説明

ドアサッシュおよびその製造方法

【課題】アッパー部材とピラー部材とをコーナー部で溶接してなるドアサッシュであって、突合せ部における外表面部および裏面部に段差が生じないように溶接し、溶接後の表面部に仕上げ加工を施す必要がなく、安全かつ機能的で、優れた外観を有するドアサッシュとその効率的な製造方法を得る。
【解決手段】2層構造のエッジ部2kを有するアッパー部材2と、インナー部3hの端末部3jを覆うようにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工し、カシメることにより形成された3層構造のヘム部3kを有するピラー部材とを突合せ部5で溶接したドアサッシュ1であり、ピラー部材3のヘム部3kは、突合せ部5付近ではインナー部3hの端末部3jに形成された切欠部3nにアウター部3gの折返し部3iが折り曲げられ、ヘム加工により2層構造部3pが形成され、この2層構造部3pがアッパー部材2の2層構造のエッジ部2kと突合せ状態で溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに用いられるドアサッシュ、特にアッパー部材とピラー部材をコーナー部で溶接して形成されるドアサッシュ、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ドアサッシュとしてアッパー部材とピラー部材をコーナー部で溶接したものが知られている。アッパー部材とピラー部材はそれぞれ金属板のロール成形、プレス成形等の折り曲げ成形品からなり、それぞれグラスランチャンネル収容溝およびウエザーストリップ収容溝を有するため、ほぼ類似の異型横断面形状を有するので、両者を突き合わせた状態で対応する形状となるように切断し、切断面を突き合わせて溶接してドアサッシュのコーナー部を形成している。
【0003】
図3は特許文献1(特開平6−286463号)に示された従来のドアサッシュであり、(a)は全体の正面図、(b)はアッパー部材の横断面を示すA−A断面図、(c)はピラー部材の横断面を示すB−B断面図、(d)はアッパー部材の突合せ部の上側端面図、(e)はピラー部材の突合せ部の上側端面図、(f)は溶接状態のピラー部材の突合せ部の端面を示す裏側の斜視図、(g)は溶接状態を示すC−C断面図である。図3において、ドアサッシュ1はアッパー部材2とピラー部材3をコーナー部4における突合せ部5で溶接して形成されている。
【0004】
図3に示されたアッパー部材2は外表面部2a、グラスチャンネル収容部2b、中空部2c、ウェザーストリップ収容部2d、突条2e、屈曲部2fおよびエッジ部2kを有する異形横断面形状の金属板のロール成形品からなり、1枚の金属板のロール成形により所定の形状に曲げ加工されている。またピラー部材3は外表面部3a、グラスチャンネル収容部3b、中空部3c、および屈曲部3fからなるアウター部3gと、ウェザーストリップ収容部3d、および突条3eを有するインナー部3hの2種類の金属板のロール成形品を、インナー部3hの端末部3jを覆うようにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工し、カシメることによりヘム部3kを形成して一体化したものから成立っている。従って、これらをコーナー部4における突合せ部5で溶接してドアサッシュ1を形成した場合、突合せ部5におけるアッパー部材2のエッジ部2kは、図3(d)に示すように2層構造であるのに対して、ピラー部材3のヘム部3kは、図3(e)に示すように3層構造となっていた。ピラー部材3のヘム部3kは3層となるのは、ピラー部材3の幅が大きいため、本体部分であるアウター部3gに付加部分としてのインナー部3hを重ね、折返し部3iで固定してヘム部3kを形成し、剥離を防いで優れた外観を得るためである。
【0005】
上記のような従来のドアサッシュ1では、溶接部は外表面に段差が生じないように溶接するため、裏面部で段差が生じていた。すなわち図2(f)に示すように、溶接部となる突合せ部5ではアッパー部材2のエッジ部2kとピラー部材3のヘム部3kは、外表面部2aと外表面部3aが同一面となるように突き合せて溶接するため、裏面部ではピラー部材3の折返し部3i分の段差が生じる。ところが裏面部にはウエザーストリップを収容するので、段差があると隙間が生じて水漏れが発生する可能性があった。また段差部で取付け作業者が怪我をするという危険もあった。そのため上記段差部に点付け溶接6を施した後、サンダー等で研削加工し、段差部を徐変させる必要があり、複雑な工程が要求されるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−286463号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明はこのような従来の問題点を鑑みてなされたものであり、厚さの異なるエッジ部を有するアッパー部材とピラー部材とを、コーナー部で溶接してなるドアサッシュであって、突合せ部における外表面部および裏面部に段差が生じないように溶接し、溶接後の表面部に仕上げ加工を施す必要がなく、安全かつ機能的で、優れた外観を有するドアサッシュ、およびその効率的な製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は次のドアサッシュおよびその製造方法である。
