説明

トルクコンバータのための継目ガス溶接及びトルクコンバータをガス溶接する方法

【課題】トルクコンバータにおける構成部材を溶接することに関連する、コスト、複雑さ及び汚染を減じる方法を提供する。
【解決手段】トルクコンバータ111における構成部材を溶接する方法において、トルクコンバータにおける第1及び第2の構成部材112,114の第1及び第2の縁部分116,118を重ね合わせ、第1の縁部分を前記第1の構成部材のための縁に向かってテーパさせ、溶加材なしに、縁部分にエネルギを提供し、第1及び第2の構成部材の間に溶接100を形成するように第1の縁部分を溶融させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、合衆国第35法典第119条(e)に基づいて、2006年9月1日に出願された米国特許仮出願第60/842175号明細書の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、回転駆動ユニット(例えば、自動車のエンジン)と、回転被駆動ユニット(例えば、自動車における変速トランスミッション)との間で力を伝達するための装置の改良に関する。特に、本発明は、トルクコンバータにおける構成部材、特にトルクコンバータにおけるカバーとポンプとをガス溶接する方法に関する。本発明は、ガス溶接された構成部材、特にカバー及びポンプを備えたトルクコンバータにも関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、典型的な車両における、エンジン7と、トルクコンバータ10と、トランスミッション8と、ディファレンシャル/車軸アセンブリ9との関係を示す概略的なブロック線図を示している。自動車のエンジンからトランスミッションへトルクを伝達するためにトルクコンバータが使用されることがよく知られている。
【0004】
トルクコンバータの3つの主要な構成要素は、ポンプ37と、タービン38と、ステータ39とである。トルクコンバータは、ポンプがカバー11に溶接されると、シールされたチャンバとなる。カバーはフレックスプレート41に結合されており、このフレックスプレート41自体はエンジン7のクランクシャフト42にボルト留めされている。カバーは、カバーに溶接されたラグ又はスタッドを用いてフレックスプレートに結合されることができる。ポンプとカバーとの間の溶接された結合はエンジントルクをポンプに伝達する。したがって、ポンプは常にエンジン速度で回転する。ポンプの機能は、流体を半径方向外方及び軸方向へタービンに向かって送るためにこの回転運動を利用することである。したがって、ポンプは遠心ポンプであり、流体を小さな半径の入口から大きな半径の出口へ送り、流体のエネルギを増大させる。トランスミッションクラッチとトルクコンバータクラッチとを係合させるための圧力は、ポンプハブによって駆動される、トランスミッションにおける付加的なポンプによって提供される。
【0005】
トルクコンバータ10において、流体回路は、ポンプ(インペラと呼ばれる場合もある)と、タービンと、ステータ(リアクタと呼ばれる場合もある)とによって構成されている。流体回路は、車両が停止させられている場合にエンジンを回転させ続け、運転手によって望まれた場合に車両を加速する。トルクコンバータは、減速歯車装置と同様に、トルク比によってエンジントルクを補足する。トルク比は、入力トルクに対する出力トルクの比である。トルク比は、タービン回転速度が低い又はゼロである(ストールとも呼ばれる)場合に最も高くなる。ストールトルク比は通常1.8〜2.2の範囲である。これは、トルクコンバータの出力トルクが入力トルクよりも1.8〜2.2倍だけ大きいことを意味する。しかしながら、出力速度は入力速度よりも著しく低い。なぜならば、タービンは出力部に結合されておりかつ回転していないが、入力部はエンジン速度で回転しているからである。
【0006】
タービン38は、車両を推進するために、ポンプ37から受け取る流体エネルギを利用する。タービンシェル22はタービンハブ19に結合されている。タービンハブ19は、タービントルクをトランスミッションシャフト43に伝達するためにスプライン結合を利用する。入力軸は、トランスミッション8における歯車及び軸と、車軸ディファレンシャル9とを介して、車輪に結合されている。タービンブレードに衝突する流体の力は、トルクとしてタービンから出力される。軸方向スラスト軸受31は、構成要素を、流体によって与えられる軸方向の力から支持する。出力トルクが、静止中の車両の慣性を克服するのに十分であると、車両は動き始める。
【0007】
流体エネルギはタービンによってトルクに変換された後、依然として流体には僅かなエネルギが残されている。小さな半径の出口44から出てくる流体は、通常は、ポンプの回転に対抗するような形式でポンプに進入する。ステータ39は、ポンプの加速を助けるために流体を方向転換させるために使用され、これにより、トルク比を増大させる。ステータ39は一方向クラッチ46を介してステータシャフト45に結合されている。ステータシャフトはトランスミッションハウジング47に結合されており、回転しない。一方向クラッチ46は、ステータ39が低速比において回転するのを阻止する(低速比では、ポンプがタービンよりも速く回転する)。タービン出口44からステータ39に進入する流体は、ステータブレード48によって回転させられ、回転方向でポンプ37に進入する。
