説明

トルエンの不均化方法

【課題】 Ni−モルデンフッ石触媒を使用するTDP法において、製造速度及び選択率を改良する。
【解決手段】 ニッケル・モルデンフッ石触媒上で、低い反応器圧および大きい処理量で、トルエンをベンゼンおよびキシレンに転化するトルエンの不均化方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルキル芳香族化合物の供給物流れの不均化反応に関し、さらに詳しくは脱アルミナ化ニッケル・モルデンフッ石触媒を使用するトルエン含有供給原料の不均化反応に関する。
【背景技術】
【0002】
トルエン不均化反応(TDP)は、トルエンが以下の反応に従ってベンゼンおよびキシレンに転化される既知のアルキル交換反応を包含する。
【0003】
【化1】

【0004】
モルデンフッ石は、アルキル芳香族化合物のアルキル交換反応に有用な分子ふるい触媒の一員である。モルデンフッ石は、結晶構造内で酸素原子によって相互結合されたケイ素とアルミニウムの網目を示す結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライトである。モルデンフッ石触媒の全般的説明のためには、非特許文献1が参考になる。天然に見出されるかまたは天然産のゼオライトを複製して合成したモルデンフッ石は典型的には、約10またはそれ未満の比較的低いシリカ対アルミナ・モル比を示す。しかし、実質的により低いアルミナ含量を示すモルデンフッ石触媒も知られている。これらのアルミナ欠乏モルデンフッ石触媒は、10を超え、約100までに亙るシリカ対アルミナ比を示し、そして例えば、特許文献1に開示されている直接合成法によるか、または特許文献2に開示されている、さらに通常に製造されたモルデンフッ石の酸抽出法によって製造することができる。典型的なおよびアルミニウム欠乏モルデンフッ石の両方はトルエンの不均化反応で有用であることが知られている。
【0005】
トルエン供給原料の不均化反応は、約200℃〜約600℃の範囲内の温度で、大気圧から多分100気圧またはそれ以上の範囲内の圧力で、そして約2hr−1の液空間速度(LHSV)で行うことができる。しかし、特定の触媒は、触媒活性および老化特性の見地から、反応温度に制約を課することができる。一般的に、従来技術は、高アルミニウム・モルデンフッ石(低シリカ対アルミナ比)を使用する場合は比較的に高い温度の使用を示唆し、そして低アルミナ・モルデンフッ石を使用する場合は幾らか低い温度の使用を示唆している。従って、高シリカ/アルミナ比を示すモルデンフッ石触媒がアルキル芳香族化合物のアルキル交換反応に使用された場合、温度範囲の下限近辺で操作するのが慣例であった。しかし、特許文献3には、370℃〜500℃の温度範囲を含む比較的に過酷な不均化条件下で、アルミニウム欠乏モルデンフッ石触媒を使用するトルエン含有供給原料の不均化反応が開示されている。モルデンフッ石触媒は、少なくとも30、さらに望ましくは40〜60の範囲内のシリカ/アルミナ・モル比を示す。供給原料は、モルデンフッ石触媒を含有する反応区画に、比較的に高い空間速度を与える速度で供給することができる。トルエンの重量空間速度(WHSV)は1を超えることができる。水素は、3〜6の範囲内の水素/トルエン・モル比で反応区画に供給される。水素圧は500psigまたはそれ以上であることができる。トルエン供給原料は、反応区画に供給する前に乾燥する
必要がなく、そして特許は100ppm以上の水分含量を示すトルエン供給原料を開示している。
【0006】
特許文献3はまた、不均化反応を開始する前に、反応区画に、熱プレフラッシュ・ガス、窒素または水素を通過させることを開示している。プレフラッシュ・ガスは、トルエン供給が開始されるまでに、触媒を実質的に脱水するのに十分な温度に加熱される。この方法によって、不均化方法は初めて、幾らか低い温度でそしてトルエン転化率の低下なく行うことができる。不均化反応が進行する従って、温度は次第に上昇して、トルエン転化率を所望の水準、典型的には理論値の約80%に維持する。
【0007】
特許文献4は、特許文献3で開示された種類のアルミニウム欠乏モルデンフッ石上で行われたトルエンの不均化反応を開示している。この方法では、好適には、370℃〜500℃の反応区画温度、さらに好適には400℃〜500℃の温度で、未改変のアルミニウム欠乏モルデンフッ石触媒を用いて行い、水素の供給が継続される間は、トルエンの反応区画への供給は中断される。好適には、水素の供給が継続される間の中断期間は、反応区画へのトルエン供給原料の供給を再開する前の少なくとも1日間である。この操業方法は、触媒の耐老化品質を強化し、そしてトルエン転化率の対応する低下なしに反応区画温度の低下を示すことが開示されている。
