説明

トリスアゾ染料

式(1)の化合物又はその塩:(式1において)Aは、置換されていてもよいフェニル又はナフチルであり;Bは、置換されていてもよいフェニレン又はナフチレンであり;nは、0又は1であり;そしてDはピラゾリル基であるが、ただし、Aが置換されていてもよいフェニル基で、Bが式T:(Tにおいて)Raは、OH又はC1−4アルコキシ基であり;そしてRbは、H又はC1−4アルキル基、ヒドロキシ基、C1−4アルコキシ基、C1−3ジアルキルアミノ基又は式NHCORc{式中、RcはC1−3アルキル又はアミノ基}の基であり;そして*は、式(1)のBにおけるアゾ連結基への結合点を示す、のフェニレン基の場合、Aはニトロ基を含まない。また、各種化合物、組成物及びインクジェットプリンタで使用するためのインクジェットカートリッジ並びにインクジェットプリンタで印刷される基材についてもクレームする。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する分野】
【0001】
本発明は、染料としての使用に適切な化合物、インク及びそれらのインクジェット印刷(“IJP”)における使用に関する。IJPはノンインパクト方式の印刷技術で、インク滴が微細ノズルを通じて基材に吐出される。その際ノズルが基材に接触することはない。
【背景技術】
【0002】
IJPに使用される染料及びインクには要求される多数の性能要件がある。例えば、良好な耐水性、耐オゾン性、耐光性及び光学濃度を有する鮮鋭でにじみのない画像を提供するのが望ましい。インクは、基材に適用されたら汚れ防止のために速乾性を求められることが多いが、インクジェットノズルの先端にクラストを形成するようなことは、プリンタの動作を止めることになるので、あってはならない。また、インクは長期間の貯蔵にも、分解したり微細ノズルを詰まらせかねない沈殿物を形成することなく安定でなくてはならない。
【0003】
JP10195320(特開平10−195320)に、ピラゾリルアゾ基を持つトリスアゾ染料を含む染料と、紙及びパルプの着色におけるそれらの使用が記載されている。
米国特許出願第2001/0027734号には、(置換)ピラゾリルアゾ部分を含有していてもよいトリスアゾ分子から誘導されたトリスアゾ染料の金属錯体が記載されている。銅錯体が特に好適であると言われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
我々は、驚くべきことに、ある種の非金属化化合物がインクジェット印刷用インクとして価値ある着色剤を提供することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従って、式(1):
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
Aは、置換されていてもよいフェニル又はナフチルであり;
Bは、置換されていてもよいフェニレン又はナフチレンであり;
nは、0又は1であり;そして
Dはピラゾリル基であるが、
ただし、Aが置換されていてもよいフェニル基で、Bが式T:
【0008】
【化2】

【0009】
{式中、
Raは、OH又はC1−4アルコキシ基であり;そして
Rbは、H又はC1−4アルキル基、ヒドロキシ基、C1−4アルコキシ基、C1−3ジアルキルアミノ基又は式NHCORc(式中、RcはC1−3アルキル又はアミノ基)の基であり;そして
*は、式(1)のBにおけるアゾ連結基への結合点を示す}のフェニレン基の場合、Aはニトロ基を含まない]の化合物又はその塩を提供する。
【0010】
A又はB上に存在しうる任意の置換基は、好ましくは、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、スルホ、ホスファト、置換されていてもよいアミノ(特に1個以上のC1−4アルキル基を持つアミノ)、置換されていてもよいアシルアミノ(特にC1−4アシルアミノ又はフェニルアシルアミノで、これらの各基はスルホ又はカルボキシ基を持っていてもよい)、置換されていてもよいウレイド(特に1又は2個のC1−4アルキル基を持つウレイド)、置換されていてもよいC1−6アルキル、置換されていてもよいC1−6シクロアルキル、置換されていてもよいC1−6アルコキシ、置換されていてもよいC1−6アルキルチオ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル及び置換されていてもよいスルホンアミド(特に1又は2個のC1−4アルキル基を持つスルホンアミド)からそれぞれ独立して選ばれる。
【0011】
Aが置換フェニル又はナフチルの場合、A上の任意の置換基は、さらに好ましくは、ニトロ、カルボキシ、スルホ、ホスファト、置換されていてもよいアミノ(特に1個以上のC1−4アルキル基を持つアミノ)、置換されていてもよいアシルアミノ(特にC1−4アシルアミノ又はフェニルアシルアミノで、これらの各基はスルホ又はカルボキシ基を持っていてもよい)、置換されていてもよいウレイド(特に1又は2個のC1−4アルキル基を持つウレイド)、置換されていてもよいC1−6アルキル、置換されていてもよいC1−6シクロアルキル、置換されていてもよいC1−6アルコキシ並びに置換されていてもよいスルホンアミド(SONR)(特に1又は2個のC1−4アルキル基を持つスルホンアミド)及び置換されていてもよいカルボンアミド(CONR){前記式中、R及びRは、それぞれ独立してH又は置換されていてもよいC1−6アルキルである}から選ばれる。
【0012】
Aが置換フェニル又はナフチルの場合、A上の任意の置換基は、最も好ましくは、ニトロ、カルボキシ、スルホ、ホスファト、置換されていてもよいアミノ(特に1個以上のC1−4アルキル基を持つアミノ)、置換されていてもよいアシルアミノ(特にC1−4アシルアミノ又はフェニルアシルアミノで、これらの各基はスルホ又はカルボキシ基を持っていてもよい)、置換されていてもよいC1−6アルキル、置換されていてもよいC1−6シクロアルキル及び置換されていてもよいC1−6アルコキシから選ばれる。さらに、Aは好ましくは、カルボキシ、スルホ及びホスファトから選ばれる少なくとも1個の水可溶化基も持つ。
【0013】
Aで表される置換されていてもよいフェニル又はナフチル基の例として、4−アミノ−2,5−ジスルホフェニル、2−スルホ−4−メトキシフェニル、2−カルボキシ−4−スルホフェニル、2−スルホ−4−メチルフェニル、2−メトキシ−5−メチル−4−スルホフェニル及び2−スルホ−4,5−ジメチルフェニルが挙げられる。しかしながら、Aは、置換されていてもよいフェニル基(最も好ましくは前述のように置換されている)であるのも最も好適である。
【0014】
Bが置換フェニレン又はナフチレンの場合、B上の任意の置換基は、好ましくは、カルボキシ、スルホ、ホスファト、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアシルアミノ、置換されていてもよいウレイド、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ及び置換されていてもよいアリールから選ばれる。
【0015】
Bが置換フェニレンの場合、該フェニレン環は、好ましくは、置換されていてもよいC1−6アルキル、置換されていてもよいC1−6アルキルチオ、置換されていてもよいC1−6アルコキシ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいウレイド、カルボキシ及びスルホから選ばれる1個以上の基を持つ。
【0016】
Bが置換されていてもよいナフチレンの場合、該ナフチレン環は、好ましくは、1個以上の水可溶化基、さらに好ましくは、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸基から選ばれる1又は2個の基を持つ。
【0017】
Bで表される置換されていてもよいフェニレン及びナフチレン基の例として、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)フェン−1,4−イレン、2,5−ジメトキシフェン−1,4−イレン、2,5−ジエトキシフェン−1,4−イレン、2−メトキシ−5−アミノフェン−1,4−イレン、2−メトキシ−5−アセチルアミノフェン−1,4−イレン、7−スルホナフト−1,4−イレン、6−スルホナフト−1,4−イレン及び2−エトキシ−6−スルホナフト−1,4−イレンが挙げられる。しかしながら、Bは置換されていてもよいフェニレン基(該フェニレン基は最も好ましくは前述のように置換されている)であるのが最も好適である。
【0018】
好ましくはDは、少なくとも1個のカルボキシ、スルホ又はホスファト基を持つピラゾリル基である。さらに好ましくはDは、式(3a)、(3b)又は(3c)の基であり、なおさらに好ましくはDは式(3a)又は(3b)であり、最も好ましくはDは式(3a)である。
【0019】
【化3】

