説明

トランスデューサ装置、およびトランスデューサ装置を組み立てるための方法

【課題】ローラトランスデューサ装置の重量を軽減し実用性を高める。
【解決手段】中心部104、中心部104内に配置され信号を送受信するように構成されたトランスデューサ200、および相対的回転をするために中心部104に取り付けられた管状部材102を備えるトランスデューサ装置100が提供され、管状部材102内には流体が配置される。本装置はさらに、管状部材102の内側の容積を占有するために管状部材102の内側に配置された重量軽減デバイス202を備え、重量軽減デバイス202は、流体を介してトランスデューサ200から管状部材102へ伝送経路を設けるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、ローラトランスデューサに関し、具体的には、ローラトランスデューサ装置のための重量軽減デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ローラトランスデューサ、および具体的には超音波ローラトランスデューサは、傷や劣化がないかを検査すべき部材または部分の画像を提供するために使用されうる。超音波トランスデューサでは、装置の円筒状回転部は水などの流体で満たされることが多く、この流体により、装置内のトランスデューサユニットから被検部材への超音波信号の通信が可能になる。多くの場合、ローラトランスデューサは、使用者が手動で回転させて部材のイメージを生成するハンドヘルド型装置である。装置の重量および反復的な回転運動のために、装置を手動で動かすことは、使用者の疲労および生産性の減少をもたらしうる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様によれば、中心部、中心部内に配置され信号を送受信するように構成されたトランスデューサ、および相対的回転をするために中心部に取り付けられた管状部材を備えるトランスデューサ装置が提供され、管状部材内には流体が配置される。本装置はさらに、管状部材の内側の容積を占有するために管状部材の内側に配置された重量軽減デバイスを備え、この重量軽減デバイスは、流体を介してトランスデューサから管状部材へ伝送経路を設けるように構成される。
【0004】
本発明の別の態様によれば、トランスデューサ装置を組み立てるための方法が提供され、この方法は、第1の密度を有する重量軽減デバイスを形成するステップ、トランスデューサ装置の中心部上に重量軽減デバイスを配置するステップ、および重量軽減デバイスの周囲に管状部材を配置するステップを含む。この方法はさらに、管状部材内に流体を配置するステップを含み、この流体は、第1の密度よりも大きい第2の密度を有する。
【0005】
上記その他の利点および特徴は、図面と併せ以下に説明することからより明らかになるであろう。
【0006】
本発明と見なされる主題については、本明細書の最後にある特許請求の範囲に特に示しかつ明示的に主張する。本発明の上記その他の特徴および利点は、添付の図面と併せ以下により詳細に説明することから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示的なローラトランスデューサ装置の側面図である。
【図2】図1の線2〜2におおよそ沿った、例示的なローラトランスデューサ装置の側断面図である。
【図3】図1の線3〜3におおよそ沿った、例示的なローラトランスデューサ装置の端断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明により、本発明の実施形態を利点および特徴とともに、各図面を参照しつつ例として説明する。
【0009】
図1は、例示的なローラトランスデューサ装置100の側面図である。トランスデューサ装置100は、中心部104の周囲に回転可能に配置されたまたは中心部104に取り付けられた管状部材102を備え、それによって管状部材102の相対的回転が可能になる。中心部104は、被検部材または被検部分である物質上でローラトランスデューサ装置100を誘導するためのフレーム(図示せず)に連結されるように構成された、軸106を備える。フレームは、管状部材102を収容しかつフレームに対する管状部材102の運動を可能にするように構成された任意の適当な構造でよい。例示的なフレームは、被検部材の表面上でのトランスデューサ装置の操作を可能にするためのハンドルを備える。さらに、例示的なフレームは、トランスデューサ装置に信号および電力を伝送するための適当な電子装置およびハードウェアを備え、この電子装置は、導線などの適当な接続を介して軸106内に少なくとも部分的に接続され、中心部104へ経路が定められる。例示的な管状部材102は、適当な機構を介して、回転するために中心部104に取り付けられ、それによりトランスデューサ装置100が被検部材上で転動されるときに、中心部104に対する管状部材102の回転運動が可能になる。各実施形態において、軸106は、フレームおよび中心部104に接続されるが、管状部材102は、管状部材102を回転可能にする軸受組立体などの適当な装置によって、中心部104に接続される。