【0008】
また、触媒的に活性な金属含量物を有するアルミニウム欠乏モルデンフッ石触媒を促進することは通常の慣習である。例えば、特許文献5は、10〜100の範囲内、好適には20〜60の範囲内のシリカ/アルミナ比を有するモルデンフッ石触媒を使用する不均化反応を開示している。モルデンフッ石は、VIII族金属から選ばれた硫化金属を包含させることによって改変される。金属は、良く知られたイオン交換または含浸法によってモルデンフッ石中に包含させることができる。特に好適な硫化VIII族金属は、0.5〜10重量%の濃度で存在するコバルトおよびニッケルである。酸化ニッケルと比較すると、硫化ニッケルは、ガスおよび飽和炭化水素収率によって示されるように、低い過活性を与えると言われている。ここで、望ましい温度範囲は、約400℃〜750℃、好適には450℃〜640℃であると言われている。金属促進剤は、数時間または数日に亙って継続する運転によって示されるように、実質的に触媒活性および触媒寿命を増加させると言われている。
【0009】
上記のように、水素はトルエンと共に反応区画に供給される。不均化反応(1)は水素の化学的消費を含まないが、水素共供給物の使用は一般的に、例えば、特許文献5に開示されているように、触媒の有用寿命を延長すると考えられる。水素の供給量は、通常は水素/トルエン・モル比の点から測定され、一般的に従来技術では温度が上昇すると共に増加することが示される。
【0010】
非特許文献2には、400℃で、12〜61の範囲内のシリカ/アルミナ・モル比を有するモルデンフッ石触媒上で、大気圧で、そして1の空間速度(WHSV)でのトルエン不均化反応が開示されている。シリカ/アルミナ・モル比が増加するに従って、触媒活性は実質的に低下し、一方耐老化品質は増加する。即ち、老化速度は低くなる。短期間の老化研究に基づくと、最良のシリカ/アルミナ・モル比は23であるようである。また、触媒の崩壊はモルデンフッ石にニッケルを添加することによって抑制された。12、16および23のシリカ/アルミナ・モル比を有するモルデンフッ石は、アンモニウム・モルデンフッ石を硝酸ニッケル水溶液でイオン交換することを含む操作方法によってニッケルを包含させることによって改変された。イオン交換の後、触媒は水素環境下で2時間活性化された。23のシリカ/アルミナ・モル比を有するニッケル改変モルデンフッ石のための最良の活性化温度は、約550℃であることが示された。12のシリカ/アルミナ・モル比を有するニッケル改変モルデンフッ石は、23のシリカ/アルミナ・モル比を有するニ
ッケル添加モルデンフッ石と比較して、顕著に低い活性を示した。
【0011】
トルエン不均化反応の触媒および方法を目的とした他の特許としては、特許文献6、7、8、9および10が挙げられる。
【0012】
供給原料の導入の前に、触媒および反応器ベッドを横切って熱、不活性ガス(水素または窒素)を通過させることを含む反応前の始動操作法は、特許文献11および3に開示されている。モルデンフッ石の吸湿傾向を制御すること目的とする他の反応前、始動操作法は、特許文献8に開示されたように、触媒を焼成操作処理することを含む。上記の米国特許および引用文献のすべては本明細書中に引用することによって取り込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,436,174号明細書
【特許文献2】米国特許第3,480,539号明細書
【特許文献3】米国特許第4,665,258号明細書
【特許文献4】米国特許第4,723,049号明細書
【特許文献5】米国特許第3,476,821号明細書
【特許文献6】米国特許第3,562,345号明細書
【特許文献7】米国特許第3,677,973号明細書
【特許文献8】米国特許第4,151,120号明細書
【特許文献9】米国特許第4,723,048号明細書
【特許文献10】米国特許第3,780,122号明細書
【特許文献11】米国特許第4,956,511号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Kirk−Othmer、化学技術の百科辞典(Encyclopedia of Chemical Technology)、第3版、1981年、「モレキュラーシーブ」(“Molecular Sieves”)の項目、第15巻、第638−643頁
