トロリー
【課題】丸パイプをレールとして使用することを前提に、進行方向以外の力にも追従できるトロリーを提供する。
【解決手段】少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、中央に中心に向かって傾斜するテーパ面を左右対称に有するV字溝を周設し、当該V字溝の前記テーパ面がレールの前記上半部と二点接触した状態でレール上を転動しながら進行する鼓状のホイールと、このホイールを回転可能に枢支するサイドプレートを備えたフレームと、前記ホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからなる。ホイールは、円錐面を有する一対の駒を前記円錐面を対向させた状態で一体的に連結するか、円筒部材の中央にV字溝を削り出してなる。さらに、ホイールは、例えば、ゴムや合成樹脂のように、転動音を吸収可能な素材からなる。
【解決手段】少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、中央に中心に向かって傾斜するテーパ面を左右対称に有するV字溝を周設し、当該V字溝の前記テーパ面がレールの前記上半部と二点接触した状態でレール上を転動しながら進行する鼓状のホイールと、このホイールを回転可能に枢支するサイドプレートを備えたフレームと、前記ホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからなる。ホイールは、円錐面を有する一対の駒を前記円錐面を対向させた状態で一体的に連結するか、円筒部材の中央にV字溝を削り出してなる。さらに、ホイールは、例えば、ゴムや合成樹脂のように、転動音を吸収可能な素材からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷を吊り上げて、レールに沿って目的位置まで搬送するトロリーに係り、より詳しくは、レールとして丸パイプを使用する単軌懸垂型のトロリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トロリーは、例えば倉庫や製造工場など、クレーン車やリフトカーの使用が困難な特に屋内環境において、予め空中に設置したレールに沿って荷をホイスト等によって吊り上げた状態で移動させる目的で使用される。レールは、移動距離と荷の重量を考慮して、耐荷重性の高いI形鋼、H形鋼、C形鋼などの大型鋼材が使用され、トロリーも鋼材の形状等に応じたものがあった(例えば、非特許文献1)。また、建物の梁をそのままレールとして使用することもあった。
【0003】
他方、丸パイプをレールとして使用するトロリーも公知である(特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】「H.H.H.総合カタログVol.5」株式会社スリーエッチ、2005年7月30日、P15〜16
【特許文献1】特開平10−182064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のうち、大型鋼材をレールとして使用するトロリーは、数百〜数千キログラムといった荷を比較的長い距離移動させるのには適しているが、それ未満の比較的軽量の荷を短い距離だけ移動させるには、小回りが利かないという問題がある。また、レールとして大型鋼材を使用するため、レールの構築が大掛かりとなるばかりでなく、事後的にレイアウトを変更することはほぼ不可能である。そもそも大型鋼材自体が相当重量を有するため、これによってレールを構築する場合、建物も強度の高いものでなければならず、自ずとトロリーの適用範囲も大型の施設に限定される。
【0006】
これに対して、特許文献1のトロリーは、レールとして丸パイプを使用するものであるから、小回りが利き、またレイアウトの構築や変更を機動的に行え、さらに、大型鋼材と比べて入手が極めて容易且つ軽量であるから、大型の施設はもちろん、例えば要介護者支援のために介護施設や家屋などにも使用でき、適用範囲が広いという利点がある。
【0007】
しかしながら、丸パイプをレールとして使用する特許文献1のトロリーは、上下に平行する2本の丸パイプによってレールを構築し、上部パイプに乗る車輪と、下部パイプを挟み込む一対のガイドローラとでトロリーを構成しているため、構成が複雑であるばかりでなく、ガイドローラによってトロリーの揺動や回転が完全に拘束されているため、進行方向以外の力が加わっても、これに追従できず、レールやトロリーに無理がかかるという問題がある。しかも、ガイドローラによって下部パイプを挟み込む構造であるため、当該下部パイプの直径が変更されると、そのトロリーを使用できなくなるというように汎用性に欠ける。この点、ガイドローラの間隔を下部パイプの直径に応じて変更調整する構成を採用することも可能だが、その分、構成が複雑となって、取り扱いが面倒となるばかりでなく、製品コストも上昇する。
【0008】
なお、特許文献1のトロリーについて述べた問題点は、大型鋼材をレールとして使用する前者トロリーも共通して有するものである。I形鋼やH形鋼に適用するトロリーもまた、左右一対の車輪によってウェブを挟み込む構成であるし、C形鋼に適用するトロリーはチャンネル内に左右一対の車輪を収容する構成であって、何れの場合も、トロリーの揺動や回転が拘束されているからである。さらに、車輪の間隔調整についても、同じ問題点がある。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、レールの構築やレイアウト変更が容易で、しかも、入手が容易で、適用範囲が広い丸パイプをレールとして使用することを前提に、進行方向以外の力にも追従できるトロリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、第一の手段として、少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、中央に中心に向かって傾斜するテーパ面を左右対称に有するV字溝を周設し、当該V字溝の前記テーパ面がレールの前記上半部と二点接触した状態でレール上を転動しながら進行する鼓状のホイールと、このホイールを回転可能に枢支するサイドプレートを備えたフレームと、前記ホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからトロリーを構成するという手段を用いた。ホイールはトロリーをレールに沿って進行させる車輪として機能するが、このホイールはレールに二点支持されるものであるため、進行方向に対して斜め方向や横方向の力が作用したとしても、これに追従して姿勢を変更する。このため、ホイールの数は1つでよいが、進行方向に2以上を設けることも可能である。なお、本発明では、レールとして少なくとも上半部に円弧面を有する棒材を使用することを前提とするが、当該棒材は全周を円とした丸パイプの他、この丸パイプを半割状としたような半周のみを円弧としたものであってもよい。何れにしても、レールは使用目的に応じた耐荷重を有することはもちろんである。
