説明

トリプレート線路層間接続器及び平面アレーアンテナ

【課題】損失の抑制に優れ、任意の位置に層間接続を可能とするトリプレート線路層間接続器等を提供する。
【解決手段】第1及び第2のトリプレート線路間の電気的接続構造を有し、第1の給電基板上に第1の給電線路を備え、第1のパッチパターンは、第1の給電線路の接続終端部に形成されており、第1の給電基板の下部に第1のシールドスペーサ、第1の給電基板の上部に第2のシールドスペーサが配置され、第1及び第2のシールドスペーサは、第1の給電基板の下部及び上部に第1及び第2の誘電体が形成されるよう第1の給電線路及び第1のパッチパターンを含む大きさにくり抜かれたくり抜き部をそれぞれに有し、第2の給電基板上に第2のパッチパターンと、第2のパッチパターンから2方向に出力端及びまで延びる第2の給電線路とを備え、第2の地導体上の第1のパッチパターンと第2のパッチパターンとの略中間に位置する部分に第1のスリットを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波帯におけるトリプレート線路の層間接続構造に関する。また、本発明は、ミリ波帯の送受信に対応可能で、車載レーダ用に好適に用いられる平面アレーアンテナに関する。
【0002】
従来のトリプレート線路の層間接続構造は、図7に示すように、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の間に挟まれた、第1の給電線路(05)を備えた第1の給電基板(06)が、第1の地導体(01)と第2の地導体(02)との略中間に配置された第1のトリプレート線路と、第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)の間に挟まれた、第2の給電線路(08)を備えた第2の給電基板(09)が、第2の地導体(02)と第3の地導体(03)との略中間に配置された第2のトリプレート線路とを、前記第2の地導体(02)に形成されたスリット(014)を介して電磁結合するものである(特許文献1の従来例参照)。
【0003】
通常、第1の誘電体(04a)、第2の誘電体(04b)、第5の誘電体(07a)、及び第6の誘電体(07b)には、給電線路の損失を抑えるため、比誘電率ε1≒1の低誘電率材料が用いられる。また、第1の地導体(01)と第2の地導体(02)の間隔、及び第2の地導体(02)と第3の地導体(03)の間隔は、使用する周波数において線路に高次モードが発生することを避けるため、使用する周波数の実効波長(実効波長=自由空間波長/誘電体の比誘電率の平方根)の略5分の1以下に設定される。
【0004】
また、第1の給電線路(05)と第2の給電線路(08)とを、第2のスリット(014)を介して良好に電磁結合させるためには、第2のスリット(014)を使用する周波数で共振させる必要があるため、図8に示すように、第2のスリット(014)の共振器長L8を使用する周波数の実行波長の略2分の1に設定すると共に、第1の給電線路(05)の接続終端部と、前記第2の給電線路(08)の接続終端部から、使用する周波数の実行波長の略4分の1となる線路長L7の位置に、第2のスリット(014)が位置するように配置する必要がある。また、第2のスリット(014)の幅は、おおむね使用する周波数の実効波長の略10分の1程度とされている。
【0005】
このように、第2のスリット(014)の共振器長L8を使用する周波数の実効波長の略2分の1に設定することにより、第2のスリット(014)が使用する周波数で共振し、かつ第1の給電線路(05)及び第2の給電線路(08)の接続終端部からの第2のスリット(014)の設定位置L7を、使用する周波数の実効波長の略4分の1に設定することにより、給電線路から第2のスリット(014)を見込んだインピーダンス整合が確保されて電磁波が反射することなく伝送される。
【0006】
また、ミリ波帯の車載レーダや高速通信に用いられる平面アレーアンテナでは、高利得・広帯域特性が重要であると共に、周波数帯域内において必要な角度検知精度を実現するため、複数のアンテナの受信信号を効率的に電波受発信部に伝達することが重要とされる。
【0007】
この点に鑑みた平面アレーアンテナとして特許文献2には、低損失で、かつ、組立誤差による特性変化も少ない周波数特性の安定した安価な平面アンテナモジュールが記載されており、この平面アンテナモジュールの構造は、特許文献2の図5(本明細書図26)及び図7(本明細書図27)に示されている。
【0008】
特許文献2の図5(本明細書図26)において、アンテナ部(101)は、放射素子(41)に接続される第1の給電線路(42)と、給電線路部(図27全体)に電磁結合した第1の接続部(43)とを組とするアンテナ群が複数形成されるアンテナ基板(40)が示されている。
【0009】
また特許文献2の図7(本明細書図27)には、給電線路部(102)及び第2の接続部(52)が示されており、図26の第1の接続部(43)と図27の第2の接続部(52)が第2のスロット(24)を通って電磁的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3965762号明細書
【特許文献2】国際公開公報WO2006/098054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、図7に示す、従来のトリプレート線路の層間接続構造では、第2のスリット(014)の共振器長L8の長さの誤差に対する周波数変化が大きく、かつ、第1の給電線路(05)及び第2の給電線路(08)の接続終端部からの第2のスリット(014)の設定位置L7の誤差に対する給電線路から第2のスリット(014)を見込んだインピーダンスの変化が大きいので、周波数特性が狭帯域となるという課題があった。
【0012】
また、第1の給電線路(05)及び第2の給電線路(08)と第2のスリット(014)の電磁結合に伴い、第1の地導体(01)と第2の地導体(02)との間、及び第3の地導体(03)と第2の地導体(02)の間を横方向へ伝搬するパラレルプレート成分が発生し、損失が増加するという課題があった。
【0013】
更に、例えば使用する周波数が76.5GHz帯のように、極めて高い周波数帯で、従来のトリプレート線路層間接続構造を実現しようとする場合、図8に示した第2のスリット(014)の共振器長L8は、略2mm程度で、幅は0.4mm程度以下と極めて微細な寸法になるため、第2のスリット(014)は、機械プレス加工等で形成することが難しくなると共に、組立時に、第1の給電線路(05)及び第2の給電線路(08)の接続終端部から第2のスリット(014)の設定位置L7を、略1mm程度に高精度で設定する必要がある等、精度の高い加工方法や組立構造の選択が不可欠であり、コストが高くなるという課題があった。
【0014】
また、上記従来の課題を解決すべく発明された、特許文献1に記載のトリプレート線路層間接続器においても、異なる層間の電気的接続を給電線路終端部に設けたパッチパターン及び、パッチパターンの周囲を電磁波のパラレルプレート成分抑制のためのシールドスペーサによって構成することにより、伝送損失の抑制に優れ、かつ、組立容易なトリプレート線路層間接続器を提供できるという利点はあるが、給電線路の終端部にパッチパターンを形成するため、層間接続する箇所に制約が生じてしまい、任意な位置での層間接続を所望する場合には更なる改善が望まれていた。
また、従来のアレーアンテナにおいては、給電点の位置を最終的に組み上げられるアンテナの略中央部になるよう設けることが望ましいとされてきた。これは、所望の周波数範囲でメインビームの向きが一定になるなど良好なビーム特性が得られるためである。しかしながら、特許文献1に開示した層間接続器を使用して給電点をアンテナ中央部に設けようとすると、例えば層間接続器の上に別途分配器を設けてアンテナの両方向に電力を分配する必要があるなど、設計スペース及び製造コストの観点から課題が生じていた。
すなわち、特許文献1に記載のトリプレート線路層間接続器においては、例えば、図1に示されるように第1の給電線路5と第2の給電線路との関係は1入力1出力の関係になっており、入出力系統としてみた場合の多様性に改善の余地があった。
【0015】
そこで、本発明は、従来のアンテナよりもコンパクトな構成で広帯域にわたる安定したアンテナ周波数特性が得られるトリプレート線路層間接続器であって、電力損失が少なく、給電基板の任意の位置での層間接続を可能とする設計自由度の高いトリプレート線路層間接続器を提供することを目的とするものである。
【0016】
また、特許文献2の図5(本明細書図26)に示される接続部(43)は、矩形であり、放射素子(41)と略同等の大きさを有しているので、放射素子(41)との相互作用による所望しない影響の回避が必要であり、接続部(43)を給電線路(42)の端部に設けることにより前記回避を図るか又は給電線路部(102)から引出線を設けて配置することにより前記回避を図っており、近年のアンテナ基板の小面積化のための設計の自由度を低下させているという問題があった。
【0017】
さらに、端部にある接続部(43)から順次放射素子(41)に給電するため、給電線路(42)の終端側の放射素子では、給電位相誤差が給電線路長に比例して大きくなり、特にUWBのような周波数帯域が広い場合において、ビーム方向の周波数特性を均一化する事の困難性が顕著になるという課題があった。また、車載レーダに用いられる場合は、量産性に優れたものでなければならない。
【0018】
本発明は、効率よく生産することができ、なお且つUWB(Ultra Wide Band)のような周波数帯域が広い場合においても、使用する周波数範囲内でビーム方向のばらつきが小さく、伝送線路終端部の不要伝搬モード抑制に優れ、アンテナ基板の小面積化が可能となる平面アレーアンテナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明にかかるトリプレート線路層間接続器は、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の間に挟まれた、第1の給電線路(05)を備えた第1の給電基板(06)が、第1の地導体(01)と第2の地導体(02)との略中間に位置している第1のトリプレート線路と、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)の間に挟まれた、第2の給電線路(08)を備えた第2の給電基板(09)が、第2の地導体(02)と第3の地導体(03)との略中間に位置している第2のトリプレート線路との電気的接続構造を有するトリプレート線路層間接続器であって、
前記第1の給電基板(06)上に前記第1の給電基板(06)の入力端(05a)から第1のパッチパターン(012a)に向かって延びる第1の給電線路(05)を備え、前記第1のパッチパターン(012a)は、前記第1の給電線路(05)の接続終端部に形成されており、
前記第1の給電基板(06)の下部に第1のシールドスペーサ(010a)が配置され、前記第1の給電基板(06)の上部に第2のシールドスペーサ(010b)が配置され、前記第1のシールドスペーサ(010a)及び前記第2のシールドスペーサ(010b)は、前記第1の給電基板(06)の下部及び上部に前記第1の誘電体(04a)及び前記第2の誘電体(04b)が形成されるよう前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部をそれぞれに有し、
前記第2の給電基板(09)上に第2のパッチパターン(012b)と、前記第2のパッチパターン(012b)から2方向に出力端(08a)及び(08b)まで延びる第2の給電線路(08)とを備え、
前記第2の地導体(02)上の前記第1のパッチパターン(012a)と第2のパッチパターン(012b)との略中間に位置する部分に第1のスリット(013)を備え、
前記第1のスリット(013)の長手方向が前記第2のパッチパターン(012b)の長手方向と略直交するよう構成され、前記第1のシールドスペーサ(010a)のくり抜き部(04a)と前記第2のパッチパターン(012a)と前記第2のシールドスペーサ(010b)のくり抜き部(04b)と前記第1のスリット(013)と前記第2のパッチパターン(012b)とが、第3の地導体(03)を積層方向から見て重なる部分を有する。
【0020】
また、本発明にかかるトリプレート線路層間接続器は、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の間に挟まれた、第1の給電線路(05)を備えた第1の給電基板(06)が、第1の地導体(01)と第2の地導体(02)との略中間に位置している第1のトリプレート線路と、第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)の間に挟まれた、第2の給電線路(08)を備えた第2の給電基板(09)が、第2の地導体(02)と第3の地導体(03)との略中間に位置している第2のトリプレート線路との電気的接続構造を有するトリプレート線路層間接続器であって、
前記第1の給電基板(06)上に前記第1の給電基板(06)の入力端(05a)から第1のパッチパターン(012a)に向かって延びる第1の給電線路(05)を備え、前記第1のパターン(012a)は、前記第1の給電線路(05)の接続終端部に形成されており、
前記第1の給電基板(06)の下部に第1のシールドスペーサ(010a)が配置され、前記第1の給電基板(06)の上部に第2のシールドスペーサ(010b)が配置され、前記第1のシールドスペーサ(010a)及び前記第2のシールドスペーサ(010b)は、前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部をそれぞれに有し、
前記第2の給電基板(09)上に第2のパッチパターン(012b)と、前記第2のパッチパターン(012b)から2方向に出力端(08a)及び(08b)まで延びる第2の給電線路(08)とを備え、