【0010】
トランスデューサ装置100は、目標物内に超音波を伝送しかつ部材内部からの波の反射(または「エコー」)を検出することにより部材の状態または特徴に関する情報を提供するように構成された関連ハードウェアおよび電気回路である超音波トランスデューサを備える。トランスデューサシステムにおいて、電子装置および関連ハードウェアは、検出された超音波に対応する信号を送信、受信および処理するために、トランスデューサ装置100に接続されうる。さらに、ソフトウェアおよび/またはファームウェアが、波を分析するため、および検査部材に欠陥または傷がないかを判定するために、電子装置上で動作されうる。部材を通して、特性(すなわち、周波数、振幅、等)が知られた超音波を伝送することにより、システムは、部材を通して反射された波の変化を分析することによって、異常性を検出することができる。例示的な一実施形態において、トランスデューサ装置100は、部品に傷、素材の剥離、および/または素材の劣化がないかを検査するために、航空機部品上を手動で転動される。他の実施形態において、トランスデューサ装置100は、電磁センサのような、部品を破壊することなく検査するための他の適当なトランスデューサを備える。
【0011】
図2は、例示的なローラトランスデューサ装置100の側断面図である。トランスデューサ装置100は、中心部104内にトランスデューサ200(または「トランスデューサユニット」)を備え、また中心部104の大部分の周囲に配置された重量軽減デバイス202を備える。管状部材102は、重量軽減デバイス202の周囲に配置され、かつ壁204を備える。流体が、管状部材102内部の空所206内に配置される。この流体は、トランスデューサ200の表面208を往復する超音波の通信に適している。一実施形態において、管状部材102は、実質的に柔軟でありかつ中空である管状部材を含み、この管状部材の少なくとも一部は柔軟である。管状部材102の柔軟な部分は、タイヤと見なすことができる。別の実施形態において、管状部材102は、実質的に硬質である。車両用のタイヤと同様に、円筒状部材が被検部材上で転動されると、接触面が生じる。接触面は、部材を検査するためにその内部へ超音波を伝送するための表面領域を提供する。流体、および円筒状部材の空所206を画定する表面は、超音波のための伝送経路を、最小限の変形をともなって画定する。
【0012】
例示的な管状部材102の少なくとも一部は、エラストマー、ウレタン、またはゴムなどの、適当な弾性材料を含む。他の実施形態において、管状部材102は、被検表面上を転動可能なように構成された多面部材(例えば、6〜16面部材)であってもよい。管状部材102および空所206の内部に配置される流体は、適当なゼリー、油、または水溶液もしくは水などの液体である。トランスデューサ200は、超音波を送受信するための適当な電気回路を備える。例示的なトランスデューサ200は、超音波トランスデューサのアレイを備え、このトランスデューサのアレイは、選択されたパターンで超音波を送受信するように配列される。さらに、トランスデューサのアレイは、フェイズドアレイ技法を使用して検査部材の選択部分上に多重化および/または集束されうる。
【0013】
重量軽減デバイス202は、管状部材102の内部に含有されうる流体の一部を移動させるように構成される。重量軽減デバイス202の総合密度は、流体の密度よりも小さく、それによってトランスデューサ装置100の全重量が減少される。したがって、重量軽減デバイス202は、管状部材102の内側の容積を占有するために管状部材102の内側に配置されて、さもなければその容積を占有するであろう流体を移動させる。一実施形態において、重量軽減デバイス202は、空気などの気体で満たされた、実質的に中空の密封された部材を含む。重量軽減デバイス202は、プラスチックまたは高分子材料などの、耐久性のある軽量材料の1つまたは複数の部品から形成することができる。他の実施形態において、重量軽減デバイス202は、実質的に固体の軽量複合材料、高分子、または独立気泡フォームを含む。
【0014】