【非特許文献2】Bhavikatti等,[アルミニウム欠乏および金属添加モルデンフッ石上でのトルエン不均化反応、1、触媒活性と老化](“Toluene Disproportion Over Aluminum−Deficient and Metal−Loaded Mordenites.1.Catalytic Activity and Aging”),Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.1981年,第20巻,第102−105頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
Ni−モルデンフッ石触媒を使用する通常のTDP法は、アンモニア、湿気、温度変化、電力の故障および操業条件の他の変化によって損傷されることへの感度および感受性を含む多数の欠点に悩まされている。また、通常のNi−モルデンフッ石触媒は、反応器の準備の間、触媒を横切る顕著で受容できる製造が全くない始動期間の間、3日までまたはそれ以上がラインアウトされる必要があると言う欠点に悩まされている。本発明は、これらの欠点を克服し一方製造速度を数倍に上昇させそして同時に選択率を改良するNi−モルデンフッ石触媒を使用するTDP法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
本発明によれば、通常の商業的速度の2倍までの高い製造速度が、低温で、低い反応器
圧を使用して、そして触媒活性または触媒寿命に対する有害な効果なく、改良された選択率の利益を得て達成することができる、脱アルミナ化ニッケル−モルデンフッ石触媒上での実質的に純粋なトルエン供給原料の不均化方法が提供される。
【実施例】
【0017】
好適な態様の説明
上記の特許で明らかなように、トルエンの不均化反応でのニッケル改変触媒の使用は該技術分野で良く知られている。しかし、本発明は、触媒が、低いプラトー温度を使用して、触媒活性の損失なしで、製造速度の顕著な増加および選択率の改良を可能にするように選択された、ニッケル改変モルデンフッ石触媒上でのトルエンの不均化反応を行う改良法を提供する。
【0018】
本発明によれば、金属性水素化成分、さらに詳しくはニッケルを包含することによって改変されたモルデンフッ石型の触媒を使用するトルエンの不均化方法が提供される。本発明で使用されるモルデンフッ石触媒は好適には、約10〜約50、さらに好適には約20のシリカ対アルミナ・モル比を示す。本発明中で有用であることが見出された一つの特に有利なNi−モルデンフッ石触媒は、T−2581と呼称され、United Catalyst,Inc.,1227 South 12th Street,Louisville,Kentucky 40210によって製造販売されている商業的触媒であった。この触媒は以下の典型的な物理的および化学的特性を示す:形態−押出し物;直径 1.4〜1.6mm;37±3 lbs/ftの圧搾嵩密度;約1.1 lbsの破砕強度(15ペッレットの平均);0.3cc/gを超えるHg細孔容積;200m/gを超えるBET表面積;および約8未満の1000°Fでの%LOI。
【0019】
本発明で使用されるモルデンフッ石不均化触媒はニッケルの包含によって改変された。出願人の実験によれば、最良の結果は、0.3重量%以上のニッケルから作成された触媒を使用することによって得られることが示唆される。低いニッケル含量のモルデンフッ石触媒はトルエンのキシレンおよびベンゼンへの転化並びに選択率を与えるが、低い耐老化品質を示すことが知られている。実験によって、ニッケルの使用量を増加させても利益は増加せず、触媒中のニッケルの実際的な上限は約1.5重量%であることが決定された。
【0020】
本発明は、試験室の反応器を使用して、約130日の期間に亙って行った研究から生まれたものである。水素ガスの存在下で、実質的に純粋なトルエン供給原料は、ニッケル改変触媒上で、以下の初期条件下で不均化された:温度 680°〜800°F;約20±2重量%のモルデンフッ石・シリカ対アルミナ・モル比の触媒;約1から約4までの水素/トルエン・モル比;1.0〜4.0の供給原料の液空間速度(LHSV);および500psigと600psigの間を変化する入口圧。
【0021】
