説明

トレッドモデル作成方法及びそのコンピュータプログラム、並びにタイヤモデル作成方法及びそのコンピュータプログラム

【課題】溝壁が立体形状をしている溝を有するタイヤの解析モデルを作成すること。
【解決手段】溝の平面形状を含むキャップトレッドの二次元形状を抽出し(ステップS11)、二次元形状を複数の節点で構成される有限個の要素に分割することにより、キャップトレッドの二次元モデルを作成する(ステップS13)。次に、作成された二次元モデルをキャップトレッドの厚さ方向に展開して、複数の節点で構成された有限個の要素でキャップトレッドの三次元モデルを作成する(ステップS14)。次に、キャップトレッドが有する溝の平面形状に基づいて形成された溝モデルの溝壁に含まれる所定の節点を、溝壁の面と交差する方向に移動させる(ステップS15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッド、特にキャップトレッドをコンピュータで解析可能なモデル化すること、及びモデル化したトレッドを有する、コンピュータで解析可能なタイヤモデルを作成することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤは、試作と試験との繰り返しによって開発されていたので、開発効率が悪いという問題点があった。この問題点を解決するために、近年ではコンピュータを用いた数値解析によって、試作品を製造しなくともタイヤの物理的性質、すなわちタイヤの性能を予測することができる手法が提案され、実用化されている。コンピュータを用いた数値解析によってタイヤの性能を予測する場合、タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化する必要がある。
【0003】
タイヤの解析モデルを作成する方法として、例えば、特許文献1には、対象物の2次元CADデータを四角形要素及び三角形要素の少なくとも一方から成る多数の要素に分割して2次元モデルを作成し、この2次元モデルと交叉する軸上にスイープさせて、五面体要素及び六面体要素の少なくとも一方の要素から構成された対象物の3次元モデル作成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−282873号公報 [0007]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術は、2次元モデルをスイープさせて3次元モデルを作成するため、溝壁が平面で構成される簡単な形状の溝は作成できるが、溝壁が立体形状をしている溝を作成することは困難である。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、溝壁が立体形状をしている溝を有するタイヤの解析モデルを作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るトレッドモデル作成方法は、溝が形成されたタイヤのキャップトレッドを、コンピュータで解析可能な解析モデルであるトレッドモデルとするにあたり、前記タイヤの踏面側から見た、前記溝の平面形状を含む前記キャップトレッドの二次元形状を、複数の節点で構成される有限個の要素に分割することにより、前記キャップトレッドの二次元モデルを作成する手順と、当該二次元モデルを前記キャップトレッドの厚さ方向に展開して、複数の節点で構成された複数の要素が前記厚さ方向に向かって配置されて構成される前記キャップトレッドの三次元モデルを作成する手順と、前記溝の平面形状から形成された溝モデルの溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させることにより、トレッドモデルを作成する手順と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の望ましい態様としては、前記トレッドモデル作成方法において、前記溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させる手順においては、前記溝壁に含まれる節点以外の節点であって、前記三次元モデルの内部に存在する所定の節点も移動させることが好ましい。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記トレッドモデル作成方法において、前記溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させる手順において、移動させる節点を含む要素は、当該要素を構成する少なくとも3個の節点で規定される異なる面同士のなす角度が90度になるようにすることが好ましい。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記トレッドモデル作成方法において、前記溝モデルは、前記厚さ方向に向かって、少なくとも3層の要素が配置されることが好ましい。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記トレッドモデル作成方法において、前記トレッドモデル作成方法によって、タイヤ周方向におけるトレッドパターンの1ピッチに対応する部分トレッドモデルを作成し、当該部分トレッドモデルをタイヤ周方向に向かって1周分配列することにより、タイヤ周方向全体にわたるトレッドモデルを作成することが好ましい。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記トレッドモデル作成方法において、前記トレッドモデル作成方法によって、複数の異なるトレッドモデルを作成し、タイヤ周方向に向かって、前記複数の異なるトレッドモデルを配置することが好ましい。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るトレッドモデルの作成用コンピュータプログラムは、前記トレッドモデル作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤモデル作成方法は、タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、前記タイヤのキャップトレッドよりも径方向内側の部分に対して、コンピュータで解析可能な内側タイヤモデルを作成し、また、請求項1から6のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法によりトレッドモデルを作成するモデル作成手順と、前記内側タイヤモデルの外側に、前記トレッドモデルを配置して結合する手順と、を含むことを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤモデル作成方法は、タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、前記タイヤのキャップトレッドよりも径方向内側の部分に対して、コンピュータで解析可能な内側タイヤモデルを作成し、また、請求項1から4のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法により、タイヤ周方向におけるトレッドパターンの1ピッチに対応する部分トレッドモデルを作成する手順と、前記内側タイヤモデルの外側に、前記部分トレッドモデルをタイヤ周方向に向かって1周分配列するとともに、前記内側タイヤモデルと前記部分トレッドモデルとを結合する手順と、を含むことを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤモデル作成方法は、タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、前記タイヤのキャップトレッドよりも径方向内側の部分に対して、コンピュータで解析可能な内側タイヤモデルを作成し、また、請求項1から4のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法により、複数の異なるトレッドモデルを作成する手順と、前記内側タイヤモデルの外側に、タイヤ周方向に向かって、前記複数の異なるトレッドモデルを配置するとともに、前記内側タイヤモデルと前記複数の異なるトレッドモデルとを結合する手順と、を含むことを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤモデル作成方法は、タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、前記タイヤに基づいて、トレッドパターンを形成しないパターンなしタイヤモデルを作成し、また、前記タイヤの踏面側から見た、前記溝の平面形状を含む前記タイヤのキャップトレッドの二次元形状を、複数の節点で構成される有限個の要素に分割することにより、前記キャップトレッドの二次元モデルを作成する手順と、当該二次元モデルを、前記パターンなしタイヤモデルの踏面に転写する手順と、転写後の前記二次元モデルを前記キャップトレッドの厚さ方向に展開して、複数の節点で構成された複数の要素が前記厚さ方向に向かって配置されて構成される前記キャップトレッドの三次元モデルを作成する手順と、前記溝の平面形状から形成された溝モデルの溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させることにより、前記パターンなしタイヤモデルにトレッドモデルを作成する手順と、を含むことを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤモデルの作成用コンピュータプログラムは、前記タイヤモデル作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、溝壁が立体形状をしている溝を有するタイヤの解析モデルを作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、タイヤの回転軸を通る子午断面を示す断面図である。
【図2】図2は、タイヤのトレッドパターンを二次元に展開した平面図である。
【図3−1】図3−1は、タイヤのブロックに形成される細溝の一例を示す図である。
【図3−2】図3−2は、タイヤのブロックに形成される細溝の一例を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る解析モデルの作成方法の構成を示す説明図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、ブロックの踏面の形状を示す平面図である。
【図7】図7は、図6に示すブロックの二次元モデルを示す平面図である。
【図8】図8は、図6に示すブロックの二次元モデルを示す平面図である。
【図9】図9は、ブロックの二次元モデルから三次元モデルを作成する手法の一例を示す説明図である。
【図10−1】図10−1は、二次元モデルから作成された、溝を有する三次元モデルの斜視図である。
【図10−2】図10−2は、二次元モデルから作成された、溝を有する三次元モデルの斜視図である。
【図11−1】図11−1は、溝壁の節点の移動を説明する図である。
【図11−2】図11−2は、溝壁の節点の移動を説明する図である。
【図12−1】図12−1は、三次元モデルの斜視図である。
【図12−2】図12−2は、図12−1のB−B断面図である。
【図13−1】図13−1は、六面体要素の一例を示す斜視図である。
【図13−2】図13−2は、図13−1に示す六面体要素を構成する節点を移動させた状態の図である。
【図14】図14は、三次元サイプのモデルを含むブロックモデルを示す斜視図である。
【図15−1】図15−1は、本実施形態の第1変形例に係るトレッドモデル作成方法の説明図である。
【図15−2】図15−2は、本実施形態の第1変形例に係るトレッドモデル作成方法の説明図である。
【図16】図16は、部分トレッドモデルを示す平面図である。
【図17】図17は、本実施形態の第2変形例に係るトレッドモデル作成方法の説明図である。
【図18】図18は、本実施形態の第2変形例に係るトレッドモデル作成方法の説明図である。
【図19】図19は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の手順を示すフローチャートである。
【図20】図20は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の説明図である。
【図21】図21は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の説明図である。
【図22】図22は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
【図23−1】図23−1は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の変形例の説明図である。
【図23−2】図23−2は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の変形例の説明図である。
【図23−3】図23−3は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の変形例の説明図である。
【図23−4】図23−4は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。本発明は、溝を有するタイヤであれば適用でき、本発明の適用対象は、空気入りタイヤに限られるものではない。以下においては、説明の便宜上、特に断りのない限り空気入りタイヤをタイヤという。
【0021】
図1は、タイヤの回転軸を通る子午断面を示す断面図である。図1に示すように、タイヤ1の子午断面には、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4、ビードコア5が現れている。タイヤ1は、母材であるゴムを、強化材であるカーカス2、ベルト3、あるいはベルトカバー4等の補強コードによって補強した複合材料の構造体である。ここで、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4等の、金属繊維や有機繊維等のコード材料で構成される層を、コード層という。
【0022】
カーカス2は、タイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐えるようになっている。ベルト3は、キャップトレッド6とカーカス2との間に配置されたゴム引きコードを束ねた補強コードの層である。なお、バイアスタイヤの場合にはブレーカと呼ぶ。ラジアルタイヤにおいて、ベルト3は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。
【0023】
ベルト3の踏面G側には、ベルトカバー4が配置されている。ベルトカバー4は、例えば有機繊維材料を層状に配置したものであり、ベルト3の保護層としての役割や、ベルト3の補強層としての役割を持つ。ビードコア5は、内圧によってカーカス2に発生するコード張力を支えているスチールワイヤの束である。ビードコア5は、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4、キャップトレッド6、アンダトレッド9とともに、タイヤ1の強度部材となる。
【0024】
キャップトレッド6は、タイヤ1の路面設置部に配置されて、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4の外側を覆うゴム層である。キャップトレッド6は、路面と直接接する部分であり、その踏面(接地面)G側には、タイヤ1の周方向に延在する主溝7Mが形成される。また、タイヤ1の側部はサイドウォール8と呼ばれており、ビードコア5とキャップトレッド6との間を接続する。また、キャップトレッド6とサイドウォール8との間はショルダー部Shである。キャップトレッド6と径方向内側は、アンダトレッド9である。アンダトレッド9は、キャップトレッド6とベルト3との間に配置されるゴム層である。
【0025】
図2は、タイヤのトレッドパターンを二次元に展開した平面図である。トレッドパターンは、タイヤ1に形成される溝(主溝7Mと横溝7Wとの少なくとも一方)によってキャップトレッド6(図1参照)が区画されて形成されるパターンである。本実施形態では、主溝7Mと横溝7Wとによってキャップトレッド6が区画される。主溝7Mと横溝7Wとで区画された部分は、ブロック10Bという。また、主溝7Mで区画された部分は、リブ10Lという。トレッドパターンには、例えば、主溝7Mのみでキャップトレッド6が区画されたパターン(リブパターン)や、横溝7Wのみでキャップトレッド6が区画されたパターン(ラグパターン)等がある。
【0026】
図3−1、図3−2は、タイヤのブロックに形成される細溝の一例を示す図である。ブロック10Bには、タイヤ1の走行性能を向上させるため、細溝(サイプ)が形成されることがある。なお、細溝は、図2に示すリブ10Lに形成されていてもよい。細溝は、図2に示す主溝7Mや横溝7Wと同様に、タイヤ1に形成される溝である。