(1) 金属板の折り曲げ加工により所定の横断面形状に成形され、かつ金属板の折り曲げにより成形された2層構造のエッジ部を有するアッパー部材と、
金属板の折り曲げ加工により所定の横断面形状に成形されたアウター部と、所定の横断面形状に折り曲げ加工されたインナー部とからなり、インナー部の端末部を覆うようにアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工し、カシメることにより形成された3層構造のヘム部を有するピラー部材と
をコーナー部を形成する両部材の突合せ部で溶接したドアサッシュであって、
前記ピラー部材のヘム部は、突合せ部付近ではインナー部の端末部に形成された切欠部に、アウター部の折返し部が折り曲げられ、ヘム加工により2層構造部が形成されており、
このピラー部材のヘム部を構成する2層構造部が、前記アッパー部材の2層構造のエッジ部と突合せ状態で溶接されていることを特徴とするドアサッシュ。
(2)ピラー部材のヘム部が、ピラー部材の上端部および/または長手方向側縁部に形成されたものである上記(1)記載のドアサッシュ。
(3)ピラー部材のヘム部を構成する2層構造部が、インナー部の端末部に形成された切欠部を埋めるように、アウター部の折返し部が折り曲げられてヘム加工されたものである上記(1)または(2)記載のドアサッシュ。
(4) 金属板の折り曲げ加工により、所定の横断面形状を有し、かつ金属板の折り曲げにより成形された2層構造のエッジ部を有するアッパー部材を形成し、
金属板の折り曲げ加工により、所定の横断面形状を有するアウター部と、所定の横断面形状を有するインナー部とを形成し、インナー部の端末を覆うようにアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工し、カシメることにより3層構造のヘム部を形成し一体化してピラー部材を形成し、
前記アッパー部材およびピラー部材をコーナー部を形成する両部材の突合せ部で溶接してドアサッシュを製造する方法であって、
前記ピラー部材のヘム部には、突合せ部付近におけるインナー部の端末部に切欠部を形成し、この切欠部にアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工により2層構造部を形成し、
このピラー部材のヘム部を構成する2層構造部と、前記アッパー部材の2層構造のエッジ部とを突合せ状態で溶接することを特徴とするドアサッシュの製造方法。
(5)ピラー部材のヘム部を構成する2層構造部を、インナー部の端末部に形成した切欠部を埋めるように、アウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工して形成する上記(4)記載の方法。
(6)前記ピラー部材のヘム部には、ヘム加工に先立ってインナー部の端末部を切除して切欠部を形成し、この切欠部にアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工により2層構造部を形成する上記(4)または(5)記載の方法。
【0009】
本発明のドアサッシュは、自動車等の車両用のドアに用いられるドアサッシュであり、車両の形式等には関係なく、アッパー部材とピラー部材をコーナー部で溶接したものが対象となる。そしてこのドアサッシュは、厚さの異なるエッジ部を有するアッパー部材とピラー部材とを、コーナー部で突合せ状態で溶接してなるドアサッシュである。アッパー部材とピラー部材は外表面部および裏面部を有するが、本発明では厚さの異なるエッジ部を有するアッパー部材とピラー部材を用いる場合でも、溶接部における外表面部および裏面部に段差が生じないようにしたドアサッシュを得ることができる。
【0010】
