説明

トルク検出装置及びパワーステアリング装置

【課題】トルク検出を正確に行なうと共に、各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接を滑らかに行なわせる為の設定を容易に行なえる構造を実現する。
【解決手段】緩衝部材33、33を、各緩衝板部40、40と連結部41とにより構成する。又、このうちの連結部41を、組み付け状態で、上記各緩衝板部40、40の基端縁から緩衝凹部42、42に向けて突出させた、突出部43、43により構成する。この突出部43、43の形状並びに寸法等を調節する事で、上記緩衝部材33、33の弾性力を設定でき、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明のトルク検出装置及びパワーステアリング装置は、例えば自動車の操舵装置に組み込み、ステアリングシャフトに加わるトルクを検出すると共に、この検出したトルクに応じて補助動力源(例えば電動モータ)から補助動力を出力する事により、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する為のステアリング装置として、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力(操舵力)の軽減を図れるパワーステアリング装置が広く使用されている。この様なパワーステアリング装置として、油圧を補助動力源とした油圧式パワーステアリング装置が従来から使用されている。又、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置に就いても、例えば特許文献1等に記載されて従来から知られており、実際にも使用されている。この様なパワーステアリング装置のうち、電動式パワーステアリング装置の基本構成に就いて、本発明の実施の形態の第1例を示す図1〜2を用いて説明する。
【0003】
この図1〜2に示す電動式パワーステアリング装置は、後端部(図1、2の右端部)にステアリングホイール1を固定するステアリングシャフト2と、このステアリングシャフト2を挿通したステアリングコラム3と、このステアリングシャフト2に補助動力を付与する為の操舵力補助装置(アシスト装置)4と、上記ステアリングシャフト2の回転に基づいてタイロッド5、5を変位させる(押し引きする)為の、ステアリングギヤ6とを備える。このうちのステアリングシャフト2を挿通した筒状のステアリングコラム3は、前端部(図1、2の左端部)を、上記操舵力補助装置4を構成するギヤハウジング7の後端部に結合固定している。又、上記ステアリングシャフト2の前端部を、上記操舵力補助装置4を構成する入力軸8に結合している。又、この入力軸8と、同じく上記操舵補助装置4を構成する出力軸9とを、特許請求の範囲に記載した弾性部材に相当するトーションバー10を介して連結している。
【0004】
又、上記出力軸9の前端部で、上記ギヤハウジング7の前端面から突出した部分を、自在継手11を介して、中間シャフト12の後端部に連結している。又、この中間シャフト12の前端部に、別の自在継手13を介して、前記ステアリングギヤ6の入力軸14を連結している。このステアリングギヤ6は、図示しないラックとピニオンとを備え、このうちのピニオンに上記入力軸14を結合している。又、このピニオンと噛合する上記ラックは、両端部に前記タイロッド5、5を連結しており、上記ラックの変位に基づきこれら各タイロッド5、5を押し引きする事で、図示しない操舵輪に所望の舵角を付与する。
【0005】
又、上記操舵力補助装置4は、上記入力軸8と、上記出力軸9と、上記トーションバー10と、特許請求の範囲に記載した補助動力源に相当する電動モータ15と、ウォーム減速機16と、特許請求の範囲に記載したトルク検出手段に相当するトルクセンサ17と、図示しない制御器とを備える。このうちのウォーム減速機16は、上記出力軸9の後端部に外嵌固定されたウォームホイール18と、上記電動モータ15により回転駆動されるウォーム19とを、上記ギヤハウジング7の内側で噛合させて成る。又、上記トルクセンサ17は、上記入力軸8の周囲に設けられており、前記ステアリングホイール1から前記ステアリングシャフト2を介して上記入力軸8に加えられるトルクの方向と大きさとを検出し、検出値を表す信号(検出信号)を、上記制御器に出力する。
【0006】
即ち、上記ステアリングシャフト2を介して上記入力軸8にトルクが加わると、この入力軸8と上記出力軸9とを連結する上記トーションバー10が、これら入力軸8と出力軸9との間で伝達されるトルクに応じて弾性変形する(捻れる)。そして、この弾性変形に伴い、上記入力軸8と出力軸9とが相対回転する。これら入力軸8と出力軸9との相対回転量(相対変位量)と、上記トルクの方向及び大きさとは、相関関係を有する。そこで、上記トルクセンサ17は、この様な入力軸8と出力軸9との相対回転量に基づいて、上記入力軸8に加えられるトルクの方向と大きさとを検出する。そして、上記制御器は、この検出値を表す信号と、車速等を表す他の信号とに応じて、上記電動モータ15に駆動の為の信号を送り、所定の方向に所定の大きさで補助動力を発生させる。
【0007】
この様に構成する電動式パワーステアリング装置の場合、上記操舵力補助装置4の出力軸9から出力されるトルクは、上記ステアリングホイール1から上記ステアリングシャフト2に加えられるトルクよりも大きくできる。即ち、上記出力軸9から出力されるトルクを、上記操舵力補助装置4を構成する上記電動モータ15から上記ウォーム減速機16を介して加えられる補助動力分だけ大きくできる。従って、前記操舵輪に舵角を付与する為に運転者が上記ステアリングホイール1を操作する為に要する力を、上記操舵力補助装置4の補助動力分だけ小さく済ませられる。尚、前記ステアリングギヤ6の周辺部に、トルク検出装置と補助動力源(例えば電動モータ)とを設ける事により(操舵力補助装置を設ける事により)、電動式パワーステアリング装置を構成する場合もある。
【0008】
又、特許文献2には、図14〜16に示す様な電動式パワーステアリング装置が記載されている。この電動式パワーステアリング装置は、ステアリングシャフト2aに加わるトルクを検出する為のトルク検出装置20と、このトルク検出装置20が検出するトルクの大きさに応じて、上記ステアリングシャフト2aに補助動力を付与する電動モータ(図示省略)とを備える。又、上記トルク検出装置20は、特許請求の範囲に記載した第一の回転軸に相当する上記ステアリングシャフト2aと、同じく第二の回転軸に相当する出力軸9aとを、同じく弾性部材に相当するトーションバー10aによりトルクの伝達を可能に連結して成る。
【0009】
そして、このトルクの伝達に伴う上記トーションバー10aの弾性変形(捩れ)に基づく、上記各回転軸2a、9a同士の相対回転量を検出する事により、これら各回転軸2a、9a同士の間で伝達されるトルクを検出する。より具体的には、上記各回転軸2a、9a同士の相対回転に応じて、これら各回転軸2a、9aの軸方向に変位するセンサリング21を、これら各回転軸2a、9aの周囲に設けている。そして、このセンサリング21の軸方向位置を検出し、予め求めたこのセンサリング21の軸方向位置と上記回転軸2a、9a同士の間で伝達されるトルクの方向及び大きさとの相関関係に基づいて、上記トルクの方向及び大きさを求める。
【0010】
この様に構成するトルク検出装置20を含め、パワーステアリング装置用のトルク検出装置の場合、上記回転軸2a、9a同士の間に大きなトルクが加わった場合に、上記トーションバー10aが弾性限界を超えて塑性変形するまで捻れる事は避ける必要がある。この理由は、この様にトーションバー10aが塑性変形した場合には、上記回転軸2a、9a同士の間でトルクを伝達しない中立状態での、これら回転軸2a、9a同士の位置関係(センサリング21の基準位置)がずれ、上記トルクの検出を正確に行なえなくなる為である。この為に、上記特許文献2に記載された構造の場合は、この様なトーションバー10aの塑性変形を防止すべく、上記各回転軸2a、9a同士が所定量を超えて相対回転するのを阻止する為の回転阻止手段22を設けている。
【0011】
具体的には、上記ステアリングシャフト2aの前端部(図14の左端部)に設けた筒部23の内周面に、1対の係合凹部24、24を設けている。又、これと共に、上記出力軸9aの後端部(図14の右端部)に設けた挿入部25の外周面で、この挿入部25の回転方向に関し上記各係合凹部24、24と整合する位置に、1対の係合凸部26、26を設けている。上記ステアリングシャフト2aと出力軸9aとの間でトルクを伝達しない中立状態では、上記各係合凹部24、24の各内側面と上記各係合凸部26、26の各外側面とは、上記回転方向に関し所定の隙間Sを介して対向する。
【0012】
従って、例えば急激なステアリング操作等に伴い、上記ステアリングシャフト2aと出力軸9aとの間に大きなトルクが加わり、これら回転軸2a、9a同士が大きく相対回転する傾向になると、上記各係合凹部24、24の内側面と上記各係合凸部26、26の外側面とが当接(衝合)する。そして、これら各内側面と各外側面との当接に基づき、上記回転軸2a、9a同士の間で上記大きなトルクの伝達が行なわれる。この様に大きなトルクが加わった場合でも、上述の様に内側面と外側面とが当接する事で、上記各回転軸2a、9a同士がそれ以上相対回転するのを阻止される為、上記トーションバー10aが塑性変形するのを防止できる。
【0013】
更に、上記特許文献2に記載された構造の場合は、上記各係合凹部24、24の内側面と上記各係合凸部26、26の外側面とが当接する際の衝突音(騒音)を低減すべく、ウレタンゴム製の緩衝部材29、29を設けている。即ち、上記ステアリングシャフト2aの筒部23の内周面で、この筒部23の回転方向に関し上記各係合凹部24、24の間部分に、それぞれ緩衝用凹部27、27を設けると共に、上記出力軸9aの挿入部25の外周面で、上記回転方向に関し上記各緩衝用凹部27、27と整合する位置に、それぞれ緩衝用凸部28、28を設けている。そして、これら各緩衝用凹部27、27と各緩衝用凸部28、28との間に、上記各緩衝部材29、29を設けている。
【0014】
これら各緩衝部材29、29はそれぞれ、断面形状を略凹字状としており、上記各緩衝用凹部27、27の内面に組み付けられている(装着されている)。又、互いに連結環30で連結された一体構造としている。そして、上記各回転軸2a、9aが大きく相対回転した場合に、上記各係合凹部24、24の内側面と上記各係合凸部26、26の外側面とが当接する以前に、上記各緩衝用凹部27、27の内側面と上記各緩衝用凸部28、28の外側面とにより、上記緩衝部材29、29を構成する各弾性片44、44を圧縮する様に構成している。この様に構成すれば、この緩衝部材29、29(の各弾性片44、44)を弾性変形(圧縮)させる力(抵抗力、反力)が、上記回転軸2a、9a同士の間に付与される。この為、上記各係合凹部24、24の内側面と上記各係合凸部26、26の外側面とが当接する際の勢いを抑える事ができ、この当接の際の衝突音を低減できる。
【0015】
尚、上記特許文献2に記載された構造の場合は、上記回転軸2a、9a同士の間でトルクを伝達しない中立状態で、これら回転軸2a、9aの回転方向に対向する、上記緩衝部材29、29の各弾性片44、44と上記各緩衝用凸部28、28の外側面との間に、所定の隙間(捩り代)sが存在する。この為、トルク伝達に伴い上記各回転軸2a、9a同士が相対回転した場合に、上記中立状態から上記隙間sがなくなるまでの間は、上記回転軸2a、9a同士の間に、上記緩衝部材29、29(の各弾性片44、44)を弾性変形(圧縮)させる力(抵抗力、反力)は加わらない。即ち、上記中立状態から上記隙間sがなくなるまでの間は、前記トーションバー10aを上記回転軸2a、9a同士の間で伝達されるトルクのみに応じて弾性変形させる事ができ、このトーションバー10aの弾性変形に基づくトルクの検出を正確に行なえる。
【0016】
一方、上記各緩衝部材29、29の各弾性片44、44と上記各緩衝用凸部28、28の外側面とが当接する(隙間sがなくなる)と共に、上記各回転軸2a、9a同士の相対回転が更に続くと、上述の様にこれら各回転軸2a、9a同士の間に、上記緩衝部材29、29の各弾性片44、44を弾性変形(圧縮)させる力(抵抗力、反力)が加わる。この為、上記各係合凹部24、24の内側面と各係合凸部26、26の外側面との当接を滑らかに行なう事ができる。言い換えれば、上記トーションバー10aによるトルク伝達から、上記各係合凹部24、24の内側面と各係合凸部26、26の外側面との当接によるトルク伝達への変化を円滑に行なう事ができる。従って、上述した様に当接の際の騒音を抑えると共に、この当接に伴う衝突の感覚が運転者に伝わる事を防止して、ステアリングの操舵感を良好にできると考えられる。
【0017】
