説明

トンネル用セグメントの連結装置

【課題】構造の簡略化を図ることができ、しかも、第1セグメント本体と第2セグメント本体とを適切に連結できるようにする。
【解決手段】オス部材3のメス部材4への挿入途中でそのオス部材の挿入方向先端部が接当する接当部16をメス部材に設けて、その先端部が接当部に接当している状態でのオス部材の挿入に伴う当該オス部材の座屈変形で、メス部材への挿入部分5を拡径させる拡径機構Aを設け、オス部材の拡径部位14に対向するメス部材の内周面12が凹凸面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1セグメント本体にオス部材を設け、第2セグメント本体に前記オス部材を挿入可能なメス部材を設けて、前記オス部材を前記メス部材に挿入することにより、前記第1セグメント本体と前記第2セグメント本体とが互いに連結自在に構成され、前記オス部材を前記メス部材に挿入するに伴って、そのオス部材の挿入部分を拡径させる拡径機構が設けられ、前記メス部材に、前記オス部材の拡径部位に接当してその抜け出しを阻止する抜止面が設けられているトンネル用セグメントの連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記トンネル用セグメントの連結装置(以下、単に連結装置という)は、トンネル内面に設置済みのセグメント本体に対して、別のセグメント本体を新たに連結していく場合に、隣合うセグメント本体どうしを連結する際に用いられる。
従来の連結装置では、その拡径機構が、オス部材をその挿入方向先端部に開口する開口部を備えた略筒状に形成するとともに、オス部材の内径よりも大径の拡張子をメス部材の内側に設けて構成され、オス部材をメス部材に挿入するに伴って、そのオス部材の挿入部分の内側に拡張子を楔状に押し込んで、その挿入部分を拡径させながら、その拡径部位をメス部材の抜止面と拡張子との間に嵌まり込ませている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−247796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この為、メス部材の内側に拡張子を設ける必要があるだけでなく、メス部材の抜止面と拡張子との間隔を精度良く設定しなければ、第1セグメント本体と第2セグメント本体とを適切に連結できない欠点がある。
つまり、抜止面と拡張子との間隔が狭い場合には、オス部材の拡径部位がこれら抜止面と拡張子との間に嵌まり込まないおそれがあり、抜止面と拡張子との間隔が広過ぎる場合には、オス部材の拡径部位が抜止面と拡張子との間に緩く嵌まり込んで、その連結が緩み易いからである。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、オス部材の挿入部分を拡径する拡径機構を工夫することにより、構造の簡略化を図ることができ、しかも、第1セグメント本体と第2セグメント本体とを適切に連結できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、第1セグメント本体にオス部材を設け、第2セグメント本体に前記オス部材を挿入可能なメス部材を設けて、前記オス部材を前記メス部材に挿入することにより、前記第1セグメント本体と前記第2セグメント本体とが互いに連結自在に構成され、前記オス部材を前記メス部材に挿入するに伴って、そのオス部材の挿入部分を拡径させる拡径機構が設けられ、前記メス部材に、前記オス部材の拡径部位に接当してその抜け出しを阻止する抜止面が設けられているトンネル用セグメントの連結装置であって、前記拡径機構が、前記オス部材の前記メス部材への挿入途中でそのオス部材の挿入方向先端部が接当する接当部を前記メス部材に設けて、前記先端部が前記接当部に接当している状態での前記オス部材の挿入に伴う当該オス部材の座屈変形で、前記挿入部分を拡径させるように構成されている点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
つまり、オス部材をメス部材に挿入するに伴って、その挿入途中でオス部材の挿入方向先端部がメス部材に設けた接当部に接当し、その状態でオス部材を更に挿入すると、当該オス部材がメス部材の内面に略沿う形状に座屈変形して、その挿入部分が拡径される。
従って、従来のように拡張子をメス部材の内側に設けることなく、オス部材の挿入部分を拡径させることができるので、構造の簡略化を図ることができ、しかも、オス部材がメス部材の内面に略沿う形状に座屈変形して、その挿入部分がメス部材の内面形状に応じて、そのメス部材との間に緩みがないように拡径されるので、第1セグメント本体と第2セグメント本体とを適切に連結できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記オス部材が、その挿入方向後端部に開口する開口部を備え、かつ、前記挿入部分に亘って貫通した一連の中空部を備えた略筒状に形成されて、前記開口部が前記第1セグメント本体の外方に臨む状態で、前記第1セグメント本体に設けられている点にある。