第2の給電線路(08)及び第2のパッチパターン(012b)の下部及び上部に第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)が位置するよう、第2の給電線路(08)及び第2のパッチパターン(012b)を含む大きさであって第2の給電線路(08)の線路方向に両端にまで延びる誘電体を構成する第3のシールドスペーサ(011a)及び第4のシールドスペーサ(011b)が配置され、
前記第2の地導体(02)上の前記第1のパッチパターン(012a)と第2のパッチパターン(012b)との略中間に位置する部分に第1のスリット(013)を備え、
前記第1のスリット(013)の長手方向が前記第2のパッチパターン(012b)の長手方向と略直交するよう構成され、前記第1のシールドスペーサ(010a)のくり抜き部(04a)と前記第2のパッチパターン(012a)と前記第2のシールドスペーサ(010b)のくり抜き部(04b)と前記第1のスリット(013)と前記第2のパッチパターン(012b)とが、第3の地導体(03)を積層方向から見て重なる部分を有する。
【0021】
また、本発明にかかるトリプレート線路層間接続器は、第1のパッチパターン(012a)の給電線路方向の長さL1は、使用する周波数の実効波長λgの約1/4〜1/2倍であり、かつ、
第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)の前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部の線路方向における寸法L2は、使用する周波数の実効波長λgの約0.6倍であり、かつ、
第2のパッチパターン(012b)の給電線路方向の長さL3は、使用する周波数の実効波長λgの0.35〜0.5倍であり、かつ、
第1のスリット(013)の第2のパッチパターン(012b)と直交する方向の長さLS4は、使用する周波数の実効波長λgの0.4〜0.6倍である
ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかるトリプレート線路層間接続器は、第1のパッチパターン(012a)の形状は円形であり、その直径L4は使用する周波数の実効波長λgの約1/4〜1/2倍であり、かつ、
第1のシールドスペーサ(010a)、第2のシールドスペーサ(010b)の前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部の形状は円形であってその直径L5は使用する周波数の実効波長λgの約0.6倍である
ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した。一般に伝搬モードが変化する際には伝搬ロスが起こるため、当初本発明者らは、伝搬モードを変化させることなく、前記課題を解決する方法を模索した。まず、特許文献2の接続部(43)を小さくすることを試みたが、単に接続部(43)を小さくするだけでは電磁結合効率を低下させ好ましくなく、また、小さくても接続部(43)があることによりアンテナ基板の小面積化が図れないことがわかった。そこで、次に接続部(43)を省いた構造を検討した結果、給電線路を接続部で代用して使用し、伝送線路の少なくとも一方の側の端部との間で、スリットを介しての電磁結合を採用するという方式を検討した。ここで、伝搬ロスや、スリットと伝送線路の位置合わせ精度の観点から、伝送線路の少なくとも一方の側の端部を給電線路方向の長手方向の長さが実効波長(λg)の約1/4〜1/2のパッチパターンとし、そのパッチパターンを取り囲むように、換言すれば、そのパッチパターンよりも一回り大きい、くり抜き部をパッチパターンに対応する位置に有する2枚のシールドスペーサを伝送線路の上下に設けることによって、伝搬ロスを抑えることができるとともに位置合わせを容易にし、生産効率に優れる平面アレーアンテナ構造を見出し、本発明に至った。
【0024】
即ち本発明は、アンテナ部と伝送線路部とを備える多層構造の平面アレーアンテナにおいて、
前記アンテナ部は、アンテナ基板と、スリットを備えた第1の地導体とを含み、
前記アンテナ基板は、複数の放射素子が略1列に配列された放射素子群と、前記放射素子群の各放射素子を繋ぐ給電線路とが形成されてなるアンテナ領域を備え、
前記伝送線路部は、第1のシールドスペーサと、伝送線路基板と、第2のシールドスペーサと、第2の地導体とをこの順で備え、
前記伝送線路基板は伝送線路と前記伝送線路の少なくとも一方の端部に前記伝送線路より幅広のパッチパターンを備え、
前記給電線路と、前記スリットと、前記パッチパターンとが平面アレーアンテナの厚み方向においてほぼ対応する位置に備えられ、前記スリットと前記給電線路との重なり部分における給電線路の長手方向の最大距離d1と、前記スリットを前記給電線路の長手方向に平行な2直線で挟んだときの前記2直線間の距離d2が、d1<d2となるように、スリット及び給電線路の、形状及び位置関係が調整されてなり、
前記パッチパターンは、前記給電線路の長手方向の長さが実効波長(λg)の約1/4〜1/2であり、
前記第1のシールドスペーサは前記パッチパターンを取り囲むようにくり抜き部を備え、
前記第2のシールドスペーサは、前記第1のシールドスペーサと略同一形状のくり抜き部が、前記第1のシールドスペーサのくり抜き部に対応する位置に備えられることを特徴とする平面アレーアンテナを提供する。
【0025】
上記構成を備えることによって、スリットを用いても伝送線路終端部での不要伝搬モードを抑制でき、UWBのような周波数帯域が広い場合においても、使用する周波数範囲内でビーム方向のばらつきを小さくすることができ、小面積で生産効率のよいアンテナ基板の提供が可能となる。
【0026】
さらに本発明は、平面アレーアンテナの厚み方向から見た前記給電線路と前記スリットと前記給電線路との重なり部分において、前記給電線路の長手方向の一方の外縁と前記スリットの一方の外縁との交点eと給電線路の前記一方の外縁と前記スリットの他の一方の外縁との交点fを結ぶ直線の中点をa1とし、前記給電線路の長手方向の他の一方の外縁と前記スリットの一方の外縁との交点hと給電線路の前記他の一方の外縁と前記スリットの他の一方の外縁との交点gを結ぶ直線の中点をa2としたときに、a1とa2を結ぶ直線と給電線路の長手方向とが、略直交するように形成されていることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、高効率に伝搬モードを給電線路に伝送することができるので好ましい。
【0027】
さらに本発明は、前記給電線路と前記スリットとの重なり部分が、その部分から給電線路で繋がる一方の放射素子の数と他方の放射素子の数とが同数となる位置にあることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、使用する周波数範囲内でビーム方向のばらつきを小さくすることができるので好ましい。
【0028】
さらに本発明は、前記給電線路と前記スリットとの重なり部分の前記給電線路の長手方向の中心点から、前記一方の放射素子のうち中心点からn番目の放射素子までの給電線路の長さb1と、前記他方の放射素子のうち中心点から前記n番目の放射素子までの給電線路の長さb2が、b1+(使用周波数λの1/2に相当する長さ)≒b2となるように各放射素子を配置したことを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、高利得な平面アレーアンテナを得ることができるので好ましい。
ここで、「≒」の意味は、=である配置と、ばらつきが少なく高利得であるという効果を損なわない程度の多少のずれの範囲を含むという意味である。最も好ましいのは=とすることである。また、前記「中心点」とは、前述のa1とa2を結ぶ直線の中点を意味し、長さの測定は給電線路の線幅の中点をとおる線を基準として測定する。
【0029】
さらに本発明は、前記給電線路上の前記給電線路と前記スリットとの重なり部分に、前記給電線路より幅広の給電部を備えることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、伝送線路からくる高周波信号のインピーダンスと給電線路のインピーダンスの整合を取り易くなるので好ましい。
【0030】
さらに本発明は、前記アンテナ基板の前記放射素子群及び給電線路が設けられた側に、第2の誘電体と、前記放射素子群に対応する位置に各放射素子よりも大きいスロット開口を有した第3の地導体とをこの順で配置したことを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、隣接するアンテナからの高周波信号干渉が少なく、且つ高い利得を得ることができるので好ましい。
【0031】
さらに本発明は、前記アンテナ基板に前記アンテナ領域を複数組備えることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、より検知精度の高い平面アレーアンテナを得ることができるので好ましい。
【0032】
さらに本発明は、前記アンテナ領域を複数組有する前記アンテナ基板の上下に各々のアンテナ領域にほぼ対応するくり抜き部を各々備える第3及び第4のシールドスペーサを備えることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、隣接アンテナ間のアイソレーションが向上するので好ましい。
【0033】
さらに本発明は、前記アンテナ領域を複数組有する前記アンテナ基板の各々のアンテナ領域間に金属帯が設けられていることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、アイソレーションが向上するので好ましい。
【0034】
さらに本発明は、前記アンテナ基板と前記第1の地導体の間に第1の誘電体を有することを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、アンテナ基板と第1の地導体の間に設ける誘電体としてアンテナ基板以外の材料を適用できるため、材料設計の自由度が増すので好ましい。
【0035】
さらに本発明は、前記スリットが矩形又は楕円形状であることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、使用する周波数で共振し、高周波信号を効率よく伝送することができるので好ましい。
【0036】
さらに本発明は、前記第2のシールドスペーサは前記第1のシールドスペーサと略同一厚みであることを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成にすることによって、高周波信号の伝搬特性が良好となるので好ましい。
【0037】
さらに本発明は、前記第1のシールドスペーサの厚みは前記パッチパターンの厚みよりも大きいことを特徴とする平面アレーアンテナを包含する。このような構成をとることによって第1のパッチパターンでの高周波信号の伝搬ロスを確実に低減でき、好ましい。
【0038】
さらに本発明は、車載レーダ用である平面アレーアンテナを包含する。上記構成を有する平面アレーアンテナは、高利得でアイソレーション性に優れ、小面積で量産性に優れるため、車載レーダ用途に好適である。
【発明の効果】
【0039】
本発明にかかるトリプレート線路層間接続器によって、従来のアンテナよりもコンパクトな構成で広帯域にわたる安定したアンテナ周波数特性が得られ、電力損失が少なく、給電基板の任意の位置での層間接続を可能とする設計自由度の高いトリプレート線路層間接続器を提供することができる。
【0040】
また、本発明の平面アレーアンテナは、効率よく生産することができ、なお且つUWBのような周波数帯域が広い場合においても、使用する周波数範囲内でビーム方向のばらつきが小さく、伝送線路終端部の不要伝搬モード抑制に優れ、アンテナ領域をコンパクト化でき、複数組のアンテナ領域を高密度に集積でき、アンテナ基板の小面積化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】(a)は本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の一実施形態を示す断面図であり、(b)及び(c)は本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の一実施形態の要部平面図であり、(d)は本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の一実施形態の他の要部平面図である。
【図4】(a)は本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の他の実施形態を示す断面図であり、(b)及び(c)は本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の他の実施形態の要部平面図であり、(d)は本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の他の実施形態の他の要部平面図である。
【図5】(a) 、(b)及び(c)はそれぞれ本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の実施形態に用いたパッチパターンと第1の給電線路との接続形態を示す平面図である。
【図6】本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の一実施形態における反射損失と通過損失の周波数特性を示す線図である。
【図7】従来のトリプレート線路層間接続器を示す分解斜視図である。
【図8】従来のトリプレート線路層間接続器における課題を説明するための平面図である。
【図9】本発明にかかる平面アレーアンテナの一実施形態における構成を斜視図として説明する説明図である。
【図10】本発明にかかる平面アレーアンテナの一実施形態における第1の地導体上に設けられたスリットと給電線路の位置関係を平面図として説明する説明図である。
【図11】本発明にかかる平面アレーアンテナの一実施形態における第1の地導体上に設けられたスリットの形状の他の好ましい態様を平面図として説明する説明図である。
