説明

トランス

【課題】プリント配線板からほとんど部材が突出しない従来にない小型の構造を有し、部品数が少なく安価で製造が容易なトランスを提供する。
【解決手段】平板の枠状のコア3を内蔵して形成されたプリント配線板1に、コア3の1次側巻回部3aをプリント配線板1を挟んで巻回した状態の1次導体パターン61aと、コア3の2次側巻回部3bをプリント配線板1を挟んで巻回した状態の2次導体パターン61bとを設けて、プリント配線板1に設けられたトランスを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント配線板に設けられるトランスに関し、詳しくは、その小型化及びコストダウンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電気機器の制御基板等のプリント配線板に設けられる電源トランス等のトランスは、プリント配線板と別個の部品であり、プリント配線板の表面(又は裏面)に、ネジ止め、半田付け等によって取り付けられる。
【0003】
例えば、電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)等のインバータ電源装置の制御基板の電源(低圧電源)は、例えば図5に示すように制御基板を形成するプリント配線板100に電圧変換用のトランス200を設け、このトランスにより、1次側巻線の200V〜300Vの高電圧電源を12Vや6Vに降圧して形成される。
【0004】
そして、トランス200は、周知のトランスと同様、例えば枠状(ロ字状)の磁性体(珪素鋼板等)のコア201に1次、2次の巻線を巻回し、コア201の周部に磁性体の外装ケース202を被せて形成される。さらに、外装ケース202のL字状に折曲した左右端部がネジ止め又は半田付けによりプリント配線板100に取り付けられる。なお、図5の203はトランス200の巻線部である。
【0005】
この場合、トランス200は、コア201がプリント配線板100上に立設されているので嵩だかであり、また、巻線部部203がコア201に1次、2次の巻線を何回も巻回して形成されるので厚みがあり、大型である。しかも、その製造に際しては、コア201に1次、2次の巻線を何度も巻回する煩雑で手間のかかる作業が必要である。そのため、高価である。
【0006】
そこで、図6に示すように、それぞれ中央部に矩形の孔300を形成した1次側のプリント基板(プリント配線板)301,302、2次側のプリント基板303に前記孔300を囲むように巻線となる渦巻状の導体パターン304を形成し、1次側、2次側のプリント基板301〜303を絶縁テープ305を介して重ね合わせ、その重合体を、前記コア201を縦に割って横向きにした形状の分割コア306、307により、両分割コア306、307の中足306a,307aを孔300に嵌入して上下の両面から挟み、トランス200に相当する電源トランスを形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
前記特許文献1に記載の図6の電源トランスは、1次、2次の巻線がプリント基板301〜303に渦巻状に形成された平面状の導体パターン304からなるので、図4の巻線部203に相当する巻線部分は薄く、巻線を巻回する手間が不要である。また、1次側、2次側のプリント基板301〜303を分割コア306、307で挟んで形成されるので図4のトランス200程には嵩だかくない。そのため、図5のトランス200に比して小型で安価である。
【特許文献1】特開平7−115024号(要約書、段落[0010]−[0014]、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記図6の電源トランスは、プリント基板301〜303の重合体を1枚のプリント配線板とみなすと、分割コア306、307が、横向きではあるが、そのプリント配線板の上下面より突出し、プリント配線板から部材が突出しないように小型に形成することができない問題がある。
【0009】
また、分割コア306、307は中足306a、307aを有する複雑な構造であり、しかも、分割コア306、307により、中足306a、307aを孔300に挿入して前記重合体を挟む構造であるので、分割コア306,307やプリント基板301〜303等の高精度の位置合わせが必要であり、絶縁テープ305も必要になる。そのため、部品数が多く、また、極めて精密な部品加工を要し、さらに、煩雑な組み立て作業も要し、高価になるとともに製造に手間がかかる問題がある。
【0010】