上述した様なトルク検出装置20の場合、上述の様な所望の性能を得る為には、中立状態から各係合凹部24、24の内側面と係合凸部26、26の外側面とが当接するまでの範囲内で、トルク検出を正確に行なう為に必要なトーションバー10aの捩り代sを設定する必要がある。又、これと共に、この捩り代sを越えてから上記各係合凹部24、24の内側面と係合凸部26、26の外側面とが当接するまでの間に、この当接を滑らかに行なう為に必要な弾性力(抵抗力、反力)を、各緩衝部材29、29により付与できる様に設定する必要がある。上記特許文献2に記載された構造の場合は、各緩衝用凹部27、27の内側面と各緩衝用凸部28、28の外側面との距離、回転方向に関する上記各緩衝部材29、29の各弾性片44、44の厚さ寸法、これら各緩衝部材29、29を構成するウレタンゴムの特性(ばね係数)等を調節する事により設定するが、この様な設定をより容易に行なえる構造が望まれている。
【0018】
【特許文献1】特開2004−262266号公報
【特許文献2】特開2000−289629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明のトルク検出装置及びパワーステアリング装置は、上述の様な事情に鑑みて、所望の性能を発揮する為の設定を容易に行なえる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のトルク検出装置及びパワーステアリング装置のうち、請求項1、2に記載したトルク検出装置は、第一の回転軸と、第二の回転軸と、弾性部材と、トルク検出手段と、回転阻止手段とを備える。
このうちの第一の回転軸は、一端部に筒部を設けたものである。この様な第一の回転軸としては、例えばステアリングホイールを固定するステアリングシャフト(例えば前述の図14に示した様な構造の場合)、或いは、操舵力補助装置を構成する出力軸(例えば図2に示す様な構造の場合)等が相当する。
又、上記第二の回転軸は、一端部にこの筒部に挿入可能な大きさ及び形状を有する挿入部を設け、上記第一の回転軸と同心に配置されたものである。この様な第二の回転軸としては、例えばステアリングシャフトと同心に設けられた出力軸(例えば前述の図14に示した様な構造の場合)、或いは、操舵力補助装置を構成する入力軸(例えば図2に示す様な構造の場合)等が相当する。
又、上記弾性部材は、上記第一、第二の回転軸同士を連結すると共に、これら第一、第二の回転軸同士の間で伝達されるトルクに応じて弾性変形するものである。この様な弾性部材としては、例えばトーションバーが相当する。
又、上記トルク検出手段は、上記弾性部材の弾性変形に基づき上記トルクを検出する為のものである。この様なトルク検出手段としては、例えば、上記弾性部材の弾性変形に基づく上記第一、第二の回転軸同士の相対回転量を検出し、予め求めたこの相対回転量とトルクとの相関関係に基づいて、このトルク(の方向及び大きさ)を求めるもの等を採用できる。
又、上記回転阻止手段は、上記弾性部材が所定量を超えて弾性変形するのを阻止する為のものである。
【0021】
特に、請求項1、2に記載したトルク検出装置に於いては、上記回転阻止手段は、上記筒部の内周面と上記挿入部の外周面とのうちの一方の周面(例えば挿入部の外周面)に、この一方の周面から径方向(例えば径方向内方)に凹入する状態で設けられた複数の係合凹部と、同じく他方の周面(例えば筒部の内周面)に、この他方の周面から径方向(例えば径方向内方)に突出する状態で設けられた、上記係合凹部内で上記第一、第二の回転軸の回転方向に所定の相対変位を可能な大きさ及び形状を有する、上記各係合凹部と同数の係合凸部と、上記回転方向に関して隣り合う係合凸部の外側面同士の間に設けられた、弾性板製の緩衝部材とから成るものである。
又、このうちの緩衝部材を、上記回転方向に互いに離隔した状態で設けた1対の緩衝板部と、これら各緩衝板部の基端縁同士を連結(接続)する連結部とを備えたものとしている。
又、上記各緩衝板部の先端縁をそれぞれ、上記第一、第二の回転軸同士の間で上記トルクを伝達しない中立状態で、上記回転方向に関し、上記係合凸部の外側面と隙間を介して対向させている。
【0022】
更に、請求項1に記載したトルク検出装置の場合には、上記連結部を、組み付け状態で、上記各緩衝板部の基端縁から上記一方の周面(例えば挿入部の外周面)に向けて径方向(例えば径方向内方)に突出する、突出部(例えば突条部)により構成する。
そして、上記第一、第二の回転軸同士の相対回転に伴う、上記突出部の上記径方向に関する弾性変形に基づいて、これら第一、第二の回転軸同士の間に相対回転の抵抗となる方向の力を付与する。
又、請求項2に記載したトルク検出装置の場合には、上記連結部を、上記回転軸の回転方向に関し、上記各緩衝板部に互いに離れる方向の弾性力を付与すると共に、上記一方の周面(例えば挿入部の外周面)に、この周面の周方向に関する変位を阻止した状態で支持する為の、弾性支持部により構成する。
そして、上記第一、第二の回転軸同士の相対回転に伴う、上記弾性支持部の上記回転方向に関する弾性変形に基づいて、これら第一、第二の回転軸同士の間に相対回転の抵抗となる方向の力を付与する
【0023】
又、上述の様な請求項1或いは請求項2に記載したトルク検出装置を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した様に、上記緩衝部材を、上記各緩衝板部と上記連結部(突出部、弾性支持部)とを一体に形成した、板ばねとする。
又、請求項4に記載した様に、上記一方の周面(例えば挿入部の外周面)に、この周面から径方向に凹入する状態で緩衝凹部を設ける。そして、上記緩衝部材を構成する上記連結部(突出部、弾性支持部)を、組み付け状態で上記緩衝凹部内に入り込む様に、弾性板を折り曲げ形成する事により構成したものとする。この場合に例えば、上記連結部を、上記各緩衝板部に対して隆起する様に、突条の如く折り曲げ形成する。
【0024】
又、請求項5に記載したパワーステアリング装置は、ステアリングシャフトに加わるトルクを検出する為のトルク検出装置と、このトルク検出装置が検出するトルクに応じて、上記ステアリングシャフトに補助動力を付与する補助動力源(例えば電動モータ)とを備える。