【0027】
図3−1に示す細溝11は、ブロック10Bの踏面と平行な面で細溝11を切ったときの断面形状が、ブロック10Bの厚さ方向(タイヤ1の径方向と平行な方向)Hに向かって変化しないものである。一方、図3−2に示す細溝12は、ブロック10Bの踏面と平行な面で細溝12を切ったときの断面形状が、細溝12の開口部と細溝12の内部とで異なり、前記断面形状が、ブロック10Bの厚さ方向Hに向かって変化する。このような細溝を、便宜上三次元サイプという。以下、細溝12は、必要に応じて三次元サイプ12という。
【0028】
本実施形態では、三次元サイプをキャップトレッド6に含むタイヤ1をコンピュータで解析可能なモデル(解析モデル)とする。そして、作成されたタイヤ1の解析モデルを用いてコンピュータを用いたシミュレーション(変形や転動等のシミュレーション)を実行することで、タイヤ1の性能を評価する。三次元サイプは形状が複雑であるため、簡易に解析モデル化することが難しい。また、例えば、有限要素法(Finite Element Method:FEM)のように、解析対象を有限個の要素に分割して解析モデルを作成する解析手法を用いる場合には、複雑な形状の三次元サイプは、四面体要素モデル化されたり、六面体要素を用いた場合でも歪みの大きい六面体要素が用いられたりして、解析精度を向上させることが難しい。
【0029】
そこで、本実施形態では、次のようなトレッドモデル作成方法を用いて、三次元サイプを含むタイヤのキャップトレッドの解析モデル(トレッドモデル)を作成し、このトレッドモデルを用いてタイヤの解析モデル(タイヤモデル)を作成する。本実施形態に係るトレッドモデル作成方法は、溝が形成されたタイヤのキャップトレッドを、コンピュータで解析可能な解析モデルであるトレッドモデルとするにあたり、
(1)前記タイヤの踏面側(径方向外側)から見た前記キャップトレッドの二次元形状を抽出し、当該二次元形状を複数の節点で構成される有限個の要素に分割することにより、前記キャップトレッドの二次元モデルを作成する手順
(2)当該二次元モデルを前記キャップトレッドの厚さ方向に展開して、複数の節点で構成された複数の要素が前記厚さ方向に向かって配置されて構成される前記キャップトレッドの三次元モデルを作成する手順
(3)前記溝の平面形状から形成された溝モデルの溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させることにより、トレッドモデルを作成する手順
を含む。
【0030】
解析モデルとは、有限要素法や有限差分法等の数値解析手法を用いて、解析対象(例えばタイヤ)に対して騒音解析や振動解析、あるいは転動解析等を行うために用いるモデルで、コンピュータで解析可能な解析モデルであり、数学的モデルや数学的離散化モデルを含む。本実施形態では、作成されたタイヤモデルを用いた転動シミュレーション等に用いる解析手法として、有限要素法を使用する。解析手法に有限要素法を用いる場合、解析対象を複数の節点で構成される有限個の要素に分割して作成される。
【0031】
なお、本実施形態に係る組立体モデルの作成方法に適用できる解析手法は有限要素法に限られず、境界要素法(Boundary Element Method:BEM)、有限差分法(Finite Difference Method:FDM)等も使用できる。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、又は複数の解析手法を組み合わせて使用することもできる。なお、有限要素法は、構造解析に適した解析手法なので、特にタイヤのような構造体に対して好適に適用できる。
【0032】
トレッドモデルとは、タイヤのトレッド、より具体的には、タイヤのキャップトレッドの解析モデルであり、少なくとも主溝の溝底を含み、かつ前記溝底よりも踏面側の解析モデルである。また、タイヤモデルとは、操縦安定性、耐久性等の性能を評価する対象のタイヤを解析モデルとしたものである。次に、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法及びタイヤモデル作成方法を実行する装置について説明する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る解析モデルの作成方法の構成を示す説明図である。図4に示す解析モデル作成装置50はコンピュータであり、処理部50pと記憶部50mとを備える。処理部50pと記憶部50mとは、入出力部(I/O)59を介して接続してある。処理部50pは、モデル作成部51と、解析部52とを含んで構成される。これらが本実施形態に係るトレッドモデル作成方法及びタイヤモデル作成方法を実行する。モデル作成部51と、解析部52とは入出力部59に接続されており、相互にデータをやり取りできるように構成されている。
【0034】
処理部50pは、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成できる。モデル作成部51は、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法及びタイヤモデル作成方法を実行して、三次元サイプを含むトレッドモデルや当該トレッドモデルを有するタイヤモデルを作成する。解析部52は、作成されたタイヤモデルを用いて、例えば、騒音解析や振動解析、あるいは転動解析等といった各種の解析を実行する。これらの解析結果から、タイヤの性能が評価される。
【0035】
入出力部59には、端末装置60が接続されている。端末装置60は、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法及びタイヤモデル作成方法を実行するために必要なデータ、例えば、タイヤやトレッドパターンの形状や寸法、タイヤを構成する材料の物性値や繊維材料の物性値、あるいは解析における境界条件や走行条件等を、端末装置60に接続された入出力装置61から入出力部59を介して、解析モデル作成装置50の処理部50pへ与える。また、端末装置60は、作成されたトレッドモデルやタイヤモデルの情報、例えば、座標や初期ひずみ、初期応力等を、解析モデル作成装置50の処理部50pや記憶部50mから受け取り、端末装置60に接続された表示装置62に解析結果を表示する。
【0036】
記憶部50mには、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法及びタイヤモデル作成方法の処理手順を含むコンピュータプログラムや、評価対象のタイヤの材料物性や寸法等のデータが格納されている。なお、材料物性や寸法等のデータは、解析モデル作成装置50が本実施形態に係るトレッドモデル作成方法及びタイヤモデル作成方法を実行してトレッドモデルやタイヤモデルを作成する際に、必要に応じて用いられる。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、不揮発性のメモリ、ハードディスク装置、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。また、記憶部50mは、処理部50pに内蔵されるものであっても、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。このように、解析モデル作成装置50は、通信により端末装置60から処理部50pや記憶部50mにアクセスするものであってもよい。
【0037】
上記コンピュータプログラムは、処理部50pが備えるモデル作成部51や解析部52等へ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法及びタイヤモデル作成方法の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この解析モデル作成装置50は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、処理部50pが備えるモデル作成部51及び解析部52の機能を実現するものであってもよい。次に、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法を説明する。
【0038】
図5は、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法の手順を示すフローチャートである。図6は、ブロックの踏面の形状を示す平面図である。図7、図8は、図6に示すブロックの二次元モデルを示す平面図である。説明の便宜上、図8は、図7に示す二次元モデルの一部を示してある。
【0039】
本実施形態に係るトレッドモデルの作成方法を実行するにあたり、ステップS11において、性能を評価する対象のタイヤを構成するキャップトレッドの二次元形状を抽出する。キャップトレッドの二次元形状は、例えば、図2に示すような、タイヤ1のトレッドパターンを二次元に展開した平面図から抽出する。キャップトレッドの二次元形状には、主溝、横溝、細溝、三次元サイプ等の位置や形状の情報が含まれており、これらの情報は、図4に示す解析モデル作成装置50の記憶部50mに格納される。
【0040】
例えば、図6に示すブロック10Bは、性能を評価する対象のタイヤのキャップトレッドを構成する要素であり、ステップS11においては、ブロック10Bの二次元形状からブロック10Bや三次元サイプ12の位置や形状等の情報が抽出される。以下においては、便宜上、キャップトレッドを構成する要素のうち、三次元サイプ12を有するブロック10Bに着目して本実施形態に係るトレッドモデルの作成方法を説明するが、実際は、キャップトレッドを構成するすべての構成要素(主溝、横溝、細溝、リブ等)が対象となる。また、この例では、タイヤ一周分のキャップトレッドの二次元形状が抽出されるが、所定のピッチで同じトレッドパターンが繰り返される場合、繰り返しの1単位の二次元形状が抽出されるようにして、これを所定のピッチでタイヤの周方向に展開してもよい。
【0041】
次に、ステップS12へ進み、三次元サイプの形状、位置が設定される。本実施形態では、二次元モデルをキャップトレッドの厚さ方向に展開して得られる三次元モデルに含まれる溝モデルのうち、三次元サイプに相当するものについて、溝壁の節点を移動させて、三次元モデルに三次元サイプを形成する。このため、三次元サイプとなる溝モデルの位置や、作成する三次元サイプの形状を指定する必要があるからである。
【0042】
図6に示す例では、キャップトレッドを構成するブロック10Bが有する三次元サイプ12の形状及び位置が設定される。具体的には、図4に示す解析モデル作成装置50のモデル作成部51が、記憶部50mに格納されているキャップトレッドの二次元形状の情報から三次元サイプの形状及び位置を抽出し、記憶部50mの所定領域へ一時的に格納する。
【0043】
次に、ステップS13へ進み、モデル作成部51は、キャップトレッドの二次元形状から、キャップトレッドの二次元モデルを作成する。図7に示す二次元モデル20は、キャップトレッドを構成する要素であるブロック10B(図6参照)の二次元モデルであり、図6に三次元サイプ12に相当する位置に溝部21が表れている。
【0044】
二次元モデルを作成するにあたり、例えば、モデル作成部51は、記憶部50mからキャップトレッドの二次元形状についての情報(例えば、主溝、横溝、細溝、三次元サイプ等の位置や形状の情報)を取得する。そして、モデル作成部51は、取得した情報から、キャップトレッドの二次元形状(例えば、図6に示すブロック10Bの二次元形状)を複数の節点で構成される有限個の要素に分割することにより、キャップトレッドの二次元モデルを作成する。図8には、図7に示す二次元モデル20の一部を示してあるが、このように、二次元モデル20は、複数の節点Nで構成される有限個の要素(二次元要素)E2に分割されている。なお、二次元モデル20の溝部21は、三次元サイプとなるものである。
【0045】
二次元要素E2は二次元モデル20を構成する要素なので、例えば、四辺形要素が用いられる。また、二次元モデル20から作成される三次元モデルの要素は、四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで用い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程において、三次元モデルでは三次元座標を用いてモデル作成部51により逐一特定される。
【0046】
本実施形態では、二次元モデル20から作成された三次元モデルをトレッドモデルとするが、このトレッドモデルを備えたタイヤモデルの解析精度を向上させるため、前記三次元モデルは六面体要素で構成することが好ましい。このため、二次元モデル20を構成する二次元要素E2は、四辺形要素とすることが好ましい。また、上述した理由から、二次元モデル20から作成される三次元モデルは六面体ソリッド要素であることが好ましい。
【0047】
二次元モデル20が作成されたら、モデル作成部51は、二次元モデル20の各節点や各要素の情報(座標や物性値等)を記憶部50mの所定領域へ一時的に格納する。次に、ステップS14へ進み、モデル作成部51は、キャップトレッドの三次元モデルを作成する。三次元モデルは、二次元モデル20をキャップトレッドの厚さ方向に展開して作成されるものであり、複数の節点で構成された複数の要素がキャップトレッドの厚さ方向に向かって配置されて構成される。次に、三次元モデルを作成する手順の一例を説明する。
【0048】
図9は、ブロックの二次元モデルから三次元モデルを作成する手法の一例を示す説明図である。図10−1、図10−2は、二次元モデルから作成された、溝を有する三次元モデルの斜視図である。図9のS1、S2、S3は、二次元モデル20から作成される三次元モデルの生成順を示す。また、図9のD1は、図8に示す二次元モデル20を矢印D1から見た状態であり、D2は、図8のA−A矢視図であり、D3は、図8に示す二次元モデル20の平面図である。
【0049】
図9のS1は、二次元モデル20をキャップトレッドの厚さ方向に展開していない状態である。なお、本実施形態では、二次元モデル20をキャップトレッドの厚さ方向であって、タイヤの回転軸に向かう方向へ展開するが、展開する方向はこれに限定されるものではない。
【0050】
二次元モデル20をキャップトレッドの厚さ方向へ展開するにあたり、モデル作成部51は、例えば、二次元モデル20と直交する方向、かつ二次元モデル20の各節点Nから距離Δh離れた位置に、新たな節点Nnを生成する(S2)。これによって、二次元モデル20の節点Nと新たに生成された節点Nnとで複数の三次元形状の要素(三次元要素)E3が一層(L1)生成される。上述したように、二次元モデル20を構成する二次元要素E2は四辺形要素なので、三次元要素E3は六面体要素となる。
【0051】
モデル作成部51は、二次元モデル20の元となったブロック10B(図6参照)の厚さ(キャップトレッドの厚さ方向における寸法)が実現される数だけキャップトレッドの厚さ方向に三次元要素E3が生成されるまで上記手順を繰り返す。これによって、キャップトレッドの厚さ方向へ複数の三次元要素E3が生成される。図9に示す例では、三次元要素E3を3層(L1、L2、L3)生成して配置することにより、三次元モデル30が完成する(S3)。ここで、キャップトレッドの厚さ方向における三次元モデル30の寸法hは、二次元モデル20の元となったブロック10Bの厚さに相当する。なお、三次元サイプのモデルを形成するにあたっては、三次元モデル30は、キャップトレッドの厚さ方向へ向かって、少なくとも3層の三次元要素が配置されることが好ましい。
【0052】
なお、図9のS2、S3に示すように、二次元モデル20の溝部21は、キャップトレッドの厚さ方向に向かって三次元要素E3が生成されるにしたがって深くなる。そして、溝底位置まで三次元要素E3が生成された時点で、溝底位置よりもタイヤの径方向内側に三次元要素E3bが生成される。このようにして、三次元モデル30が作成されると、二次元モデル20の溝部21の位置に、溝壁32と溝底33とを有した溝モデル31(D2ではハッチングのない部分)が形成される。なお、三次元要素E3bの一部が溝底33となる。
【0053】
このように、モデル作成部51は、二次元モデル20をキャップトレッドの厚さ方向に順次三次元要素を生成することにより、二次元モデル20を前記厚さ方向に展開して、三次元モデル30を作成する。モデル作成部51は、完成した三次元モデル30の各節点及び各要素の情報(座標や物性値等)を記憶部50mへ一時的に格納する。
【0054】
三次元モデル30の作成方法は上記手法に限られるものではない。例えば、モデル作成部51は、二次元モデル20と直交する方向、かつ二次元モデル20の各節点Nから、作成しようとする三次元モデル30の厚さ(キャップトレッドの厚さ方向における寸法)分離れた位置に、新たな節点Nnを生成して、第1の三次元モデルを作成する。そして、モデル作成部51は、第1の三次元モデルをキャップトレッドの厚さ方向に対して複数の三次元要素に分割することにより、三次元モデル30を作成してもよい。さらに、三次元モデル30は、例えば、本願出願人の先願である特開2002−283816号公報に開示された既知の方法を用いて作成してもよい。
【0055】
ステップS14において作成された三次元モデルは、図10−1、図10−2に示すようになる。図10−2は、溝モデル31の形状がわかりやすいように、図10−1において溝を隠している要素を輪郭線のみで表現したものである。溝モデル31を含む三次元モデル30が作成されたらステップS15へ進む。なお、溝モデル31は、三次元モデル30の踏面Gmと平行な面で溝モデル31を切ったときの断面形状が、三次元モデル30の厚さ方向Hに向かって変化しないものである。ステップS15において、モデル作成部51は、三次元モデル30が有する溝モデル31の溝壁に含まれる所定の節点を移動させ、三次元サイプを作成する。次に、この手法を説明する。
【0056】
図11−1、図11−2は、溝壁の節点の移動を説明する図である。三次元サイプは、図3−2に示すように、ブロック10Bの踏面と平行な面で細溝12を切ったときの断面形状が、細溝12の開口部と細溝12の内部とで異なり、前記断面形状が、ブロック10Bの厚さ方向Hに向かって変化するものである。このため、図10−1や図10−2に示す三次元モデル30が有する溝モデル31の溝壁に含まれる節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させる。そして、三次元モデル30の踏面Gmと平行な面で溝モデル31を切ったときの断面形状が、溝モデル31の開口部と内部とで異なり、また、前記断面形状が、三次元モデル30の厚さ方向Hに向かって変化するようにする。これによって、三次元サイプのモデルを有するトレッドモデルを作成する。
【0057】
図11−1、図11−2に示すように、例えば、溝モデル31の溝壁32Aの節点N1、N2を矢印M1で示す方向に移動させ、また、節点N3を矢印M2で示す方向に移動させる。ここで、M1は、三次元モデル30の溝モデル31を構成する溝壁32Aから溝壁32Bへ向かう方向であり、M2は、溝壁32Bから溝壁32Aへ向かう方向である。移動させる溝壁32A、32Bに含まれる節点は、作成される三次元サイプのモデルの形状によって決定される。例えば、モデル作成部51が、記憶部50mに格納された三次元サイプの形状及び位置の情報に基づいて、移動対象とする節点及び移動方向並びに移動距離を決定する。そして、モデル作成部51は、決定された移動対象となる節点を移動させる。
【0058】
ステップS15において、溝壁32A、32Bに含まれる節点を移動させる場合、溝壁32A、32B以外の節点であって、三次元モデル30の内部に存在する所定の節点も移動させることが好ましい。これによって、溝壁32A、32Bに含まれる節点を移動させることにより、移動させた節点を含む三次元要素の形状が歪むことを抑制できる。次に、三次元モデル30の内部に存在する所定の節点を移動させる手法を説明する。
【0059】
図12−1は、三次元モデルの斜視図である。図12−2は、図12−1のB−B断面図である。図13−1は、六面体要素の一例を示す斜視図である。図13−2は、図13−1に示す六面体要素を構成する節点を移動させた状態の図である。図12−1に示す三次元モデル30が有する溝モデル31は、上述したように、三次元モデル30の踏面Gmと平行な面で溝モデル31を切ったときの断面形状が、三次元モデル30の厚さ方向に向かって変化しない。図12−2は、図12−1のB−B断面であり、溝モデル31が一部に表れている。
【0060】
図12−2に示す例では、溝モデル31の溝壁32Aに含まれる節点Na1を溝壁32Bに向かって移動させ、溝壁32Aに含まれる節点Na2を溝壁32Bから遠ざかる方向に移動させる。また、溝モデル31の溝壁32Bに含まれる節点Nb1を溝壁32Aから遠ざかる方向に移動させ、溝壁32Bに含まれる節点Nb2を溝壁32Aに向かって移動させる。すると、これらを含む三次元要素E3a1、E3a2、E3b1、E3b2の形状が直方体あるいは立方体から歪むことがわかる。三次元モデル30を構成する三次元要素が歪むと、解析精度が低下することから、三次元要素はできる限り直方体あるいは立方体に近い方が好ましい。
【0061】
このため、本実施形態では、溝壁32A、32Bに含まれて移動する節点(節点Na1、Na2、Nb1、Nb2)以外の節点であって、三次元モデル30の内部に存在する所定の節点も移動させる。これによって、溝壁32A、32Bに含まれ、かつ移動する節点Na1、Na2、Nb1、Nb2が含まれる三次元要素E3a1、E3a2、E3b1、E3b2の歪みを低減する。
【0062】
三次元モデル30の内部に存在する節点のうち移動させる節点は、溝壁32A、32Bに含まれ、かつ移動する節点Na1、Na2、Nb1、Nb2と隣接する節点とである。また、移動させる方向は、溝壁32A、32Bに含まれ、かつ移動する節点Na1、Na2、Nb1、Nb2の移動方向と同じ方向としてある。例えば、三次元モデル30の内部に存在し、かつ節点Na1と隣接する節点は、節点Na11である。節点Na11の移動方向は、節点Na1の移動方向と同じである。
【0063】
また、本実施形態では、三次元モデル30の内部に存在し、かつ溝壁32Aに含まれて移動する節点Na1と隣接する節点Na11と隣接する節点Na12も移動させる。これによって、三次元モデル30内の節点Na11が移動することにより、節点Na11が含まれる三次元要素の歪みを低減できるので、解析精度の低下をより効果的に抑制できる。
【0064】
また、本実施形態では、節点Na2の移動により、三次元モデル30内の節点Na21、Na22を移動させ、節点Nb1の移動により、三次元モデル30内の節点Nb11、Nb12を移動させ、また、節点Nb2の移動により、三次元モデル30内の節点Nb21、Nb22を移動させる。これによって、溝壁32A、32Bに含まれる節点を移動させることによる三次元要素の歪みを低減できるので、解析精度の低下を抑制できる。
【0065】
本実施形態のように、溝壁32A、32Bに含まれて移動する節点の移動方向と平行な方向、かつ三次元モデル30の内部に存在する複数の節点を移動させる場合、これらの節点の移動距離はすべて均等、又は比例の関係とすることが好ましい。このようにすれば、三次元モデル30を構成する三次元要素の歪みをより効果的に低減できる。節点の移動距離を比例の関係とする例としては、例えば、三次元モデルの内部に進むにしたがって、節点の移動距離を小さくする。なお、上述した節点の移動は、モデル作成部51が実行する。そして、モデル作成部51は、移動後における各節点の座標を記憶部50mへ一時的に格納する。
【0066】
上述した節点の移動において、移動させる節点を含む三次元要素は、当該要素を構成する少なくとも3個の節点で規定される異なる面同士のなす角度が90度になるようにすることが好ましい。ここで、移動させる節点とは、溝壁32A、32Bに含まれ、かつ三次元サイプのモデルを形成するために移動させる節点や、この節点の移動にともなって移動させることが必要になった三次元モデル30内の節点である。
【0067】
図13−1に示す三次元要素E3は、通常の六面体要素であり、節点N1〜N8で構成される。そして、例えば、少なくとも3個の節点で構成される異なる面同士のなす角度は90度となっている。すなわち、三次元要素E3は、直方体あるいは立方体である。図12−2に示す三次元モデル30を構成する三次元要素の形状が、図13−1に示すような直方体あるいは立方体であれば、この三次元モデル30を用いた場合における解析精度の低下は小さい。
【0068】
一方、図13−2に示す三次元要素E3aは、図13−1に示す三次元要素E3を構成する節点N1、N2をそれぞれ節点N5、N6から遠ざかる方向(矢印M1、M2で示す方向)へ移動させたものである。この場合、図13−2に示すように、少なくとも3個の節点で構成される異なる面同士のなす角度は、90度になっていない箇所があり(θ1、θ2、θ3で示す箇所)、三次元要素E3aの形状は直方体あるいは立方体とは異なるものとなってしまう。このような三次元要素E3aを含む三次元モデル30を用いて解析した場合、解析精度の低下は大きくなる。
【0069】
そこで、本実施形態において、モデル作成部51は、三次元モデル30で節点を移動させる場合、移動させる節点を含む三次元要素を構成する少なくとも3個の節点で規定される異なる面同士のなす角度が90度に近づくように、節点を移動させる。これによって、移動させる節点を含む三次元要素の形状が直方体あるいは立方体から大きく異なることを回避できるので、解析精度の低下を抑制できる。