【0020】
式中、
及びRは、それぞれ独立して、H、カルボキシ、シアノ又は置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アシル、アリール、アミノ、アミド、カルボンアミド(CONR)、カルボキシエステル、スルホンアミド(SONR)又はアルキルスルホニル基であり(前記式中、R及びRは、それぞれ独立してH又は置換されていてもよいC1−6アルキルである);
及びRは、それぞれ独立して、H、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、スルホ、ホスファト、置換されていてもよいアミノ(特に1個以上のC1−4アルキル基を持つアミノ)、置換されていてもよいアシルアミノ(特にC1−4アシルアミノ又はフェニルアシルアミノで、これらの各基はスルホ又はカルボキシ基を持っていてもよい)、置換されていてもよいウレイド(特に1又は2個のC1−4アルキル基を持つウレイド)、置換されていてもよいC1−6アルキル、置換されていてもよいC1−6シクロアルキル、置換されていてもよいC1−6アルコキシ、置換されていてもよいC1−6アルキルチオ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいC1−6アルキルスルホニル及び置換されていてもよいスルホンアミド(特に1又は2個のC1−4アルキル基を持つスルホンアミド)であり;そして
*は式(1)におけるアゾ連結基への結合点を示す。
【0021】
は、好ましくは、置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アシル又はアミノ基、あるいは隣接するアゾ基と遊離酸の形態で水素結合可能なカルボキシのような基である。
【0022】
で表される最も好適な基の例として、メチル、カルボキシ、CONR及びHが挙げられる。しかしながら、最も好ましくは、Rは、カルボキシ又はCONR(R及びRはそれぞれ独立してH又は置換されていてもよいC1−6アルキルである)である。
【0023】
及びRは、最も好ましくはそれぞれ独立して置換されていてもよいアリール基、さらに好ましくは、カルボキシ、スルホ、ニトロ、ホスファト、置換されていてもよいC1−4アルキル、置換されていてもよいC1−4アルコキシ、置換されていてもよいアミノ又は置換されていてもよいC1−4アシルアミノから選ばれる1個以上の置換基を持つフェニル又はナフチル基である。
【0024】
及びRで表される基の例として、4−スルホフェニル及び2−スルホナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
は、最も好ましくは、カルボキシ又はC1−4アルキルカルボキシエステル基である。
【0025】
A、B、R、R、R及びR上にそれぞれ存在する好適な置換されていてもよいC1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基は、置換されていてもよいC1−4アルキル基又は置換されていてもよいC1−4アルコキシ基、さらに好ましくは、非置換又はハロ原子又はカルボキシ、スルホもしくはホスファト基を持つC1−4アルキル基又はC1−4アルコキシ基などである。
【0026】
、R、R及びR上の好適な置換されていてもよいアリール基は、置換されていてもよいフェニル基で、該フェニル基は、ニトロ、カルボキシ、スルホ、ホスファト、置換されていてもよいアミノ(特に1個以上のC1−4アルキル基を持つアミノ)、置換されていてもよいアシルアミノ(特にC1−4アシルアミノ又はフェニルアシルアミノで、これらの各基はスルホ又はカルボキシ基を持っていてもよい)、置換されていてもよいC1−6アルキル、置換されていてもよいC1−6シクロアルキル、及び置換されていてもよいC1−6アルコキシによって置換されていてもよい。さらに、置換されていてもよいフェニル基は、好ましくは、カルボキシ、スルホ及びホスファトから選ばれる少なくとも1個の水可溶化基も持つ。
【0027】
A、B、R、R、R及びR上に存在する好適な置換されていてもよいカルボンアミド又はスルホンアミド基は、それぞれ式CONR又はSONRの基で、R及びRはそれぞれ独立してH又は置換されていてもよいC1−6アルキルである。
【0028】
A、B、R、R、R及びR上にそれぞれ存在する好適な置換されていてもよいアミノ基は、置換されていてもよいアシルアミノ、特にC1−4アシルアミノ、さらに好ましくは置換されていてもよいウレイド(非置換又はカルボキシ、スルホもしくはホスファト基を持つ)である。
【0029】
好ましくは、A、B、R、R、R及びR上にそれぞれ存在するアシル基は、置換されていてもよいC1−4アルキルアシル、置換されていてもよいフェニルアシル、好ましくはアセチル又はベンゾイルである。
【0030】
A、B、R、R、R、R、R及びRのいずれか上にある置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、アリール及びC1−6アルキルスルホニル置換基上に存在しうる好適な置換基は、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、スルホ、ホスファト、アシルアミノ、ウレイド、C1−6アルキル、好ましくはC1−6アルキル、さらに好ましくはメチル又はエチル、C1−6アルコキシ、好ましくはC1−4アルコキシ、さらに好ましくはメトキシ又はエトキシ、C1−10アルキルチオ、アリール、好ましくはフェニル又はナフチル、C1−6アルキルスルホニル及びスルホンアミドから独立して選ばれる。
【0031】
上記選好に鑑み、好適な態様において、
Aは、カルボキシ、スルホ、ホスファト、アミノ、メチル、メトキシ及びアセトアミドから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニルであり;
Bは、スルホ、メチル、メトキシ及び2−ヒドロキシエトキシから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニレン又はナフチレンであり;
nは0又は1であり;
Dは、式(3a)、(3b)又は(3c):
【0032】
【化4】