【0008】
ブレードの入口角度及び出口角度、ポンプ及びタービンシェルの形状、トルクコンバータの総直径とが、その性能に影響する。設計パラメータは、トルク比と、効率と、エンジンを"ランアウェイ"させることなくエンジントルクを吸収するためのトルクコンバータの能力とを含む。これは、トルクコンバータが小さすぎ、ポンプがエンジンを減速させることができない場合に起こる。
【0009】
低速比においては、トルクコンバータは正常に機能し、車両が静止した状態でエンジンを回転させ、増大した性能のためにエンジントルクを補足する。1よりも小さな速度比では、トルクコンバータの効率は100%に満たない。タービンの回転速度がポンプの回転速度に近づくにしたがって、トルクコンバータのトルク比は、約1.8〜2.2から、約1のトルク比まで次第に減少する。トルク比が1に達したときの速度比はカップリングポイントと呼ばれる。このポイントにおいては、ステータに進入する流体はもはや方向転換される必要はなく、ステータにおける一方向クラッチが、流体を、ポンプ及びタービンと同じ方向に回転させる。ステータが流体を方向転換していないので、トルクコンバータから出力されるトルクは、トルク入力と同じである。流体回路全体はユニットとして回転する。
【0010】
最大トルクコンバータ効率は、流体における損失に基づき92〜93%に限定される。したがって、トルクコンバータクラッチ49は、トルクコンバータ入力部を出力部に機械的に結合するために使用され、効率を100%に改善する。クラッチピストンプレート17は、トランスミッションコントローラによって命令されると、液圧によって作動させられる。ピストンプレート17は、内径においてOリング18によってタービンハブ19に対してシールされており、外径において摩擦材料リング51によってカバー11に対してシールされている。これらのシールは、圧力チャンバを形成し、ピストンプレート17をカバー11と係合させる。この機械的な結合は、トルクコンバータ流体回路をバイパスする。
【0011】
トルクコンバータクラッチ49の機械的結合は、ドライブトレーンに、より多くのエンジンねじれ変動を伝達する。ドライブトレーンが基本的にばね質量系であるので、エンジンからのねじれ変動は、系の固有振動数を励起することができる。ダンパは、ドライブトレーンの固有振動数を、駆動範囲から外れさせるように使用される。ダンパは、エンジン7及びトランスミッション8と直列に配置されたばね15を有しており、これにより、系の有効ばね定数を減衰させ、固有振動数を低下させる。
【0012】
トルクコンバータクラッチ49は、4つの構成要素、すなわちピストンプレート17と、カバープレート12及び16と、ばね15と、フランジ13とを有している。カバープレート12及び16はトルクをピストンプレート17から圧縮ばね15に伝達する。カバープレートウィング52は、軸方向保持のためにばね15の周囲に形成されている。ピストンプレート17からのトルクは、リベット結合部を介してカバープレート12及び16に伝達される。カバープレート12及び16は、ばね窓の縁部と接触することによって、トルクを圧縮ばね15に提供する。両カバープレートは、ばねの中心軸線の両側においてばねを支持するように協働する。ばね力は、フランジばね窓縁部との接触によって、フランジ13に伝達される。場合によっては、フランジは、回転タブ又はスロットをも有しており、この回転タブ又はスロットは、カバープレートの一部に係合して、高トルク条件においてばねの過剰圧縮を阻止する。フランジ13からのトルクは、タービンハブ19と、トランスミッション入力軸43とに伝達される。
【0013】
エネルギ吸収は、望まれるならば、時にはヒステリシスと呼ばれる摩擦によって達せられることができる。ヒステリシスは、ダンパプレートの巻き上げ及び巻出しからの摩擦を含み、したがって実際の摩擦トルクの2倍である。ヒステリシスパッケージは、概して、ダイアフラムばね(又は皿ばね)14から成り、このダイアフラムばね(又は皿ばね)は、フランジ13と、カバープレート16の一方との間に配置されており、フランジ13を他方のカバープレート12と接触させる。ダイアフラムばね14によって加えられる力の大きさを制御することによって、摩擦トルクの大きさも制御されることができる。典型的なヒステリシスの値は、10〜30Nmの範囲である。
【0014】