本発明は、前記電源トランスのようなプリント配線板に設けられるトランスであって、プリント配線板からほとんど部材が突出しない従来にない小型の構造を有し、部品数が少なく安価で製造が容易なトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明のトランスは、平板の枠状のコアを内蔵して形成されたプリント配線板に、前記コアの1次側巻回部を前記プリント配線板を挟んで巻回した状態の1次導体パターンと、前記コアの2次側巻回部を前記プリント配線板を挟んで巻回した状態の2次導体パターンとを設けて形成されたことを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトランスの場合、プリント配線板にコアが内蔵され、そのコアに巻回される1次、2次の巻線が、前記プリント配線板の1次、2次導体パターンにより形成される。
【0013】
この場合、トランスは、プリント配線板からほとんど部材が突出しない従来にない小型の構造である。また、コアは簡単な平板の枠状であって、組立作業等は不要であり、部材の精度の高い位置合わせも不要であるため、製造が容易である。さらに、複数枚の基板を重合する必要がなく、絶縁テープ等も不要であるので、部品数が少なく安価に形成できる。
【0014】
したがって、プリント配線板からほとんど部材が突出しない従来にない小型の構造を有し、部品数が少なく安価で製造が容易なトランスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、実施形態について、図1〜図4を参照して詳述する。
【0016】
(一実施形態)
まず、両面に配線パターンが形成されるプリント配線板(両面基板)に設けられるトランスに適用した場合について、図1〜図3を参照して説明する。
【0017】
図1はプリント配線板1のトランス部2の斜視図である。図2はトランス部2の一部のプリント配線板1を除去した状態の拡大斜視図、図3はトランス部2の図1のA−A線の断面図である。
【0018】
プリント配線板1は、例えば電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)等のインバータ電源装置の制御基板であり、例えばガラスエポキシの両面基板であるが、周知の両面基板とは異なり、トランス部2に磁性体(珪素鋼板等)構成であって平板の枠状(ロ字状)のコア3を内蔵して形成されている。具体的には、プリント配線板1の製造工程において、硬化前のプリント配線板1にコア3を押し入れる等してプリント配線板1が形成されている。
【0019】
また、プリント配線板1は例えばコア3の一辺が形成する1次側巻回部3aの左右近傍において、基板表面側に多数個の電極パターン41aが前記一辺に沿うように配列して形成され、基板裏面側の各電極パターン41aに対向する基板裏面側の位置にも各電極パターン42aが形成されている。そして、基板表面側、基板裏面側の対向する電極パターン41a、42aは、例えばスルーホール(ビアホールを含む)5aにより電気的に接続されている。
【0020】
また、プリント配線板1は例えばコア3の1次側巻回部3aに対向する他の一辺の2次側巻回部3bの左右近傍において、1次側巻回部3aの左右近傍と同様に、基板表面側に多数個の電極パターン41bが前記他の一辺に沿うように配列して形成され、各電極パターン41bに対向する基板裏面側の位置にも各電極パターン42bが形成されている。そして、基板表面側、基板裏面側の対向する電極パターン41b、42bは、例えばスルーホール(ビアホールを含む)5bにより電気的に接続されている。
【0021】
さらに、1次側巻回部3aの基板表面側において、1次側巻回部3aの左右近傍の各電極パターン41aは、1次側巻回部3aを横切るように形成された複数個の1次導線パターン61aにより、一つずれた左右の各1個が接続される。また、1次側巻回部3aの基板裏面側において、1次側巻回部3aの左右近傍の各電極パターン42aは、1次側巻回部3aを横切るように形成された複数個の1次導線パターン62aにより、同じ位置の左右の各1個が接続される。このようにすることで、各1次導体パターン61a、61bは、1次側巻回部3aをプリント配線板1を挟んで巻回した状態にプリント配線板1に形成される。
【0022】
同様に、2次側巻回部3bの基板表面側において、2次側巻回部3bの左右近傍の各電極パターン41bは、2次側巻回部3bを横切るように形成された複数個の2次導線パターン61bにより、一つずれた左右の各1個が接続される。また、2次側巻回部3bの基板裏面側において、2次側巻回部3bの左右近傍の各電極パターン42bは、2次側巻回部3bを横切るように形成された複数個の2次導線パターン62bにより、同じ位置の左右の各1個が接続される。このようにすることで、各2次導体パターン61b、62bは、2次側巻回部3bをプリント配線板1を挟んで巻回した状態にプリント配線板1に形成される。
【0023】
なお、図1の71、72は導体パターン61a、62aの1次巻線に接続された1次側の接続ランド部、81、82は導体パターン61b、62bの2次巻線に接続された2次側の接続ランド部である。また、電極パターン41a〜42b、導体パターン61a〜62b、接続ランド部71〜82は、例えば銅パターンであり、プリント配線板1のパターン形成工程により、他の電極や配線等のパターンとともに形成される。
