トルク検出装置および電動パワーステアリング装置
【課題】一対の磁気ヨークの干渉を防ぎつつ、検出能力および検出精度の向上を図ることができるトルク検出装置およびこれを含む電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】トルク検出装置17は、第1軸14および第2軸15を連結するトーションバー16と、第1軸14に固定される磁石25と、第2軸15に固定され、軸方向において対向配置される一対の磁気ヨーク26とを含む。各磁気ヨーク26は、ヨークリング40と、ヨークリング40において周方向に並ぶ複数の歯41とを含む。ヨークリング40は、歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる延設部40Aと、延設部40Aの径方向外側端部から軸方向に折り返された折り返し部40Bとを含んでいる。軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の外法寸法Qが、磁石25の長さG以上である。
【解決手段】トルク検出装置17は、第1軸14および第2軸15を連結するトーションバー16と、第1軸14に固定される磁石25と、第2軸15に固定され、軸方向において対向配置される一対の磁気ヨーク26とを含む。各磁気ヨーク26は、ヨークリング40と、ヨークリング40において周方向に並ぶ複数の歯41とを含む。ヨークリング40は、歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる延設部40Aと、延設部40Aの径方向外側端部から軸方向に折り返された折り返し部40Bとを含んでいる。軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の外法寸法Qが、磁石25の長さG以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングの操舵トルク等を検出するトルク検出装置およびこれを含む電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルク検出装置の一例として、特許文献1ではトルクセンサが提案されている。このトルクセンサは、入力軸と出力軸とを同軸上に連結するトーションバー、入力軸の端部に取り付けられるリング状の磁石、出力軸の端部に取り付けられる一組の環状の磁気ヨーク、一組の磁気ヨークの外周に近接して配置される一組の集磁リング、および、磁気センサ等より構成されている。各磁気ヨークには、磁石のN極及びS極と同数の爪が全周に等間隔に設けられている。一組の集磁リングは、磁気ヨークが磁石から誘導した磁束を集める。磁気センサは、一組の集磁リングの間に挿入されていて、集磁リングが集めた磁束により生じた磁束密度を検出する。
【0003】
ステアリングの操舵によって入力軸と出力軸との間にトルク(操舵トルク)が入力されると、トーションバーが捩じれることで、磁石と磁気ヨークとの周方向における相対位置がずれる。トルクセンサは、当該相対位置のずれに応じて磁気ヨークで変化する磁束密度(厳密には、集磁リングが磁気ヨークから集めた磁束の磁束密度)によって、入力軸と出力軸との間に入力された操舵トルクを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3874642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のトルクセンサでは、各磁気ヨークにおいて爪が設けられた部分が、磁気ヨークの周方向から見て、磁気ヨークの径方向内側へ延びた後に略直角に屈曲して磁気ヨークの軸方向に延びるL字状をなしている(特許文献1の図5参照)。そして、一組の磁気ヨークでは、互いの爪の先端部分が周方向に交互に配置されている。トルクセンサでは、トルクの検出能力および検出精度を向上させるために、磁束が流れる爪を軸方向に延ばして大きくしたいのだが、軸方向における爪の寸法(以下、この明細書では「有効長」ということがある)を大きくし過ぎると、爪の先端が相手側の磁気ヨークに接近し過ぎてしまう。これにより、一組の磁気ヨークが、互いに接近した部分で干渉する虞がある。また、当該部分において磁気ヨークから磁束が不意に漏れ易くなるので、磁気センサが磁気ヨークの磁束密度(集磁リングが集めた磁束密度)を高精度に検出すること(換言すれば、トルクセンサがトルクを高精度に検出すること)が逆に困難になる。
【0006】
また、トルクセンサの小型化は、常に望まれている。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、一対の磁気ヨークの干渉を防ぎつつ、検出能力および検出精度の向上を図ることができるトルク検出装置およびこれを含む電動パワーステアリング装置を提供することを主たる目的とする。
また、この発明は、小型化を図ることができるトルク検出装置およびこれを含む電動パワーステアリング装置を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、第1軸(14)および第2軸(15)を相対回転可能に連結し、前記第1軸と前記第2軸との間に捩じれトルクが入力されるのに応じて捩じれる弾性部材(16)と、前記第1軸に対して同軸状に固定される環状であって、周方向にN極とS極とが交互に着磁された磁石(25)と、前記第2軸に対して同軸状に固定されるとともに前記磁石を非接触で取り囲む環状をなし、軸方向(X1)において対向配置される一対の磁気ヨーク(26)と、前記一対の磁気ヨークをそれぞれ取り囲む環状であって、前記一対の磁気ヨークで発生した磁束を導いて集める一対の集磁リング(28)と、前記一対の集磁リングの間に配置され、前記集磁リングによって集められた磁束の密度を検出する磁気センサ(30)とを含み、前記一対の磁気ヨークのそれぞれは、環状のヨークリング(40)と、前記ヨークリングから軸方向に延設されて周方向に等間隔で並ぶ複数の歯(41)とを含み、前記ヨークリングは、前記歯の根元部分(41A)から径方向外側へ延びる延設部(40A)と、前記延設部の径方向外側端部から軸方向に折り返された折り返し部(40B)とを含んでいて、前記一対の磁気ヨークでは、互いの歯の先端部分が周方向に交互に配置されていて、軸方向に関して、前記一対の磁気ヨークの外法寸法(Q)が、前記磁石の長さ(G)以上であることを特徴とする、トルク検出装置(17)である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記折り返し部は、前記歯が突出する方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置である。
請求項3記載の発明は、前記折り返し部は、前記歯が突出する方向とは反対の方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置である。
請求項4記載の発明は、ステアリング(2)の操舵トルクを検出する請求項1〜3のいずれかに記載のトルク検出装置と、ステアリングの操舵力を補助するための駆動力を発生する電動モータ(19)と、前記トルク検出装置が検出した操舵トルクに応じて、前記電動モータを制御する制御部(20)とを含むことを特徴とする、電動パワーステアリング装置(1)である。
【0009】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、一対の磁気ヨークのそれぞれにおいて、歯の有効長を、折り返し部の分だけ大きく稼ぐことができる。これにより、トルク検出装置では、トルクの検出能力および検出精度を向上させることができる。
ここで、有効長が大きくなった歯では、延設部を介して折り返し部につながった根元側が大きくなっているのであって、先端部が相手側の磁気ヨークへ接近している訳ではない。よって、一対の磁気ヨークが干渉することはないし、一対の磁気ヨークの間から磁束が漏れ易くなることもない。
【0011】
つまり、一対の磁気ヨークの干渉を防ぎつつ、検出能力および検出精度の向上を図ることができる。
そして、軸方向に関して、一対の磁気ヨークの外法寸法が、磁石の長さ以上であることから、磁石を一対の磁気ヨークの外法寸法(全長)以下まで小さく抑えることができ、その分、トルク検出装置の小型化を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、一対の磁気ヨークのそれぞれにおいて歯が設けられた部分は、折り返し部において相手側の磁気ヨークから一旦離れた後、延設部を経てから、歯において相手側の磁気ヨークへ向けて延びている。この場合、折り返し部を設けない場合に比べて、歯の有効長を、折り返し部の分だけ大きく稼ぐことができる。
請求項3記載の発明のように、折り返し部は、歯が突出する方向とは反対の方向に折り返されていてもよく、この場合、各磁気ヨークにおいて歯が設けられた部分は、周方向から見て、クランク形状になる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、電動パワーステアリング装置では、トルク検出装置におけるステアリングの操舵トルクの検出能力および検出精度の向上が図られているので、電動モータによるステアリングの操舵力の補助を高精度に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るトルク検出装置17を備える電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、トルク検出装置17の分解斜視図である。
【図3】図3は、トルク検出装置17の模式的な断面図である。
【図4】図4は、一対の磁気ヨーク26を径方向外側から見た側面図である。
【図5】図5は、磁気ヨークユニット33の斜視図である。
【図6】図6は、トルク検出装置17の動作を説明するための模式図であって、図6(a)は、操舵中立状態から一方向にトーションバー16が捩じれた状態を示し、図6(b)は、操舵中立状態を示し、図6(c)は、操舵中立状態から図6(a)とは反対方向にトーションバー16が捩じれた状態を示している。
【図7】図7(a)は、1つの磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図であって、一部を断面で示しており、図7(b)は、比較例に係る磁気ヨーク26の断面図である。
【図8】図8(a)は、比較例に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図であり、図8(b)は、本願発明に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図である。
【図9】図9は、本願発明に係るトルク検出装置17の歯41と、比較例に係るトルク検出装置17の歯41とを重ね合わせて示した図である。
【図10】図10は、トルク検出装置17において、トーションバー16が捩じれるのに応じて、歯41と磁石25の1つの極とが重なる部分の面積が変化していく様子を説明するためのグラフである。
【図11】図11は、変形例に係る磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本実施の形態では、集磁リングを含むトルク検出装置が自動車の電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明するが、本発明のトルク検出装置は、電動パワーステアリング装置以外の他の装置や機器に適用することもできる。
図1は、本発明の一実施形態に係るトルク検出装置17を備える電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
【0016】
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリング2に連結されるステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、この中間軸5に自在継手6を介して連結されているピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を形成して車両の左右方向に延びるラック軸10とを有している。
【0017】
ラック軸10は、筒状のハウジング11に軸方向移動可能に支持されている。ラック軸10の両端部にはそれぞれタイロッド12が連結されており、各タイロッド12は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪13に連結されている。
ステアリング2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転は中間軸5等を介してピニオン8に伝達され、ピニオン8およびラック9によって、車両の左右方向に沿うラック軸10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪13の転舵が達成される。
【0018】
ステアリングシャフト3は、ステアリング2に連なる第1軸としての第1の操舵軸14と、自在継手4に連なる第2軸としての第2の操舵軸15とを有している。これら第1および第2の操舵軸14,15は、弾性部材としてのトーションバー16を介して同軸上に互いに連結されている。第1および第2の操舵軸14,15は、互いにトルク伝達可能であり、所定の範囲内で相対回転可能とされている。そして、ステアリング2の操舵によって、ステアリング2の操舵トルクに応じた捩じれトルクが第1および第2の操舵軸14,15間に入力されると、トーションバー16が捩じれ、その際、第1および第2の操舵軸14,15が相対回転するようになっている。
【0019】
電動パワーステアリング装置1は、ステアリング2に負荷される操舵トルクを検出するトルク検出装置17と、車速を検出する車速センサ18と、操舵補助用の電動モータ19と、トルク検出装置17および車速センサ18の検出結果(車速や操舵トルク)に応じて、電動モータ19を駆動制御するマイクロコンピュータを含む制御部としてのECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20とを備えている。
【0020】
トルク検出装置17では、トーションバー16の捩じれに起因する第1の操舵軸14と第2の操舵軸15との相対回転変位量に基づく磁束密度の変化から、第1および第2の操舵軸14,15に付与される操舵トルクを検出する。
ECU20が操舵補助用の電動モータ19を駆動すると、その出力回転(駆動力)が、ウォームギヤ機構等の減速機構21で減速されて第2の操舵軸15へ伝達される。第2の操舵軸15に伝えられた動力は、さらに中間軸5等を介して、ピニオン軸7、ラック軸10、タイロッド12およびナックルアーム等を含む転舵機構22に伝えられ、運転者の操舵力が電動モータ19の駆動力によって補助される。
【0021】
図2は、トルク検出装置17の分解斜視図である。図3は、トルク検出装置17の模式的な断面図である。
図2および図3に示すように、トーションバー16の一端16Aは、ピン等(図示せず)を用いて第1の操舵軸14に結合され、トーションバー16の他端16Bは、ピン等(図示せず)を用いて第2の操舵軸15に結合されている。
【0022】
トルク検出装置17は、前述したトーションバー16と、磁石25と、軟磁性体製の一対の磁気ヨーク26と、磁気ヨーク26からの磁束を誘導する一対の集磁リング28と、磁気センサとしての一対のホールIC30とを備えている。ここで、一対の磁気ヨーク26、一対の集磁リング28、および、一対のホールIC30のそれぞれにおける一方を指すときには、符号の末尾に「A」を付し、他方を指すときには符号の末尾に「B」を付すことにする。図2では、上側の磁気ヨーク26を磁気ヨーク26Aと区別し、下側の磁気ヨーク26を磁気ヨーク26Bと区別している。また、上側の集磁リング28を集磁リング28Aと区別し、下側の集磁リング28を集磁リング28Bと区別している。また、左側のホールIC30をホールIC30Aと区別し、右側のホールIC30をホールIC30Bと区別している。なお、図2および図3では、上下の向きは一致している。
【0023】
磁石25は、第1の操舵軸14の一端(図2における下端)に対して一体回転可能となるように固定された環状(詳しくは、円管状)であり、複数の周方向位置にN極とS極とが交互に着磁されている。磁石25として、たとえばフェライト磁石を用いることができる。磁石25が第1の操舵軸14に対して同軸状に固定されているので、磁石25の軸線と、第1の操舵軸14の軸線とは、互いに一致している。
【0024】
一対の磁気ヨーク26は、磁石25の回りに回転可能な状態で、第2の操舵軸15の一端(図2における上端)に固定されている。一対の磁気ヨーク26のそれぞれは、環状をなしている。詳しくは、一対の磁気ヨーク26のそれぞれは、互いに離隔して向き合う環状のヨークリング40と、ヨークリング40の内周縁における複数の周方向位置に1つずつ設けられる複数の歯41とを一体的に有している。
【0025】
ヨークリング40は、歯41と同数設けられていて歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる矩形薄板状の延設部40Aと、ヨークリング40の外郭をなす環状の折り返し部40Bとを一体的に含んでいる。1つ1つの延設部40Aは、ヨークリング40の軸方向に薄い。全ての延設部40Aは、周方向に等間隔で並んでおり、これに応じて、複数の歯41は、延設部40Aから当該軸方向に突出しつつ(延設されつつ)周方向に等間隔で並んでいる。1つ1つの歯41は、ヨークリング40の径方向に薄い板状である。また、折り返し部40Bでは、軸方向においてある程度の幅があるものの、径方向における肉厚は薄くなっている。折り返し部40Bの軸方向における一端縁(磁気ヨーク26Aの場合には上端縁であり、磁気ヨーク26Bの場合には下端縁)に、延設部40Aが接続されている。
【0026】
図3を参照して、上側の磁気ヨーク26Aのヨークリング40(図3における左側部分)を周方向から見ると、歯41が下方へ突出している状態で、折り返し部40Bは、この歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる延設部40Aの径方向外側端部から、軸方向(当該歯41が突出する下向きの方向)に折り返されている。また、図3における下側の磁気ヨーク26Bのヨークリング40(図3における右側部分)を周方向から見ると、歯41が上方へ突出している状態で、折り返し部40Bは、この歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる延設部40Aの径方向外側端部から、軸方向(当該歯41が突出する上向きの方向)に折り返されている。そのため、磁気ヨーク26Aにおいて歯41が設けられた部分は、J字形状(軸方向において折り返し部40Bが歯41よりも短い場合)またはU字形状(軸方向において折り返し部40Bと歯41とが同じ長さである場合)の断面を有している。