ガス−金属アーク溶接(GMAW)としても知られる、金属溶接棒と不活性ガスによる溶接(MIG)を用いてトルクコンバータにおける構成部材を溶接することが知られている。あいにく、MIG溶接は溶加材の使用を必要とし、溶接プロセスの複雑さを高め、トルクコンバータのコストを増大させる。また、溶加材の使用はトルクコンバータにおいてスパッタ、及びその後の汚染を生じる。さらに、エネルギ源と溶加材とが同じ存在であることによる"溶融の欠落"により、MIG溶接によって液密シールを形成することは困難であるおそれがある。したがって、トルクコンバータにおける部材を溶接することに関する複雑さ、コスト及び汚染を低減することが長い間必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一般的な目的は、トルクコンバータにおける構成部材を溶接することに関連する、コスト、複雑さ及び汚染を減じる方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、溶加材を使用することなくトルクコンバータにおける構成部材を溶接する方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、トルクコンバータにおける構成部材の間に液密の継目を溶接する方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、溶加材を使用することなく溶接されたカバー及びポンプを備えたトルクコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明は広くは、トルクコンバータにおける第1及び第2の構成部材それぞれの第1及び第2の縁部分を重ね合わせ、第1の縁部分を第1の構成部材のための縁に向かってテーパさせ、エネルギを第1の縁部分に提供し、第1及び第2の縁部分の間に溶接を形成するために溶加材を用いることなく少なくとも第1の縁部分の一部を溶融させることを含む、トルクコンバータにおける構成部材を溶接する方法を含む。
【0020】
幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、第1の縁部分をテーパさせることが、縁においてほぼ半分だけ厚さを減じることを含むか、又は第1の縁部分をテーパさせることが第1の縁部分において半径を形成することを含む。幾つかの態様において、第1の構成部材は厚さを有しており、第1の面に半径を形成することが、ほぼ厚さの半分に等しい半径を形成することを含むか、又は第1の構成部材が厚さを有しており、第1の縁部分をテーパさせることが厚さを線形に減じることを含む。
【0021】
幾つかの態様において、エネルギを提供することが、第2の縁部分に対して約45゜の角度でエネルギを提供することを含む。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、エネルギを提供することが、縁からほぼ厚さの0.3倍の距離に配置された点にエネルギを提供することを含む。幾つかの態様において、第1及び第2の縁部分を溶接するために少なくとも第1の縁部分の一部を溶融させることが、第1及び第2の構成部材の間に液密シールを形成するか又は第1の縁部分に面取り部分を形成することを含む。
【0022】
幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、第1の構成部材の第1の縁部分を第2の構成部材の第2の縁部分と重ねることが、ほぼ厚さに等しい量だけ重ねることを含む。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、方法が、ほぼ厚さの4分の1に等しい量だけ第1及び第2の縁部分を分離させる。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、第1の縁部分が、ほぼ厚さに等しい長さを有する。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、第1の縁部分をテーパさせることが、第1の縁部分の第1の部分において厚さを次第に減じかつ第1の縁部分の第2の部分のために第1の部分の厚さよりも小さな均一な厚さを維持することを含む。
【0023】
幾つかの態様において、トルクコンバータがカバー及びポンプを有しており、第1の構成部材がカバー又はポンプのうちの一方であり、第2の構成部材がカバー又はポンプの他方である。
【0024】
本発明は、広くは、トルクコンバータにおける第1及び第2の構成部材それぞれの第1及び第2の重なり合う縁部分と、第1の縁部分から形成されておりかつ溶加材なしに第1及び第2の構成部材を結合するガス溶接とを有するトルクコンバータを含む。幾つかの態様において、溶接は第1及び第2の構成部材の間の液密シールであるか又は溶接は第1の構成部材における面取り部分である。幾つかの態様において、第1の構成部材は厚さを有しており、第1及び第2の構成部材は、重なっているところにおいて、ほぼ厚さの4分の1に等しい量だけ分離されているか、又は第1の構成部材が厚さを有しており、溶接がほぼ厚さに等しい長さを有している。幾つかの態様において、トルクコンバータがカバー及びポンプを有しており、第1の構成部材がカバー又はポンプのうちの一方であり、第2の構成部材がカバー又はポンプの他方である。
【0025】