【0011】
この第一手段において、V字溝は左右のテーパ面の間に水平面を形成することが好ましい。そして、ホイールの構成手段は、大きく分けて、円錐面を有する一対の駒を前記円錐面を対向させた状態で一体的に連結して構成する場合と、円筒部材の中央にV字溝を削り出して構成する場合とがある。即ち、前者は複数のパーツを組み合わせて構成するもので、この場合、無駄のない成形が可能である。さらに、この前者手段は、一対の駒を直接連結した構成と、一対の駒を中軸によって連結した構成の双方を含む。一方、後者は円筒部材を切削して構成するもので、この場合、削り出した部分が無駄になるものの、パーツの組立工程が不要となる。
【0012】
なお、本発明において、フレームはホイールと荷役部を一体化するもので、また荷役部はホイストやチェーンブロックなどの荷役装置を吊り下げるもので、こうした機能を有するものである限り、特に構成を限定するものではないが、第一手段におけるフレームは、サイドプレートの上端を水平材で連結して下部開口のコ字状に形成すると共に、一方のサイドプレートの下端に荷役部を設けることが好ましい。また、荷役部は、最も簡単にはフックで構成される他、棒材の中央を屈曲して掛止用凹部を形成してなり、その一端をフレームの一方のサイドプレートに着脱可能に取付けて前記掛止用凹部を開放可能とした構成を採用することが好ましい。また、これとは別に、中央を下方に湾曲したU字鋼の両端に軸孔を設けると共に、フレームのサイドプレートそれぞれの下端には前記軸孔と同軸に軸棒が挿通して前記U字鋼を軸支可能な連結環を設け、さらに、少なくとも一方の前記軸棒は前記軸孔および連結環に抜き差し可能な支軸の一端を屈曲可能としたに折りピンで構成することで、前記軸棒の先端が屈曲状態にあるときはその抜けが防止される一方、前記先端を軸に沿って水平状態とすることで、当該軸棒を軸孔および連結環に対して抜き差しすることができ、荷役部の脱着をより簡単に行うことができる。
【0013】
他方、本発明では、課題を解決する第二の手段として、左右一対のアームの下端同士を結合すると共に、上端を開離してなる二股状のフレームと、前記レールの上半部と点接触可能な円錐面を有し、該円錐面を内向きにして前記フレームのアーム上端それぞれに回転可能に枢支したホイールと、このホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからトロリーを構成する。この第二手段では、左右一体型のホイールを採用した上記第一の手段とは異なり、ホイールが左右分離して設けられる。つまり、左右ホイールの間に間隙があり、この間隙はトロリー進行時に障害物の通過を許容する。ただし、左右のホイールの円錐面が対向するから、二点接触によりレールに懸垂されることは第一手段と同じである。
【0014】
また、この第二手段において、フレームは、アームの下端同士を回動可能に結合して、アーム上端の開度を調整可能とすることが好ましく、前記開度調整機構の具体例としては、ネジ棒を両アームに貫通螺合させた構成がある。
【0015】
さらに、第一・第二の手段ともホイールは、転動音を吸収可能な素材から成形することが好ましく、そのため合成樹脂製であることがより好ましいものであるが、硬質ゴムであってもよい。合成樹脂や硬質ゴムでホイールを成型した場合、このように吸音作用による静音操作が可能となるばかりでなく、金属に比べて加工が簡単で、生産効率が高いという利点がある。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明ではレールの円弧状上半部に2点支持されるホイールを採用したから、進行方向の他、斜め方向や横方向の力が作用した場合でも追従して姿勢を変更することができるため、操作が楽で、しかも、レールやトロリーに無理な力がかからず、破損や故障等の問題も軽減される。また、ホイールを一対の駒を連結して構成することとしたので、駒を射出成形などの樹脂成形技術によって効率よく生産することができる。一方、円筒部材にV字溝を切削加工するものにあっては、パーツの組立工程が不要となって、より簡易にホイールを構成することができる。
【0017】
さらに、本発明ではホイールを左右分離して設ける別手段も採用するので、この別手段に係るトロリーを天井から吊下したレール構成に適用した場合、レールの吊下具が左右のホイール間の間隙を通過することになるため、前記吊下具による障害を回避して、より長距離を移動可能なトロリーとすることができる。また、この別手段では、アームの上端開度を調整可能としたので、レール径に応じて左右ホイールの間隙長を調整することができる。
【0018】
さらに、ホイールをゴムや合成樹脂を素材として成型することとしたので、従来の樹脂成形技術に従って、安価にホイールの生産性を高めることができるばかりでなく、吸音作用によって静音操作が可能となって、使用環境や周辺環境に騒音被害が起こることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1、2は、本発明の一実施形態に係るトロリーを示したものである。本トロリーは、ホイール1の回転軸2の両端ボルト頭をワッシャ3を介してナット4によりサイドプレート5・6に固定し、ホイール1の下方に位置してU字状の荷役部7を取付けてなる。サイドプレート5・6は2枚の金属板からなり、本実施形態ではこの2枚のサイドプレート5・6によってフレームを構成しているが、その上縁を水平板で連結したC字状のフレームを構成することも可能である。
