説明

トルク調整機能付き回転ダンパ

【課題】 ドラムをブレが発生しないように安定的に支持することができ、これによって安定したトルクを得ることができると共に、シール箇所を最小限に抑えることで安定したシール性能を保てるようにする。
【解決手段】 一方側に開口部13を有し、他方側に底部15を有し、軸部材2Aが相対回転可能に軸受けするよう第1の軸受部12を有する第1のハウジング部材と、第1のハウジング部材の開口部13を閉塞し、軸部材2Aを軸受け支持する第2の軸受部22を有する第2のハウジング部材と、第1のハウジングもしくは第2のハウジングの、軸部材2Aに対して偏心した位置に調整操作手段41を配置したトルク調整手段31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーン部材をドラムの円筒部に対し離接可能とし、該ベーン部材とドラムの円筒部との間の間隔を調整することによって、ドラムが回転するときに発生するトルクの大きさを調整可能としたトルク調整機能付き回転ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のトルク調整機能付き回転ダンパとしては、特許文献1乃至4によるものがある。すなわち、特許文献1には、粘性流体の充填された筐体内部に移動可能な可動ドラムと筐体内壁面との間で摺動回転する回転ドラムとを備え、回転ドラムと接続された制動シャフトに一方向のみ回転動作を伝達すると共に他方向の回転動作を遮断するクラッチと、可動ドラム移動用の調整ネジとによって回転ドラムの回転速度を変更調整する構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、特許文献1の構成に加えて、周囲の温度変化に応じて回転体と可動体との間の隙間が熱膨張差で変化するように構成し、粘性流体の粘度変化に伴うダンパ力の変化をこの熱膨張差で相殺するようにしている。
【0004】
特許文献3には、ケーシング内に軸方向に移動可能に配設された可動部材と、該可動部材に対して回転可能に配設された回転部材との対向面をそれぞれテーパ状に形成した構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、駆動軸に対してトルク調整体を相対回転させることにより、スライド部材を径方向にスライドさせてスライド部材外面と室内周面との間隔を変化させて、回転部材の回転トルクを変化させる構成が開示されている。
【特許文献1】特開平8−93312号公報
【特許文献2】特開平8−128257号公報
【特許文献3】特開2001−108004号公報
【特許文献4】特開2001−187934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来におけるトルク調整機能付き回転ダンパであっては、例えば特許文献1及び2の場合、回転ドラムまたは回転体等の軸部材の軸受部が1箇所しかないため、軸部材に衝撃がかかると当該軸部材がブレ易くなると同時に軸部材がブレることで予定したトルクを得ることができなくなる。しかも、軸部材のブレによって安定したシール性能を保つことが困難となり、オイル漏れの可能性が高くなる。さらに、従来では、トルク発生部の摺動部分すなわち回転ドラムまたは回転体と、可動ドラムまたは可動体との対向部分の面積の大きさを変えることでトルク調整を行う構成となっているため、一定のトルク調整を行うために必要な調整移動量が大きくなってしまう。
【0007】
また、特許文献3及び4の場合、軸受部が第1のハウジング、第2のハウジング等の剛体部分に設けられておらず、例えば調整ネジを介して設けられているため、軸部材自体を安定的に支持することができず、その結果、前記特許文献1及び2の場合と同様に、軸部材に衝撃がかかると当該軸部材がブレ易くなると同時に軸部材がブレることで予定したトルクを得ることができなくなる。しかも、軸部材のブレによって安定したシール性能を保つことが困難となり、オイル漏れの可能性が高くなる。
これは、特許文献3においては、調整ネジ(トルク調整のための操作部)が回転部材と同軸線上に設けられているため、回転軸を二ヵ所で軸受けしようとすると、その一方の軸受部は調整ネジに設けざるを得なかったからである。また、特許文献4においても、特許文献3と同様に、トルク調整手段であるカム部材の操作部が回転部材と同軸線上に設けられているため、回転部材の軸受個所を一ヵ所にせざるを得なかったからである。
