説明

トランス装置及びこのトランス装置を備えた変換器

【課題】小型化が可能となる、トランスとインダクタとを備えたトランス装置、及び、このトランス装置を備えている変換器を提供する。
【解決手段】トランス装置Tは、1次コイル10及びこの1次コイル10と磁気結合されている2次コイル20を有したトランス3と、前記2次コイル20と電気的に接続されているインダクタ50とを有している。インダクタ50は、2次コイル20を構成している巻き導線21,22から延長されかつ1次コイル10と実質的に磁気結合されていない延長導体部51a,52aによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次コイル及び2次コイルを有しているトランスと前記2次コイルに電気的に接続されたインダクタとを有しているトランス装置、及び、このトランス装置を備えた変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばDC/DCコンバータのような電圧変換器は、一般的に、スイッチング回路、トランス、整流回路及び平滑回路を備えている(例えば、非特許文献1参照)。
このようなDC/DCコンバータでは、図7の回路図に示しているように、スイッチング回路91に入力された直流電圧は、当該スイッチング回路91の機能により交流に変換され、交流電圧がトランス92の1次コイル92aに入力される。そして、トランス92の2次コイル92b側に生じた交流電圧は、整流回路93により整流され、平滑回路94により平滑され、所定の直流電圧Voutが出力される。
【0003】
前記整流回路93は、ダイオード93a,93bによって構成され、前記平滑回路94は、チョークコイル(インダクタ)94a及びコンデンサ94bによって構成されている。そして、トランス92の2次コイル92b側には、いわゆるセンタータップ型の整流方式が採用されている。
すなわち、2次コイル92bの両端には前記ダイオード93a,93bのアノードが接続されている。このダイオード93a,93bそれぞれのカソード同士が接続されていて、この接続部に前記チョークコイル94aの一方側が接続され、他方側に第1の出力端N3が設けられている。
また、2次コイル92bの中間部から引き出された端子92c(センタータップ)に引き出し導体95が接続され、この引き出し導体95の端部に第2の出力端子N4が設けられている。そして、チョークコイル94aの前記他方側と引き出し導体95との間に、前記コンデンサ94bが接続されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】戸川治朗著、「実用電源回路設計ハンドブック」、CQ出版株式会社、2009年2月1日初版、p.179
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、図7に示しているDC/DCコンバータが有しているトランス92とチョークコイル94aとの全体構成をそれぞれ示している斜視図である。トランス92は、1次コイル92aと2次コイル92bとコア92dとを有していて、これらにより一つの部品として構成されている。また、チョークコイル94aは、コイル94a−1とコア94a−2とを有していて、これらにより一つの部品として構成されている。
【0006】
そして、前記回路構成とするために、トランス92の2次コイル92b及びチョークコイル94aのコイル94a−1それぞれを他と電気的に接続する必要があるが、このために、トランス92及びチョークコイル94aそれぞれに接続端子96,97が設けられている。これら接続端子96,97における接続は、例えばネジが用いられる。
【0007】
ここで、例えば自動車等の製品に搭載するDC/DCコンバータでは、小型化について従来より検討されているが、従来の構成では、前記のようにトランス92とチョークコイル94aとが、別部品であって、トランス本体及びチョークコイル本体から突出している接続端子96,97を用いて接続する構成であることから、これら接続端子96,97を含めたトランス92及びチョークコイル94aの体積は大きくなる。しかも、DC/DCコンバータ全体の中でトランス92及びチョークコイル94aが占有する領域の割合は、他の部品と比べて高いので、従来の構成では、DC/DCコンバータ全体としての小型化に限界がある。
【0008】