【0020】
ホイール1は、中央にV字溝1aを周設した鼓状の外観を呈している。V字溝1aは、中心に向かって傾斜するテーパ面1b・1cを左右対称に有する。また、この実施形態の場合、V字溝1aは、テーパ面1b・1cの間に水平面1dを形成している。また、ホイール1には、ベアリング8を介して回転軸2が挿通されており、当該構成によってホイール1を回転軸2上で円滑に回動させることができる。
【0021】
一方、荷役部7は、この実施形態の場合、1本の金属棒の中央をU字状に屈曲して掛止用凹部7aを形成すると共に、両端には抜け止め用のフランジ7bを形成している。ここで、サイドプレート5と6では、荷役部7の両端の取付構成が異なる。即ち、一方のサイドプレート5には円形孔5aを貫設するのに対して、他方のサイドプレート6には側面視でL字型のガイド溝6aを形成している(図2参照)。従って、荷役部7は、その一端が円形孔5aから抜け出さないように取付けられるに対して、他端がガイド溝6aに沿って適宜着脱可能に取付けられるため、図1において一点鎖線で示したように、他端をサイドプレート6から外した状態とすることで、荷役部7の掛止用凹部7aを開放して、当該凹部7aに環状の吊り下げ具を掛止することができる。なお、当該荷役部7に掛止する吊り下げ具は、ホイストやチェーンブロックなどが挙げられるが、特に限定するものではない。また、吊り上げ移動する荷も、耐荷重の範囲にあるものであれば、特に限定されない。
【0022】
上記構成のトロリーによれば、丸パイプP上にホイール1を載置することによって、荷を吊り上げた状態で、丸パイプPをレールとして、その長尺方向に荷を進行させることができる。このとき、ホイール1は丸パイプPの上半部に二点接触の状態で載置されることになる。従って、接触面が少なく摩擦抵抗も小さくなるため、軽い力でトロリーを進行操作することができる。
【0023】
また、トロリーに斜め方向や横方向が作用した場合でも、図3に示すように、丸パイプPを回転軸として回転姿勢をとることが可能であるため、荷役作業の自由度が高まると共に、進行方向以外の力が作用した場合でもトロリーやレールに無理な力が加わらない。
【0024】
さらに、トロリーに捻りの力が作用した場合でも、図4に示すように、二点接触の状態でホイール1が支持されるように、本トロリーによれば、三次元のどの方向に対しても力の方向に追従する。
【0025】
さらにまた、図5に示すように、径が異なる丸パイプPに適用できるから、汎用性が高い。
【0026】
なお、ホイール1は、図6に示したように、円錐台状の一対の駒9・9を円錐面が対向するように、連結棒10によって連結して構成する他、図7に示したように、円筒部材11を回転させながら、フライス刃12によってV字溝を刻設して構成することができる。なお、V字溝について、テーパ面の間に水平面を構成することは任意である。
【0027】
図8は、荷役部の別の構成例を示したものであり、サイドプレート5・6の下端にU字鋼70を軸棒80・81によって軸支した構成である。即ち、U字鋼70は金属棒の中央を下方に湾曲してU字に成型されるもので、その両端には軸棒80・81が挿通可能な軸孔71を形成している。また、サイドプレート5・6はその下端を輪状に曲げ加工し、前記軸孔と同軸に軸棒80・81を挿通することでU字鋼70を軸支可能な連結環51・61を構成している。さらに、この別構成例では、図9に示したように、一方の軸棒80を折りピンによって構成している。つまり、この折りピン(軸棒80)は、支軸80aの一端に抜け止め軸80bを直角に折曲可能に設けてなる。なお、支軸80aの他端には抜け止め板80cが固設されている。従って、U字鋼70を軸支した状態では、支軸80aと直角をなす抜け止め軸80bによって当該軸棒80が脱落することなく軸支状態を維持する一方、抜け止め軸80bを支軸80aと水平にすることで軸棒80を軸孔71および連結環61に対して抜き差することができる。そして、この軸棒80を引き抜いた状態ではU字鋼70が片持ちで回動可能となるため、サイドプレート5・6間を開放することができる。なお、他方の軸棒81をも折りピンによって構成することも可能である。
【0028】
ところで、本発明のトロリーに適用するレールの敷設構成として、レールを支柱で下から支持する立設敷設型と、レールをブラケット等の吊下具で天井から吊り下げる吊下敷設型とが考えられる。このうち立設敷設型のレール構成に対して、上記実施形態のトロリーを適用した場合、支柱が障害となるから、支柱と支柱の間しかトロリーを移動させることができない。
【0029】
そこで図10は、支柱による障害を回避可能とした第二の実施形態を示したもので、立設敷設型のレール構成であっても、その敷設全長でトロリーを移動可能としたものである。即ち、この第二実施形態に係るトロリーは、上記第一実施形態で採用したホイール1と、このホイール1を回転可能に枢支する左右のサイドプレート20・21と、これらサイドプレート20・21の上端同士を連結する水平材22と、一方のサイドプレート20の下端に設けた荷役部23とからなり、特に、フレームを水平材22による上端連結によって下部を開口したコ字状に形成したことを特徴とするものである。従って、フレームの下部開口が立設敷設型における支柱の通過空間として機能するため、支柱が障害にならず、レールの全長にわたってトロリーを自由に移動させることができる。ただし、荷役部23は一方のサイドプレート20に設けられるため、重心位置がサイドプレート20側にずれるが、これはサイドプレート20の下半部を重心位置まで内側に折曲し、その延長線上に荷役部23を設けたり、または/および、他方のサイドプレート21に荷役部23の重量に相当する荷重を持たせることで、解消することができる。
【0030】
ここで、荷役時におけるレールのたわみや折損など、耐荷重を考慮すれば、短いスパンでレールを支えることが好ましい。しかし、立設敷設型のレール構成の場合、短いスパンで支柱を立設すれば、その立設数だけ地上側の作業スペースが犠牲となる。これに対して、吊下敷設型のレール構成の場合は、吊下具の取付けスパンをいくら短くしても、地上側の作業スペースは何ら犠牲とならないというメリットがある。