本発明はさらに、広くは、カバー及びポンプの第1及び第2の縁部分をそれぞれ重合せ、第1の縁部分に、第1の構成部材のための縁に向かってテーパした半径を形成し、第1の縁部分に、溶加材を用いることなくエネルギを提供し、第1及び第2の構成部材を溶接するために第1の縁部分を溶融させ、溶接が面取り形状を有する、トルクコンバータにおける構成部材を溶接する方法を含む。
【0026】
本発明のこれらの目的及び利点並びにその他の目的及び利点は、本発明の好適な実施形態の以下の説明と、添付の図面及び請求項とから容易に認められるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の性質及び態様がここで、添付の図面を参照した発明の以下の詳細な説明により完全に説明される。
【0028】
まず、異なる図面における同じ参照符号は、発明の同じ又は機能的に類似の構造エレメントを表していることが認識されるべきである。本発明は、現時点で好適な態様であると考えられるものに関して説明されるが、請求項に記載の発明は開示された態様に限定されないと理解されるべきである。
【0029】
さらに、発明は、記載された特定の方法、材料及び変更に限定されず、もちろん変更することができる。ここで使用されている用語は、特定の態様だけを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定される。
【0030】
特に定義されない限りは、ここで使用されている全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者にとって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。ここに説明されたものと同じ又は均等のあらゆる方法、装置又は材料が発明の実施又は試験において使用されることができるが、好適な方法、装置及び材料がここでは説明されている。
【0031】
図7は、構成部材の間の本発明による溶接された継目100を備えた、トルクコンバータの部分的な断面図である。
【0032】
図8は、本発明の溶接前の、図7に示されたトルクコンバータのための構成部材を示す部分的な断面図である。
【0033】
図9は、付加的な詳細を示す、図8の部分的な断面図である。以下の説明は図7から図9までを参照すべきである。図8及び図9は、本発明による溶接、特に図7に示された溶接100を形成するプロセスを示している。トルクコンバータ111は構成部材112及び114を有する。幾つかの態様において、構成部材112はトルクコンバータのためのカバー又はトルクコンバータのためのポンプの一方であり、構成部材114はカバー又はポンプの他方である。図7において、構成部材112はトルクコンバータカバーであり、構成部材114はポンプシェルである。しかしながら、幾つかの態様(図示せず)において、構成はその逆であり、シェルがカバーの外周に被さっている、すなわちシェルがカバーの半径方向外側に配置されている。構成部材をガス溶接する本発明による方法はトルクコンバータの他の構成部材に適用されることができる。トルクコンバータは、他の構成部材の間に本発明の溶接を有することができる。
【0034】
構成部材112は縁部分116を有しており、この縁部分は、構成部材114の縁部分118に被さっている。概して、縁部分116は、縁部112の厚さを減じるために縁120まで、又は縁120に向かってテーパされている。概して、縁部分116の厚さ減少すなわちテーパは、本発明による溶接プロセスを容易にするために行われている。図7から図9までには、他方の構成部材に被さる構成部材の厚さが減じられている。しかしながら、幾つかの態様(図示せず)においては、他方の構成部材の下側に重なる構成部材、すなわち他方の構成部材の半径方向内側に配置された構成部材の厚さが減じられている。しかしながら、以下の説明は本発明の溶接された継目に関するものであり、本発明による溶接された継目は、図示された構成、比率、向き及び形状に制限されることはなく、その他の構成、比率、向き及び形状は、請求項に記載された発明の精神及び範囲に含まれる。
【0035】
構成部材112及び114は量124だけ重なっている。幾つかの態様では、量124の最小値は厚さ122に等しい。構成部材112及び114は距離125によって分離されている。幾つかの態様では、距離125は、厚さ122の約4分の1までに制限されている。部分116は長さ126を有している。幾つかの態様においては、長さ126は厚さ122に等しい。構成部材112は、構成部材114とは反対側に面した面128を有している。概して、面128は、部分116においてテーパを生じるように変更されている。幾つかの態様において、テーパを生じるように面128において半径130が形成されており、この半径は、厚さ122の半分に等しい。幾つかの態様において、部分116は、この部分116の厚さが次第に減じられているセグメントすなわち部分、例えば半径130を有している。したがって、部分116の残りの部分若しくはセグメント、例えば部分132は、均一な厚さ、例えば厚さ134に維持されている。セグメント132は実質的に、溶接100を形成するために溶融されるストック材料を提供する。幾つかの態様(図示せず)において、厚さ122は部分116において線形にすなわち均一に減じられている。つまり、面128は、部分116において直線的な断面線を形成する。幾つかの態様において、部分116は、ほぼ厚さ122の半分に等しい、端部120における厚さ134を有している。