そこで、本発明は、小型化が可能となる、トランスとインダクタとを備えたトランス装置、及び、このトランス装置を備えている変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)前記目的を達成するための本発明は、1次コイル及び前記1次コイルと磁気結合されている2次コイルを有しているトランスと、前記2次コイルと電気的に接続されているインダクタと、を有したトランス装置であって、前記インダクタは、前記2次コイルを構成している巻き導体部から延長されかつ前記1次コイルと実質的に磁気結合されていない延長導体部によって構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のトランス装置によれば、トランスが有している2次コイルの巻き導体部から延長されかつ1次コイルと実質的に磁気結合されていない延長導体部によって、インダクタが構成されているため、従来必要であった2次コイル及びインダクタを接続する接続端子が不要となる。このため、2次コイルとインダクタとを接近させて配置することができ、トランスとインダクタとを有したトランス装置を小型化することができる。
【0011】
(2)さらに、前記トランス装置では、前記トランスと前記インダクタとは、当該トランスを一方側とし当該インダクタを他方側として並んで設けられており、前記2次コイルを構成している前記巻き導体部は、前記一方側と前記他方側とに跨って導体が周回している周回導体のうちの当該一方側に存在している一部により構成され、前記インダクタを構成している前記延長導体部は、前記周回導体のうちの前記他方側に存在している他部により構成されている。
前記のとおり、従来必要であった2次コイル及びインダクタを接続する接続端子を不要とするために、このように、一方側であるトランスと他方側であるインダクタとに跨って導体が周回している周回導体のうちの一方側の一部によって、前記巻き導体部を構成し、前記周回導体のうちの他方側の他部によって、前記延長導体部を構成すればよい。
【0012】
(3)また、前記トランス装置において、前記トランスが有している第1コアは、前記巻き導体部と内側で対向する第1内脚部と、外側で対向する第1外脚部とを有し、前記インダクタが有している第2コアは、前記延長導体部の内側で対向する第2内脚部と、外側で対向する第2外脚部とを有し、前記第1内脚部と前記第2内脚部とは、前記巻き導体部から前記延長導体部が延長されている延長方向に間隔をあけて並んで設けられており、前記第1外脚部と前記第2外脚部とは、前記延長方向に間隔をあけて並んで設けられている構成とすることができる。
この構成によれば、トランスの第1内脚部と、インダクタの第2内脚部とは、前記延長方向に間隔をあけて並んで設けられ、トランスの第1外脚部と、インダクタの第2外脚部とは、前記延長方向に間隔をあけて並んで設けられているので、これら間隔により磁気抵抗層が形成され、トランスとインダクタとを磁気的に分離した構成が得られる。
【0013】
(4)そして、前記第1コアと前記第2コアとは構造的に分離していてもよいが、前記第1コアは、前記第1内脚部の端部と前記第1外脚部の端部とを連結している第1連結部を有し、前記第2コアは、前記第2内脚部の端部と前記第2外脚部の端部とを連結している第2連結部を有し、前記第1連結部と前記第2連結部とが共通する一つの部分から成る場合、第1コアと第2コアとが連結された一体の構成となり、トランスとインダクタとを一体化させることができる。すなわち、トランスとインダクタとは、前記各間隔により磁気抵抗層が形成されることで磁気的には分離しているが、前記共通する一つの部分により構造として一体化される。
【0014】
(5)また、前記トランス装置において、前記巻き導体部及び前記延長導体部は、板状の導体から成るのが好ましい。このように、巻き導体部及び延長導体部を板状の導体とすることで断面積を大きくし、トランスの2次側において電気抵抗を下げることができ、大電流にも対応できる。なお、板状の導体を採用すれば従来では装置が大型化しやすいが、本発明の前記構成によれば、板状の導体を採用しても、大型化を抑制することができる。
【0015】