【0031】
そこで、図11は、このような吊下敷設型のレール構成に適用する第三の実施形態を示したものである。この第三実施形態に係るトロリーにおいて、フレーム30は左右一対のアーム31・32の下端同士を回転可能に連結して、アーム上端の開度を調整可能としたものであり、このフレーム30のアーム上端それぞれに円錐台状のホイール40・41を回転可能に設けたものである。より具体的には、ホイール40・41は円錐面がレールと点接触するように、それぞれ円錐面を内向きにし、且つ、間隙42をもって左右のホイール同士40・41を開離させてアーム上端に枢支している。換言すれば、上記第一・第二の実施形態は円錐台状の駒一対を中間軸(図1の水平面1d)によって連結した一体型ホイールを採用するのに対し、この第三実施形態では当該一体型ホイールから前記中間軸を省略した分離型ホイールである。また、この実施形態では、左右のアーム31・32間にネジ棒50を貫通螺合しており、このネジ棒50を回転することで、アーム31・32の距離が伸縮して、結果、アーム上端の開度を調整可能としている。そして、アーム上端の開度を調整することによって、ホイール40・41間の間隙42も調整することができる。なお、この実施形態では、凹状に形成されるアームの下端結合部を荷役部として、当該結合部に荷物吊下用のフック等を係止することを予定しているが、フレーム30にアーム31・31とは別部材の荷役部を設けることも可能である。
【0032】
上記構成からなる第三実施形態のトロリーによれば、左右ホイール40・41による二点接触によって、転動走行、ならびに、図3〜5で説明したと同じ機能が得られる上、さらに吊下敷設型のレール構成に適用した場合、ホイール40・41間の間隙42を利用して吊下具を通過させることができるため、吊下具を障害とせず、レールの敷設全長にわたってトロリーを移動させることができる。ただし、この第三実施形態のトロリーを立設敷設型のレール構成に使用することも可能であっても、この場合、第一実施形態と同じように、支柱間でトロリーを移動させることができる。
【0033】
また、荷役状態ではフレーム30にホイール40・41をさらに開離させる力が加わるが、アーム31・32に両端を螺合させた状態でネジ棒50を貫通しているため、ホイール40・41の間隙42は一定に保持され、レールからトロリーが脱落することがない。一方、ネジ棒50を回せば、上述のように、アーム上端の開度調整と共に、ホイール40・41の間隙42の距離調整も可能であるから、レールが閉鎖ループ状に構成されるなど、レールの端部からトロリーを懸垂できないような場合は、ネジ棒50の回転操作によって間隙42を広げてレールを挿入し、その後、逆方向にネジ棒50を回して、トロリーが脱落しないようにレールを挟み込む状態に戻すことができる。
【0034】
なお、ネジ棒50の回転操作にあっては、その端部に回転ハンドルを設けることも考えられるが、そうすると回転ハンドルの重さによって重心が変位し、トロリーを水平に保てないため、回転ハンドルはネジ棒50に対して着脱式とするか、適宜、別の工具によって、ネジ棒50を回転するように構成することが好ましい。また、第三実施形態のトロリーについて使用荷重を例えば0.5〜1.0トンと大きく見込む場合は、ホイール40・41を合成樹脂よりも高強度な鉄によって成型することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るトロリーの正面図
【図2】同トロリーの側面図
【図3】同トロリーの使用状態を示した正面図(回転状態)
【図4】同トロリーの使用状態を示した正面図(捻り状態)
【図5】同トロリーで適用可能なレール状態を示した正面図
【図6】ホイールの構成例を示した説明図
【図7】ホイールの別の構成例を示した説明図
【図8】荷役部の別の構成例を示した要部断面の正面図
【図9】同、側面図
【図10】本発明の第二実施形態に係るトロリーの正面図
【図11】本発明の第三実施形態に係るトロリーの正面図
【符号の説明】
【0036】
1 ホイール
2 回転軸
3 ワッシャ
4 ナット
5・6 サイドプレート(フレーム)
7 荷役部
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷を吊り上げて、レールに沿って目的位置まで搬送するトロリーに係り、より詳しくは、レールとして丸パイプを使用する単軌懸垂型のトロリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トロリーは、例えば倉庫や製造工場など、クレーン車やリフトカーの使用が困難な特に屋内環境において、予め空中に設置したレールに沿って荷をホイスト等によって吊り上げた状態で移動させる目的で使用される。レールは、移動距離と荷の重量を考慮して、耐荷重性の高いI形鋼、H形鋼、C形鋼などの大型鋼材が使用され、トロリーも鋼材の形状等に応じたものがあった(例えば、非特許文献1)。また、建物の梁をそのままレールとして使用することもあった。
【0003】
他方、丸パイプをレールとして使用するトロリーも公知である(特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】「H.H.H.総合カタログVol.5」株式会社スリーエッチ、2005年7月30日、P15〜16
【特許文献1】特開平10−182064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のうち、大型鋼材をレールとして使用するトロリーは、数百〜数千キログラムといった荷を比較的長い距離移動させるのには適しているが、それ未満の比較的軽量の荷を短い距離だけ移動させるには、小回りが利かないという問題がある。また、レールとして大型鋼材を使用するため、レールの構築が大掛かりとなるばかりでなく、事後的にレイアウトを変更することはほぼ不可能である。そもそも大型鋼材自体が相当重量を有するため、これによってレールを構築する場合、建物も強度の高いものでなければならず、自ずとトロリーの適用範囲も大型の施設に限定される。
【0006】