特に、上記請求項5に記載したパワーステアリング装置に於いては、上記トルク検出装置を、上述した様なトルク検出装置としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明のトルク検出装置及びパワーステアリング装置によれば、トルク検出を正確に行なえ、且つ、第一、第二の回転軸同士の相対回転を制限する為の各係合凹部と各係合凸部との当接を、滑らかに行なえる。
即ち、緩衝部材を構成する緩衝板部の先端縁は、上記第一、第二の回転軸同士の間でトルクを伝達しない中立状態で、これら各回転軸同士の回転方向に関し、上記係合凸部の外側面と隙間(捩り代)を介して対向する。この為、トルク伝達に伴い上記第一、第二の回転軸同士が相対回転した場合に、上記中立状態から上記隙間がなくなるまでの間は、上記第一、第二の回転軸同士の間に上記緩衝部材を弾性変形させる力(抵抗力、反力)が加わらない。即ち、上記中立状態から上記隙間がなくなるまでの間は、弾性部材(例えばトーションバー)を、ほぼ上記第一、第二の回転軸同士の間で伝達されるトルクのみに応じて弾性変形させる事ができ、この弾性部材の弾性変形に基づくトルクの検出を正確に行なえる。
【0026】
一方、上記先端縁と上記外側面とが当接する(隙間がなくなる)と共に、上記第一、第二の回転軸同士の相対回転が更に続くと、これら第一、第二の回転軸同士の間に、上記緩衝部材を弾性変形させる力が、これら両回転軸の相対変位を阻止する方向に加わる。例えば、請求項1に記載した構造の場合には、上記緩衝部材を構成する突出部を径方向に弾性変形させる力が、上記第一、第二の回転軸同士の間に付与される。又、請求項2に記載した構造の場合には、上記緩衝部材を構成する弾性支持部を上記回転方向に弾性変形させる力が、上記第一、第二の回転軸同士の間に付与される。そして、この様な力に基づいて、上記各係合凹部の内側面と各係合凸部の外側面との当接を滑らかに行なえる。即ち、上記弾性部材によるトルクの伝達から、上記各係合凹部の内側面と各係合凸部の外側面との当接に基づくトルクの伝達への変化を滑らかに行なえ、ステアリングの操舵感を良好に保てる。
【0027】
更に、本発明の場合は、上述の様な性能を発揮させる為に必要な設定を容易に行なえる。即ち、上記緩衝部材は、1対の緩衝板部同士を、突出部(請求項1に記載した構造の場合)、或いは、弾性支持部(請求項2に記載した構造の場合)により連結したものとしている。この為、上記各係合凹部の内側面と各係合凸部の外側面との当接を滑らかに行なう為の設定を、上記突出部或いは弾性支持部の弾性力を調節する事で(例えば突出部或いは弾性支持部の形状並びに寸法等を調節する事で)、容易に行なえる。一方、トルク検出を正確に行なう為の捩り代の設定は、上記各緩衝部材を構成する各緩衝板部の先端縁同士の距離を調節する事で、やはり容易に行なえる。この為、上述の様に、所望の性能を発揮させる為に必要な設定を容易に行なえる。
【0028】
又、請求項3に記載した構造を採用した場合には、上記緩衝部材を安価に製造できる。又、請求項4に記載した構成を採用した場合には、例えば請求項1に記載した緩衝部材を構成する突出部を、上記緩衝凹部の内側面と一方の周面との連続部により径方向に確実に弾性変形させる事ができる。或いは、例えば請求項2に記載した緩衝部材を構成する弾性支持部を上記緩衝凹部に係合させる事により、この緩衝部材を一方の周面に確実に支持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[実施の形態の第1例]
図1〜6は、請求項1、3〜5に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、1対の回転軸(入力軸8、出力軸9)にそれぞれ設けた各係合凹部31、31と各係合凸部32、32との当接を滑らかに行なわせる為の緩衝部材33、33の構造を工夫した点にある。電動式パワーステアリング装置全体の構造に就いては、前述の背景技術の欄で本例の図1、2を用いて説明した通りであるから、重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分並びに上記背景技術の欄で説明しなかった部分を中心に説明する。
【0030】
操舵力補助装置4を構成し、ステアリングシャフト2に加わるトルクを検出する為のトルク検出装置45は、特許請求の範囲に記載した第二の回転軸に相当する、鋼製の入力軸8と、同じく第一の回転軸に相当する、鋼製の出力軸9と、同じく弾性部材に相当するトーションバー10と、同じくトルク検出手段に相当するトルクセンサ17と、回転阻止手段34とを備える。
このうちの入力軸8は、後端部(図2、3の右端部)を、上記ステアリングシャフト2の前端部(図2の左端部)とがたつきなく結合している。又、この入力軸8は、前端部(図2、3の左端部)に、後述する筒部36に挿入可能な大きさ及び形状を有する挿入部35を設けている。又、上記出力軸9は、後端部に、この挿入部35を挿入する為の筒部36を設けている。そして、この筒部36に上記挿入部35を挿入した状態で、上記入力軸8と出力軸9とを同心に配置している。
【0031】
又、上記トーションバー10は、上記入力軸8と出力軸9とをトルクの伝達を可能に連結している。この為に、このトーションバー10を、これら入力軸8と出力軸9との内側に挿通した状態で、後端部を上記入力軸8に結合固定すると共に、前端部を上記出力軸9に結合固定している。この様なトーションバー10は、上記入力軸8と出力軸9との間で伝達されるトルクに応じて弾性変形する(捻れる)。
【0032】
又、上記トルクセンサ17は、この様なトーションバー10の弾性変形に基づく、上記入力軸8と出力軸9との相対回転量を検出し、この相対回転量に対応するトルク(の方向及び大きさ)を求める。この為に、上記入力軸8の外周面で、上記トルクセンサ17と対向する部分に、この入力軸8の中心軸と平行な凹溝37、37を、この入力軸8の円周方向等間隔複数個所に設けている。又、上記出力軸9の後端部外周面に筒状のセンサ筒38を外嵌固定している。このセンサ筒38は、上記トルクセンサ17と対向する位置に透孔39、39を、このセンサ筒の円周方向等間隔複数個所に設けている。そして、上記トルクセンサ17により、上記各凹溝37、37と各透孔39、39との位置関係の変化に伴う磁気或は静電容量に関する特性の変化を検出する事により、上記入力軸8と出力軸9との相対回転量、延いては、この相対回転量に対応する上記トルクを検出自在としている。
【0033】
