組織特異的プロモーターとして使用することができることを示す。
【0088】
(実施例16.生殖系列へのトランスフェクトされたPGCの寄与)
PGCをHS4−βアクチン−GFPでトランスフェクトし、13〜15段階(H&H)の胚の脈管構造に注入した。18日目に、性腺を取り出し、固定し、切片にし、CVH抗体で染色して生殖細胞を同定した。次いで、染色切片を、性腺中のGFP陽性細胞の存在について分析した。雄(図13)および雌の性腺中でGFP陽性生殖細胞が見出された。これらの胚の脳、心臓、筋肉、および肝臓の組織学的調製物試験により、1つのスライドで4つの緑色の細胞のみが示された。これらのデータは、少数の培養PGCが異所で見出されたが、大部分の培養PGCは生殖系列を優先的にコロニー形成することを証明する。
【0089】
GFP陽性細胞が生殖細胞であることを決定するために、切片を抗CVH抗体で染色した。図14に認められるように、GFP陽性細胞はCVHタンパク質についても染色され、GFP陽性細胞が生殖細胞であることを示す。
【0090】
図14に関して、GFP陽性細胞がこの切片中に存在し、DAPI/GFPパネルは、これらのGFP陽性細胞が精細管内に存在することを示す。生殖細胞を抗CVH抗体で染色する場合、これらは、生殖細胞の細胞質の輪郭を描く強く赤色に染色された環を示す。DAPI/CVHパネルは、これらの細胞が精細管内に存在することを示す。最後のパネルは、GFP陽性細胞がCVHについても染色され、精細管がGFP陰性のCVH陽性生殖細胞を含むことを示す。
【0091】
(実施例17.遺伝子改変PGCの生殖系列伝達)
導入遺伝子(βアクチン−neo、βアクチン−eGFP−βアクチン−puro、cx−eGFP−cx−puro)の1つでトランスフェクトされたBarred Rock PGCを、13〜14段階(H&H)の胚の脈管構造に注入した。ニワトリを孵化させ、雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、Barred Rock雌鶏と交配させて導入遺伝子の生殖系列伝達を決定した。全ての黒色子孫はPGCに由来し、これらを導入遺伝子の存在について試験した(表5)。生殖系列伝達率を、羽の色をスコアリングした全ニワトリ数で黒色ニワトリ数を割ることによって計算した(表5)。
【0092】
(表5:遺伝子改変した始原生殖細胞の生殖系列伝達)
【0093】
【表5】

(実施例18.導入遺伝子は、メンデルの法則で遺伝する)
βアクチン−neo、βアクチン−GFP、またはcx−GFPの1つを含むように遺伝子改変されたBarred RockPGCを保有するキメラ雄の交配に由来する黒色子孫を、導入遺伝子の存在について分析した。表6に示すように、導入遺伝子は、約50%のPGC子孫に遺伝し、メンデル性遺伝を示す。
【0094】
(表6:導入遺伝子のメンデル分離)
【0095】
【表6】

カイ二乗分析により、1:1のトランスジェニック子孫:非トランスジェニック子孫予測比と有意に異ならない。
【0096】
(実施例19.遺伝子改変PGCを保有するキメラの子孫における導入遺伝子の遍在発現)
βアクチン−GFPがゲノムに安定に組み込まれたPGCを保有するキメラを、野生型雌鶏と交配し、胚をGFP発現についてスコアリングした。胚中の発現の例を図15に示し、これは、GFPが発生段階34(H&H)までのトランスジェニック子孫の全組織中で発現することを示す。より高齢の動物では、凍結切片を使用した組織学的実験のために組織を調製した。1〜2週齢のニワトリの膵臓、皮膚、肺、脳、卵巣、腎臓、嚢、十二指腸、胸部、心臓、肝臓、および脾臓由来の組織は、孵化後の発現が動物中に遍在したままであることを証明する。
【0097】
(実施例20.トランスジェニックニワトリの卵白中のモノクローナル抗体の発現)
上記のように、このモノクローナル抗体は、本発明の導入遺伝子構築物を使用して発現することができるいくつかのモノクローナル抗体産物のタイプのうちのたった1つの例である。さらに、タンパク質クラスとしてのモノクローナル抗体は、本明細書中に記載の方法および技術による組織特異的様式で発現することができる多数のタンパク質産物クラスのうちのたった1つの例である。以下の実施例を使用して、公知のコード配列を有する任意のタンパク質または抗体を発現する。
【0098】
ニワトリ卵管の管状腺細胞中でモノクローナル抗体を発現させるために使用されるベクターを、OvBACと命名する。このベクターは、オボアルブミン構造遺伝子ならびに5’および3’隣接配列を含むニワトリオボアルブミン遺伝子座由来のインタクトなBACクローンから構成される。オボアルブミン翻訳開始コドンがIgLイニシエーターコドンに融合するようなBAC上のオボアルブミン遺伝子へのモノクローナル抗体カセット(IRES配列によって連結されたヒトIgLをコードする遺伝子およびヒトIgHをコードする遺伝子を含む)の挿入により、卵管中での高レベルのモノクローナル抗体の発現が駆動される。卵管中に発現された抗体が分泌され、卵白中に蓄積する。
【0099】
固有の制限酵素部位が全長ヒトIgGκを発現させる任意の所望のモノクローナル抗体の可変領域をコードする重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子が容易に挿入されるように戦略的に配置されたモノクローナル抗体モジュラーカセットをデザインした。次いで、このカセットを、目的の可変領域で改変された後、卵管でのMAbの発現のためにOvBACに挿入する。カセットは、ヒトCκ定常領域、ヒトCγ1定常領域、およびヒトκJ−Cイントロンの一部、およびヒトCγ1のイントロン上流を含む。VH遺伝子および小イントロン下流のシグナルペプチドも存在する。しかし、VLシグナルペプチドは存在しない。IRES配列はIgL遺伝子とIgH遺伝子との間に存在し、それにより、完全な抗体が1つの導入遺伝子から発現される。可変領域遺伝子を、定常領域遺伝子のイントロン上流に存在する固有の制限部位(VLについてはSnaBIまたはSrfI;VHについてはNruIまたはPmeIなど)の1つに挿入する。可変領域遺伝子は、適切な発現のために定常領域遺伝子にスプライシングされるようにスプライスドナー配列を含まなければならない。再編成された発現可変領域遺伝子を、ハイブリドーマゲノムDNAまたはハイブリドーマ由来の組換えDNA由来のPCRによって増幅する。軽鎖のシグナルペプチドリーダー配列を、軽鎖Vの増幅時に添加しなければならず、カセット中に重鎖シグナルペプチドが存在し、したがって、重鎖Vの挿入時に必要ではない。VL遺伝子のために、以下を含むようにPCRプライマーをデザインする。