【図12】本発明にかかる平面アレーアンテナのパッチパターンの好ましい形態を平面図として説明する説明図である。
【図13】本発明にかかる平面アレーアンテナの図9に示す実施形態における構成を平面ABCDで切った断面図として説明する説明図である。
【図14】本発明にかかる平面アンテナの一実施形態における給電線路と放射素子の接続態様と放射素子の大きさの関係を示す説明図である。
【図15】本発明にかかる平面アンテナの一実施形態における第1の地導体上に設けられたスリットと給電線路の位置関係を平面図として説明する説明図である。
【図16】本発明にかかる平面アレーアンテナの他の実施形態における構成を斜視図として説明する説明図である。
【図17】本発明にかかる平面アレーアンテナの図16に示す実施形態における構成を平面ABCDで切った断面図として説明する説明図である。
【図18】本発明にかかる平面アレーアンテナのアンテナ領域を説明する説明図である。
【図19】図18の給電線路の放射素子P1とQ1部分の平面拡大図である。
【図20】本発明にかかる平面アレーアンテナの他の実施形態における構成を斜視図として説明する説明図である。
【図21】本発明にかかる平面アレーアンテナの他の実施形態における構成を斜視図として説明する説明図である。
【図22】本発明にかかる平面アレーアンテナの他の実施形態における構成を斜視図として説明する説明図である。
【図22A】本発明にかかる平面アレーアンテナの他の実施形態における構成の一部を拡大した様子を説明する説明図である。
【図22B】本発明にかかる平面アレーアンテナの他の実施形態における構成の一部を拡大した様子を説明する説明図である。
【図23】本発明にかかる平面アレーアンテナの特性を説明する説明図である。
【図24】実施例3の平面アレーアンテナの特性を説明する説明図である。
【図25】実施例4の平面アレーアンテナの特性を説明する説明図である。
【図26】特許文献2の図5に示された図である。
【図27】特許文献2の図7に示された図である。
【図28】比較例1の平面アレーアンテナの放射素子列の下端部に給電部を設けたアンテナ領域の模式図である。
【図29】比較例1の平面アレーアンテナの特性を説明する説明図である。
【図30】比較例2の構成を斜視図として説明する説明図である。
【図31】比較例2の平面アレーアンテナの特性を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[本発明にかかるトリプレート線路層間接続器]
本発明にかかるトリプレート線路層間接続器に用いられる地導体及びシールドスペーサは、どのような金属板を用いてもよく、あるいはプラスティックにメッキを施した板を用いることもできるが、特に、アルミニウム板を用いると軽量で安価なものを製造できるので好適である。
【0043】
また、フィルムを基材とし、その上に銅箔を貼り合わせたフレキシブル基板の不要な銅箔をエッチング除去しても構成でき、さらにガラスクロスに樹脂を含浸させた薄い樹脂板に銅箔を張り合わせた銅張り積層板でも構成することができる。
【0044】
また、誘電体には、比誘電率の低い発泡体などを好適に用いることができる。この場合には、誘電体の比誘電率を発泡体中の空気の比誘電率としてみなすことができる。また、スペーサ等によって形成された空間それ自体(空間内には製造時の気圧にて空気が充填されることとなる)を誘電体として用いることも好適である。
【0045】
アンテナ回路基板は、フィルムを基材としてその上に銅箔を貼り合せたフレキシブル基板の不要な銅箔をエッチング除去して、放射素子や給電線路を形成して構成できるが、ガラスクロスに樹脂を含浸させた薄い樹脂板に銅箔を貼り合せた銅張り積層板でも構成できる。
【0046】
第1のパッチパターン012a、第2のパッチパターン012b及び第1のスロット013の形状は、図3に示すように正方形を含めた矩形状であるのが一般的であるが、幅方向の寸法は、共振周波数に対する影響が小さいため、必要に応じて調整することができる。また、図4(b)に示す第1のパッチパターン012aのように、円形であっても同様に作用する。また、例えば第1のパッチパターン012aと第1の給電線路05の接続部は、第1のパッチパターン012aの端部のインピーダンスと第1の給電線路05のインピーダンスを整合させるために、図5(a)に示すように、使用する周波数の実効波長の略4分の1の線路長のトランス線路(0101)で接続するのが一般的である。このトランス線路(0101)の線幅は給電線路のインピーダンスとパッチパターンのインピーダンスを整合させる目的で設計される。図5(a)による接続以外に、図5(b)に示すように、パッチ内部の整合点(0102)で直接整合させる給電や、図5(c)に示すように、僅かなギャップ(0103)を介して容量接合させることもできる。この場合、ギャップは、例えばミリ波であれば、実効波長λgの概ね1/4以下であることが好ましい。
【0047】
本発明の第1の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のトリプレート線路は第1の給電基板(06)の下部に第1のシールドスペーサ(010a)を有し、第1の給電基板(06)の上部に第2のシールドスペーサ(010b)を有している。そして、第1のシールドスペーサ(010a)の下部に第1の地導体(01)を有し、第2のシールドスペーサ(010b)の上部に第2の地導体(02)を有している。ここで、前記第1の給電基板(06)上には前記第1の給電基板(06)の一方の端部から延びる第1の給電線路(05)と、その接続終端部に第1のパッチパターン(012a)とが形成されている。前記第1のシールドスペーサ(010a)及び前記第2のシールドスペーサ(010b)には、前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部が、第3の地導体(03)から垂直に見て、前記第1の給電基板(06)に備えられた第1の給電線路(05)及び第1のパッチパターン(012a)にほぼ対応する位置にそれぞれ形成されている。くり抜き部には、空気などの誘電体(04a、04b)が存在し、これによって、前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)の上下部に金属層−誘電体層−金属層−誘電体層−金属層のトリプレート線路が形成される。ここで、ほぼ対応する位置とは、第3の地導体(03)から垂直に見たときに、くり抜き部の領域内に第1の給電線路(05)及び第1のパッチパターン(012a)が収まる位置関係にあることを意味する。このような構造をとることによって、第1の給電線路(05)及び第1のパッチパターン(012a)の周囲が金属壁で遮蔽され、電磁波が伝搬する際に漏れによる損失を小さくすることができる。
【0048】
第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部の大きさは、より具体的には第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)それぞれの端部から、例えばミリ波であれば、0.1λg〜1λg離れていることが好ましい。0.1λg未満であると、パッチパターンとスリットの結合損失が大きくなる。1λgを超えると、電磁波が拡散してしまい、伝送損失が大きくなる。ここで、λgは、実効波長である。
【0049】
また、第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)に設けられるくり抜き部の厚みは、厳密に言えば、第1の給電基板の厚み及び比誘電率を考慮して、第1の給電線路の上下にある第1の誘電体と第2の誘電体とで、比誘電率及び厚みが異なるものを用いることが望ましいが、第1の給電基板として100μm以下のポリイミドフィルム等の極薄く比誘電率の小さな材料を用いれば、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の厚みがほぼ同じであっても、支障なく用いることができ、むしろ製造が簡便にできる点でほぼ同じ厚みとすることが好ましい。具体的には、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の厚みは0.3λg以下であることが好ましい。
【0050】
同様の理由から、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)は同じ材料であることが好ましい。
また、本発明の第2の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のパッチパターン(012a)は、必ずしも第1の給電基板のほぼ中央部にある必要はないが、他の部品とともに最終的に組み上げられるアンテナの中央部にあることが好ましい。ほぼ中央部にあると、所望の周波数範囲でメインビームの向きが一定になるなど良好なビーム特性が得られるという利点がある。
【0051】
また、本発明の第1の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第2のトリプレート線路は、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)の間に挟まれた、第2の給電線路(08)を備えた第2の給電基板(09)が、第2の地導体(02)と第3の地導体(03)との略中間に位置することによって構成される。ここで、第2の給電線路(08)は、第2の給電基板(09)の一方の端部から他方の端部まで延びており、第2の給電線路(08)上には第2のパッチパターン(012b)が形成されている。ここで、第2の給電線路(08)が第2の給電基板(09)の一方の端部から他方の端部まで延びることによって、第3の地導体(03)よりもさらに外側に設ける金属層との層間接続を介した電磁波の授受を第2の給電線路(08)の線路上の任意の位置で行うことができる。
【0052】
また、本発明の第1の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、厳密に言えば、第2の給電基板の厚み及び比誘電率を考慮して、第2の給電線路の上下にある第3の誘電体と第4の誘電体とで、比誘電率及び厚みが異なるものを用いることが望ましいが、第2の給電基板として100μm以下のポリイミドフィルム等の極薄く比誘電率の小さな材料を用いれば、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)の厚みがほぼ同じであっても、支障なく用いることができ、むしろ製造が簡便にできる点でほぼ同じ厚みとすることが好ましい。具体的には、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)の厚みは、例えばミリ波であれば、100〜700μmであることが好ましい。
【0053】
同様の理由から、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)は同じ材料であることが好ましい。
【0054】
本発明の第1の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のスリット(013)は、第1のパッチパターン(012a)と第2のパッチパターン(012b)との間にあればよいが、第1のスリット(013)と第1のパッチパターン(012a)または第2のパッチパターン(012b)との距離が0.5λg以下であると、高効率に電磁波を伝送でき、好ましい。
【0055】
本発明の第1の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のパッチパターン(012a)、第1のスリット(013)及び第2のパッチパターン(012b)は、第3の地導体(03)側から垂直に見てほぼ重なる位置にある。ここでほぼ重なる位置とは、第1のパッチパターン(012a)、第1のスリット(013)及び第2のパッチパターン(012b)のそれぞれの中心点が半径0.1λgの円内に収まることを意味する。
【0056】
本発明の第2の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のトリプレート線路は第1の給電基板(06)の下部に第1のシールドスペーサ(010a)、及び第1の給電基板(06)の上部に第2のシールドスペーサ(010b)を有し、第1のシールドスペーサ(010a)の下部に第1の地導体(01)を有し、第2のシールドスペーサ(010b)の上部に第2の地導体(02)を有している。ここで、前記第1の給電基板(06)上には前記第1の給電基板(06)の一方の端部から延びる第1の給電線路(05)と、その接続終端部に第1のパッチパターン(012a)とが形成されている。前記第1のシールドスペーサ(010a)と前記第2のシールドスペーサ(010b)には、前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部を、第3の地導体(03)から垂直に見て、前記第1の給電基板(06)に備えられた第1の給電線路(05)及び第1のパッチパターン(012a)にほぼ対応する位置にそれぞれ形成されている。くり抜き部には、空気などの誘電体(04a、04b)が存在し、これによって、前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)の上下部に金属層−誘電体層−金属層−誘電体層−金属層のトリプレート線路が形成される。ここで、ほぼ対応する位置とは、第3の地導体(03)から垂直に見たときに、くり抜き部の領域内に第1の給電線路(05)及び第1のパッチパターン(012a)が収まる位置関係にあることを意味する。このような構造をとることによって、第1の給電線路(05)及び第1のパッチパターン(012a)の周囲が金属壁で遮蔽され、電磁波が伝搬する際に漏れによる損失を小さくすることができる。
【0057】
