説明

トランス

【課題】トランスにおいて、小型・軽量化を図りつつ高インダクタンス化を図る。
【解決手段】トランス1は、一対の磁性体基板2を備える。磁性体基板2は、一つの表面21に設けられて磁性体基板2の両端に達する一対の溝3と、溝3に設けられた第1配線4と、磁性体基板2の両端の側面22に第1配線4に対応して設けられた第2配線を備える。第1配線4と第2配線とは、互いに電気接続してループ状コイルを形成する。一対の磁性体基板2が、ループ状コイル同士が磁性結合するように、溝3同士を対面させて接合される。第1配線4が磁性体基板の両端まで延ばされ、側面の第2配線と電気接続されてループ状コイルを形成するので、ループ状コイルによって囲まれる主磁束通過領域を磁性体基板2の大きさまで広くすることができ、高インダクタンスにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体基板とループ状コイルとを備えたトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型・軽量の電子機器に用いられる電源の小型・軽量化が求められており、電源回路の中で比較的大きな部品であるトランスの小型・軽量化が課題となってきている。そこで、図7に示すようなループ状コイル106を形成した磁性体基板102を2枚用意して、それぞれのループ状コイル106が対面するように両基板を接合したトランスが知られている。
【0003】
また、このように磁性体基板上にループ状コイル形成して成るトランスにおいて、ループ状コイルの位置を調整することにより、磁束が外部に漏洩することを抑制するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上述したようなトランスにおいては、ループ状コイルの大きさが磁性材基板内に抑制されるので、小型構成において高インダクタンス化を図ることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−317724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解消するものであり、小型・軽量化を図りつつ高インダクタンス化を図ることができるトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、一対の磁性体基板と、ループ状コイルと、を備えたトランスにおいて、前記各磁性体基板は、一つの表面に設けられて該基板の両端に達する一対の溝と、前記各溝に設けられた第1配線と、前記基板の両端の側面に前記第1配線に対応して設けられた第2配線と、を備え、前記第1配線及び第2配線は、互いに電気接続させて前記ループ状コイルを形成し、前記各磁性体基板は、前記ループ状コイル同士が磁性結合されるように、前記溝同士を対面させ接合されているものである。
【0008】
請求項2の発明は、第1及び第2の磁性体基板と、ループ状コイルと、を備えたトランスにおいて、前記第1の磁性体基板は、一つの表面に設けられて該基板の両端に達する一対の溝と、前記各溝に設けられた少なくとも一対の第1配線と、前記基板の両端の側面に前記第1配線に対応して設けられた第2配線と、を備え、前記第1配線及び第2配線は、互いに電気接続されて少なくとも2つのループ状コイルを形成し、前記第1の磁性体基板の溝が設けられている面と前記第2の磁性体基板とが対面接合され、前記2つのコイルが磁性結合されているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、第1配線が磁性体基板の両端まで延ばされ、側面の第2配線と電気接続されてループ状コイルを形成するので、ループ状コイルによって囲まれる主磁束通過領域を磁性体基板の大きさまで広くすることができ、全体形状を小型化しつつ、高インダクタンス化を図ることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、第1配線が第1の磁性体基板の両端まで延ばされ、側面の第2配線と電気接続されてループ状コイルを形成するので、ループ状コイルによって囲まれる主磁束通過領域を第1の磁性体基板の大きさまで広くすることができ、第1の実施形態と同様に小型化しつつ、高インダクタンス化を図ることができる。また、一方の磁性体基板にだけ溝を設ければよいし、第1の磁性体基板と第2の磁性体基板との接合の位置精度も低くてよいので、製造し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るトランスにおいて第2配線の図示を省略した斜視図。
【図2】(a)は図1のA方向より見た同上トランスにおいて第2配線をも図示した斜視図、(b)は図1のB方向より見た同様の斜視図。
【図3】同トランスの一対の磁性体基板のうちの一方の基板にあるループ状コイルのみを示した斜視図。
【図4】同トランスにおいて一つの磁性体基板が複数の積層基板から成る場合の側面図。
【図5】上記実施形態の変形例に係るトランスにおいて第2配線の図示を省略した斜視図。
【図6】(a)は図5のA方向より見た同上トランスにおいて第2配線をも図示した斜視図、(b)は図5のB方向より見た同様の斜視図。
【図7】従来のトランスを構成する磁性体基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るトランスについて図1乃至図3を参照して説明する。トランス1は、一対の磁性体基板2,2を備える。磁性体基板2の各々は、一つの表面21に設けられて磁性体基板2の両端に達する一対の溝3と、溝3に設けられた第1配線4と、磁性体基板2の両端の側面22に第1配線4に対応して設けられた第2配線5を備える。第1配線4と第2配線5とは、互いに電気接続してループ状コイル6を形成する。図1、図2において、上下の磁性体基板2,2のそれぞれに設けられたループ状コイル6,6のいずれか一方が1次側となり、他方が2次側となる。図3においては、1次側又は2次側の一方のループ状コイル6のみを示している。