アッパー部材としては、金属板の折り曲げ加工により所定の横断面形状に成形され、かつ金属板の折り曲げにより成形された2層構造のエッジ部を有するアッパー部材であればよく、他の構造は任意に構成することができる。またピラー部材としては、金属板の折り曲げ加工により所定の横断面形状に成形されたアウター部と、所定の横断面形状に折り曲げ加工されたインナー部とからなり、インナー部の端末を覆うようにアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工し、カシメることにより形成された3層構造のヘム部を有するピラー部材であればよく、他の形状、構造等は任意に構成することができる。ピラー部材のヘム部は、ピラー部材の任意の場所に形成することができるが、好ましくはピラー部材の上端部および/または長手方向側縁部に形成されたものが用いられる。
【0011】
本発明のドアサッシュはこのようなアッパー部材とピラー部材を切断し、コーナー部を形成する両部材の突合せ部で溶接したドアサッシュである。この場合、ピラー部材の切断位置は、ヘム部を含む位置、特にヘム部に2層構造部を構成した位置とする。ピラー部材のヘム部は、突合せ部付近におけるインナー部の端末部に切欠部が形成され、この切欠部にアウター部の折返し部が折り曲げられてヘム加工により2層構造部が形成されたものである。そしてこのピラー部材のヘム部を構成する2層構造部が、アッパー部材の2層構造のエッジ部と突合せ状態で溶接されて、ドアサッシュが形成されている。
【0012】
本発明のドアサッシュは、ピラー部材が主要部において3層構造のヘム部を有するにもかかわらず、突合せ部付近におけるヘム部には2層構造部が形成されているため、このピラー部材のヘム部を構成する2層構造部は、アッパー部材の2層構造のエッジ部と、突合せ部においてほぼ同じ厚さとなるため、両部材を突合せ状態で溶接すると、突合せ部における外表面部および裏面部に段差が生じることはなく、溶接後の表面部に仕上げ加工を施さなくても、水漏れの発生や怪我の危険性がなく、安全かつ機能的で、優れた外観を有するドアサッシュが得られる。
【0013】
上記のドアサッシュを構成するピラー部材のヘム部を構成する2層構造部は、インナー部の端末部に形成される切欠部が、アウター部の折返し部とほぼ同形状とされ、アウター部の折返し部が折り曲げられてヘム加工されることにより、切欠部がほぼ完全に埋められ、両部材間に隙間が発生しないように構成すると、水漏れの発生や怪我の危険性はさらに小さくなる。
【0014】
上記のドアサッシュの製造方法は、まず金属板をロール成形、プレス成形等の折り曲げ加工により、所定の横断面形状に成形して2層構造のエッジ部を有するアッパー部材を形成する。また金属板を同様の折り曲げ加工、切断加工等により、所定の横断面形状に成形したアウター部とインナー部とを形成するとともに、インナー部の端末部を覆うようにアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工し、カシメることにより3層構造のヘム部を有するピラー部材を形成する。このときピラー部材のヘム部を形成する際、突合せ部付近におけるインナー部の端末部に切欠部を形成し、この切欠部にアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工により2層構造部を形成する。そして両部材をコーナー部を形成する両部材の突合せ部で溶接してドアサッシュを製造する。このときピラー部材のヘム部を構成する2層構造部と、アッパー部の2層構造のエッジ部とを突合せ状態で溶接することにより
、裏面に段差の生じないドアサッシュを製造することができる。
【0015】
本発明では、ピラー部材のヘム部を構成する2層構造部を形成する際、インナー部の端末部に形成する切欠部を、アウター部の折返し部とほぼ同形状に形成し、このインナー部の端末部に形成した切欠部をほぼ完全に埋めるように、アウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工することにより、両部材間に隙間が発生しない構造とすることができる。この場合、ピラー部材のヘム部は、ヘム加工に先立ってインナー部の端末部を切除して切欠部を形成し、この切欠部にアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工によりはめ込み、2層構造部を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のドアサッシュは、3層構造のヘム部を有するピラー部材として、突合せ部付近におけるインナー部の端末部に切欠部が形成され、この切欠部にアウター部の折返し部が折り曲げられてヘム加工により2層構造部が形成されており、ピラー部材のヘム部を構成する2層構造部が、アッパー部材の2層構造のエッジ部と突合せ状態で溶接されているので、突合せ部における外表面部および裏面部に段差が生じることがなく、溶接後の表面部に仕上げ加工を施さなくても水漏れの発生や怪我の危険性がなく、安全性、機能性が高く、優れた外観を有するドアサッシュが得られる。
【0017】