VL遺伝子の上流側の5’プライマーは、SnaBI制限酵素の認識部位、KozakコンセンサスATG、シグナルペプチド、およびPCR反応におけるプライミングのための目的のV領域との20bpの相同物を含む。cDNAクローンをPCRのテンプレートとして使用する場合、シグナルペプチドエキソンは残りのVL遺伝子に既に融合している。そうでなければ、ヒトVLシグナルペプチドをインフレームで成熟可変領域のN末端に付加するようにプライマーをデザインする。シグナルペプチドを1工程で付加する場合にプライマーが長くなるので、この工程は、必要な配列を付加するために2ラウンドのネスト化PCRが必要であり得る。VL遺伝子の3’末端で、SgfI制限酵素の認識部位、目的のV領域の3’末端に対する約20bpの相同物、および約20bpのJ−Cγイントロン配列(下流Cγ遺伝子のスプライシングのためのスプライスドナーを含む)を含むようにPCRプライマーをデザインする。VH遺伝子のために、PCR増幅のための5’プライマーは、NruI酵素の認識部位、シグナルペプチド配列中に存在する約20bpのVHイントロン(モジュラーカセット中のVHシグナルペプチドスプライスドナーのスプライシングのためのスプライスアクセプターを含む)、11bpのVHシグナルペプチドコード配列、および目的のVH遺伝子の5’末端に対する約20bpの相同物を含む。3’プライマーは、目的のVH遺伝子の3’末端に対する約20bpの相同物(J領域に対応する)、約20bpのJ−Cμイントロン(Cγ1遺伝子下流のスプライシングのためのスプライスドナーを含む)、およびNruI酵素の認識部位を含む。VLおよびVHのPCR産物をクローン化および配列決定し、その後にモジュラーMAbカセットベクターに挿入する。
【0100】
Copeland,N.G.,Jenkins,N.A.,Court,D.L(2001).Recombineering:a powerful new tool for mouse functional genomics.Nat Rev Genet 2,769−79に記載のように、オボアルブミン配列にMAbカセットを挿入するためのリコンビニアリング(recombineering)によってOvBACクローンを改変する。Wang,Z.,Engler,P.,Longacre,A.,Storb,U.(2001).An efficient method for high−fidelity BAC/PAC retrofitting with a selectable marker for mammalian cell transfection.Genome Res.11,137−42のレトロフィッティングによって選択マーカー(neoまたはピューロマイシン耐性のため)をOvBACに添加する。
【0101】
(実施例21.トランスジェニックニワトリの卵白中の抗IL−2Rα)
ヒトIL−2Rα受容体に特異的なMAbを発現するための全ストラテジーを以下に示す(図16および18を参照のこと)。工程1では、抗IL−2Rα IgL/IgHカセットを、リコンビニアリングによる大腸菌での相同組換えによってOvBACに挿入する。次いで、抗体を、Ov調節エレメントの転写調節下に置く。工程2では、リコンビニアリングで使用したカナマイシン遺伝子を、Flpリコンビナーゼによって除去する。ヒト化抗IL−2Rα抗体由来のVコード配列を、CκおよびCγ1定常領域を含むカセットにクローン化する。IgκおよびIgH遺伝子を、IRES配列によって連結し、その結果、両遺伝子は1つの導入遺伝子構築物から発現するので、たった1つのBACトランスフェクションが必要である。相同組換えによって抗体カセットをBAC上のOv遺伝子に挿入する(Lee and Copeland,2001)。効率的な翻訳のために、Igκ遺伝子をOv Kozak翻訳開始配列に融合させる。最後に、PGCクローンのトランスフェクションおよび選択のために、PGC中の選択マーカーであるERNI−puroをBACに付加する。
【0102】
図16は、OvBAC抗IL−2Rαの構築を示す。重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子を得るために、各遺伝子のために4つの長いオリゴヌクレオチド(約20bp重複する)を合成し、互いにアニーリングする。DNAポリメラーゼ(T4バクテリオファージ由来)を使用して、ギャップを充填する。次いで、MAbカセットへのクローニングのために、合成遺伝子を制限酵素で消化する。
【0103】
ヒト化抗IL−2RαMab(MAb配列は、特許5,585,089号に由来する)の構築のためのオリゴヌクレオチドを以下に示す。
軽鎖V遺伝子(オリゴ1〜4)
【0104】
【化3】

図17に関して、オリゴ1は、クローニングのためのXbaI部位(大文字)およびその後にVLシグナルペプチド(イントロンなし)を有する。Ov Kozak翻訳開始配列に下線を引き、最後の3つのヌクレオチドは開始コドンである。シグナルペプチド切断部位(対応するタンパク質配列中)をダブルスラッシュで示す。オリゴ4は、クローニングのためのSgfI部位(大文字)およびその後にCkスプライシングのための17bpのヒト5’J4−Ckイントロン(下線)を有する。スプライスドナーGヌクレオチドに二重下線を引いている。
重鎖V遺伝子(オリゴ5〜8)
【0105】
【化4】

オリゴ5は、クローニングのためのNruI部位(大文字)、その後のヒトVHシグナルペプチドイントロンの15bpの3’末端(下線)、およびその後のヒト化抗IL−2RαVH遺伝子由来の11bpのVHシグナルペプチドエキソン配列(二重下線)を含む。シグナルペプチド切断部位(対応するタンパク質配列中)を、ダブルスラッシュで示す。
【0106】
オリゴ8は、NruI部位(大文字)およびその後にヒトJ−Cμイントロンの12bpの5’末端(下線)を含む。スプライスドナーCヌクレオチドに二重線を引いている。
【0107】
オリゴ1〜4を混合し、オリゴ5〜8を混合し、2つの混合物を、沸騰水を含むビーカー中でインキュベートし、室温にゆっくり冷却することによってアニーリングする。相補鎖中のギャップを、DNAポリメラーゼを使用して修復する。
【0108】
図18に関して、次いで、Vの5’末端および3’末端にデザインした固有の制限部位(本実施例では、重鎖VのためにNruIおよび軽鎖VのためにXbaI/SgfI)を使用して、IgκおよびIgHのVをCκおよびCγ1遺伝子を含むカセットにクローン化する。
【0109】
