トルクセンサ及びこれを備えた電動パワーステアリング装置
【課題】接続端子と回路基板のスルーホールの間に位置ずれが発生しても、接続端子のコイル導線を巻付けている巻付け部位へのストレスを緩和し、接続端子及び回路基板の半田付け部位への影響を低減する。
【解決手段】回転軸に生じるトルクに応じてインピーダンスが変化する検出コイル13aを備えているトルク検出部15aと、検出コイルを構成するコイル導線の始端部及び終端部を一端に巻き付け、他端が前記トルク検出部から外方に突出している一対の接続端子19a,19bと、スルーホール20aを有する回路基板20とを備えている。接続端子19aは、連結部19a1に連結されて互いに平行に延在する巻付け部19a2と、基板接続部19a3とを有する棒状部材であり、巻き付け部の基部及び連結部の一部が端子固定部16dで固定され、端子固定部に沿って基板接続部が回路基板のスルーホールに向けて延在している。
【解決手段】回転軸に生じるトルクに応じてインピーダンスが変化する検出コイル13aを備えているトルク検出部15aと、検出コイルを構成するコイル導線の始端部及び終端部を一端に巻き付け、他端が前記トルク検出部から外方に突出している一対の接続端子19a,19bと、スルーホール20aを有する回路基板20とを備えている。接続端子19aは、連結部19a1に連結されて互いに平行に延在する巻付け部19a2と、基板接続部19a3とを有する棒状部材であり、巻き付け部の基部及び連結部の一部が端子固定部16dで固定され、端子固定部に沿って基板接続部が回路基板のスルーホールに向けて延在している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に発生するトルクを検出するトルクセンサ及びこれを備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の例えば電動パワーステアリング装置に適用されるトルクセンサとして、特許文献1に記載されたトルクセンサが知られている。
このトルクセンサは、コイルユニットと、このコイルユニットに電気的に接続される回路基板とから主として構成されている。
コイルユニットは、コイルボビンと、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と、ヨーク部材とを備えている。
コイルボビンは、円筒状に形成され、外周にコイル導線を巻回して検出コイルを形成するコイル巻回部と、このコイル巻回部の軸方向両端部に設けた一対のフランジ部とを備えている。
【0003】
巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子は、一方のフランジに設けた接続端子取付部から径方向外側に突出して固定されている直線状の棒部材であり、コイル導線の始端部及び終端部がそれぞれ巻付け接続されている。また、ヨーク部材は、コイルボビンを被嵌する部材である。
そして、コイルユニットの接続端子取付部から径方向外側に突出した巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子が、回路基板の所定位置に形成したスルーホールに差し込まれ、半田付けで接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−205952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動パワーステアリング装置は、回路基板、検出コイル及びその他の周辺部品の形状誤差により、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と回路基板のスルーホールの間に位置ずれが発生しやすい。
近年、電動パワーステアリング装置に用いられるトルクセンサには冗長性が必要とされ、複数の検出コイルを用いてフェールセーフを実現しているが、検出コイルの数が多くなると接続端子の数も増大するので、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と回路基板のスルーホールとの位置ずれ量も大きくなる。
【0006】
巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と回路基板のスルーホールとの位置ずれ量が大きくなると、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子の開放端側が変位しながらスルーホールに係合するので、接続端子のコイル導線を巻付けた部位(巻付け部)に大きなストレスが加わるとともに、半田付け部位に悪影響を与えるおそれがある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、接続端子と回路基板のスルーホールの間に位置ずれが発生しても、接続端子のコイル導線を巻付けている巻付け部位へのストレスを緩和し、接続端子及び回路基板の半田付け部位への影響を低減することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るトルクセンサは、回転軸に生じるトルクに応じてインピーダンスが変化する検出コイルを備えているトルク検出部と、前記検出コイルを構成するコイル導線の始端部及び終端部を一端に巻き付け、他端が前記トルク検出部から外方に突出している一対の接続端子と、前記一対の接続端子を挿通するスルーホールを有し、前記検出コイルのインピーダンス変化に基づいて前記トルクを演算するトルク演算回路を搭載した回路基板と、を備え、前記接続端子は、連結部に連結されて互いに平行に延在する短尺な巻付け部と長尺な基板接続部とを有する略J字形状に折曲された棒状部材であり、前記巻き付け部の基部及び前記連結部の一部が前記トルク検出部の端子固定部で固定され、前記端子固定部に沿って前記基板接続部が前記回路基板の前記スルーホールに向けて延在している。
【0008】
また、本発明に係るトルクセンサは、前記トルク検出部が、前記コイル導線が巻き付いて前記検出コイルを形成する中空円筒形状のコイルボビンを備え、前記端子固定部は、前記コイルボビンの軸方向の一端に形成したフランジの外周の一部に一体に設けられていることが好ましい。
また、本発明に係るトルクセンサは、前記トルク検出部が、同一形状及び同一寸法の前記検出コイル、前記一対の接続端子及び前記端子固定部を備えた一対のコイルユニットで構成されており、一方のコイルユニットの正面に他方のコイルユニットの裏面を対面させて配置し、前記一方のコイルユニットの前記端子固定部と、前記他方のコイルユニットの前記端子固定部とが、これらコイルユニットの中心点を通る線に対して偏倚した位置に設けられていることが好ましい。
さらに、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、上述したトルクセンサを備え、前記トルクセンサが検出した前記トルクに基づいてステアリング機構に伝達する操舵補助トルクを発生する電動モータを駆動して操舵補助制御を行う操舵補助制御部を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るトルクセンサによると、接続端子の基板接続部は、変形自在な十分な長さを有しているので基板接続部と回路基板のスルーホールとの位置ずれを吸収し、容易に半田付け作業を行なうことができる。また、検出コイルのコイル導線が巻き付けられている接続端子の巻付け部の基部は端子固定部に固定されているので、前述した位置ずれによるストレスを緩和することができ、接続端子とスルーホールの接続部位に悪影響を与えない。
また、上記効果を有するトルクセンサを使用して電動パワーステアリング装置を構成するので、トルクセンサの組付けを容易にすることができ、全体の組立工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す電動パワーステアリング装置の主要部を示す断面図である。
【図2】上記電動パワーステアリング装置に適用し得るトルク検出部の構成を示す斜視図である。
【図3】トルク検出部を構成する一方のコイルユニットを示す図である。
【図4】他方のコイルユニットを示す図である。
【図5】同一形状及び同一寸法の一対のコイルユニットからなるトルク検出部を軸方向から示した図である。
【図6】トルク検出部を上方から示した図である。
【図7】接続端子と回路基板のスルーホールとを示した図である。
【図8】センサシャフト部の表面の凸条と円筒部材の窓配置を説明する図である。
【図9】トルクと検出コイルのインダクタンスとの関係を示す特性線図である。
【図10】トルク演算回路を示すブロック図である。
【図11】トルク検出部の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の主要部を示す断面図であり、図2は、本発明に係るトルクセンサの構成を示す斜視図である。
図1において、5は電動パワーステアリング装置EPSを構成するハウジングであって、このハウジング5は入力軸側ハウジング部5aと出力軸側ハウジング部5bとに2分割された構造を有する。入力軸側ハウジング部5aの内部の中心開口5dには、入力軸1が軸受6aによって回転自在に支持されている。また、出力軸側ハウジング部5bの内部には出力軸2が軸受6b及び6cによって回転自在に支持されている。
【0012】
そして、入力軸1及び出力軸2は入力軸1の内部に配設されたトーションバー3を介して連結されている。
入力軸1、トーションバー3及び出力軸2は同軸に配置されており、入力軸1とトーションバー3とはピン結合し、また、トーションバー3と出力軸2とはスプライン結合又はセレーション結合している。図1において、入力軸1の突出端には、図示されていないステアリングホイールが一体的に取り付けられている。また、出力軸2には入力軸1とは反対側にピニオン軸2aが一体的に形成されており、ピニオン軸2aはラック4と噛合して公知のラックアンドピニオン式ステアリング機構を構成している。
【0013】
また、出力軸2には、これと同軸で且つ一体に回転するウォームホイール7が固着されており、図示されていない電動モータで駆動されるウォーム8と出力軸側ハウジング部5b内で噛合している。ウォームホイール7は金属製のハブ7aに合成樹脂製の歯部7bが一体的に固定されている。電動モータの回転力は、ウォーム8及びウォームホイール7を介して出力軸2に伝達され、電動モータの回転方向を適宜切り換えることにより、出力軸2に任意の方向の操舵補助トルクが付与される。
【0014】
次に、図1〜図7を参照して入力軸1及び出力軸2間のトルクを検出するトルクセンサTSを構成するトルク検出部10の構成を説明する。
トルク検出部10は、入力軸1に形成されたセンサシャフト部11と、入力軸側ハウジング部5aの内側に配置された1対の検出コイル13a及び13bを備えたコイルユニット15と、センサシャフト部11及びコイルユニット15の間に配置された円筒部材12とから構成される。
センサシャフト部11の表面には、図2に示すように、軸方向に延びた複数例えば9本の凸条11aを円周方向に沿って等間隔に形成するように軸方向溝11bが形成されている。