本発明のドアサッシュの製造方法は、3層構造のヘム部を有するピラー部材のヘム部を形成する際、突合せ部付近におけるインナー部の端末部に切欠部を形成し、切欠部にアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工により2層構造部を形成し、これにより形成される2層構造部と、アッパー部の2層構造のエッジ部とを突合せ状態で溶接するようにしたので、突合せ部における外表面部および裏面部に段差が生じることがなく、溶接後の表面部に仕上げ加工を施さなくても水漏れの発生や怪我の危険性がなく、安全性、機能性が高く、優れた外観を有するドアサッシュを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)は実施形態のドアサッシュの正面図、(b)はアッパー部材の横断面を示すD−D断面図、(c)はピラー部材の横断面を示すE−E断面図、(d)はピラー部材の上端部の断面を示すF−F断面図、(e)はピラー部材の上端部の断面を示すG−G断面図、(f)はピラー部材の突合せ部の端面図である。
【図2】図2(a)はアッパー部材の突合せ部の上側端面を示す斜視図、(b)はピラー部材のF−F断面で切断した状態を示す斜視図、(c)はピラー部材の突合せ部の上側端面を示す裏側の斜視図、(d)はピラー部材の2層構造部を形成する途中の端面を示す斜視図、(e)は溶接状態を示すH−H断面図であり、(a)〜(d)は層構造を対比し易いように方向を変えて図示されている。
【図3】図3は従来のドアサッシュを示し、(a)は全体の正面図、(b)はアッパー部材の横断面を示すA−A断面図、(c)はピラー部材の横断面を示すB−B断面図、(d)はアッパー部材の突合せ部の上側端面図、(e)はピラー部材の突合せ部の上側端面図、(f)は溶接状態のピラー部材の突合せ部の端面部を示す裏側の斜視図、(g)は溶接状態を示すC−C断面図であり、(d)〜(f)は層構造を対比し易いように方向を変えて図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。図1(a)〜(f)および図2(a)〜(e)は本発明の実施形態のドアサッシュを示しており、各図中、図3と同一または相
当部分には同一符号を付している。
【0020】
図1および図2において、ドアサッシュ1はアッパー部材2とピラー部材3をコーナー部4における突合せ部5で溶接して形成されている。アッパー部材2は図3のものとほぼ同様の構造のものが用いられている。ピラー部材3は横断面形状は図3のものとほぼ同様の構造であるが、ピラー部材3の上端部にも3層構造のヘム部3kが形成されている。ピラー部材3の突合せ部5は、アッパー部材2の突合せ部5とほぼ同形状となるように、上端部のヘム部3kを横断してコーナー部4の内コーナー角に至る所定の切断角度で切断することにより形成されている。
【0021】
アッパー部材2は図3のものとほぼ同様の構造であり、外表面部2a、グラスチャンネル収容部2b、中空部2c、ウェザーストリップ収容部2d、突条2e、屈曲部2fおよびエッジ部2kを有する異形横断面形状の金属板のロール成形品からなり、金属板のロール成形により所定の形状に曲げ加工されている。アッパー部材2のエッジ部2kは図2(a)に示すように、全長にわたり2層構造となっている。またアッパー部材2の突合せ部5は、ピラー部材3の突合せ部5とほぼ同形状となるように、先端部分を所定の切断角度で切断することにより形成されている。
【0022】
ピラー部材3は、外表面部3a、グラスチャンネル収容部3b、中空部3c、および屈曲部3fからなるアウター部3gと、ウェザーストリップ収容部3d、および突条3eを有するインナー部3hの2種類の金属板のロール成形品を、インナー部3hの端末部3jを覆うようにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工によりカシメて、3層構造のヘム部3kを形成して一体化したものから成立っている。ピラー部材3の上端部の断面形状も、図1(d)および図2(b)に示すように、インナー部3hの端末部3jを覆うようにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工によりカシメて、3層構造のヘム部3kが形成されている。
【0023】
ドアサッシュ1は、所定角度に切断したアッパー部材2とピラー部材3を、コーナー部4付近に突合せ部5を形成するように溶接したものであるが、上記のピラー部材3を単純にピラー部材3の3層構造のヘム部3kの部分で切断し、アッパー部材2との突合せ部5を形成して溶接すると、裏面に段差が生じる。すなわちアッパー部材2のエッジ部2kは2層構造であり、ピラー部材3のヘム部3kは3層構造であるため、図3のものと同様の構成では、裏面部ではピラー部材3の折返し部3i分の段差が生じることになる。