(6)また、本発明は、電圧を変換するトランスと、前記トランスから出力された交流を整流する整流部と、整流された電流を平滑する平滑部とを備えた変換器であって、前記トランスは、1次コイル及び前記1次コイルと磁気結合されている2次コイルを有し、前記平滑部は、前記2次コイルと電気的に接続されているインダクタを有し、前記インダクタは、前記2次コイルを構成している巻き導体部から延長されかつ前記1次コイルと実質的に磁気結合されていない延長導体部によって構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の変換器によれば、トランスが有している2次コイルの巻き導体部から延長されかつ1次コイルと実質的に磁気結合されていない延長導体部によって、インダクタが構成されているため、従来必要であった2次コイル及びインダクタを接続する接続端子が不要となる。このため、2次コイルとインダクタとを接近させて配置することができ、トランスと平滑部のインダクタとを含む部分を小型化することができ、この結果、変換器を小型化することができる。なお、変換器としては、例えば、DC/DCコンバータやAC/DCコンバータがある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来必要であった2次コイル及びインダクタを接続する接続端子が不要となるため、2次コイルとインダクタとを接近させて配置することができ、トランスとインダクタとを含む部分(トランス装置)を小型化することができる。そして、このトランス装置を含む変換器の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のトランス装置の斜視図である。
【図2】トランス装置を備えたDC−DCコンバータの回路図である。
【図3】トランスとインダクタとを有する部分の等価回路図である。
【図4】トランス装置を水平面で切断した説明図である。
【図5】図4の切断平面図である。
【図6】トランス装置の他の実施形態を説明する説明図である。
【図7】従来のDC/DCコンバータの回路図である。
【図8】従来のDC/DCコンバータが有しているトランスとチョークコイルとの全体構成を示している斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のトランス装置Tの斜視図であり、図2はこのトランス装置Tを備えた変換器の回路図である。本実施形態では、変換器をDC/DCコンバータとして説明する。すなわち、図2に示している変換器は、入力端子N1,N2に直流電源9が接続され、この直流電源9から供給される直流電圧Vinを、より低い直流電圧Voutに変換し、出力端子N3,N4から出力するDC/DCコンバータである。
【0020】
〔DC/DCコンバータの全体構成について〕
図2において、DC/DCコンバータは、入力端子N1,N2と、1次側高圧線L1aと1次側低圧線L1bとの間に設けられたコンデンサ1及びスイッチング回路2と、スイッチング回路2に接続され電圧を変換するトランス3とを備えている。
さらに、DC/DCコンバータは、トランス3の2次側に設けられ当該トランス3から出力された交流を整流する整流回路(整流部)4と、整流された電流(電圧)を平滑する平滑回路(平滑部)5と、出力端子N3,N4とを備えている。
【0021】
前記コンデンサ1は、直流電源9から出力された直流電圧Vinを平滑化する。
図例のスイッチング回路2は、4つのスイッチング素子S1〜S4を有している回路構成からなり、フルブリッジ型となっている。すなわち、スイッチング素子S1,S2の一端同士が互いに接続され、スイッチング素子S3,S4の一端同士が互いに接続されている。これら一端同士の接続部それぞれは、トランス3の1次コイル10と接続されている。そして、スイッチング素子S1,S3の他端同士が互いに接続され、スイッチング素子S2,S4の他端同士が互いに接続されている。これらの他端同士の接続部それぞれは、入力端子N1,N2と接続されている。
そして、DC/DCコンバータは駆動回路6を更に備えていて、この駆動回路6から送信される指令信号に基づいてスイッチング素子S1〜S4が動作し、直流電源9から入力された直流電圧を交流電圧に変換することができる。なお、スイッチング回路2は他の構成であってもよい。
【0022】
前記トランス3は、1次コイル10および2次コイル20を有しており、スイッチング回路2から1次コイル10に入力された交流電圧を変圧し、2次コイル20の両端部20x,20yそれぞれから、互いに180度位相が異なる交流電圧を出力する。