〔作用及び効果〕
従って、モルタル等の硬化性の材料を開口部から注入して、拡径部位の中空部内に充填することができ、その材料の硬化によって拡径部位の抜け出し方向への復帰変形を阻止して、第1セグメント本体と第2セグメント本体とを長期に亘って適切に連結できる。
本発明の第3特徴構成は、前記メス部材の前記拡径部位に対向する内周面が凹凸面に形成されている点にある。
〔作用及び効果〕
従って、オス部材が拡径変形するに伴って、その拡径部位とメス部材とを互いに係合させることができ、拡径部位のメス部材からの抜け出しを効果的に阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の連結装置は、図1に示すように、トンネルを構築する際に用いられるダクタイルセグメントやスチールセグメント、あるいは、コンクリートセグメント(これらを総称して「セグメント本体」という)1,2を互いに連結するもので、トンネル内に設置済みで、かつ、トンネル周方向に互いに連結されている二基の第1セグメント本体1に跨がって、それら第1セグメント本体1のトンネル軸芯方向端部に第2セグメント本体2を新たに連結するようにしてある。
【0009】
本発明の連結装置は、図2〜図4に示すように、第1セグメント本体1の一側部に設けたオス部材3と、第2セグメント本体2の他側部に設けられていて、オス部材3を挿入可能なメス部材4とで構成され、メス部材4には、オス部材3をメス部材4に挿入するに伴って、そのオス部材3のメス部材4への挿入部分5を拡径させる拡径機構Aが設けられている。
【0010】
そして、第1セグメント本体1の一側部に第2セグメント本体2の他側部を押し付けるようにしてオス部材3をメス部材4の内部に挿入することにより、オス部材3のメス部材4への挿入部分5をメス部材4に係合するよう拡径変形させて、第1セグメント本体1と第2セグメント本体2とを互いに連結するように構成されている。
【0011】
前記オス部材3は、固定用ボルト6を備えた円柱状の基部7に、メス部材4への挿入部分5としての外径が基部7と同径の略円筒形の被拡径部材5を同芯状に一体形成して構成され、第1セグメント本体1側の連結用フレーム1aに形成した大径の貫通孔8に固定用ボルト6を径方向に移動可能に挿通して、その連結用フレーム1aの連結面1bから外側に突出させる状態で、固定用ボルト6に螺着したダブルナット9と円柱状の基部7とで連結用フレーム1aを挟み込むように固定してある。
【0012】
従って、第1セグメント本体1と第2セグメント本体2とを連結するにあたって、オス部材3の位置とそのオス部材3が挿入されるメス部材4の位置とがそれらの径方向に互いにずれていて、オス部材3をメス部材4に挿入しにくい場合でも、貫通孔8に挿通した固定用ボルト6が適正な位置になるように径方向にずれ動くので、確実に連結することができる。
【0013】
前記被拡径部材5は、アルミニュウム,銅,鉛,薄肉の鋼材等の比較的変形し易い材料で形成され、この被拡径部材5の先端外周部には、メス部材4へ容易に挿入できるように、先窄まり状の傾斜面10が環状に形成されている。
【0014】
前記メス部材4は、オス部材3の基部7が嵌入する嵌入孔11を第2セグメント本体2側の連結用フレーム2aに貫通形成するとともに、その嵌入孔11の奥側に同芯状に連通し、かつ、嵌入孔11の径よりも大径の内周面12を備えた有底円筒状の筒部材13を連結用フレーム2aの内側に設けて構成され、オス部材3の拡径部位14に接当してその抜け出しを阻止する環状の抜止面15が、筒部材内側に臨んでいる連結用フレーム2aにて構成されている。
【0015】
前記拡径機構Aは、第2セグメント本体2側の連結用フレーム2aの連結面2bから筒部材13の底板内面16までの深さDを、オス部材3の連結用フレーム1aからの突出長さHよりも短い深さになるように形成し、オス部材3のメス部材4への挿入途中で被拡径部材5の先端部を接当部としての底板内面16に接当させて(図3参照)、その先端部が底板内面16に接当している状態でオス部材3を更に挿入するに伴って、被拡径部材5をメス部材4の内面に沿う形状に座屈変形させて拡径させる(図4参照)ように構成されている。
【0016】
〔第2実施形態〕
図5は、オス部材3が、その挿入方向後端部に開口する開口部17を備え、かつ、メス部材4への挿入部分、つまり、被拡径部材5に亘って貫通した一連の中空部18を備えた略筒状に形成されて、その開口部17が第1セグメント本体1の外方に臨む状態で設けられている実施形態を示す。
【0017】
そして、図6に示すように、第1実施形態で示したと同様に、オス部材3の被拡径部材5をメス部材4に係合するよう拡径変形させて、第1セグメント本体1と第2セグメント本体2とを互いに連結した後、モルタル等の硬化性の材料19を開口部17から注入して、拡径部位14の中空部内に充填し、その材料19の硬化によって拡径部位14の抜け出し方向への復帰変形を阻止できるように構成されている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0018】