【0033】
[式中、
は、H、メチル又はカルボキシであり;
及びRは、それぞれ独立して、スルホ及びカルボキシから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニル又はナフチルであり;そして
は、C1−4アルキルカルボキシエステルである]である。
【0034】
更なる好適な態様において、
Aは、カルボキシ、スルホ、アミノ、メチル、メトキシ及びアセトアミドから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニルであり;
Bは、スルホ、メチル、メトキシ及び2−ヒドロキシエトキシから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニレン又はナフチレンであり;
nは0又は1であり;そして
Dは、式(3a)、(3b)又は(3c):
【0035】
【化5】

【0036】
[式中、
及びRは、それぞれ独立して、H、カルボキシ、シアノ又は置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アシル、アリール、アミノ、アミド、カルボンアミド、カルボキシエステル、スルファモイル又はアルキルスルホニルであり;そして
及びRは、それぞれ独立して、H又は置換されていてもよいアリール又はアルキルであり;そして
*は式(1)におけるアゾ連結基への結合点を示す]である。
【0037】
本発明の更なる好適な態様において、式(2):
【0038】
【化6】

【0039】
[式中、
は、C1−4アルキル又はC1−4アルコキシであり;そして
nは0又は1である]の化合物を提供する。式2の化合物において、Rは好ましくはメチル又はメトキシであるのが好適である。
【0040】
式(1)の化合物は、式(4)[式中、n、A及びBは前述の定義の通り]の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得、得られたジアゾニウム塩を式H−D[式中、Dは前述の定義の通り]の化合物とカップリングすることによって製造できる。
【0041】
【化7】

【0042】
ジアゾ化は好ましくは0℃〜10℃の温度で実施する。好ましくはジアゾ化は水中で好ましくはpH7未満で実施する。希鉱酸、例えばHCl又はHSOを使用すれば所望のpH条件を達成することができる。
【0043】
式(4)の化合物は、式A−N=N−B−NH[式中、A及びBは前述の定義の通り]の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得、得られたジアゾニウム塩を1−ヒドロキシ−3−スルホ−6−アミノナフチレン(5位にスルホ基を持っていてもよい)とカップリングすることによって製造できる。
【0044】
式(2)の化合物は、式(5)[式中、n及びRは前述の定義の通り]の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得、得られたジアゾニウム塩を式(6)の化合物とカップリングすることによって製造できる。
【0045】
【化8】

【0046】
ここでもジアゾ化は好ましくは0℃〜10℃の温度で、水中において好ましくはpH7未満で実施される。所望のpH条件を達成するには希鉱酸、例えばHCl又はHSOを使用する。
【0047】
式(5)の化合物は、式(7)[式中、Rは前述の定義の通り]の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得、得られたジアゾニウム塩を1−ヒドロキシ−3−スルホ−7−アミノナフチレン(5位にスルホ基を持っていてもよい)とカップリングすることによって製造できる。
【0048】
【化9】

【0049】
式(7)の化合物は、式(8)[式中、Rは前述の定義の通り]の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を得、得られたジアゾニウム塩を2,5−ビス−(2−アセトキシエトキシ)アニリンとカップリングし、次いでアセトキシ基を加水分解することによって製造できる。
【0050】
【化10】