第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部の内周は、より具体的には第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)それぞれの外周から0.1λg以上離れていることが好ましい。0.1λg未満であると、パッチとスロットの電磁結合損失が大きくなる。
【0058】
また、第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)に設けられるくり抜き部の厚みは、厳密に言えば、第1の給電基板の厚み及び比誘電率を考慮して、第1の給電線路の上下にある第1の誘電体と第2の誘電体とで、比誘電率及び厚みが異なるものを用いることが望ましいが、第1の給電基板として100μm以下のポリイミドフィルム等の極薄く比誘電率の小さな材料を用いれば、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の厚みがほぼ同じであっても、支障なく用いることができ、むしろ製造が簡便にできる点でほぼ同じ厚みとすることが好ましい。
【0059】
同様の理由から、第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)は同じ材料であることが好ましい。
【0060】
また、本発明の第2の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のパッチパターン(012a)は、必ずしも第1の給電基板のほぼ中央部にある必要はないが、他の部品とともに最終的に組み上げられるアンテナの中央部にあることが好ましい。ほぼ中央部にあると、所望の周波数範囲でメインビームの向きが一定になるなど良好なビーム特性が得られるという利点がある。
【0061】
また、本発明の第2の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第2のトリプレート線路は、第2の給電基板(09)の下部及び上部に、第2の給電線路(08)及び第2のパッチパターン(012b)を含む大きさであって第2の給電線路(08)の線路方向に両端にまで延びる誘電体を構成する第3のシールドスペーサ(011a)及び第4のシールドスペーサ(011b)が配置されさらにそれらの外側に第2の地導体(02)及び第3の地導体(03)がそれぞれ配置されることによって形成される。このような構造としても第1の実施形態のトリプレート線路構造と同程度の低損失なトリプレート線路層間接続器が得られる。
【0062】
ここで、第2の給電線路(08)は、第2の給電基板(09)の一方の端部から他方の端部まで延びており、第2の給電線路(08)上には第2のパッチパターン(012b)が形成されている。ここで、第2の給電線路(08)が第2の給電基板(09)の一方の端部から他方の端部まで延びることによって、第3の地導体(03)よりもさらに外側に設ける金属層との層間接続を介した電磁波の授受を第2の給電線路(08)の線路上の任意の位置で行うことができる。また、第2のパッチパターン(012b)は、必ずしも第2の給電線路(08)の中央部にある必要はないが、他の部品とともに最終的に組み上げられるアンテナの中央部にあることが好ましい。ほぼ中央部にあると、所望の周波数範囲でメインビームの向きが一定になるなど良好なビーム特性が得られるという利点がある。
【0063】
また、本発明の第2の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、厳密に言えば、第2の給電基板の厚み及び比誘電率を考慮して、第2の給電線路の上下にある第3の誘電体と第4の誘電体とで、比誘電率及び厚みが異なるものを用いることが望ましいが、第2の給電基板として100μm以下のポリイミドフィルム等の極薄く比誘電率の小さな材料を用いれば、第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)の厚みがほぼ同じであっても、支障なく用いることができ、むしろ製造が簡便にできる点でほぼ同じ厚みとすることが好ましい。
【0064】
同様の理由から、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)は同じ材料であることが好ましい。
【0065】
本発明の第2の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のスリット(013)は、第1のパッチパターン(012a)と第2のパッチパターン(012b)との略中間に位置することが好ましい。略中間に位置することによって、第1のパッチパターン(012a)と第2のパッチパターン(012b)との間で高効率に電磁波を伝送できる。
【0066】
本発明の第2の実施形態にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のパッチパターン(012a)、第1のスリット(013)及び第2のパッチパターン(012b)は第3の地導体(3)側から垂直に見てほぼ重なる位置にある。ここでほぼ重なる位置とは、第1のパッチパターン(012a)、第1のスリット(013)及び第2のパッチパターン(012b)のそれぞれの中心点が半径0.1λgの円内に収まることを意味する。
【0067】
本発明にかかるトリプレート線路層間接続器において、第1のパッチパターン(012a)の給電線路方向の長さL1が、使用する周波数の実効波長λgの約1/4〜1/2倍であり、かつ、第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)の前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部の線路方向における寸法L2が、使用する周波数の実効波長λgの約0.6倍であり、かつ、第2のパッチパターン(012b)の給電線路方向の長さL3が、使用する周波数の実効波長λgの0.35〜0.5倍であり、かつ、第1のスリット(013)の給電線路と直交する方向の長さLS4が、使用する周波数の実効波長λgの0.4〜0.6倍であることが好ましい。このような構成を有することによって、使用する周波数の実効波長76.5GHz±1GHzの範囲で、反射特性(VSWR:Voltage Standing Wave Ratioの略)に優れ、かつ、漏れの少ない低損失特性のトリプレート線路層間接続器が得られる。本発明にかかるトリプレート線路層間接続器は、平面アレーアンテナにも用いることができる。
【実施例1】
【0068】
まず、図2、図3、及び図5を用いて、本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の第1の実施形態について説明する。第1の地導体(01)及び第3の地導体(03)には、厚さ1mmのアルミ板を用い、第1の誘電体(04a)、第2の誘電体(04b)、第5の誘電体(07a)、及び第6の誘電体(07b)には、厚さ0.3mmの空気層を用い(高さ0.3mmの空洞部となる)、第1の給電基板(06)には、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたフレキシブル基板を用い、不要な銅箔をエッチングで除去して、第1の給電線路(05)と第1のパッチパターン(012a)とを形成したものを用い、第2の給電基板(09)にも第1の給電基板と同じ、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたフレキシブル基板を用い、不要な銅箔をエッチングで除去して第2の給電線路(08)と第2のパッチパターン(012b)とを形成したものを用い、第2の地導体(02)には、厚さ0.7mmのアルミ板に機械プレスで第1のスリット(013)を打ち抜き加工したものを用い、第1のシールドスペーサ(010a) 、第2のシールドスペーサ(010b) 、第3のシールドスペーサ(011a) 、及び第4のシールドスペーサ(011b)には、厚さ0.3mmのアルミ板を機械プレスで打ち抜き加工したものを用いた。
【0069】
ここで、第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)は、第1のパッチパターン(012a)の第1の給電線路(05)が接続された一方向を除く周囲三方を取り囲むように距離を隔てて金属壁を形成することとなり、第3のシールドスペーサ(011a)及び第4のシールドスペーサ(011b)は、第2のパッチパターン(012b)の両端に接続された第2の給電線路(08)に沿って距離を隔てて金属壁を形成することとなる。このとき、第3のシールドスペーサ(011a)及び第4のシールドスペーサ(011b)によって形成された第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)は、それぞれ第2の給電線路(08)の方向に両端まで延びる誘電体を構成しており、第2のパッチパターン(012b)の両端に接続された第2の給電線路(08)上の任意の位置において層間接続が可能となっている。
【0070】
かかる構成により、パラレルプレート成分が発生することなく、第1のパッチパターン(012a)の電磁波が全て第2のパッチパターン(012b)に伝送され、低損失特性が実現できるとともに、第2のパッチパターン(012b)の両端に、第2の給電基板(09)の両端部まで延びる第2の給電線路(08)を形成することで第2の給電線路(08)上の任意の位置に層間接続を可能とする構成を実現できるものである。
【0071】
第1のパッチパターン(012a)においては、図3(b)に示すL1が、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)の約0.38倍となる1.5mmとし、形状を正方形とした。なお、L1は、使用する周波数の自由空間長λgの約1/4〜1/2倍の範囲で本発明が示す良好な結果が得られている。この範囲内にあると、第1のパッチパターン(012a)から電磁波が放射し易くなるので、好ましい。
【0072】
また、第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)のくり抜き部のパッチ周辺部の線路方向における寸法L2を、使用する周波数の実効波長λgの約0.6倍とした。
また、第2のパッチパターン(012b)においては、図3(c)に示すL3が、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)の0.5倍となる1.975mmとした。なお、L3は、使用する周波数の自由空間長λgの0.35〜0.5倍の範囲で本発明が示す良好な結果が得られている。
また、図3(d)に示す第1のスリット(013)の寸法LS4は、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)のおよそ0.5倍となる1.8mmとした。なお、LS4は、使用する周波数の自由空間長λgの0.4〜0.6倍の範囲で本発明が示す良好な結果が得られている。
第1のシールドスペーサ(010a) 、第2のシールドスペーサ(010b)の寸法L2は、同じ寸法とした。
【0073】
さらに、第1の給電線路(05)と第1のパッチパターン(012a)の接続部には、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)の約0.25倍の長さのトランス線路(0101)を形成した。このとき、スリット13の上部に位置する第2のパッチパターン(012b)のインピーダンスと第2の給電線路(08)のインピーダンスとは整合するように配置されている。かかるインピーダンス整合が実現されるように第2のパッチパターン(012b)の寸法を決めることにより、VSWRは所望値(1.3以下)を得ることができる。
【0074】
以上の各部材を図3(a)に示すように、下層から、第1の地導体(01)、第1のシールドスペーサ(010a)、第1の給電基板(06)、第2のシールドスペーサ(010b)、第2の地導体(02)、第3のシールドスペーサ(011a)、第2の給電基板(09)、第4のシールドスペーサ(011b)、第3の地導体(03)の順に積層してトリプレート線路層間接続器を構成し、第1の給電線路(05)及び第2の給電線路(08)の片側に計測器を接続して電磁波を給電すると共に、第1の給電線路(05)の端部における反射特性(VSWR)及び第1の給電線路(05)から第2の給電線路(08)の片側端面へ電磁波が通過する際の通過損失を測定した結果、図6に示すように、76.5GHzを中心に±1GHzの範囲で、反射特性(VSWR)は1.5以下、かつ通過損失も0.5dB以下という良好な特性が得られた。
【0075】
なお、実施例1においては、図2に示すように、第5の誘電体(07a)を有する第3のシールドスペーサ(011a)と第6の誘電体(07b)を有する第4のシールドスペーサ(011b)とを用いたが、図1に示すように、第3のシールドスペーサ(011a)に替えて第3の誘電体(04c)を用い、第4のシールドスペーサ(011b)に替えて第4の誘電体(04d)を用いることとしてもよい。図1に示すように、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)は、第2の地導体(02)や第3の地導体(03)と略同一形状の一枚ものの誘電体層を構成するものである。
【0076】
かかる図1に示す構成に基づいたトリプレート線路層間接続器においても、パラレルプレート成分が発生することなく、第1のパッチパターン012aの電磁波が全て第2のパッチパターン012bに伝送され、低損失特性が実現できるとともに、第2のパッチパターン(012b)の両端に、第2の給電基板(09)の両端部まで延びる第2の給電線路(08)を形成することで第2の給電線路(08)上の任意の位置に層間接続を可能とする構成を実現できる。
【実施例2】
【0077】