重量軽減デバイス202は、トランスデューサ表面208の少なくとも一部を露出するのに適した幾何学的形状を有し、それにより管状部材102内に配置された流体を通して音波を伝送することが可能になる。図3に示したように、重量軽減デバイス202の例示的な幾何学的形状は、実質的にC字状の断面を含む。重量軽減デバイス202のための他の幾何学的形状は、管状部材102内のトランスデューサ200からの信号伝送を可能にするために、V字状、半円状、または他の適当な幾何学的形状を含みうるが、重量軽減デバイス202内の流体の量が減少する。各実施形態において、重量軽減デバイス202の幾何学的形状は、検査中の回転速度、検査部材の表面特性、使用中の装置の配向などの、用途特有の詳細に基づいて選択されうる。重量軽減デバイス202は、中心部104の不動部分に接続され、この不動部分は、トランスデューサ200および軸106を備える。したがって、一実施形態において、重量軽減デバイス202は、トランスデューサへの、およびトランスデューサから被検部材への、ブロック化されていない音響信号の伝送を確実にするために、トランスデューサ200に対して固定されている。他の実施形態において、重量軽減デバイス202は、トランスデューサ200に対して浮動するかまたは固定されていない。
【0015】
重量軽減デバイス202は、気体もしくは適当な軽量材料で満たされうる中空部分または空所300を備える。さらに、重量軽減デバイス202は、装置内の気体の少なくとも一部を除去してさらに減量するために、空所300に真空処理を行ってもよい。示した重量軽減デバイス202は、中心部104の非回転部分に接続され、かつトランスデューサ表面208の少なくとも一部を露出するように構成され、それによって重量軽減デバイス202内の空所302内に配置された流体を通じた音響信号の通信が可能になる。したがって、この構成により、流体を介して、トランスデューサ200から空所302に沿って壁204の内面へ音響信号を伝送することが可能になる。空所302を形成する壁は、互いに平行であってもよく、または互いにある角度であってもよい。空所302の幾何学的形状および空所深さは、超音波伝送の干渉および反射を軽減させるために、用途および所望の音響経路に応じて変更されてもよい。例示的な重量軽減デバイス202は、管状部材102が検査部材の表面に押しつけられて変形するときに、装置と管状部材102との間で空所206に沿った流体による通信を可能にするように構成された、円弧304を備える。円弧304により、重量軽減デバイス202と管状部材102との間の干渉なしに、変形した部材の回転運動が可能になる。示したように、流体は重量軽減デバイス202の周囲の空所206および302内に配置され、管状部材102は装置を実質的に密封し、したがって、管状部材102は、中心部104およびトランスデューサ200の周りで回転するとともに、流体を装置内に密封する。
【0016】
一実施形態において、トランスデューサ200の一部および中心部104は、位置306まで空所302内に延在していてもよく、位置306と壁204との間の距離が短縮され、それによって超音波に対してより短い伝送経路が設けられる。トランスデューサ200の少なくとも一部が位置306内にある場合、重量軽減デバイス202は、装置をさらに減量するために、トランスデューサ表面208に対向して設置されうる。各実施形態において、重量軽減デバイス202は、中心部104に対して浮動し、またトランスデューサ表面208に伝送経路および露出面を設けるために、中心部104に対する位置合わせを維持するための幾何学的形状および/または加重を有する。
【0017】
各実施形態において、流体(例えば、水)に対してより密度の低い重量軽減デバイス202は、装置の寸法および使用される材料に応じて、トランスデューサ装置100の重量を約10%から約80%軽減する。約2インチから約5インチの直径を有する例示的な装置は、重量軽減デバイスのない装置と比較して約10%から約30%減量することができる。約10インチから約16インチの直径を有する例示的な装置は、重量軽減デバイスのない装置と比較して約50%から約80%減量することができる。したがって、トランスデューサ装置100の重量を軽減することにより、本装置を使用する検査工程の生産性、能率性、安全性、および人間工学的実用性が高められる。
【0018】
トランスデューサ装置100の製造における例示的なステップには、以下のステップが含まれうる。装置のフレームにトランスデューサ200を設置するステップ。トランスデューサの周囲に重量軽減デバイス202を配置するステップ。この重量軽減デバイス202は、トランスデューサ表面208へのおよびトランスデューサ表面208からの伝送経路を設けるために、トランスデューサ表面208を露出する。重量軽減デバイス202の周囲に管状部材102を設置するステップ。この管状部材102の少なくとも一部は柔軟であって、検査部材の表面上での管状部材102の回転を可能にする。さらに、管状部材102、重量軽減デバイス202、およびトランスデューサ200は、トランスデューサ表面208から検査部材の表面へ伝送経路を直接提供するように構成される。最後に、管状部材102内および重量軽減デバイス202の周囲に、流体が配置される。この流体により、実質的な反射または障害なしに超音波を伝送することが可能になる。