これに対して、特許文献1のトロリーは、レールとして丸パイプを使用するものであるから、小回りが利き、またレイアウトの構築や変更を機動的に行え、さらに、大型鋼材と比べて入手が極めて容易且つ軽量であるから、大型の施設はもちろん、例えば要介護者支援のために介護施設や家屋などにも使用でき、適用範囲が広いという利点がある。
【0007】
しかしながら、丸パイプをレールとして使用する特許文献1のトロリーは、上下に平行する2本の丸パイプによってレールを構築し、上部パイプに乗る車輪と、下部パイプを挟み込む一対のガイドローラとでトロリーを構成しているため、構成が複雑であるばかりでなく、ガイドローラによってトロリーの揺動や回転が完全に拘束されているため、進行方向以外の力が加わっても、これに追従できず、レールやトロリーに無理がかかるという問題がある。しかも、ガイドローラによって下部パイプを挟み込む構造であるため、当該下部パイプの直径が変更されると、そのトロリーを使用できなくなるというように汎用性に欠ける。この点、ガイドローラの間隔を下部パイプの直径に応じて変更調整する構成を採用することも可能だが、その分、構成が複雑となって、取り扱いが面倒となるばかりでなく、製品コストも上昇する。
【0008】
なお、特許文献1のトロリーについて述べた問題点は、大型鋼材をレールとして使用する前者トロリーも共通して有するものである。I形鋼やH形鋼に適用するトロリーもまた、左右一対の車輪によってウェブを挟み込む構成であるし、C形鋼に適用するトロリーはチャンネル内に左右一対の車輪を収容する構成であって、何れの場合も、トロリーの揺動や回転が拘束されているからである。さらに、車輪の間隔調整についても、同じ問題点がある。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、レールの構築やレイアウト変更が容易で、しかも、入手が容易で、適用範囲が広い丸パイプをレールとして使用することを前提に、進行方向以外の力にも追従できるトロリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、第一の手段として、少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、中央に中心に向かって傾斜するテーパ面を左右対称に有するV字溝を周設し、当該V字溝の前記テーパ面がレールの前記上半部と二点接触した状態でレール上を転動しながら進行する鼓状のホイールと、このホイールを回転可能に枢支するサイドプレートを備えたフレームと、前記ホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからトロリーを構成するという手段を用いた。ホイールはトロリーをレールに沿って進行させる車輪として機能するが、このホイールはレールに二点支持されるものであるため、進行方向に対して斜め方向や横方向の力が作用したとしても、これに追従して姿勢を変更する。このため、ホイールの数は1つでよいが、進行方向に2以上を設けることも可能である。なお、本発明では、レールとして少なくとも上半部に円弧面を有する棒材を使用することを前提とするが、当該棒材は全周を円とした丸パイプの他、この丸パイプを半割状としたような半周のみを円弧としたものであってもよい。何れにしても、レールは使用目的に応じた耐荷重を有することはもちろんである。
【0011】
この第一手段において、V字溝は左右のテーパ面の間に水平面を形成することが好ましい。そして、ホイールの構成手段は、大きく分けて、円錐面を有する一対の駒を前記円錐面を対向させた状態で一体的に連結して構成する場合と、円筒部材の中央にV字溝を削り出して構成する場合とがある。即ち、前者は複数のパーツを組み合わせて構成するもので、この場合、無駄のない成形が可能である。さらに、この前者手段は、一対の駒を直接連結した構成と、一対の駒を中軸によって連結した構成の双方を含む。一方、後者は円筒部材を切削して構成するもので、この場合、削り出した部分が無駄になるものの、パーツの組立工程が不要となる。
【0012】
なお、本発明において、フレームはホイールと荷役部を一体化するもので、また荷役部はホイストやチェーンブロックなどの荷役装置を吊り下げるもので、こうした機能を有するものである限り、特に構成を限定するものではないが、第一手段におけるフレームは、サイドプレートの上端を水平材で連結して下部開口のコ字状に形成すると共に、一方のサイドプレートの下端に荷役部を設けることが好ましい。また、荷役部は、最も簡単にはフックで構成される他、棒材の中央を屈曲して掛止用凹部を形成してなり、その一端をフレームの一方のサイドプレートに着脱可能に取付けて前記掛止用凹部を開放可能とした構成を採用することが好ましい。また、これとは別に、中央を下方に湾曲したU字鋼の両端に軸孔を設けると共に、フレームのサイドプレートそれぞれの下端には前記軸孔と同軸に軸棒が挿通して前記U字鋼を軸支可能な連結環を設け、さらに、少なくとも一方の前記軸棒は前記軸孔および連結環に抜き差し可能な支軸の一端を屈曲可能としたに折りピンで構成することで、前記軸棒の先端が屈曲状態にあるときはその抜けが防止される一方、前記先端を軸に沿って水平状態とすることで、当該軸棒を軸孔および連結環に対して抜き差しすることができ、荷役部の脱着をより簡単に行うことができる。
【0013】
他方、本発明では、課題を解決する第二の手段として、左右一対のアームの下端同士を結合すると共に、上端を開離してなる二股状のフレームと、前記レールの上半部と点接触可能な円錐面を有し、該円錐面を内向きにして前記フレームのアーム上端それぞれに回転可能に枢支したホイールと、このホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからトロリーを構成する。この第二手段では、左右一体型のホイールを採用した上記第一の手段とは異なり、ホイールが左右分離して設けられる。つまり、左右ホイールの間に間隙があり、この間隙はトロリー進行時に障害物の通過を許容する。ただし、左右のホイールの円錐面が対向するから、二点接触によりレールに懸垂されることは第一手段と同じである。
【0014】