【0024】
そして、プリント配線板1に内蔵されたコア3及び、プリント配線板1の基板面に形成された導体パターン61a〜62bにより、プリント配線板1のトランス部2に前記インバータ電源装置の制御基板のトランスが形成される。
【0025】
この場合、プリント配線板1とコア3とを一体化し、かつ、巻線構造をプリント配線板1の導体パターン61a〜62bにより形成するので、前記インバータ電源装置の制御基板のトランスを、プリント配線板1からほとんど部材が突出しない従来にない超小型の構造に形成することができる。
【0026】
そして、コア3は簡単な平板の枠状であって安価であり、組立作業等は不要である。また、部材の精度の高い位置合わせも不要である。そのため、トランスを容易に形成できる。さらに、複数枚の基板を重合する必要がなく、絶縁テープ等も不要であるので、部品数が少なく安価である。
【0027】
したがって、プリント配線板1からほとんど部材が突出しない従来にない超小型の構造を有し、部品数が少なく安価で製造が容易なトランスを提供することができる。
【0028】
なお、巻線構造をプリント配線板1の導体パターン61a〜62bにより形成するので、磁電変換特性を自在に簡単に所望の特性にできる利点も有る。
【0029】
(他の実施形態)
つぎに、片面に配線パターンが形成されるプリント配線板(片面基板)に設けられるトランスに適用した場合について、図4を参照して説明する。
【0030】
図4は図3に対応する片面基板構造のプリント配線板11のトランス部21断面図である。同図において、図1〜3と同一符号は同一若しくは相当するものを示す。
【0031】
そして、プリント配線板11の場合、コア3を内蔵する点はプリント配線板1と同じであるが、基板表面側にのみ配線パターンが形成されるので、トランス部21の基板裏面側は、一実施形態の1次側巻回部3a及び2次側巻回部3bの各導体パターン62a、62bが、ジャンパー線9によって形成される。なお、ジャンパー線9は自動配線によって自動的に植設される。
【0032】
そして、本実施形態の場合も、プリント配線板11とコア3とを一体化し、かつ、巻線構造をプリント配線板11の導体パターン61a、61bにより形成するので、前記インバータ電源装置の制御基板のトランスを、プリント配線板11からほとんど部材が突出しない従来にない超小型の構造に形成することができ、ジャンパー線9を使用する点を除き、前記一実施形態の場合と同様の効果を奏する。
【0033】
そして、本発明は上記した両実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、コア3は、珪素鋼板に代えて、フェライトによって形成してもよく、鉄粉やカーボンを混入した合成樹脂で形成してもよい。
【0034】
また、プリント配線板1、11は、どのようなものであってもよく、いわゆるフレキシブル基板であってもよい。
【0035】
さらに、導体パターン61a〜62b等は、アルミパターン等の銅パターン以外の種々の導体パターンであってもよい。
【0036】
そして、本発明は、種々の電気機器等のプリント配線板に設けられる種々のトランスに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態のプリント配線板の一部の斜視図である。
【図2】図1の一部のプリント配線板を除去した状態の拡大斜視図である。
【図3】図1の一部の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態のプリント配線板の一部の断面図である。
【図5】従来の一例の斜視図である。
【図6】従来の他の例の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1、11 プリント配線板
3 コア
3a 1次側巻回部
3b 2次側巻回部
61a、62a 1次導体パターン
61b、62b 2次導体パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板の枠状のコアを内蔵して形成されたプリント配線板に、前記コアの1次側巻回部を前記プリント配線板を挟んで巻回した状態の1次導体パターンと、前記コアの2次側巻回部を前記プリント配線板を挟んで巻回した状態の2次導体パターンとを設けて形成されたことを特徴とするトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−212265(P2009−212265A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52961(P2008−52961)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】