【0008】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、ベーン部材をドラムの円筒部に対し離接可能とし、該ベーン部材とドラムの円筒部との間の間隔を調整することによって、ドラムが回転するときに発生するトルクの大きさを調整可能としたものにおいて、ドラムをブレが発生しないように安定的に支持することができ、これによって安定したトルクを得ることができると共に、シール箇所を最小限に抑えることで安定したシール性能を保つことができ、これによってオイル漏れの可能性を無くし且つ起動トルクを最小限に低くすることができるトルク調整機能付き回転ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にあっては、一方側に開口部を有し、他方側に底部を有し、該底部には第1の軸受部が設けられている第1のハウジング部材と、該第1のハウジング部材の開口部を閉塞し、第2の軸受部が設けられている第2のハウジング部材と、前記第1のハウジング部材の第1の軸受部と第2のハウジング部材の第2の軸受部とにより軸受けされ、一方の端部が前記第1または第2のハウジング部材から外部に延出するように設けられた軸部材と、前記第1及び第2のハウジング部材とにより軸部材の周りに画成される油室と、該油室内において前記軸部材とともに回転自在であり、油室の内周に沿って延びる円筒壁を有するドラムと、前記第1のハウジング部材により支持され、前記円筒壁に対して離接方向に移動自在に設けられたベーン部材と、前記軸部材の周りで回動可能に設けられ、その回動に応じて前記円筒壁とベーン部材との間隔を変化させることができるようにベーン部材と係合されたベーン移動調整部材と、前記軸部材に対して偏芯した位置において前記第1または第2のハウジング部材に支持された前記ベーン移動調整部材の操作部とから構成されることを特徴とする。
前記第1のハウジング部材は前記軸部材の一部を囲む小円筒壁を有し、前記ベーン移動調整部材は、該小円筒壁に回動可能に支持されるようにするとよい。
前記第1のハウジング部材の小円筒壁には、前記ベーン移動調整部材の回動を一定のピッチごとに停止させる調整リングが設けられているとよい。
前記第1のハウジング部材の底部は、前記第1の軸受部に保持された前記軸部材の端面側において閉塞されているようにするとよい。
前記ドラムは、前記円筒壁の前記ベーン部材と接する面にオイル溜り部を有するようにするとよい。
前記操作部は前記ハウジング部材の外部に操作面を露出させた短軸からなり、該短軸と前記ベーン移動調整部材との間には、短軸の回転を前記ベーン移動調整部材に伝える回転伝達機構が介設されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベーン部材をドラムの円筒部に対し離接可能とし、該ベーン部材とドラムの円筒部との間の間隔を調整することによって、ドラムが回転するときに発生するトルクの大きさを調整可能としたものにおいて、ドラムをブレが発生しないように安定的に支持することができ、これによって安定したトルクを得ることができると共に、シール箇所を最小限に抑えることで安定したシール性能を保つことができ、これによってオイル漏れの可能性を無くし且つ起動トルクを最小限に低くすることができる。
【0011】
すなわちこれは本発明が、一方側に開口部を有し、他方側に底部を有し、該底部には第1の軸受部が設けられている第1のハウジング部材と、該第1のハウジング部材の開口部を閉塞し、第2の軸受部が設けられている第2のハウジング部材と、前記第1のハウジング部材の第1の軸受部と第2のハウジング部材の第2の軸受部とにより少なくとも2箇所で軸受けされ、一方の端部が前記第1または第2のハウジング部材から外部に延出するように設けられた軸部材と、前記第1及び第2のハウジング部材とにより軸部材の周りに画成される油室と、該油室内において前記軸部材とともに回転自在であり、油室の内周に沿って延びる円筒壁を有するドラムと、前記第1のハウジング部材により支持され、前記円筒壁に対して離接方向に移動自在に設けられたベーン部材と、前記軸部材の周りで回動可能に設けられ、その回動に応じて前記円筒壁とベーン部材との間隔を変化させることができるようにベーン部材と係合されたベーン移動調整部材と、前記軸部材に対して偏芯した位置において前記第1または第2のハウジング部材に支持された前記ベーン移動調整部材の操作部とから構成されるからである。これにより、軸部材が第1のハウジングの第1の軸受部と、第2のハウジングの第2の軸受部との2箇所で軸受け支持されることにより軸部材及びドラムのブレを確実に防止することができる。