また、この第二手段において、フレームは、アームの下端同士を回動可能に結合して、アーム上端の開度を調整可能とすることが好ましく、前記開度調整機構の具体例としては、ネジ棒を両アームに貫通螺合させた構成がある。
【0015】
さらに、第一・第二の手段ともホイールは、転動音を吸収可能な素材から成形することが好ましく、そのため合成樹脂製であることがより好ましいものであるが、硬質ゴムであってもよい。合成樹脂や硬質ゴムでホイールを成型した場合、このように吸音作用による静音操作が可能となるばかりでなく、金属に比べて加工が簡単で、生産効率が高いという利点がある。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明ではレールの円弧状上半部に2点支持されるホイールを採用したから、進行方向の他、斜め方向や横方向の力が作用した場合でも追従して姿勢を変更することができるため、操作が楽で、しかも、レールやトロリーに無理な力がかからず、破損や故障等の問題も軽減される。また、ホイールを一対の駒を連結して構成することとしたので、駒を射出成形などの樹脂成形技術によって効率よく生産することができる。一方、円筒部材にV字溝を切削加工するものにあっては、パーツの組立工程が不要となって、より簡易にホイールを構成することができる。
【0017】
さらに、本発明ではホイールを左右分離して設ける別手段も採用するので、この別手段に係るトロリーを天井から吊下したレール構成に適用した場合、レールの吊下具が左右のホイール間の間隙を通過することになるため、前記吊下具による障害を回避して、より長距離を移動可能なトロリーとすることができる。また、この別手段では、アームの上端開度を調整可能としたので、レール径に応じて左右ホイールの間隙長を調整することができる。
【0018】
さらに、ホイールをゴムや合成樹脂を素材として成型することとしたので、従来の樹脂成形技術に従って、安価にホイールの生産性を高めることができるばかりでなく、吸音作用によって静音操作が可能となって、使用環境や周辺環境に騒音被害が起こることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1、2は、本発明の一実施形態に係るトロリーを示したものである。本トロリーは、ホイール1の回転軸2の両端ボルト頭をワッシャ3を介してナット4によりサイドプレート5・6に固定し、ホイール1の下方に位置してU字状の荷役部7を取付けてなる。サイドプレート5・6は2枚の金属板からなり、本実施形態ではこの2枚のサイドプレート5・6によってフレームを構成しているが、その上縁を水平板で連結したC字状のフレームを構成することも可能である。
【0020】
ホイール1は、中央にV字溝1aを周設した鼓状の外観を呈している。V字溝1aは、中心に向かって傾斜するテーパ面1b・1cを左右対称に有する。また、この実施形態の場合、V字溝1aは、テーパ面1b・1cの間に水平面1dを形成している。また、ホイール1には、ベアリング8を介して回転軸2が挿通されており、当該構成によってホイール1を回転軸2上で円滑に回動させることができる。
【0021】
一方、荷役部7は、この実施形態の場合、1本の金属棒の中央をU字状に屈曲して掛止用凹部7aを形成すると共に、両端には抜け止め用のフランジ7bを形成している。ここで、サイドプレート5と6では、荷役部7の両端の取付構成が異なる。即ち、一方のサイドプレート5には円形孔5aを貫設するのに対して、他方のサイドプレート6には側面視でL字型のガイド溝6aを形成している(図2参照)。従って、荷役部7は、その一端が円形孔5aから抜け出さないように取付けられるに対して、他端がガイド溝6aに沿って適宜着脱可能に取付けられるため、図1において一点鎖線で示したように、他端をサイドプレート6から外した状態とすることで、荷役部7の掛止用凹部7aを開放して、当該凹部7aに環状の吊り下げ具を掛止することができる。なお、当該荷役部7に掛止する吊り下げ具は、ホイストやチェーンブロックなどが挙げられるが、特に限定するものではない。また、吊り上げ移動する荷も、耐荷重の範囲にあるものであれば、特に限定されない。
【0022】
上記構成のトロリーによれば、丸パイプP上にホイール1を載置することによって、荷を吊り上げた状態で、丸パイプPをレールとして、その長尺方向に荷を進行させることができる。このとき、ホイール1は丸パイプPの上半部に二点接触の状態で載置されることになる。従って、接触面が少なく摩擦抵抗も小さくなるため、軽い力でトロリーを進行操作することができる。
【0023】
また、トロリーに斜め方向や横方向が作用した場合でも、図3に示すように、丸パイプPを回転軸として回転姿勢をとることが可能であるため、荷役作業の自由度が高まると共に、進行方向以外の力が作用した場合でもトロリーやレールに無理な力が加わらない。
【0024】
さらに、トロリーに捻りの力が作用した場合でも、図4に示すように、二点接触の状態でホイール1が支持されるように、本トロリーによれば、三次元のどの方向に対しても力の方向に追従する。
【0025】
さらにまた、図5に示すように、径が異なる丸パイプPに適用できるから、汎用性が高い。
【0026】
なお、ホイール1は、図6に示したように、円錐台状の一対の駒9・9を円錐面が対向するように、連結棒10によって連結して構成する他、図7に示したように、円筒部材11を回転させながら、フライス刃12によってV字溝を刻設して構成することができる。なお、V字溝について、テーパ面の間に水平面を構成することは任意である。
【0027】
図8は、荷役部の別の構成例を示したものであり、サイドプレート5・6の下端にU字鋼70を軸棒80・81によって軸支した構成である。即ち、U字鋼70は金属棒の中央を下方に湾曲してU字に成型されるもので、その両端には軸棒80・81が挿通可能な軸孔71を形成している。また、サイドプレート5・6はその下端を輪状に曲げ加工し、前記軸孔と同軸に軸棒80・81を挿通することでU字鋼70を軸支可能な連結環51・61を構成している。さらに、この別構成例では、図9に示したように、一方の軸棒80を折りピンによって構成している。つまり、この折りピン(軸棒80)は、支軸80aの一端に抜け止め軸80bを直角に折曲可能に設けてなる。なお、支軸80aの他端には抜け止め板80cが固設されている。従って、U字鋼70を軸支した状態では、支軸80aと直角をなす抜け止め軸80bによって当該軸棒80が脱落することなく軸支状態を維持する一方、抜け止め軸80bを支軸80aと水平にすることで軸棒80を軸孔71および連結環61に対して抜き差することができる。そして、この軸棒80を引き抜いた状態ではU字鋼70が片持ちで回動可能となるため、サイドプレート5・6間を開放することができる。なお、他方の軸棒81をも折りピンによって構成することも可能である。