【0051】
上記全プロセスの反応条件は、染料技術の分野で一般的に使用されている条件、例えばEP0356080に記載のような条件である。
本発明の化合物が塩の形態の場合、好適な塩は、アルカリ金属塩(特にリチウム、ナトリウム及びカリウム塩)、アンモニウム及び置換アンモニウム塩並びにそれらの混合物である。特に好適な塩は、ナトリウム、カリウム及びリチウム塩、アンモニア及び揮発性アミンとの塩並びにそれらの混合物である。リチウム塩は良好な溶解性を有しており、特に貯蔵安定性のある、低毒性の、インクジェットノズルを詰まらせにくいインクを形成する。
【0052】
本発明の化合物は公知技術を用いて所望の塩に変換できる。例えば、本発明の化合物のアルカリ金属塩をアンモニウム又は置換アンモニア塩に変換するには、化合物のアルカリ金属塩を水に溶解し、鉱酸で酸性化し、アンモニア又はアミンで溶液のpHをpH9〜9.5に調整し、そしてアルカリ金属カチオンを透析又はイオン交換樹脂の使用によって除去すればよい。
【0053】
そのような塩を形成するのに使用できるアミンの例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ピペリジン、ピリジン、モルホリン、アリルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミン及びそれらの混合物などであるが、これらに限定されない。本発明の染料が完全にアンモニウム塩又は置換アンモニウム塩の形態であることは必須ではない。混合アルカリ金属塩とアンモニウム塩又は置換アンモニウム塩(いずれか)の両方を含む染料は、特に少なくとも50%のカチオンがアンモニウム又は置換アンモニウムイオンの場合、有効である。
【0054】
なお更なる塩は、米国特許第5830265号の請求項1、(b)に記載の対イオンとの塩である。前記対イオンは引用によって本明細書に援用する。
本発明の化合物は、本明細書中に示したもの以外に互変異性体で存在することもできる。これらの互変異性体も本特許請求の範囲に包含される。
【0055】
本発明の第二の側面において、前述の本発明による式(1)の化合物と液状媒体とを含む組成物を提供する。液状媒体は水及び有機溶媒を含む。
本発明の第二の側面による好適な組成物は、
(a)前述の式(1)の化合物又はその塩0.01〜30部;及び
(b)液状媒体70〜99.99部
を含んでなり、液状媒体は有機溶媒を含み、すべての部は重量部であり、部数(a)+(b)=100である。
【0056】
成分(a)の部数は、好ましくは0.1〜20、さらに好ましくは0.5〜15、特に1〜5部である。成分(b)の部数は、好ましくは99.9〜80、さらに好ましくは99.5〜85、特に99〜95部である。好ましくは成分(a)は成分(b)中に完全に溶解する。好ましくは、成分(a)は20℃で成分(b)における溶解度が少なくとも10%である。これにより、インクの製造に使用できる液体染料濃縮物の製造が可能になり、貯蔵中に液状媒体の蒸発が発生しても染料析出の機会が削減される。
【0057】
好適な液状媒体は水及び有機溶媒を、好ましくは水対有機溶媒99:1〜1:99、さらに好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20の重量比で含む。
有機溶媒は水混和性有機溶媒又はそのような溶媒の混合物であるのが好ましい。好適な水混和性有機溶媒は、C1−6アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール;直鎖アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン及びケトン−アルコール、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフラン及びジオキサン;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール及びチオジグリコール並びにオリゴ−及びポリ−アルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくは、グリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]−エタノール及びエチレングリコールモノアルキルエーテル;環状アミド、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド及びスルホランなどである。好適な液状媒体は、水と2種類以上、特に2〜8種類の水溶性有機溶媒とを含む。
【0058】
特に好適な水溶性有機溶媒は環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン及びN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;並びにジオールのモノ−C1−4アルキル及びC1−4アルキルエーテル、さらに好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に((2−メトキシ−2)−エトキシ)−2−エトキシエタノールである。
【0059】
本発明の化合物は、魅力的な黒の色調のため、インクに単一の着色剤として用いることができる。しかしながら、所望であれば、特定の最終用途のためにわずかに異なる色調が必要な場合、本発明の化合物を一つ以上の更なる着色剤と組み合わせることもできる。更なる着色剤は好ましくは染料である。更なる着色剤をインクに包含する場合、それらは好ましくは、ブラック、マゼンタ、シアン及びイエローの着色剤及びそれらの組合せから選ばれる。
【0060】
適切な更なるブラック着色剤は、本発明の異なる着色剤、C.I.フードブラック2、C.I.ダイレクトブラック19、C.I.リアクティブブラック31、PRO−JET(登録商標)ファストブラック2、C.I.ダイレクトブラック195、C.I.ダイレクトブラック168;及びLexmarkによる特許(例えば、EP0 539,178 A2、実施例1、2、3、4及び5)、Orient Chemicalsによる特許(例えば、EP0 347 803 A2、5〜6ページ、アゾ染料3、4、5、6、7、8、12、13、14、15及び16)及びSeiko Epson Corporationによる特許に記載のブラック染料などである。
【0061】
適切な更なるマゼンタ着色剤は、PRO−JET(登録商標)ファストマゼンタ2、PRO−JET(登録商標)マゼンタBTX、3BOA、2BTX及び1T;C.I.アシッドレッド52及び249、C.I.リアクティブレッド180、31及び23;並びに、C.I.ダイレクトレッド227などである。
【0062】