本実施形態の2次コイル20は、後に説明するが、第1の2次コイル部(第1の巻き導体部21)と第2の2次コイル部(第2の巻き導体部22)とを有している。なお、トランス3のさらなる具体的な構成については、後に説明する。
【0023】
そして、前記第1の2次コイル部(第1の巻き導体部21)と前記第2の2次コイル部(第2の巻き導体部22)との間に、平滑回路5が有するインダクタ50が設けられている。このようなトランス3とインダクタ50とを有する部分の回路構成は、図3に示している回路構成と等価である。
【0024】
図2において、前記整流回路4は、一対の整流ダイオード41,42を有する全波整流型である。すなわち、一方の整流ダイオード41のカソードは、トランス3の2次コイル20の一端部20x側に接続され、他方の整流ダイオード42のカソードは、当該2次コイル20の他端部20y側に接続されている。そして、整流ダイオード41,42のアノード同士は互いに接続され、その接続部に接地線Lgが接続されている。
この整流回路4は、図3から明らかなように、センタータップ型の全波整流方式となっていて、トランス3から出力された交流電圧の各半波を、それぞれ整流ダイオード41,42によって個別に整流して直流電圧を得る構成である。
【0025】
図2と図3において、前記平滑回路5は、前記インダクタ50とコンデンサ59とを有している。そして、本発明のインダクタ50は、後に詳しく説明するが、延長導体部51a,52aを備えていることで構成されている。このインダクタ50は、図3に示しているように、2次コイル20にセンタータップ接続された構成となっていて、また、インダクタ50に出力線L2が接続されている。
さらに、本実施形態では、図1に示しているように、インダクタ50はトランス3と一体として構成されており、その具体的な構成について後に説明する。
【0026】
図2において、平滑回路5のコンデンサ59は、出力線L2と接地線Lgとの間に接続されており、接地線Lgの端部に出力端子N3が設けられ、出力線L2の端部に出力端子N4が設けられている。
この平滑回路5では、整流回路4で整流された直流電圧を平滑化し、出力端子N3と出力端子N4との間に、所定の電圧Vout(Vout>Vin)を得ることができる。
【0027】
〔トランス装置Tについて〕
トランス3とインダクタ50との具体的な構成について説明する。図1に示しているように、トランス3とインダクタ50とは一つの部品として構成されており、本発明では、この部品をトランス装置Tと呼ぶ。
図4はトランス装置Tを水平面で切断した説明図である。図1はトランス3の1次側から見たトランス装置Tの斜視図であり、図4は2次側から見た切断斜視図である。
【0028】
トランス3の1次コイル10は、複数ターン(図例では5ターン)の巻き導体部を有していて、本実施形態の巻き導体部は巻き導線11からなる。また、このトランス3は第1コア17を有していて、この第1コア17は、Y方向中央にあるコア部分としての第1内脚部17aと、Y方向両外側にあるコア部分としての第1外脚部17b,17cとを有している。そして、前記第1内脚部17aの周囲に、前記導線11が巻かれている。第1内脚部17aは柱状であり、図例では円柱形状である。
本発明では、前記第1内脚部17aの中心線方向をZ方向とし、このZ方向に直交しトランス3に1次コイル10(及び2次コイル20)の導体が引き込まれている方向(延びている方向)をX方向とし、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。
【0029】
そして、前記第1外脚部17b,17cそれぞれと前記第1内脚部17aとの間には、1次コイル10の他に、当該第1内脚部17aに巻かれた2次コイル20が設けられている。2次コイル20は、複数ターン(図例では2ターン)の巻き導体部を有していて、本実施形態の巻き導体部は巻き導線からなり、第1の巻き導線21と第2の巻き導線22とを有している。
以上より、1次コイル10と2次コイル20とが磁気結合されているトランス3が構成される。
【0030】
図2と図3とにより既に説明したように、インダクタ50は、2次コイル20と電気的にセンタータップ接続された構成である。この構成とするため、本発明では、図4に示しているように、インダクタ50は、延長導体部51a及び延長導体部52aを有して構成されている。一方の延長導体部51aは、2次コイル20の前記第1の巻き導線21の端部21aからX方向に延長されかつ1次コイル10と実質的に磁気結合されておらず、また、他方の延長導体部52aは、2次コイル20の第2の巻き導線22の端部22aからX方向に延長されかつ1次コイル10と実質的に磁気結合されていない。