【0015】
また、センサシャフト部11の外側には、センサシャフト部11に接近して導電性で且つ非磁性の材料、例えばアルミニウムで構成された円筒部材12がセンサシャフト部11と同軸に配置されており、円筒部材12の延長部12eは出力軸2の端部2eの外側に固定されている。
円筒部材12には、前記したセンサシャフト部11の表面の凸条11aに対向する位置に、円周方向に凸条11aに対応する等間隔で配置された複数個(図2では9個)の長方形の窓12aからなる第1の窓列と、前記第1の窓列から軸方向にずれた位置に、前記窓12aと同一形状で、円周方向の位相が異なる複数個(図2では9個)の長方形の窓12bからなる第2の窓列とが設けられている。
円筒部材12の外周は、入力軸側ハウジング部5aの内部に固定されたコイルユニット15で包囲されている。
【0016】
コイルユニット15は、検出コイル13aを収容した第1コイルユニット15aと、検出コイル13bを収容した第2コイルユニット15bとで構成されている。
第1コイルユニット15aは、図3(a),(b)に示すように、軸方向両端側の外径がそれぞれ拡径した非磁性材料からなる段付き中空円筒状のコイルボビン16と、コイルボビン16の外周にコイル導線を巻回して形成した検出コイル13aと、検出コイル13aを覆うようにコイルボビン16の軸方向一方側から被嵌した磁性材料からなるヨーク部材17と、コイルボビン16の軸方向他方側に配置した円環状のカバー部材18と、検出コイル13aの両端に接続した一対の接続端子19a,19bとを備えている。
【0017】
コイルボビン16は、図3(b)に示すように、コイル巻回部16aと、このコイル巻回部16aの一端に設けられ、ヨーク部材17に覆われる第1フランジ部16bと、コイル巻回部16aの他端に設けられた第2フランジ部16cと、第2フランジ部16cの外周の一部から突出して設けられた接続端子取付け部16dとで構成されている。
接続端子取付け部16dは、図3(a)に示すように、第1コイルユニット15aの中心点Oを通る垂直線VLに対して所定距離ΔLだけ左方に偏倚した位置とされている。
【0018】
この接続端子取付け部16dには、接続端子19a,19bの一部が、例えばインサート成形により埋め込まれて外方に突出しており、一対の接続端子19a,19bの一部を埋め込んだ接続端子取付け部16d、コイル巻回16a、第1フランジ部16b及び第2フランジ部16cが、樹脂モールド成型によって一体成型されている。
コイルボビン16のコイル巻回部16a、第1フランジ部16b及び第2フランジ部16cで画成された凹部に、コイル導線が巻回されて検出コイル13aが形成されている。
【0019】
一対の接続端子19a,19bの一方の接続端子19aは、図3(b)に示すように、連結部19a1に一端側が連結されながら互いに平行に延在している短尺な巻付け部19a2及び長尺な基板接続部19a3を備えた略J字形状に折曲された棒状部材である。
この接続端子19aは、巻き付け部19a2の基部及び連結部19a1の一部が接続端子取付け部16dに埋め込まれ、巻き付け部19a2の先端が接続端子取付け部16dの外方を向く端面から外方に突出し、接続端子取付け部16dの側面に沿って基板接続部19a3が外方に突出した状態で配置されている。
【0020】
また、一対の接続端子19a,19bの他方の接続端子19bも、一方の接続端子19aと同一形状の連結部(不図示)、巻付け部19b2及び基板接続部19b3を有している。
そして、図3(b)に示すように、検出コイル13aの巻始め端部が一方の接続端子19aの巻付け部19a2に接続され、検出コイル13aの巻終り端部が他方の接続端子19bの巻付け部19b2(図6参照)に接続されている。
【0021】
第2コイルユニット15bは、図4に示すように、第1コイルユニット15aと同形状のコイルボビン16と、コイルボビン16の外周にコイル導線を巻回して形成した検出コイル13bと、検出コイル13bを覆うようにコイルボビン16の軸方向一方側から被嵌した磁性材料からなるヨーク部材17と、コイルボビン16の軸方向他方側に配置した円環状のカバー部材18と、検出コイル13bの両端に接続した一対の接続端子19c,19d(図5参照)とを備えている。
【0022】
コイルボビン16は、コイル巻回部16aと、このコイル巻回部16aの一端に設けられ、ヨーク部材17に覆われる第1フランジ部16bと、コイル巻回部16aの他端に設けられた第2フランジ部16cと、第2フランジ部16cの外周の一部から突出して設けられた接続端子取付け部16dとで構成されている。
第2コイルユニット15bの接続端子取付け部16dも、図示しないが、第1コイルユニット15aの接続端子取付け部16dと同様に、中心点Oを通る垂直線VLに対して所定距離ΔLだけ左方に偏倚した位置とされている。
【0023】
接続端子19cは、連結部19c1に一端側が連結されながら互いに平行に延在している短尺な巻付け部19c2及び長尺な基板接続部19c3を備えた略J字形状に折曲された棒状部材であり、巻き付け部19c2の基部及び連結部19c1の一部が接続端子取付け部16dに埋め込まれ、巻き付け部19c2の先端が接続端子取付け部16dの外方を向く端面から外方に突出し、接続端子取付け部16dの側面に沿って基板接続部19c3が外方に突出した状態で配置されている。
【0024】
また、他方の接続端子19dも、一方の接続端子19cと同一形状の連結部(不図示)、巻付け部19d2及び基板接続部19d3を有している。
そして、検出コイル13bの巻始め端部が一方の接続端子19cの巻付け部19c2に接続され、検出コイル13bの巻終り端部が他方の接続端子19dの巻付け部19d2(図6参照)に接続されている。
【0025】
上記構成の同一形状及び同一寸法とした第1コイルユニット15a及び第2コイルユニット15bを、一方のユニットをその正面を向けて配置した状態でその裏面側に他方をそのユニットの裏面を対面させて配置することで、コイルユニット15が形成される。
このコイルユニット15は、図6に示すように、第1コイルユニット15aの基板接続部19a3,19b3及び第2コイルユニット15bの基板接続部19c3,19d3が、コイルユニット15の厚さ方向中央において周方向に整列した状態となる。
【0026】
そして、コイルユニット15は、図1に示すように、接続端子19a〜19dを上方に向けた状態で入力軸側ハウジング部5aの内側に配置し、入力軸側ハウジング部5aの上部側に形成した基板装着凹部5cに装着された回路基板20に接続されている。
コイルユニット15の接続端子19a〜19dと回路基板20との接続は、図7に示すようにして行われる。すなわち、回路基板20には、コイルユニット15の接続端子19a〜19dを接続する4つのスルーホール20a〜20dが基板接続部19a3〜19d3に対向して形成されている。そして、回路基板20を下降させてスルーホール20a〜20dに基板接続部19a3〜19d3を挿通し、回路基板20を基板装着凹部5c内にねじ止め等の固定手段で固定し、最後に、スルーホール20a〜20dと基板接続部19a3〜19d3とを半田21によって半田付けすることにより電気的に接続する(図3(b)、図4参照)。
【0027】
図8(a),(b)は出力軸2側から見たセンサシャフト部の表面の凸条と円筒部材の窓配置を説明する図で、図8(a)は、基準位置(トーションバー3が捩れていない状態)におけるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと円筒部材12における第1の窓列の窓12aとの位置関係を示し、図8(b)は基準位置(トーションバー3が捩れていない状態)におけるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと円筒部材12における第2の窓列の窓12bとの位置関係を示す図である。
【0028】
窓12a、12bの角度aは軸方向溝11bに対向し窓12a、12bのない部分の角度bよりも小さく設定(a<b)され、凸条11aの先端の角度cは軸方向溝11bの開放端の角度dよりも小さく設定(c<d)される。これは、検出コイル13a及び13bのインピーダンスの変化を急峻にするためである。
図8(a),(b)から明らかなように、トーションバー3が捩れていない状態、即ち操舵トルクが零(0)の状態では、窓12aの時計方向端部にセンサシャフト部11の凸条11aの円周方向の反時計方向端部が位置し、窓12bの反時計方向端部に凸条11aの時計方向端部が位置するように、窓12a及び12bの円周方向の幅と凸条11aの幅、及び窓12a及び12bとの円周方向の相対位置関係が設定される。即ち、凸条11aに対する窓12aと12bとの円周方向の位置関係は互いに逆になっている。
【0029】
ここで、本発明に係る端子固定部が、接続端子取付け部16dに対応している。
操舵系が直進状態にあって操舵トルクが零である場合はトーションバー3には捩れが発生せず、入力軸1と出力軸2とは相対回転しない。したがって入力軸1の側にあるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと、出力軸2の側にある円筒部材12との間にも相対回転が生じない。
【0030】
一方、ステアリングホイールを操作して入力軸1に回転力が加わると、その回転力はトーションバー3を経て出力軸2に伝達される。このとき、出力軸2には舵輪と路面との間の摩擦力や出力軸2に結合されているステアリング機構のギヤの噛み合い等の摩擦力が作用する。このため、入力軸1と出力軸2との間を結合するトーションバー3に捩れが発生し、入力軸1の側にあるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと出力軸2の側にある円筒部材12との間に相対回転が生じる。
【0031】
円筒部材12に窓がない部位では、円筒部材12は導電性で且つ非磁性材で構成されていることから、検出コイル13a及び13bに交流電流を流して交番磁界を発生させると、円筒部材12の外周面にコイル電流と反対方向の渦電流が発生する。この渦電流による磁界とコイル電流による磁界とを重畳すると、円筒部材12の内側の磁界は相殺される。
【0032】
円筒部材12に窓が形成されている部位では、円筒部材12の外周面に発生した渦電流は、窓12a及び12bによって外周面を周回できないため、窓12a及び12bの端面に沿って円筒部材12の内周面側に回り込み、内周面をコイル電流と同方向に流れ、また隣の窓12a及び12bの端面に沿って外周面側に戻り、ループを形成する。つまり、検出コイル13a及び13bの内側に渦電流のループを、円周方向に周期的に配置した状態が発生する。コイル電流による磁界と渦電流による磁界とは重畳され、円筒部材12の内外には、円周方向に周期的に強弱変化する磁界と、中心に向かうほど小さくなる半径方向に勾配を持った磁界が形成される。円周方向の周期的な磁界の強弱は、隣り合う渦電流の影響を受ける窓12a及び12bの中心で強く、そこからずれるに従い弱くなる。
【0033】
