ドアロック装置
【課題】ロック機構の良好な切換操作性を確保し、かつデザインレイアウトの自由度を高めること。
【解決手段】切換レバー24が中立位置からロック位置に揺動した場合にアウトサイドハンドル10による開ドア操作を無効化する一方、切換レバー24が中立位置からアンロック位置に揺動した場合にアウトサイドハンドル10による開ドア操作を有効化するロック機構20と、キー操作力をロック機構20の切換レバー24に伝達してこれを揺動させるトルクケーブル15とを備えたドアロック装置において、トルクケーブル15にキーによる操作力が作用していない場合に切換レバー24を中立位置に保持するレバー復帰バネ27を設けている。
【解決手段】切換レバー24が中立位置からロック位置に揺動した場合にアウトサイドハンドル10による開ドア操作を無効化する一方、切換レバー24が中立位置からアンロック位置に揺動した場合にアウトサイドハンドル10による開ドア操作を有効化するロック機構20と、キー操作力をロック機構20の切換レバー24に伝達してこれを揺動させるトルクケーブル15とを備えたドアロック装置において、トルクケーブル15にキーによる操作力が作用していない場合に切換レバー24を中立位置に保持するレバー復帰バネ27を設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切換レバーが中立位置からロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を無効化する一方、切換レバーが中立位置からアンロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を有効化するロック機構と、キー操作力をロック機構の切換レバーに伝達してこれを揺動させる連係手段とを備えたドアロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
四輪自動車等の車両に適用されるドアロック装置には、ドアに設けたロック機構とキーシリンダとの間をトルクケーブル等の連係手段によって連係させるようにしたものがある。ロック機構は、アウトサイドハンドルを開ドア操作した場合にドアの開成移動を許容するアンロック状態と、アウトサイドハンドルを開ドア操作した場合にもこれを無効化してドアを閉成状態に維持するロック状態とに切り換わるものである。キーシリンダは、車両の外部からキー操作を行うためのもので、ドアのアウタパネルに設けられている。このキーシリンダには、キー操作を行わない場合に常態位置を保持するためのシリンダ復帰バネが設けられている。
【0003】
このドアロック装置では、キー操作によりシリンダ復帰バネの弾性力に抗してキーシリンダを回転させると、この回転力が連係手段を通じてロック機構の切換レバーに伝達され、切換レバーが中立位置から切換位置に揺動することでロック機構がアンロック状態とロック状態とに切り換わることになる。キーによる操作力を除去した場合には、シリンダ復帰バネによってキーシリンダが常態位置に復帰し、さらに連係手段を通じて切換レバーが中立位置に復帰する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−332449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成したドアロック装置によれば、ロック機構の位置に左右されることなくドアパネルにキーシリンダを設けることが可能となり、デザインレイアウトの自由度を高めることができるようになる。しかしながら、ロック機構とキーシリンダの相対的な位置関係は、連係手段の動力伝達効率に影響を与える場合がある。例えば、連係手段としてトルクケーブルを用いたドアロック装置の場合、トルクケーブルを大きく湾曲させればロック機構に対するキーシリンダの位置を任意に設定することが可能になるものの、動力伝達効率が低下するのは否めない。
【0006】
このように動力伝達効率が低下した状態にあっては、シリンダ復帰バネによってキーシリンダが常態位置に復帰した場合にも、切換レバーが切換位置から中立位置に復帰するとは限らない。この結果、引き続きキー操作を行った場合にロック機構が正確に切り換わらない虞れがある。こうした問題は、トルクケーブルを適用した場合に限らず、連係手段を介してキーシリンダとロック機構とを連係させたものにあっては同様に起こり得るものである。