【0012】
ベーン移動調整部材が、第1のハウジング部材の軸部材の一部を囲む小円筒壁に回動可能に支持されていると、ドラムの円筒壁に対して離接するベーン部材のブレをも防止することができる。また、このとき、第1のハウジング部材の小円筒壁に、ベーン移動調整部材の回動を一定のピッチごとに停止させる調整リングが設けられていると、楽で確実な調整操作が可能になる。
【0013】
第1のハウジング部材の底部は、第1の軸受部に保持された軸部材の端面側において閉塞するようにすると、ハウジング部材に対して常時相対回転する軸部材側の部材とハウジング部材側の部材との間の、粘性流体のシール部材は反対側の開口部の一箇所のみとなり、粘性流体の密封性が向上する。
【0014】
ドラムは、円筒壁のベーン部材と接する面にオイル溜り部を有するようにすると、円筒壁とベーン部材とが接触状態にあるときに、オイル切れによる不安定なトルクの発生を防ぐことができる。
【0015】
操作部は前記ハウジング部材の外部に操作面を露出させた短軸からなり、該短軸と前記ベーン移動調整部材との間に、短軸の回転を前記ベーン移動調整部材に伝える回転伝達機構を介設したことにより、操作部のわずかな調整操作で必要なトルク調整を行うことができ、調整操作の簡易化及び短時間化を可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施する最良の形態を図面を参照して説明すると、図に示される符号1は、本発明に係るトルク調整機能付き回転ダンパにおける装置本体である。該装置本体1のハウジングは、図1、図2に示すように、第1のハウジング部材11と第2のハウジング部材21とから構成される。
【0017】
第1のハウジング部材11は、一方側の開口部13側内周面に雌ネジ溝を有し、中間部に円筒状の外筒部14を有し、他方側に底部15を有している。そして、底部15中央には小円筒壁16を突設し、この小円筒壁16の内側を円形深溝状に穿設して成る第1の軸受部12を形成し、この第1の軸受部12に、後述するドラム2の軸部材2A(シャフト)の一端が、後述するメタル軸受3と、ベーン移動調整部材の抜け止め機能を有する固定ブッシュ39を介して相対回転可能に軸受けされている。また、トルク調整手段31を構成するために、小円筒壁16の外周を囲む環状の溝部17を介して、円筒状の内面を有する突壁18が形成されている。この突壁18の上下端それぞれには水平なガイド枠部18Aが形成されている。また、前記第1の軸受部12の内周壁面における左右対称位置には軸方向に沿って内溝12Aが形成されている。この第1の軸受部12に対して偏心した位置には調整操作手段41のための開口部が形成されている。
図示例においては、第1のハウジング部材11は底部15を一体に有しているが、該底部を別体とし、第1のハウジング部材11に結合固定した構成としてもよい。この場合、別体の底部を構成する部材と第1のハウジング部材との結合部分から内部の粘性流体がハウジング外部に漏出することがないようにシールする必要がある。内溝12Aは、軸受部12の内周壁面から内側底面にわたって形成されており、軸受部12に軸部材2Aの端部を挿入する際に、軸受部12の内部にある粘性流体を、この内溝12Aを通ってオイル室の方に逃がすためのものである。
【0018】
第2のハウジング部材21は、一端が底部24によって閉塞された筒状のキャップ部材によって形成され、中央には内側に円形孔状の支持孔23を貫設して成る環状突起26を複数のリブ25によって連設し、この環状突起26の内側に精密ベアリングを備えたラジアル軸受27が嵌合して成る第2の軸受部22が形成されている。そして、第2のハウジング部材21であるキャップ部材の外周には雄ネジ溝が形成され、前記第1のハウジング部材11の雌ネジ溝に大径リング状のシール部材28を介してねじ込ませることで当該第1のハウジング部材11内に粘性液体の収容可能な室を封止した状態に閉塞され、且つこの第2の軸受部22に後述するドラム2の軸部材2A(シャフト)の他端が小径リング状のシール部材29を介して相対回転可能に軸受けされている。
【0019】
ドラム2には、中央の軸部材2A(シャフト)から放射状に形成された複数のリブ2Cを介して当該軸部材2Aの軸線方向に延長するように筒状の円筒壁2Bが形成されており、この円筒壁2B内周面には軸方向の溝部2Dを設けてある。そして、ドラム2は、第1のハウジング11と第2のハウジング21との間の室内において、円筒壁2Bが第1のハウジング11の内周面と対向するように配置されている。
図示例においては、ドラム2を軸部材2Aと別体とし、相互に回転不能に構成したが、ドラム2と軸部材2Aとを一体の構成としても良い。
【0020】
トルク調整手段31は、第1のハウジング部材11の小円筒壁16外方の環状の溝部17に嵌合固定される調整リング32、調整リング32外周に嵌合されるベーン移動調整部材33、ベーン移動調整部材33に連繋されて径方向に移動可能となるようドラム2の円筒壁2B内側において180°対称位置に配された一対のベーン部材34、第1のハウジング部材11の小円筒壁16に圧入されて第1の軸受部12に嵌合固定されたベーン移動調整部材抜け止め部材39とによって構成されている。
【0021】
すなわち、調整リング32は、所定の肉厚を有し、中央に略横長矩形状の開口部32Aが形成されており、この開口部32A内側の上下対称位置には、回転止用の突起32Bを形成してある。そして、小円筒壁16の外周の上下対称位置に形成した凹溝16Bに当該突起32Bが嵌合することで、調整リング32自体が小円筒壁16に対し回転不能となるように固定されるようにしてある。また、調整リング32は、横長の開口部32Aによって左右両側面が薄肉で弾力性を有するものとなっており、その外面側には突起32Cが設けられていて、後述するベーン移動調整部材33の他端側内周の内周ギヤ部33Aにクリック回転可能に係合すようにベーン移動調整部材33の内側に配置されている。
【0022】
ベーン移動調整部材33は、筒体の一端側外周に、後述する調整操作手段41のアジャストギヤ42が噛合する外周ギヤ部33Bが形成され、筒体の他端側内周には、前記調整リング32の左右両側の突起32Cをクリック回転可能に噛合させるための内周ギヤ部33Aが形成されている。また、ベーン移動調整部材33の筒体の180°対称位置には互いに対称形状を成す突片部33Cを設け、その後面側にはそれぞれベーン部材34の長孔35に係合するための突起33Dが設けられている。
【0023】
ベーン部材34は、円弧状の基部36の外周に、ドラム2の円筒壁2B内面に接離可能とした円弧面状の外面部37が形成され、また当該円弧状の基部36に沿って相対移動ガイド用の長孔35が形成されている。この長孔35に前記ベーン移動調整部材33の突起33Dが係合し、当該ベーン移動調整部材33のクリック回転によってベーン部材34が径方向に沿って縮径移動したり拡径移動したりするようにしてある。また、ベーン部材34自体は、この外面部後方の上下端に形成された水平な係止片38を、前記第1のハウジング部材11の突壁18の上下端の水平なガイド枠部18Aに係合させることで回転不能となるようにしてある。
【0024】
ベーン移動調整部材の抜け止め部材39は、筒体の一端に円形フランジ部39Aを有する固定ブッシュとして形成され、且つ筒体の外周には軸方向に沿った複数の廻り止め用の突起39Bが形成されている。この部材39は、ベーン移動調整部材33の外周ギヤ部33Bの内側で、筒体の突起39Bが第1のハウジング部材11の小円筒壁16に圧入されることにより、ベーン移動調整部材33の抜け止めとして作用している。
【0025】
調整操作手段41は、円筒壁2Bに対するベーン部材34の対向間隔を変更させるもので、調整操作手段41の操作部である短軸で構成されるアジャストシャフト43を前記第1のハウジング11の第1の軸受部12に対して偏心した位置に配置してある。すなわち、アジャストシャフト43はこの一端に摘み部43Aを備え、他端に形成されたDカット軸部43B側を、第1のハウジング11の第1の軸受部12に対して偏心した位置に形成した開口部19に貫挿させ、室内部に突出したアジャストシャフト43のDカット軸部43Bに小径のシール部材44を介して小径のアジャストギヤ42中央のDカット孔部42Aを嵌め込み、反対側から止め輪部材45を嵌め込むことによってアジャストシャフト43自体が開口部19から抜脱されないように固定してある。そして、アジャストギヤ42を前記ベーン移動調整部材33の外周ギヤ部33Bに噛合させてある。
【0026】
次に、以上のように構成された最良の形態についての組立、使用動作の一例を説明するに、装置本体1を組立てる場合には、図1に示すように、先ず、第1のハウジング11の底部15の小円筒壁16内側にメタル軸受3を嵌め込み、次いで、調整リング32を小円筒壁16外周に嵌め込む。ベーン移動調整部材33の突片部33Cにある突起33Dを、ベーン部材34の基部36にある長孔35に予め係合させておき、調整リング32外周にベーン移動調整部材33の内周ギヤ部33A側を嵌め込み、ベーン移動調整部材の抜け止め部材39を外周ギヤ部33B側から第1のハウジング11の小円筒壁16内に圧入することによって部材32及び33の抜けを防止する。
【0027】
第1のハウジング11の開口部19にアジャストシャフト43を貫挿させ、室内部に突出したアジャストシャフト43のDカット軸部43Bに小径のシール部材44を介して小径のアジャストギヤ42中央のDカット孔部42Aを嵌め込み、反対側から止め輪部材45を嵌め込むことによってアジャストシャフト43を回転自在に固定する。
【0028】
そして、ドラム2の軸部材2A(シャフト)の一端を第1の軸受部12にメタル軸受3を介して挿入して相対回転可能に軸受け支持しておく。この第1のハウジング部材11の室内に不図示の粘性液体を充填し、第2のハウジング部材21であるキャップ部材をシール部材28を介して第1のハウジング部材11の開口部13にねじ込ませる。このとき第2のハウジング部材21の円筒壁26の内側にラジアル軸受27が嵌合して成る第2の軸受部22にドラム2の軸部材2A(シャフト)の他端が小径リング状のシール部材29を介して相対回転可能に軸受けされる。
【0029】
こうして、軸部材2Aは、第1のハウジング11の第1の軸受部12と、第2のハウジング21の第2の軸受部22との2箇所でもってブレ防止状態に軸受け支持され、また第1のハウジング11の第1の軸受部12側は底部15によって閉じられた有底構造であり、またトルク調整手段31における調整操作手段41は、第1のハウジング11もしくは第2のハウジング21の軸部材2Aに対して偏心した位置に配置されているため、粘性流体のシール部材44は反対側の開口部19のみの一箇所のみとなり、これによって粘性流体の密封性が向上する。
【0030】
次に動作について説明すると、図3(a)、図4(a)、図5(a)に示すように、最大トルク時においては、ベーン部材34の突片部が円筒壁2Bの内面に最接近した状態にある。この状態からアジャストシャフトの摘み部を時計方向に所定角度だけ回転させると、ベーン移動調整部材が反時計方向に回転し、ベーン移動調整部材の突起がベーン部材の基部にある長孔に沿って相対移動し、ベーン部材は径方向内側に水平移動することでベーン部材と円筒壁2Bとが離反し、図3(b)、図4(b)、図5(b)に示すような最小トルク状態に移行する。
【0031】
図3(b)、図4(b)、図5(b)に示すような最小トルク時においては、ベーン部材34の円弧面状の外面部37が円筒壁2Bの内面から離反している。この状態からアジャストシャフト43の摘み部43Aを反時計方向に所定角度だけ回転させると、ベーン移動調整部材33が時計方向に回転し、ベーン移動調整部材33の突起33Dがベーン部材34の基部36にある長孔35に沿って相対移動し、ベーン部材34は径方向外側に水平移動することでベーン部材34の外面部37と円筒壁2Bとが接触し、図3(a)、図4(a)、図5(a)に示すような最大トルク状態に移行する。
【0032】
アジャストシャフト43の摘み部43Aの回転に際し、図6に示すように、ベーン移動調整部材33の内周ギヤ部33Aが、固定された調整リング32の突起32Cに係合されているため、この調整リング32に対しベーン移動調整部材33が1ピッチづつクリック回転するものとなるので、ベーン部材34の水平移動が小刻みに行われ、これによって円筒壁2Bに対するベーン部材34の対向間隔の変更による微妙なトルク調整が確実に行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を実施するための最良の形態におけるトルク調整機能付き回転ダンパを示し、(a)は斜め前方側から見た分解状態の一部切欠断面図、(b)は斜め後方側から見た分解状態の一部切欠断面図である。
【図2】同じく(a)は組付状態の一部切欠の縦断面図、(b)は組付状態の一部切欠の横断面図である。
【図3】同じく(a)は最大トルク時における図2(a)中のA−A断面図、(b)は最小トルク時の図2(a)中のA−A断面図である。
