説明

トリガー式液体噴出ポンプ

【課題】分別廃棄に適した液体噴出ポンプであって、コンパクトで簡素な構成のものを提供する。
【解決手段】液体吸上げ用の主筒6から射出筒10及びシリンダ16を上下2段に前方突出し、この射出筒10を主筒と連続する射出筒本体10aと、この本体前部に嵌合させた筒状連結材10bで形成するとともに、この連結材の先端にノズル筒26を付設し、 上記射出筒10の前半部にトリガー36の上端部を枢着させて、このトリガー36の中間部を、シリンダ16内で前後方向に摺動するプランジャ18に連結し、このプランジャ18を前方に付勢させることで、上記トリガー36の操作により液体を噴出可能に設けたトリガー式液体噴出ポンプにおいて、上記トリガー36の前面に貼着させた帯状の滑り止め板56の上端から弾性連結片58を延出してなる補助部材54を、トリガー36に一体的に組み付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種トリガー式液体噴出器として、容器体側に連通する垂直な主筒から、シリンダと射出筒とを上下二段に前方突出するとともに、この射出筒の本体から延出したスピン流路付きの筒状連結材(スピンエレメント)の前部にノズル筒を嵌合し、上記射出筒から、上端部を枢着したトリガーを垂下し、このトリガーの後方引寄せによりプランジャがシリンダ内で後退するとともに、トリガーの解放により、シリンダに内装させた金属製スプリングで上記プランジャが前進するようなものが知られている。
【0003】
しかし近年は、分別廃棄の必要から、金属製の部品を使用しないようにすることが望まれている。そこで上記金属製スプリングに代えて、トリガー後面とシリンダとの間に弾性バネを架設したり(特許文献1)、トリガーの上端部から後方に弾性板を延出し、この弾性板の後端部を液体噴出器の左右両面後部に連結した構造(特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開平10−235245号
【特許文献2】特開平11−042451号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものでは、トリガーと別個に弾性バネをポンプ本体に組み付けるから組み立てが面倒である。また特許文献2のものでは、弾性板を含むトリガーの構造全体が大きくなり、液体噴出器全体として嵩張ることになる。
【0005】
こうした不都合を回避するため、本出願人は、上述のトリガーの前面に滑り止め板を貼着するとともに、この滑り止め板の上端から延出した弾性片の先端部を、トリガーの枢着部に近接させて、既述の射出筒本体の前部と筒状連結材の後端部との間に挟持させる構造を考案した。しかしながら、この構成では、組立作業が複雑となるとともに、弾性片を経て不要な力が外から作用するので組立中の部品の位置がずれ、部品相互の位置関係に不適正な歪みを生ずるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、分別廃棄に適した液体噴出ポンプであって、コンパクトな構造で簡単かつ円滑に組み立てることができるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、
液体吸上げ用の主筒6から射出筒10及びシリンダ16を上下2段に前方突出し、
この射出筒10を、少なくとも主筒と連続する射出筒本体10aと、この本体前部に嵌合させた筒状連結材10bで形成するとともに、この連結材の先端にノズル筒26を付設し、
上記射出筒本体10aの前半部にトリガー36の上端部を枢着させて、このトリガー36の中間部を、シリンダ16内で前後方向に摺動するプランジャ20に連結し、
このプランジャ20を前方に付勢させることで、上記トリガー36の操作により液体を噴出可能に設けたトリガー式液体噴出ポンプにおいて、
上記トリガー36の前面に貼着させた帯状の滑り止め板56の上端から弾性連結片58を延出してなる補助部材54を、トリガー36に一体的に組み付け、
上記弾性連結片58を、射出筒本体10a前端より前方の筒状連結材部分に連係して、トリガーの引寄せにより、弾性連結片58が伸び、かつこの弾性連結片の弾性復元によりトリガー36が原位置に復帰するように構成している。