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、連係手段によるロック機構の良好な切換操作性を確保し、かつデザインレイアウトの自由度を高めることのできるドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るドアロック装置は、切換レバーが中立位置からロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を無効化する一方、切換レバーが中立位置からアンロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を有効化するロック機構と、キー操作力をロック機構の切換レバーに伝達してこれを揺動させる連係手段とを備えたドアロック装置において、前記連係手段にキーによる操作力が作用していない場合に前記切換レバーを中立位置に保持する常態保持手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るドアロック装置は、上述した請求項1において、切換レバーをハウジングの内部に収容し、これらハウジングと切換レバーとの間に常態保持手段としてレバー復帰バネを介在させたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るドアロック装置は、上述した請求項2において、前記連係手段は、キー操作によって回転するキーシリンダと切換レバーとの間に介在するものであり、前記レバー復帰バネは、キーシリンダが備えるシリンダ復帰バネよりもバネ定数を小さく設定したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キーによる操作力が解除された場合に切換レバーが常態保持手段によって中立位置に確実に復帰する。従って、引き続きキー操作を行った場合にもロック機構を正確に切り換えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアロック装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態であるドアロック装置を適用した車両の要部を概念的に示したもので、図2に示すように、四輪自動車の前席右側に配置された前方ヒンジのサイドドア(右ハンドル車においては運転席側のドアD)を示したものである。図には明示していないが、この車両のドアDは、従前のドアと同様にラッチ機構を備えたものである。ラッチ機構は、車両本体Bに設けたストライカ(図示せず)と噛み合った場合に車両本体Bに対してドアDを閉成状態に維持する一方、ストライカとの噛み合いが解除された場合に車両本体Bに対するドアDの開成移動を許容するものである。図1に示すように、このドアDには、アウトサイドハンドル(ドアハンドル)10及びロック機構20が設けてある。
【0014】
アウトサイドハンドル10は、車両本体Bに対してドアDを開成移動する場合に開ドア操作する操作部材であり、室外側に位置するドアアウタパネルOPに設けてある。このアウトサイドハンドル10には、キーシリンダ11が付設してある。キーシリンダ11は、車両本体Bの外部から適合するキーを差し入れた場合に回転可能となるもので、キー孔を外部に露出させた状態でドアアウタパネルOPに設けられている。このキーシリンダ11には、キー操作を行わない場合に常態位置を保持するためのシリンダ復帰バネ12が設けられている。本実施の形態で適用するシリンダ復帰バネ12は、通常のキーシリンダ11に用いられているものよりもバネ定数が小さく設定されたものである。
【0015】
また、キーシリンダ11には、トルクケーブル(連係手段)15が接続してある。トルクケーブル15は、アウタチューブ16の内部にインナケーブル17を回転可能に収容させたもので、キーシリンダ11が回転した場合にアウタチューブ16に対してインナケーブル17が同一方向に回転することになる。このトルクケーブル15の延在端部には、アウタチューブ16に係合凹部16aが形成してあるとともに、インナケーブル17に係合片17aが設けてある。係合凹部16aは、アウタチューブ16の外周に設けた環状の凹部である。係合片17aは、平板状を成す部分であり、インナケーブル17が回転した場合に連動するように連設してある。
【0016】
ロック機構20は、アウトサイドハンドル10とラッチ機構との間に介在させたもので、ハウジング21に収容した状態でドアDの内部、つまりドアアウタパネルOPと室内側に位置するドアインナパネルIPとの間に配設してある。ロック機構20においてハウジング21の外部に露出する部位には、オープンレバー22が設けてある。オープンレバー22は、アウトサイドハンドル10による開ドア操作の入力部となるもので、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在する軸心回りに揺動可能に配設してある。このオープンレバー22には、アウトサイドハンドル10が開ドア操作された場合に下方に向けて揺動するように、該アウトサイドハンドル10との間がリンク機構23によって連係してある。
【0017】
また、ロック機構20には、図3〜図6に示すように、ハウジング21の内部に切換レバー24が配設してある。切換レバー24は、円柱状を成すレバー軸部25の周面から径外方向に向けて延在したもので、レバー軸部25の軸心回りに揺動する態様でレバー軸部25の両端部を介してハウジング21に支承してある。この切換レバー24は、図3に示す中立位置から図5に示すアンロック位置に揺動した場合にロック機構20をアンロック状態に切り換える一方、図3に示す中立位置から図6に示すロック位置に揺動した場合にロック機構20をロック状態に切り換えるように機能する。
【0018】
ロック機構20がアンロック状態にある場合には、アウトサイドハンドル10の開ドア操作によってオープンレバー22が下方に向けて揺動すると、このオープンレバー22の揺動がラッチ機構に伝達され、当該ラッチ機構が解除動作することになる。従って、ラッチ機構がストライカと噛み合った状態にあってもアウトサイドハンドル10の開ドア操作によってその噛み合い状態が解除され、ドアDを開成移動させることが可能となる。
【0019】
これに対してロック機構20がロック状態にある場合には、アウトサイドハンドル10の開ドア操作によってオープンレバー22が下方に向けて揺動しても、このオープンレバー22の揺動が無効化されてラッチ機構に伝達されず、当該ラッチ機構が解除動作されることがない。従って、ラッチ機構がストライカと噛み合った状態においてはアウトサイドハンドル10の開ドア操作によってもその噛み合い状態が解除されず、ドアDが閉成状態に維持されることになる。
【0020】
図4からも明らかなように、この切換レバー24には、係合溝26、レバー復帰バネ27及びバネ作用片28が設けてある。係合溝26は、室外側に延在するレバー軸部25の端面から形成したスリット状の切欠である。この係合溝26には、ハウジング21に設けた筒孔30を通じて上述したトルクケーブル15の係合片17aが嵌合している。ハウジング21の筒孔30は、トルクケーブル15のアウタチューブ16を収容することのできる内径を有した円筒状を成すものである。この筒孔30の内周面には、インナケーブル17の係合片17aが切換レバー24の係合溝26に嵌合した場合にアウタチューブ16の係合凹部16aに係合し、該アウタチューブ16の筒孔30からの脱落を阻止する爪片31が設けてある。
【0021】
レバー復帰バネ27は、図3に示すように、弾性線状材の中間部を螺旋状に巻回する一方、両端部を径外方向に向けて突出したゼンマイ形状のバネであり、中間部をレバー軸部25の周囲に配置する一方、両端部をそれぞれハウジング21のバネ係合片40に押圧係合させた状態で切換レバー24とハウジング21との間に配置してある。ハウジング21のバネ係合片40は、切換レバー24が中立位置にある場合に該切換レバー24によって覆われる位置に形成した弧状の突条部である。このレバー復帰バネ27は、上述したキーシリンダ11のシリンダ復帰バネ12よりもさらにバネ定数を小さく設定したものである。
【0022】
バネ作用片28は、切換レバー24において室内側に位置する端面からハウジング21に向けて設けた突出部である。このバネ作用片28は、切換レバー24が中立位置にある場合にハウジング21のバネ係合片40よりもレバー軸部25側においてレバー復帰バネ27の2つの端部間に突出する態様で配設してある。
【0023】
レバー復帰バネ27が中立位置にある場合、図3に示すように、バネ作用片28はレバー復帰バネ27の2つの端部からそれぞれ離隔した位置に占位している。この状態から外力を加えて切換レバー24をロック位置、もしくはアンロック位置に揺動させた場合には、図5及び図6に示すように、バネ作用片28がレバー復帰バネ27の端部に係合し、当該レバー復帰バネ27の弾性力に抗して移動することになる。従って、レバー復帰バネ27の外力を除去すれば、レバー復帰バネ27の弾性復元力によって切換レバー24が中立位置に復帰することになる。
【0024】