円筒部材12の内側には、磁性材料からなるセンサシャフト部11が同軸に配置されており、その凸条11aは、窓12a及び12bと同じ周期で配置されている。磁界中に置かれた磁性体は磁化して磁束を生じるが、磁束の量は飽和するまでは磁界の強さに応じて大きくなる。このため、円筒部材12により円周方向の周期的な磁界の強弱と中心に向かうほど小さくなる半径方向に勾配を持った磁界とにより、センサシャフト部11に発生する磁束は、円筒部材12とセンサシャフト部11との相対的な位相により増減する。磁束が最大となる位相は、円筒部材12の窓12a及び12bの中心とセンサシャフト部11の凸条11aの中心とが一致した状態で、磁束の増減に応じて検出コイル13a及び13bのインダクタンスも増減し、略正弦波状に変化する。
【0034】
トルクが作用しない状態では、インダクタンスが最小となる位相(窓12a及び12bと凸条11aとが重なっていない位相)に位置に設定されているから、トルクが作用して
トーションバー3が捩れ、センサシャフト部11と円筒部材12との間に位相差が生じると、2つの検出コイル13a及び13bのインダクタンスは、一方は増加し、他方は減少する。
【0035】
図9は操舵トルクTと検出コイル13a(又は13b)のインダクタンスの変化との関係を示す特性線図で、横軸は操舵トルクT、縦軸はインダクタンスLを示す。
右操舵トルク発生時は、図8(a),(b)においてセンサシャフト部11が時計方向に回転するから、図4に示すように、操舵トルクTが増大するにつれ検出コイル13aのインダクタンスL13aは減少し、検出コイル13bインダクタンスL13bは増加する。
【0036】
また、左操舵トルク発生時は、図8(a),(b)においてセンサシャフト部11が反時計方向に回転するから、図9に示すように操舵トルクTが増大するにつれ検出コイル13aのインダクタンスL13aは増加し、検出コイル13bのインダクタンスL13bのインダクタンスは減少する。
図9のインダクタンスL13a、L13bの特性は比例して出力される電圧にそのまま置き換えることができる。
【0037】
また、回路基板20には、接続端子19a〜19dが電気的に接続されてトルクを演算するトルク演算回路30が搭載されている。
図10に示すように、トルク演算回路30は、トルク検出部10の一対の検出コイル13a及び13bを使用して操舵トルクを検出するトルク検出系統を有するトルク演算部31を備えている。
【0038】
また、回路基板20は、トルク演算部31に所定周波数の交流信号を出力する交流信号源300と、トルク演算部31からそれぞれ出力されるメイントルク及びサブトルクが入力されるノイズフィルタ302及びノイズフィルタ302から出力されるフィルタ出力を、操舵補助用電動モータ41を操舵補助制御するコントロールユニット40に出力するコネクタ303を備えている。また、コネクタ303に入力される電源及び基準電源がノイズフィルタでフィルタ処理されて電源電圧V及び基準電圧Vrefとして交流信号源300とトルク演算部31とに供給される。
【0039】
ここで、交流信号源300は、所定周波数の交流信号を発生する発振部301と、この発振部301から出力される交流信号を電流増幅してトルク演算部31に供給する電流増幅部311を備えている。
トルク演算部31は、一対の検出コイル13a及び13bの一端例えば接続端子19a及び19cが互い接続されて接地され、他端例えば接続端子19b及び19dに抵抗R1a及びR1bが直列に接続され、これら抵抗R1a及びR1bの他端を互いに接続した構成を有するブリッジ回路310を備えている。
【0040】
このブリッジ回路310では、入力軸1にトルクが作用していない状態では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧がそれぞれ等しくなるように、つまり差分電圧が0となるように予め抵抗R1a、R1bの抵抗値が調整されている。
そして、ブリッジ回路310の抵抗R1a、R1bの接続点が交流信号源300の電流増幅部311に接続されて、交流電圧信号Voscが入力される。
【0041】
また、トルク演算部31は、ブリッジ回路310の検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号が入力されるとともに、交流電圧信号Voscが入力されたメイン増幅・全波整流部312と、このメイン増幅・全波整流部312から出力される整流信号が入力されるメイン平滑・中立調整部313を有する。ここで、メイン増幅・全波整流部312では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号の差分信号Vdefを算出し、この差分信号Vdefを増幅するとともに、整流して整流信号をメイン平滑・中立調整部313に出力する。また、メイン平滑・中立調整部313では、メイン増幅・全波整流部312から入力される整流信号を平滑化するとともに、中立電圧を調整してトルク検出信号としてノイズフィルタ302に出力する。そして、ノイズフィルタ302でフィルタ処理されたトルク検出信号がコネクタ303を介してメイントルク検出信号Tmとして操舵補助制御を行うコントロールユニット40に出力される。
【0042】
また、トルク演算部31は、ブリッジ回路310の検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号が入力されるとともに、交流電圧信号Voscが入力されたサブ増幅・全波整流部314と、このサブ増幅・全波整流部314から出力される整流信号が入力されるサブ平滑・中立調整部315を有する。ここで、サブ増幅・全波整流部314では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号の差分信号Vdefを算出し、この差分信号Vdefを増幅するとともに、整流して整流信号をサブ平滑・中立調整部315に出力する。また、サブ平滑・中立調整部315では、サブ増幅・全波整流部314から入力される整流信号を平滑化するとともに、中立電圧を調整してトルク検出信号としてノイズフィルタ302に出力する。そして、ノイズフィルタ302でフィルタ処理されたトルク検出信号がコネクタ303を介してサブトルク検出信号Tsとして操舵補助制御を行うコントロールユニット40に出力される。
【0043】
さらに、トルク演算部31は、例えば特開2006−267045号公報に記載されているように、交流電圧信号Vosc及びサブ増幅・全波整流部214から出力されるブリッジ回路310の差分信号Vdefに基づいて検出コイル13a又は13bと抵抗R1a又はR1bとの接触不良等をブリッジ回路310の差分電圧Vdefの変化で検出するとともに、基準電圧Vrefに対する位相ずれに基づいて回路系の異常を検出し、異常を検出したときに異常信号ABを出力する。すなわち、監視部316では、印加した交流信号の波形と、ブリッジ回路310の差分電圧Vdefの波形との位相差を検出し、位相差が所定値を超えたときに検出コイル13a,13b、抵抗R1a,R1b若しくはブリッジ回路310が異常であると判定して異常信号ABを出力する。
【0044】
この監視部316から出力される異常信号ABはサブ平滑・中立調整部315に供給され、このサブ平滑・中立調整部315では、異常信号ABが入力されると、出力するトルク検出信号を0Vに設定する。これにより、メイントルク信号との図4に示す電圧クロス特性のバランスが崩れることにより、コントロールユニット40が故障を検出することができる。このため、コントロールユニット40で操舵補助用電動モータ41の駆動に使用するメイン側のメイン平滑・中立調整部313には異常信号ABは入力されない。
【0045】
コントロールユニット40は、図10に示すように、トルクセンサTSからメイントルク検出信号Tm及びサブトルク検出信号Tsが入力されている。このコントロールユニット40は、入力されたメイントルク検出信号Tm及びサブトルク検出信号Tsに基づいて信号監視を行う異常判定部42と、メイントルク検出信号Tmに基づいて操舵補助制御を行って操舵補助用電動モータ41を駆動制御する操舵補助制御部33とを備えている。
【0046】
異常判定部42は、メイントルク検出信号Tmが所定値(例えば0.3V)以下か否かで断線や地絡を検出し、所定値(例えば4.7V)以上か否かで天絡を検出する。また、サブトルク検出信号Tsが所定値(例えば0.3V)以下か否かで断線や地絡を検出するとともに、トルク演算回路30の自己診断を行い、所定値(例えば4.7V)以上か否かで天絡を検出する。さらに、メイントルク検出信号Tmとサブトルク検出信号Tsの加算値が所定値(例えば5.3V)以上若しくは所定値(例えば4.7V)以下か否かで、図9に示す電圧クロス特性から外れる異常を検出する。
【0047】
そして、操舵補助制御部43では、上記異常判定部42によって異常が検出されない正常状態では、メイントルク検出信号Tmを用いて操舵補助電流指令値を演算し、演算した操舵補助電流指令値と、操舵補助用電動モータ41に供給するモータ電流の検出値との偏差を例えばPD制御処理して操舵補助電圧指令値を算出し、算出した操舵補助電圧指令値に基づいてモータ駆動回路44を制御する駆動信号を形成し、この駆動信号をモータ駆動回路44に出力する。
【0048】
ここで、サブトルク検出信号Tsはトルクセンサの異常監視に利用されるのみで、操舵補助用電動モータ41の駆動には利用されない。
異常判定部42で、トルクセンサTSのトルク検出系統(トルク演算部31及びブリッジ回路310)の異常が判定された場合に、操舵補助制御部43で、正常な過去トルク値を使用して操舵補助用電動モータ41を駆動し、操舵補助トルクを徐々に減少させるトルク漸減処理を行い、安全に操舵補助制御を停止させるフェールセーフモードに移行する。
【0049】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、入力軸1に連結された図示しないステアリングホイールが操舵されておらず、入力軸1及び出力軸2が相対回転することなく同一回転位相にあるものとする。
この状態では、入力軸1及び出力軸2間に介挿されたトーションバー3に捩じれが生じていない。このため、入力軸1に形成されたセンサシャフト部11の凸条11aは、図8(a)及び(b)に示すように、先端の反時計方向端部が窓12aの時計方向端部に位置するとともに、窓12bの反時計方向端部に位置する。
【0050】
この状態では、検出コイル13a及び13bで検出するインピーダンスが等しく中央値となり、ブリッジ回路310から出力される2つの交流出力電圧が等しくなる。このため、メイン増幅・全波整流部312では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号の差分信号Vdefを算出したときに、この差分信号Vdefが略零となる。この差分信号Vdefを増幅するとともに、整流して整流信号をメイン平滑・中立調整部313に出力する。このメイン平滑・中立調整部313では、メイン増幅・全波整流部312から入力される整流信号を平滑化するとともに、中立電圧を調整してトルク検出信号としてノイズフィルタ302に出力する。そして、ノイズフィルタ302でフィルタ処理されたトルク検出信号がコネクタ303を介してメイントルク検出信号Tmとしてコントロールユニット40に出力される。