【0028】
ところで、本発明のトロリーに適用するレールの敷設構成として、レールを支柱で下から支持する立設敷設型と、レールをブラケット等の吊下具で天井から吊り下げる吊下敷設型とが考えられる。このうち立設敷設型のレール構成に対して、上記実施形態のトロリーを適用した場合、支柱が障害となるから、支柱と支柱の間しかトロリーを移動させることができない。
【0029】
そこで図10は、支柱による障害を回避可能とした第二の実施形態を示したもので、立設敷設型のレール構成であっても、その敷設全長でトロリーを移動可能としたものである。即ち、この第二実施形態に係るトロリーは、上記第一実施形態で採用したホイール1と、このホイール1を回転可能に枢支する左右のサイドプレート20・21と、これらサイドプレート20・21の上端同士を連結する水平材22と、一方のサイドプレート20の下端に設けた荷役部23とからなり、特に、フレームを水平材22による上端連結によって下部を開口したコ字状に形成したことを特徴とするものである。従って、フレームの下部開口が立設敷設型における支柱の通過空間として機能するため、支柱が障害にならず、レールの全長にわたってトロリーを自由に移動させることができる。ただし、荷役部23は一方のサイドプレート20に設けられるため、重心位置がサイドプレート20側にずれるが、これはサイドプレート20の下半部を重心位置まで内側に折曲し、その延長線上に荷役部23を設けたり、または/および、他方のサイドプレート21に荷役部23の重量に相当する荷重を持たせることで、解消することができる。
【0030】
ここで、荷役時におけるレールのたわみや折損など、耐荷重を考慮すれば、短いスパンでレールを支えることが好ましい。しかし、立設敷設型のレール構成の場合、短いスパンで支柱を立設すれば、その立設数だけ地上側の作業スペースが犠牲となる。これに対して、吊下敷設型のレール構成の場合は、吊下具の取付けスパンをいくら短くしても、地上側の作業スペースは何ら犠牲とならないというメリットがある。
【0031】
そこで、図11は、このような吊下敷設型のレール構成に適用する第三の実施形態を示したものである。この第三実施形態に係るトロリーにおいて、フレーム30は左右一対のアーム31・32の下端同士を回転可能に連結して、アーム上端の開度を調整可能としたものであり、このフレーム30のアーム上端それぞれに円錐台状のホイール40・41を回転可能に設けたものである。より具体的には、ホイール40・41は円錐面がレールと点接触するように、それぞれ円錐面を内向きにし、且つ、間隙42をもって左右のホイール同士40・41を開離させてアーム上端に枢支している。換言すれば、上記第一・第二の実施形態は円錐台状の駒一対を中間軸(図1の水平面1d)によって連結した一体型ホイールを採用するのに対し、この第三実施形態では当該一体型ホイールから前記中間軸を省略した分離型ホイールである。また、この実施形態では、左右のアーム31・32間にネジ棒50を貫通螺合しており、このネジ棒50を回転することで、アーム31・32の距離が伸縮して、結果、アーム上端の開度を調整可能としている。そして、アーム上端の開度を調整することによって、ホイール40・41間の間隙42も調整することができる。なお、この実施形態では、凹状に形成されるアームの下端結合部を荷役部として、当該結合部に荷物吊下用のフック等を係止することを予定しているが、フレーム30にアーム31・31とは別部材の荷役部を設けることも可能である。
【0032】
上記構成からなる第三実施形態のトロリーによれば、左右ホイール40・41による二点接触によって、転動走行、ならびに、図3〜5で説明したと同じ機能が得られる上、さらに吊下敷設型のレール構成に適用した場合、ホイール40・41間の間隙42を利用して吊下具を通過させることができるため、吊下具を障害とせず、レールの敷設全長にわたってトロリーを移動させることができる。ただし、この第三実施形態のトロリーを立設敷設型のレール構成に使用することも可能であっても、この場合、第一実施形態と同じように、支柱間でトロリーを移動させることができる。
【0033】
また、荷役状態ではフレーム30にホイール40・41をさらに開離させる力が加わるが、アーム31・32に両端を螺合させた状態でネジ棒50を貫通しているため、ホイール40・41の間隙42は一定に保持され、レールからトロリーが脱落することがない。一方、ネジ棒50を回せば、上述のように、アーム上端の開度調整と共に、ホイール40・41の間隙42の距離調整も可能であるから、レールが閉鎖ループ状に構成されるなど、レールの端部からトロリーを懸垂できないような場合は、ネジ棒50の回転操作によって間隙42を広げてレールを挿入し、その後、逆方向にネジ棒50を回して、トロリーが脱落しないようにレールを挟み込む状態に戻すことができる。
【0034】
なお、ネジ棒50の回転操作にあっては、その端部に回転ハンドルを設けることも考えられるが、そうすると回転ハンドルの重さによって重心が変位し、トロリーを水平に保てないため、回転ハンドルはネジ棒50に対して着脱式とするか、適宜、別の工具によって、ネジ棒50を回転するように構成することが好ましい。また、第三実施形態のトロリーについて使用荷重を例えば0.5〜1.0トンと大きく見込む場合は、ホイール40・41を合成樹脂よりも高強度な鉄によって成型することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るトロリーの正面図
【図2】同トロリーの側面図
【図3】同トロリーの使用状態を示した正面図(回転状態)
【図4】同トロリーの使用状態を示した正面図(捻り状態)