又、上記回転阻止手段34は、上記トーションバー10が所定量を超えて弾性変形するのを阻止する為のものである。この様な回転阻止手段10を構成する為に、上記入力軸8の前端部に設けた前記挿入部35の外周面に、この外周面から径方向内方に凹入する状態で、複数の係合凹部31、31を設けている。本例の場合は、4個所に係合凹部31、31を、円周方向に関して等間隔に設けている。又、上記出力軸9の後端部に設けた前記筒部36の内周面に、上記係合凹部31、31と同数(4個所)の係合凸部32、32を、この内周面から径方向内方に突出する状態で設けている。これら各係合凸部32、32は、上記各係合凹部31、31内で、上記入力軸8及び出力軸9の回転方向に、所定の相対変位を可能な大きさ及び形状を有する。即ち、上記入力軸8と出力軸9との間でトルクを伝達しない中立状態(ステアリングシャフト2に操舵力が加わらない状態)で、上記各係合凹部31、31の各内側面と上記各係合凸部32、32の各外側面とが、上記回転方向に関し、所定の隙間S{例えば図6(A)参照}を介して対向する様にしている。
【0034】
又、本例の場合は、上記挿入部35の外周面と上記筒部36の内周面との間で、且つ、上記回転方向に関し、互いに隣り合う上記各係合凸部32、32の外側面同士の間にそれぞれ、緩衝部材33、33を設けている。これら各緩衝部材33、33は、前記トーションバー10の弾性変形(捻れ)に伴って上記入力軸8と出力軸9とが相対回転した際に、上記各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接を滑らかに行なわせる為のものである。この様な緩衝部材33、33は、図5に詳示する様に、上記回転方向に互いに離隔した状態で設けた1対の緩衝板部40、40と、これら各緩衝板部40、40の基端縁同士を連結する連結部41とを備える。
【0035】
本例の場合、この様な各緩衝部材33、33を、金属板{例えば炭素鋼板(SK、S50CM、S60CM等)、ステンレス鋼(SUS)板等の金属製の板材}等の弾性板に、折り曲げ加工等のプレス加工を施す事により形成した、或は合成樹脂を射出成形して造った、板ばねとしている。即ち、上記各緩衝部材33、33を、上記各緩衝板部40、40と連結部41とを一体に形成した、1枚の波状の板ばねとしている。そして、本例の場合は、上記連結部41を、上記各緩衝部材33、33の組み付け状態で、上記各緩衝板部40、40の基端縁から上記挿入部35の外周面に向けて径方向内方に突出する状態で設けた、突出部43としている。即ち、この突出部43を、上記各緩衝板部40、40の基端縁から連続する状態で、上記径方向内方に向けて隆起する様に折り曲げ形成した、突条の如き折り曲げ部としている。
【0036】
又、この様な突出部43と連続する上記各緩衝板部40、40は、その先端縁を、組み付け状態で、且つ、上記入力軸8と出力軸9との間でトルクを伝達しない中立状態で、これら入力軸8及び出力軸9の回転方向に関し、上記各係合凹部31、31の内側面と上記係合凸部32、32の外側面との間に位置させている。そして、この様に位置させた状態で、上記各先端縁を、上記各係合凸部32、32の外側面と所定の隙間s{例えば図6(A)参照}を介して対向させている。これら各先端縁と各外側面との隙間s(角度で表すとγ0 )が、トルク検出を行なう為の捩り代となる。
【0037】
又、上記挿入部35の外周面で、この挿入部35の回転方向に関し、上記各係合凹部31、31同士の間部分にそれぞれ、この外周面から径方内方に凹入する状態で、4個の緩衝凹部42、42を設けている。上記各緩衝部材33、33を構成する上記突出部43は、この様な緩衝凹部42内に入り込む様に突出(隆起)させている。従って、後述する図6に示す様に、上記各緩衝部材33、33は、この様な突出43と緩衝凹部42との当接に基づいて、上記挿入部35(=入力軸8)と共に回転する。又、この様な突出部43は、上記各係合凹部31、31の内側面と係合凸部32、32の外側面とが当接する際に、同じく図6に示す様に、上記各緩衝凹部42、42の内側面と上記挿入部35の外周面との連続部により径方向外方に押し出されつつ弾性変形し、この弾性変形に伴う力(弾性力、抵抗力、反力)を、上記入力軸8と出力軸9との間に付与する。
【0038】
尚、本例の場合は、上記各緩衝凹部42、42の形状と上記各係合凹部31、31の形状とを、互いに同じにしている。言い換えれば、上記挿入部35の外周面には、同形状の凹部を8個所、円周方向に関して等間隔に設けている。従って、本例の場合は、組み付け状態で、上記各係合凸部32、32と係合する凹部が上記係合凹部31、31となり、同じく上記各緩衝部材33、33の各突出部43、43と係合する凹部が上記緩衝凹部42、42となる。
【0039】
上述の様に構成する本例の場合は、トルク検出を正確に行なえ、且つ、各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接を、滑らかに行なえる。
即ち、各緩衝部材33、33を構成する各緩衝板部40、40の先端縁は、図6(A)に示す様に、入力軸8と出力軸9との間でトルクを伝達しない中立状態で、これら入力軸8及び出力軸9の回転方向に関し、上記各係合凸部32、32の外側面と隙間(捩り代)s(角度で表すと角度γ0 )を介して対向する。この為、トルク伝達に伴い上記入力軸8と出力軸9とが相対回転した場合に、上記中立状態から上記隙間sがなくなるまでの間、即ち、図6(A)の状態から同図(B)の状態になるまでの間は、上記入力軸8と出力軸9との間に上記各緩衝部材33、33を弾性変形させる力(弾性力、抵抗力、反力)は加わらない。
【0040】
即ち、上記中立状態から上記隙間がなくなるまでの間(角度γ0 分相対回転するまでの間)は、前記トーションバー10を、上記入力軸8と出力軸9との間で伝達されるトルクのみに応じて弾性変形させる(捩る)事ができ、このトーションバー10の弾性変形に基づくトルクの検出を正確に行なえる。尚、上記図6(A)の状態から同図(B)の状態になるまでの間は、上記各緩衝部材33、33が上記入力軸8と共に回転する。この際、これら各緩衝部材33、33を構成する各緩衝板部40、40と、上記出力軸9の筒部36の内周面とが摺接する。但し、この摺接に伴う抵抗が上記トルク検出に及ぼす影響は、殆どない。尚、上記各緩衝部材33、33を金属板製とする場合、好ましくは、上記各緩衝部材33、33の表面のうち、上記筒部36の内周面と摺接する部分に、PTEF等の低摩擦材製のコーティング層を設ける。
【0041】