【0051】
このため、コントロールユニット40では、操舵補助制御部43で、メイントルク検出
信号Tmに基づいて例えば操舵補助制御指令を演算し、この操舵補助制御電流指令と、電動モータ41で検出したモータ電流との偏差に基づいて操舵補助制御電圧を算出し、この操舵補助制御電圧に基づいてモータ駆動回路44に供給するゲート駆動電流を出力する。このとき、メイントルク検出信号Tmが零であるので、ゲート駆動電流も零となり、モータ駆動回路44からモータ電流の出力が停止される。このため、電動モータ41は停止状態を継続する。
【0052】
その後、図示しないステアリングホイールを例えば左操舵すると、トルクセンサTMのセンサシャフト部11の凸条11aが反時計方向に回動することにより、円筒部材12の窓12aに対向する凸条11aの外周面の面積が増加するが、窓12bに対向する凸条11aは窓12bから遠ざかる。
このため、検出コイル13aのインダクタンスLは増加し、検出コイル13bのインダクタンスLは減少し、検出コイル13a及び13bのインピーダンスが変化することから、メイン増幅・全波整流部312で算出される差分信号Vdefが例えば負方向に増加し、これが増幅されると共に、全波整流されたトルク検出値Tmがメイン平滑・中立調整部313に出力される。このメイン平滑・中立調整部313で平滑化及び中立位置が調整されてトルク検出値Tmがコントロールユニット40に出力される。
【0053】
したがって、操舵補助制御部43で,検出されるトルク検出値Tmに基づいて操舵補助電流指令値が算出され、この操舵補助電流指令値と、モータ電流検出値との偏差に基づいてPI制御等を行って電圧指令値を算出し、この電圧指令値に基づいてモータ駆動回路44から駆動電流が電動モータ41に供給される。このため、電動モータ41から操舵補助力が発生され、この操舵補助力がウォーム8及びウォームホイール7を介して出力軸2に伝達されることにより、出力軸2が反計方向に回転駆動されて軽い操舵力で操舵することができる。
【0054】
同様に、ステアリングホイールを右操舵したときには、入力軸1が図8(a)及び(b)で見て時計方向に回転されるので、メイン増幅・全波整流部312で算出される差分信号Vdefが例えば正方向に増加し、電動モータ41で上記とは逆方向の操舵補助力が発生されて、出力軸2が時計方向に回転駆動されて軽い操舵力で操舵することができる。
【0055】
次に、本実施形態のトルクセンサTSのトルク検出部10の作用効果について説明する。
トルク検出部10のコイルユニット15を構成する第1コイルユニット15aの一対の接続端子19a,19bは、連結部19a1,19b1に一端側が連結されながら互いに平行に延在している短尺な巻付け部19a2,19b2及び長尺な基板接続部19a3,19b3を備えた略J字形状に折曲された棒状部材である。そして、巻き付け部19a2,19b2の基部及び連結部19a1,19b1の一部が、接続端子取付け部16dに埋め込まれ、巻き付け部19a2,19b2の先端が接続端子取付け部16dの外方を向く端面から外方に突出し、接続端子取付け部16dの側面に沿って基板接続部19a3,19b3が外方に突出した状態で配置されている。
【0056】
ここで、一対の接続端子19a,19bの基板接続部19a3,19b3は、変形自在な十分な長さを有しているので、基板接続部19a3,19b3と回路基板20のスルーホール20a,20bとの位置ずれを吸収して半田付けを行なうことができる。
また、検出コイル13aのコイル導線が巻き付けられている一対の接続端子19a,19bの巻付け部19a2,19b2の基部は、接続端子取付け部16dに埋め込まれているのでストレスを緩和することができ、半田付け部位に悪影響を与えるおそれがない。
【0057】
一方、コイルユニット15を構成する第2コイルユニット15bの一対の接続端子19c,19dも、前述した一対の接続端子19a,19bと同一構成であり、接続端子19c,19dの基板接続部19c3,19d3が、変形自在な十分な長さを有しているので、基板接続部19c3,19d3と回路基板20のスルーホール20c,20dとの位置ずれを吸収して半田付けを行なうことができる。
【0058】
また、検出コイル13bのコイル導線が巻き付けられている一対の接続端子19c,19dの巻付け部19c2,19d2の基部も接続端子取付け部16dに埋め込まれているのでストレスを緩和することができ、半田付け部位に悪影響を与えるおそれがない。
また、同一形状及び同一寸法とした第1コイルユニット15a及び第2コイルユニット15bを、一方のユニットをその正面を向けて配置した状態でその裏面側に他方をそのユニットの裏面を対面させてコイルユニット15を形成すると、第1コイルユニット15aの接続端子19a,19bを固定した接続端子取付け部16dと、第2コイルユニット15aの接続端子19c,19dを固定した接続端子取付け部16dとが、中心点Oを通る垂直線VLに対して所定距離ΔLだけ左右に偏倚した位置となり、第1コイルユニット15aの基板接続部19a3,19b3及び第2コイルユニット15bの基板接続部19c3,19d3が、コイルユニット15の厚さ方向中央において周方向に整列した状態となる。このため、基板接続部19a3,19b3、19c3,19d3に対して回路基板20のスルーホール20a〜20dを上方から容易に挿通し、半田付け作業を容易に行なうことができる。
【0059】
また、上記効果を有するトルクセンサTSを使用して操舵系に入力される操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに基づいて操舵補助電流指令値を算出し、算出した操舵補助電流指令値と、電動モータのモータ電流検出値との偏差に基づいてモータ駆動回路44を駆動する電圧指令値を算出するので、トルクセンサTSの装着を容易に行うことができるとともに、トルク検出部10の接続端子と回路基板との接続を正確に行うことができ、電動パワーステアリング装置の製造コストを低減できるとともに、信頼性を向上させることができる。
なお、実施形態においては、トルク検出部10の接続端子が4本である場合について説明したが、第1及び第2コイルユニット15a,15b側で接地側の端部を互いに接続し、接続端子を3本とすることもできる。
【0060】
また、上記実施形態においては、トルクセンサTSのトルク検出部10の第1及び第2コイルユニット15a,15bに、それぞれ検出コイル13a及び13bを内装する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図11に示すように、シールド板部26を介して検出コイル13c及び13dを内装する一対の第1及び第2コイルユニット15c,15dを設けて、冗長性を増して信頼性を向上させるようにしてもよい。このときには、トルク検出部10の接続端子が19a〜19hの8本に増加するので、これに応じて、ヨーク部材17の開口部及び回路基板20のスルーホールの数をそれぞれ8個に増加させるとともに、トルク演算回路30にトルク演算部31を設けるようにすればよい。この場合にも接続端子数は接地側の接続端子を互いに接続して合計6本とすることができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、コントロールユニット40側に異常判定部42を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トルク演算回路30側に異常判定部42を設け、この異常判定部32の異常判定結果をコントロールユニット40に通知するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明によるトルクセンサTSを電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動パワーステアリング装置以外にも回転軸のトルクを検出する場合に本発明によるトルクセンサTSを適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…入力軸、2…出力軸、2a…ピニオン軸、2e…端部、3… トーションバー、4…ラック、5…ハウジング、5a…入力軸側ハウジング部、5b…出力軸側ハウジング部、5c…基板装着凹部、5d…中心開口、5e…ヨーク収納部、5f…スリット、6a,6b…軸受、7…ウォームホイール、7a…ハブ、7b…歯部、8… ウォーム、10…トルク検出部、11…センサシャフト部、11a…凸条、11b…軸方向溝、12…円筒部材、12a,12b…窓、12e… 延長部、13a,13b…検出コイル、15…コイルユニット、15a…第1コイルユニット、15b…第2コイルユニット、16…コイルボビン、16a…コイル巻回部、16b…第1フランジ部、16c…第2フランジ部、16d…接続端子取付け部、17…ヨーク部材、18…カバー部材、19a〜19d…接続端子、19a1〜19d1…連結部、19a2〜19d2…巻付け部、19a3〜19d3…基板接続部、20…回路基板、20a〜20d…スルーホール、21…半田、30…トルク演算回路、31…トルク演算部、33…操舵補助制御部、40…コントロールユニット、41…操舵補助用電動モータ、42…異常判定部、43…操舵補助制御部、44…モータ駆動回路、214…サブ増幅・全波整流部、300…交流信号源、301…発振部、302…ノイズフィルタ、303…コネクタ、310…ブリッジ回路、311…電流増幅部、312…メイン増幅・全波整流部、313…メイン平滑・中立調整部、314…サブ増幅・全波整流部、315…サブ平滑・中立調整部、316…監視部
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に発生するトルクを検出するトルクセンサ及びこれを備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の例えば電動パワーステアリング装置に適用されるトルクセンサとして、特許文献1に記載されたトルクセンサが知られている。
このトルクセンサは、コイルユニットと、このコイルユニットに電気的に接続される回路基板とから主として構成されている。
コイルユニットは、コイルボビンと、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と、ヨーク部材とを備えている。
コイルボビンは、円筒状に形成され、外周にコイル導線を巻回して検出コイルを形成するコイル巻回部と、このコイル巻回部の軸方向両端部に設けた一対のフランジ部とを備えている。
【0003】
巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子は、一方のフランジに設けた接続端子取付部から径方向外側に突出して固定されている直線状の棒部材であり、コイル導線の始端部及び終端部がそれぞれ巻付け接続されている。また、ヨーク部材は、コイルボビンを被嵌する部材である。