〔第3実施形態〕
図7は、拡径部位14に対向するメス部材4の内周面12が凹凸面に形成されている実施形態を示し、筒部材13の内周面12に、その周方向に沿う複数の凸曲部20が環状に形成されている。
【0019】
そして、図8に示すように、第1実施形態で示したと同様に、オス部材3の被拡径部材5をメス部材4に係合するよう拡径させるに伴って、その拡径部位14の外周部21が凸曲部20に係合するように変形して、第1セグメント本体1と第2セグメント本体2とを互いに連結するように構成してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0020】
〔その他の実施形態〕
1.オス部材のメス部材への挿入部分は、その挿入圧力で座屈するものであれば、中実の柱状に形成されていても良い。
2.オス部材のメス部材への挿入部分は、オス部材の長手方向に沿って形成したスリットにて周方向で複数に分割されていても良い。
3.オス部材のメス部材への挿入部分は、その内径が長手方向中間部位において最大となる筒状に形成されていても良い。
4.上記実施形態では、設置済みの第1セグメント本体に設けたオス部材を新たに連結する第2セグメント本体に設けたメス部材に挿入するように構成したが、設置済みの第1セグメント本体に設けたメス部材に新たに連結する第2セグメント本体に設けたオス部材を挿入するように構成しても良い。
5.上記実施形態では、トンネル軸芯方向で隣合うセグメント本体どうしを連結する連結装置を示したが、トンネル周方向で隣合うセグメント本体どうしを連結する連結装置であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る連結装置の使用例を示す説明図
【図2】本発明に係る連結装置の連結前の状態を示す縦断面図
【図3】本発明に係る連結装置の連結過程を示す縦断面図
【図4】本発明に係る連結装置を連結した後の状態を示す縦断面図
【図5】第2実施形態の連結装置を示す要部縦断面図
【図6】第2実施形態の連結装置を連結した後の状態を示す縦断面図
【図7】第3実施形態の連結装置を示す要部縦断面図
【図8】第3実施形態の連結装置を連結した後の状態を示す縦断面図
【符号の説明】
【0022】
1 第1セグメント本体
2 第2セグメント本体
3 オス部材
4 メス部材
5 挿入部分
12 内周面
14 拡径部位
15 抜止面
16 接当部
17 開口部
18 中空部
A 拡径機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セグメント本体にオス部材を設け、第2セグメント本体に前記オス部材を挿入可能なメス部材を設けて、前記オス部材を前記メス部材に挿入することにより、前記第1セグメント本体と前記第2セグメント本体とが互いに連結自在に構成され、
前記オス部材を前記メス部材に挿入するに伴って、そのオス部材の挿入部分を拡径させる拡径機構が設けられ、
前記メス部材に、前記オス部材の拡径部位に接当してその抜け出しを阻止する抜止面が設けられているトンネル用セグメントの連結装置であって、
前記拡径機構が、前記オス部材の前記メス部材への挿入途中でそのオス部材の挿入方向先端部が接当する接当部を前記メス部材に設けて、前記先端部が前記接当部に接当している状態での前記オス部材の挿入に伴う当該オス部材の座屈変形で、前記挿入部分を拡径させるように構成され、
前記メス部材の前記拡径部位に対向する内周面が凹凸面に形成されているトンネル用セグメントの連結装置。
【請求項2】
前記メス部材を構成するに、
前記第2セグメント本体の前記第1セグメント本体に対する第2連結面に開口する嵌入孔を形成するとともに、その嵌入孔の奥側に同芯状に連通し、かつ、その嵌入孔よりも大径の内周面を備えた有底筒状の筒部材を設けて構成し、
前記拡径機構を構成するに、
前記第2連結面から前記筒部材の底板内面までの深さを、前記第1セグメント本体の前記第2セグメント本体に対する第1連結面からの前記オス部材の突出長さよりも短い深さになるように形成して構成してある請求項1記載のトンネル用セグメントの連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−198129(P2007−198129A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126949(P2007−126949)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【分割の表示】特願平10−86142の分割
【原出願日】平成10年3月31日(1998.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】