説明

トルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置

【課題】各々のねじの締付品質の管理を高い精度で行うことができるトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置を提供すること。
【解決手段】エアーモータ13と、このエアーモータ13により駆動され、打撃トルクを出力軸15に与える油圧打撃トルク発生装置14と、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構2とを備えたエアーモータ式トルクコントロールレンチ1において、エアーモータ13を作動する高圧空気のエアーモータ13への供給位置における圧力を検知する圧力センサ3を設け、この圧力センサ3により油圧打撃トルク発生装置14の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を検出し、この高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーモータ駆動式のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトやナット等(本明細書において、「ねじ」という。)を締め付ける際に使用されるトルクコントロールレンチにおいて、ねじ締付作業の管理、例えば、ねじの締付本数等の管理は、トルクコントロールレンチに、エアーホースやケーブルを介して連結したり、無線で接続した、ねじ締付本数等のねじ締付作業を管理するコントローラによって行っていた。
そして、エアーモータ駆動式のトルクコントロールレンチの場合、ねじ締付作業の管理は、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構の作動を、シャットオフバルブの動作やエアーモータを作動する高圧空気の圧力の変化等により検知し、これに基づいて、ねじの締付本数の管理を行うようにしていた(特許文献1参照)。
しかしながら、この方式では、ねじの締付本数の管理は行えるものの、各々のねじの締付品質の管理は、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構に依存することとなるため、この作動停止機構が有する機能を越えるレベルでのねじの締付品質の管理を行うことは困難であった。
【特許文献1】特開平6−312381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置の有する問題点に鑑み、各々のねじの締付品質の管理を高い精度で行うことができるトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置は、エアーモータと、該エアーモータにより駆動され、打撃トルクを出力軸に与える油圧打撃トルク発生装置と、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構とを備えたトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置において、前記エアーモータを作動する高圧空気のエアーモータへの供給位置における圧力を検知する圧力センサを設け、該圧力センサにより油圧打撃トルク発生装置の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を検出し、該高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにしたことを特徴とする。
【0005】
この場合において、圧力センサにより検出した油圧打撃トルク発生装置の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を、トルクコントロールレンチと別に設けたねじ締付作業を管理するコントローラに伝達するとともに、該コントローラにおいて、高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにすることができる。
【0006】
また、圧力センサをトルクコントロールレンチに外付けにすることができる。
【0007】
また、打撃トルクの発生時間を測定するようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置によれば、エアーモータと、該エアーモータにより駆動され、打撃トルクを出力軸に与える油圧打撃トルク発生装置と、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構とを備えたトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置において、前記エアーモータを作動する高圧空気のエアーモータへの供給位置における圧力を検知する圧力センサを設け、該圧力センサにより油圧打撃トルク発生装置の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を検出し、該高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにすることにより、ねじの締付が完了するまでの打撃トルクの発生回数を、各々のねじについて、さらに、必要に応じてリアルタイムで、管理することができ、各々のねじの締付品質の管理を高い精度で行うことができる。
【0009】
また、圧力センサにより検出した油圧打撃トルク発生装置の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を、トルクコントロールレンチと別に設けたねじ締付作業を管理するコントローラに伝達するとともに、該コントローラにおいて、高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにすることにより、ねじ締付作業の管理を、トルクコントロールレンチと別に設けたコントローラにより一元的に行うことができる。
【0010】
また、圧力センサをトルクコントロールレンチに外付けにすることにより、汎用のトルクコントロールレンチに、本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置を簡易に適用することができる。
【0011】