そして、コイルユニットの接続端子取付部から径方向外側に突出した巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子が、回路基板の所定位置に形成したスルーホールに差し込まれ、半田付けで接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−205952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動パワーステアリング装置は、回路基板、検出コイル及びその他の周辺部品の形状誤差により、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と回路基板のスルーホールの間に位置ずれが発生しやすい。
近年、電動パワーステアリング装置に用いられるトルクセンサには冗長性が必要とされ、複数の検出コイルを用いてフェールセーフを実現しているが、検出コイルの数が多くなると接続端子の数も増大するので、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と回路基板のスルーホールとの位置ずれ量も大きくなる。
【0006】
巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子と回路基板のスルーホールとの位置ずれ量が大きくなると、巻き始め接続端子及び巻き終り接続端子の開放端側が変位しながらスルーホールに係合するので、接続端子のコイル導線を巻付けた部位(巻付け部)に大きなストレスが加わるとともに、半田付け部位に悪影響を与えるおそれがある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、接続端子と回路基板のスルーホールの間に位置ずれが発生しても、接続端子のコイル導線を巻付けている巻付け部位へのストレスを緩和し、接続端子及び回路基板の半田付け部位への影響を低減することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るトルクセンサは、回転軸に生じるトルクに応じてインピーダンスが変化する検出コイルを備えているトルク検出部と、前記検出コイルを構成するコイル導線の始端部及び終端部を一端に巻き付け、他端が前記トルク検出部から外方に突出している一対の接続端子と、前記一対の接続端子を挿通するスルーホールを有し、前記検出コイルのインピーダンス変化に基づいて前記トルクを演算するトルク演算回路を搭載した回路基板と、を備え、前記接続端子は、連結部に連結されて互いに平行に延在する短尺な巻付け部と長尺な基板接続部とを有する略J字形状に折曲された棒状部材であり、前記巻き付け部の基部及び前記連結部の一部が前記トルク検出部の端子固定部で固定され、前記端子固定部に沿って前記基板接続部が前記回路基板の前記スルーホールに向けて延在している。
【0008】
また、本発明に係るトルクセンサは、前記トルク検出部が、前記コイル導線が巻き付いて前記検出コイルを形成する中空円筒形状のコイルボビンを備え、前記端子固定部は、前記コイルボビンの軸方向の一端に形成したフランジの外周の一部に一体に設けられていることが好ましい。
また、本発明に係るトルクセンサは、前記トルク検出部が、同一形状及び同一寸法の前記検出コイル、前記一対の接続端子及び前記端子固定部を備えた一対のコイルユニットで構成されており、一方のコイルユニットの正面に他方のコイルユニットの裏面を対面させて配置し、前記一方のコイルユニットの前記端子固定部と、前記他方のコイルユニットの前記端子固定部とが、これらコイルユニットの中心点を通る線に対して偏倚した位置に設けられていることが好ましい。
さらに、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、上述したトルクセンサを備え、前記トルクセンサが検出した前記トルクに基づいてステアリング機構に伝達する操舵補助トルクを発生する電動モータを駆動して操舵補助制御を行う操舵補助制御部を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るトルクセンサによると、接続端子の基板接続部は、変形自在な十分な長さを有しているので基板接続部と回路基板のスルーホールとの位置ずれを吸収し、容易に半田付け作業を行なうことができる。また、検出コイルのコイル導線が巻き付けられている接続端子の巻付け部の基部は端子固定部に固定されているので、前述した位置ずれによるストレスを緩和することができ、接続端子とスルーホールの接続部位に悪影響を与えない。
また、上記効果を有するトルクセンサを使用して電動パワーステアリング装置を構成するので、トルクセンサの組付けを容易にすることができ、全体の組立工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す電動パワーステアリング装置の主要部を示す断面図である。
【図2】上記電動パワーステアリング装置に適用し得るトルク検出部の構成を示す斜視図である。
【図3】トルク検出部を構成する一方のコイルユニットを示す図である。
【図4】他方のコイルユニットを示す図である。
【図5】同一形状及び同一寸法の一対のコイルユニットからなるトルク検出部を軸方向から示した図である。
【図6】トルク検出部を上方から示した図である。
【図7】接続端子と回路基板のスルーホールとを示した図である。
【図8】センサシャフト部の表面の凸条と円筒部材の窓配置を説明する図である。
【図9】トルクと検出コイルのインダクタンスとの関係を示す特性線図である。
【図10】トルク演算回路を示すブロック図である。
【図11】トルク検出部の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の主要部を示す断面図であり、図2は、本発明に係るトルクセンサの構成を示す斜視図である。
図1において、5は電動パワーステアリング装置EPSを構成するハウジングであって、このハウジング5は入力軸側ハウジング部5aと出力軸側ハウジング部5bとに2分割された構造を有する。入力軸側ハウジング部5aの内部の中心開口5dには、入力軸1が軸受6aによって回転自在に支持されている。また、出力軸側ハウジング部5bの内部には出力軸2が軸受6b及び6cによって回転自在に支持されている。
【0012】
そして、入力軸1及び出力軸2は入力軸1の内部に配設されたトーションバー3を介して連結されている。
入力軸1、トーションバー3及び出力軸2は同軸に配置されており、入力軸1とトーションバー3とはピン結合し、また、トーションバー3と出力軸2とはスプライン結合又はセレーション結合している。図1において、入力軸1の突出端には、図示されていないステアリングホイールが一体的に取り付けられている。また、出力軸2には入力軸1とは反対側にピニオン軸2aが一体的に形成されており、ピニオン軸2aはラック4と噛合して公知のラックアンドピニオン式ステアリング機構を構成している。
【0013】
また、出力軸2には、これと同軸で且つ一体に回転するウォームホイール7が固着されており、図示されていない電動モータで駆動されるウォーム8と出力軸側ハウジング部5b内で噛合している。ウォームホイール7は金属製のハブ7aに合成樹脂製の歯部7bが一体的に固定されている。電動モータの回転力は、ウォーム8及びウォームホイール7を介して出力軸2に伝達され、電動モータの回転方向を適宜切り換えることにより、出力軸2に任意の方向の操舵補助トルクが付与される。
【0014】
次に、図1〜図7を参照して入力軸1及び出力軸2間のトルクを検出するトルクセンサTSを構成するトルク検出部10の構成を説明する。
トルク検出部10は、入力軸1に形成されたセンサシャフト部11と、入力軸側ハウジング部5aの内側に配置された1対の検出コイル13a及び13bを備えたコイルユニット15と、センサシャフト部11及びコイルユニット15の間に配置された円筒部材12とから構成される。
センサシャフト部11の表面には、図2に示すように、軸方向に延びた複数例えば9本の凸条11aを円周方向に沿って等間隔に形成するように軸方向溝11bが形成されている。
【0015】
また、センサシャフト部11の外側には、センサシャフト部11に接近して導電性で且つ非磁性の材料、例えばアルミニウムで構成された円筒部材12がセンサシャフト部11と同軸に配置されており、円筒部材12の延長部12eは出力軸2の端部2eの外側に固定されている。
円筒部材12には、前記したセンサシャフト部11の表面の凸条11aに対向する位置に、円周方向に凸条11aに対応する等間隔で配置された複数個(図2では9個)の長方形の窓12aからなる第1の窓列と、前記第1の窓列から軸方向にずれた位置に、前記窓12aと同一形状で、円周方向の位相が異なる複数個(図2では9個)の長方形の窓12bからなる第2の窓列とが設けられている。
円筒部材12の外周は、入力軸側ハウジング部5aの内部に固定されたコイルユニット15で包囲されている。
【0016】
コイルユニット15は、検出コイル13aを収容した第1コイルユニット15aと、検出コイル13bを収容した第2コイルユニット15bとで構成されている。
第1コイルユニット15aは、図3(a),(b)に示すように、軸方向両端側の外径がそれぞれ拡径した非磁性材料からなる段付き中空円筒状のコイルボビン16と、コイルボビン16の外周にコイル導線を巻回して形成した検出コイル13aと、検出コイル13aを覆うようにコイルボビン16の軸方向一方側から被嵌した磁性材料からなるヨーク部材17と、コイルボビン16の軸方向他方側に配置した円環状のカバー部材18と、検出コイル13aの両端に接続した一対の接続端子19a,19bとを備えている。
【0017】
コイルボビン16は、図3(b)に示すように、コイル巻回部16aと、このコイル巻回部16aの一端に設けられ、ヨーク部材17に覆われる第1フランジ部16bと、コイル巻回部16aの他端に設けられた第2フランジ部16cと、第2フランジ部16cの外周の一部から突出して設けられた接続端子取付け部16dとで構成されている。
接続端子取付け部16dは、図3(a)に示すように、第1コイルユニット15aの中心点Oを通る垂直線VLに対して所定距離ΔLだけ左方に偏倚した位置とされている。
【0018】
この接続端子取付け部16dには、接続端子19a,19bの一部が、例えばインサート成形により埋め込まれて外方に突出しており、一対の接続端子19a,19bの一部を埋め込んだ接続端子取付け部16d、コイル巻回16a、第1フランジ部16b及び第2フランジ部16cが、樹脂モールド成型によって一体成型されている。
コイルボビン16のコイル巻回部16a、第1フランジ部16b及び第2フランジ部16cで画成された凹部に、コイル導線が巻回されて検出コイル13aが形成されている。
【0019】
一対の接続端子19a,19bの一方の接続端子19aは、図3(b)に示すように、連結部19a1に一端側が連結されながら互いに平行に延在している短尺な巻付け部19a2及び長尺な基板接続部19a3を備えた略J字形状に折曲された棒状部材である。
この接続端子19aは、巻き付け部19a2の基部及び連結部19a1の一部が接続端子取付け部16dに埋め込まれ、巻き付け部19a2の先端が接続端子取付け部16dの外方を向く端面から外方に突出し、接続端子取付け部16dの側面に沿って基板接続部19a3が外方に突出した状態で配置されている。