【0036】
エネルギ源138は焦点すなわち線140に沿って縁部分116にエネルギを提供する。図8及び図9に示されているように、金属−不活性ガス溶接プロセスのために必要とされるような溶加材は、溶接100を形成するために使用されない。すなわち、溶接100は溶加材を用いることなく形成される。幾つかの態様において、線140と、構成部材114、特に面144、構成部材112に面した面、との間の角度142は、約45゜である。幾つかの態様において、線140は、ほぼ厚さ122の0.3倍に等しい、端部140からの距離143に到達させられる。幾つかの態様において、エネルギ源138はプラズマ溶接機である。しかしながら、本発明はプラズマ溶接機に限定されず、レーザ溶接機又はガスタングステンアーク溶接(GTAW)/(TIG)溶接機を含むがこれらに限定されないその他のエネルギ源が使用されることができる。
【0037】
図10は、溶接100が完了した、図8の部分的な断面図である。エネルギ源138は、少なくとも縁部分116の一部を溶融させ、溶接100を形成し、この溶接は、構成部材112及び114を溶接する、すなわち固定的に結合する。以下の説明は図7から図10までを参照すべきである。幾つかの態様において、溶接、若しくは溶接脚部100は、厚さ122にほぼ等しい長さ148と、厚さ122と間隙125とを足した分に等しい厚さ150、つまりこの場合には厚さ122の1.25倍にほぼ等しい厚さ、とを有している。溶接100は、構成部材122及び114の間に液密シールを形成する。幾つかの態様において、溶接100は、縁部分116に面取り部152を形成する。
【0038】
構成部材112、特に部分116は、溶加材を使用することなく構成部材112と114との間に溶接100を形成するように操作されかつ溶融される。すなわち、部分116は流れ、構成部材114との溶接を形成するために状態及び形状を変化させる。概して、構成部材112は、溶接100の形成を可能にするために上述のように操作される。例えば、特に端部156における構成部材114の厚さは変更される必要がない。幾つかの態様(図示せず)において、厚さ154又は端部156は変更される。幾つかの態様において、構成部材112及び部分116が、溶接100を生ぜしめるために操作されるので、例示のために上に示された非制限的な寸法及び比率は、構成部材112の寸法、特に厚さ122に相関している。
【0039】
部分116における材料の量は、溶接100の寸法を変更するために、例えば半径130又は厚さ122を変更することによって、変更されることができる。しかしながら、溶接プロセスの速度は対応する調整を必要とする。
【0040】
図11は、トルクコンバータにおける構成部材を溶接するための本発明の方法を示すフローチャートである。図11に示された方法は、分かり易くするために番号のついた一連のステップとして示されているが、明らかに述べられない限りは順序は番号から推測されるべきではない。方法はステップ200において開始する。ステップ202は、トルクコンバータにおける第1及び第2の構成部材の第1及び第2の縁部分をそれぞれ重ねる。ステップ204は、第1の構成部材のために第1の縁部分を縁に向かってテーパさせる。ステップ206は、溶加材なしに第1の縁部分にエネルギを提供する。ステップ208は、第1及び第2の構成部材を溶接するために少なくとも第1の縁部分の一部を溶融させる。
【0041】
幾つかの態様において、第1の構成部材は厚さを有しており、ステップ204は縁において約半分だけ厚さを減じることを含むか、又は第1の縁部分は、第2の縁部分とは反対側に面した面を含んでおり、ステップ204は、第2の縁部分とは反対側に面した面に半径を形成することを含む。幾つかの態様において、第1の構成部材は厚さを有しており、第1の面に半径を形成することが、ほぼ厚さの半分に等しい半径を形成することを含む。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、ステップ204が厚さを線形に減じることを含む。
【0042】
幾つかの態様において、第2の縁部分が、第1の縁部分に面した面を有しており、ステップ206が、第1の縁部分に面した面に対して所定の角度でエネルギを提供することを含む。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、ステップ206が、縁からほぼ厚さの0.3倍の距離に配置された点にエネルギを提供することを含む。幾つかの態様において、ステップ206は、第1及び第2の構成部材の間に液密シールを形成すること又は第1の縁部分に面取り部分を形成することを含む。