【0019】
限られた数の実施形態のみに関して詳細に説明してきたが、本発明がそのような開示された実施形態に限定されないことを容易に理解されたい。むしろ、本発明は、これまで説明されていないが本発明の精神および範囲に見合う多くの変形形態、修正、置換、均等構成を組み込むように改変することができる。さらに、本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明の態様が、説明された実施形態の幾つかのみ含みうることが理解されるべきである。したがって、本発明は、前述の説明によって限定されると見られるべきではなく、添付の特許請求の範囲に記載の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0020】
100 トランスデューサ装置
102 円筒状部材
104 中心部
106 軸
200 トランスデューサ
202 重量軽減デバイス
204 壁
206 空所
208 トランスデューサ表面
300 中空部分
302 信号経路空所
304 円弧
306 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部(104)と、
前記中心部(104)に配置され、信号を送受信するように構成されたトランスデューサ(200)と、
相対的回転をするために前記中心部(104)に取り付けられた管状部材(102)と、
前記管状部材(102)内に配置された流体と、
前記管状部材(102)の内側の容積を占有するために前記管状部材(102)の内側に配置された重量軽減デバイス(202)とを備え、前記重量軽減デバイス(202)が、前記流体を介して前記トランスデューサ(200)から前記管状部材(102)へ伝送経路を設けるように構成された、トランスデューサ装置。
【請求項2】
前記重量軽減デバイス(202)が、前記中心部(104)に対して不動部分に接続された、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記管状部材(102)が、前記重量軽減デバイス(202)および前記中心部(104)の周りで回転するように構成された、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記管状部材(102)が、実質的に柔軟でありかつ中空である管を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記重量軽減デバイス(202)が第1の密度を有し、前記流体が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度未満である、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記重量軽減デバイス(202)が、前記中心部(104)の少なくとも一部を包囲するように構成された、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記重量軽減デバイス(202)が、前記トランスデューサ(200)の表面部分(208)を露出するように構成された、請求項1記載の装置。
【請求項8】
トランスデューサ装置を組み立てるための方法であって、
第1の密度を有する重量軽減デバイス(202)を形成するステップと、
前記トランスデューサ装置の中心部(104)上に前記重量軽減デバイス(202)を配置するステップと、
前記重量軽減デバイス(202)の周囲に管状部材(102)を配置するステップと、
前記管状部材(102)内に流体を配置するステップとを含み、前記流体が前記第1の密度よりも大きい第2の密度を有する、方法。
【請求項9】
前記重量軽減デバイス(202)を配置する前記ステップが、前記流体を介して前記トランスデューサ(200)から前記管状部材(102)へ伝送経路を設けるために前記中心部(104)上で前記重量軽減デバイス(202)を配向させることを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記重量軽減デバイス(202)を形成する前記ステップが、中空の高分子部材を成形することを含む、請求項8記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate