説明

トレイ

【課題】より好適に光学部品を収納することができるトレイを提供する。
【解決手段】板状に形成された第1のプレート1と、第1のプレート1と略同一形状に形成された第2のプレート2と、を備えるトレイ100であって、第1のプレート1と第2のプレート2とは、互いに内面が対向するように重ね合わされ、第1のプレート1及び第2のプレート2に外面側に凸となるように形成され、レンズ200を収納する複数の第1の保持穴部3及び第2の保持穴部4と、第1のプレート1の外周縁部に形成された複数の掛止部9と、第2のプレート2の外周縁部に形成された複数の被掛止部10と、を有するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに関し、特に、レンズなどの光学部品を収納するトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラなどの光学装置の高精度化、コンパクト化に伴い、レンズなどの光学部品も著しく小さくなっている。レンズの微細化により、レンズ表面の膜処理などの表面処理の作業性が低下する。そのため、複数のレンズをトレイに収納して、全てのレンズに一括して膜処理などの表面処理を施す技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、板状に形成され、複数の開口孔が形成された第1のプレート及び第2のプレートを備えるトレイが記載されている。そして、第1のプレート及び第2のプレートの何れか一方の開口孔にレンズを収納し、第1のプレートと第2のプレートとを重ね合わせることにより、レンズが第1のプレートと第2のプレートの間に挟持されるようになっている。これにより、複数のレンズをトレイに保持した状態で、一括して表面処理を施すことができるようになっている。
そして、通常、第1のプレートと第2のプレートとは、輪ゴムによって重ね合わされた状態を保つようになっている。
【特許文献1】特開2007−145373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、成形時に離型しやすくするため、輪ゴムの表面には、含水珪酸マグネシウム(タルク)が付着している。そして、タルクがクリーンルーム内での発塵要因となってしまう。また、輪ゴムはトレイと別物品であるため、レンズを収納する際に、第1のプレートと第2のプレートとを輪ゴムで留める必要があり、作業性に問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、より好適に光学部品を収納することができるトレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるトレイは、板状に形成された第1のプレートと、前記第1のプレートと略同一形状に形成された第2のプレートと、を備えるトレイであって、前記第1のプレートと前記第2のプレートとは、互いに内面が対向するように重ね合わされ、前記第1のプレートと前記第2のプレートの少なくとも一方に外面側に凸となるように形成され、収納部品を収納する複数の保持穴部と、前記第1のプレート及び前記第2のプレートの一方の外周縁部に形成された複数の掛止部と、前記第1のプレート及び前記第2のプレートの他方の外周縁部に形成された複数の被掛止部と、を有するものである。
【0007】
本発明においては、第1のプレート及び第2のプレートの一方の外周縁部に形成された掛止部と、第1のプレート及び第2のプレートの他方の外周縁部に形成された被掛止部とを有する。これにより、掛止部を被掛止部に掛止することにより、第1のプレートと第2のプレートとが重ね合わされた状態を保つことができる。そのため、輪ゴムを使用せずに済み、クリーンルームにおける発塵を抑えることができる。また、掛止部を被掛止部に掛止するだけでよく、作業性を向上することができる。
【0008】
また、第1のプレート及び第2のプレートの一方の外周縁部がトレイに収納される前記収納部品毎に異なる形状に切り欠かれてなる、収納部品の種別を表示する種別表示部と、第1のプレート及び第2のプレートの他方の外周縁部の種別表示部に相当する部分が切り欠かれた切欠部と、を有し、第1のプレートと第2のプレートとが互いに内面が対向するように重ね合わされた際、切欠部により種別表示部が視認可能となっていることが好ましい。
【0009】
これにより、第1のプレートと第2のプレートとが重ね合わされた状態で、種別表示部を確認することができ、種別表示部の切り欠き形状により、収納部品の種別を確認することができる。
【0010】
さらに、前記第1のプレート及び前記第2のプレートは、導電性樹脂により形成されることが好ましい。
第1のプレートと第2のプレートとが導電性樹脂により形成されるため、トレイ全体が導電性を有し、ほこり等の吸着を防ぐことができる。
【0011】
さらに、また、前記第1のプレート及び前記第2のプレートは、導電性カーボンブラックを含有する導電性樹脂により形成されることが好ましい。
導電性カーボンブラックを含有する導電性樹脂により形成されるため、第1のプレート及び第2のプレートが略黒色となり、透明な樹脂で形成される場合に比べて、種別表示部を判別しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、より好適に光学部品を収納することができるトレイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1及び図2は、本発明の実施の形態にかかるトレイ100の一例を示したものである。図1(a)は、トレイ100の第1のプレート1の上面を示す平面図であり、図1(b)は、トレイ100の短辺方向の側面図であり、図1(c)は、トレイ100の長辺方向の側面図であり、図1(d)は、トレイ100の長辺方向の断面図である。また、図2(a)は、トレイ100の第2のプレート2の上面を示す平面図であり、図2(b)は、トレイ100の短辺方向の側面図であり、図2(c)は、トレイ100の長辺方向の側面図であり、図2(d)は、トレイ100の長辺方向の断面図である。
トレイ100は、図1、図2に示すように、第1のプレート1、第2のプレート2を有している。
【0014】
第1のプレート1は、縦方向が短辺、横方向が長辺の略長方形の板状に形成されている。また、第2のプレート2は、第1のプレート1と略同一形状の板状に形成されている。第1のプレート1及び第2のプレート2は、導電性樹脂により形成される。具体的には、導電性樹脂として、導電性カーボンブラックを含有する合成樹脂が使用される。また、合成樹脂として、ポリスチレン、ポリスチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどの耐摩擦性に優れた合成樹脂が使用される。
第1のプレート1、第2のプレート2は、互いに内面を対向するように重ね合わされる。また、第1のプレート1及び第2のプレート2は、第1のプレート1が上側、第2のプレート2が下側となるように重ね合わされる。
【0015】
第1のプレート1は、外面側に凸となるように形成された複数の第1の保持穴部3(保持穴部)を有している。また、第2のプレート2は、第1のプレート1の第1の保持穴部3に対応する位置に、外面側に凸となるように形成された複数の第2の保持穴部4(保持穴部)を有している。
具体的には、複数の第1の保持穴部3は、第1のプレート1の中央領域に、第1のプレート1の縦方向及び横方向に格子状に並ぶように形成されている。同様に、複数の第2の保持穴部4は、第2のプレート2の中央領域に、第2のプレート2の縦方向及び横方向に格子状に並ぶように形成されている。換言すれば、第2の保持穴部4は、第2のプレート2において、第1の保持穴部3と対応する位置に、形成されている。
そして、第1のプレート1と第2のプレート2とが重ね合わされると、第1の保持穴部3と第2の保持穴部4とにより空間Kが形成される。そして、レンズ200(収納部品)が当該空間Kに保持されるようになっている。
【0016】
図3に、図1(d)又は図2(d)における第1の保持穴部3及び第2の保持穴部4の拡大図を示す。図3に示すように、第1の保持穴部3は、レンズ200より径が大きい第1の筒状部5と、第1の筒状部5より第1のプレート1の外面側に位置し、レンズ200より径が小さい第1の底面部6と、から構成されている。また、同様に、第2の保持穴部4は、レンズ200より径が大きい第2の筒状部7と、第2の筒状部7より第2のプレート2の外面側に位置し、レンズ200より径が小さい第2の底面部8と、から構成されている。
【0017】
そして、レンズ200は、第1の筒状部5と第2の筒状部7とにより形成される空間に収納されている。従って、レンズ200がトレイ100に収納されている際、第1の底面部6と第2の底面部8は空となっている。そして、第1の底面部6及び第2の底面部8は、レンズ200を外部からの衝撃から守る緩衝材としての役割を果たす。
【0018】
また、第1の保持穴部3及び第2の保持穴部4は、縦方向に10個、横方向に20個、計200個形成されている。このように形成することにより、第2のプレート2の縦方向の長さが顕微鏡の奥行きより小さくなる。そして、第2のプレート2にレンズ200を乗せた状態で、個々のレンズ200を顕微鏡で検査する場合に、第2のプレート2を横方向にずらすだけで、全てのレンズ200の検査を行うことができる。
【0019】
また、第1のプレート1の中央領域を囲む外周縁部には、複数の掛止部9が形成されている。具体的には、第1のプレート1の各辺の略中央に一つずつ略鉤爪形状の掛止部9が形成されている。
また、第2のプレート2の中央領域を囲む外周縁部には、複数の被掛止部10が形成されている。具体的には、第2のプレート2の各辺の掛止部9により掛止可能な位置に、一つずつ被掛止部10が形成されている。より具体的には、第2のプレート2の各辺の掛止部9に相当する位置が切り欠かれることにより、被掛止部10が形成されている。
そして、被掛止部10が掛止部9によって掛止されることにより、第1のプレート1と第2のプレート2とが重ね合わされた状態を保つようになっている。
なお、掛止部9の形状は略鉤爪状に限られるものではない。掛止部9と被掛止部10の形状は非掛止部10が掛止部9によって掛止可能な形状であればよい。
【0020】
また、第2のプレート2の外周縁部には、トレイ100に収納されるレンズ200毎に異なる形状に切り欠かれた種別表示部11が複数形成されている。種別表示部11の形状により、トレイ100に収納されているレンズ200の種別が分かるようになっている。具体的には、種別表示部11は、例えば、第2のプレート2の一方の長辺に3つ形成されている。なお、種別表示部11が形成される個数及び位置は、これに限られるものではない。種別表示部11が形成される個数によっても、レンズ200の種別が表されるようにしてもよい。
【0021】
また、第1のプレート1は、第1のプレート1の外周縁部の種別表示部11に相当する部分が切り欠かれた切欠部12を有している。
そして、第1のプレート1と第2のプレート2とが互いに内面が対向するように重ね合わされた際、切欠部12により、種別表示部11が視認可能となっている。
【0022】
また、第1のプレート1の外周縁部の掛止部9より内側には、中央領域を取り囲むように形成された第1の凸部13が形成されている。また、第1の凸部13は、第1のプレート1の外面側に凸となるように形成されている。
また、第2のプレート2の外周縁部の被掛止部10より内側には、中央領域を取り囲むように形成された第2の凸部14が形成されている。また、第2の凸部14は、第2のプレート2の内面側に凸となるように形成されている。
そして、第1のプレート1と第2のプレート2とが重ね合わされた際、第1の凸部13と第2の凸部14も重ね合わされるようになっている。そして、第1の凸部13と第2の凸部14とが重ね合わされることにより、第1のプレート1と第2のプレート2との重ね合わされた位置がずれることを防止している。
【0023】
次に、上述した本発明の実施の形態にかかるトレイ100の製造方法を説明する。
まず、導電性カーボンブラックを含有する合成樹脂のシートを加熱し、金型により吸着させる。金型への吸着は、バキュームにより行う。
次に、シートを冷却して、成型する。
次に、成型後のシートを金型から取り外す。
次に、シートを第1のプレート1又は第2のプレート2の形状となるように、切断する。
【0024】
本実施の形態にかかるトレイ100は、上述のように、第1のプレート1及び第2のプレート2の外周縁部に掛止部9及び被掛止部10を設けるため、従来の金型を使用して製造することができる。最後の切断工程において、従来とは異なる形状に切断すればよいだけである。そのため、従来の製造設備を流用することができ、製造コストを削減することができる。
【0025】
以上に説明した本発明の実施の形態にかかるトレイ100では、第1のプレート1の外周縁部に形成された複数の掛止部9と、第2のプレート2の外周縁部に形成された複数の被掛止部10と、を有する。これにより、掛止部9を被掛止部10に掛止することにより、第1のプレート1と第2のプレート2とが重ね合わされた状態を保つことができる。そのため、輪ゴムを使用せずに済み、クリーンルームにおける発塵を抑えることができる。また、掛止部9を被掛止部10に掛止するだけでよく、作業性を向上することができる。
【0026】
また、第2のプレート2の外周縁部がトレイ100に収納されるレンズ200毎に異なる形状に切り欠かれた種別表示部11と、第1のプレート1の外周縁部の種別表示部11に相当する部分が切り欠かれた切欠部12と、を有する。そして、第1のプレート1と第2のプレート2とが互いに内面が対向するように重ね合わされた際、切欠部12により種別表示部11が視認可能となっている。