そして、本実施形態の延長導体部51a,52aは、2次コイル20の巻き導線21,22から延長されたものであるため、当該2次コイル20と同じ線材からなる。このため、以下、延長導体部51a,52aを延長導線51a,52aと呼ぶ。
【0031】
延長導線51a及び延長導線52aは共にX方向に延びているがその後にY方向に湾曲してさらに延長され、相互が接続されており、この接続部57に前記出力線L2(図2参照)が接続される。この構成により、図2に示している回路構成が得られる。なお、図4では、接続部57において、延長導線51aと延長導線52aとの間に段差が設けられた状態で繋がっている構成を示しているが、段差がない状態で繋がる構成であってもよい。
【0032】
そして、インダクタ50は第2コア18を有していて、この第2コア18は、Y方向中央にあるコア部分としての第2内脚部18aと、Y方向両外側にあるコア部分としての第2外脚部18b,18cとを有している。第2内脚部18aの周囲に、一繋がりとなっている前記延長導線51aと延長導線52aとが巻かれている。
【0033】
2次コイル20及びインダクタ50の構成についてさらに説明する。2次コイル20の第1巻き導線21は、第1内脚部17aを周回(ほぼ半周)するU字型形状であり、その一端部21aから始めX方向に延長された導線が、前記延長導線51aとなる。なお、第1巻き導線21の他端部21bから始めX方向に延長された導線として、延長導線51bが設けられている。
これと同様に、2次コイル20の第2巻き導線22は、前記前記第1内脚部17aを周回(ほぼ半周)するU字型形状であり、その一端部22aから始めX方向に延長された導線が、前記延長導線52aとなる。なお、第2巻き導線22の他端部22bから始めX方向に延長された導線として、延長導線52bが設けられている。
【0034】
そして、一繋がりとなっている延長導線51aと延長導線52aとは、第2内脚部18aの回りを囲うようにして配置され、相互が接続部57で接続されていて、当該接続部57に前記出力線L2(図2参照)が接続される。また、他の延長導線51bに前記整流ダイオード41(図2参照)が接続され、他の延長導線52bに前記整流ダイオード42(図2参照)が接続される。
【0035】
以上のような2次コイル20及びインダクタ50の構成によれば、図4に示しているように、トランス3側とインダクタ50側とに跨って導体(導線)が周回している一繋がりの周回導体Rが形成されていて、この環状の周回導体Rのうちのトランス3側に存在している一部により、第1の巻き導線21及び第2の巻き導線22が構成されている。そして、この周回導体Rのうちのインダクタ50側に存在している他部により、延長導線51a,51b及び延長導線52a,52bが構成されている。なお、実施形態の周回導体Rのターン数は2巻きである。
【0036】
第1コア17及び第2コア18に関して更に説明する。
図4において、トランス3が備えている第1コア17は、巻き導線11,21,22と内側で対向していて、当該巻き導線11,21,22がそれぞれ巻かれている前記第1内脚部17aと、Y方向両外側で対向している対の第1外脚部17b,17bとを有している。
さらに、図1において、第1コア17は、第1内脚部17aの下端部と対の第1外脚部17b,17cの下端部とを連結している第1下連結部17dと、第1内脚部17aの上端部と対の第1外脚部17b,17cの上端部とを連結している第1上連結部17eとを更に有している。
【0037】
図4において、インダクタ50は、前記第1コア17とは別である第2コア18を備えている。この第2コア18は、ほぼ半周形状として繋がっている延長導線51a,52aと内側で対向していて、当該延長導線51a,52aが巻かれている前記第2内脚部18aと、Y方向両外側で対向している対の第2外脚部18b,18cとを有している。
さらに、第2コア18は、第2内脚部18aの下端部と対の第2外脚部18b,18cの下端部とを連結している第2下連結部18dと、第2内脚部18aの上端部と対の第2外脚部18b,18cの上端部とを連結している第2上連結部18e(図1参照)とを有している。