【0027】
図4は、一対の磁気ヨーク26を径方向外側から見た側面図である。
図4を参照して、磁気ヨーク26の径方向外側から見て、それぞれの磁気ヨーク26における歯41では、1つ1つが、大きさの等しい同一形状を有している。詳しくは、1つの歯41において、根元部分41Aから最も離れた端であって、幅方向(磁気ヨーク26の周方向)における中央に位置する部分を先端41Bとすると、それぞれの歯41は、当該径方向から見て、先端41B側へ向かって幅狭となっているとともに、角が丸められた曲線の輪郭Rを有している。
【0028】
輪郭Rは、図4では、放物線(円錐曲線)をなしていて、略U字形状をなしている。放物線の輪郭Rを有する歯41であれば、輪郭Rが再現し易いので、比較的簡単に形成できる。これに代えて、輪郭Rは、曲率半径の異なる複数の曲線を連続させることで構成されていてもよい。この場合、歯41の輪郭Rを複数の曲線で構成することによって、設計要求に応じた複雑な曲線形状の輪郭Rを有する歯41を形成できる。
【0029】
図5は、磁気ヨークユニット33の斜視図である。
一対の磁気ヨーク26に関連して、トルク検出装置17には、図5に示す円管状の合成樹脂部材32が設けられている。一対の磁気ヨーク26は、軸方向において所定のギャップを隔てて同軸状で対向配置されているともに、それぞれの歯41の先端部分(先端41B側の部分)が周方向に交互に配置されるように位置決めされた状態(図4も参照)で、合成樹脂部材32にモールドされている。一対の磁気ヨーク26において、歯41のそれぞれの内周面は、合成樹脂部材32の内周面32Aと略面一となった状態で、この内周面32Aから露出している。一対の磁気ヨーク26において、ヨークリング40の折り返し部40Bにおける外周面は、合成樹脂部材32の外周面32Bと略面一となった状態で、この外周面32Bから露出している。
【0030】
以下では、一対の磁気ヨーク26と、一対の磁気ヨーク26を保持した合成樹脂部材32とのまとまりを、磁気ヨークユニット33という。磁気ヨークユニット33は、円管状をなしている。
図3に示すように、完成したトルク検出装置17では、磁気ヨークユニット33(換言すれば、一対の磁気ヨーク26)は、第2の操舵軸15に対して同軸状に固定されているとともに、第1の操舵軸14とも同軸状になっていて、磁石25を径方向外側から非接触で取り囲んでいる。そのため、磁気ヨークユニット33は、磁石25と同軸状になっている。なお、この状態における磁気ヨーク26(磁気ヨークユニット33)、第1の操舵軸14、第2の操舵軸15および磁石25のそれぞれの軸方向は、一致しており、「軸方向X1」と総称されることがある。
【0031】
そして、磁気ヨークユニット33において位置決めされた一対の磁気ヨーク26では、軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の外法寸法Q、つまり、互いのヨークリング40の延設部40Aの間隔Kに対して互いの延設部40Aの厚さTを足し合わせた値Q(=K+T+T)が、磁石の長さG以上となっている。そのため、軸方向X1に関して、磁石25は、一対の磁気ヨーク26の内側に位置している。
【0032】
図2を参照して、一対の集磁リング28は、軟磁性体を用いて形成された環状の部材であり、一対の磁気ヨーク26を径方向外側から取り囲みつつ、一対の磁気ヨーク26の回りに相対回転可能に配置されており、一対の磁気ヨーク26のそれぞれに対して磁気的に結合されている。具体的には、上側の集磁リング28Aが、上側の磁気ヨーク26Aの折り返し部40Bに対して、全周に亘って径方向外側から非接触で対向しており、下側の集磁リング28Bが、下側の磁気ヨーク26Bの折り返し部40Bに対して、全周に亘って径方向外側から非接触で対向している(図3参照)。このとき、一対の磁気ヨーク26と一対の集磁リング28とは同軸状になっている。
【0033】
一対の集磁リング28は、軸方向X1に離隔して対向する平板状の集磁板35,36を周上1箇所に有している。一対の集磁リング28は、一対の磁気ヨーク26で発生した磁束を集磁板35,36まで導いて、集磁板35,36間に集めることができる。
集磁板35,36間に形成されるエアギャップ37内には、ホールIC30が挿入されている(図3も参照)。ホールIC30の機能については、以降で説明する。
【0034】
このようなトルク検出装置17では、ステアリング2の操舵に伴うトーションバー16の捩れによって、磁石25および一対の磁気ヨーク26が相対回転することにより一対の磁気ヨーク26間の磁束密度が変化するように構成されている。
図6は、トルク検出装置17の動作を説明するための模式図であって、図6(a)は、操舵中立状態から一方向にトーションバー16が捩じれた状態を示し、図6(b)は、操舵中立状態を示し、図6(c)は、操舵中立状態から図6(a)とは反対方向にトーションバー16が捩じれた状態を示している。
【0035】
図6(b)は、ステアリング2が操舵されていない状態(操舵中立状態)を示している。この場合、第1および第2の操舵軸14,15に操舵トルクが加えられておらず、一対の磁気ヨーク26では、それぞれの歯41の先端41Bが、磁石25のN極(図6の磁石25においてドットで塗り潰された部分)およびS極(図6の磁石25においてドットが付されていない部分)の境界を指すように配置されている。この状態では、各磁気ヨーク26の歯41には、磁石25のN極およびS極から同数の磁力線が出入りするため、磁気ヨーク26Aおよび磁気ヨーク26Bのそれぞれの内部で磁力線が閉じている。よって、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間に磁束が漏れることはなく、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間の磁束密度は零のまま変化していない。
【0036】
一方、ステアリング2の操舵によって第1の操舵軸14と第2の操舵軸15との間に捩じれトルクが入力されてトーションバー16(図3参照)が捩じれると、第1の操舵軸14に固定された磁石25と、第2の操舵軸15に固定された一対の磁気ヨーク26との相対位置が周方向に変化する。これにより、図6(a)および図6(c)に示すように、各磁気ヨーク26の歯41の先端41Bが、磁石25のN極とS極との境界に一致しなくなるため、各磁気ヨーク26では、NまたはSの極性を有する磁力線が増加する。このとき、磁気ヨーク26Aおよび磁気ヨーク26Bでは、互いに逆の極性を有する磁力線が増加するので、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間に磁束密度(磁束密度の変化)が発生する。この磁束密度は、トーションバー16の捩じれ量に略比例し、トーションバー16の捩じれ方向に応じて極性が反転する。
【0037】
図3を参照して、このように磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間に磁束密度が発生するとき、一対の集磁リング28は、一対の磁気ヨーク26で発生した磁束を集磁板35,36まで導いて、集磁板35,36間に集めている。そのため、集磁板35,36間に形成されるエアギャップ37内でも、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間と同様に、磁束密度が発生している。エアギャップ37内に挿入されたホールIC30は、一対の集磁リング28によってエアギャップ37に集められた磁束(元々は、一対の磁気ヨーク26に発生した磁束)によって生じた磁束密度を検出し、電気信号として取り出すことができる。
【0038】
ECU20(図1参照)は、ホールIC30からの電気信号に基づいて、トーションバー16の捩じれ量、換言すれば、ステアリングシャフト3に入力された操舵トルクを算出する。
図7(a)は、1つの磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図であって、一部を断面で示しており、図7(b)は、比較例に係る磁気ヨーク26の断面図である。
【0039】
図7(a)を参照して、本願発明では、一対の磁気ヨーク26のそれぞれにおいて、歯41の有効長Y(軸方向X1における最大長さ)を、折り返し部40Bの分だけ大きく稼ぐことができる。詳しくは、一対の磁気ヨーク26のそれぞれにおいて歯41が設けられた部分は、折り返し部40Bにおいて相手側の磁気ヨーク26(図7(a)で図示された磁気ヨーク26の上方に位置すべき磁気ヨーク26)から一旦離れた後、延設部40Aを経てから、歯41において相手側の磁気ヨーク26へ向けて延びている。そのため、折り返し部40Bを設けない場合(図7(b)参照)に比べて、歯41の有効長Yを、折り返し部40Bの分だけ大きく稼ぐことができる。これにより、それぞれの歯41において多くの磁束を取り出せるので、トルク検出装置17では、トルクの検出能力および検出精度を向上させることができる。
【0040】