本方法は、試験室の反応器中で、T−2581と呼称される上記の触媒を使用して発明されたものである。TDP反応の商業的空間速度は一般的に、600psigの触媒室中の圧力で、入口で約2hr−1に制限されていることは、既に教示された。試験室反応器は、試験室反応器中に上記の市販のニッケル・モルデンフッ石触媒を挿入することによって、商業的反応器中で得られるのと同一の反応をシミュレートするように組み立てられた。試験室反応器の試験は、14インチの温度計保護管を有する1インチのラボ反応器中に触媒を充填することを含んでなった。前処理は、触媒上に試験運転と同一の圧力で行った。ラボ反応器が充填されそして圧力が点検された後、それを流通系中に設置した。水素流れは毎分0.8リットルで開始し、500psigまたは600psigのいずれかの反応器試験圧に調節した。反応器中の温度を250℃まで上昇させた。それ後、トルエン供給物を反応器中に添加し、そして水素流れを1:1(モル)の水素対炭化水素比を得るように調節した。
【0022】
反応器の製造速度が、触媒寿命、選択率、または活性に逆作用することなく、数倍に上昇され得ることが見出された。反応器を通過する第一運転の間、通常の商業的条件に対応する基礎条件が確立された。それらの条件は:
LHSV=2.0 hr−1
圧力=600psig(入口);
温度=47%のトルエン転化率を得るように調節された;
水素対炭化水素比=最初は1:1(モル比);
その後4:1(モル比)であった。
【0023】
上記の初期基礎条件を試験室反応器で達成した後、反応器の基礎ケース運転を88日の期間に亙って行った。第二試験運転は、LHSVを4hr−1に倍増した以外は、同一の基礎条件下で新触媒を用いて行った。この試験運転は約50日の期間に亙って継続した。次いで、第三試験運転は、新しく充填した触媒上であるが、500psigの低い反応器圧で、4hr−1のLHSVで、130日の期間行った。
【0024】
すべての触媒試験運転の温度は、47%のトルエンの転換率が得られるように調節した。水素流れは、非芳香族化合物選択率が約2.0〜2.5%の水準未満に低下した後、増加させた。500psigでの2回の試験運転の場合、これを15日および20日行った。600psigでの試験の場合、水素速度を第9日に調節した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】経時的に温度および圧力を示して、ニッケル・モルデンフッ石触媒上で行われた不均化方法でのトルエン転化を示すグラフである。
【図2】経時的に種々の圧力での触媒の芳香族化合物選択率を示す、トルエンの不均化方法のグラフである。
【図3】TDP方法の場合のヘビーズ(heavies)およびガスの選択率を示す。
【0026】
図1は、試験運転の間の触媒の活性を示す温度対時間のプロットを示す。ニッケル・モルデンフッ石触媒についての基礎ケースは、600psigおよび2hr−1のLHSVで行った。この運転を図1にラインAで示す。基礎ケースでは、約785°Fのプラトー温度が流動中の約60日で達成された。数日後、所望の47%の転化率を得るために、基礎ケースの温度を790°Fに調節した。
【0027】
600psigおよび4hr−1のLHSVでの第二運転を図1にラインBで示す。この運転のプラトー温度は基礎ケースより約35°F高く、約825〜835°Fで安定した。35°の温度差は、高空間速度の試験の場合に転化定数を保持するために、反応の速度論によって要求される追加の加熱の結果であったと考えられる。また、600psigでの高空間速度試験のための温度プラトーは、低空間速度試験運転の半分の時間で達成された。その場合、触媒老化は加工されたトルエン供給物のバレルの関数であって、時間ではないようである。触媒基剤のポンド当たり一バレルのトルエン供給物上で測定した場合、温度プラトーは殆ど同一的に同一点で達成される。
【0028】
500psigの反応器入口圧力および毎時4の流速で行った第三試験を図1にラインCで示す。最初、47%のトルエン転化率の水準を得るのに要する温度は、2つの600psig試験の間にあった。試験が、他の高速度試験(4/hr)より10〜15°F低いところから始動したから、500psig水準での操業に幾らかの活性の有利があった
。始動後間もなく、触媒は500psigの条件下でより安定であることが明らかになった。500psigでの不活性化速度は以前の600psig試験の両方より遅かった。これは、試験Cの空間速度の半分である低空間速度(1/hr)で行った600psig試験も含む。500psigでの第三試験はは、770°Fの温度プラトーに達するのに約110日を要した。これは、600psig2/hrの基礎カースが20°F高いプラトーに達するのに要する期間の約2倍であった。