さらに、図18に関して、Ov構造遺伝子の5’の110kbの配列およびOv構造遺伝子の3’の30kbの隣接配列と共に、OvBACを上に示す。ERNI−puro選択マーカーを、3’末端に示す。以下のエレメントを含むMAbカセットを示す(左から右):相同組換えによるOvBACへの挿入のための5’Ov相同アーム、Ov KozakおよびATG、ヒトVLシグナルペプチド(SiGVL)、MAb由来の挿入されたヒト軽鎖可変領域遺伝子(VL)、J−Cκイントロン、Cκ遺伝子、下流IgH遺伝子の翻訳のためのIRES、ヒト重鎖シグナルペプチド(SiGVH)、MAb由来の挿入された重鎖可変領域遺伝子(VH)、J−Cγイントロン、その内部イントロンを含むCγ1遺伝子、およびOvBACへの挿入のための3’Ov相同アーム。(細菌における選択のためのカナマイシン遺伝子を示さない)。
【0110】
OvBACへの抗体カセットの挿入のために、リコンビニアリングターゲティングベクターを、Igκ−IRES−IgHカセットへの相同アームの付加によって作製した。相同アームは、BACを保有する大腸菌EL250株の相同組換え機構を使用して、BAC中でOv遺伝子に抗体カセットをターゲティングするように作用するOv遺伝子座由来のフラグメントである(Lee and Copeland,2001)。5’Ov相同アームは、Ov遺伝子中のOv Kozak翻訳開始配列のすぐ上流に存在するHincII−XbaIフラグメントに対応する124bpのオボアルブミン配列であり、以下の配列を有する。
【0111】
【化5】

以下のプライマーを使用して、5’相同物を、ニワトリゲノムDNAまたはクローン化Ov DNAからPCR増幅する。
【0112】
【化6】

3’Ov相同アームは、オボアルブミンの翻訳終結コドンのすぐ下流に存在する125bpのオボアルブミン配列であり、以下の配列を有する。
【0113】
【化7】

以下のプライマーを使用して、ニワトリゲノムDNAまたはクローン化DNAから増幅した152bpのPCR産物として3’Ov相同物を得る。
【0114】
【化8】

5’および3’相同フラグメントの増幅後、PCR産物をpBluescriptなどのプラスミドベクターにクローン化し、配列決定によって確認する。次いで、相同アームをMAbカセットのいずれかの側に配置し、5’Ov相同物をIgL遺伝子の5’側に配置し、3’Ov相同物をIgH遺伝子の3’に配置する。相同組換えによるOvBACへのMAbカセットの挿入により、Ov構造遺伝子が欠失する。OvBACへのターゲティングのためのMAbカセットの最終構造も図17に示す。
【0115】
選択マーカー(カナマイシン耐性をコードする遺伝子など)は、MAbカセットでの形質転換後のOvBACを保有する大腸菌中での相同組換え体の選択に必要である。したがって、ターゲティングベクターはまた、FRT部位に隣接したカナマイシン耐性遺伝子を含む。例えば、1.5KbのFRT−Kanカセットを、XmaIおよびBglI(Nt4644−6131)によってpIGCN21(NCIのNeal Copeland研究所から入手したIRES−eGFPcre−FRT−kan−FRTカセットを含むベクター)から放出させ、平滑末端化する。次いで、このフラグメントを、Ov相同物に隣接したMAbカセット中の平滑末端化NotI部位に挿入する。ターゲティングベクターを、野生型OvBACを保有する細菌にエレクトロポレーションし、カナマイシン耐性コロニーを選択する。正確なターゲティングを、クローンの制限マッピングによって評価する。ほとんどのカナマイシン耐性コロニーが正確にターゲティングされるはずである。次いで、EL250株中のFlp遺伝子のアラビノース誘導によるFlpリコンビナーゼの一過性発現によって耐性カセットを除去してOvBAC抗IL−2Rαを得る。カナマイシン感受性クローンをスクリーニングし、制限マッピングによって評価する。
【0116】
次いで、BAC形質転換PGC細胞の選択のために、PGC中で活性な選択マーカーをBACに付加する。本発明者らは、ERNIプロモーターによって駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子を使用して、安定に形質転換されたPGC株を誘導した。ERNIは初期ニワトリ胚中で特異的に発現した遺伝子であるので、ERNI−puroマーカーは、成体トランスジェニックニワトリで発現しない。本発明者らは、選択マーカーのニワトリβ−グロビン遺伝子座由来のインスレーターエレメントとの隣接によってトランスフェクション後に得られるPGCクローンの数が増加することも見出した。HS4と呼ばれるこのエレメントを、ERNI−puroのいずれかの側でクローン化する。レトロフィッティングによってHS4−ERNI−puroをBACに付加する(Wang et al.,2001)。最終OvMAb抗IL−2RαBACを、AscIで線状化し、その後トランスフェクションする。
【0117】
(実施例22.トランスジェニックニワトリの卵白中に産生された抗体の化学的性質)
トランスジェニックニワトリの管状腺中に産生された抗体の化学的性質は、固有性質を示す。米国特許出願番号11/049,229号および(Zhu,L.,et al.Nat.Biotech.23:1159−1169 2005)は、特に本明細書中で参考として援用される。具体的には、キメラニワトリ中に産生された抗体のモノサッカリド分析によって炭水化物組成の相違が明らかとなり、N−アセチルグルコサミン残基、マンノース残基、および非常に低い含有率のガラクトース残基の存在を示す。トランスジェニックニワトリは、同一の性質を示す。
【0118】
N連結オリゴサッカリドプロフィールの主な相違は、ニワトリ中で産生された抗体中に高マンノース型N−グリカンが存在すること、フコースが存在しないこと、およびガラクトース残基の含有率が非常に低いことである。これらの性質は、いくつかの理由で重要である。第1に、抗原性を示すことが公知のα1−3Gal系統の証拠は存在しない。ガラクトース濃度の減少(典型的には、約2%未満のレベルまで)により、ガラクトース含有系統に起因する抗原性が実質的に減少する。第2に、やはり抗原性を示すことが公知のN−グリコリルノイラミン酸残基の証拠は存在しない。第3に、ニワトリ管状腺細胞中に産生される抗体は、抗体のADCC活性を増強するフコシル残基を実質的に含まない。この文脈では、実質的に含まないは、0.1%未満と定義する。第4に、ニワトリ産生抗体は、マンノース含有率が高く(典型的には、40%超)、それにより、標準としてCHO細胞中で産生された抗体を使用してBalb/cマウスでクリアランスを評価した場合にこの抗体のクリアランス率が増加する。これらの有利な化学的性質を合わせると、抗体は、ニワトリゲノムに無作為に組み込まれるか、組織特異的様式で発現されない導入遺伝子を使用して認められない濃度で卵白中に存在すると予想される。好ましい濃度は、卵あたり1mgを超える抗体、卵あたり2mgを超える抗体、卵あたり3mgを超える抗体、および卵あたり6mgもの抗体である。各卵が約25mlの卵白を含むので、好ましい濃度は、40μg/ml超、80μg/ml超、120μg/ml超、および240μg/mlもの濃度である。