【0038】
そして本実施形態では、第1下連結部17d及び第2下連結部18dは、共通する一つの下ベース部15から成る。下ベース部15は、図1の一点鎖線で示しているように、平板状となる部分であり、この下ベース部15のうちの、トランス3側が第1下連結部17dであり、インダクタ50側が第2下連結部18dである。
さらに、上側において、第1上連結部17e及び第2上連結部18dは、共通する一つの上ベース部16から成る。上ベース部16は、図1の一点鎖線で示しているように、平板状となる部分であり、この上ベース部16のうちの、トランス3側が第1上連結部17eであり、インダクタ50側が第2上連結部18eである。
【0039】
そして、図1と図4に示しているように、第1内脚部17a、第1外脚部17b,17c、第2内脚部18a、及び、第2外脚部18b,18cは、下ベース部15と上ベース部16との間に設けられ、かつ、下ベース部15と上ベース部16と一体物として構成されている。この構成により、第1コア17と第2コア18とが一体物として構成され、これら第1コア17と第2コア18とからなるコア構造は、磁性材料から成る。
なお、このコア構造は、完成状態(図1の状態)で一体形状であればよく、このトランス装置Tの製造過程では、例えば図4に示しているようにZ方向に二分割の構成であり、分割体を組み立てることで一体物となってもよい。
【0040】
また、この第1コア17及び第2コア18の構成によれば、図4に示しているように、第1内脚部17aと第2内脚部18aとは、前記巻き導線21,22から前記延長導線51a,52aが延長されている延長方向(つまり、X方向)に間隔をあけて並んで設けられており、また、第1外脚部17b,17cと第2外脚部18b,18cとはそれぞれ、前記延長方向(X方向)に間隔をあけて並んで設けられた構成となる。
すなわち、第1コア17と第2コア18とからなるコア構造は一体物であるが、図1と図4に示しているように、トランス3側の第1外脚部17cとインダクタ50側の第2外脚部18cとの間にスロット60が形成され、また、トランス3側の第1外脚部17bとインダクタ50側の第2外脚部18bとの間にスロット60が形成された構成となる。このスリット60,60によって、トランス3側とインダクタ50側とは磁気的に分けられた構成となる。
【0041】
図4において、X方向に延びて形成されている二つのスリット(溝)61は、前記延長導線51a,51b,52a,52bを配置するための空間である。
【0042】
以上のように、下ベース部15及び上ベース部16によって、トランス3側の第1コア17とインダクタ50側の第2コア18とが物理的に連続しているが、前記スリット60,60が下ベース部15と上ベース部16との間の全長にわたって設けられていることにより、トランス3側とインダクタ50側との磁気抵抗を大きくし、両者間を実質的に磁気結合されていない構成とすることができる。
【0043】
すなわち、トランス3とインダクタ50とはX方向に並んで設けられているが、前記スリット60,60によりトランス3とインダクタ50との間に磁気抵抗層を作ることができ、これにより、トランス3とインダクタ50とを磁気的に分離した構成となるが、下ベース部15及び上ベース部16により、構造的には一体のトランス装置Tが得られる。
【0044】
また、図5の切断平面図に示しているように、トランス3の中央にある第1内脚部17aの断面形状は円形であるが、コンダクタ50の中央にあるの第2内脚部18aの断面形状は矩形となっている。そして、第2内脚部18aの一辺(長辺)の長さAは、第1内脚部17aの直径dと同じに設定されている。この構成によれば、第2内脚部18aの断面積をできるだけ大きくすることができる。
なお、図5において二点鎖線で示しているように、第2内脚部18aのトランス側に対向する面F1を、1次コイル10の外周形状に沿った凹状の円弧形状とし、第2内脚部18aの断面積をさらに大きくしてもよい。
【0045】
以上のようなトランス装置Tによれば、トランス3が有する2次コイル20の第1の巻き導線21及び第2の巻き導線22の端部から延長され、かつ、1次コイル10と実質的に磁気結合されていない延長導線51a,52aによって、インダクタ50が構成されている。このため、図8に示しているように、従来必要であった2次コイル92b及びチョークコイル94aを他とネジ等によって連結して電気的に接続するための接続端子96,97が不要となる。