適切な更なるシアン着色剤は、フタロシアニン着色剤、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.アシッドブルー99などである。
適切な更なるイエロー着色剤は、C.I.ダイレクトイエロー142;C.I.ダイレクトイエロー132;C.I.ダイレクトイエロー86;C.I.ダイレクトイエロー85;C.I.ダイレクトイエロー173;及びC.I.アシッドイエロー23などである。
【0063】
該インクは、インクジェット印刷用インクに従来から使用されている追加の成分、例えば、粘度及び表面張力調節剤、腐食防止剤、殺生物剤、コゲ削減用添加剤、並びにイオン性又は非イオン性でありうる界面活性剤を含有することもできる。
【0064】
組成物のpHは、好ましくは4〜11、さらに好ましくは7〜10である。
25℃における組成物の粘度は、好ましくは50cP未満、さらに好ましくは20cP未満、特に5cP未満である。
【0065】
本発明の第二の側面による組成物をインクジェット印刷用組成物として使用する場合、該組成物は好ましくは500ppm(百万分の1部)未満、さらに好ましくは100ppm未満のハロゲン化物イオン濃度を有する。また該組成物は100ppm未満、さらに好ましくは50ppm未満の二価及び三価金属を有するのが特に好適である。ここで部は組成物の総重量に対する重量部である。我々は、組成物を精製してこれらの望ましくないイオンの濃度を低下させると、特にサーマルインクジェットプリンタのインクジェットプリンティングヘッドのノズルの詰まりが削減されることを見出した。
【0066】
本発明の更なる側面において、画像を基材に印刷する方法を提供する。該方法は、本発明の第二の側面による組成物をインクジェットプリンタによって基材に適用することを含む。
【0067】
インクジェットプリンタは、好ましくは組成物を、小オリフィスを通して基材上に吐出される液滴の形態で基材に適用する。好適なインクジェットプリンタは、ピエゾエレクトリックインクジェットプリンタ及びサーマルインクジェットプリンタである。サーマルインクジェットプリンタでは、プログラムされた熱のパルスをオリフィスに隣接する抵抗器(レジスタ)によって液貯め(リザーバ)の組成物に印加することによって、組成物を小液滴の形態で基材に向かって吐出させる。この間、基材とオリフィスとは相対的運動を行っている。ピエゾエレクトリックインクジェットプリンタでは、小型水晶の発振によってオリフィスから組成物を吐出する。
【0068】
基材は、好ましくは、紙、プラスチック、テキスタイル、金属又はガラス、さらに好ましくはコート紙、又はコートプラスチックのような処理基材、特にコート紙である。
好適な普通紙又は処理紙は、酸性、アルカリ性又は中性の性質を有しうる紙である。市販されている普通紙及び処理紙の例は、フォトペーパープロ(Photo Paper Pro)(PR101)、フォトペーパープラス(Photo Paper Plus)(PP101)、光沢フォトペーパー(Glossy Photo Paper)(GP401)、半光沢紙(Semi Gloss Paper)(SG101)、艶消しフォトペーパー(Matte Photo Paper)(MP101)、(いずれもCanonより入手可);プレミアム光沢フォトペーパー(Premium Glossy Photo Paper)、プレミアム半光沢フォトペーパー(Premium Semi gloss Photo Paper)、ColorLife(登録商標)、フォトペーパー、フォト品質光沢紙(Photo Quality Glossy Paper)、両面艶消し紙(Double-sided Matte Paper)、艶消し紙ヘビーウェイト(Matte Paper Heavyweight)、フォト品質インクジェット紙(Photo Quality Inkjet Paper)、増白インクジェット紙(Bright White Inkjet Paper)、プレミアム普通紙(Premium Plain Paper)、(いずれもSeiko Epson Corpより入手可);HPオールインワン印刷紙(HP All-In-One Printing Paper)、HPエブリディインクジェット紙(HP Everyday Inkjet Paper)、HPエブリディフォトペーパー半光沢(HP Everyday Photo Paper Semi-glossy)、HPオフィスペーパー(HP Office Paper)、HPフォトペーパー(HP Photo Paper)、HPプレミアム高光沢フィルム(HP Premium High-Gloss Film)、HPプレミアムペーパー(HP Premium Paper)、HPプレミアムフォトペーパー(HP Premium Photo Paper)、HPプレミアムプラスフォトペーパー(HP Premium Plus Photo Paper)、HP印刷紙(HP Printing Paper)、HPスーペリアインクジェット紙(HP Superior Inkjet Paper)、(いずれもHewlett Packard Inc.より入手可);エブリディ光沢フォトペーパー(Everyday Glossy Photo Paper)、プレミアム光沢フォトペーパー(Premium Glossy Photo Paper)(どちらもLexmark(登録商標)Inc.より入手可);艶消し紙(Matte Paper)、アルティマピクチャーペーパー(Ultima Picture Paper)、プレミアムピクチャーペーパー(Premium Picture Paper)、ピクチャーペーパー(Picture Paper)、エブリディピクチャーペーパー(Everyday Picture Paper)(いずれもKodak Inc.より入手可)などである。
【0069】
本発明の更なる側面において、前述の定義のような組成物、化合物を用い、又は方法によって印刷される紙、オーバーヘッドプロジェクタ用スライド又はテキスタイル材料を提供する。
【0070】
本発明のなお更なる側面において、所望により補充可能なインクジェットプリンタ用カートリッジを提供する。該カートリッジは、一つ以上のチャンバと組成物とを含み、組成物は少なくとも一つのチャンバに存在し、該組成物は本発明の第二の側面による定義の通りである。
【0071】
本明細書中に記載の本化合物及び組成物は、文字及び画像のインクジェット印刷に特によく適した、癖のない魅力的な黒色の色調の印刷物を提供する。該組成物は、良好な貯蔵安定性を有し、インクジェットプリンタに使用される極微細ノズルを詰まらせにくい。さらに、得られた画像は、優れた光学濃度、色調、耐光性、耐水性、耐湿性及び酸化性大気汚染物質の存在下での耐退色性を有する。
【0072】
次に本発明を以下の実施例によってさらに説明する。実施例中、すべての部及びパーセンテージは特に断りのない限り重量による。
【実施例】
【0073】
実施例1
【0074】
【化11】