一方、上記各緩衝板部40、40の先端縁と上記各係合凸部32、32の外側面とが当接する(隙間sがなくなる)と共に、上記入力軸8と出力軸9との相対回転が更に続いた場合には、即ち、図5(B)の状態から同図(C)の状態に向けて変化した場合には、これら入力軸8と出力軸9との間に、上記各緩衝部材33、33の弾性変形に伴う力(弾性力、抵抗力、反力)が、上記トルクの伝達方向と逆方向に加わる。より具体的には、上記各緩衝板部40、40の先端縁と上記係合凸部31、31の外側面との当接に基づいて、上記緩衝部材33、33が、上記筒部36に対する相対回転を阻止される。そして、この状態で、上記挿入部35の外周面に設けた各緩衝凹部42、42の内側面(回転方向に関して後側の内側面)とこの挿入部35の外周面との連続部により、上記各緩衝部材33、33を構成する各突出部43、43が径方向外方に押し出される。
【0042】
そして、この様な押し出し伴う反力が、上記入力軸8と出力軸9との間に緩衝力として加わる。又、この押し出しの際には、この様な反力だけでなく、上記突出部43、43と上記連続部との摺接に伴う摩擦力も、反力として加わる。この為、この様な各緩衝部材33、33の反力(弾性力並びに摩擦力)に基づいて、上記係合凹部31、31の内側面と係合凸部32、32の外側面との当接を滑らかに行なえる。言い換えれば、上記トーションバー10によるトルクの伝達から、上記各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接に基づくトルクの伝達への変化を滑らかに行なえ、ステアリングの操舵感を良好に保てる。
【0043】
更に、本例の場合は、上述の様な性能を発揮させる(トルク検出を正確に行なうと共に、各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接を滑らかに行なわせる)為に必要な設定を、容易に行なえる。即ち、上記各緩衝部材33、33を、1対の緩衝板部40、40同士を突出部43により連結したものとしている。この為、上記係合凹部31、31の内側面と係合凸部32、32の外側面との当接を滑らかに行なう為の設定、即ち、上記各緩衝部材33、33の弾性力(緩衝力)の設定を、上記突出部43の形状、寸法並びに板厚等を調節する事により容易に行なえる。例えば、図5(B)に示す様に、この突出部43の高さ寸法(組み付け状態での緩衝凹部42、42との当接部からの径方向寸法)△tにより、上記弾性力(緩衝力)の大きさを、同じく突出部43の、組み付け状態での緩衝凹部42、42との当接部と最も径方向内側部分との回転方向に関する幅寸法に対応する開き角αにより、弾性変形開始(緩衝開始)からの弾性力の変化量を、それぞれ調節できる。一方、トルク検出を正確に行なう為の捩り代s(角度で表すと角度r0 )の設定(緩衝開始の位置の設定)は、上記各緩衝板部40、40の先端縁同士の距離(に対応する角度θ)を調節する事で、やはり容易に行なえる。この為、上述の様に、所望の性能を発揮させる為に必要な設定を容易に行なえる。 尚、図示は省略するが、入力軸8及び出力軸9の軸方向に関する、各緩衝部材33、33の端縁同士を連結する事により、これら各緩衝部材33、33を一体構造とする事もできる。
【0044】
[実施の形態の第2例]
図7、8は、請求項1、3〜5に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。前述の第1例の場合は、各緩衝部材33、33を構成する各突出部43、43を、断面略円弧状としているのに対して、本例の場合は、各緩衝部材33a、33aを構成する各突出部43a、43aを、組み付け状態での径方向に関し外側(外径側)に向かう程幅寸法が大きくなる、断面略台形としている。これに伴って、これら各突出部43a、43aの高さ寸法(組み付け状態での緩衝凹部42、42との当接部からの径方向寸法)△tが、上記第1例の各突出部43、43の場合に比べて大きくなっている。又、これと共に、これら各突出部43a、43aの、組み付け状態での緩衝凹部42、42との当接部と最も径方向内側部分との回転方向に関する幅寸法に対応する開き角α、並びに、各緩衝板部40、40の先端縁同士の間隔(に対応する角度θ)が、同じく上記第1例の各突出部43、43の場合に比べて小さくなっている。この為、この第1例の構造の場合に比べて、緩衝開始を遅くできる(捩り代を大きくできる)と共に、この緩衝開始からの弾性力(緩衝力)の変化量を大きくでき、しかも、大きな弾性力(緩衝力)得られる。言い換えれば、各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接の直前に、大きな弾性力(緩衝力)を得られる。
その他の構成及び作用は、上述した第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0045】
[実施の形態の第3例]
図9、10は、請求項1、3〜5に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、各緩衝部材33b、33bの突出部43bを1対の突出板部46、46により構成し、これら両突出板部46、46の傾斜角度を、2段階に変化させている。即ち、各緩衝板部40、40の端縁同士を通過する仮想平面に平行な仮想平面Hに対する、上記両突出板部46、46の傾斜角度を、途中で変化させている。より具体的には、上記両突出板部46、46のうちの上記各緩衝板部40、40側の半部の傾斜角度をβ1 とし、同じく反対側の半部の傾斜角度をβ2 とした場合に、β1 >β2 としている。
【0046】
この様な本例の場合、上記各緩衝部材33b、33bの突出部43bが、挿入部35の外周面に設けた各緩衝凹部42、42の内側面とこの挿入部35の外周面との連続部により、この挿入部35の径方向外方に向けて押し出される際には、上記各突出板部46、46のうちの上記傾斜角度がβ1 の部分が押し出されてから、続いてβ2 の部分が押し出される。この様な本例の場合は、これら各突出部43b、43bの高さ寸法(組み付け状態での緩衝凹部42、42との当接部からの径方向寸法)△tと共に、上記各傾斜角度β1 、β2 を調節する事により、より細かい弾性力の設定ができ、更なるステアリング操舵感の向上を図れる。
その他の構成及び作用は、前述した第1例及び第2例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0047】
[実施の形態の第4例]