【0046】
特に、図4に示しているように、トランス3側とインダクタ50側とに跨って一繋がりの導体が周回している前記周回導体Rのうちの、トランス3側に存在している一部によって、2次コイル20の第1の巻き導線21、第2の巻き導線22は構成されていて、また、この周回導体Rのうちの、インダクタ50側に存在している他部によって、インダクタ50を構成する延長導線51a,52aは構成されている。すなわち、トランス3の2次コイル20を構成するための周回導体Rを、インダクタ50としても利用した構成となっていて、一繋がりの環状の周回導体Rが、2次コイル20とインダクタ50との双方の機能を備えている。
【0047】
このため、2次コイル3とインダクタ50とをX方向に接近させて直線状に配置することができ、トランス装置Tを小型化することができる。特に本実施形態では、図1に示しているように直方体の一部品としてトランス装置Tを構成することができる。したがって、このトランス装置Tを含むDC−DCコンバータを全体として小型化することが可能となる。
このようなDC−DCコンバータは、例えば近年注目されているハイブリッド車や電気自動車に搭載される。このような車両には、走行用のモータを駆動するために大容量のバッテリが搭載されていて、このバッテリから電力の供給を受け、ライトやパワーウインドウ等の補機類を駆動する。そこで、このような補機類を駆動するために、DC−DCコンバータが前記車両に搭載されている。
そこで、本発明によれば、DC−DCコンバータの小型化が可能であることから、車両において、その設置スペースは小さくて済み、また車両の軽量化にも貢献することができる。
【0048】
また、トランス3とインダクタ50とを備えているトランス装置Tは一体化した構成となっているので、このトランス装置Tを一体としてDC/DCコンバータに取り付けることができ、トランス装置TをDC−DCコンバータに組み込む作業も簡単となる。
【0049】
図6は、本発明のトランス装置Tの他の実施形態を説明する平面図である。本実施形態(第2実施形態)は、図4の第1の実施形態と比べると、1次側及び2次側の導体の断面形状が異なるが、その他は同じである。
すなわち、前記第1の実施形態(図4参照)では、1次コイル10、2次コイル20を構成している第1の巻き導体部21及び第2の巻き導体部22、並びに、インダクタ50を構成する各延長導体部は、導線から成る構成としたが、この第2の実施形態(図6参照)では、1次コイル10、2次コイル20を構成している第1の巻き導体部21及び第2の巻き導体部22、並びに、インダクタ50を構成する各延長導体部は、板状の導体から成る。なお、板状とは、厚さ寸法t(本発明ではZ方向の寸法)に比べて幅寸法Bが大きい形状であり(t<B)、特に、厚さ寸法tの3倍以上の幅寸法Bを有する形状である(3t≦B)。
【0050】
この第2実施形態のように、トランス3及びインダクタ50を構成するための導体を板状とすることで、その断面積を大きくし、電気抵抗を下げることができる。特に、トランス3の2次側以降は、1次側と比べて大電流が流れるが、第2実施形態によれば、このような大電流にも対応できる。
なお、板状の導体を採用すれば、従来ではトランス及びチョークコイルはさらに大型化することになるが、本発明のように、インダクタ50は、2次コイル20を構成している板状の第1の巻き導体部21及び第2の巻き導体部22から延長され、かつ、1次コイル10と実質的に磁気結合されていない板状の延長導体部51,52によって構成されているので、2次コイル3とインダクタ50とをX方向に接近させて配置することができ、2次側に板状の導体を採用しても、トランス装置Tの大型化を抑制することができる。
【0051】
なお、今回開示した実施形態は、本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等な意味、及び、範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、トランス3の1次コイル10及び2次コイル20のターン数、並びに、インダクタ50のターン数は、トランス3の変圧比等に応じて変更自在である。