【0020】
また、一対の接続端子19a,19bの他方の接続端子19bも、一方の接続端子19aと同一形状の連結部(不図示)、巻付け部19b2及び基板接続部19b3を有している。
そして、図3(b)に示すように、検出コイル13aの巻始め端部が一方の接続端子19aの巻付け部19a2に接続され、検出コイル13aの巻終り端部が他方の接続端子19bの巻付け部19b2(図6参照)に接続されている。
【0021】
第2コイルユニット15bは、図4に示すように、第1コイルユニット15aと同形状のコイルボビン16と、コイルボビン16の外周にコイル導線を巻回して形成した検出コイル13bと、検出コイル13bを覆うようにコイルボビン16の軸方向一方側から被嵌した磁性材料からなるヨーク部材17と、コイルボビン16の軸方向他方側に配置した円環状のカバー部材18と、検出コイル13bの両端に接続した一対の接続端子19c,19d(図5参照)とを備えている。
【0022】
コイルボビン16は、コイル巻回部16aと、このコイル巻回部16aの一端に設けられ、ヨーク部材17に覆われる第1フランジ部16bと、コイル巻回部16aの他端に設けられた第2フランジ部16cと、第2フランジ部16cの外周の一部から突出して設けられた接続端子取付け部16dとで構成されている。
第2コイルユニット15bの接続端子取付け部16dも、図示しないが、第1コイルユニット15aの接続端子取付け部16dと同様に、中心点Oを通る垂直線VLに対して所定距離ΔLだけ左方に偏倚した位置とされている。
【0023】
接続端子19cは、連結部19c1に一端側が連結されながら互いに平行に延在している短尺な巻付け部19c2及び長尺な基板接続部19c3を備えた略J字形状に折曲された棒状部材であり、巻き付け部19c2の基部及び連結部19c1の一部が接続端子取付け部16dに埋め込まれ、巻き付け部19c2の先端が接続端子取付け部16dの外方を向く端面から外方に突出し、接続端子取付け部16dの側面に沿って基板接続部19c3が外方に突出した状態で配置されている。
【0024】
また、他方の接続端子19dも、一方の接続端子19cと同一形状の連結部(不図示)、巻付け部19d2及び基板接続部19d3を有している。
そして、検出コイル13bの巻始め端部が一方の接続端子19cの巻付け部19c2に接続され、検出コイル13bの巻終り端部が他方の接続端子19dの巻付け部19d2(図6参照)に接続されている。
【0025】
上記構成の同一形状及び同一寸法とした第1コイルユニット15a及び第2コイルユニット15bを、一方のユニットをその正面を向けて配置した状態でその裏面側に他方をそのユニットの裏面を対面させて配置することで、コイルユニット15が形成される。
このコイルユニット15は、図6に示すように、第1コイルユニット15aの基板接続部19a3,19b3及び第2コイルユニット15bの基板接続部19c3,19d3が、コイルユニット15の厚さ方向中央において周方向に整列した状態となる。
【0026】
そして、コイルユニット15は、図1に示すように、接続端子19a〜19dを上方に向けた状態で入力軸側ハウジング部5aの内側に配置し、入力軸側ハウジング部5aの上部側に形成した基板装着凹部5cに装着された回路基板20に接続されている。
コイルユニット15の接続端子19a〜19dと回路基板20との接続は、図7に示すようにして行われる。すなわち、回路基板20には、コイルユニット15の接続端子19a〜19dを接続する4つのスルーホール20a〜20dが基板接続部19a3〜19d3に対向して形成されている。そして、回路基板20を下降させてスルーホール20a〜20dに基板接続部19a3〜19d3を挿通し、回路基板20を基板装着凹部5c内にねじ止め等の固定手段で固定し、最後に、スルーホール20a〜20dと基板接続部19a3〜19d3とを半田21によって半田付けすることにより電気的に接続する(図3(b)、図4参照)。
【0027】
図8(a),(b)は出力軸2側から見たセンサシャフト部の表面の凸条と円筒部材の窓配置を説明する図で、図8(a)は、基準位置(トーションバー3が捩れていない状態)におけるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと円筒部材12における第1の窓列の窓12aとの位置関係を示し、図8(b)は基準位置(トーションバー3が捩れていない状態)におけるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと円筒部材12における第2の窓列の窓12bとの位置関係を示す図である。
【0028】
窓12a、12bの角度aは軸方向溝11bに対向し窓12a、12bのない部分の角度bよりも小さく設定(a<b)され、凸条11aの先端の角度cは軸方向溝11bの開放端の角度dよりも小さく設定(c<d)される。これは、検出コイル13a及び13bのインピーダンスの変化を急峻にするためである。
図8(a),(b)から明らかなように、トーションバー3が捩れていない状態、即ち操舵トルクが零(0)の状態では、窓12aの時計方向端部にセンサシャフト部11の凸条11aの円周方向の反時計方向端部が位置し、窓12bの反時計方向端部に凸条11aの時計方向端部が位置するように、窓12a及び12bの円周方向の幅と凸条11aの幅、及び窓12a及び12bとの円周方向の相対位置関係が設定される。即ち、凸条11aに対する窓12aと12bとの円周方向の位置関係は互いに逆になっている。
【0029】
ここで、本発明に係る端子固定部が、接続端子取付け部16dに対応している。
操舵系が直進状態にあって操舵トルクが零である場合はトーションバー3には捩れが発生せず、入力軸1と出力軸2とは相対回転しない。したがって入力軸1の側にあるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと、出力軸2の側にある円筒部材12との間にも相対回転が生じない。
【0030】
一方、ステアリングホイールを操作して入力軸1に回転力が加わると、その回転力はトーションバー3を経て出力軸2に伝達される。このとき、出力軸2には舵輪と路面との間の摩擦力や出力軸2に結合されているステアリング機構のギヤの噛み合い等の摩擦力が作用する。このため、入力軸1と出力軸2との間を結合するトーションバー3に捩れが発生し、入力軸1の側にあるセンサシャフト部11の表面の凸条11aと出力軸2の側にある円筒部材12との間に相対回転が生じる。
【0031】
円筒部材12に窓がない部位では、円筒部材12は導電性で且つ非磁性材で構成されていることから、検出コイル13a及び13bに交流電流を流して交番磁界を発生させると、円筒部材12の外周面にコイル電流と反対方向の渦電流が発生する。この渦電流による磁界とコイル電流による磁界とを重畳すると、円筒部材12の内側の磁界は相殺される。
【0032】
円筒部材12に窓が形成されている部位では、円筒部材12の外周面に発生した渦電流は、窓12a及び12bによって外周面を周回できないため、窓12a及び12bの端面に沿って円筒部材12の内周面側に回り込み、内周面をコイル電流と同方向に流れ、また隣の窓12a及び12bの端面に沿って外周面側に戻り、ループを形成する。つまり、検出コイル13a及び13bの内側に渦電流のループを、円周方向に周期的に配置した状態が発生する。コイル電流による磁界と渦電流による磁界とは重畳され、円筒部材12の内外には、円周方向に周期的に強弱変化する磁界と、中心に向かうほど小さくなる半径方向に勾配を持った磁界が形成される。円周方向の周期的な磁界の強弱は、隣り合う渦電流の影響を受ける窓12a及び12bの中心で強く、そこからずれるに従い弱くなる。
【0033】
円筒部材12の内側には、磁性材料からなるセンサシャフト部11が同軸に配置されており、その凸条11aは、窓12a及び12bと同じ周期で配置されている。磁界中に置かれた磁性体は磁化して磁束を生じるが、磁束の量は飽和するまでは磁界の強さに応じて大きくなる。このため、円筒部材12により円周方向の周期的な磁界の強弱と中心に向かうほど小さくなる半径方向に勾配を持った磁界とにより、センサシャフト部11に発生する磁束は、円筒部材12とセンサシャフト部11との相対的な位相により増減する。磁束が最大となる位相は、円筒部材12の窓12a及び12bの中心とセンサシャフト部11の凸条11aの中心とが一致した状態で、磁束の増減に応じて検出コイル13a及び13bのインダクタンスも増減し、略正弦波状に変化する。
【0034】
トルクが作用しない状態では、インダクタンスが最小となる位相(窓12a及び12bと凸条11aとが重なっていない位相)に位置に設定されているから、トルクが作用して
トーションバー3が捩れ、センサシャフト部11と円筒部材12との間に位相差が生じると、2つの検出コイル13a及び13bのインダクタンスは、一方は増加し、他方は減少する。
【0035】
図9は操舵トルクTと検出コイル13a(又は13b)のインダクタンスの変化との関係を示す特性線図で、横軸は操舵トルクT、縦軸はインダクタンスLを示す。
右操舵トルク発生時は、図8(a),(b)においてセンサシャフト部11が時計方向に回転するから、図4に示すように、操舵トルクTが増大するにつれ検出コイル13aのインダクタンスL13aは減少し、検出コイル13bインダクタンスL13bは増加する。
【0036】
また、左操舵トルク発生時は、図8(a),(b)においてセンサシャフト部11が反時計方向に回転するから、図9に示すように操舵トルクTが増大するにつれ検出コイル13aのインダクタンスL13aは増加し、検出コイル13bのインダクタンスL13bのインダクタンスは減少する。
図9のインダクタンスL13a、L13bの特性は比例して出力される電圧にそのまま置き換えることができる。
【0037】
また、回路基板20には、接続端子19a〜19dが電気的に接続されてトルクを演算するトルク演算回路30が搭載されている。
図10に示すように、トルク演算回路30は、トルク検出部10の一対の検出コイル13a及び13bを使用して操舵トルクを検出するトルク検出系統を有するトルク演算部31を備えている。
【0038】
また、回路基板20は、トルク演算部31に所定周波数の交流信号を出力する交流信号源300と、トルク演算部31からそれぞれ出力されるメイントルク及びサブトルクが入力されるノイズフィルタ302及びノイズフィルタ302から出力されるフィルタ出力を、操舵補助用電動モータ41を操舵補助制御するコントロールユニット40に出力するコネクタ303を備えている。また、コネクタ303に入力される電源及び基準電源がノイズフィルタでフィルタ処理されて電源電圧V及び基準電圧Vrefとして交流信号源300とトルク演算部31とに供給される。
【0039】
ここで、交流信号源300は、所定周波数の交流信号を発生する発振部301と、この発振部301から出力される交流信号を電流増幅してトルク演算部31に供給する電流増幅部311を備えている。