また、図3を参照して、折り返し部40Bがある場合、磁気ヨーク26において集磁リング28と径方向に対向する部分が折り返し部40Bになることにより、磁気ヨーク26と集磁リング28との対向面積を大きく確保できるので、磁気ヨーク26から集磁リング28への磁束が効率に受け渡されるようになる。これによっても、トルク検出装置17におけるトルクの検出能力および検出精度を向上させることができる。
【0041】
ここで、有効長Y(図7(a)参照)が大きくなった歯41では、延設部40Aを介して折り返し部40Bにつながった根元側(根元部分41A側)が大きくなっているのであって、先端41B側の部分が相手側の磁気ヨーク26へ接近している訳ではない。よって、一対の磁気ヨーク26が干渉することはないし、一対の磁気ヨーク26の間から磁束が漏れ易くなることもない。
【0042】
以上により、一対の磁気ヨーク26の干渉を防ぎつつ、検出能力および検出精度の向上を図ることができる。
そして、軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の外法寸法Qが、磁石25の長さG以上であることから、磁石25を一対の磁気ヨーク26の外法寸法Q(全長)以下まで小さく抑えることができ、その分、トルク検出装置17の小型化を図ることができる。
【0043】
図8(a)は、比較例に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図であり、図8(b)は、本願発明に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図である。図9は、本願発明に係るトルク検出装置17の歯41と、比較例に係るトルク検出装置17の歯41とを重ね合わせて示した図である。
【0044】
図8および図9を参照して、以下では、比較例に係る先細の等脚台形状の歯41(図8(a)参照)と、本願発明の歯41(図8(b)参照)とを比較する。これらの歯41では、軸方向X1における長さが等しく、根元部分41Aの周方向(磁気ヨーク26の周方向)における最大幅Wも等しいものとする(図9参照)。
本願発明の場合には、磁気ヨーク26の歯41は、磁気ヨーク26の径方向から見て、先端側へ向かって幅狭となっているとともに、角が丸められた曲線の輪郭Rを有していることから、先端41B側へ向かって凸湾曲した形状になっている。そのため、本願発明の歯41には、比較例における台形状の歯41の先端41B側に存在する2つの角Cが無い。これにより、図8を参照して、歯41の先端41B側と相手側の磁気ヨーク26のヨークリング40との間の隙間S(点線で囲った部分)を、本願発明では、比較例に比べて、2つの角Cの分だけ大きく確保できる。
【0045】
本願発明の凸湾曲した形状の歯41であれば、角が尖っていない(そもそも角がない)ことから、磁気ヨーク26の磁束が漏れにくくなっている。さらに、凸湾曲した形状の歯41であれば、歯41の先端41B側と相手側の磁気ヨーク26のヨークリング40との間の隙間Sが比較的大きいので、これによっても、当該歯41と相手側の磁気ヨーク26との間でも磁束が漏れにくくなっている。そのため、ホールIC30(図3参照)では、集磁リング28を介して、磁気ヨーク26の磁束密度を高精度に検出することができる。その結果、トルク検出装置17における検出能力および検出精度の向上を図ることができる。
【0046】
図10は、トルク検出装置17において、トーションバー16が捩じれるのに応じて、歯41と磁石25の1つの極とが重なる部分の面積が変化していく様子を説明するためのグラフである。
また、このように凸湾曲した形状をなす本願発明の歯41の場合、前述した操舵中立状態(図6(b)および図8(b)参照)においてトーションバー16が捩じれると、図10を参照して、磁石25のN極またはS極と歯41とが(径方向から見て)重なる面積が、トーションバー16の捩じれ量(換言すれば、磁石25と磁気ヨーク26との相対回転量)に応じて変化する。
【0047】
ここで、本願発明の歯41は、凸湾曲していることから、根元部分41Aから先端41B手前までの領域(図9においてハッチングを付した部分を参照)において、比較例の歯41に比べて幅広になっている。
そのため、本願発明の歯41の場合、N極またはS極と歯41とが重なる面積が、比較例の歯41の場合よりも大きい状態で変化する。また、本願発明の歯41の場合、比較例の歯41の場合よりも、当該面積の変化がより直線的であるとともに、変化の勾配が急になっている(特に、グラフのカーブにおける立ち上がり始め近傍や立ち上がり終わり近傍の領域)。そのため、本願発明の歯41を用いたトルク検出装置17では、磁束(換言すればトルク)の検出効率も向上されている。
【0048】
また、図4を参照して、それぞれの磁気ヨーク26において、1つの歯41の根元部分41Aの周方向における最大幅Wは、周方向に隣り合う歯41同士のピッチPの半分の値以下であることが好ましい。この場合、一対の磁気ヨーク26において周方向に交互に配置される互いの歯41における隣り合う歯41の間に、十分な隙間を確保できるので、隣り合う歯41の間から磁束が漏れることを防止できる。よって、検出能力および検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0049】
また、図3を参照して、このトルク検出装置17では、ホールIC30は、一対の磁気ヨーク26で発生した磁束の密度を、集磁リング28によって平均化された後の状態で検出するので、磁気ヨーク26の磁束密度をばらつきなく検出することができる。その結果、検出能力および検出精度の更なる向上を図ることができる。
そして、このようにトルク検出装置17におけるステアリング2の操舵トルクの検出能力および検出精度の向上が図られているので、電動パワーステアリング装置1では、電動モータ19によるステアリング2の操舵力の補助を高精度に実現できる。
【0050】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、磁気センサとして2つのホールIC30を用いたが(図2参照)、単一のホールICを用いるようにしてもよい。また、磁気センサとして、ホールICに代えて、磁気抵抗素子(MR素子)を用いるようにしてもよい。
また、磁石25の極数は、12極、16極、18極、24極…というように任意に設定できる。
【0051】
図11は、変形例に係る磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図である。
上記実施の形態における各磁気ヨーク26のヨークリング40では、折り返し部40Bは、延設部40Aの径方向外側端部から軸方向X1に沿って、歯41が突出する方向に折り返されている(図7参照)が、図11に示すように、歯41が突出する方向とは反対の方向に折り返されていてもよい。この場合、各磁気ヨーク26において歯41が設けられた部分は、周方向から見て、クランク形状になる。
【0052】
なお、図3を参照して、一対の集磁リング38の軸方向X1における間隔が一定になっていて、これらの集磁リング38が、相対位置が決まった集磁リングアッシー50になっている場合がある。この場合において、軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の延設部40Aの間隔Kが、集磁リングアッシー50の最大長さPよりも大きいのであれば、折り返し部40Bを、歯41が突出する方向に折り返して、対応する集磁リング38に対して径方向内側から対向させることができる。一方、当該間隔Kが、集磁リングアッシー50の最大長さPよりも小さいのであれば、折り返し部40Bを、歯41が突出する方向とは反対方向に折り返して(図11参照)、対応する集磁リング38に対して径方向内側から対向させることができる。このように、折り返し部40Bの折り返し方向を変えることで、共通の集磁リングアッシー50を使用できる。
【0053】
その他、請求項記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリング、14…第1の操舵軸、15…第2の操舵軸、16…トーションバー、17…トルク検出装置、19…電動モータ、20…ECU、25…磁石、26…磁気ヨーク、28…集磁リング、30…ホールIC、40…ヨークリング、40A…延設部、40B…折り返し部、41…歯、41A…根元部分、G…(磁石25の)長さ、Q…外法寸法、X1…軸方向
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングの操舵トルク等を検出するトルク検出装置およびこれを含む電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルク検出装置の一例として、特許文献1ではトルクセンサが提案されている。このトルクセンサは、入力軸と出力軸とを同軸上に連結するトーションバー、入力軸の端部に取り付けられるリング状の磁石、出力軸の端部に取り付けられる一組の環状の磁気ヨーク、一組の磁気ヨークの外周に近接して配置される一組の集磁リング、および、磁気センサ等より構成されている。各磁気ヨークには、磁石のN極及びS極と同数の爪が全周に等間隔に設けられている。一組の集磁リングは、磁気ヨークが磁石から誘導した磁束を集める。磁気センサは、一組の集磁リングの間に挿入されていて、集磁リングが集めた磁束により生じた磁束密度を検出する。
【0003】