【0070】
図14は、三次元サイプのモデルを含むブロックモデルを示す斜視図である。ステップS15が終了すると、図14に示すように三次元サイプのモデル(三次元サイプモデル)12Mを含むブロックモデル10BMが完成する。上述したように、本実施形態では、便宜上、キャップトレッドを構成するブロックを対象として本実施形態に係るトレッドモデル作成方法の手順を説明しているので、ブロックモデル10BMの完成でトレッドモデルTMが完成したものとする(ステップS16)。
【0071】
本実施形態に係るトレッドモデル作成方法によれば、六面体要素を用いて簡易に三次元サイプモデルを有するトレッドモデルを作成できる。このため、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法によって作成されたトレッドモデルを備えるタイヤモデルを用いて転動解析や変形解析等を実行した場合には、解析精度の低下を抑制できる。
【0072】
[第1変形例]
図15−1、図15−2は、本実施形態の第1変形例に係るトレッドモデル作成方法の説明図である。図16は、部分トレッドモデルを示す平面図である。図16に示す部分トレッドモデルTM_P1、TM_P2は、より具体的には、キャップトレッドを構成するブロックを解析モデル化したブロックモデルである。なお、部分トレッドモデルTM_P1、TM_P2の縮尺は同一である。
【0073】
本変形例に係るトレッドモデル作成方法は、上述した実施形態に係るトレッドモデル作成方法を用いて、タイヤ周方向におけるトレッドパターンの1ピッチに対応する部分トレッドモデルを作成し、当該部分トレッドモデルをタイヤ周方向に向かって1周分配列することにより、タイヤ周方向全体にわたるトレッドモデルを作成する点に特徴がある。
【0074】
図15−1に示すタイヤ1は、タイヤ周方向(矢印Cで示す方向)に向かって所定のピッチp(中心角α)で、トレッドパターンTP_Aが繰り返される。このため、図4に示す解析モデル作成装置50のモデル作成部51は、上述した本実施形態に係るトレッドモデル作成方法で、トレッドパターンTP_Aに基づく部分トレッドモデルTM_P(図15−2参照)を作成する。そして、モデル作成部51は、図15−2に示すように、作成した部分トレッドモデルTM_Pを、タイヤ周方向にタイヤ1周分配列して、タイヤ周方向全体にわたるトレッドモデルTM_Aを作成する。このようにすれば、簡単かつ短時間でタイヤ周方向一周分のトレッドモデルを作成できる。
【0075】
トレッドパターンTP_Aが繰り返されるピッチpがタイヤ周方向で異なる場合、ピッチpに応じてトレッドパターンのタイヤ周方向における長さを調整する。例えば、図16に示す、部分トレッドモデルTM_P1、TM_P2のように、周方向(図16の矢印Cで示す方向)の長さを変更して、タイヤ周方向にタイヤ1周分配列する。このとき、三次元サイプモデル12Mの幅tの大きさは変更しないようにすることが好ましい。これを実現するため、例えば、部分トレッドモデルTM_P1、TM_P2を構成する節点のタイヤ周方向における距離を、三次元サイプモデル12M以外の部分で変更する。このようにすれば、簡単に異なるピッチpに対応した長さの部分トレッドモデルが作成できる。
【0076】
[第2変形例]
図17、図18は、本実施形態の第2変形例に係るトレッドモデル作成方法の説明図である。本変形例に係るトレッドモデル作成方法は、上述した実施形態に係るトレッドモデル作成方法を用いて複数の異なるトレッドモデルを作成し、次に、タイヤ周方向に向かって、前記複数の異なるトレッドモデルを配置する点に特徴がある。異なるトレッドモデルとは、トレッドパターンが異なっていたり、踏面のトレッドパターンは同一であるが、三次元サイプが異なっていたりするものである。
【0077】
まず、図4に示す解析モデル作成装置50のモデル作成部51は、上述した実施形態に係るトレッドモデル作成方法を用いて、複数の異なるトレッドモデルTM1、TM2、TE3等を作成する。そして、モデル作成部51は、図17に示すように、タイヤ周方向に向かって複数の異なるトレッドモデルTM1、TM2等を配列する。図17に示す例では、領域R1にトレッドモデルTM1を、領域R2にトレッドモデルTM2を、領域R3にトレッドモデルTM3を配置する。タイヤ周方向(図17の矢印Cで示す方向)におけるトレッドモデルTM1等の長さは、タイヤ1の接地長さLCよりも大きくする。これによって、トレッドモデルTM1等を確実に接地させることができる。
【0078】
図18に示すトレッドモデルTM_Vは、異なるトレッドモデルTM1〜TM6を、タイヤ周方向全体にわたって配置して構成される。なお、本変形例において作成されるトレッドモデルは、異なるトレッドモデルをタイヤ周方向全体にわたって配置する必要はなく、タイヤ周方向の一部に、異なる複数のトレッドモデルを配置して構成してもよい。
【0079】
本変形例に係るトレッドモデル作成方法によって作成されたトレッドモデルは、タイヤ周方向に異なる複数のトレッドモデルが配置されるので、このトレッドモデルを備えるタイヤモデルは、1回の計算で、様々なトレッドモデルを評価できる。これによって、評価の効率が向上する。次に、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法を説明する。
【0080】
[タイヤモデル作成方法]
図19は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の手順を示すフローチャートである。図20、図21は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の説明図である。本実施形態に係るタイヤモデル作成方法は、上述した本実施形態及びその変形例に係るトレッドモデルの作成方法によって作成したトレッドモデルと、キャップトレッドよりも径方向内側の部分を解析モデル化した内側タイヤモデルとを結合することによりタイヤモデルを作成する点に特徴がある。
【0081】
本実施形態に係るタイヤモデル作成方法は、上述した解析モデル作成装置50(図4参照)により実現できる。本実施形態に係るタイヤモデル作成方法を実行するにあたり、ステップS21において、図4に示す解析モデル作成装置50が備えるモデル作成部51は、図20に示す内側タイヤモデル1IM及び図14に示すトレッドモデルTMを作成する。トレッドモデルTMは、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法を用いてモデル作成部51が作成する。完成したトレッドモデルTMの各節点及び各要素の情報(座標や物性値等)は、モデル作成部51によって、解析モデル作成装置50の記憶部50mへ一時的に格納される。
【0082】
内側タイヤモデル1IMは、例えば、図1に示すタイヤ1のキャップトレッド6よりも径方向内側の部分を解析モデルとしたものである。解析手法に有限要素法を用いる場合、モデル作成部51は、例えば、図1に示すタイヤ1のキャップトレッド6よりも径方向内側の部分を複数の節点で構成される有限個の要素で分割することにより、内側タイヤモデル1IMを作成する。モデル作成部51は、完成した内側タイヤモデル1IMの各節点及び各要素の情報(座標や物性値等)を記憶部50mへ一時的に格納する。
【0083】
ここで、内側タイヤモデル1IMの要素は、四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで用い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程において、三次元モデルでは三次元座標を用いてモデル作成部51により逐一特定される。なお、完成したタイヤモデルを用いた転動解析等の解析精度を向上させるため、内側タイヤモデル1IMを構成する要素は六面体ソリッド要素又は五面体ソリッド要素を主体とすることが好ましい。
【0084】
内側タイヤモデル1IM及びトレッドモデルTMが完成したら、ステップS22へ進む。ステップS22において、モデル作成部51は、内側タイヤモデル1IMとトレッドモデルTMとを結合する。例えば、図21に示すように、モデル作成部51は、内側タイヤモデル1IMの外側にトレッドモデルTMを配置して、両者を結合する。
【0085】