また、前記実施形態では、整流回路4が全波整流の場合を説明したが、半端整流であってもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、トランス3側の第1コア17とコンダクタ50側の第2コア18とが、構造的に一体である場合を説明したが、双方が物理的に分離していてもよい。 さらに、前記実施形態は、変換器としてDC/DCコンバータを説明したが、AC/DCコンバータであってもよい。この場合、例えば図2のスイッチング回路2が省略され、交流電圧が入力端子N1,N2(トランス3の1次側)に入力される構成となる。
【符号の説明】
【0053】
3:トランス、 4:整流回路(整流部)、 5:平滑回路(平滑部)、 10:1次コイル、 15:下ベース部(共通する一つの部分)、 16:上ベース部(共通する一つの部分)、 17:第1コア、 17a:第1内脚部、 17b,17c:第1外脚部、 17d:第1下連結部(第1連結部)、 17e:第1上連結部(第1連結部)、 18:第2コア、 18a:第2内脚部、 18b,18c:第2外脚部、 18d:第2下連結部(第2連結部)、 18e:第2上連結部(第2連結部)、 20:2次コイル、 21:第1の巻き導線(第1の巻き導体部)、 21a:端部、 22:第2の巻き導線(第2の巻き導体部)、 22a:端部、 50:インダクタ、 51a,51b:延長導線(延長導体部)、 52a,52b:延長導線(延長導体部)、 60:スリット、 R:周回導体、 T:トランス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次コイル及び前記1次コイルと磁気結合されている2次コイルを有しているトランスと、前記2次コイルと電気的に接続されているインダクタと、を有したトランス装置であって、
前記インダクタは、前記2次コイルを構成している巻き導体部から延長されかつ前記1次コイルと実質的に磁気結合されていない延長導体部によって構成されていることを特徴とするトランス装置。
【請求項2】
前記トランスと前記インダクタとは、当該トランスを一方側とし当該インダクタを他方側として並んで設けられており、
前記2次コイルを構成している前記巻き導体部は、前記一方側と前記他方側とに跨って導体が周回している周回導体のうちの当該一方側に存在している一部により構成され、
前記インダクタを構成している前記延長導体部は、前記周回導体のうちの前記他方側に存在している他部により構成されている請求項1に記載のトランス装置。
【請求項3】
前記トランスが有している第1コアは、前記巻き導体部と内側で対向する第1内脚部と、外側で対向する第1外脚部とを有し、
前記インダクタが有している第2コアは、前記延長導体部と内側で対向する第2内脚部と、外側で対向する第2外脚部とを有し、
前記第1内脚部と前記第2内脚部とは、前記巻き導体部から前記延長導体部が延長されている延長方向に間隔をあけて並んで設けられており、
前記第1外脚部と前記第2外脚部とは、前記延長方向に間隔をあけて並んで設けられている請求項1又は2に記載のトランス装置。
【請求項4】
前記第1コアは、前記第1内脚部の端部と前記第1外脚部の端部とを連結している第1連結部を有し、
前記第2コアは、前記第2内脚部の端部と前記第2外脚部の端部とを連結している第2連結部を有し、
前記第1連結部と前記第2連結部とが共通する一つの部分から成る請求項3に記載のトランス装置。
【請求項5】
前記巻き導体部及び前記延長導体部は、板状の導体から成る請求項1〜4のいずれか一項に記載のトランス装置。
【請求項6】
電圧を変換するトランスと、前記トランスから出力された交流を整流する整流部と、整流された電流を平滑する平滑部とを備えた変換器であって、
前記トランスは、1次コイル及び前記1次コイルと磁気結合されている2次コイルを有し、
前記平滑部は、前記2次コイルと電気的に接続されているインダクタを有し、
前記インダクタは、前記2次コイルを構成している巻き導体部から延長されかつ前記1次コイルと実質的に磁気結合されていない延長導体部によって構成されていることを特徴とする変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−82205(P2011−82205A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230693(P2009−230693)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】