次に、図4及び図5を用いて、本発明にかかるトリプレート線路層間接続器の第2の実施形態について説明する。第1の地導体(01)及び第3の地導体(03)には、厚さ1mmのアルミ板を用い、第1の誘電体(04a)、第2の誘電体(04b)、第5の誘電体(07a)、及び第6の誘電体(07b)には、厚さ0.3mmの空気を用い(高さ0.3mmの空洞部となる)、第1の給電基板(06)には、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたフレキシブル基板を用い、不要な銅箔をエッチングで除去して、第1の給電線路(05)と第1のパッチパターン(012a)とを形成したものを用い、第2の給電基板(09)にも第1の給電基板と同じ、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたフレキシブル基板を用い、不要な銅箔をエッチングで除去して第2の給電線路(08)と第2のパッチパターン(012b)とを形成したものを用い、第2の地導体(02)には、厚さ0.7mmのアルミ板に機械プレスで第1のスリット(013)を打ち抜き加工したものを用い、第1のシールドスペーサ(010a) 、第2のシールドスペーサ(010b) 、第3のシールドスペーサ(011a) 、及び第4のシールドスペーサ(011b)には、厚さ0.3mmのアルミ板を機械プレスで打ち抜き加工したものを用いた。
【0078】
ここで、第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)は、第1のパッチパターン(012a)の第1の給電線路(05)が接続された一方向を除く周囲三方を取り囲むように距離を隔てて金属壁を形成することとなり、第3のシールドスペーサ(011a)及び第4のシールドスペーサ(011b)は、第2のパッチパターン(012b)の両端に接続された第2の給電線路(08)に沿って距離を隔てて金属壁を形成することとなる。このとき、第3のシールドスペーサ(011a)及び第4のシールドスペーサ(011b)によって形成された第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)は、それぞれ第2の給電線路(08)の方向に両端まで延びる誘電体を構成しており、第2のパッチパターン(012b)の両端に接続された第2の給電線路(08)上の任意の位置において層間接続が可能となっている。
【0079】
かかる構成により、パラレルプレート成分が発生することなく、第1のパッチパターン012aの電磁波が全て第2のパッチパターン012bに伝送され、低損失特性が実現できるとともに、第2のパッチパターン(012b)の両端に、第2の給電基板(09)の両端部まで延びる第2の給電線路(08)を形成することで第2の給電線路(08)上の任意の位置に層間接続を可能とする構成を実現できるものである。
【0080】
第1のパッチパターン(012a)においては、図4(b)に示すL4が、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)の約0.38倍となる1.5mmとし、形状を円形とした。なお、L4は、使用する周波数の自由空間長λgの約1/4〜1/2倍の範囲で本発明が示す良好な結果が得られている。
【0081】
また、第1のシールドスペーサ(010a)、第2のシールドスペーサ(010b)のくり抜き部のパッチ周辺部の形状を円形とし、その直径L5を使用する使用する周波数の実効波長λgの約0.6倍とした。
また、第2のパッチパターン(012b)においては、図4(c)に示すL3が、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)の0.5倍となる1.975mmとした。
また、第1のスリット(013)の寸法LS4は、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)の約0.5倍となる1.8mmとした。
第1のシールドスペーサ(010a) 、第2のシールドスペーサ(010b)の寸法L2は、同じ寸法とした。
【0082】
さらに、第1の給電線路(05)と第1のパッチパターン(012a)の接続部には、使用する周波数76.5GHzの実効波長(λg=3.64mm)の約0.25倍の長さのトランス線路(0101)を形成した。このとき、スリット013の上部に位置する第2のパッチパターン(012b)のインピーダンスと第2の給電線路(08)のインピーダンスとは整合するように配置されている。かかるインピーダンス整合が実現されるように第2のパッチパターン(012b)の寸法を決めることにより、VSWRは所望値(1.3以下)を得ることができる。
【0083】
以上の各部材を図4(a)に示すように、下層から、第1の地導体(01)、第1のシールドスペーサ(010a)、第1の給電基板(06)、第2のシールドスペーサ(010b)、第2の地導体(02)、第3のシールドスペーサ(011a)、第2の給電基板(09)、第4のシールドスペーサ(011b)、第3の地導体(03)の順に積層してトリプレート線路層間接続器を構成し、第1の給電線路(05)及び第2の給電線路(08)の片側に計測器を接続して電磁波を給電すると共に、第1の給電線路(05)の端部における反射特性(VSWR)及び第1の給電線路(05)から第2の給電線路(08)の片側端面へ電磁波が通過する際の通過損失を測定した結果、実施例1と同様の良好な特性が得られた。
【0084】
[本発明にかかる平面アレーアンテナ]
次に、本発明にかかる平面アレーアンテナの好ましい実施形態について、必要に応じて図面を参照して詳細に説明する。また、図面は、本発明の内容を説明するために用いられるものであり、各部の寸法の比率を正確に反映するものではない。
【0085】
(基本構成)
図9は、本発明にかかる平面アレーアンテナの一実施形態における構成を示す。
【0086】
本発明の平面アレーアンテナは、給電線路104を有するアンテナ部001と伝送線路111を有する伝送線路部002とを備える多層構造を有する。
【0087】
このように給電線路104と電波受発信部への導波管開口124とをつなぐ伝送線路111をアンテナ基板130とは別の層に設けることによって、導波管開口を給電線路の直下から離れた任意の位置に配置することが可能になる。
【0088】
本発明の平面アレーアンテナの前記アンテナ部001は、アンテナ基板130及びスリット307を備えた第1の地導体308を含む。また、第1の誘電体106をアンテナ基板130と第1の地導体308の間に設けると、平面アレーアンテナを構成する各材料の選択及び寸法設計の自由度が広がり好ましい。第1の誘電体106の厚みやアンテナ基板130の誘電体の厚みは、誘電体の比誘電率、給電線路104の線幅及び厚み、並びにアンテナ部001のインピーダンスを考慮して決められる。第1の誘電体106を用いる場合、その厚みは、アンテナ基板130の誘電体の厚みとの和が0.01〜0.5mmの範囲となるような厚みとすることが好ましい。第1の誘電体106を用いない場合、アンテナ基板130の誘電体の厚みは、0.01〜0.5mmの範囲が好ましい。
【0089】
本発明の平面アレーアンテナに用いられる誘電体には、対空気比誘電率の小さい発泡体や空気(即ち空洞部とする)を用いるのが好ましい。発泡体を用いる場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系発泡体、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、ポリシリコーン系発泡体、ゴム系発泡体などが挙げられ、ポリオレフィン系発泡体の対空気比誘電率がより小さいので好ましい。
【0090】
本発明の平面アレーアンテナの前記アンテナ基板130は、複数の放射素子105が略1列に配列された放射素子群と、前記放射素子群の各放射素子を繋ぐ給電線路104とが形成されてなるアンテナ領域を備える。即ち、複数の放射素子105が略1列に配列して1つの放射素子群を形成し、放射素子群のなかの各放射素子を給電線路で繋いでアンテナ領域を形成している。ここで、略1列とは、アンテナとしての諸特性を損なわない程度にずらして配列してもよいという意味で、アンテナとしての諸特性に影響しない範囲で千鳥状に配列しても構わない。
【0091】
前記給電線路と、前記スリットと、前記パッチパターンとが平面アレーアンテナの厚み方向においてほぼ対応する位置に備えられる。
【0092】
ここで、図10を用いて前記給電線路と前記スリットの位置関係について説明する。
【0093】
本発明の平面アレーアンテナを厚み方向に見たとき、図10に示すように給電線路104とスリット307が一部重なり合っている(図10網掛け部)。この重なり部分における給電線路の長手方向の最大距離をd1とする。また、給電線路の長手方向に平行な2直線でスリットを挟んだときの前記2直線間の距離をd2とする。ここで、d1は重なり部分におけるスリット307の給電線路104の長手方向の距離を示す。このとき、d1<d2となるように、スリット及び給電線路の、形状及び位置関係が調整される。図10ではL字型スリットを用いて説明したが、矩形スリットを用いた場合には、d1は短軸方向の長さ、d2は長軸方向の長さを示す。高周波信号は前記スリット307を介して給電線路に往き来できるため、アンテナ基板を小面積化でき好ましい。
【0094】
また、本発明の平面アレーアンテナに用いられるスリットの形状は四角形(矩形スリット)、多角形または楕円形が好ましい。矩形スリットとする場合には、平面アレーアンテナの厚み方向において、給電線路及び第1のパッチパターンに対応する位置に前記スリットが設けられ、かつ、平面アレーアンテナの厚み方向から見た前記給電線路と前記スリットとの重なり部分において、前記給電線路の長手方向に対し垂直な向きに長軸を有する矩形スリットであることが望ましい。一方、多角形にする場合には、図11(a)〜(c)に示すようにL字形(図11(a))、コの字形(図11(b))、又はH字形(図11(c))が矩形スリットの他にも良好な効果が得られる形状として確認されている。この理由としては、スリットは使用する周波数で共振し、高周波信号を放射する機能を果たせばよいからである。このため直線状の形状にこだわる必要はなく、共振機能を発現する形状であれば上記形状の場合と同様の効果が得られる。
【0095】
スリットは、地導体となる基板をプレス工法による打抜きで形成してもよいし、エッチングで形成してもよい。
【0096】
また、本発明の平面アレーアンテナに用いられるスリット307の長手方向の長さは、使用する周波数の波長の0.4〜0.6倍が好ましく、1/2程度の長さがより好ましい。なぜなら、上記長さが0.4〜0.6倍、特に1/2波長程度の場合にスリットが共振しやすく、高周波信号の放射が効率良くなり、伝送損失が少なくなるからである。図11に示す多角形スリットの場合には、軸線の全長(図中一点鎖線で示す線)が使用する周波数の波長の1/2程度の長さになるようにすることが好ましい。
【0097】
前記給電線路及び前記スリットと本発明の平面アレーアンテナの厚み方向においてほぼ対応する位置に備えられる前記パッチパターンは、前記給電線路の長手方向の長さが実効波長(λg)(=(使用する周波数に対応した波長λ0)/√(誘電体の比誘電率εr))の約1/4〜1/2であることが好ましい。このような構成にすることによって、スリットとパッチパターンの位置合わせにおいて、比較的ラフな位置合わせ(±0.3〜0.4mm)でも十分な伝送が可能になる。第1のパッチパターン及び後述する第2のパッチパターンの実寸法は、正方形であれば、1辺が、好ましくは1.0〜2.0mm程度、より好ましくは1.2〜1.4mm程度であり、円形であれば、直径が、好ましくは1.0〜2.0mm程度、より好ましくは1.2〜1.4mm程度である。なお、本発明にかかる平面アレーアンテナにおけるパッチパターンの好ましい形態としては、図12(a)に示すように正方形のパッチパターンで伝送線路の末端が留まっている構造とするのが好ましいが、パッチパターンが円形であってもよく、図12(d)に示すような卵形のパッチパターンでもよい。また図12(b)や(c)に示すようにパッチパターンの伝送線路との接続部の反対側に伝送線路の末端が残る構造であってもよい。ただし、この場合には伝送線路の末端から実効波長λgの1/4離れた部位がパッチパターン内に収まるようにすることが好ましい。
【0098】
前記伝送線路部は、第1のシールドスペーサと、伝送線路基板と、第2のシールドスペーサと、第2の地導体とをこの順で備え、前記伝送線路基板は伝送線路と前記伝送線路の少なくとも一方の端部に前記伝送線路より幅広のパッチパターンを備え、前記第1のシールドスペーサは前記パッチパターンを取り囲むようにくり抜き部を備え、
前記第2のシールドスペーサは、前記第1のシールドスペーサと略同一形状のくり抜き部が、前記第1のシールドスペーサのくり抜き部に対応する位置に備えられる。
【0099】
なお、前記パッチパターンを取り囲むように備えるくり抜き部は、前記伝送線路も取り囲むように備えることが好ましく、この場合くり抜き部は、前記パッチパターンを取り囲む部分と前記伝送線路を取り囲む部分の間にくびれ部を備えると、不要伝搬モードの抑制の観点から好ましい。より具体的には伝送線路111及び第1のパッチパターン110それぞれの端部から、例えばミリ波であれば、0.1λg〜1λg離れていることが好ましい。0.1λg未満であると、パッチパターンとスリットの結合損失が大きくなる。1λgを超えると、電磁波が拡散してしまい、伝送損失が大きくなる。ここで、λgは、実効波長である。
【0100】
前記第2のシールドスペーサは前記第1のシールドスペーサと略同一厚みであることが好ましい。前記第1のシールドスペーサの厚みは前記パッチパターンの厚みよりも大きいことが好ましい。
【0101】
この構造について図13を用いて説明する。
【0102】
図13は、図9に示す本発明の平面アレーアンテナの一実施形態において、平面ABCDで切った断面図である。
【0103】