【0075】
の製造
ステージA
5−スルホアントラニル酸(44.4g、100%の場合32.55g、0.15モル)を水酸化リチウム溶液(2M)でpHをpH8〜9に調整することによって水(500ml)に溶解し、亜硝酸ナトリウム(11.4g、0.17モル)を加えた。次に該溶液を、濃塩酸(50ml)を含有する氷と水の撹拌混合物に加えた。反応をさらに0〜10℃で1時間撹拌し、その後スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を分解した。
【0076】
2,5−ビス−(2−アセトキシエトキシ)アニリン(44.55g、0.16モル)のアセトン(500ml)中溶液を上で製造したジアゾニウム塩溶液に加え、その後一晩撹拌し、自然に室温に温まらせた。生成物をろ過によって単離し、水洗し、アセトン(1.5リットル)中にスラリー化し、再度ろ過により単離した後、50℃で乾燥させた。収量=82.5g。
ステージB
ステージAの生成物(28g、0.06モル)をN−メチルピロリドン(250ml)中に懸濁させ、亜硝酸ナトリウム(7.5g、0.09モル)を加えた。室温で10分間撹拌後、濃塩酸(16ml)の水(100ml)中溶液をゆっくり加えた。この間に温度は45℃に上昇した。該反応混合物を2時間撹拌して、室温に自然冷却させ、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を分解した。6−アミノ−1−ナフトール−3,5−ジスルホン酸(20g、0.06モル)を水酸化リチウム溶液(2M)でpHを8〜9に調整することによって水(200ml)に溶解した。次に上で製造したジアゾニウム塩溶液を0〜10℃で必要に応じて水酸化リチウム溶液(2M)の添加によってpHを7〜8に維持しながらゆっくり加えた。1時間撹拌後、水酸化リチウム(10g)を加え、反応混合物を室温でさらに1時間撹拌した。その時点で薄層クロマトグラフィーにより加水分解の完了が示された。濃塩酸を添加してpHをpH7に調整し、塩化リチウム溶液(50%w/v)を加えた。室温に自然冷却後、生成物をろ過によって単離し、塩化リチウム溶液(50%w/v)で洗浄した。生成物を水(200ml)に溶解してアセトン(2.5リットル)で再沈殿させることによって精製した。アセトンをデカンテーションによって除去し、残渣を水に溶解して溶液を得た。該溶液は塩化第一チタンによる滴定で0.05モルの生成物を含有することが分かった。該生成物はステージCでそれ以上精製せずに使用した。
ステージC−標記染料
ステージBの生成物を室温で撹拌し、亜硝酸ナトリウム(3.8g、0.06モル)とCalsolene(登録商標)油(1g)を加えた(Calsolene(登録商標)油はICI plcの登録商標)。次に該混合物を、濃塩酸(20ml)を含有する氷と水の撹拌混合物に加えた。0〜10℃で撹拌を2時間続ける間にジアゾニウム塩が懸濁物として溶液から析出した。1−(4−スルホフェニル)−3−カルボキシピラゾール−5−オン(15.5g、0.055モル)の溶液を水(200ml)に溶解し、水酸化リチウム溶液(2M)を加えてpHをpH7〜8に調整した。次に該混合物をジアゾニウム塩懸濁液に加え、0〜10℃で必要に応じて水酸化リチウム溶液(2M)の添加によってpHをpH7〜8に維持しながら撹拌を1時間続けた。生成物を、アセトン(5リットル)に入れてクエンチング/ドラウニング(drowning)し、その後ろ過することによって単離した。粗生成物を水(300ml)に溶解し、アセトン(2.5リットル)でのクエンチング/ドラウニングを繰り返すことによって精製した。ろ過後、生成物を水に溶解し、透析して低導電率にし、最終的に70℃で蒸発乾固することによって単離した。収量=46.3g。
【0077】
実施例2
【0078】
【化12】