ステアリングの操舵によって入力軸と出力軸との間にトルク(操舵トルク)が入力されると、トーションバーが捩じれることで、磁石と磁気ヨークとの周方向における相対位置がずれる。トルクセンサは、当該相対位置のずれに応じて磁気ヨークで変化する磁束密度(厳密には、集磁リングが磁気ヨークから集めた磁束の磁束密度)によって、入力軸と出力軸との間に入力された操舵トルクを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3874642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のトルクセンサでは、各磁気ヨークにおいて爪が設けられた部分が、磁気ヨークの周方向から見て、磁気ヨークの径方向内側へ延びた後に略直角に屈曲して磁気ヨークの軸方向に延びるL字状をなしている(特許文献1の図5参照)。そして、一組の磁気ヨークでは、互いの爪の先端部分が周方向に交互に配置されている。トルクセンサでは、トルクの検出能力および検出精度を向上させるために、磁束が流れる爪を軸方向に延ばして大きくしたいのだが、軸方向における爪の寸法(以下、この明細書では「有効長」ということがある)を大きくし過ぎると、爪の先端が相手側の磁気ヨークに接近し過ぎてしまう。これにより、一組の磁気ヨークが、互いに接近した部分で干渉する虞がある。また、当該部分において磁気ヨークから磁束が不意に漏れ易くなるので、磁気センサが磁気ヨークの磁束密度(集磁リングが集めた磁束密度)を高精度に検出すること(換言すれば、トルクセンサがトルクを高精度に検出すること)が逆に困難になる。
【0006】
また、トルクセンサの小型化は、常に望まれている。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、一対の磁気ヨークの干渉を防ぎつつ、検出能力および検出精度の向上を図ることができるトルク検出装置およびこれを含む電動パワーステアリング装置を提供することを主たる目的とする。
また、この発明は、小型化を図ることができるトルク検出装置およびこれを含む電動パワーステアリング装置を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、第1軸(14)および第2軸(15)を相対回転可能に連結し、前記第1軸と前記第2軸との間に捩じれトルクが入力されるのに応じて捩じれる弾性部材(16)と、前記第1軸に対して同軸状に固定される環状であって、周方向にN極とS極とが交互に着磁された磁石(25)と、前記第2軸に対して同軸状に固定されるとともに前記磁石を非接触で取り囲む環状をなし、軸方向(X1)において対向配置される一対の磁気ヨーク(26)と、前記一対の磁気ヨークをそれぞれ取り囲む環状であって、前記一対の磁気ヨークで発生した磁束を導いて集める一対の集磁リング(28)と、前記一対の集磁リングの間に配置され、前記集磁リングによって集められた磁束の密度を検出する磁気センサ(30)とを含み、前記一対の磁気ヨークのそれぞれは、環状のヨークリング(40)と、前記ヨークリングから軸方向に延設されて周方向に等間隔で並ぶ複数の歯(41)とを含み、前記ヨークリングは、前記歯の根元部分(41A)から径方向外側へ延びる延設部(40A)と、前記延設部の径方向外側端部から軸方向に折り返された折り返し部(40B)とを含んでいて、前記一対の磁気ヨークでは、互いの歯の先端部分が周方向に交互に配置されていて、軸方向に関して、前記一対の磁気ヨークの外法寸法(Q)が、前記磁石の長さ(G)以上であることを特徴とする、トルク検出装置(17)である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記折り返し部は、前記歯が突出する方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置である。
請求項3記載の発明は、前記折り返し部は、前記歯が突出する方向とは反対の方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置である。
請求項4記載の発明は、ステアリング(2)の操舵トルクを検出する請求項1〜3のいずれかに記載のトルク検出装置と、ステアリングの操舵力を補助するための駆動力を発生する電動モータ(19)と、前記トルク検出装置が検出した操舵トルクに応じて、前記電動モータを制御する制御部(20)とを含むことを特徴とする、電動パワーステアリング装置(1)である。
【0009】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、一対の磁気ヨークのそれぞれにおいて、歯の有効長を、折り返し部の分だけ大きく稼ぐことができる。これにより、トルク検出装置では、トルクの検出能力および検出精度を向上させることができる。
ここで、有効長が大きくなった歯では、延設部を介して折り返し部につながった根元側が大きくなっているのであって、先端部が相手側の磁気ヨークへ接近している訳ではない。よって、一対の磁気ヨークが干渉することはないし、一対の磁気ヨークの間から磁束が漏れ易くなることもない。
【0011】
つまり、一対の磁気ヨークの干渉を防ぎつつ、検出能力および検出精度の向上を図ることができる。
そして、軸方向に関して、一対の磁気ヨークの外法寸法が、磁石の長さ以上であることから、磁石を一対の磁気ヨークの外法寸法(全長)以下まで小さく抑えることができ、その分、トルク検出装置の小型化を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、一対の磁気ヨークのそれぞれにおいて歯が設けられた部分は、折り返し部において相手側の磁気ヨークから一旦離れた後、延設部を経てから、歯において相手側の磁気ヨークへ向けて延びている。この場合、折り返し部を設けない場合に比べて、歯の有効長を、折り返し部の分だけ大きく稼ぐことができる。
請求項3記載の発明のように、折り返し部は、歯が突出する方向とは反対の方向に折り返されていてもよく、この場合、各磁気ヨークにおいて歯が設けられた部分は、周方向から見て、クランク形状になる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、電動パワーステアリング装置では、トルク検出装置におけるステアリングの操舵トルクの検出能力および検出精度の向上が図られているので、電動モータによるステアリングの操舵力の補助を高精度に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るトルク検出装置17を備える電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、トルク検出装置17の分解斜視図である。
【図3】図3は、トルク検出装置17の模式的な断面図である。
【図4】図4は、一対の磁気ヨーク26を径方向外側から見た側面図である。
【図5】図5は、磁気ヨークユニット33の斜視図である。
【図6】図6は、トルク検出装置17の動作を説明するための模式図であって、図6(a)は、操舵中立状態から一方向にトーションバー16が捩じれた状態を示し、図6(b)は、操舵中立状態を示し、図6(c)は、操舵中立状態から図6(a)とは反対方向にトーションバー16が捩じれた状態を示している。
【図7】図7(a)は、1つの磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図であって、一部を断面で示しており、図7(b)は、比較例に係る磁気ヨーク26の断面図である。
【図8】図8(a)は、比較例に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図であり、図8(b)は、本願発明に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図である。
【図9】図9は、本願発明に係るトルク検出装置17の歯41と、比較例に係るトルク検出装置17の歯41とを重ね合わせて示した図である。
【図10】図10は、トルク検出装置17において、トーションバー16が捩じれるのに応じて、歯41と磁石25の1つの極とが重なる部分の面積が変化していく様子を説明するためのグラフである。
【図11】図11は、変形例に係る磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本実施の形態では、集磁リングを含むトルク検出装置が自動車の電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明するが、本発明のトルク検出装置は、電動パワーステアリング装置以外の他の装置や機器に適用することもできる。
図1は、本発明の一実施形態に係るトルク検出装置17を備える電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
【0016】
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリング2に連結されるステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、この中間軸5に自在継手6を介して連結されているピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を形成して車両の左右方向に延びるラック軸10とを有している。
【0017】
ラック軸10は、筒状のハウジング11に軸方向移動可能に支持されている。ラック軸10の両端部にはそれぞれタイロッド12が連結されており、各タイロッド12は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪13に連結されている。