トルク演算部31は、一対の検出コイル13a及び13bの一端例えば接続端子19a及び19cが互い接続されて接地され、他端例えば接続端子19b及び19dに抵抗R1a及びR1bが直列に接続され、これら抵抗R1a及びR1bの他端を互いに接続した構成を有するブリッジ回路310を備えている。
【0040】
このブリッジ回路310では、入力軸1にトルクが作用していない状態では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧がそれぞれ等しくなるように、つまり差分電圧が0となるように予め抵抗R1a、R1bの抵抗値が調整されている。
そして、ブリッジ回路310の抵抗R1a、R1bの接続点が交流信号源300の電流増幅部311に接続されて、交流電圧信号Voscが入力される。
【0041】
また、トルク演算部31は、ブリッジ回路310の検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号が入力されるとともに、交流電圧信号Voscが入力されたメイン増幅・全波整流部312と、このメイン増幅・全波整流部312から出力される整流信号が入力されるメイン平滑・中立調整部313を有する。ここで、メイン増幅・全波整流部312では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号の差分信号Vdefを算出し、この差分信号Vdefを増幅するとともに、整流して整流信号をメイン平滑・中立調整部313に出力する。また、メイン平滑・中立調整部313では、メイン増幅・全波整流部312から入力される整流信号を平滑化するとともに、中立電圧を調整してトルク検出信号としてノイズフィルタ302に出力する。そして、ノイズフィルタ302でフィルタ処理されたトルク検出信号がコネクタ303を介してメイントルク検出信号Tmとして操舵補助制御を行うコントロールユニット40に出力される。
【0042】
また、トルク演算部31は、ブリッジ回路310の検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号が入力されるとともに、交流電圧信号Voscが入力されたサブ増幅・全波整流部314と、このサブ増幅・全波整流部314から出力される整流信号が入力されるサブ平滑・中立調整部315を有する。ここで、サブ増幅・全波整流部314では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号の差分信号Vdefを算出し、この差分信号Vdefを増幅するとともに、整流して整流信号をサブ平滑・中立調整部315に出力する。また、サブ平滑・中立調整部315では、サブ増幅・全波整流部314から入力される整流信号を平滑化するとともに、中立電圧を調整してトルク検出信号としてノイズフィルタ302に出力する。そして、ノイズフィルタ302でフィルタ処理されたトルク検出信号がコネクタ303を介してサブトルク検出信号Tsとして操舵補助制御を行うコントロールユニット40に出力される。
【0043】
さらに、トルク演算部31は、例えば特開2006−267045号公報に記載されているように、交流電圧信号Vosc及びサブ増幅・全波整流部214から出力されるブリッジ回路310の差分信号Vdefに基づいて検出コイル13a又は13bと抵抗R1a又はR1bとの接触不良等をブリッジ回路310の差分電圧Vdefの変化で検出するとともに、基準電圧Vrefに対する位相ずれに基づいて回路系の異常を検出し、異常を検出したときに異常信号ABを出力する。すなわち、監視部316では、印加した交流信号の波形と、ブリッジ回路310の差分電圧Vdefの波形との位相差を検出し、位相差が所定値を超えたときに検出コイル13a,13b、抵抗R1a,R1b若しくはブリッジ回路310が異常であると判定して異常信号ABを出力する。
【0044】
この監視部316から出力される異常信号ABはサブ平滑・中立調整部315に供給され、このサブ平滑・中立調整部315では、異常信号ABが入力されると、出力するトルク検出信号を0Vに設定する。これにより、メイントルク信号との図4に示す電圧クロス特性のバランスが崩れることにより、コントロールユニット40が故障を検出することができる。このため、コントロールユニット40で操舵補助用電動モータ41の駆動に使用するメイン側のメイン平滑・中立調整部313には異常信号ABは入力されない。
【0045】
コントロールユニット40は、図10に示すように、トルクセンサTSからメイントルク検出信号Tm及びサブトルク検出信号Tsが入力されている。このコントロールユニット40は、入力されたメイントルク検出信号Tm及びサブトルク検出信号Tsに基づいて信号監視を行う異常判定部42と、メイントルク検出信号Tmに基づいて操舵補助制御を行って操舵補助用電動モータ41を駆動制御する操舵補助制御部33とを備えている。
【0046】
異常判定部42は、メイントルク検出信号Tmが所定値(例えば0.3V)以下か否かで断線や地絡を検出し、所定値(例えば4.7V)以上か否かで天絡を検出する。また、サブトルク検出信号Tsが所定値(例えば0.3V)以下か否かで断線や地絡を検出するとともに、トルク演算回路30の自己診断を行い、所定値(例えば4.7V)以上か否かで天絡を検出する。さらに、メイントルク検出信号Tmとサブトルク検出信号Tsの加算値が所定値(例えば5.3V)以上若しくは所定値(例えば4.7V)以下か否かで、図9に示す電圧クロス特性から外れる異常を検出する。
【0047】
そして、操舵補助制御部43では、上記異常判定部42によって異常が検出されない正常状態では、メイントルク検出信号Tmを用いて操舵補助電流指令値を演算し、演算した操舵補助電流指令値と、操舵補助用電動モータ41に供給するモータ電流の検出値との偏差を例えばPD制御処理して操舵補助電圧指令値を算出し、算出した操舵補助電圧指令値に基づいてモータ駆動回路44を制御する駆動信号を形成し、この駆動信号をモータ駆動回路44に出力する。
【0048】
ここで、サブトルク検出信号Tsはトルクセンサの異常監視に利用されるのみで、操舵補助用電動モータ41の駆動には利用されない。
異常判定部42で、トルクセンサTSのトルク検出系統(トルク演算部31及びブリッジ回路310)の異常が判定された場合に、操舵補助制御部43で、正常な過去トルク値を使用して操舵補助用電動モータ41を駆動し、操舵補助トルクを徐々に減少させるトルク漸減処理を行い、安全に操舵補助制御を停止させるフェールセーフモードに移行する。
【0049】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、入力軸1に連結された図示しないステアリングホイールが操舵されておらず、入力軸1及び出力軸2が相対回転することなく同一回転位相にあるものとする。
この状態では、入力軸1及び出力軸2間に介挿されたトーションバー3に捩じれが生じていない。このため、入力軸1に形成されたセンサシャフト部11の凸条11aは、図8(a)及び(b)に示すように、先端の反時計方向端部が窓12aの時計方向端部に位置するとともに、窓12bの反時計方向端部に位置する。
【0050】
この状態では、検出コイル13a及び13bで検出するインピーダンスが等しく中央値となり、ブリッジ回路310から出力される2つの交流出力電圧が等しくなる。このため、メイン増幅・全波整流部312では、検出コイル13a及び13bの両端に表れる電圧信号の差分信号Vdefを算出したときに、この差分信号Vdefが略零となる。この差分信号Vdefを増幅するとともに、整流して整流信号をメイン平滑・中立調整部313に出力する。このメイン平滑・中立調整部313では、メイン増幅・全波整流部312から入力される整流信号を平滑化するとともに、中立電圧を調整してトルク検出信号としてノイズフィルタ302に出力する。そして、ノイズフィルタ302でフィルタ処理されたトルク検出信号がコネクタ303を介してメイントルク検出信号Tmとしてコントロールユニット40に出力される。
【0051】
このため、コントロールユニット40では、操舵補助制御部43で、メイントルク検出
信号Tmに基づいて例えば操舵補助制御指令を演算し、この操舵補助制御電流指令と、電動モータ41で検出したモータ電流との偏差に基づいて操舵補助制御電圧を算出し、この操舵補助制御電圧に基づいてモータ駆動回路44に供給するゲート駆動電流を出力する。このとき、メイントルク検出信号Tmが零であるので、ゲート駆動電流も零となり、モータ駆動回路44からモータ電流の出力が停止される。このため、電動モータ41は停止状態を継続する。
【0052】
その後、図示しないステアリングホイールを例えば左操舵すると、トルクセンサTMのセンサシャフト部11の凸条11aが反時計方向に回動することにより、円筒部材12の窓12aに対向する凸条11aの外周面の面積が増加するが、窓12bに対向する凸条11aは窓12bから遠ざかる。
このため、検出コイル13aのインダクタンスLは増加し、検出コイル13bのインダクタンスLは減少し、検出コイル13a及び13bのインピーダンスが変化することから、メイン増幅・全波整流部312で算出される差分信号Vdefが例えば負方向に増加し、これが増幅されると共に、全波整流されたトルク検出値Tmがメイン平滑・中立調整部313に出力される。このメイン平滑・中立調整部313で平滑化及び中立位置が調整されてトルク検出値Tmがコントロールユニット40に出力される。
【0053】
したがって、操舵補助制御部43で,検出されるトルク検出値Tmに基づいて操舵補助電流指令値が算出され、この操舵補助電流指令値と、モータ電流検出値との偏差に基づいてPI制御等を行って電圧指令値を算出し、この電圧指令値に基づいてモータ駆動回路44から駆動電流が電動モータ41に供給される。このため、電動モータ41から操舵補助力が発生され、この操舵補助力がウォーム8及びウォームホイール7を介して出力軸2に伝達されることにより、出力軸2が反計方向に回転駆動されて軽い操舵力で操舵することができる。
【0054】
同様に、ステアリングホイールを右操舵したときには、入力軸1が図8(a)及び(b)で見て時計方向に回転されるので、メイン増幅・全波整流部312で算出される差分信号Vdefが例えば正方向に増加し、電動モータ41で上記とは逆方向の操舵補助力が発生されて、出力軸2が時計方向に回転駆動されて軽い操舵力で操舵することができる。
【0055】
次に、本実施形態のトルクセンサTSのトルク検出部10の作用効果について説明する。
トルク検出部10のコイルユニット15を構成する第1コイルユニット15aの一対の接続端子19a,19bは、連結部19a1,19b1に一端側が連結されながら互いに平行に延在している短尺な巻付け部19a2,19b2及び長尺な基板接続部19a3,19b3を備えた略J字形状に折曲された棒状部材である。そして、巻き付け部19a2,19b2の基部及び連結部19a1,19b1の一部が、接続端子取付け部16dに埋め込まれ、巻き付け部19a2,19b2の先端が接続端子取付け部16dの外方を向く端面から外方に突出し、接続端子取付け部16dの側面に沿って基板接続部19a3,19b3が外方に突出した状態で配置されている。
【0056】