【0029】
これらの3つの試験の挙動は、水素分圧反応モデルに基づいて、トルエンの不均化反応について、専門家によって予想されたことと全く反対である。挙動は、触媒の性能を圧力に関して考察し、生成物および反応物の分圧を常に留意することによって説明することができると考えられる。さらに、反応系の最も凝縮し易い成分は副産物として生成するヘビーズ(heavies)留分であると考えられる。触媒細孔内でのヘビーズの凝縮は、500psigよりも600psigでもっと大きい程度で起こることが考えられる。それ故、触媒細孔中の重炭化水素液体の凝縮は触媒のコーキングおよびその後の不活性化の前兆であるらしい。このようなコーキング機構はまた、コーキングの副産物がエキストラ・ガス生成物であるから、選択率に負の効果を有する。毛管凝縮モデルは、試験室反応器実験の流動性能を説明するのに有用である。
【0030】
この予想外の結果の利点は、結果が観察されると明らかである。高空間速度で操業する商業的ユニットは、標準的空間速度の場合より少ない歴日数しか運転しないと予想された。500psigでの操業によって、実際に触媒の不活性化速度が低くなりそして触媒上のコーキングが少なくなるから、この低い操業圧は、触媒が活性である全時間を減少させることなく、触媒上の流速を増加させる機会を与える。次いで、500psigの反応器圧および3/hrのLHSVを使用して、基礎ケースを再規定するために、2つの追加の試験室試験を行った。これらの2つの試験を図1にラインDおよびEで示す。図1のこの結果は、最新の500psig運転中の触媒の不活性化速度が、4/hrの空間速度での500psig運転の不活性化速度に相等していることを示している。その後の500psig試験の両方は600psig試験の温度プロットと交差する。従って、これらの2つの触媒モデルは、600psig基礎ケースよりも緩慢に、即ち、日当たり0.6°F対日当たり2.4°Fで不活性化していた。
【0031】
図2は、反応器の流動日数に基づく芳香族化合物選択率の表示を示す。図2に示された試験運転は、3/hrのLHSVでの2つのその後の500psig運転、並びに600psigおよび2/hrのLHSVでの基礎ケース運転を含む。図2の頂部の3本のラインによって示される3つの試験運転はすべて、別々の試験条件の各々、即ち2つの500psigの場合および基礎ケース600psigの場合からのキシレン選択率を示す。このことは、キシレン選択率がすべての場合について殆ど同一であること、およびキシレン選択率の差異は単に試験自体の限度内にあることを示している。しかし、ベンゼン選択率の場合、各種の試験の間に測定しうる差異が存在し、500psigのベンゼン選択率には、600psigのベンゼン選択率よりも約2%の改良がある。図2では、ラインAは600psigの試験運転を示し、そして他の2本のラインは2つの500のpsig試験運転、即ちラインDおよびEを示す。600psigの試験運転のベンゼン選択率の平均は約37%であり、一方2つの500psigの運転のベンゼン選択率の平均は約39%であった。このことは、試験がすべて同一の触媒上で行われたことを考慮すると相当な改良である。
【0032】
図3は、追加のベンゼンが試験運転で得られた場合を示す。2つの500psigの試験運転が600psigの試験よりも約2%少ないガスを製造する場合、ガス(C−C)への選択率の差異は約2%であった。ガス製造からベンゼン製造へのこのシフトは望ましい結果であり、そして不均化反応ユニットによる所望の生成物の製造を改良する。正
常な商業的反応器では、ベンゼンの選択率が2%増加しそしてガス製造が2%減少すると、年間数百万ドルの利益の増加となる。また、図3では、約1/2%になるヘビーズ製造(C+)への選択率の小さい低下が500psig圧で運転することによって得られたことは注目されるべきである。図3では、上方の3本のラインはヘビーズ選択率を表し、下方の3本のラインはガス選択率を表す。各種の運転は、ヘビーズ製造の場合にはA、DおよびEと標識され、ガス選択率の場合にはA、DおよびEと標識されている。
【0033】