ステアリング2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転は中間軸5等を介してピニオン8に伝達され、ピニオン8およびラック9によって、車両の左右方向に沿うラック軸10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪13の転舵が達成される。
【0018】
ステアリングシャフト3は、ステアリング2に連なる第1軸としての第1の操舵軸14と、自在継手4に連なる第2軸としての第2の操舵軸15とを有している。これら第1および第2の操舵軸14,15は、弾性部材としてのトーションバー16を介して同軸上に互いに連結されている。第1および第2の操舵軸14,15は、互いにトルク伝達可能であり、所定の範囲内で相対回転可能とされている。そして、ステアリング2の操舵によって、ステアリング2の操舵トルクに応じた捩じれトルクが第1および第2の操舵軸14,15間に入力されると、トーションバー16が捩じれ、その際、第1および第2の操舵軸14,15が相対回転するようになっている。
【0019】
電動パワーステアリング装置1は、ステアリング2に負荷される操舵トルクを検出するトルク検出装置17と、車速を検出する車速センサ18と、操舵補助用の電動モータ19と、トルク検出装置17および車速センサ18の検出結果(車速や操舵トルク)に応じて、電動モータ19を駆動制御するマイクロコンピュータを含む制御部としてのECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20とを備えている。
【0020】
トルク検出装置17では、トーションバー16の捩じれに起因する第1の操舵軸14と第2の操舵軸15との相対回転変位量に基づく磁束密度の変化から、第1および第2の操舵軸14,15に付与される操舵トルクを検出する。
ECU20が操舵補助用の電動モータ19を駆動すると、その出力回転(駆動力)が、ウォームギヤ機構等の減速機構21で減速されて第2の操舵軸15へ伝達される。第2の操舵軸15に伝えられた動力は、さらに中間軸5等を介して、ピニオン軸7、ラック軸10、タイロッド12およびナックルアーム等を含む転舵機構22に伝えられ、運転者の操舵力が電動モータ19の駆動力によって補助される。
【0021】
図2は、トルク検出装置17の分解斜視図である。図3は、トルク検出装置17の模式的な断面図である。
図2および図3に示すように、トーションバー16の一端16Aは、ピン等(図示せず)を用いて第1の操舵軸14に結合され、トーションバー16の他端16Bは、ピン等(図示せず)を用いて第2の操舵軸15に結合されている。
【0022】
トルク検出装置17は、前述したトーションバー16と、磁石25と、軟磁性体製の一対の磁気ヨーク26と、磁気ヨーク26からの磁束を誘導する一対の集磁リング28と、磁気センサとしての一対のホールIC30とを備えている。ここで、一対の磁気ヨーク26、一対の集磁リング28、および、一対のホールIC30のそれぞれにおける一方を指すときには、符号の末尾に「A」を付し、他方を指すときには符号の末尾に「B」を付すことにする。図2では、上側の磁気ヨーク26を磁気ヨーク26Aと区別し、下側の磁気ヨーク26を磁気ヨーク26Bと区別している。また、上側の集磁リング28を集磁リング28Aと区別し、下側の集磁リング28を集磁リング28Bと区別している。また、左側のホールIC30をホールIC30Aと区別し、右側のホールIC30をホールIC30Bと区別している。なお、図2および図3では、上下の向きは一致している。
【0023】
磁石25は、第1の操舵軸14の一端(図2における下端)に対して一体回転可能となるように固定された環状(詳しくは、円管状)であり、複数の周方向位置にN極とS極とが交互に着磁されている。磁石25として、たとえばフェライト磁石を用いることができる。磁石25が第1の操舵軸14に対して同軸状に固定されているので、磁石25の軸線と、第1の操舵軸14の軸線とは、互いに一致している。
【0024】
一対の磁気ヨーク26は、磁石25の回りに回転可能な状態で、第2の操舵軸15の一端(図2における上端)に固定されている。一対の磁気ヨーク26のそれぞれは、環状をなしている。詳しくは、一対の磁気ヨーク26のそれぞれは、互いに離隔して向き合う環状のヨークリング40と、ヨークリング40の内周縁における複数の周方向位置に1つずつ設けられる複数の歯41とを一体的に有している。
【0025】
ヨークリング40は、歯41と同数設けられていて歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる矩形薄板状の延設部40Aと、ヨークリング40の外郭をなす環状の折り返し部40Bとを一体的に含んでいる。1つ1つの延設部40Aは、ヨークリング40の軸方向に薄い。全ての延設部40Aは、周方向に等間隔で並んでおり、これに応じて、複数の歯41は、延設部40Aから当該軸方向に突出しつつ(延設されつつ)周方向に等間隔で並んでいる。1つ1つの歯41は、ヨークリング40の径方向に薄い板状である。また、折り返し部40Bでは、軸方向においてある程度の幅があるものの、径方向における肉厚は薄くなっている。折り返し部40Bの軸方向における一端縁(磁気ヨーク26Aの場合には上端縁であり、磁気ヨーク26Bの場合には下端縁)に、延設部40Aが接続されている。
【0026】
図3を参照して、上側の磁気ヨーク26Aのヨークリング40(図3における左側部分)を周方向から見ると、歯41が下方へ突出している状態で、折り返し部40Bは、この歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる延設部40Aの径方向外側端部から、軸方向(当該歯41が突出する下向きの方向)に折り返されている。また、図3における下側の磁気ヨーク26Bのヨークリング40(図3における右側部分)を周方向から見ると、歯41が上方へ突出している状態で、折り返し部40Bは、この歯41の根元部分41Aから径方向外側へ延びる延設部40Aの径方向外側端部から、軸方向(当該歯41が突出する上向きの方向)に折り返されている。そのため、磁気ヨーク26Aにおいて歯41が設けられた部分は、J字形状(軸方向において折り返し部40Bが歯41よりも短い場合)またはU字形状(軸方向において折り返し部40Bと歯41とが同じ長さである場合)の断面を有している。
【0027】
図4は、一対の磁気ヨーク26を径方向外側から見た側面図である。
図4を参照して、磁気ヨーク26の径方向外側から見て、それぞれの磁気ヨーク26における歯41では、1つ1つが、大きさの等しい同一形状を有している。詳しくは、1つの歯41において、根元部分41Aから最も離れた端であって、幅方向(磁気ヨーク26の周方向)における中央に位置する部分を先端41Bとすると、それぞれの歯41は、当該径方向から見て、先端41B側へ向かって幅狭となっているとともに、角が丸められた曲線の輪郭Rを有している。
【0028】
輪郭Rは、図4では、放物線(円錐曲線)をなしていて、略U字形状をなしている。放物線の輪郭Rを有する歯41であれば、輪郭Rが再現し易いので、比較的簡単に形成できる。これに代えて、輪郭Rは、曲率半径の異なる複数の曲線を連続させることで構成されていてもよい。この場合、歯41の輪郭Rを複数の曲線で構成することによって、設計要求に応じた複雑な曲線形状の輪郭Rを有する歯41を形成できる。
【0029】
図5は、磁気ヨークユニット33の斜視図である。
一対の磁気ヨーク26に関連して、トルク検出装置17には、図5に示す円管状の合成樹脂部材32が設けられている。一対の磁気ヨーク26は、軸方向において所定のギャップを隔てて同軸状で対向配置されているともに、それぞれの歯41の先端部分(先端41B側の部分)が周方向に交互に配置されるように位置決めされた状態(図4も参照)で、合成樹脂部材32にモールドされている。一対の磁気ヨーク26において、歯41のそれぞれの内周面は、合成樹脂部材32の内周面32Aと略面一となった状態で、この内周面32Aから露出している。一対の磁気ヨーク26において、ヨークリング40の折り返し部40Bにおける外周面は、合成樹脂部材32の外周面32Bと略面一となった状態で、この外周面32Bから露出している。
【0030】
以下では、一対の磁気ヨーク26と、一対の磁気ヨーク26を保持した合成樹脂部材32とのまとまりを、磁気ヨークユニット33という。磁気ヨークユニット33は、円管状をなしている。
図3に示すように、完成したトルク検出装置17では、磁気ヨークユニット33(換言すれば、一対の磁気ヨーク26)は、第2の操舵軸15に対して同軸状に固定されているとともに、第1の操舵軸14とも同軸状になっていて、磁石25を径方向外側から非接触で取り囲んでいる。そのため、磁気ヨークユニット33は、磁石25と同軸状になっている。なお、この状態における磁気ヨーク26(磁気ヨークユニット33)、第1の操舵軸14、第2の操舵軸15および磁石25のそれぞれの軸方向は、一致しており、「軸方向X1」と総称されることがある。
【0031】