また、打撃トルクの発生時間を測定するようにすることにより、ねじの締付が完了するまでの打撃トルクの発生回数に加えて、打撃トルクの発生時間、すなわち、ねじの締付に要した時間を、各々のねじについて、さらに、必要に応じてリアルタイムで、管理することができ、各々のねじの締付品質の管理をより高い精度で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図2に、本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置を適用したエアーモータ駆動式のトルクコントロールレンチの一実施例を示す。
このエアーモータ駆動式のトルクコントロールレンチ1は、高圧空気の供給及び停止を行うメインバルブ11と、メインバルブ11を操作する操作レバー12と、供給された高圧空気によって回転トルクを発生するエアーモータ13と、エアーモータ13の回転トルクを打撃トルクに変換する油圧打撃トルク発生装置14とを備えており、この装置全体の基本構成及び動作は従来公知のものである(必要があれば、例えば、実公平1−29012号公報、特開平6−312381号公報、特開平10−15843号公報等参照)。
【0014】
また、トルクコントロールレンチ1は、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構2を備えている。
この作動停止機構2には、従来公知の種々の機構を用いることができるが、本実施例においては、エアーモータ13の軸心を貫通する孔を形成し、この孔内にロッド21を摺動可能に嵌挿し、ロッド21の一端側にはピストン22を設け、ピストン22をライナー上蓋14aに設けたシリンダ14b内に配設し、ピストン22の先端をライナー上蓋14aと対向した出力軸15の端面と対向させる。
そして、このシリンダ14bの出力軸15側と、油圧打撃トルク発生装置14の圧力調整機構23に配設した油圧打撃トルク発生装置14の高圧室の圧力が予め設定した圧力に達したときに作動油を逃がすリリーフバルブ23aとの間を、小径の通路14cを介して連通するようにする。
また、ロッド21の他端にはシャットオフバルブ25を設け、ロッド21の移動にてパイロットバルブ24を操作して、シャットオフバルブ25のロッド21側を大気に開放することにより、シャットオフバルブ25を閉動作させるようにする。
【0015】
そして、このトルクコントロールレンチ1は、操作レバー12を操作してメインバルブ11を開き、エアーモータ13に高圧空気を供給してエアーモータ13を駆動することにより、油圧打撃トルク発生装置14を回転駆動し、打撃トルクを発生させる。
この時、油圧打撃トルク発生装置14の高圧室の圧力が予め設定した圧力に達するまでは、圧力調整機構23のリリーフバルブ23aは、ばねの付勢力にて圧力調整機構23側に押圧されて開放されず、打撃トルクを発生しながら、ねじの締め付けが行われる。
しかし、ねじの締め付けが進行し、ねじが所望の締付トルクで締め付けられると、高圧室の圧力が設定した圧力まで上昇することとなり、この設定した圧力まで上昇した高圧側の作動油は、リリーフバルブ23aをばねの付勢力に抗して開放し、通路14cを経てシリンダ14b内に導入され、この作動油の圧力がピストン22に作用して、ロッド21を押圧して摺動させ、ロッド21の移動にてパイロットバルブ24を操作して、シャットオフバルブ25のロッド21側を大気に開放することにより、シャットオフバルブ25を閉動作させる。
シャットオフバルブ25の閉動作により、エアーモータ13への高圧空気の供給が遮断され、自動的にエアーモータ13を停止して、ねじを所望の締付トルクに締め付ける作業を完了する。
【0016】
上記のとおり構成された、エアーモータ13と、このエアーモータ13により駆動され、打撃トルクを出力軸15に与える油圧打撃トルク発生装置14と、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構2とを備えたエアーモータ式のトルクコントロールレンチ1において、エアーモータ13を作動する高圧空気のエアーモータ13への供給位置における圧力を検知する圧力センサ3を設け、この圧力センサ3により油圧打撃トルク発生装置14の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を検出し、この高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにする。
【0017】
エアーモータ13を作動する高圧空気のエアーモータ13への供給位置における圧力の取り出しは、適宜の圧力取出機構4、具体的には、本実施例においては、シャットオフバルブ25の背面側(ロッド21の反対側)に、エアーモータ13を作動する高圧空気の取出部材41を設け、エアーホース42を介して、トルクコントロールレンチ1の外部に引き出すようにする。
そして、このエアーホース42の端部に、圧力を検知する圧力センサ3を設け、この圧力センサ3により油圧打撃トルク発生装置14の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を検出し、検出した高圧空気の圧力の変化を電気信号に変換して、ケーブル5を介して、トルクコントロールレンチ1と別に設けたねじ締付作業を管理するコントローラ6に伝達するとともに、このコントローラ6において、高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにする。
【0018】
この場合において、高圧空気の圧力の変化を正確に検出できるように、エアーホース42の材質及び長さを、高圧空気の圧力が減衰(圧力の変化が平準化)しないように適宜選定するようにするようにするほか、圧力センサ3をトルクコントロールレンチ1(エアーモータ13を作動する高圧空気の取出部材41等)に直結するようにしたり、内蔵するようにすることもできる。
また、圧力センサ3による検出した高圧空気の圧力の変化の電気信号は、ケーブル5を介してコントローラ6に伝達するほか、無線を介してコントローラ6に伝達するようにしたり、トルクコントロールレンチ1に備えたコントローラ(図示省略)において情報処理することもできる。
さらに、コントローラ6は、コンピュータと接続することにより、情報処理を行ったり、適切な情報の表示を行うことができる。
【0019】
図3に、1本のねじの締付作業を行った際のエアーモータを作動する高圧空気のエアーモータへの供給位置における圧力の変化を測定した測定結果の一例を示す。
図3に示す締付作業は、締付開始圧力設定値:0.40MPa、シャットオフ圧力設定値0.53MPa、締付時間(打撃トルクの発生時間(打撃トルクの発生開始時からシャットオフバルブ25の閉動作時までの時間)):0.428秒、パルス数(打撃トルクの発生回数):15回であり、このねじの締付作業が良好に行われたことが確認できた。