図11、12は、請求項1、3〜5に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合は、出力軸9の後端部に設けた筒部36の内周面に係合凹部31a、31aを設けると共に、入力軸8の前端部に設けた挿入部35の外周面に係合凸部32a、32aを設けている。又、上記筒部36の内周面に、緩衝凹部42a、42aを設けている。本例の場合、これら各緩衝凹部42a、42aの形状と上記各係合凹部31a、31aの形状とを、互いに同じにしている。言い換えれば、上記挿入部35の外周面に、同形状の凹部を8個所、円周方向に関して等間隔に設けている。従って、組み付け状態で、上記各係合凸部32a、32aと係合する凹部が上記係合凹部31a、31aとなり、同じく上記各緩衝部材33c、33cの各突出部43c、43cと係合する凹部が上記緩衝凹部42a、42aとなる。又、本例の場合は、前述の第1〜3例の構造に比べて、回転方向に関する、上記各緩衝凹部42a、42aの幅寸法(互いに対向する内側面同士の距離)が大きい。これに伴って、回転方向に関する、各突出部43c、43cの幅寸法が大きくなると共に、同じく各緩衝板部40、40の幅寸法が小さくなっている。
その他の構成及び作用は、前述した第1、2例並びに上述した第3例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0048】
[実施の形態の第5例]
図13は、請求項2〜4に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合は、緩衝部材33dを構成する連結部41aを、弾性支持部47により構成している。この弾性支持部47は、各緩衝板部40、40に互いに離れる方向の弾性力を付与すると共に、入力軸8の後端部に設けた挿入部35の外周面に、この挿入部35の回転方向に関する変位を阻止した状態で支持する為のものである。この為に、本例の場合は、この弾性支持部47を、上記各緩衝板部40、40の基端縁から連続する状態で、上記挿入部35の外周面に設けた緩衝凹部42b内に入り込む様に(この緩衝凹部42bの内面に沿う様に)突出(隆起)させている。この様な弾性支持部47を設けた上記各緩衝部材33dは、これら各弾性支持部47と上記各緩衝凹部42bとの係合に基づいて、上記入力軸8と共に回転する。又、この様な各弾性支持部47は、各係合凹部31、31の内側面と係合凸部32、32の外側面とが当接する際に、図13(B)に示す様に、これら係合凸部32、32の外側面と当接する各緩衝板部40に押圧されて弾性変形し、この弾性変形に伴う力(弾性力、抵抗力、反力)を、上記入力軸8と出力軸9との間に付与する。
【0049】
この様な本例の場合も、前述した各例の場合と同様に、トルク検出を正確に行なえ、且つ、各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接を、滑らかに行なえる。
即ち、各緩衝部材33dを構成する各緩衝板部40、40の先端縁は、図13(A)に示す様に、入力軸8と出力軸9との間でトルクを伝達しない中立状態で、これら入力軸8及び出力軸9の回転方向に関し、上記各係合凸部32、32の外側面と隙間(捩り代)sを介して対向させている。この為、トルク伝達に伴い上記入力軸8と出力軸9とが相対回転した場合に、上記中立状態から上記隙間sがなくなるまでの間は、トーションバー10(図3等参照)の弾性変形に基づくトルクの検出を正確に行なえる。
【0050】
一方、上記各緩衝板部40、40の先端縁と上記各係合凸部32、32の外側面とが当接する(隙間sがなくなる)と共に、上記入力軸8と出力軸9との相対回転が更に続いた場合には、これら入力軸8と出力軸9との間に、上記各緩衝部材33dを構成する弾性支持部47を弾性変形させる力が、上記トルクの伝達方向と逆方向に加わる。この為、上記係合凹部31、31の内側面と係合凸部32、32の外側面との当接を滑らかに行なえ、ステアリングの操舵感を良好に保てる。
【0051】
又、本例の場合は、上述の様な性能を発揮させる(トルク検出を正確に行なうと共に、各係合凹部31、31の内側面と各係合凸部32、32の外側面との当接を滑らかに行なわせる)為に必要な設定を、容易に行なえる。即ち、上記各緩衝部材33、33の弾性力(緩衝力)の設定を、上記弾性支持部47の形状、寸法、厚さ等を調節する事により容易に行なえる。
その他の構成及び作用は、前述した第1〜4例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述した各例は、ステアリングシャフト2に操舵力補助装置4(図2等参照)を設けた電動式パワーステアリング装置(所謂コラムタイプEPS)に、本発明を適用した場合を示したが、ステアリングギヤ6(図1参照)に操舵力補助装置を設けた電動式パワーステアリング装置(所謂ピニオンタイプEPS)に、本発明を適用する事もできる。即ち、ステアリングギヤ6の周辺部に、トルク検出装置と補助動力源(例えば電動モータ)とを設ける事により、電動式パワーステアリング装置を構成する場合にも、本発明を適用する事ができる。この様な場合も、上述した各例と同様の優れた効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のトルク検出装置を組み込む電動式パワーステアリング装置の1例を示す部分切断側面図。
【図2】ステアリングシャフト及びステアリングコラムと操舵力補助装置とを取り出して示す断面図。
【図3】図2のA部拡大断面図
【図4】図3のB−B断面に相当する図。
【図5】緩衝部材のみを取り出して示す図で、(A)は、(B)の上方から見た状態を、(B)は、図4と同方向から見た状態を、それぞれ示している。
【図6】入力軸と出力軸との相対回転に伴う変化を中立状態から順に示す、図4のC部に相当する断面図。
【図7】本発明の実施の形態の第2例を示す、図4と同様の断面図。
【図8】緩衝部材のみを取り出して、図7と同方向から見た図。
【図9】本発明の実施の形態の第3例を示す、図4と同様の断面図。
【図10】緩衝部材のみを取り出して、図9と同方向から見た図。
【図11】本発明の実施の形態の第4例を示す、図4と同様の断面図。
【図12】緩衝部材のみを取り出して示す図で、(A)は、(B)の上方から見た状態を、(B)は、図11と同方向から見た状態を、それぞれ示している。
【図13】本発明の実施の形態の第5例を示す断面図で、(A)は中立状態を、(B)はこの中立状態から入力軸と出力軸とが相対回転した状態を、それぞれ示している。