【0119】
卵白から抗体を抽出および精製するために、最初に卵白を低剪断速度にて室温で30分間混合し、次いで、前に記載の改変方法によってオボムチンを沈殿させる。1体積の均質化卵白懸濁液を、3倍体積の逆浸透水に添加し、30分間撹拌する。希釈した懸濁液を、0.5Mリン酸を使用してpH6.0に調整し、12,100gで20分間遠心分離する。上清を、0.5M第二リン酸ナトリウムおよび結晶塩を含む150mM塩化ナトリウム濃縮物を使用してpH7.4に調整する。ヒトIgGを、プロテインA−SepharoseFFカラム(Amersham Biosciences)にて流速120cm/hで精製する。吸着したヒトIgGを、5カラム体積のローディング緩衝液(PBS、pH7.4)で洗浄し、3mMリン酸で溶離する。溶離したヒトIgG画分を、230mM NaClを含む60mMリン酸ナトリウム(pH7.5)を使用してpH7.5に調整し、40mMリン酸ナトリウムおよび150mM NaClの最終濃度にする。次いで、サンプルを、0.2mmシリンジフィルター(Pall)で濾過した。
【0120】
(実施例23.結合親和性のアッセイ)
LNCaP細胞(ATCC)上のPSMAを抗原として使用して、結合をアッセイした。200,000細胞/ウェルを、50μlアリコートの表示濃度の抗体と共に30分間2連でインキュベートした。細胞を2回洗浄し、その後、ヤギ抗ヒトIgG PE標識抗体(Jackson ImmunoResearch)の200倍希釈物(50μl/ウェル)を4℃で30分間添加した。細胞を、1%BSAを含むPBSで2回洗浄し、FACSによって分析した。LNCaP細胞上のPSMAへのMAb結合のEC50値を、GraphPad Prism 3.0(GraphPad Software)を使用して、結合曲線から決定した。細胞を、10%FBS、10mM HEPES、2mM L−グルタミン、および1mMピルビン酸塩ナトリウムを補足したRPMI1640培地中で成長させた。ニワトリ管状腺細胞中に産生されたMAbF1の抗原結合性を、CHO細胞中で産生されたMAbF1と比較した。両抗体調製物から、類似のEC50値のLNCaP細胞上に発現したPSMAに対するほぼ同一の結合曲線が得られた。データは、ニワトリ由来の抗体およびCHO由来の抗体が異なってグリコシル化される一方で、これらは、抗原を等価に認識して結合することを証明する。
【0121】
(実施例24.抗体内在化アッセイ)
PSMAへのMAbF1の結合により、抗体が内在化する。1つの潜在的適用では、MAbを細胞毒素と抱合し、PSMA発現腫瘍細胞をターゲティングして破壊することができる。LNCaP細胞上のPSMAへの抗体結合の内在化を、MAbおよびHum−Zap(Advanced Targeting Systems)との細胞のインキュベーションによって決定した。HumZapは、リボゾーム不活化タンパク質であるサポリンに抱合したヤギ抗ヒトIgG抗体である。MAbF1/Hum−Zap複合体が細胞表面上のPSMAに結合して内在化した場合に細胞が死滅するのに対して、抗体またはHum−ZapのみではLNCaP細胞に有毒ではない。LNCaP細胞(10,000/ウェル)を、300ng Hum−Zapおよび300ngのF1 MAbまたはコントロールMAbを含む150μlの培養培地中にて37℃で48時間3連でインキュベートした。細胞の増殖および生存を、CellTiter−Glo発光細胞生存アッセイ(Promega)を使用して決定した。また、10,000個の接着LNCaP細胞/ウェルを含む細胞培養培地中での抗体希釈物の4℃で2時間のインキュベーションによって内在化アッセイも行った。抗体溶液を穏やかに除去し、200ngのHum−Zapを含む150μlの培地と置換した。37℃で48時間のインキュベーション後に細胞生存度を決定した。抗体内在化についてのEC50値を、Prism 3.0(GraphPad Software)を使用した画像によって決定した。両抗体調製物は、類似の効率で内在化する。一定の抗体濃度範囲にわたって試験した場合、ニワトリ由来のMAbF1およびCHO由来のMAbF1の両方の内在化についてのEC50値は、0.49nMであった。
【0122】
(実施例25.BALB/cマウス中のMAbのクリアランス)
放射性標識抗体の静脈内注射によって、ニワトリ産生MAbF1のin vivo半減期を、BALB/cマウス中のCHO産生抗体と並行して分析した。10μgのMAbタンパク質を、ヨウ素ビーズ法(Pierce)を使用して、125Iで軽度にヨウ化した(1抗体あたり1つ未満のI)。実験前の1週間、6週齢のメスBALB/cマウス(Taconic Farms,Germantown,N.Y.)に、飲料水にて0.1mg/mlのヨウ化カリウムを与えた。タンパク質あたり4匹のマウスの尾静脈に約600,000cpmの標識MAbを静脈内注射し、全身放射能を全身γカウンター(Ludlum scalerを備えたWm.B.Johnson NaI結晶検出器)を使用して選択した時点で測定した。残存放射能の指数関数回帰分析によって半減期を計算した。ニワトリ管状腺細胞によって産生されたMAbF1は、102.4±0.9時間の半減期(t1/2)でクリアランスされる一方で、CHO細胞によって産生されたMAbF1は、207.5±18.3時間の半減期でよりゆっくりクリアランスされた。
【0123】
(実施例26.ADCCアッセイ)
LNCaP−C42B細胞を、改変51Cr ADCCアッセイで試験した。ヒト末梢血単核細胞を、標準的なFicoll−paque分離によってヘパリン処理全血から精製した。細胞(1×10E6細胞/mL)を、10%FBSおよび10U/mlのヒトIL−2を含むRPMI1640培地に再懸濁し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を回収し、培養培地で1回洗浄し、2×10細胞/mlに再懸濁した。200万個の標的LNCaP−C42b細胞を、総体積が1mlの200μCiの51Crと37℃で1時間インキュベートした。標的細胞を1回洗浄し、1mlの培地に再懸濁し、37℃でさらに30分間インキュベートした。最終インキュベーション後、標的細胞を1回洗浄し、1×10細胞/mlを最終体積にした。最終ADCCアッセイのために、100μlの標識LNCaP細胞を、50μlのエフェクター細胞および50μlの抗体とインキュベートした。1:100の最終標的:エフェクター比を選択した。全研究では、ヒトIgG1アイソタイプコントロールを泳動し、CHO由来の抗PSMA MAbF1抗体と比較した。含まれる他のコントロールは、a)標的細胞およびエフェクター細胞(抗体ではない)、b)エフェクター細胞を含まない標的細胞、およびc)3%TritonX−100の存在下での標的細胞およびエフェクター細胞である。37℃で4時間のインキュベーション後、上清を回収し、γカウンター(Packard InstrumentsのCobraII自動γカウンター)にて240〜400keVの読み取り枠を使用して計数した。抗体濃度の関数として数/分をプロットし、データを非線形回帰(Prismソフトウェア(San Diego,CA)を使用したS字用量応答(種々の勾配))によって分析した。溶解率(%)は以下の式により、決定した。