さらに、上記ドアロック装置には、ハウジング21の筒孔30の周囲にシャッタスプリング50が設けてある。シャッタスプリング50は、図7に示すように、弾性線状体を適宜成形することによって構成したもので、巻回部51、支持部52、係止部53及び阻止部54を有している。巻回部51は、弾性線状体を複数回巻いて構成した部分である。支持部52は、巻回部51から径外方向に延在した後、ハウジング21のスリット21aに挿入された支持部分である。係止部53は、巻回部51から径外方向に向けて延在した後、支持部52から離隔する方向に向けて屈曲した部分である。阻止部54は、係止部53の延在端部において湾曲した部分である。このシャッタスプリング50は、支持部52に対して係止部53を弾性的に近接させた状態でハウジング21の周壁と筒孔30の周囲に設けたストッパ突起32との間に装着してある。この状態においては、図8に示すように、シャッタスプリング50の阻止部54が筒孔30の爪片31と同じ高さ位置において筒孔30の切欠30aから内部に突出し、アウタチューブ16の係合凹部16aに係合している。
【0025】
上記のように構成したドアロック装置では、キー操作によってキーシリンダ11を回転させると、この回転力がトルクケーブル15を通じてロック機構20の切換レバー24に伝達され、切換レバー24が中立位置からアンロック位置、もしくはロック位置に揺動することでロック機構20がアンロック状態とロック状態とに切り換わることになる。
【0026】
一方、キー操作力を除去した場合には、シリンダ復帰バネ12によってキーシリンダ11が常態位置に復帰する。さらにキーシリンダ11の復帰移動がトルクケーブル15を通じて切換レバー24に伝達されるばかりでなく、レバー復帰バネ27によって切換レバー24が中立位置に復帰することになる。
【0027】
この結果、デザインレイアウトの自由度を高めるべくトルクケーブル15を湾曲させ、動力伝達効率が100%を大きく下回った状態であっても、常に切換レバー24が中立位置に確実に復帰することになり、引き続きキー操作を行った場合にロック機構20を正確に切り換えることが可能となる。
【0028】
ところで、上記のようにハウジング21の内部にロック機構20を収容させるようにしたドアロック装置においては、ハウジング21からトルクケーブル15を引き抜いた場合、筒孔30を通じて切換レバー24が外部に露出した状態となり、この切換レバー24を直接操作すればロック機構20をアンロック状態に切り換えることが可能となる虞れがある。
【0029】
しかしながら、上述したドアロック装置によれば、トルクケーブル15を引き抜いた場合、シャッタスプリング50の阻止部54が筒孔30の内部に突出した状態となり、切換レバー24を直接操作する事態を有効に防止することができる。つまり、図8に示す状態からトルクケーブル15を引き抜くと、図9に示すように、アウタチューブ16の係合凹部16aに嵌合した阻止部54がトルクケーブル15とともに移動し、やがて係止部53とストッパ突起32との係合状態が解除された状態となる。その後、トルクケーブル15が完全に引き抜かれた場合には、図10及び図11に示すように、シャッタスプリング50の弾性力により阻止部54が筒孔30の切欠30aを通じて内部に突出し、その状態を維持する。従って、悪意のあるものが筒孔30を通じて直接切換レバー24を操作しようとしてもこれを防止することが可能となり、適用する車両本体Bの防盗性を向上させることができるようになる。
【0030】
しかも、ドアロック装置を組み立てる場合には、図7及び図8に示す状態からアウタチューブ16を筒孔30に挿入すれば、シャッタスプリング50の阻止部54が筒孔30から一旦弾性的に退避した後、係合凹部16aに自動的に嵌合することになるため、組立作業制を何等損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態であるドアロック装置を適用したドアを車両の正面側から見た概念図である。
【図2】図1に示したドアロック装置を適用した車両を示す概念図である。
【図3】図1に示したドアロック装置を室内側から見た概念図である。
【図4】図3における IV−IV 線断面図である。
【図5】図1に示したドアロック装置の切換レバーが揺動した状態を示す概念図である。
【図6】図1に示したドアロック装置の切換レバーが揺動した状態を示す概念図である。
【図7】図1に示したドアロック装置を室外側から見た概念図である。
【図8】図1に示したドアロック装置と連係手段との連係状態を示す要部断面側面図である。
【図9】図8に示した状態から連係手段が脱落する途中の状態を示す要部断面側面図である。
【図10】図9に示した状態から連係手段が脱落した状態を示す要部断面側面図である。
【図11】図1に示したドアロック装置を室外側から見た概念図である。
【符号の説明】
【0032】
10 アウトサイドハンドル
11 キーシリンダ
12 シリンダ復帰バネ
15 トルクケーブル
20 ロック機構
24 切換レバー