【0079】
の製造
ステップ1
【0080】
【化13】

【0081】
の製造
4−アミノトルエン−3−スルホン酸(28.05g、0.15モル)を水(500ml)に溶解し、水酸化リチウム(2M)の添加によりpHをpH7〜8に調整した。亜硝酸ナトリウム(11.4g、0.17モル)を該溶液に加え、次に該混合物を濃塩酸(45ml)入りの氷と水の混合物に加えた。反応を0〜10℃でさらに1時間撹拌した。次いで過剰の亜硝酸をスルファミン酸の添加によって分解し、ジアゾニウム塩を得た。
【0082】
2,5−ビス−(2−アセトキシエトキシ)アニリン(59.4g、0.2モル)をアセトン(600ml)に溶解し、該溶液を上で製造したジアゾニウム塩に撹拌しながら加えた。次に該カップリング混合物を室温で一晩撹拌した。沈殿した生成物をろ過によって単離し、水(2リットル)で洗浄した。次に生成物をアセトン(2リットル)中で撹拌し、ろ過及び少量のアセトンで洗浄した後、50℃で乾燥させた。収量=66.8g。
ステップ2
【0083】
【化14】

【0084】
の製造
上記ステップ1に記載の通りに製造したモノアゾ化合物(23.95g、0.05モル)をN−メチルピロリドン(250ml)中に懸濁させ、亜硝酸ナトリウム(7g、0.1モル)を加えた。室温で15分間撹拌後、均質溶液が得られた。該撹拌溶液に希塩酸(15mlの濃HClを水で100mlにしたもの)を5分間かけて加え(発熱)、撹拌を2時間続けて室温に自然冷却させた。過剰の亜硝酸をスルファミン酸の添加によって除去した。
【0085】
6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸(18g、0.056モル)を水(200ml)に溶解し、水酸化リチウム(2M)の添加によってpHをpH10に調整した。該溶液を撹拌し、0〜10℃に冷却して、ジアゾニウム塩溶液を必要に応じて水酸化リチウム(2M)の添加によってpHをpH10〜10.5に維持しながらゆっくり加えた。該混合物を0〜10℃でさらに1時間撹拌後、室温に温まらせた。水酸化リチウム(10g)を加え、室温での撹拌を薄層クロマトグラフィーで加水分解の完了が示されるまで続けた。次に反応混合物のpHを濃塩酸の添加によってpH7に調整した。次いで塩化リチウム溶液(30%w/v)をゆっくり加えた(発熱)。生成物を70℃でろ過によって単離し、風乾した。粗生成物を40℃の水(1リットル)に溶解し、塩化リチウム溶液(20%w/v)の添加によって再沈殿させた。この間温度は70℃に上昇した。次に、生成物を熱懸濁液のろ過によって単離し、塩化リチウム溶液(25%w/v、1リットル)で洗浄した。得られた生成物を水(340ml)に溶解して溶液を得た。該溶液は塩化第一チタンによる滴定で0.043モルの生成物を含有することが分かった。この生成物の溶液はステップ3でそれ以上精製せずに使用した。
ステップ3:標記化合物の製造:
上記ステップ2の生成物(340ml、100%の場合31.57g)を室温で撹拌し、亜硝酸ナトリウム(3.3g、0.048モル)、次いでCalsolene(登録商標)油(1g、Calsolene(登録商標)油はICI plcの登録商標))を加えた。次に得られた混合物を、濃塩酸(17ml)を含有する氷と水の混合物に加えた。0〜10℃で撹拌を2時間続ける間にジアゾニウム塩が溶液から析出し、懸濁液を形成した。スルファミン酸の添加によって過剰の亜硝酸を分解した。1−(4−スルホフェニル)−3−カルボキシピラゾール−5−オン(14g、0.049モル)を水(200ml)に溶解し、水酸化リチウム溶液(2M)を加えてpHをpH7〜8に調整した。次にこの溶液をジアゾニウム塩懸濁液に加え、反応混合物のpHを水酸化リチウム溶液(2M)の添加によってpH7に調整し、撹拌を0〜10℃で1時間続けた。この間、必要応じて水酸化リチウム溶液(2M)を加えることによりpHをpH7〜8に維持した。アセトン(4リットル)に入れてクエンチング/ドラウニング(drowning)し、その後ろ過及びアセトンで洗浄することによって生成物を単離した。該生成物を水(500ml)に溶解し、透析して低導電率にし、最終的に70℃で蒸発乾固することによって単離した。収量=39.5g。
【0086】
実施例3
【0087】
【化15】

【0088】
の製造:
実施例2の方法を、ステップ1で4−アミノ−3−トルエンスルホン酸の代わりに2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸(30.45g)を使用し、ステップ2で6−アミノ−1−ナフトール−3,5−ジスルホン酸の代わりに6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸(14.84g)を使用した以外は繰り返した。
【0089】
実施例4
【0090】
【化16】

【0091】
の製造:
実施例2の方法を、ステップ1で4−アミノ−3−トルエンスルホン酸の代わりに2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸(30.45g)を使用した以外は繰り返した。
【0092】
実施例5〜48
実施例1の方法を繰り返したが、ただし、ステージAでは5−スルホアントラニル酸を表1のカラムAの構造に対応する式のアミンに置き換え;表1のカラム3にn=0が表示されている場合、実施例1の6−アミノ−1−ナフトール−3,5−ジスルホン酸は6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸に置き換え;そして実施例1のステージCでは1−(4−スルホフェニル)−3−カルボキシピラゾール−5−オンを表1のカラム4に示された式Dのピラゾロンに置き換えた。実施例12と45の場合、実施例1のステージCの生成物をpH13で水酸化リチウム溶液に溶解し、70℃で6時間加熱して表1のカラムAに示されたアミン成分からアセチル基を除去し、その後単離及び透析をした。得られた化合物の最終染料構造も表1に示す。
【0093】
実施例49〜62
実施例1の方法を繰り返したが、ただし、ステージAでは5−スルホアントラニル酸を表2のカラムAの構造に対応する式のアミンに置き換え、2,5−ビス−(2−アセトキシエトキシ)アニリンを表2のカラムBの構造に対応する式のアミンに置き換え;表2のカラム4にn=0が表示されている場合、6−アミノ−1−ナフトール−3,5−ジスルホン酸は6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸に置き換え、そしてステージCでは1−(4−スルホフェニル)−3−カルボキシピラゾール−5−オンを表2に示された式Dのピラゾロンに置き換えた。
【0094】
実施例61.ステージCの生成物をpH13で水酸化リチウムに溶解し、70℃で6時間加熱して表2のカラムAに示されたアミン成分からアセチル基を除去し、その後単離及び透析をした。化合物の構造もすべて表2のカラム6に示す。
【0095】
【表1−1】