【0043】
幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、ステップ202が、ほぼ厚さに等しい量だけ重ねることを含む。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、ステップ203が、ほぼ厚さの4分の1に等しい量だけ第1及び第2の縁部分を分離させる。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、第1の縁部分が、ほぼ厚さに等しい長さを有する。幾つかの態様において、第1の構成部材が厚さを有しており、ステップ204が、第1の縁部分の第1の部分において厚さを次第に減じかつ第1の縁部分の第2の部分のために第1の部分の厚さよりも小さな均一な厚さを維持する。
【0044】
幾つかの態様において、トルクコンバータがカバー及びポンプを有しており、第1の構成部材がカバー又はポンプのうちの一方であり、第2の構成部材がカバー又はポンプの他方である。
【0045】
したがって、本発明の目的は効率的に達成されるが、発明に対する修正及び変更が当業者に容易に明らかであるべきであり、これらの修正は、請求項に記載された発明の精神及び範囲に含まれるものである。前記説明は、本発明の例を示しており、限定するものと考えられるべきでないことも理解される。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明のその他の実施形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、ドライブトレーンにおけるトルクコンバータの関係及び機能を説明することを助けるための、自動車における動力伝達経路の概略的なブロック線図である。
【図2】自動車のエンジンに固定されて示されている、従来のトルクコンバータの断面図である。
【図3】図2に示された線3−3に沿って見た、図2に示されたトルクコンバータの平面図である。
【図4】概して図3に示された線4−4に沿って見た、図2及び図3に示されたトルクコンバータの断面図である。
【図5】図2に示されたトルクコンバータの第1の分解図であり、分解されたトルクコンバータを左から見たものとして示されている。
【図6】図2に示されたトルクコンバータの第2の分解図であり、分解されたトルクコンバータを右から見たものとして示されている。
【図7】構成部材の間の本発明による溶接された継目を備えた、トルクコンバータの部分的な断面図である。
【図8】本発明の溶接前の、図7に示されたトルクコンバータのための構成部材を示す部分的な断面図である。
【図9】付加的な詳細を示す、図8の部分的な断面図である。
【図10】溶接が完了した、図8の部分的な断面図である。
【図11】トルクコンバータにおける構成部材を溶接するための本発明の方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
100 溶接、 111 トルクコンバータ、 112,114 構成部材、 116,118 縁部分、 120 縁部、 122 厚さ、 124 量、 125 距離、 126 長さ、 128 面、 130 半径、 132 部分、 134 厚さ、 138 エネルギ源、 140 線、 142 角度、 143 距離、 144 面、 154 厚さ、 156 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータにおける構成部材を溶接する方法において、
前記トルクコンバータにおける第1及び第2の構成部材の第1及び第2の縁部分を重ね合わせ、
前記第1の縁部分を前記第1の構成部材のための縁に向かってテーパさせ、
溶加材なしに、前記縁部分にエネルギを提供し、
前記第1及び第2の構成部材の間に溶接を形成するように前記第1の縁部分を溶融させることを特徴とする、トルクコンバータにおける構成部材を溶接する方法。
【請求項2】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、前記縁部分をテーパさせることがさらに、前記縁において前記厚さをほぼ半分だけ減じることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記縁部分をテーパさせることがさらに、前記第1の縁部分に半径を形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、前記第1の縁部分に半径を形成することがさらに、ほぼ前記厚さの半分に等しい半径を形成することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、前記第1の縁部分をテーパさせることがさらに、前記厚さに等しい前記第1の縁部分の少なくとも一部を線形に減じることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