【図5】同トロリーで適用可能なレール状態を示した正面図
【図6】ホイールの構成例を示した説明図
【図7】ホイールの別の構成例を示した説明図
【図8】荷役部の別の構成例を示した要部断面の正面図
【図9】同、側面図
【図10】本発明の第二実施形態に係るトロリーの正面図
【図11】本発明の第三実施形態に係るトロリーの正面図
【符号の説明】
【0036】
1 ホイール
2 回転軸
3 ワッシャ
4 ナット
5・6 サイドプレート(フレーム)
7 荷役部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、中央に前記レールの上半部と二点接触可能なV字溝を周設してなり、レール上を転動しながら進行する鼓状のホイールと、このホイールを回転可能に枢支するサイドプレートを備えたフレームと、前記ホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからなることを特徴としたトロリー。
【請求項2】
V字溝は、左右のテーパ面の間に水平面を形成してなる請求項1記載のトロリー。
【請求項3】
ホイールは、円錐面を有する一対の駒を前記円錐面を対向させた状態で一体的に連結してなる請求項1または2記載のトロリー。
【請求項4】
フレームは、サイドプレートの上端を水平材で連結して下部開口のコ字状に形成すると共に、一方のサイドプレートの下端に荷役部を設けた請求項1、2または3記載のトロリー。
【請求項5】
荷役部は、棒材の中央を屈曲して掛止用凹部を形成してなり、その一端をフレームの一方のサイドプレートに着脱可能に取付けて前記掛止用凹部を開放可能とした請求項1、2または3記載のトロリー。
【請求項6】
荷役部は、U字鋼の両端に軸孔を設けると共に、フレームのサイドプレートそれぞれの下端には前記軸孔と同軸に軸棒が挿通して前記U字鋼を軸支可能な連結環を設け、さらに、少なくとも一方の前記軸棒は前記軸孔および連結環に抜き差し可能な支軸の一端を屈曲可能としたに折りピンで構成してなる請求項1、2または3記載のトロリー。
【請求項7】
少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、左右一対のアームの下端同士を結合すると共に、上端を開離してなる二股状のフレームと、前記レールの上半部と点接触可能な円錐面を有し、該円錐面を内向きにして前記フレームのアーム上端それぞれに回転可能に枢支したホイールと、このホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからなることを特徴としたトロリー。
【請求項8】
フレームは、アームの下端同士を回動可能に結合して、アーム上端の開度を調整可能とした請求項7記載のトロリー。
【請求項9】
フレームは、両アームを貫通して螺合するネジ棒を備えた請求項8記載のトロリー。
【請求項10】
ホイールは、合成樹脂または硬質ゴムからなる請求項1から9のうち何れか一項記載のトロリー。
【請求項1】
少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、中央に前記レールの上半部と二点接触可能なV字溝を周設してなり、レール上を転動しながら進行する鼓状のホイールと、このホイールを回転可能に枢支するサイドプレートを備えたフレームと、前記ホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからなることを特徴としたトロリー。
【請求項2】
V字溝は、左右のテーパ面の間に水平面を形成してなる請求項1記載のトロリー。
【請求項3】
ホイールは、円錐面を有する一対の駒を前記円錐面を対向させた状態で一体的に連結してなる請求項1または2記載のトロリー。
【請求項4】
フレームは、サイドプレートの上端を水平材で連結して下部開口のコ字状に形成すると共に、一方のサイドプレートの下端に荷役部を設けた請求項1、2または3記載のトロリー。
【請求項5】
荷役部は、棒材の中央を屈曲して掛止用凹部を形成してなり、その一端をフレームの一方のサイドプレートに着脱可能に取付けて前記掛止用凹部を開放可能とした請求項1、2または3記載のトロリー。
【請求項6】
荷役部は、U字鋼の両端に軸孔を設けると共に、フレームのサイドプレートそれぞれの下端には前記軸孔と同軸に軸棒が挿通して前記U字鋼を軸支可能な連結環を設け、さらに、少なくとも一方の前記軸棒は前記軸孔および連結環に抜き差し可能な支軸の一端を屈曲可能としたに折りピンで構成してなる請求項1、2または3記載のトロリー。
【請求項7】
少なくとも上半部を円弧状に形成した1本のレールに適用する単軌懸垂型のトロリーであって、左右一対のアームの下端同士を結合すると共に、上端を開離してなる二股状のフレームと、前記レールの上半部と点接触可能な円錐面を有し、該円錐面を内向きにして前記フレームのアーム上端それぞれに回転可能に枢支したホイールと、このホイールの下方に位置して前記フレームに設けた荷役部とからなることを特徴としたトロリー。
【請求項8】
フレームは、アームの下端同士を回動可能に結合して、アーム上端の開度を調整可能とした請求項7記載のトロリー。
【請求項9】
フレームは、両アームを貫通して螺合するネジ棒を備えた請求項8記載のトロリー。
【請求項10】
ホイールは、合成樹脂または硬質ゴムからなる請求項1から9のうち何れか一項記載のトロリー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−50165(P2008−50165A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166077(P2007−166077)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(592193269)株式会社スリーエッチ (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(592193269)株式会社スリーエッチ (7)
【Fターム(参考)】
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