【0096】
【表1−2】

【0097】
【表1−3】

【0098】
【表1−4】

【0099】
【表1−5】

【0100】
【表1−6】

【0101】
【表1−7】

【0102】
【表1−8】

【0103】
【表1−9】

【0104】
【表1−10】

【0105】
【表1−11】

【0106】
【表1−12】

【0107】
【表1−13】

【0108】
【表1−14】

【0109】
【表1−15】

【0110】
【表1−16】

【0111】
【表2−1】

【0112】
【表2−2】

【0113】
【表2−3】

【0114】
【表2−4】

【0115】
【表2−5】

【0116】
実施例63−インク
インクは、実施例1〜実施例62の染料を下記の配合に従って含有させることにより製造した。
【0117】
2−ピロリドン 5部
チオジグリコール 5部
Surfynol(登録商標)465 1部
染料 3部
水 100部にするのに必要な量
Surfynol(登録商標)465は、Air Products and Chemicals Inc.,USAより入手できる界面活性剤である。
【0118】
表3〜8に従って更なるインクも製造できる。第一のカラムに記載されている染料は、同一番号の上記実施例で製造された染料である。第二のカラム以降に引用されている数字は関係成分の部数で、いずれも重量部である。インクはサーマル又はピエゾ方式のインクジェット印刷によって紙に適用できる。
【0119】
表3〜8には以下の略号が使用されている。
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
CET=セチルアンモニウムブロミド
PHO=NaHPO及び
TBT=ターシャリーブタノール
TDG=チオジグリコール
【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
実施例64
インクジェット印刷
実施例67に記載のインクを選択してHewlett Packard社のDeskJet 560C(登録商標)インクジェットプリンタの空のカートリッジに入れ、各種媒体、例えばHP印刷紙、HPプレミアムプラス(HP PREMIUM PLUS)フォトペーパー、キャノンフォトペーパープロ(CANON PR101)又はセイコーエプソンプレミアム光沢フォト(EPSON PREMIUM GLOSSY PHOTO)ペーパーに印刷した。対照として汎用されている2種類の市販染料も印刷した。それらの構造を以下に示す。
市販染料1
【0127】
【化17】

【0128】
市販染料2
下記分子のブレンド
【0129】
【化18】

【0130】
各印刷物の光学濃度の読みは、Gretag Macbethを用い、フィルタなし、D65光源、観測角度2°(CIE 1931)、濃度操作ANSIステータスAで測定した。光学濃度の結果を表9に示す。
【0131】
【表9】

【0132】
耐光性
印刷物の耐光性は、Atlas Ci5000 ウェザロメータを用い、Atlas 12000Wキセノンランプを0.8W/m及び420nmで運転して評価した。黒色パネルの温度は相対湿度50%で63℃に制御し、ホウケイ酸塩及びソーダ石灰のフィルタを用いた。印刷物を100時間暴露し、次いで前述の条件にセットしたGretag Macbethを用いて再測定した。耐光性の結果を表10に示す。
【0133】
【表10−1】

【0134】
【表10−2】

【0135】
耐オゾン性
印刷物の耐オゾン性は、Hampden Model 903 オゾンテストキャビネットを用い、温度40℃及び相対湿度50%で1ppmのオゾン濃度に24時間暴露した後評価した。耐オゾン性の結果を表11に示す。
【0136】
【表11−1】

【0137】
【表11−2】

【0138】
【表11−3】

【0139】
このように、上記結果から、本発明の染料は、インクに配合し、インクジェットプリンタを用いて各種媒体に印刷すると、市販染料と比べて総体的に優れた光学濃度、耐光性及び耐オゾン性を有する印刷物を生み出すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、
Aは、置換されていてもよいフェニル又はナフチルであり;
Bは、置換されていてもよいフェニレン又はナフチレンであり;
nは、0又は1であり;そして
Dはピラゾリル基であるが、
ただし、Aが置換されていてもよいフェニル基で、Bが式T:
【化2】

{式中、
Raは、OH又はC1−4アルコキシ基であり;そして
Rbは、H又はC1−4アルキル基、ヒドロキシ基、C1−4アルコキシ基、C1−3ジアルキルアミノ基又は式NHCORc(式中、RcはC1−3アルキル又はアミノ基)の基であり;そして
*は、式(1)のBにおけるアゾ連結基への結合点を示す}のフェニレン基の場合、Aはニトロ基を含まない]の化合物又はその塩。
【請求項2】
Dが、少なくとも1個のカルボキシ、スルホ又はホスファトの酸基を持つピラゾリル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが置換されていてもよいフェニル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Bが置換されていてもよいフェニレン基である、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Aが、カルボキシ、スルホ、ホスファト、アミノ、メチル、メトキシ及びアセトアミドから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニルであり;
Bが、スルホ、メチル、メトキシ及び2−ヒドロキシエトキシから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニレン又はナフチレンであり;
nが0又は1であり;
Dが、式(3a)、(3b)又は(3c):
【化3】

[式中、
は、H、メチル又はカルボキシであり;
及びRは、それぞれ独立して、スルホ及びカルボキシから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニル又はナフチルであり;そして
は、C1−4アルキルカルボキシエステルである]である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Aが、カルボキシ、スルホ、アミノ、メチル、メトキシ及びアセトアミドから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニルであり;
Bが、スルホ、メチル、メトキシ及び2−ヒドロキシエトキシから選ばれる1又は2個の置換基を持つフェニレン又はナフチレンであり;
nが0又は1であり;
Dが、式(3a)、(3b)又は(3c):
【化4】

[式中、
及びRは、それぞれ独立して、H、カルボキシ、シアノ又は置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アシル、アリール、アミノ、アミド、カルボンアミド、カルボキシエステル、スルファモイル又はアルキルスルホニルであり;そして
及びRは、それぞれ独立して、H又は置換されていてもよいアリール又はアルキルであり;そして
*は式(1)におけるアゾ連結基への結合点を示す]である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
本明細書中に記載の実施例1〜62のいずれかに従って図示されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに定義された式(1)の化合物;及び
液状媒体(液状媒体は水及び有機溶媒を含む)、
を含む組成物。
【請求項9】
ブラック、マゼンタ、シアン又はイエローの着色剤から選ばれる追加の着色剤をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
基材への画像の印刷法であって、基材に請求項8又は9に記載の組成物をインクジェットプリンタによって適用することを含む印刷法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の組成物、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物を用いて、又は請求項10に記載の印刷法によって印刷される、紙、オーバーヘッドプロジェクタ用スライド又はテキスタイル材料。
【請求項12】
所望により補充可能なインクジェットプリンタ用カートリッジであって、一つ以上のチャンバと前記チャンバの少なくとも一つに存在する請求項8又は9に記載の化合物とを含むカートリッジ。

【公表番号】特表2007−517082(P2007−517082A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540590(P2006−540590)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004868
【国際公開番号】WO2005/052065
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】