そして、磁気ヨークユニット33において位置決めされた一対の磁気ヨーク26では、軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の外法寸法Q、つまり、互いのヨークリング40の延設部40Aの間隔Kに対して互いの延設部40Aの厚さTを足し合わせた値Q(=K+T+T)が、磁石の長さG以上となっている。そのため、軸方向X1に関して、磁石25は、一対の磁気ヨーク26の内側に位置している。
【0032】
図2を参照して、一対の集磁リング28は、軟磁性体を用いて形成された環状の部材であり、一対の磁気ヨーク26を径方向外側から取り囲みつつ、一対の磁気ヨーク26の回りに相対回転可能に配置されており、一対の磁気ヨーク26のそれぞれに対して磁気的に結合されている。具体的には、上側の集磁リング28Aが、上側の磁気ヨーク26Aの折り返し部40Bに対して、全周に亘って径方向外側から非接触で対向しており、下側の集磁リング28Bが、下側の磁気ヨーク26Bの折り返し部40Bに対して、全周に亘って径方向外側から非接触で対向している(図3参照)。このとき、一対の磁気ヨーク26と一対の集磁リング28とは同軸状になっている。
【0033】
一対の集磁リング28は、軸方向X1に離隔して対向する平板状の集磁板35,36を周上1箇所に有している。一対の集磁リング28は、一対の磁気ヨーク26で発生した磁束を集磁板35,36まで導いて、集磁板35,36間に集めることができる。
集磁板35,36間に形成されるエアギャップ37内には、ホールIC30が挿入されている(図3も参照)。ホールIC30の機能については、以降で説明する。
【0034】
このようなトルク検出装置17では、ステアリング2の操舵に伴うトーションバー16の捩れによって、磁石25および一対の磁気ヨーク26が相対回転することにより一対の磁気ヨーク26間の磁束密度が変化するように構成されている。
図6は、トルク検出装置17の動作を説明するための模式図であって、図6(a)は、操舵中立状態から一方向にトーションバー16が捩じれた状態を示し、図6(b)は、操舵中立状態を示し、図6(c)は、操舵中立状態から図6(a)とは反対方向にトーションバー16が捩じれた状態を示している。
【0035】
図6(b)は、ステアリング2が操舵されていない状態(操舵中立状態)を示している。この場合、第1および第2の操舵軸14,15に操舵トルクが加えられておらず、一対の磁気ヨーク26では、それぞれの歯41の先端41Bが、磁石25のN極(図6の磁石25においてドットで塗り潰された部分)およびS極(図6の磁石25においてドットが付されていない部分)の境界を指すように配置されている。この状態では、各磁気ヨーク26の歯41には、磁石25のN極およびS極から同数の磁力線が出入りするため、磁気ヨーク26Aおよび磁気ヨーク26Bのそれぞれの内部で磁力線が閉じている。よって、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間に磁束が漏れることはなく、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間の磁束密度は零のまま変化していない。
【0036】
一方、ステアリング2の操舵によって第1の操舵軸14と第2の操舵軸15との間に捩じれトルクが入力されてトーションバー16(図3参照)が捩じれると、第1の操舵軸14に固定された磁石25と、第2の操舵軸15に固定された一対の磁気ヨーク26との相対位置が周方向に変化する。これにより、図6(a)および図6(c)に示すように、各磁気ヨーク26の歯41の先端41Bが、磁石25のN極とS極との境界に一致しなくなるため、各磁気ヨーク26では、NまたはSの極性を有する磁力線が増加する。このとき、磁気ヨーク26Aおよび磁気ヨーク26Bでは、互いに逆の極性を有する磁力線が増加するので、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間に磁束密度(磁束密度の変化)が発生する。この磁束密度は、トーションバー16の捩じれ量に略比例し、トーションバー16の捩じれ方向に応じて極性が反転する。
【0037】
図3を参照して、このように磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間に磁束密度が発生するとき、一対の集磁リング28は、一対の磁気ヨーク26で発生した磁束を集磁板35,36まで導いて、集磁板35,36間に集めている。そのため、集磁板35,36間に形成されるエアギャップ37内でも、磁気ヨーク26Aと磁気ヨーク26Bとの間と同様に、磁束密度が発生している。エアギャップ37内に挿入されたホールIC30は、一対の集磁リング28によってエアギャップ37に集められた磁束(元々は、一対の磁気ヨーク26に発生した磁束)によって生じた磁束密度を検出し、電気信号として取り出すことができる。
【0038】
ECU20(図1参照)は、ホールIC30からの電気信号に基づいて、トーションバー16の捩じれ量、換言すれば、ステアリングシャフト3に入力された操舵トルクを算出する。
図7(a)は、1つの磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図であって、一部を断面で示しており、図7(b)は、比較例に係る磁気ヨーク26の断面図である。
【0039】
図7(a)を参照して、本願発明では、一対の磁気ヨーク26のそれぞれにおいて、歯41の有効長Y(軸方向X1における最大長さ)を、折り返し部40Bの分だけ大きく稼ぐことができる。詳しくは、一対の磁気ヨーク26のそれぞれにおいて歯41が設けられた部分は、折り返し部40Bにおいて相手側の磁気ヨーク26(図7(a)で図示された磁気ヨーク26の上方に位置すべき磁気ヨーク26)から一旦離れた後、延設部40Aを経てから、歯41において相手側の磁気ヨーク26へ向けて延びている。そのため、折り返し部40Bを設けない場合(図7(b)参照)に比べて、歯41の有効長Yを、折り返し部40Bの分だけ大きく稼ぐことができる。これにより、それぞれの歯41において多くの磁束を取り出せるので、トルク検出装置17では、トルクの検出能力および検出精度を向上させることができる。
【0040】
また、図3を参照して、折り返し部40Bがある場合、磁気ヨーク26において集磁リング28と径方向に対向する部分が折り返し部40Bになることにより、磁気ヨーク26と集磁リング28との対向面積を大きく確保できるので、磁気ヨーク26から集磁リング28への磁束が効率に受け渡されるようになる。これによっても、トルク検出装置17におけるトルクの検出能力および検出精度を向上させることができる。
【0041】
ここで、有効長Y(図7(a)参照)が大きくなった歯41では、延設部40Aを介して折り返し部40Bにつながった根元側(根元部分41A側)が大きくなっているのであって、先端41B側の部分が相手側の磁気ヨーク26へ接近している訳ではない。よって、一対の磁気ヨーク26が干渉することはないし、一対の磁気ヨーク26の間から磁束が漏れ易くなることもない。
【0042】
以上により、一対の磁気ヨーク26の干渉を防ぎつつ、検出能力および検出精度の向上を図ることができる。
そして、軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の外法寸法Qが、磁石25の長さG以上であることから、磁石25を一対の磁気ヨーク26の外法寸法Q(全長)以下まで小さく抑えることができ、その分、トルク検出装置17の小型化を図ることができる。
【0043】
図8(a)は、比較例に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図であり、図8(b)は、本願発明に係るトルク検出装置17において、磁石25および一対の磁気ヨーク26における周方向一部を径方向外側から見た模式的な図である。図9は、本願発明に係るトルク検出装置17の歯41と、比較例に係るトルク検出装置17の歯41とを重ね合わせて示した図である。
【0044】
図8および図9を参照して、以下では、比較例に係る先細の等脚台形状の歯41(図8(a)参照)と、本願発明の歯41(図8(b)参照)とを比較する。これらの歯41では、軸方向X1における長さが等しく、根元部分41Aの周方向(磁気ヨーク26の周方向)における最大幅Wも等しいものとする(図9参照)。
本願発明の場合には、磁気ヨーク26の歯41は、磁気ヨーク26の径方向から見て、先端側へ向かって幅狭となっているとともに、角が丸められた曲線の輪郭Rを有していることから、先端41B側へ向かって凸湾曲した形状になっている。そのため、本願発明の歯41には、比較例における台形状の歯41の先端41B側に存在する2つの角Cが無い。これにより、図8を参照して、歯41の先端41B側と相手側の磁気ヨーク26のヨークリング40との間の隙間S(点線で囲った部分)を、本願発明では、比較例に比べて、2つの角Cの分だけ大きく確保できる。
【0045】
本願発明の凸湾曲した形状の歯41であれば、角が尖っていない(そもそも角がない)ことから、磁気ヨーク26の磁束が漏れにくくなっている。さらに、凸湾曲した形状の歯41であれば、歯41の先端41B側と相手側の磁気ヨーク26のヨークリング40との間の隙間Sが比較的大きいので、これによっても、当該歯41と相手側の磁気ヨーク26との間でも磁束が漏れにくくなっている。そのため、ホールIC30(図3参照)では、集磁リング28を介して、磁気ヨーク26の磁束密度を高精度に検出することができる。その結果、トルク検出装置17における検出能力および検出精度の向上を図ることができる。