図13に示す平面アレーアンテナ1は、スリット307を有する第1の地導体308の上に第1の誘電体106を備え、給電線路104を備えるアンテナ基板130をさらに備える。第1のシールドスペーサ120と、伝送線路111を有する伝送線路基板131と、第2のシールドスペーサ121と、第2の地導体123とをこの順で備え、第1の地導体308に第1のシールドスペーサ120が対向するように位置している。ここで、前記第1のシールドスペーサ120は前記パッチパターン110、前記伝送線路111及び第2のパッチパターン112を取り囲むようにくり抜き部を備え、前記第1及び第2のシールドスペーサ120及び121の厚みは前記伝送線路111の厚みよりも大きく、前記第2のシールドスペーサ121は前記第1のシールドスペーサ120と略同一厚みであり、前記第1のシールドスペーサ120と略同一形状のくり抜き部316を有している。ここで、前記第2のシールドスペーサは、前記第1のシールドスペーサと略同一形状のくり抜き部が、前記第1のシールドスペーサのくり抜き部に対応する位置に備えられる。このようなくり抜き部を設けることで不要伝搬モードが大きく低減される。
【0104】
くり抜き部は、第1のシールドスペーサ120及び第2のシールドスペーサ121の両方に設けた場合は、片方のみに設けた場合と比較して、不要伝搬モードの低減効果が大きい。
【0105】
前記給電線路104と、前記スリット307と、前記伝送線路111に設けられた第1のパッチパターン110が平面アレーアンテナの厚み方向においてほぼ対応する位置に備えられる。
【0106】
前記スリット307と前記給電線路104との位置関係について、前記スリットが多角形の場合には、図11の網掛け領域に重なりがあるような位置関係とすればよい。
上記構成をとることによって、不要伝搬モードの発生を低く抑え、効率よく給電線路に高周波信号を伝送することができる。
【0107】
なお、不要伝搬モードの発生を抑える観点から、前記スリットは平面アレーアンテナの厚み方向に見たときにくり抜き部316の内側にあることが好ましい。
また、第2のパッチパターン112及び導波管開口124が平面アレーアンテナの厚み方向においてそれぞれ対応する位置にあることが好ましい。
【0108】
給電線路は、線幅を0.2〜0.5mm程度の範囲で設けることが好ましい。
【0109】
アンテナ基板は、絶縁性フィルムを基材としその上に銅箔を張り合わせたフレキシブル基板の不要な銅箔をエッチング除去して、給電部、放射素子及び給電線路を形成して得られるが、ガラスクロスに樹脂を含浸させた薄いプリプレグに銅箔を張り合わせた銅張り積層板でも得ることができる。これらの場合、銅箔の表面粗さ(Ra)が2μm以下、即ちプロファイルフリーの銅箔を用いることが、高速信号の低伝送損失という観点で好ましい。
【0110】
また、銅張り積層板に用いられる樹脂としては、低誘電率、低誘電損失という観点でシアネート樹脂組成物、シアネート樹脂−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物などを用いることが好ましい。
【0111】
放射素子の大きさについては、放射素子と給電線路の接続部から給電線路の延長線上にある放射素子端部までの長さ、いわゆる励振方向の長さを実効波長λgの約1/2に合わせることが好ましく、正方形、矩形、円形、楕円形等の形状を用いることができる。正方形の放射素子を用いてより具体的に説明すると、放射素子の辺の中央に直角に給電線路を接続した場合には、辺の長さをλgの1/2に合わせることが好ましく(図14(a)参照)、放射素子の角部に45°の角度で給電線路と接続した場合には、放射素子の対角線の長さをλgの1/2に合わせることが好ましい(図14(b)参照)。具体的に放射素子の実寸法は、正方形の放射素子の場合、1辺が0.8〜2.0mm程度であることが好ましく、1.0〜1.4mm程度であることがより好ましい。
【0112】
また、給電線路の長手方向に隣接する放射素子間の間隔は使用する周波数に依存するが、通常1.0λ0(自由空間波長;空気中を伝わる電磁波の波長)以下が好ましい。例えば、使用する周波数が79GHzの場合には、3.8mm以下が好ましい。
【0113】
第1の地導体308の厚みは、0.05〜1mm程度の範囲とすることが好ましい。
【0114】
また、本発明にかかる平面アレーアンテナの厚み方向から見た前記給電線路と前記スリットとの重なり部分において、前記給電線路の長手方向の一方の外縁と前記スリットの一方の外縁との交点eと給電線路の前記一方の外縁と前記スリットの他の一方の外縁との交点fを結ぶ直線の中点をa1とし、前記給電線路の長手方向の他の一方の外縁と前記スリットの一方の外縁との交点hと給電線路の前記他の一方の外縁と前記スリットの他の一方の外縁との交点gを結ぶ直線の中点をa2としたときに、a1とa2を結ぶ直線と給電線路の長手方向とが、略直交するように形成されていることが好ましい。
【0115】
このことを図15を参照しながら説明する。図15において、平面アレーアンテナの厚み方向から見てスリット307と給電線路104とが矩形efghの部分で重なっている。給電線路の長手方向の外縁efとスリットの外縁との交点、即ち点e及び点fを結ぶ直線efの中点をa1とし、給電線路の長手方向の他の一方の外縁ghとスリットの外縁との交点、即ち点g及び点hを結ぶ直線ghの中点をa2としたとき、a1とa2を結ぶ直線と給電線路の長手方向とが略直交するように形成されていることが好ましい。このような構成にすることによって、高効率に高周波信号を給電線路に伝送することができる。
【0116】
また、前記給電線路と前記スリットとの重なり部分が、その部分から給電線路で繋がる一方の放射素子の数と他方の放射素子の数とが同数となる位置にあることが好ましい。このような位置関係により、使用する周波数範囲内でビーム方向のばらつきをより小さくすることができる。例えば、そのような位置関係が、図16における平面アレーアンテナでは、前記給電線路と前記スリットとの重なり部分が前記給電線路の略中央部にあることにより達成されている。使用周波数に対応した波長をλとすれば、略中央部は、給電線路の長手方向の中心点から±λ/8(実寸法にして約1mm)程度ずれていてもよい。また、前記給電線路104と前記スリットとの重なり部分に前記給電線路より幅広の給電部が備えられていることが好ましい。
なお、本発明においては、使用する周波数の範囲は、77GHz〜81GHzが好ましいものとして挙げられる。
【0117】
図16に、本発明にかかる平面アレーアンテナの給電部を給電線路の略中央部に設けた実施形態の構成の斜視図を示す。また、図17は、図16に示した平面アレーアンテナを平面ABCDで切った断面図である。図16及び図17を参照しながら、以下説明する。
【0118】
図16は、図9とほぼ同様であるが、給電部を給電線路上に設け、その給電部の位置を給電線路上の略中央部とし、その給電部を給電線路より幅広にした点が図9と異なる特徴である。図17は、そのような図16に対応させてある。なお、給電部の給電線路方向の長さは、使用する周波数の実効波長λgの約1/2であることが好ましい。
【0119】
給電部、給電線路及び放射素子は厚み10〜40μmの銅箔等の銅層からエッチング等によって形成されることが好ましい。
【0120】
給電部は、その形状が矩形である場合、長軸の長さを実効波長λgの約0.35〜0.5倍とすることが好ましく、約1/2とすることがより好ましい。具体的には0.5mm〜2.5mm程度の範囲に設定することが好ましく、さらには、0.9〜2.0mm程度とすることがより好ましい。給電部の短軸の長さに関しては、実効波長λgの約1/8とするのが好ましい。
【0121】
なお、本発明の平面アレーアンテナにおいては、給電部103を境にして一方の側にある放射素子105の群の位相と他方の側にある放射素子105の群の位相とがλ/2ずれるため、一方の側にある放射素子105の群又はそれらに接続する給電線路に対して他方の側にある放射素子105の群と位相を合わせるための工夫が施されていることが好ましい。位相差を合わせる方法としては、例えば、給電部から放射素子までの給電線路の長さを使用周波数に対応する波長λの1/2に相当する長さ分だけ他方の側の放射素子までの長さよりも長くするなどの方法がある。
【0122】
この方法について、図18及び図19を用いて、より具体的に説明する。
【0123】
図18は本発明にかかる平面アレーアンテナの一実施形態における平面図であり、給電線路上の前記スリットとの重なり部分の中心線1041を挟んで対称の位置にある放射素子Pn(の列)とQn(の列)(図18では、nは1〜8の整数)とが配列されている。また、図19は、図18の給電線路における放射素子P1及びQ1部分の平面拡大図である。ここで、重なり部分から放射素子Pnまでの給電線路の長さb1とし、重なり部分から逆側の放射素子Qnまでの給電線路の長さをb2とすると、b2はb1に比べ、重なり部分の中心線1041からの給電線路の長さが長い。Pn側とQn側のどちらを長くするかについては、様々な決定方法があるが、b1とb2のどちらか一方の長さが他方より(使用周波数に相当する波長λの1/2に相当する長さ)分だけ長いことが好ましく、例えば、図19ではb1+(使用周波数に相当する波長λの1/2に相当する長さ)=b2となるように給電線路の長さを設計している。
【0124】
本発明で用いられる地導体は、どのような金属板でも用いることができるが、特にアルミニウム板を用いれば、軽量で加工が容易で安価に製造でき好ましい。
【0125】
また、本発明の平面アレーアンテナに用いられる伝送線路基板は、ポリイミド等のフィルムを基材とし、その上に銅箔等の金属層を積層したフレキシブル基板の不要な金属層をエッチング除去して、第1のパッチパターン、伝送線路及び第2のパッチパターンを形成して構成できるが、金属層のエッチングを第1のパッチパターン、伝送線路及び第2のパッチパターンの周囲の金属層のみに限定してもよい。前記エッチング部分の外周形状を伝送線路基板の上下に設けられるシールドスペーサのくり抜き部の形状に合わせると伝搬ロス抑制の観点から好ましい。ガラスクロスに樹脂を含浸させた薄いプリプレグに銅箔を張り合わせた銅張り積層板でも構成できる。銅箔については、表面粗さ(Ra)が2μm以下即ちプロファイルフリーの銅箔を用いることが、高速信号の低伝送損失という観点で好ましい。また、銅張り積層板に用いられる樹脂としては、低誘電率、低誘電損失という観点でシアネート樹脂組成物、シアネート樹脂−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物などを用いることが好ましい。
【0126】
伝送線路基板131におけるポリイミドフィルム等の基材の厚みは、50〜150μm程度が好ましい。
【0127】
伝送線路の線幅は0.1〜0.4mm程度が好ましい。
【0128】
第1のパッチパターン、伝送線路及び第2のパッチパターンのそれぞれの外周とシールドスペーサに設けられたくり抜き部の内周との間隔は、0.3〜1.5mm程度が好ましい。
【0129】
また、第1のパッチパターン、伝送線路及び第2のパッチパターンの厚みは、10〜40μm程度が好ましい。
【0130】
第1のシールドスペーサ120及び第2のシールドスペーサ121の厚みは、0.2〜0.5mm程度が好ましい。
【0131】
さらに、本発明にかかる平面アレーアンテナにおいて、平面アレーアンテナの厚み方向から見て前記第2の地導体123の前記第2のパッチパターンにほぼ対応する位置に導波管開口124を備えるとより好ましい。
【0132】
また、給電部103を備える場合、平面アレーアンテナの厚み方向から見てアンテナ基板130の給電部103及び第1の地導体のスリット及び伝送線路基板131の第1のパッチパターン110がほぼ重なる位置にあり、不要伝搬モードの発生を抑制できる。具体的には、給電部103の中心点から下ろした垂線が伝送線路基板131と交わる点から使用周波数に対応する波長λの±1/8(実寸法にして1mm程度)の範囲にスリットの中心又は第1のパッチパターン110の中心が入るよう配置することができ、このようにすることで本発明にかかるアンテナとしての特性を損なうことなく、比較的ラフな位置合わせで製造でき、生産性に優れたものとすることができる。
【0133】
ここで第1のパッチパターン110と給電部103の電磁的な結合原理について説明する。第1のパッチパターンを共振させると共振器として動作し、高周波信号が蓄えられる。そして、第1のパッチパターンからスリット307へ高周波信号が放射される。また、スリット307もまた共振器として動作し、高周波信号が蓄えられる。スリット307に蓄えられた高周波信号は、給電部103へと放射されることになり、第1のパッチパターンから給電部103へと高周波信号の伝達が可能となる。
【0134】
第2の地導体の厚みは、0.05〜1mm程度が好ましい。
【0135】
導波管開口124については、一般に使用周波数帯域ごとにEIA規格で定められた大きさを用いる。例えば、75〜110GHzでは、2.54mm×1.27mmである。図16に示した実施態様では、アンテナ部の構成をマイクロストリップ構造としたが、例えば図20に示すようにアンテナ基板330の上に放射素子305にほぼ対応する位置に誘電体318及びスロット開口315を有する第3の地導体314を設けてトリプレート構造にすると、さらに利得の高い平面アンテナを得ることができる。この場合、誘電体318の厚みは0.2〜0.5mm程度が好ましく、第3の地導体314の厚みは0.05〜1mm程度が好ましい。
【0136】
本発明で用いられるスロット開口315を有する第3の地導体314は、金属板あるいはプラスチックにメッキした板を用いることができるが、特にアルミニウム板を用いれば、軽量で加工が容易で安価に製造でき好ましい。また、フィルムを基材としその上に銅箔等の金属層を積層したフレキシブル基板の不要な金属層をエッチング除去して、誘電体の上にスロット開口を設けた構成とすることができ、また、ガラスクロスに樹脂を含浸させた薄いプリプレグに銅箔を張り合わせた銅張り積層板でも同様の構成を得ることができる。また、スロットの基本形状は、四角形、三角形、多角形、円形、楕円形等いずれの形状であっても構わないが、放射素子の形状に合わせることが好ましい。
【0137】
また、図21に示すように、アンテナ領域を複数列設けてもよい。この場合には、アンテナ領域の数に対応して第1のパッチパターン、伝送線路及び第2のパッチパターンを含む伝送線路領域及び導波管開口を設ける。アンテナ領域を複数設けると、本発明の平面アレーアンテナをレーダ用途に用いた際にレーダの検知精度が向上する。