【0008】
本手段では、トリガーに貼設させた滑り止め板から上方に延出した弾性連結片を射出筒側に連係させて、トリガーの弾性復帰力を得ている。具体的には、ノズル筒の後部と射出筒本体の前部にそれぞれ前半部及び後半部を嵌合させた筒状連結材を設け、この筒状連結材に上記弾性連結片を連係している。これにより組立て作業が容易になっている。この弾性連結片の形状は任意であり、後述の連結リングつき伸縮板のように形成しても良いが、逆U字形のバンド状に形成することもできる。上記筒状連結材は、スピン筒としての機能を有するものとすると良い。上記補助部材は、非金属製の弾性体、例えば後述のエラストマーやゴムで形成すると良い。
【0009】
第2の手段は、第1の手段を有し、
上記弾性連結片58の筒状連結材部分への連係箇所を、その弾性連結片58の下端の上方或いはこの下端よりも前側に配置することで、トリガー36を後方へ引いたときに上記連係箇所に弾性連結片58の引っ張り力が後方側へ作用するように構成している。
【0010】
前述の如く射出筒本体とこの射出筒の前部に嵌合させた筒状連結材との間に連結片の一部を挟持させると、この連結片の係止箇所如何で筒状連結材やノズル筒が外方へ外れてしまうおそれがある。そこで本手段では、射出筒本体前方の筒状連結材部分に弾性連結片を係止している。射出筒本体前方の筒状連結材部分はノズル筒を嵌合するまでは外部に露出しているので、組み立てが容易である。
【0011】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
上記弾性連結片58を、帯板状の伸縮板60の上端に連結リング62を付設して形成するとともに、この連結リング62を、上記射出筒本体10aの前端に連ねて筒状連結材10b中間部外面に付設した外向きフランジ12の前面と、ノズル筒26の後部との間に挟持させたことを特徴とする。
【0012】
本手段では、弾性帯板を連結リング付きの伸縮板としており、この連結片がクッションとなって例えば液体噴出ポンプを床に落としたときの衝撃を吸収するようにしている。
【0013】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ
上記補助部材54をエラストマーの一体成形品として形成し、かつインサート成形により上記トリガー36に合体させている。
【0014】
本手段は、補助部材54をエラストマーで形成することで、一つの素材で滑り止め、伸縮材、クッションの三つの機能を実現している。
【発明の効果】
【0015】
第1の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○金属スプリングに代えて、弾性連結片58を用いたから、分別廃棄が容易である。
○弾性連結片58を、トリガー36に貼着した滑り止め板56から上方に突出して、射出筒の筒状連結材10bに連係したから、嵩張らない。
○その連係箇所を射出筒本体10a前端よりも前方としたから、射出筒本体の奥部に組み込む場合と比べて弾性連結片58の取付け作業が簡単である。
○トリガー36を取り付ける際には、まずトリガーの枢着軸を射出筒10に取り付け、射出筒側の部品が組み上がってから、弾性連結片58を取り付ければ良いので、その組み上がり前に液体噴出ポンプに無用の力が加わって、その向きや位置がずれることを防止できる。
【0016】
第2の手段に係る発明によれば、トリガー36を引いたときに筒状連結材部分への連係箇所に後方側へ引っ張り力が作用するようにしたから、射出筒に取り付けたノズル筒が前方に抜け落ちることを防止できる。
【0017】
第3の手段に係る発明によれば、弾性連結片58を射出筒本体10aの前端に連なる外向きフランジ12の前面とノズル筒26の後部との間に挟持させたから、液体噴出ポンプを床に落としてノズル筒が床面に衝突しても、連結リング62がクッションとなって衝撃力を緩和するので、衝突の弾みでノズル筒26が抜け落ちることがない。
【0018】
第4の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○連結リングと伸縮板と滑り止め板とを有する補助部材54をエラストマー製の一部品としたから、一つのエラストマー成形品を、弾性圧縮するクッション、弾性伸長する連結バント、滑り止めの三種類として活用することができ、それぞれ別々に製造する場合に比べて部品数を削減することができる。