【0013】
本実施形態においては、ループ状コイル6は1次側及び2次側のそれぞれにおいて2ターンに構成されているが、ターン数は任意である。磁性体基板2の溝3が有る面と反対側の面23には、第2配線5に接続されたパッド24が形成され、外部配線(図示せず)と接続される。一対の磁性体基板2,2が、それぞれのループ状コイル6同士が磁性結合するように、溝3同士を対面させて接合されることによって、トランス1が構成される。磁性体基板2同士の接合は、例えば接着剤によって行われる。
【0014】
磁性体基板2には、例えばフェライトを、第1配線4及び第2配線5には、例えば銅をそれぞれ用いることができる。溝3は、磁性体基板2にザグリ加工等によって形成される。第1配線4は電気メッキや印刷等によって形成され、第2配線5は電気メッキ等によって形成される。第1配線4及び第2配線5は、磁性体基板2が絶縁体でない場合には、全表面を酸化膜等の絶縁層で覆って絶縁分離する。一つの磁性体基板2は、図4に示すように、複数の積層基板7を金属薄膜71によって接合することにより構成したものを用いてもよい。
【0015】
次に、上記のように構成されたトランス1の作用効果について説明する。本実施形態のトランス1は、第1配線4が磁性体基板2の両端まで延ばされ、側面22の第2配線5と電気接続されてループ状コイル6を形成するので、ループ状コイル6によって囲まれる主磁束通過領域を磁性体基板2の大きさまで広くすることができる。これにより、高インダクタンスにすることができる。また、第1配線4が、表面21内でループ形状にならずに、溝3に沿って一方向に延びているので、一対の磁性体基板2が接合されるときに溝3の伸張方向にずれても、位置ズレの影響を小さく抑えることができる。
【0016】
(変形例)
本実施形態の変形例に係るトランスについて、図5及び図6を参照して説明する。本変形例では、上記実施形態のように一対の磁性体基板2,2それぞれに第1配線4を形成するのではなく、一方の磁性体基板2のみに第1配線4及び第2配線5を形成して一対のループ状コイル6を形成する。このトランス1は、第1の磁性体基板2aと第2の磁性体基板2bとを備えており、溝3は、第1の磁性体基板2aのみに一対が形成されて、第2の磁性体基板2bには形成されていない。各溝3は、2対の第1配線4を有し、側面22は第1配線4の各々に対応した第2配線5を有している。各第1配線4と第2配線5とは、互いに電気接続されて第1のループ状コイル6aと第2のループ状コイル6bとの2つのループ状コイル6を形成する。第1のループ状コイル6aと第2のループ状コイル6bとは、それぞれ1次側と2次側となって磁性結合される。第1の磁性体基板2aの溝3が設けられている面と第2の磁性体基板2bとが対面接合されて、トランス1が構成される。また、本変形例においては、2つのループ状コイル6a,6bが、それぞれ2ターンに構成されているが、ターン数は任意である。
【0017】
このように構成されることにより、第1の実施形態に係るトランス1と同様に、各ループ状コイル6によって囲まれる主磁束通過領域を第1の磁性体基板2aの大きさにまで広くすることができる。これにより、高インダクタンスにすることができる。また、第2の磁性体基板2bに溝3を設ける工程が省かれ、第1の磁性体基板2aと第2の磁性体基板2bとの接合の位置精度も低くてよいので、製造し易くなる。また、パッドが1面に形成されるので、外部配線と接合し易くなる。
【0018】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、一対の溝3は平行でなくてもよいし、溝3は直線でなく曲線等でもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 トランス
2 磁性体基板
2a 第1の磁性体基板
2b 第2の磁性体基板
21 表面
22 側面
3 溝
4 第1配線
5 第2配線
6 ループ状コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の磁性体基板と、ループ状コイルと、を備えたトランスにおいて、
前記各磁性体基板は、一つの表面に設けられて該基板の両端に達する一対の溝と、前記各溝に設けられた第1配線と、前記基板の両端の側面に前記第1配線に対応して設けられた第2配線と、を備え、
前記第1配線及び第2配線は、互いに電気接続させて前記ループ状コイルを形成し、
前記各磁性体基板は、前記ループ状コイル同士が磁性結合されるように、前記溝同士を対面させ接合されていることを特徴とするトランス。
【請求項2】
第1及び第2の磁性体基板と、ループ状コイルと、を備えたトランスにおいて、
前記第1の磁性体基板は、一つの表面に設けられて該基板の両端に達する一対の溝と、前記各溝に設けられた少なくとも一対の第1配線と、前記基板の両端の側面に前記第1配線に対応して設けられた第2配線と、を備え、
前記第1配線及び第2配線は、互いに電気接続されて少なくとも2つのループ状コイルを形成し、
前記第1の磁性体基板の溝が設けられている面と前記第2の磁性体基板とが対面接合され、前記2つのコイルが磁性結合されていることを特徴とするトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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