また、アンテナ領域を複数列設けた場合、アンテナ基板の各々のアンテナ領域間に金属帯108(例えば、図22A参照)が設けられていると、後述するくり抜き部を備えることによるアイソレーション向上効果がより大きくなり、好ましい。
【0138】
さらに、図22に示すように、アンテナ領域を複数組設けた場合、アンテナ基板530の上下に、各アンテナ領域にほぼ対応する位置にくり抜き部516を備えた第3及び第4のシールドスペーサ517及び519を配置すると、アイソレーションがさらに向上し、好ましい。なお、くり抜き部516は放射素子505からなる群の列より一回り大きいサイズとしてもよい。
ここで、シールドスペーサ519のくり抜き部516は図9や図16における誘電体層106と同様の機能を有している。くり抜き部の形に対応した形のウレタンフォームシート(厚みはシールドスペーサ519の厚みとほぼ同等)をくり抜き部516に装填することでアンテナ基板530をより安定に保持することができる。シールドスペーサ517のくり抜き部516にも同様にウレタンフォームシートを装填してもよい。
また、図22において伝送線路基板531上の第1のパッチパターン510、伝送線路511及び第2のパッチパターン512が繋がっているものが4つ示され、その周囲には導電層はないが、例えば伝送線路531を銅箔等の金属層及び誘電体を備えた基板からフォトリソグラフ等の常法で作製する場合には、金属層のエッチングを、第1のパッチパターン510、伝送線路511及び第2のパッチパターン512の周囲の金属層のみに限定してもよい。前記エッチング部分の外周形状を伝送線路基板の上下に設けられるシールドスペーサのくり抜き部の形状に合わせることが、伝搬ロス抑制の観点から好ましい(図22Bにこのような伝送線路基板531’を図示した)。
【0139】
このようにして得られる本発明の平面アレーアンテナは、全体の大きさ(平面的に見て)は、例えば4列の放射素子群を有する場合、幅が3cm程度、長さが7cm程度で、厚みが0.8〜6mm程度の小型で軽量、薄型の構造とすることができる。
以下の実施例においては、使用可能な周波数の範囲を75〜83GHzとした設計を例として示してある。
【実施例3】
【0140】
図16に、本発明にかかる平面アンテナの一実施形態を示す。図16において、アンテナ部に含まれるアンテナ基板として、厚み25μmのポリイミドフィルムに厚み18μmの銅箔を貼り合わせたフィルム基板を用い、エッチングにより不要な銅箔を除去して1.25mm×1.25mmの放射素子(16個1列配列、放射素子間の間隔3.6mm)及び前記放射素子群の各放射素子105と前記給電部を繋ぐ給電線路(線幅0.3mm)、放射素子群の中央付近(中央部)の給電部103(矩形、長軸1.8mm、短軸0.4mm)を形成した。前記給電部103は、その長軸が前記給電線路104の長手方向と平行となるように形成した。
【0141】
同様に、伝送線路基板として、厚み25μmのポリイミドフィルムに厚み18μmの銅箔を貼り合わせたフィルム基板を用い、エッチングにより不要な銅箔を除去して第1のパッチパターン110(大きさ1.3mm×1.3mm)、伝送線路111(線幅0.3mm)及び第2のパッチパターン112(大きさ1.3mm×1.3mm)を形成した。
【0142】
また、第1の地導体308として厚み0.3mmのアルミニウム板にプレス工法による打抜きでスリット307(大きさ1.8mm×0.4mm)を形成したものを用いた。第1の地導体308とアンテナ基板との間にアンテナ領域を取り囲む空洞部を設けた厚み0.3mmのアルミニウム板を挟み、空洞部には、第1の誘電体106として空気を用いることとした。第1の誘電体106の形成については、例えばアンテナの特性に影響を与えない程度に第1の地導体308とアンテナ基板130の間にスペーサを設けることによっても実現できる。
【0143】
同様にして、伝送線路領域よりも大きいくり抜き部316(第1のパッチパターン及び第2のパッチパターン上のくり抜き部の大きさ2.4mm×2.4mm、伝送線路上のくり抜き部の幅1mm)を有する第1のシールドスペーサ120(厚み0.3mm)及び第2のシールドスペーサ121(厚み0.3mm)を準備した。
【0144】
同様にして、厚み0.3mmのアルミニウム板にプレス工法による打抜きによって、第2のパッチパターン112と重なる位置に導波管開口を有する第2の地導体123(厚み0.3mm)を準備した。
【0145】
アンテナ基板(厚み25μm)、第1の誘電体106(厚み0.3mm)、第1の地導体308(厚み0.3mm)、第1のシールドスペーサ120(厚み0.3mm)、伝送線路基板131(厚み25μm)、第2のシールドスペーサ121(厚み0.3mm)及び第2の地導体123(厚み0.3mm)をこの順に重ね、リベット等で固定し、平面アレーアンテナ(大きさ114mm×30mm、全体厚み約1.55mm)を構成した。
【0146】
伝送線路領域は、伝送線路基板131の上下に設けられた第1のシールドスペーサ120及び第2のシールドスペーサ121のくり抜き部316の領域内に収まり、2つのくり抜き部間に挟持される。給電部103の両側には、給電線路104及び放射素子105が8個ずつ形成されている。放射素子105は、通常、給電部103の両側に同数ずつ備えられる。即ち、本発明の一実施形態においては、給電部103は、放射素子105の配列の略中央部に設けられる。
【0147】
以上の各部材を図16に示すように順次積み重ねることによって平面アレーアンテナを構成した。この平面アレーアンテナの特性を計測するべく、77GHz〜81GHzまでの垂直面指向性を2GHz間隔で77GHz、79GHz、81GHzの3ポイントを測定した結果、図23に示す特性が得られた。図23において、平面アレーアンテナのアンテナ基板面に垂直な方向を0°とし、この方向からのずれ量(θ)を横軸とした。また、縦軸は相対利得を示す。相対利得は、もっとも利得の大きな計測点を0とし、その計測点に対する相対的数値で示される。したがって、0°で相対利得0dBであることが好ましく、また、角度のずれ量に対して、相対利得の低下が大きい方が垂直面指向性が強いことを示し、好ましい。結果については、後述する。
【0148】
また、この平面アレーアンテナの給電部と第1のパッチパターンの間の伝送損失について高周波3次元電磁界シミュレータHFSS(アンソフト社製、商品名)を用いて解析した結果を図24に示す。なお、くり抜き部の誘電体の比誘電率εr=1.03として解析した。モデルの寸法については、実施例3に記した寸法を用いた。解析した75〜83GHzの周波数帯域において、伝送損失は−1dB以下と非常に小さかった。
【実施例4】
【0149】
次に、本発明にかかる平面アンテナに基づいた他の実施形態について、図20を用いて説明する。
【0150】
アンテナ基板330上に、第1の誘電体318を設け、さらにその上にアンテナ基板330上のアンテナ部の各放射素子305の群のちょうど上側に、それぞれの放射素子305より大きいスロット開口(2.3mm×2.3mm)315の群を備えた第3の地導体(スロット板)314(厚み0.3mm)を設けたこと以外は、実施例3と同様の構成として、図20に示す構造とした。
【0151】
以上のとおり、図20に示すように下から第2の地導体323、第2のシールドスペーサ321、伝送線路基板331、第1のシールドスペーサ320、第1の地導体308、第1の誘電体306、アンテナ基板330、第2の誘電体318、第3の地導体314の順に積層することにより平面アレーアンテナを構成したものである。図20に示した平面アレーアンテナの特性を計測すべく、77GHz〜81GHzまでの垂直面指向性を2GHz間隔で77GHz、79GHz、81GHzの3ポイントについて測定した結果、ビーム方向の周波数シフトが改善され、(実施例3)と比較し、垂直面指向性については、同等の特性が得られ、利得については、約2dB高い結果が得られた。また、この平面アレーアンテナの給電部と第1のパッチパターンの間の伝送損失について高周波3次元電磁界シミュレータHFSS(アンソフト社製、商品名)を用いて解析した結果を図25に示す。76〜82GHzの周波数帯域において、伝送損失は−1dB以下と非常に小さく、特に78〜80GHzにおいては、−0.5dB以下と著しく小さかった。
【実施例5】
【0152】
次に、本発明にかかる平面アンテナに基づいた他の実施形態について、図21を用いて説明する。導波管開口424、第1のパッチパターン410、伝送線路411、第2のパッチパターン412、くり抜き部、スリット407、アンテナ領域及び放射素子405の群より大きなスロット開口415の組を複数設けた。このとき、伝送線路及びくり抜き部を若干曲げて設けた以外は、実施例4と同様の構成として、図21に示す構造とした。
【0153】
図21に示した平面アレーアンテナの特性を計測すべく、77GHz〜81GHzまでの垂直面指向性を2GHz間隔で77GHz、79GHz、81GHzの3ポイントについて測定した結果、複数のチャンネルを形成した場合においてもビーム方向の周波数シフトが改善され、(実施例4)と同等の良好な特性が得られた。なお、隣接するアンテナ間のアイソレーションについては、約15dBだった。このように、本実施例に従えば、4列の平面アレーアンテナを作製した場合でも、ビーム方向の周波数シフトがない良好な特性を得ることができる。なお、本実施例に従えば、放射素子群を複数配列した場合、従来の構造に比べ、アンテナ基板の小面積化にも有効である。
【実施例6】
【0154】
次に、本発明にかかる平面アンテナに基づいた他の実施形態について、図22を用いて説明する。アンテナ基板530の上下には、各アンテナ領域よりも大きいくり抜き部516(75mm×3.9mm)を各アンテナ領域に対応して第3のシールドスペーサ517及び第4のシールドスペーサ519を設けている以外は実施例5と同様の構成として、図22に示す構造とした。
【0155】
図22に示した平面アレーアンテナの特性を計測すべく、77GHz〜81GHzまでの垂直面指向性を2GHz間隔で77GHz、79GHz、81GHzの3ポイントについて測定した結果、複数のチャンネルを形成した場合においてもビーム方向の周波数シフトが改善され、(実施例5)と同等の指向性及び利得が得られた。なお、隣接するアンテナ間のアイソレーションは約30dBと(実施例5)に比べ、より優れた。このように、本実施例に従えば、4列の平面アレーアンテナを作製した場合でも、ビーム方向の周波数シフトがない良好な特性を得ることができ、かつ第1のシールドスペーサ517と第2のシールドスペーサ519により隣接するアンテナからの高周波信号の干渉(アイソレーション)が少なくなり、高アイソレーション性を有する平面アレーアンテナを形成できる。なお、本実施例に従えば、放射素子群を複数配列した場合、従来の構造に比べ、アンテナ基板の小面積化にも有効である。
【0156】
なお、中央付近(中央部)の給電部503の形状は、(実施例4)において四角形としたが、楕円形でも(実施例3)と同様に良好な特性を得ることができる。また、配線スペースの関係で、四角形または楕円形が設けられない場合は、スリットからくる高周波信号のインピーダンスと給電線路104のインピーダンスとを考慮したうえでスリット上を通る給電線路の幅のみとしてもよい。
【0157】
また、第2のパッチパターン512の形状は、(実施例4)においては四角形としたが、放射素子同様に三角形または円形であっても、(実施例3)と同様に良好な特性を得ることができる。
【0158】
さらに、スリット507の形状は、(実施例4)においては四角形としたが、図11に示したようなL字形、コの字形、H字形のような形状であっても、(実施例3)と同様に良好な特性を得ることができる。また、給電部の中心と図11に記載された各スリットの中心を一致させることにより、さらに好ましい特性を得ることができる。
【0159】
〔比較例1〕
実施例3におけるアンテナ領域を図28に示す構成のアンテナ領域に置き換え、平面アレーアンテナの厚み方向から見て給電部903、スリット307及び第1のパッチパターン110がほぼ重なる位置になるようにしたこと以外は実施例3と同様の構成とした。
この平面アレーアンテナの特性を計測するべく、77GHz〜81GHzまでの垂直面指向性を2GHz間隔で77GHz、79GHz、81GHzの3ポイントを測定した結果、図29に示す特性が得られた。
ここで、図28に示した給電線路の線路幅は、製造条件等に伴い一定幅を有しておらず、しかも完全な直線形状になるよう敷設されていないが、このような場合であっても、給電線路の長手方向を想定することは可能である。例えば、給電線路の平均幅dmをもって、給電線路の中心線から左右にそれぞれdm/2ずつ離れた2本の仮想平行線(不図示)を想定すれば、給電線路を図15における一定幅をもった給電線路104と同様に取り扱うことができ、図15におけるa1とa2を結ぶ直線と給電線路の長手方向とが略直交するようにスリット及び給電線路の形状と位置関係とを調整することができる。
【0160】
比較例1の結果は、周波数が2GHz増減した程度で、相対利得のピーク角度がずれる。即ち、使用周波数によって、最適な検知角度がばらつくことを意味する。一方、実施例3の結果は、比較例1の結果と比較すると、周波数が変わっても相対利得のピークはほぼ重なっており、ビーム方向の周波数シフトが改善され、極めて良好な特性が実現できていることが分かる。
【0161】
〔比較例2〕
図30に比較例2における構成の斜視図を示す。実施例3と同じ構成図16に示した本発明にかかる平面アンテナの伝送線路基板131の上下にある第1及び第2のシールドスペーサのほぼ全面に空隙を設けた構造としたこと以外、実施例3と同様の構成として、図30に示す構造とした。
【0162】
この平面アレーアンテナの給電部と第1のパッチパターンの間の伝送損失について高周波3次元電磁界シミュレータHFSS(アンソフト社製、商品名)を用いて解析した結果を図31に示す。解析した75〜83GHzの全周波数帯域において、伝送損失は−2dB以上と非常に大きかった。