【図4】同じく(a)は最大トルク時における図2(a)中のB−B断面図、(b)は最小トルク時の図2(a)中のB−B断面図である。
【図5】同じく(a)は最大トルク時における図2(a)中のC−C断面図、(b)は最小トルク時の図2(a)中のC−C断面図である。
【図6】同じくトルク調整手段における固定された調整リングに対するベーン移動調整部材の回転動作を説明するもので、(a)は1ピッチクリック回転前の一部切欠断面図、(b)は1ピッチクリック回転途中の一部切欠断面図、(a)は1ピッチクリック回転後の一部切欠断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…装置本体 2…ドラム
2A…軸部材(シャフト) 2B…円筒壁
2C…リブ 2D…溝部
3…メタル軸受
11…第1のハウジング 12…第1の軸受部
12A…内溝 12B…凹溝
13…開口部 14…外筒部
15…底部 16…円筒壁
17…溝部 18…突壁
18A…ガイド枠部 19…開口部
21…第2のハウジング 22…第2の軸受部
23…支持孔 24…底部
25…リブ 26…円筒壁
27…ラジアル軸受
31…トルク調整手段 32…調整リング
32A…開口部 32B…突起
32C…突起 33…ベーン移動調整部材
33A…内周ギヤ部 33B…外周ギヤ部
33C…突片部 33D…突起
34…ベーン部材 35…長孔
36…基部 37…外面部
38…係止片
41…調整操作手段 42…アジャストギヤ
42A…Dカット孔部 43…アジャストシャフト
43A…摘み部 43B…Dカット軸部
44…シール部材 45…止め輪部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に開口部を有し、他方側に底部を有し、該底部には第1の軸受部が設けられている第1のハウジング部材と、該第1のハウジング部材の開口部を閉塞し、第2の軸受部が設けられている第2のハウジング部材と、前記第1のハウジング部材の第1の軸受部と第2のハウジング部材の第2の軸受部とにより軸受けされ、一方の端部が前記第1または第2のハウジング部材から外部に延出するように設けられた軸部材と、前記第1及び第2のハウジング部材とにより軸部材の周りに画成される油室と、該油室内において前記軸部材とともに前記第1のハウジング部材に対して相対回転自在であり、油室の内周に沿って延びる円筒壁を有するドラムと、前記第1のハウジング部材により支持され、前記円筒壁に対して離接方向に移動自在に設けられたベーン部材と、前記軸部材の周りで回動可能に設けられ、その回動に応じて前記円筒壁とベーン部材との間隔を変化させることができるようにベーン部材と係合されたベーン移動調整部材と、前記軸部材に対して偏芯した位置において前記第1または第2のハウジング部材に支持された前記ベーン移動調整部材の操作部とから構成されることを特徴とするトルク調整機能付き回転ダンパ。
【請求項2】
前記第1のハウジング部材は前記軸部材の一部を囲む小円筒壁を有し、前記ベーン移動調整部材は、該小円筒壁に回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載のトルク調整機能付き回転ダンパ。
【請求項3】
前記第1のハウジング部材の小円筒壁には、前記ベーン移動調整部材の回動を一定のピッチごとに停止させる調整リングが設けられていることを特徴とする請求項2記載のトルク調整機能付き回転ダンパ。
【請求項4】
前記第1のハウジング部材の底部は、前記第1の軸受部に保持された前記軸部材の端面側において閉塞されていることを特徴とする請求項1、2または3記載のトルク調整機能付き回転ダンパ。
【請求項5】
前記ドラムは、前記円筒壁の前記ベーン部材と接する面にオイル溜り部を有することを特徴とする請求項1、2、3または4記載のトルク調整機能付き回転ダンパ。
【請求項6】
前記操作部は前記ハウジング部材の外部に操作面を露出させた短軸からなり、該短軸と前記ベーン移動調整部材との間には、短軸の回転を前記ベーン移動調整部材に伝える回転伝達機構が介設されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のトルク調整機能付き回転ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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