【0124】
溶解率(%)=(サンプルCPM−抗体なしCPM)/(TritonX CPM−抗体なしCPM)×100
両EC50値および溶解率(%)を、全研究でモニタリングする。例えば、2つの抗体を比較した場合に、EC50もしくは溶解率(%)のいずれかまたは両方の変化を有し得る。
【0125】
抗CD16抗体でのADCCの遮断を、以下の改変を使用して行った。細胞を、5μg/mlの抗CD16抗体3G8またはアイソタイプコントロール抗体の非存在下または存在下で、1または0.01μg/mlのCHO産生MAbF1抗体またはニワトリ産生MAbF1抗体のいずれかとインキュベートした。
【0126】
CHO由来のMAbは用量依存性細胞溶解を誘導し、IL−2刺激したエフェクター細胞を使用して、0.11μg/mlのEC50にて溶解率38%でプラトーに到達する。それに対し、ニワトリ卵由来のMAbは、より強力且つより有効であった。2つの異なる抗体調製物を使用したニワトリ卵由来のMAbの最大溶解率は60%であった。この材料のEC50が0.018μg/mlであったので、CHO由来のMAbを超える効力の増強も証明された。最後に、予想通り、アイソタイプコントロール抗体は、細胞溶解を誘導しなかった。非刺激エフェクター細胞(新鮮なPBMC)を使用したADCCは、EC50値のより大きな相違を示すが、全細胞死滅の相違はより小さかった。
【0127】
CD16(FCgRIII)は、ADCCを媒介する重要な受容体である。ADCC応答の特異性は、CD16に指向されるモノクローナル抗体を使用した標的細胞とエフェクター細胞との相互作用の遮断によって示された。本研究では、以下の2つの用量のMAbF1抗体を使用した:飽和用量(1μg/ml)および最適以下の用量(0.01μg/ml)。1μg/mlのMAbF1抗体は、抗CD16抗体の非存在下で、CHO由来の抗体およびニワトリ由来の抗体をそれぞれ使用して、約15%および38%の溶解率を誘導した。この溶解率(%)は、抗CD16抗体の存在下で約4%に減少する一方で、アイソタイプコントロール抗体は効果がなかった。
【0128】
(実施例27.CD16結合)
CHOおよびニワトリ由来のMAbF1を、Biacoreから提供されているアミンカップリングキットを使用して、第一級アミンを介してBiacoreセンサーチップ(CM5)のカルボキシメチルデキストランマトリックス表面に固定した。両抗体を、約10,000RUの密度にコーティングした。2つの抗体のCD16−PheおよびCD16−Valとの結合を、固定化抗体表面上にいくつかの濃度のタンパク質を流すことによって行った。非特異的結合効果は、ブランク表面および単純な緩衝液結合サイクルの考慮によって説明された。HBS−EP緩衝液を、希釈のためおよびランニング緩衝液として使用した。Biacore−3000装置にて25℃で実験を行った。GraphPad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、データを単一結合部位モデルに適合させて平衡解離定数を評価した。
【0129】
解離定数を、速度定数よりもむしろ平衡結合実験に基づいて評価した。なぜなら、速度の速さは抗体へのFcR結合の特性だからである。ニワトリ由来抗体の解離定数(K)は、対応するCHO由来の抗体と比較して両FcRの約1/10である。ニワトリ由来の抗体の高親和性は、CHO由来の抗体中に存在するFc領域中のグリコシル化の相違(特に、フコースの非存在に起因する)に寄与し得る。
【0130】
(実施例28.治療有用性)
本発明は、特別に定義したグリコシル化パターンおよび他の化学的性質を有し、上記の遺伝子改変ニワトリを使用して生成した抗体を提供する。これらの性質により、標的組織中の抗体特異的標的への結合を目的として患者に投与した場合、治療特性が改善される。具体的には、上記のように、一定の臨床適応症について、抗体は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増強し、この効果により、一定の臨床適応症で重要な利点が得られる。
【0131】
いくつかのタイプの癌の治療についての非抱合モノクローナル抗体(mAb)の臨床試験から有望な結果が得られている(Dillman,1997,Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−225;Deo et al.,1997,Immunology Today 18:127)。非抱合キメラIgG1は、低悪性度または濾胞性のB細胞非ホジキンリンパ腫で承認されている一方で(Dillman,1997,上記)、別の非抱合mAb(固形乳癌をターゲティングするヒト化IgG1)は、第III相臨床試験で有望な結果が得られている(Deo et al.,1997,上記)。これら2つのMAbの抗原は、その各標的組織中で高度に発現する。このような適用のために、特に、抗体がADCCによる強力な腫瘍破壊を媒介する腫瘍細胞で、本発明の抗体は、患者への投与の際に治療上の利点を付与する。
【0132】
治療での使用のために、本発明の抗体を、1つまたは複数の他の分子的実体(別の抗体(例えば、二重特異性または多重特異性抗体を産生するため)、細胞毒素、細胞リガンド、または(例えば、免疫毒素などの免疫抱合体を産生するための)抗原など)に機能的に連結することもできる(例えば、化学結合、遺伝子融合、非共有結合、またはその他による)。本発明の抗体を、他の治療部分(例えば、放射性同位体、小分子抗癌薬、抗炎症薬、細胞毒素、または免疫抑制薬)に連結することができる。したがって、本発明は、ニワトリ発現系によって可能な化学的性質を有し、本質的に全ての公知の抗体抱合体、結合、および治療での使用のための関連テクノロジーと組み合わせた抗体組成物を含む。
【0133】