○機能的には三つの部品となるものを一体化して一つの部品(補助部材)としたから、更にこの部品をインサート成形によりトリガーと合体させたから、取付け作業が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1及び図6は、本発明のトリガー式液体噴出ポンプの実施形態を示している。
【0020】
まずこのポンプの構成のうち、公知の部分について説明する。この液体噴出ポンプは、容器体口頸部への装着筒2を有し、この装着筒の上端開口に嵌合させた有頂の連結筒4の上面から上端閉塞の主筒6を起立している。この主筒6の上端部からは、射出筒10を、また主筒6の中間部からシリンダ16を上下2段でそれぞれ前方突設しており、更にこのシリンダ16内にはプランジャ20を前後摺動自在に嵌合している。これら射出筒及びシリンダの各内部は、主筒の前壁に穿設した上下一対の連通孔を介して主筒の内部と連通している。そして、図示はしていないが、これら両連通孔の間の主筒部分に吐出弁を、下側連通孔より下方の主筒部分に吸込み弁を設けている。そして射出筒10の前半部からトリガー36を揺動自在に垂下し、このトリガー36の後部を上記プランジャ20の前部に連繋し、このトリガーの操作により、容器体内の液体を上記吸込み弁を介してシリンダ内へ吸込むとともに、シリンダ内の液体を吐出弁を介して射出筒内へ圧送するようにしている。図6に示す通り、この射出筒10は、主筒6に連続する射出筒本体10aと、この射出筒本体の前端部に嵌合した筒状連結材10bと、後述の枢着軸を抱持するために射出筒本体の上面に嵌合させた半筒形の抱持部材10cで形成している。図示の筒状連結材10bは、小径の後半筒部の前端に外向きフランジ12を付設するとともに、この外向きフランジの前面から後半筒部よりも下方に偏心させた大径の前半筒部を突出している。この前半筒部にはスピン流路を形成している。そして筒状連結材10bの後半部を射出筒の前部外面に、また筒状連結材の前半部をノズル筒26の内面にそれぞれ嵌合している。また筒状連結材から主筒を経て射出筒本体10aの先端までフード8で覆っている。
【0021】
上記トリガー36は、上下に長い基板38の左右両側から側板39を短く後方突設して横断面コ字形とし、図3に示す如くこの側板の上端から連続的に左右一対の支持腕40を起立して、射出筒10の前部左右両面に枢着している。図示例では上記各支持腕の上端部外面から軸部42を外方へ突出している。そしてこれら各軸部の後面に射出筒本体10aの左右両側に横設したリブ14の前端に突き当てるとともに、上記抱持部材10cが有するフック13で軸部の前半部を抱持させている。
【0022】
本発明において、上記プランジャ20は、シリンダ16内から前方へ延出し、このプランジャ先端部の左右側面両側に縦溝22を縦設している。
【0023】
また上記トリガー36は、基板38の上部裏面から斜め下方へ長方形筒状の係合筒44を突設するとともに、この係合筒の左右壁内面に係合突起46、46を付設している。図示例では、型抜きのために係合筒内側の基板部分を切除している。そしてこれらの係合突起を上記プランジャの縦溝22内に遊嵌させることで、トリガー36とプランジャ20と連繋させている。
【0024】
上記トリガー36には、補助部材54を組み付けている。この補助部材は、滑り止め板56と弾性連結片58とからなり、エラストマーで一体に形成している。この滑り止め板は上下に長い帯状であり、トリガーの上端分を除く基板38部分前面に貼着している。滑り止め板の上端からは、弾性連結片58を垂直上方に延出している。この弾性連結片は、滑り止め板56と同巾の伸縮板60と、この伸縮板の上端に付設した連結リング62とで形成している。この連結リング62の内径は筒状連結材10cの前半部の外径に、連結リングの外径は外向きフランジ12の外径にそれぞれ対応している。そして筒状連結材へ取り付けるときには、上記ノズル筒を嵌合する前に、筒状連結材の前半部に上記連結リング62のリング孔を挿通させ、この連結リング62を外向きフランジの前面とノズル筒の後端との間に挟持させればよい。この補助部材54は、インサート成形により、トリガーと合体させることができる。