【0024】
これを防止するために、上記のドアサッシュ1では、ピラー部材3のヘム部3kには、突合せ部5付近におけるインナー部3hの端末部3jに切欠部3nが形成され、この切欠部3nにアウター部3gの折返し部3iが折り曲げられ、ヘム加工によりはめ込まれて2層構造部3pが形成されている。そしてこのピラー部材3のヘム部3kを構成する2層構造部3pが、アッパー部材2の2層構造のエッジ部2kと突合せ状態での溶接によりドアサッシュ1が形成されている。
【0025】
上記のドアサッシュ1は、ピラー部材3が主要部において3層構造のヘム部3kを有するにもかかわらず、突合せ部5付近におけるヘム部3kには2層構造部3pが形成されているため、このピラー部材3のヘム部3kを構成する2層構造部3pは、アッパー部材2の2層構造のエッジ部2kと、突合せ部5においてほぼ同じ厚さとなっている。このため両部材を突合せ状態で溶接すると、突合せ部5における外表面部および裏面部に段差が生じることはなく、溶接後の表面部に仕上げ加工を施さなくても、水漏れの発生や怪我の危険性がなく、安全かつ機能的で、優れた外観を有するドアサッシュ1が得られる。
【0026】
上記のドアサッシュ1を構成するピラー部材3のヘム部3kを構成する2層構造部3p
は、インナー部3hの端末部3jに形成される切欠部3nが、アウター部3gの折返し部3iとほぼ同形状とされ、アウター部3gの折返し部3iが折り曲げられてヘム加工されることにより、切欠部3nがほぼ完全に埋められ、両部材間に隙間が発生しないように構成すると、水漏れの発生や怪我の危険性はさらに小さくなる。
【0027】
上記のドアサッシュ1の製造方法は、まず金属板をロール成形、プレス成形等の折り曲げ加工により、所定の横断面形状に成形して2層構造のエッジ部2kを有するアッパー部材2を形成する。また金属板を同様の折り曲げ加工および切断加工により、所定の横断面形状に成形したアウター部3gと、所定の横断面形状に成形したインナー部3hとを形成するとともに、インナー部3hの端末部3jを覆うようにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工によりカシメて一体化することにより、3層構造部のヘム部3kを有するピラー部材3を形成する。ここでピラー部材3のヘム部3kを形成する際、突合せ部5付近におけるインナー部3hの端末部3jに切欠部3nを形成し、この切欠部3nにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工により2層構造部3pを形成する。そして両部材をコーナー部4を形成する両部材の突合せ部5で溶接してドアサッシュ1を製造する。このときピラー部材3のヘム部3kを構成する2層構造部3pと、アッパー部材2の2層構造のエッジ部2kとを突合せ状態で溶接することにより、裏面に段差の生じないドアサッシュ1を製造することができる。
【0028】
ピラー部材3のヘム部3kを構成する2層構造部3pを形成する際、インナー部3hの端末部3jに形成する切欠部3nを、アウター部3gの折返し部3iとほぼ同じ形状および大きさに形成し、このインナー部3hの端末部3jに形成した切欠部3nをほぼ完全に埋めるように、アウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工することにより、両部材間に隙間が発生しない構造とすることができる。この場合、ピラー部材3のヘム部3kは、ヘム加工に先立ってインナー部3hの端末部3jを切除して切欠部3nを形成し、この切欠部3nにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工によりはめ込み、2層構造部3pを形成することにより、効率よく2層構造部3pを形成することができる。
【0029】
上記のドアサッシュ1は、3層構造のヘム部3kを有するピラー部材3として、突合せ部5付近におけるインナー部3hの端末部3jに切欠部3nが形成され、この切欠部3nにアウター部3gの折返し部3iが折り曲げられてヘム加工により2層構造部3pが形成されており、ピラー部材3のヘム部3kを構成する2層構造部3pが、アッパー部材2の2層構造のエッジ部2kと突合せ状態で溶接されているので、突合せ部5における外表面部および裏面部に段差が生じることがなく、溶接後の表面部に仕上げ加工を施さなくても水漏れの発生や怪我の危険性がなく、安全性、機能性が高く、優れた外観を有するドアサッシュ1が得られる。
【0030】