【符号の説明】
【0163】
01 第1の地導体
02 第2の地導体
03 第3の地導体
04a 第1の誘電体
04b 第2の誘電体
04c 第3の誘電体
04d 第4の誘電体
05 第1の給電線路
05a 入力端
06 第1の給電基板
07a 第5の誘電体
07b 第6の誘電体
08 第2の給電線路
08a、08b 出力端
09 第2の給電基板
010a 第1のシールドスペーサ
010b 第2のシールドスペーサ
011a 第3のシールドスペーサ
011b 第4のシールドスペーサ
012a 第1のパッチパターン
012b 第2のパッチパターン
013 第1のスリット
014 第2のスリット
0101 トランス線路
0102 整合点
0103 ギャップ
001、101 アンテナ部
002 伝送線路部
102 給電線路部
1 平面アレーアンテナ
103、303、403、503、903、1103 給電部
42、104、304、404、504 給電線路
1041 給電線路上のスリットとの重なり部分の中心線
41、105、305、405、505 放射素子
106、306、406 第1の誘電体
43 第1の接続部
52 第2の接続部
24 第2のスロット
108 金属帯
307、407、507 スリット
308、408、508 第1の地導体
110、310、410、510 第1のパッチパターン
111、311、411、511 伝送線路
112、312、412、512 第2のパッチパターン
40、130、330、430、530、530' アンテナ基板
131、331、431、531、531' 伝送線路基板
123、323、423、523 第2の地導体
315、415、515 スロット開口
316、416、516 くり抜き部
120、320、420、520 第1のシールドスペーサ
318、418 第2の誘電体
121、321、421、521 第2のシールドスペーサ
517 第3のシールドスペーサ
519 第4のシールドスペーサ
314、414、514 第3の地導体
124、324、424、524 導波管開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の間に挟まれた、第1の給電線路(05)を備えた第1の給電基板(06)が、第1の地導体(01)と第2の地導体(02)との略中間に位置している第1のトリプレート線路と、第3の誘電体(04c)及び第4の誘電体(04d)の間に挟まれた、第2の給電線路(08)を備えた第2の給電基板(09)が、第2の地導体(02)と第3の地導体(03)との略中間に位置している第2のトリプレート線路との電気的接続構造を有するトリプレート線路層間接続器であって、
前記第1の給電基板(06)上に前記第1の給電基板(06)の入力端(05a)から第1のパッチパターン(012a)に向かって延びる第1の給電線路(05)を備え、前記第1のパッチパターン(012a)は、前記第1の給電線路(05)の接続終端部に形成されており、
前記第1の給電基板(06)の下部に第1のシールドスペーサ(010a)が配置され、前記第1の給電基板(06)の上部に第2のシールドスペーサ(010b)が配置され、前記第1のシールドスペーサ(010a)及び前記第2のシールドスペーサ(010b)は、前記第1の給電基板(06)の下部及び上部に前記第1の誘電体(04a)及び前記第2の誘電体(04b)が形成されるよう前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部をそれぞれに有し、
前記第2の給電基板(09)上に第2のパッチパターン(012b)と、前記第2のパッチパターン(012b)から2方向に出力端(08a)及び(08b)まで延びる第2の給電線路(08)とを備え、
前記第2の地導体(02)上の前記第1のパッチパターン(012a)と第2のパッチパターン(012b)との略中間に位置する部分に第1のスリット(013)を備え、
前記第1のスリット(013)の長手方向が前記第2のパッチパターン(012b)の長手方向と略直交するよう構成され、前記第1のシールドスペーサ(010a)のくり抜き部(04a)と前記第2のパッチパターン(012a)と前記第2のシールドスペーサ(010b)のくり抜き部(04b)と前記第1のスリット(013)と前記第2のパッチパターン(012b)とが、第3の地導体(03)を積層方向から見て重なる部分を有する
トリプレート線路層間接続器。
【請求項2】
第1の誘電体(04a)及び第2の誘電体(04b)の間に挟まれた、第1の給電線路(05)を備えた第1の給電基板(06)が、第1の地導体(01)と第2の地導体(02)との略中間に位置している第1のトリプレート線路と、第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)の間に挟まれた、第2の給電線路(08)を備えた第2の給電基板(09)が、第2の地導体(02)と第3の地導体(03)との略中間に位置している第2のトリプレート線路との電気的接続構造を有するトリプレート線路層間接続器であって、
前記第1の給電基板(06)上に前記第1の給電基板(06)の入力端(05a)から第1のパッチパターン(012a)に向かって延びる第1の給電線路(05)を備え、前記第1のパターン(012a)は、前記第1の給電線路(05)の接続終端部に形成されており、
前記第1の給電基板(06)の下部に第1のシールドスペーサ(010a)が配置され、前記第1の給電基板(06)の上部に第2のシールドスペーサ(010b)が配置され、前記第1のシールドスペーサ(010a)及び前記第2のシールドスペーサ(010b)は、前記第1の給電線路(05)及び前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部をそれぞれに有し、
前記第2の給電基板(09)上に第2のパッチパターン(012b)と、前記第2のパッチパターン(012b)から2方向に出力端(08a)及び(08b)まで延びる第2の給電線路(08)とを備え、
第2の給電線路(08)及び第2のパッチパターン(012b)の下部及び上部に第5の誘電体(07a)及び第6の誘電体(07b)が位置するよう、第2の給電線路(08)及び第2のパッチパターン(012b)を含む大きさであって第2の給電線路(08)の線路方向に両端にまで延びる誘電体を構成する第3のシールドスペーサ(011a)及び第4のシールドスペーサ(011b)が配置され、
前記第2の地導体(02)上の前記第1のパッチパターン(012a)と第2のパッチパターン(012b)との略中間に位置する部分に第1のスリット(013)を備え、
前記第1のスリット(013)の長手方向が前記第2のパッチパターン(012b)の長手方向と略直交するよう構成され、前記第1のシールドスペーサ(010a)のくり抜き部(04a)と前記第2のパッチパターン(012a)と前記第2のシールドスペーサ(010b)のくり抜き部(04b)と前記第1のスリット(013)と前記第2のパッチパターン(012b)とが、第3の地導体(03)を積層方向から見て重なる部分を有する
トリプレート線路層間接続器。
【請求項3】
第1のパッチパターン(012a)の給電線路方向の長さL1は、使用する周波数の実効波長λgの約1/4〜1/2倍であり、かつ、
第1のシールドスペーサ(010a)及び第2のシールドスペーサ(010b)の前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部の線路方向における寸法L2は、使用する周波数の実効波長λgの約0.6倍であり、かつ、
第2のパッチパターン(012b)の給電線路方向の長さL3は、使用する周波数の実効波長λgの0.35〜0.5倍であり、かつ、
第1のスリット(013)の第2のパッチパターン(012b)と直交する方向の長さLS4は、使用する周波数の実効波長λgの0.4〜0.6倍である
請求項1または2に記載のトリプレート線路層間接続器。
【請求項4】
第1のパッチパターン(012a)の形状は円形であり、その直径L4は使用する周波数の実効波長λgの約1/4〜1/2倍であり、かつ、
第1のシールドスペーサ(010a)、第2のシールドスペーサ(010b)の前記第1のパッチパターン(012a)を含む大きさにくり抜かれたくり抜き部の形状は円形であってその直径L5は使用する周波数の実効波長λgの約0.6倍である
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトリプレート線路層間接続器。
【請求項5】
アンテナ部と伝送線路部とを備える多層構造の平面アレーアンテナにおいて、
前記アンテナ部は、アンテナ基板と、スリットを備えた第1の地導体とを含み、
前記アンテナ基板は、複数の放射素子が略1列に配列された放射素子群と、前記放射素子群の各放射素子を繋ぐ給電線路とが形成されてなるアンテナ領域を備え、
前記伝送線路部は、第1のシールドスペーサと、伝送線路基板と、第2のシールドスペーサと、第2の地導体とをこの順で備え、
前記伝送線路基板は伝送線路と前記伝送線路の少なくとも一方の端部に前記伝送線路より幅広のパッチパターンを備え、
前記給電線路と、前記スリットと、前記パッチパターンとが平面アレーアンテナの厚み方向においてほぼ対応する位置に備えられ、前記スリットと前記給電線路との重なり部分における給電線路の長手方向の最大距離d1と、前記スリットを前記給電線路の長手方向に平行な2直線で挟んだときの前記2直線間の距離d2が、d1<d2となるように、スリット及び給電線路の、形状及び位置関係が調整されてなり、
前記パッチパターンは、前記給電線路の長手方向の長さが実効波長(λg)の約1/4〜1/2であり、
前記第1のシールドスペーサは前記パッチパターンを取り囲むようにくり抜き部を備え、
前記第2のシールドスペーサは、前記第1のシールドスペーサと略同一形状のくり抜き部が、前記第1のシールドスペーサのくり抜き部に対応する位置に備えられることを特徴とする平面アレーアンテナ。
【請求項6】
平面アレーアンテナの厚み方向から見た前記給電線路と前記スリットとの重なり部分において、前記給電線路の長手方向の一方の外縁と前記スリットの一方の外縁との交点eと給電線路の前記一方の外縁と前記スリットの他の一方の外縁との交点fを結ぶ直線の中点をa1とし、前記給電線路の長手方向の他の一方の外縁と前記スリットの一方の外縁との交点hと給電線路の前記他の一方の外縁と前記スリットの他の一方の外縁との交点gを結ぶ直線の中点をa2としたときに、a1とa2を結ぶ直線と給電線路の長手方向とが、略直交するように形成されていることを特徴とする前記請求項5記載の平面アレーアンテナ。
【請求項7】
前記給電線路と前記スリットとの重なり部分が、その部分から給電線路で繋がる一方の放射素子の数と他方の放射素子の数とが同数となる位置にあることを特徴とする前記請求項1又は6に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項8】
前記給電線路と前記スリットとの重なり部分の前記給電線路の長手方向の中心点から、前記一方の放射素子のうち中心点からn番目の放射素子までの給電線路の長さb1と、前記他方の放射素子のうち中心点から前記n番目の放射素子までの給電線路の長さb2が、b1+(使用周波数λの1/2に相当する長さ)≒b2となるように各放射素子を配置したことを特徴とする前記請求項7に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項9】
前記給電線路上の前記給電線路と前記スリットとの重なり部分に、前記給電線路より幅広の給電部を備えることを特徴とする前記請求項5乃至8の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項10】
前記アンテナ基板の前記放射素子群及び給電線路が設けられた側に、第2の誘電体と、前記放射素子群に対応する位置に各放射素子よりも大きいスロット開口を有した第3の地導体とをこの順で配置したことを特徴とする前記請求項5乃至9の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項11】
前記アンテナ基板に前記アンテナ領域を複数組備えることを特徴とする前記請求項5乃至10の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項12】
前記アンテナ領域を複数組有する前記アンテナ基板の上下に各々のアンテナ領域にほぼ対応するくり抜き部を各々備える第3及び第4のシールドスペーサを備えることを特徴とする前記請求項11記載の平面アレーアンテナ。
【請求項13】
前記アンテナ領域を複数組有する前記アンテナ基板の各々のアンテナ領域間に金属帯が設けられていることを特徴とする前記請求項12記載の平面アレーアンテナ。
【請求項14】
前記アンテナ基板と前記第1の地導体の間に第1の誘電体を有することを特徴とする前記請求項5乃至13の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項15】
前記スリットが矩形又は楕円形状であることを特徴とする前記請求項5乃至14の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項16】
前記第2のシールドスペーサは前記第1のシールドスペーサと略同一厚みであることを特徴とする前記請求項5乃至15の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項17】
前記第1のシールドスペーサの厚みは前記パッチパターンの厚みよりも大きいことを特徴とする前記請求項5乃至16の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。
【請求項18】
車載レーダ用である前記請求項5乃至17の何れか一項に記載の平面アレーアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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