したがって、本発明の抗体を使用して、特に、標的組織でADCC機構を示す場合、治療に感受性を示す標的組織中で抗原を発現する細胞を含む種々の疾患を治療および/または予防することができる。治療(例えば、改善)または予防することができる例示的疾患には、固形腫瘍、リンパ腫、びまん性腫瘍、および全てのタイプの癌組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
本発明の治療的実施形態では、特に、ADCCの性質を示す様式によって治療される容態の診断を踏まえて、患者に本発明の抗体を投与する。このような臨床の状況では、本発明の抗体を投与し、治療の細胞傷害性効果を治療後に決定して、標的組織のADCC効果を決定する。本発明の治療組成物に加えて、患者を、化学療法薬、照射、またはFc受容体の発現または活性を調整する(例えば、増強または阻害する)薬剤(サイトカインなど)でさらに治療することができる。治療時の投与のための典型的なサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−SCF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。典型的な治療薬には、特に、抗新生物薬(ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、およびシクロホスファミドなど)が含まれる。
【0135】
別の態様では、本発明は、本発明のニワトリ発現抗体の1つまたは組み合わせを含む組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。本発明の組成物を、当該分野で公知の種々の方法によって投与することができる。当業者に認識されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化する。薬学的に許容可能なキャリアには、滅菌水溶液または分散液が含まれ、薬学的に活性な物質のためのこのような媒質および薬剤の使用は当該分野で公知である。滅菌注射液を、成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込み、その後に滅菌および/または精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液を、基剤となる分散媒および任意の他の成分を含む滅菌賦形剤に活性化合物を組み込みことによって調製する。
【0136】
最適な所望のADCC効果が得られるように投薬計画を調整する。例えば、単回ボーラスを投与することができるか、いくつかに分割した用量を長期にわたって投与することができるか、治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に増減することができる。投与を容易にするためおよび投薬量を均一にするために、投薬単位中に非経口組成物を配合することが特に有利である。本明細書中で使用される投薬単位形態は、治療を受ける被験体の単回投与に適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は、必要な薬学的キャリアと組み合わせた所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態の仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴および達成すべき特定の治療効果、および(b)個体の感受性の治療のためのこのような活性化合物の混合技術に固有の制限によって決定づけられ、且つこれらに直接依存する。
【0137】
本発明の薬学的組成物中の有効成分の実際の投薬レベルは、患者に有毒であることなく、特定の患者の所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量、組成、および投与様式を得るために変化させることができる。選択された投薬レベルは、種々の薬物動態学的要因(使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与期間、使用される特定の化合物の排出速度、治療持続時間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、容態、一般的健康状態、および病歴、ならびに医学分野で周知の要因などが含まれる)に依存する。
【0138】
本発明の抗体の投与の効果が腫瘍などの標的組織で客観的に観察することができるので、本発明の治療方法は、治療(具体的には、ADCCを使用した療法が含まれる)を必要とする患者を診断する工程と、結果が望まれる標的組織を同定する工程と、必要とする患者に本発明の組成物を投与する工程と、患者の標的組織におけるADCCの有効性を決定する工程などによる患者の治療効果を測定する工程を含む。標的組織の長期にわたる性質の変化(細胞死、標的組織の縮み、腫瘍サイズの減少、および医学分野で公知の任意の他の診断技術など)の分析によって、治療効果を決定することができる。
【0139】
本発明の抗体を、当業者に利用可能な多数のADCCの公知のモデルのいずれかにおけるADCC活性について試験することもできる。治療または診断での使用のための本発明の抗体の有用性を決定する目的のために、単独で、または他の哺乳動物、非哺乳動物、植物、または細菌の細胞発現系と比較して、ADCCを測定することができる。したがって、本発明の方法は、上記系で産生された別の抗体と直接的または間接的に比較して、本発明の抗体の使用によってADCCに影響を与える目的での有用性の差を決定する工程を含む。具体的には、この方法は、上記のニワトリ発現系で産生された抗体のADCC効果を比較してADCCの増強を同定し、それにより、ニワトリ発現系に理想的な抗体候補を同定する工程を含む。
【0140】
上記のように、治療有用性を増強するために、本発明の抗体を、1つまたは複数の他の治療薬(例えば、細胞傷害薬、放射性毒素、または免疫抑制薬)と同時投与することができる。抗体を、薬剤(免疫複合体など)に連結することができるか、薬剤と別に投与することができる。後者の場合(個別の投与)、抗体を、薬剤の投与前、投与後、または同時に投与することができるか、または他の公知の療法(例えば、抗癌療法(例えば、放射線))と同時投与することができる。このような治療薬には、特に、抗新生物薬(ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、およびシクロホスファミドなど)が含まれる。本発明の抗体の化学療法薬との同時投与により、ヒト腫瘍細胞に対して細胞傷害効果をもたらす異なる機構を介して作用する2つの抗癌薬が得られる。このような同時投与は、薬物耐性の発生または抗体に対して無反応性になる腫瘍細胞の抗原性の変化に起因する問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1A:54日間培養物中で維持されたPGC。細胞が接着せず、丸い形態を維持することに留意のこと。矢印は、この培養物中で見ることができるいくつかの分裂細胞を示す。図1B:234日間培養物中で維持されたPGC。これらの細胞を、照射STO細胞の支持細胞層上で培養する。