内側タイヤモデル1IMとトレッドモデルTMとを結合するということは、トレッドモデルTMの内面Pimと内側タイヤモデル1IMの外面Ptmとの相対変位が生じないようにするということである。例えば、モデル作成部51は、トレッドモデルTMの内面Pim上の節点と、内側タイヤモデル1IMの外面Ptm上の節点とを拘束して、両者の相対変位が生じないようにする。これによって、図21に示すように、内側タイヤモデル1IMとトレッドモデルTMとが結合され、一体化されたタイヤモデル1Mが完成する(ステップS23)。なお、作成されたトレッドモデルTMの形状が環状である場合、トレッドモデルTMを周方向に分割して、それぞれの部分を内側タイヤモデル1IMの外側に配置した後、トレッドモデルTM及び内側タイヤモデル1IM、分割されたそれぞれのトレッドモデルTM同士を結合してもよい。
【0086】
タイヤモデル1Mが完成したら、ステップS24に進む。ステップS24において、解析モデル作成装置50の処理部50pが備える解析部52は、作成されたタイヤモデル1Mを用いて転動解析に代表される動解析や静解析、あるいは固有値解析、周波数応答解析、熱伝導解析等を実行する。そして、ステップS25へ進み、その解析結果に基づき、作成されたタイヤモデル1Mの基となったタイヤ1の性能が評価される。評価されるタイヤ1の性能としては、例えば、耐摩耗特性、耐久性、操縦安定性、氷上特性、転がり抵抗、NV(Noise Vibration:騒音及び振動)、乗り心地、ばね特性、ハイドロプレーニング特性、トラクション性能等がある。
【0087】
タイヤモデルを作成するにあたっては、上述した第1変形例や第2変形例に係るトレッドモデル作成方法を用いてもよい。例えば、第1変形例に係るトレッドモデル作成方法を用いる場合、モデル作成部51は、ステップS21で図15−2に示す部分トレッドモデルTM_Pを作成する。そして、ステップS22において、モデル作成部51は、内側タイヤモデル1IMの外側に、作成した部分トレッドモデルTM_Pを、タイヤ周方向に向かって内側タイヤモデル1IMの1周分配列する。これによって、内側タイヤモデル1IMの外側に、タイヤ周方向全体にわたってトレッドモデルTM_Aが配置される。この状態で、モデル作成部51は、内側タイヤモデル1IMと、複数の部分トレッドモデルTM_Pとを結合する。これによって、タイヤモデルが完成する。この方法は、タイヤ周方向に向かって所定のピッチpでトレッドパターンが繰り返されるタイヤのタイヤモデルを作成する場合に、短時間でタイヤモデルを作成できる。
【0088】
また、第2変形例に係るトレッドモデル作成方法を用いる場合、モデル作成部51は、ステップS21で複数の異なるトレッドモデルを作成する。そして、ステップS22において、モデル作成部51は、内側タイヤモデル1IMの外側に、作成した複数の異なるトレッドモデルを、タイヤ周方向に向かって内側タイヤモデル1IMの1周分配列する。これによって、内側タイヤモデル1IMの外側に、タイヤ周方向全体にわたって複数の異なるトレッドモデルが配置される。この状態で、モデル作成部51は、内側タイヤモデル1IMと、複数の異なるトレッドモデルとを結合する。これによって、タイヤモデルが完成する。この方法により作成されたタイヤモデルは、タイヤ周方向に異なる複数のトレッドモデルが配置されるので、1回の計算で、様々なトレッドモデルを評価できる。
【0089】
[タイヤモデル作成方法の変形例]
図22は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の変形例の手順を示すフローチャートである。図23−1〜図23−4は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法の変形例の説明図である。本変形例は、次の点に特徴がある。すなわち、トレッドパターンのないタイヤモデルを作成し、このタイヤモデルの表面にキャップトレッドの二次元形状に基づいて作成された二次元モデルを転写し、この状態から二次元モデルをキャップトレッドの厚さ方向であってタイヤの回転軸に向かって展開することにより、キャップトレッドの三次元モデルを作成する。そして、溝の平面形状から形成された溝モデルの溝壁に含まれる所定の節点を、溝壁の面と交差する方向に移動させることにより、三次元サイプを有するトレッドモデルを備えたタイヤモデルを作成する。
【0090】
本変形例に係るタイヤモデル作成方法は、上述した解析モデル作成装置50(図4参照)により実現できる。本変形例に係るタイヤモデル作成方法を実行するにあたり、ステップS31において、図4に示す解析モデル作成装置50が備えるモデル作成部51は、図23−1に示すトレッドパターンのないタイヤモデル(パターンなしタイヤモデル)40、及び図7等に示す二次元モデル20を作成する。トレッドモデルTMは、本実施形態に係るトレッドモデル作成方法を用いてモデル作成部51が作成する。完成したトレッドモデルTMの各節点及び各要素の情報(座標や物性値等)は、モデル作成部51によって、解析モデル作成装置50の記憶部50mへ一時的に格納される。
【0091】
解析手法に有限要素法を用いる場合において、パターンなしタイヤモデル40は、トレッドパターンが踏面に形成されず、かつ少なくともトレッドパターンが形成される部分は、複数の節点で構成される有限個の要素で分割(要素分割)されていない解析モデルである。例えば、パターンなしタイヤモデル40は、図1に示すタイヤ1のキャップトレッド6以外の部分を要素分割して構成し、キャップトレッド6の部分は、要素分割しないで構成した解析モデルである。モデル作成部51は、例えば、図1に示すタイヤ1のキャップトレッド6以外の部分を複数の節点で構成される有限個の要素で分割することにより、パターンなしタイヤモデル40を作成する。モデル作成部51は、完成したパターンなしタイヤモデル40の各節点及び各要素の情報(座標や物性値等)を記憶部50mへ一時的に格納する。
【0092】
ここで、パターンなしタイヤモデル40を構成する要素は、四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで用い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程において、三次元モデルでは三次元座標を用いてモデル作成部51により逐一特定される。なお、完成したタイヤモデルを用いた転動解析等の解析精度を向上させるため、パターンなしタイヤモデル40を構成する要素は六面体ソリッド要素又は五面体ソリッド要素を主体とすることが好ましい。
【0093】
パターンなしタイヤモデル40及び二次元モデル20が完成したら、ステップS32へ進む。ステップS32において、モデル作成部51は、図23−2に示すように、パターンなしタイヤモデル40の踏面Gmへ二次元モデル20を転写する。次に、ステップS33へ進み、モデル作成部51は、図23−3に示すように、パターンなしタイヤモデル40のキャップトレッドに相当する部分に、図10−1、図10−2に示すような三次元モデル30を作成する。三次元モデル30は、上述したように、二次元モデル20をキャップトレッドの厚さ方向、すなわち、パターンなしタイヤモデル40の径方向内側に展開して作成される。この手順は上述した通りなので説明を省略する。
【0094】
三次元モデル30がパターンなしタイヤモデル40に作成されたら、ステップS34へ進み、モデル作成部51は、三次元モデル30が有する溝モデル31の溝壁に含まれる所定の節点を移動させ、三次元サイプを作成する。この手順も上述した通りなので、説明を省略する。これによって、三次元サイプモデル12Mが形成されたトレッドモデルTM(図14参照)が、パターンなしタイヤモデル40のキャップトレッドに相当する部分に作成されて、図23−4に示すタイヤモデル1Mが完成する(ステップS35)。
【0095】
タイヤモデル1Mが完成したら、ステップS36に進み、解析モデル作成装置50の処理部50pが備える解析部52は、作成されたタイヤモデル1Mを用いて転動解析に代表される動解析や静解析、あるいは固有値解析、周波数応答解析、熱伝導解析等を実行する。そして、ステップS37へ進み、その解析結果に基づき、作成されたタイヤモデル1Mの基となったタイヤ1の性能が評価される。
【0096】
タイヤモデルを作成するにあたっては、上述した第1変形例や第2変形例に係るトレッドモデル作成方法を用いてもよい。例えば、第1変形例に係るトレッドモデル作成方法を用いる場合、モデル作成部51は、ステップS32で、タイヤ周方向に繰り返されるトレッドパターンの1単位の二次元形状に基づいて作成された部分二次元モデルを、パターンなしタイヤモデル40の踏面Gmに所定のピッチで1周分転写する。
【0097】