27 レバー復帰バネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、切換レバーが中立位置からロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を無効化する一方、切換レバーが中立位置からアンロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を有効化するロック機構と、キー操作力をロック機構の切換レバーに伝達してこれを揺動させる連係手段とを備えたドアロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
四輪自動車等の車両に適用されるドアロック装置には、ドアに設けたロック機構とキーシリンダとの間をトルクケーブル等の連係手段によって連係させるようにしたものがある。ロック機構は、アウトサイドハンドルを開ドア操作した場合にドアの開成移動を許容するアンロック状態と、アウトサイドハンドルを開ドア操作した場合にもこれを無効化してドアを閉成状態に維持するロック状態とに切り換わるものである。キーシリンダは、車両の外部からキー操作を行うためのもので、ドアのアウタパネルに設けられている。このキーシリンダには、キー操作を行わない場合に常態位置を保持するためのシリンダ復帰バネが設けられている。
【0003】
このドアロック装置では、キー操作によりシリンダ復帰バネの弾性力に抗してキーシリンダを回転させると、この回転力が連係手段を通じてロック機構の切換レバーに伝達され、切換レバーが中立位置から切換位置に揺動することでロック機構がアンロック状態とロック状態とに切り換わることになる。キーによる操作力を除去した場合には、シリンダ復帰バネによってキーシリンダが常態位置に復帰し、さらに連係手段を通じて切換レバーが中立位置に復帰する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−332449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成したドアロック装置によれば、ロック機構の位置に左右されることなくドアパネルにキーシリンダを設けることが可能となり、デザインレイアウトの自由度を高めることができるようになる。しかしながら、ロック機構とキーシリンダの相対的な位置関係は、連係手段の動力伝達効率に影響を与える場合がある。例えば、連係手段としてトルクケーブルを用いたドアロック装置の場合、トルクケーブルを大きく湾曲させればロック機構に対するキーシリンダの位置を任意に設定することが可能になるものの、動力伝達効率が低下するのは否めない。
【0006】
このように動力伝達効率が低下した状態にあっては、シリンダ復帰バネによってキーシリンダが常態位置に復帰した場合にも、切換レバーが切換位置から中立位置に復帰するとは限らない。この結果、引き続きキー操作を行った場合にロック機構が正確に切り換わらない虞れがある。こうした問題は、トルクケーブルを適用した場合に限らず、連係手段を介してキーシリンダとロック機構とを連係させたものにあっては同様に起こり得るものである。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、連係手段によるロック機構の良好な切換操作性を確保し、かつデザインレイアウトの自由度を高めることのできるドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るドアロック装置は、切換レバーが中立位置からロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を無効化する一方、切換レバーが中立位置からアンロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を有効化するロック機構と、キー操作力をロック機構の切換レバーに伝達してこれを揺動させる連係手段とを備えたドアロック装置において、前記連係手段にキーによる操作力が作用していない場合に前記切換レバーを中立位置に保持する常態保持手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るドアロック装置は、上述した請求項1において、切換レバーをハウジングの内部に収容し、これらハウジングと切換レバーとの間に常態保持手段としてレバー復帰バネを介在させたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るドアロック装置は、上述した請求項2において、前記連係手段は、キー操作によって回転するキーシリンダと切換レバーとの間に介在するものであり、前記レバー復帰バネは、キーシリンダが備えるシリンダ復帰バネよりもバネ定数を小さく設定したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キーによる操作力が解除された場合に切換レバーが常態保持手段によって中立位置に確実に復帰する。