これにより、第1のプレート1と第2のプレート2とが重ね合わされた状態で、種別表示部11を確認することができ、種別表示部11の切り欠き形状により、レンズ200の種別を確認することができる。
【0027】
さらに、第1のプレート1と第2のプレート2とが導電性樹脂により形成されるため、トレイ100全体が導電性を有し、ほこり等の吸着を防ぐことができる。
【0028】
さらに、また、第1のプレート1及び第2のプレート2は、導電性カーボンブラックを含有する導電性樹脂により形成されるため、第1のプレート1及び第2のプレート2が略黒色となり、透明な樹脂で形成される場合に比べて、種別表示部11を判別しやすくなる。
【0029】
なお、トレイ100の収納部品としてレンズ200を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光学フィルタ、回折格子、ライトガイド等の光学部品、半導体チップ等の各種部品を収納するトレイについても本発明を適用可能である。
また、第1のプレート1又は第2のプレート2の何れか一方に保持穴部が形成されてもよい。また、掛止部9が第2のプレート2に、被掛止部10が第1のプレート1に設けられてもよい。また、種別表示部11が第1のプレート1に、切欠部12が第2のプレート2に設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトレイの第1のプレートの上面を示す平面図(図1(a))、トレイの短辺方向の側面図(図1(b))、トレイの長辺方向の側面図(図1(c))、トレイの長辺方向の断面図(図1(d))である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるトレイの第2のプレートの上面を示す平面図(図2(a))、トレイの短辺方向の側面図(図2(b))、トレイの長辺方向の側面図(図2(c))、トレイの長辺方向の断面図(図2(d))である。
【図3】図1(d)又は図2(d)における第1の保持穴部及び第2の保持穴部の拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
1 第1のプレート
2 第2のプレート
3 第1の保持穴部(保持穴部)
4 第2の保持穴部(保持穴部)
9 掛止部
10 被掛止部
11 種別表示部
12 切欠部
100 トレイ
200 レンズ(収納部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された第1のプレートと、前記第1のプレートと略同一形状に形成された第2のプレートと、を備えるトレイであって、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとは、互いに内面が対向するように重ね合わされ、
前記第1のプレートと前記第2のプレートの少なくとも一方に外面側に凸となるように形成され、収納部品を収納する複数の保持穴部と、
前記第1のプレート及び前記第2のプレートの一方の外周縁部に形成された複数の掛止部と、
前記第1のプレート及び前記第2のプレートの他方の外周縁部に形成された複数の被掛止部と、
を有するトレイ。
【請求項2】
前記第1のプレート及び前記第2のプレートの一方の外周縁部が前記トレイに収納される前記収納部品毎に異なる形状に切り欠かれてなる、前記収納部品の種別を表示する種別表示部と、
前記第1のプレート及び前記第2のプレートの他方の外周縁部の前記種別表示部に相当する部分が切り欠かれた切欠部と、
を有し、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとが互いに内面が対向するように重ね合わされた際、前記切欠部により前記種別表示部が視認可能となっている請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
前記第1のプレート及び前記第2のプレートは、導電性樹脂により形成される請求項1又は2に記載のトレイ。
【請求項4】
前記第1のプレート及び前記第2のプレートは、導電性カーボンブラックを含有する導電性樹脂により形成される請求項1乃至3の何れか一項に記載のトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−161243(P2009−161243A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3202(P2008−3202)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】