【図2】生殖細胞マーカーCVHおよびDazlのRT−PCRによって決定された遺伝子発現。細胞を、32日間培養した。レーン1は、PGCアリコート中のCVHおよびDazlの発現を示す。レーン2中の第2のサンプルは、アクチンの非存在によって決定したところ、十分なmRNAを含まなかった。CES細胞も分析した。アクチンは発現されたが、cES細胞はCVHを発現せず、Dazlが弱く発現されただけであった。
【図3】166日間培養物中で維持されたPGCのウェスタン分析。ポジティブコントロールとして精巣を使用し、ネガティブコントロールとして肝臓を使用した。一次抗体としてウサギ抗ニワトリCVH IgGを使用した。
【図4】テロメア反復増幅プロトコール(TRAP)アッセイ。異なる希釈率の2つの異なるPGC細胞株の細胞抽出物(13および16)を、146日間培養物中で維持した。ポジティブコントロールは、形質転換ヒト腎臓細胞株293からなり、ネガティブコントロールは、テンプレートを添加しない溶解緩衝液のみからなる。PGCおよびポジティブコントロールレーンでは、反復配列が認められ、これはテロメラーゼの存在を示す。
【図5】図5A:培養物中に維持されたPGC由来のcEG細胞。図5B:ニワトリ胚幹細胞。両細胞型における小さな細胞、大きな核(淡灰色)、および明確な核小体に留意のこと。
【図6】PGC由来のcEG細胞から得たキメラ。EG細胞は、黒い羽をしたBarred Rock胚に由来した。レシピエントとして、白い羽の(白色レグホン)胚を使用した。黒い羽によって体細胞キメラ現象が明らかである。
【図7】雄鶏IV7−5とその子孫。白色レグホンは、優性な白色遺伝子座で優性ホモ接合である(I/I)。Barred Rock雌鶏(i/i)と交配した場合、白色レグホン由来の全ての子孫は白色である(I/i)。黒色の雛鶏は、注入したPGC(Barred Rock胚由来(i/i))が白色レグホンの雄鶏の生殖系列に入ったことを証明する。
【図8】始原生殖細胞(PGC)系統中のcx−neo導入遺伝子のサザン分析。
【図9】ニワトリ管(vasa)ホモログ(CVH)および1B3に対する抗体で染色したDT40細胞(ネガティブコントロール集団)、ES細胞、EG細胞、およびPGCのFACS分析。DT40細胞、ES細胞、およびEG細胞は両マーカーについて陰性であったが、大部分のPGCはCVHおよび1B3の両方について染色された。使用した細胞株は、PGC102、ES439、およびEG455であった。
【図10】2つの始原生殖細胞PGC株におけるHS4−β−アクチン−neo導入遺伝子のサザン分析。
【図11】コロニー由来のトランスフェクトしたPGC株がキメラニワトリの生殖系列に寄与し、EG細胞に分化することができることを示すサザンブロット分析。上のパネル:HS4 bactin−eGFP−bactin−puro構築物でトランスフェクトしたPGCに由来するゲノムDNA、トランスフェクトしたPGCで作製したキメラ雄鶏由来の3つの胚に由来するゲノムDNA、およびトランスフェクトしたPGC由来のEG細胞に由来するゲノムDNAを、導入遺伝子挿入の内部フラグメント(KpnI)および連結点フラグメント(NcoI、AflII)を検出するために、制限酵素で消化した。消化したDNAを、0.7%アガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射性標識eGFP配列で探索した。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、PGC細胞、EC細胞、および緑色蛍光を示した2つの胚(GFP+胚)で同一であった。第3の非蛍光胚(WT胚)は、ハイブリッド形成を示さなかった。下のパネル:構築物の略図を示し、そして、制限部位の位置を示し、予想制限フラグメントサイズを下に示した。5.3kbフラグメントが得られる2つのKpnI部位が存在する。NcoIおよびAflIIは、構築物内を1回切断し、それによって認められる制限フラグメントは、挿入部位において隣接ゲノムDNAを構築物と連結する連結点フラグメントである。
【図12】全染色体が二倍体であることを示すG−09の核型。GGA2の1つのコピーでは、pアームの大部分が失われているか、別の染色体に転座している。CGA2の他のコピーは正常である。細胞は、ZZ(雄)である。
【図13】DAPIで染色した成長18日目の精巣の切片。GFP陽性生殖細胞は、細精管内で明確に認められる。
【図14】DAPI染色パネルは、E18精巣の細精管を通る切片を示す。
【図15】βアクチン−GFP導入遺伝子で安定にトランスフェクトしたPGCを保有するキメラ由来のトランスジェニック子孫。胚は、GFPが、x段階(EG&K)から34段階(H&H)までの全組織中で発現することを証明する。
【図16】ステップ1では、抗IL−2Rα IgL/IgHカセットを、リコンビニアリング(recombineering)により、大腸菌内での相同組換えによってOv BACに挿入する。次いで、抗体を、Ov調節エレメントの転写調節下におく。ステップ2では、リコンビニアリングで使用したカナマイシン遺伝子を、Flpリコンビナーゼによって除去する。
【図17】示すように、全長軽鎖V領域を産生するために互いにアニーリングするようにデザインされた軽鎖V遺伝子オリゴのデザインを示す。各オリゴを、3’方向を指す矢印と共に示す。
【図18】Ov構造遺伝子の5’側の110kbの配列およびOv構造遺伝子の3’側の30kbの隣接配列を有するOvBAC構築物を示す。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスジェニックニワトリであって、
15kbを超えるサイズの外因性DNAをコードする導入遺伝子を含む遺伝子改変された始原生殖細胞によってコロニー形成した生殖系列組織を含む、トランスジェニックニワトリ。
【請求項2】
前記導入遺伝子が安定に組み込まれている、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項3】
前記外因性DNAがタンパク質をコードする、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項4】
タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項3に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項5】
前記導入遺伝子がヒトポリヌクレオチド配列から構成される、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項6】
前記外因性DNAが少なくとも1つのインスレーターに隣接している、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項7】
前記導入遺伝子が選択マーカーから構成される、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項8】
前記導入遺伝子がERNIプロモーターから構成される、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項9】
ゲノムが10kbを超える外因性DNAから構成される導入遺伝子から構成される、トランスジェニックニワトリ。
【請求項10】
前記導入遺伝子が安定に組み込まれている、請求項7に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項11】
前記外因性DNAがタンパク質をコードする、請求項7に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項12】
タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項7に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項13】
前記導入遺伝子がヒトポリヌクレオチド配列から構成される、請求項7に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項14】
前記外因性DNAが少なくとも1つのインスレーターに隣接している、請求項7に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項15】
前記導入遺伝子が選択マーカーから構成される、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項16】
前記導入遺伝子がERNIプロモーターから構成される、請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項17】
トランスジェニックニワトリを産生する方法であって、
10kbを超える導入遺伝子を始原生殖細胞に組み込む工程と、
前記始原生殖細胞をレシピエント胚に挿入する工程と、
トランスジェニックニワトリを孵化させる工程と
を含む、方法。
【請求項18】
前記導入遺伝子が安定に組み込まれている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記外因性DNAがタンパク質をコードする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記導入遺伝子がヒトポリヌクレオチド配列から構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記外因性DNAが少なくとも1つのインスレーターに隣接している、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記導入遺伝子が選択マーカーから構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記導入遺伝子がERNIプロモーターから構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
始原生殖細胞のゲノムに安定に組み込まれた外因性DNAを保有するニワトリ始原生殖細胞のクローン由来細胞培養物。
【請求項26】
前記培養培地が、バッファローラット肝臓(BRL)細胞由来の馴化培地から構成される、請求項25に記載の培養物。
【請求項27】
前記培養培地が線維芽細胞成長因子(FGF)から構成される、請求項25に記載の培養物。
【請求項28】
前記培養培地が幹細胞因子から構成される、請求項25に記載の培養物。
【請求項29】
前記培養培地がニワトリ血清から構成される、請求項25に記載の培養物。
【請求項30】
前記培養物が少なくとも1×10個の細胞を含む、請求項25に記載の培養物。
【請求項31】
前記外因性DNAが少なくとも1つのインスレーターに隣接している、請求項25に記載の培養物。
【請求項32】
生殖系列キメラニワトリであって、
遺伝子改変された始原生殖細胞によってコロニー形成した生殖系列組織と、
遺伝子改変細胞を実質的に含まない体細胞組織と
を含む、生殖系列キメラニワトリ。
【請求項33】
前記遺伝子改変が外因性DNAの安定な組み込みである、請求項32に記載の生殖系列キメラ。
【請求項34】
前記外因性DNAがタンパク質をコードする、請求項33に記載の生殖系列キメラ。
【請求項35】
タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項34に記載の生殖系列キメラ。
【請求項36】
前記モノクローナル抗体がヒトポリヌクレオチド配列を有する、請求項35に記載の生殖系列キメラ。
【請求項37】
前記外因性DNAが少なくとも1つのインスレーターに隣接している、請求項34に記載の生殖系列キメラ。
【請求項38】
前記導入遺伝子のコード領域に作動可能に連結された、神経誘導に対する発現可能な初期応答(ERNI)プロモーターを有する、安定に組み込まれた導入遺伝子を含む、始原生殖細胞。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−529483(P2008−529483A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553384(P2007−553384)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/003690
【国際公開番号】WO2006/084035
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507257219)オリジェン セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】