【図14】従来のトルク検出装置を組み組み込んだ電動式パワーステアリング装置の1例を示す要部断面図。
【図15】図14のD−D断面図。
【図16】緩衝部材のみを取り出して示す斜視図。
【符号の説明】
【0054】
1 ステアリングホイール
2、2a ステアリングシャフト
3 ステアリングコラム
4 操舵力補助装置
5 タイロッド
6 ステアリングギヤ
7 ギヤハウジング
8 入力軸
9、9a 出力軸
10、10a トーションバー
11 自在継手
12 中間シャフト
13 自在継手
14 入力軸
15、15a 電動モータ
16 ウォーム減速機
17 トルクセンサ
18 ウォームホイール
19 ウォーム
20 トルク検出装置
21 センサリング
22 回転阻止手段
23 筒部
24 係合凹部
25 挿入部
26 係合凸部
27 緩衝用凹部
28 緩衝用凸部
29 緩衝部材
30 連結環
31、31a 係合凹部
32、32a 係合凸部
33、33a、33b、33c、33d 緩衝部材
34 回転阻止手段
35 挿入部
36 筒部
37 凹溝
38 センサ筒
39 透孔
40 緩衝板部
41、41a 連結部
42、42a、42b 緩衝凹部
43、43a、43b、43c 突出部
44 弾性片
45 トルク検出装置
46 突出板部
47 弾性支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に筒部を設けた第一の回転軸と、一端部にこの筒部に挿入可能な大きさ及び形状を有する挿入部を設け、上記第一の回転軸と同心に配置された第二の回転軸と、これら第一、第二の回転軸同士を連結すると共に、これら第一、第二の回転軸同士の間で伝達されるトルクに応じて弾性変形する弾性部材と、この弾性部材の弾性変形に基づき上記トルクを検出する為のトルク検出手段と、上記弾性部材が所定量を超えて弾性変形するのを阻止する為の回転阻止手段とを備えたトルク検出装置に於いて、
この回転阻止手段は、上記筒部の内周面と上記挿入部の外周面とのうちの一方の周面に、この一方の周面から径方向に凹入する状態で設けられた複数の係合凹部と、同じく他方の周面に、この他方の周面から径方向に突出する状態で設けられた、上記係合凹部内で上記第一、第二の回転軸の回転方向に所定の相対変位を可能な大きさ及び形状を有する、上記各係合凹部と同数の係合凸部と、上記回転方向に関して隣り合う係合凸部の外側面同士の間に設けられた、弾性板製の緩衝部材とから成るものであり、
この緩衝部材は、上記回転方向に互いに離隔した状態で設けた1対の緩衝板部と、これら各緩衝板部の基端縁同士を連結する連結部とを備えたものであり、
上記各緩衝板部の先端縁はそれぞれ、上記第一、第二の回転軸同士の間で上記トルクを伝達しない中立状態で、上記回転方向に関し、上記係合凸部の外側面と隙間を介して対向しており、
上記連結部は、組み付け状態で、上記各緩衝板部の基端縁から上記一方の周面に向けて径方向に突出する突出部により構成しており、
上記第一、第二の回転軸同士の相対回転に伴う、上記突出部の上記径方向に関する弾性変形に基づいて、これら第一、第二の回転軸同士の間に相対回転の抵抗となる方向の力を付与する
事を特徴とするトルク検出装置。
【請求項2】
一端部に筒部を設けた第一の回転軸と、一端部にこの筒部に挿入可能な大きさ及び形状を有する挿入部を設け、上記第一の回転軸と同心に配置された第二の回転軸と、これら第一、第二の回転軸同士を連結すると共に、これら第一、第二の回転軸同士の間で伝達されるトルクに応じて弾性変形する弾性部材と、この弾性部材の弾性変形に基づき上記トルクを検出する為のトルク検出手段と、上記弾性部材が所定量を超えて弾性変形するのを阻止する為の回転阻止手段とを備えたトルク検出装置に於いて、
この回転阻止手段は、上記筒部の内周面と上記挿入部の外周面とのうちの一方の周面に、この一方の周面から径方向に凹入する状態で設けられた複数の係合凹部と、同じく他方の周面に、この他方の周面から径方向に突出する状態で設けられた、上記係合凹部内で上記第一、第二の回転軸の回転方向に所定の相対変位を可能な大きさ及び形状を有する、上記各係合凹部と同数の係合凸部と、上記回転方向に関して隣り合う係合凸部の外側面同士の間に設けられた、弾性板製の緩衝部材とから成るものであり、
この緩衝部材は、上記回転方向に互いに離隔した状態で設けた1対の緩衝板部と、これら各緩衝板部の基端縁同士を連結する連結部とを備えたものであり、
上記各緩衝板部の先端縁はそれぞれ、上記第一、第二の回転軸同士の間で上記トルクを伝達しない中立状態で、上記回転方向に関し、上記係合凸部の外側面と隙間を介して対向しており、
上記連結部は、同じく回転方向に関し、上記各緩衝板部に互いに離れる方向の弾性力を付与すると共に、上記一方の周面に、この周面の周方向に関する変位を阻止した状態で支持する為の弾性支持部により構成しており、
上記第一、第二の回転軸同士の相対回転に伴う、上記弾性支持部の上記回転方向に関する弾性変形に基づいて、これら第一、第二の回転軸同士の間に相対回転の抵抗となる方向の力を付与する
事を特徴とするトルク検出装置。
【請求項3】
緩衝部材が、各緩衝板部と連結部とを一体に形成した板ばねである、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したトルク検出装置。
【請求項4】
一方の周面に、この周面から径方向に凹入する状態で緩衝凹部が設けられており、緩衝部材を構成する連結部は、組み付け状態で上記緩衝凹部内に入り込む様に、弾性板を折り曲げ形成する事により構成したものである、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したトルク検出装置。
【請求項5】
ステアリングシャフトに加わるトルクを検出する為のトルク検出装置と、このトルク検出装置が検出するトルクに応じて、上記ステアリングシャフトに補助動力を付与する補助動力源とを備えたパワーステアリング装置に於いて、上記トルク検出装置が、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したトルク検出装置である事を特徴とするパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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