ここで、当該ねじの締付作業においては、締付時間(打撃トルクの発生時間):0.150〜0.429秒、パルス数(打撃トルクの発生回数):5〜14回の場合に、ねじの締付作業が良好に行われたとすることとしている。
【0020】
一方、図4に、20本のねじの締付作業を行った際の締付時間(打撃トルクの発生時間)及びパルス数(打撃トルクの発生回数)並びに判定(締付作業の良否)の結果をまとめた一例を示す。なお、この例は、締付作業の不良が多発する設定(ねじの不良等)としたもので、実際のねじの締付作業において、この例のように締付作業の不良が頻発することはない。
【0021】
このトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置は、エアーモータ13を作動する高圧空気のエアーモータ13への供給位置における圧力を検知する圧力センサ3を設け、この圧力センサ3により油圧打撃トルク発生装置14の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を検出し、この高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにすることにより、ねじの締付が完了するまでの打撃トルクの発生回数を、各々のねじについて、さらに、必要に応じてリアルタイムで、管理することができ、各々のねじの締付品質の管理を高い精度で行うことができる。
【0022】
また、圧力センサ3により検出した油圧打撃トルク発生装置14の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を、トルクコントロールレンチ1と別に設けたねじ締付作業を管理するコントローラ6に伝達するとともに、このコントローラ6において、高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにすることにより、ねじ締付作業の管理を、トルクコントロールレンチ1と別に設けたコントローラ6により一元的に行うことができる。
【0023】
また、圧力センサ3をトルクコントロールレンチ1に外付けにすることにより、汎用のトルクコントロールレンチ1に、このトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置を簡易に適用することができる。
【0024】
また、打撃トルクの発生時間を測定するようにすることにより、ねじの締付が完了するまでの打撃トルクの発生回数に加えて、打撃トルクの発生時間、すなわち、ねじの締付に要した時間を、各々のねじについて、さらに、必要に応じてリアルタイムで、管理することができ、各々のねじの締付品質の管理をより高い精度で行うことができる。
【0025】
以上、本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置は、各々のねじの締付品質の管理を高い精度で行うことができることから、高い信頼性の要求される自動車等のねじ締付作業の管理装置の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置の一実施例を示す概念図である。
【図2】本発明に用いるエアーモータ式トルクコントロールレンチを示す説明図で、(a)は正面断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】1本のねじの締付作業を行った際のエアーモータを作動する高圧空気のエアーモータへの供給位置における圧力の変化を測定した測定結果の一例を示す説明図である。
【図4】20本のねじの締付作業を行った際の締付時間(打撃トルクの発生時間)及びパルス数(打撃トルクの発生回数)並びに判定(締付作業の良否)の結果をまとめた一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 トルクコントロールレンチ
11 メインバルブ
12 操作レバー
13 エアーモータ
14 油圧打撃トルク発生装置
15 出力軸
2 作動停止機構
21 ロッド
22 ピストン
23 圧力調整機構
23a リリーフバルブ
24 パイロットバルブ
25 シャットオフバルブ
3 圧力センサ
4 圧力取出機構
41 高圧空気の取出部材
42 エアーホース
5 ケーブル
6 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーモータと、該エアーモータにより駆動され、打撃トルクを出力軸に与える油圧打撃トルク発生装置と、ねじ締付トルクが所定値に達したことを感知してレンチの作動を停止する作動停止機構とを備えたトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置において、前記エアーモータを作動する高圧空気のエアーモータへの供給位置における圧力を検知する圧力センサを設け、該圧力センサにより油圧打撃トルク発生装置の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を検出し、該高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにしたことを特徴とするトルクコントロールレンチにおけるねじ締付作業の管理装置。
【請求項2】
圧力センサにより検出した油圧打撃トルク発生装置の打撃トルクに対応して生じる高圧空気の圧力の変化を、トルクコントロールレンチと別に設けたねじ締付作業を管理するコントローラに伝達するとともに、該コントローラにおいて、高圧空気の圧力の変化から打撃トルクの発生回数を測定するようにしたことを特徴とする請求項1記載のねじ締付作業の管理装置。
【請求項3】
圧力センサをトルクコントロールレンチに外付けしたことを特徴とする請求項1又は2記載のねじ締付作業の管理装置。
【請求項4】
打撃トルクの発生時間を測定するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のねじ締付作業の管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−312210(P2006−312210A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135595(P2005−135595)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(591045323)瓜生製作株式会社 (26)
【Fターム(参考)】