エネルギを提供することがさらに、前記第2の縁部分に対して約45゜の角度でエネルギを提供することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、エネルギを提供することがさらに、前記縁からほぼ前記厚さの0.3倍に等しい距離に配置された点に前記エネルギを提供することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
溶接を形成するために前記第1の縁部分を溶融させることがさらに、前記第1及び第2の構成部材の間に液密シールを形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
溶接を形成するために前記第1の縁部分を溶融させることがさらに、面取り部分の形状に前記溶接を形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記第1の構成部材が厚さを有しており、前記第1及び第2の構成部材の第1及び第2の縁部分をそれぞれ重ねることがさらに、ほぼ前記厚さに等しい量だけ重ねることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、前記方法がさらに、ほぼ前記厚さの4分の1に等しい量だけ前記第1及び第2の縁部分を分離させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、前記第1の縁部分がさらに、ほぼ前記厚さに等しい長さを有している、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記トルクコンバータがさらにカバー及びポンプを有しており、前記第1の構成部材が、前記カバー又は前記ポンプのうちの一方であり、前記第2の構成部材が、前記カバー又は前記ポンプのうちの他方である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記トルクコンバータがさらにカバー及びポンプを有しており、前記第1の構成部材が前記カバーであり、前記第2の構成部材が前記ポンプである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記第1の構成部材が厚さを有しており、前記第1の縁部分を前記第1の構成部材のための縁に向かってテーパさせることがさらに、前記第1の縁部分の第1の部分において前記厚さを次第に減じ、前記第1の縁部分の第2の部分のために、前記厚さよりも小さな均一な厚さを維持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
トルクコンバータにおいて、
該トルクコンバータにおける第1及び第2の構成部材の重なり合った第1及び第2の縁部分が設けられており、
前記第1の縁部分から形成されておりかつ溶加材なしに前記第1及び第2の構成部材を結合するガス溶接が設けられていることを特徴とする、トルクコンバータ。
【請求項17】
前記溶接が前記第1及び第2の構成部材の間の液密シールを含む、請求項16記載のトルクコンバータ。
【請求項18】
前記溶接が前記第1の構成部材における面取り部分を含む、請求項16記載のトルクコンバータ。
【請求項19】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、前記第1及び第2の構成部材が前記重なり合ったところにおいてほぼ前記厚さの4分の1に等しい量だけ分離されている、請求項16記載のトルクコンバータ。
【請求項20】
前記第1の構成部材がさらに厚さを有しており、前記溶接がさらに、ほぼ前記厚さに等しい長さを有する、請求項16記載のトルクコンバータ。
【請求項21】
さらにカバー及びポンプが設けられており、前記第1の構成部材が前記カバー又は前記ポンプのうちの一方であり、前記第2の構成部材が前記カバー又は第1のポンプのうちの他方である、請求項16記載のトルクコンバータ。
【請求項22】
さらにカバー及びポンプが設けられており、前記第1の構成部材が前記カバーであり、前記第2の構成部材が前記ポンプである、請求項16記載のトルクコンバータ。
【請求項23】
トルクコンバータにおける構成部材を溶接する方法において、
カバー及びポンプの第1及び第2の縁部分それぞれ重ね合わせ、
前記第1の縁部分に半径を形成し、該半径が前記第1の構成部材のための縁に向かってテーパしており、
溶加材なしに前記第1の縁部分にエネルギを提供し、
前記第1及び第2の構成部材を溶接するために前記第1の縁部分を溶融させることを特徴とする、トルクコンバータにおける構成部材を溶接する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−57782(P2008−57782A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223590(P2007−223590)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany
【Fターム(参考)】