【0046】
図10は、トルク検出装置17において、トーションバー16が捩じれるのに応じて、歯41と磁石25の1つの極とが重なる部分の面積が変化していく様子を説明するためのグラフである。
また、このように凸湾曲した形状をなす本願発明の歯41の場合、前述した操舵中立状態(図6(b)および図8(b)参照)においてトーションバー16が捩じれると、図10を参照して、磁石25のN極またはS極と歯41とが(径方向から見て)重なる面積が、トーションバー16の捩じれ量(換言すれば、磁石25と磁気ヨーク26との相対回転量)に応じて変化する。
【0047】
ここで、本願発明の歯41は、凸湾曲していることから、根元部分41Aから先端41B手前までの領域(図9においてハッチングを付した部分を参照)において、比較例の歯41に比べて幅広になっている。
そのため、本願発明の歯41の場合、N極またはS極と歯41とが重なる面積が、比較例の歯41の場合よりも大きい状態で変化する。また、本願発明の歯41の場合、比較例の歯41の場合よりも、当該面積の変化がより直線的であるとともに、変化の勾配が急になっている(特に、グラフのカーブにおける立ち上がり始め近傍や立ち上がり終わり近傍の領域)。そのため、本願発明の歯41を用いたトルク検出装置17では、磁束(換言すればトルク)の検出効率も向上されている。
【0048】
また、図4を参照して、それぞれの磁気ヨーク26において、1つの歯41の根元部分41Aの周方向における最大幅Wは、周方向に隣り合う歯41同士のピッチPの半分の値以下であることが好ましい。この場合、一対の磁気ヨーク26において周方向に交互に配置される互いの歯41における隣り合う歯41の間に、十分な隙間を確保できるので、隣り合う歯41の間から磁束が漏れることを防止できる。よって、検出能力および検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0049】
また、図3を参照して、このトルク検出装置17では、ホールIC30は、一対の磁気ヨーク26で発生した磁束の密度を、集磁リング28によって平均化された後の状態で検出するので、磁気ヨーク26の磁束密度をばらつきなく検出することができる。その結果、検出能力および検出精度の更なる向上を図ることができる。
そして、このようにトルク検出装置17におけるステアリング2の操舵トルクの検出能力および検出精度の向上が図られているので、電動パワーステアリング装置1では、電動モータ19によるステアリング2の操舵力の補助を高精度に実現できる。
【0050】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、磁気センサとして2つのホールIC30を用いたが(図2参照)、単一のホールICを用いるようにしてもよい。また、磁気センサとして、ホールICに代えて、磁気抵抗素子(MR素子)を用いるようにしてもよい。
また、磁石25の極数は、12極、16極、18極、24極…というように任意に設定できる。
【0051】
図11は、変形例に係る磁気ヨーク26を、その円中心位置を通って軸方向に沿う平坦面の位置から見た側面図である。
上記実施の形態における各磁気ヨーク26のヨークリング40では、折り返し部40Bは、延設部40Aの径方向外側端部から軸方向X1に沿って、歯41が突出する方向に折り返されている(図7参照)が、図11に示すように、歯41が突出する方向とは反対の方向に折り返されていてもよい。この場合、各磁気ヨーク26において歯41が設けられた部分は、周方向から見て、クランク形状になる。
【0052】
なお、図3を参照して、一対の集磁リング38の軸方向X1における間隔が一定になっていて、これらの集磁リング38が、相対位置が決まった集磁リングアッシー50になっている場合がある。この場合において、軸方向X1に関して、一対の磁気ヨーク26の延設部40Aの間隔Kが、集磁リングアッシー50の最大長さPよりも大きいのであれば、折り返し部40Bを、歯41が突出する方向に折り返して、対応する集磁リング38に対して径方向内側から対向させることができる。一方、当該間隔Kが、集磁リングアッシー50の最大長さPよりも小さいのであれば、折り返し部40Bを、歯41が突出する方向とは反対方向に折り返して(図11参照)、対応する集磁リング38に対して径方向内側から対向させることができる。このように、折り返し部40Bの折り返し方向を変えることで、共通の集磁リングアッシー50を使用できる。
【0053】
その他、請求項記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリング、14…第1の操舵軸、15…第2の操舵軸、16…トーションバー、17…トルク検出装置、19…電動モータ、20…ECU、25…磁石、26…磁気ヨーク、28…集磁リング、30…ホールIC、40…ヨークリング、40A…延設部、40B…折り返し部、41…歯、41A…根元部分、G…(磁石25の)長さ、Q…外法寸法、X1…軸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸および第2軸を相対回転可能に連結し、前記第1軸と前記第2軸との間に捩じれトルクが入力されるのに応じて捩じれる弾性部材と、
前記第1軸に対して同軸状に固定される環状であって、周方向にN極とS極とが交互に着磁された磁石と、
前記第2軸に対して同軸状に固定されるとともに前記磁石を非接触で取り囲む環状をなし、軸方向において対向配置される一対の磁気ヨークと、
前記一対の磁気ヨークをそれぞれ取り囲む環状であって、前記一対の磁気ヨークで発生した磁束を導いて集める一対の集磁リングと、
前記一対の集磁リングの間に配置され、前記集磁リングによって集められた磁束の密度を検出する磁気センサとを含み、
前記一対の磁気ヨークのそれぞれは、環状のヨークリングと、前記ヨークリングから軸方向に延設されて周方向に等間隔で並ぶ複数の歯とを含み、
前記ヨークリングは、前記歯の根元部分から径方向外側へ延びる延設部と、前記延設部の径方向外側端部から軸方向に折り返された折り返し部とを含んでいて、
前記一対の磁気ヨークでは、互いの歯の先端部分が周方向に交互に配置されていて、軸方向に関して、前記一対の磁気ヨークの外法寸法が、前記磁石の長さ以上であることを特徴とする、トルク検出装置。
【請求項2】
前記折り返し部は、前記歯が突出する方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置。
【請求項3】
前記折り返し部は、前記歯が突出する方向とは反対の方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置。
【請求項4】
ステアリングの操舵トルクを検出する請求項1〜3のいずれかに記載のトルク検出装置と、
ステアリングの操舵力を補助するための駆動力を発生する電動モータと、
前記トルク検出装置が検出した操舵トルクに応じて、前記電動モータを制御する制御部とを含むことを特徴とする、電動パワーステアリング装置。
【請求項1】
第1軸および第2軸を相対回転可能に連結し、前記第1軸と前記第2軸との間に捩じれトルクが入力されるのに応じて捩じれる弾性部材と、
前記第1軸に対して同軸状に固定される環状であって、周方向にN極とS極とが交互に着磁された磁石と、
前記第2軸に対して同軸状に固定されるとともに前記磁石を非接触で取り囲む環状をなし、軸方向において対向配置される一対の磁気ヨークと、
前記一対の磁気ヨークをそれぞれ取り囲む環状であって、前記一対の磁気ヨークで発生した磁束を導いて集める一対の集磁リングと、
前記一対の集磁リングの間に配置され、前記集磁リングによって集められた磁束の密度を検出する磁気センサとを含み、
前記一対の磁気ヨークのそれぞれは、環状のヨークリングと、前記ヨークリングから軸方向に延設されて周方向に等間隔で並ぶ複数の歯とを含み、
前記ヨークリングは、前記歯の根元部分から径方向外側へ延びる延設部と、前記延設部の径方向外側端部から軸方向に折り返された折り返し部とを含んでいて、
前記一対の磁気ヨークでは、互いの歯の先端部分が周方向に交互に配置されていて、軸方向に関して、前記一対の磁気ヨークの外法寸法が、前記磁石の長さ以上であることを特徴とする、トルク検出装置。
【請求項2】
前記折り返し部は、前記歯が突出する方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置。
【請求項3】
前記折り返し部は、前記歯が突出する方向とは反対の方向に折り返されていることを特徴とする、請求項1記載のトルク検出装置。
【請求項4】
ステアリングの操舵トルクを検出する請求項1〜3のいずれかに記載のトルク検出装置と、
ステアリングの操舵力を補助するための駆動力を発生する電動モータと、
前記トルク検出装置が検出した操舵トルクに応じて、前記電動モータを制御する制御部とを含むことを特徴とする、電動パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−101038(P2013−101038A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244583(P2011−244583)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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