【0025】
上記構成において、トリガー36前面の滑り止め板56に指を当てて、トリガーを引くと、図6に示す如く伸縮板60の下端Pはトリガーの回転軸Oを中心に回転するので、伸縮板が弾性伸長する。このとき、伸長板の上端Qには下後方に応力が作用することとなり、従って筒状連結材10bやノズル筒26が前方へ抜出すことはない。上記トリガー36を開放すると、伸縮板60の復元力によりトリガーが原位置に復帰する。これにより、容器体内から液体が吸い上げられ、更に射出筒を介して液体が噴出される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のトリガー式液体噴出ポンプの実施形態の縦断面図である。
【図2】図1のポンプの要部(トリガー及び補助部材)の上面図である。
【図3】図2の要部の正面図である。
【図4】図2の要部の側面図である。
【図5】図1の噴出ポンプの作用説明図である。
【図6】図1の噴出ポンプの一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
2…装着筒 4…連結筒 6…主筒 8…フード 10…射出筒
10a…射出筒本体 10b…筒状連結材 10c…抱持部材
12…外向きフランジ 13…フック 14…リブ
16…シリンダ 20…プランジャ 22…縦溝
26…ノズル筒
36…トリガー 38…基板 39…側板 40…支持腕 42…軸部
44…係合筒 46…係合突起
54…補助部材 56…滑り止め板 58…弾性連結片 60…伸縮板
62…連結リング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吸上げ用の主筒6から射出筒10及びシリンダ16を上下2段に前方突出し、
この射出筒10を、少なくとも主筒と連続する射出筒本体10aと、この本体前部に嵌合させた筒状連結材10bで形成するとともに、この連結材の先端にノズル筒26を付設し、
上記射出筒本体10aの前半部にトリガー36の上端部を枢着させて、このトリガー36の中間部を、シリンダ16内で前後方向に摺動するプランジャ20に連結し、
このプランジャ20を前方に付勢させることで、上記トリガー36の操作により液体を噴出可能に設けたトリガー式液体噴出ポンプにおいて、
上記トリガー36の前面に貼着させた帯状の滑り止め板56の上端から弾性連結片58を延出してなる補助部材54を、トリガー36に一体的に組み付け、
上記弾性連結片58を、射出筒本体10a前端より前方の筒状連結材部分に連係して、トリガーの引寄せにより、弾性連結片58が伸び、かつこの弾性連結片の弾性復元によりトリガー36が原位置に復帰するように構成したことを特徴とする、トリガー式液体噴出ポンプ。
【請求項2】
上記弾性連結片58の筒状連結材部分への連係箇所を、その弾性連結片58の下端の上方或いはこの下端よりも前側に配置することで、トリガー36を後方へ引いたときに上記連係箇所に弾性連結片58の引っ張り力が後方側へ作用するように構成したことを特徴とする、請求項1記載のトリガー式液体噴出ポンプ。
【請求項3】
上記弾性連結片58を、帯板状の伸縮板60の上端に連結リング62を付設して形成するとともに、この連結リング62を、上記射出筒本体10aの前端に連ねて筒状連結材10b中間部外面に付設した外向きフランジ12の前面と、ノズル筒26の後部との間に挟持させたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のトリガー式液体噴出ポンプ。
【請求項4】
上記補助部材54をエラストマーの一体成形品として形成し、かつインサート成形により上記トリガー36に合体させたことを特徴とする、請求項3記載のトリガー式液体噴出ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−56314(P2008−56314A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237031(P2006−237031)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】