また、第2変形例に係るトレッドモデル作成方法を用いる場合、モデル作成部51は、ステップS32で、複数の異なるトレッドパターンの二次元形状に基づいて、複数の異なる二次元モデルを作成する。そして、ステップS32において、モデル作成部51は、作成した複数の異なる二次元モデルを、パターンなしタイヤモデル40の踏面Gmに所定のピッチで1周分転写する。
【0098】
以上、本実施形態及びその変形例では、溝を備えるタイヤにおいて、溝壁の表面の形状が立体的な溝(例えば、三次元サイプ)を有するトレッドモデル及びタイヤモデルを、六面体要素を主体として簡単に作成することができる。その結果、本実施形態及びその変形例で作成されたタイヤモデルを用いれば、溝壁の表面の形状が立体的な溝を有するタイヤの性能をコンピュータシミュレーションで評価する際の精度低下が抑制される。本実施形態及びその変形例は、三次元サイプを対象としたが、本実施形態及びその変形例では溝壁の表面の形状が立体的な溝であれば適用できる。例えば、タイヤの主溝や横溝の溝壁に突起や凹部等を形成する場合にも、本実施形態及びその変形例で開示した内容は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明に係るタイヤモデル作成方法及びタイヤモデルの作成用コンピュータプログラムは、コンピュータで解析可能な、タイヤやタイヤのトレッドの解析モデルを作成することに有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 タイヤ
1M タイヤモデル
1IM 内側タイヤモデル
6 キャップトレッド
7M 主溝
7W 横溝
9 アンダトレッド
10B ブロック
10BM ブロックモデル
10L リブ
11 細溝
12 三次元サイプ(細溝)
12M 三次元サイプモデル
20 二次元モデル
21 溝部
30 三次元モデル
31 溝モデル
32、32A、32B 溝壁
33 溝底
40 タイヤモデル
50 解析モデル作成装置
50m 記憶部
50p 処理部
51 モデル作成部
52 解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝が形成されたタイヤのキャップトレッドを、コンピュータで解析可能な解析モデルであるトレッドモデルとするにあたり、
前記タイヤの踏面側から見た、前記溝の平面形状を含む前記キャップトレッドの二次元形状を、複数の節点で構成される有限個の要素に分割することにより、前記キャップトレッドの二次元モデルを作成する手順と、
当該二次元モデルを前記キャップトレッドの厚さ方向に展開して、複数の節点で構成された複数の要素が前記厚さ方向に向かって配置されて構成される前記キャップトレッドの三次元モデルを作成する手順と、
前記溝の平面形状から形成された溝モデルの溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させることにより、トレッドモデルを作成する手順と、
を含むことを特徴とするトレッドモデル作成方法。
【請求項2】
前記溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させる手順においては、
前記溝壁に含まれる節点以外の節点であって、前記三次元モデルの内部に存在する所定の節点も移動させる請求項1に記載のトレッドモデル作成方法。
【請求項3】
前記溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させる手順において、
移動させる節点を含む要素は、当該要素を構成する少なくとも3個の節点で規定される異なる面同士のなす角度が90度になるようにする請求項2に記載のトレッドモデル作成方法。
【請求項4】
前記溝モデルは、前記厚さ方向に向かって、少なくとも3層の要素が配置される請求項1から3のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法によって、タイヤ周方向におけるトレッドパターンの1ピッチに対応する部分トレッドモデルを作成し、
当該部分トレッドモデルをタイヤ周方向に向かって1周分配列することにより、タイヤ周方向全体にわたるトレッドモデルを作成するトレッドモデル作成方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法によって、複数の異なるトレッドモデルを作成し、
タイヤ周方向に向かって、前記複数の異なるトレッドモデルを配置するトレッドモデル作成方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とするトレッドモデルの作成用コンピュータプログラム。
【請求項8】
タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、
前記タイヤのキャップトレッドよりも径方向内側の部分に対して、コンピュータで解析可能な内側タイヤモデルを作成し、また、請求項1から6のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法によりトレッドモデルを作成するモデル作成手順と、
前記内側タイヤモデルの外側に、前記トレッドモデルを配置して結合する手順と、
を含むことを特徴とするタイヤモデル作成方法。
【請求項9】
タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、
前記タイヤのキャップトレッドよりも径方向内側の部分に対して、コンピュータで解析可能な内側タイヤモデルを作成し、また、請求項1から4のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法により、タイヤ周方向におけるトレッドパターンの1ピッチに対応する部分トレッドモデルを作成する手順と、
前記内側タイヤモデルの外側に、前記部分トレッドモデルをタイヤ周方向に向かって1周分配列するとともに、前記内側タイヤモデルと前記部分トレッドモデルとを結合する手順と、
を含むことを特徴とするタイヤモデル作成方法。
【請求項10】
タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、
前記タイヤのキャップトレッドよりも径方向内側の部分に対して、コンピュータで解析可能な内側タイヤモデルを作成し、また、請求項1から4のいずれか1項に記載のトレッドモデル作成方法により、複数の異なるトレッドモデルを作成する手順と、
前記内側タイヤモデルの外側に、タイヤ周方向に向かって、前記複数の異なるトレッドモデルを配置するとともに、前記内側タイヤモデルと前記複数の異なるトレッドモデルとを結合する手順と、
を含むことを特徴とするタイヤモデル作成方法。
【請求項11】
タイヤをコンピュータで解析可能な解析モデル化するにあたり、
前記タイヤに基づいて、トレッドパターンを形成しないパターンなしタイヤモデルを作成し、また、前記タイヤの踏面側から見た、前記溝の平面形状を含む前記タイヤのキャップトレッドの二次元形状を、複数の節点で構成される有限個の要素に分割することにより、前記キャップトレッドの二次元モデルを作成する手順と、
当該二次元モデルを、前記パターンなしタイヤモデルの踏面に転写する手順と、
転写後の前記二次元モデルを前記キャップトレッドの厚さ方向に展開して、複数の節点で構成された複数の要素が前記厚さ方向に向かって配置されて構成される前記キャップトレッドの三次元モデルを作成する手順と、
前記溝の平面形状から形成された溝モデルの溝壁に含まれる所定の節点を、前記溝壁の面と交差する方向に移動させることにより、前記パターンなしタイヤモデルにトレッドモデルを作成する手順と、
を含むことを特徴とするタイヤモデル作成方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とするタイヤモデルの作成用コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図23−3】
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【図23−4】
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【公開番号】特開2010−271767(P2010−271767A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120795(P2009−120795)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】