ここで、一対の接続端子19a,19bの基板接続部19a3,19b3は、変形自在な十分な長さを有しているので、基板接続部19a3,19b3と回路基板20のスルーホール20a,20bとの位置ずれを吸収して半田付けを行なうことができる。
また、検出コイル13aのコイル導線が巻き付けられている一対の接続端子19a,19bの巻付け部19a2,19b2の基部は、接続端子取付け部16dに埋め込まれているのでストレスを緩和することができ、半田付け部位に悪影響を与えるおそれがない。
【0057】
一方、コイルユニット15を構成する第2コイルユニット15bの一対の接続端子19c,19dも、前述した一対の接続端子19a,19bと同一構成であり、接続端子19c,19dの基板接続部19c3,19d3が、変形自在な十分な長さを有しているので、基板接続部19c3,19d3と回路基板20のスルーホール20c,20dとの位置ずれを吸収して半田付けを行なうことができる。
【0058】
また、検出コイル13bのコイル導線が巻き付けられている一対の接続端子19c,19dの巻付け部19c2,19d2の基部も接続端子取付け部16dに埋め込まれているのでストレスを緩和することができ、半田付け部位に悪影響を与えるおそれがない。
また、同一形状及び同一寸法とした第1コイルユニット15a及び第2コイルユニット15bを、一方のユニットをその正面を向けて配置した状態でその裏面側に他方をそのユニットの裏面を対面させてコイルユニット15を形成すると、第1コイルユニット15aの接続端子19a,19bを固定した接続端子取付け部16dと、第2コイルユニット15aの接続端子19c,19dを固定した接続端子取付け部16dとが、中心点Oを通る垂直線VLに対して所定距離ΔLだけ左右に偏倚した位置となり、第1コイルユニット15aの基板接続部19a3,19b3及び第2コイルユニット15bの基板接続部19c3,19d3が、コイルユニット15の厚さ方向中央において周方向に整列した状態となる。このため、基板接続部19a3,19b3、19c3,19d3に対して回路基板20のスルーホール20a〜20dを上方から容易に挿通し、半田付け作業を容易に行なうことができる。
【0059】
また、上記効果を有するトルクセンサTSを使用して操舵系に入力される操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに基づいて操舵補助電流指令値を算出し、算出した操舵補助電流指令値と、電動モータのモータ電流検出値との偏差に基づいてモータ駆動回路44を駆動する電圧指令値を算出するので、トルクセンサTSの装着を容易に行うことができるとともに、トルク検出部10の接続端子と回路基板との接続を正確に行うことができ、電動パワーステアリング装置の製造コストを低減できるとともに、信頼性を向上させることができる。
なお、実施形態においては、トルク検出部10の接続端子が4本である場合について説明したが、第1及び第2コイルユニット15a,15b側で接地側の端部を互いに接続し、接続端子を3本とすることもできる。
【0060】
また、上記実施形態においては、トルクセンサTSのトルク検出部10の第1及び第2コイルユニット15a,15bに、それぞれ検出コイル13a及び13bを内装する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図11に示すように、シールド板部26を介して検出コイル13c及び13dを内装する一対の第1及び第2コイルユニット15c,15dを設けて、冗長性を増して信頼性を向上させるようにしてもよい。このときには、トルク検出部10の接続端子が19a〜19hの8本に増加するので、これに応じて、ヨーク部材17の開口部及び回路基板20のスルーホールの数をそれぞれ8個に増加させるとともに、トルク演算回路30にトルク演算部31を設けるようにすればよい。この場合にも接続端子数は接地側の接続端子を互いに接続して合計6本とすることができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、コントロールユニット40側に異常判定部42を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トルク演算回路30側に異常判定部42を設け、この異常判定部32の異常判定結果をコントロールユニット40に通知するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明によるトルクセンサTSを電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動パワーステアリング装置以外にも回転軸のトルクを検出する場合に本発明によるトルクセンサTSを適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…入力軸、2…出力軸、2a…ピニオン軸、2e…端部、3… トーションバー、4…ラック、5…ハウジング、5a…入力軸側ハウジング部、5b…出力軸側ハウジング部、5c…基板装着凹部、5d…中心開口、5e…ヨーク収納部、5f…スリット、6a,6b…軸受、7…ウォームホイール、7a…ハブ、7b…歯部、8… ウォーム、10…トルク検出部、11…センサシャフト部、11a…凸条、11b…軸方向溝、12…円筒部材、12a,12b…窓、12e… 延長部、13a,13b…検出コイル、15…コイルユニット、15a…第1コイルユニット、15b…第2コイルユニット、16…コイルボビン、16a…コイル巻回部、16b…第1フランジ部、16c…第2フランジ部、16d…接続端子取付け部、17…ヨーク部材、18…カバー部材、19a〜19d…接続端子、19a1〜19d1…連結部、19a2〜19d2…巻付け部、19a3〜19d3…基板接続部、20…回路基板、20a〜20d…スルーホール、21…半田、30…トルク演算回路、31…トルク演算部、33…操舵補助制御部、40…コントロールユニット、41…操舵補助用電動モータ、42…異常判定部、43…操舵補助制御部、44…モータ駆動回路、214…サブ増幅・全波整流部、300…交流信号源、301…発振部、302…ノイズフィルタ、303…コネクタ、310…ブリッジ回路、311…電流増幅部、312…メイン増幅・全波整流部、313…メイン平滑・中立調整部、314…サブ増幅・全波整流部、315…サブ平滑・中立調整部、316…監視部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に生じるトルクに応じてインピーダンスが変化する検出コイルを備えているトルク検出部と、
前記検出コイルを構成するコイル導線の始端部及び終端部を一端に巻き付け、他端が前記トルク検出部から外方に突出している一対の接続端子と、
前記一対の接続端子を挿通するスルーホールを有し、前記検出コイルのインピーダンス変化に基づいて前記トルクを演算するトルク演算回路を搭載した回路基板と、を備え、
前記接続端子は、連結部に連結されて互いに平行に延在する短尺な巻付け部と長尺な基板接続部とを有する略J字形状に折曲された棒状部材であり、
前記巻き付け部の基部及び前記連結部の一部が前記トルク検出部の端子固定部で固定され、前記端子固定部に沿って前記基板接続部が前記回路基板の前記スルーホールに向けて延在していることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記トルク検出部は、前記コイル導線が巻き付いて前記検出コイルを形成する中空円筒形状のコイルボビンを備え、
前記端子固定部は、前記コイルボビンの軸方向の一端に形成したフランジの外周の一部に一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記トルク検出部は、同一形状及び同一寸法の前記検出コイル、前記一対の接続端子及び前記端子固定部を備えた一対のコイルユニットで構成されており、
一方のコイルユニットの正面に他方のコイルユニットの裏面を対面させて配置し、前記一方のコイルユニットの前記端子固定部と、前記他方のコイルユニットの前記端子固定部とが、これらコイルユニットの中心点を通る線に対して偏倚した位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のトルクセンサを備え、該トルクセンサが検出した前記トルクに基づいてステアリング機構に伝達する操舵補助トルクを発生する電動モータを駆動して操舵補助制御を行う操舵補助制御部を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項1】
回転軸に生じるトルクに応じてインピーダンスが変化する検出コイルを備えているトルク検出部と、
前記検出コイルを構成するコイル導線の始端部及び終端部を一端に巻き付け、他端が前記トルク検出部から外方に突出している一対の接続端子と、
前記一対の接続端子を挿通するスルーホールを有し、前記検出コイルのインピーダンス変化に基づいて前記トルクを演算するトルク演算回路を搭載した回路基板と、を備え、
前記接続端子は、連結部に連結されて互いに平行に延在する短尺な巻付け部と長尺な基板接続部とを有する略J字形状に折曲された棒状部材であり、
前記巻き付け部の基部及び前記連結部の一部が前記トルク検出部の端子固定部で固定され、前記端子固定部に沿って前記基板接続部が前記回路基板の前記スルーホールに向けて延在していることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記トルク検出部は、前記コイル導線が巻き付いて前記検出コイルを形成する中空円筒形状のコイルボビンを備え、
前記端子固定部は、前記コイルボビンの軸方向の一端に形成したフランジの外周の一部に一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記トルク検出部は、同一形状及び同一寸法の前記検出コイル、前記一対の接続端子及び前記端子固定部を備えた一対のコイルユニットで構成されており、
一方のコイルユニットの正面に他方のコイルユニットの裏面を対面させて配置し、前記一方のコイルユニットの前記端子固定部と、前記他方のコイルユニットの前記端子固定部とが、これらコイルユニットの中心点を通る線に対して偏倚した位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のトルクセンサを備え、該トルクセンサが検出した前記トルクに基づいてステアリング機構に伝達する操舵補助トルクを発生する電動モータを駆動して操舵補助制御を行う操舵補助制御部を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88189(P2013−88189A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227168(P2011−227168)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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