また上記のドアサッシュ1の製造方法では、3層構造のヘム部3kを有するピラー部材3のヘム部3kを形成する際、突合せ部5付近におけるインナー部3hの端末部3jに切欠部3nを形成し、切欠部3nにアウター部3gの折返し部3iを折り曲げてヘム加工により2層構造部3pを形成し、これにより形成される2層構造部3pと、アッパー部材2の2層構造のエッジ部2kとを突合せ状態で溶接することにより、突合せ部5における外表面部および裏面部に段差が生じることがなく、溶接後の表面部に仕上げ加工を施さなくても水漏れの発生や怪我の危険性がなく、安全性、機能性が高く、優れた外観を有するドアサッシュ1を効率よく製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
自動車等の車両のドアに用いられるドアサッシュ、特にアッパー部材とピラー部材をコーナー部で溶接して形成されるドアサッシュ、およびその製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1: ドアサッシュ、2: アッパー部材、2a,3a: 外表面部、2b,3b: グラスチャンネル収容部、2c,3c: 中空部、2d,3d: ウェザーストリップ収容部、2e,3e: 突条、2f,3f: 屈曲部、2k: エッジ部、3: ピラー部材、3g: アウター部、3h: インナー部、3i: 折返し部、3j: 端末部、3n: 切欠部、3k: ヘム部、3p: 2層構造部、4: コーナー部、5: 突合せ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の折り曲げ加工により所定の横断面形状に成形され、かつ金属板の折り曲げにより成形された2層構造のエッジ部を有するアッパー部材と、
金属板の折り曲げ加工により所定の横断面形状に成形されたアウター部と、所定の横断面形状に折り曲げ加工されたインナー部とからなり、インナー部の端末部を覆うようにアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工し、カシメることにより形成された3層構造のヘム部を有するピラー部材と
をコーナー部を形成する両部材の突合せ部で溶接したドアサッシュであって、
前記ピラー部材のヘム部は、突合せ部付近ではインナー部の端末部に形成された切欠部に、アウター部の折返し部が折り曲げられ、ヘム加工により2層構造部が形成されており、
このピラー部材のヘム部を構成する2層構造部が、前記アッパー部材の2層構造のエッジ部と突合せ状態で溶接されていることを特徴とするドアサッシュ。
【請求項2】
ピラー部材のヘム部が、ピラー部材の上端部および/または長手方向側縁部に形成されたものである請求項1記載のドアサッシュ。
【請求項3】
ピラー部材のヘム部を構成する2層構造部が、インナー部の端末部に形成された切欠部を埋めるように、アウター部の折返し部が折り曲げられてヘム加工されたものである請求項1または2記載のドアサッシュ。
【請求項4】
金属板の折り曲げ加工により、所定の横断面形状を有し、かつ金属板の折り曲げにより成形された2層構造のエッジ部を有するアッパー部材を形成し、
金属板の折り曲げ加工により、所定の横断面形状を有するアウター部と、所定の横断面形状を有するインナー部とを形成し、インナー部の端末を覆うようにアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工し、カシメることにより3層構造のヘム部を形成し一体化してピラー部材を形成し、
前記アッパー部材およびピラー部材をコーナー部を形成する両部材の突合せ部で溶接してドアサッシュを製造する方法であって、
前記ピラー部材のヘム部には、突合せ部付近におけるインナー部の端末部に切欠部を形成し、この切欠部にアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工により2層構造部を形成し、
このピラー部材のヘム部を構成する2層構造部と、前記アッパー部材の2層構造のエッジ部とを突合せ状態で溶接することを特徴とするドアサッシュの製造方法。
【請求項5】
ピラー部材のヘム部を構成する2層構造部を、インナー部の端末部に形成した切欠部を埋めるように、アウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工して形成する請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ピラー部材のヘム部には、ヘム加工に先立ってインナー部の端末部を切除して切欠部を形成し、この切欠部にアウター部の折返し部を折り曲げてヘム加工により2層構造部を形成する請求項4または5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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