結論として、トルエン不均化反応器を600psigではなく500psigで運転すると、触媒の老化が遅延し、そしてプラトー温度が約20°Fの望ましい低下が生じた。500psigで試験運転すると、ベンゼンへの選択率が約2%改良され、それ自体一年間に数百万ドルの製造利益の増加をもたらすことができた。ベンゼン選択率のこの増加は、約2%のガス選択率の対応する減少によって得られたものであり、それは望ましい結果である。示されていないが、試験は、反応器の入口圧を調節するための最適時間を決定するために、600psigで始動し、そして数日運転し、次いで反応器圧を500psigに低下させて行った。この試験は、定常600psigでの正常運転では、顕著な改良を全く示さなかった。それ故、反応器が始動する殆ど直後に、触媒の不活性化に対するヘビーズのコーキングおよび毛管作用が起こることが考えられ、それ故、低い反応器圧が新触媒の始動時から使用されるべきである。ベンゼンの追加の製造は本発明を正当化する顕著な経済的利点であると考えられる。しかし、追加の正当化は、触媒が変化するはずである前に、ユニットがもっと長期にもっと効率的に運転できるもっと低いプラトー温度およびもっと遅い触媒不活性化速度に見出すことができる。
【0034】
また、反応器を低い圧力で運転することによって、容積処理量(LHSV)を、触媒の活性を劣化または分解することなく、増加させることができることがグラフ的および実験的に示された。また、このことによって、不均化ユニットの製造速度が上昇し、それは本発明のための経済的動機を与える。
【0035】
従って、活性が容積基準で測定され、低い圧力が反応器中で使用される場合、触媒に対して劇的な負の効果はなく、そして処理速度は通常の速度の2倍に上昇することが、図1〜3に関する上記の説明によって、本明細書に記載の触媒を用いて、グラフ的および実験的に示された。処理速度を低い反応器圧で2hr−1から4−1に増加させた場合、TDPユニットによる製造速度の倍増の外に、より良好なベンゼン選択率および非芳香族化合物選択率の改良が達成された。また、処理量が増加しても、キシレン異性体選択率が顕著に変化しないことが見出された。また、空間速度を倍増させても、容積基準で測定した場合、運転の始動時の不活性化速度を上昇させなかった。
【0036】
本発明をそれらの特定の態様を引用して記載したが、本発明の趣旨からおよび添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変化および修正を行うことができることは当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給原料を、水素の存在下で、1:1のH:HC(炭化水素)初期モル比で、供給原料のキシレンへの所定の転化率を生み出すのに十分な温度で、2hr−1の液空間速度でニッケル−モルデンフッ石触媒のベッドを流通させ、その後供給原料の液空間速度を4hr−1に上昇させそして同時に水素供給物を4:1のH:HCモル比に増加させ、そして追加的に反応温度を、同時に前記の所定の転化率を維持するのに十分な程度に上昇させ、圧力を500psigに維持することを含んでなる、トルエン供給原料からベンゼンおよびキシレンを生成する方法。
【請求項2】
前記の所定の転化率が46〜47%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の液空間速度を6hr−1に上昇させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記の反応温度が最初は680°Fであり、そしてその後810°Fに上昇させる請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が10〜50のシリカ対アルミナ・モル比を有する脱アルミナ・ニッケル−モルデンフッ石構造を有し、押出し形態物が1.4mm〜1.6mmの粒径、34〜40 lbs/ftの圧縮嵩密度、少なくとも1.1 lbsの15ペレット平均破砕強度、0.3cc/gを超えるHg細孔容積、200m/gを超えるBET表面積、および8の1000°FでのパーセントLOIを有する請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235094(P2009−235094A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164629(P2009−164629)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【分割の表示】特願平9−203947の分割
【原出願日】平成9年7月15日(1997.7.15)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】