従って、引き続きキー操作を行った場合にもロック機構を正確に切り換えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアロック装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態であるドアロック装置を適用した車両の要部を概念的に示したもので、図2に示すように、四輪自動車の前席右側に配置された前方ヒンジのサイドドア(右ハンドル車においては運転席側のドアD)を示したものである。図には明示していないが、この車両のドアDは、従前のドアと同様にラッチ機構を備えたものである。ラッチ機構は、車両本体Bに設けたストライカ(図示せず)と噛み合った場合に車両本体Bに対してドアDを閉成状態に維持する一方、ストライカとの噛み合いが解除された場合に車両本体Bに対するドアDの開成移動を許容するものである。図1に示すように、このドアDには、アウトサイドハンドル(ドアハンドル)10及びロック機構20が設けてある。
【0014】
アウトサイドハンドル10は、車両本体Bに対してドアDを開成移動する場合に開ドア操作する操作部材であり、室外側に位置するドアアウタパネルOPに設けてある。このアウトサイドハンドル10には、キーシリンダ11が付設してある。キーシリンダ11は、車両本体Bの外部から適合するキーを差し入れた場合に回転可能となるもので、キー孔を外部に露出させた状態でドアアウタパネルOPに設けられている。このキーシリンダ11には、キー操作を行わない場合に常態位置を保持するためのシリンダ復帰バネ12が設けられている。本実施の形態で適用するシリンダ復帰バネ12は、通常のキーシリンダ11に用いられているものよりもバネ定数が小さく設定されたものである。
【0015】
また、キーシリンダ11には、トルクケーブル(連係手段)15が接続してある。トルクケーブル15は、アウタチューブ16の内部にインナケーブル17を回転可能に収容させたもので、キーシリンダ11が回転した場合にアウタチューブ16に対してインナケーブル17が同一方向に回転することになる。このトルクケーブル15の延在端部には、アウタチューブ16に係合凹部16aが形成してあるとともに、インナケーブル17に係合片17aが設けてある。係合凹部16aは、アウタチューブ16の外周に設けた環状の凹部である。係合片17aは、平板状を成す部分であり、インナケーブル17が回転した場合に連動するように連設してある。
【0016】
ロック機構20は、アウトサイドハンドル10とラッチ機構との間に介在させたもので、ハウジング21に収容した状態でドアDの内部、つまりドアアウタパネルOPと室内側に位置するドアインナパネルIPとの間に配設してある。ロック機構20においてハウジング21の外部に露出する部位には、オープンレバー22が設けてある。オープンレバー22は、アウトサイドハンドル10による開ドア操作の入力部となるもので、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在する軸心回りに揺動可能に配設してある。このオープンレバー22には、アウトサイドハンドル10が開ドア操作された場合に下方に向けて揺動するように、該アウトサイドハンドル10との間がリンク機構23によって連係してある。
【0017】
また、ロック機構20には、図3〜図6に示すように、ハウジング21の内部に切換レバー24が配設してある。切換レバー24は、円柱状を成すレバー軸部25の周面から径外方向に向けて延在したもので、レバー軸部25の軸心回りに揺動する態様でレバー軸部25の両端部を介してハウジング21に支承してある。この切換レバー24は、図3に示す中立位置から図5に示すアンロック位置に揺動した場合にロック機構20をアンロック状態に切り換える一方、図3に示す中立位置から図6に示すロック位置に揺動した場合にロック機構20をロック状態に切り換えるように機能する。
【0018】
ロック機構20がアンロック状態にある場合には、アウトサイドハンドル10の開ドア操作によってオープンレバー22が下方に向けて揺動すると、このオープンレバー22の揺動がラッチ機構に伝達され、当該ラッチ機構が解除動作することになる。従って、ラッチ機構がストライカと噛み合った状態にあってもアウトサイドハンドル10の開ドア操作によってその噛み合い状態が解除され、ドアDを開成移動させることが可能となる。
【0019】
これに対してロック機構20がロック状態にある場合には、アウトサイドハンドル10の開ドア操作によってオープンレバー22が下方に向けて揺動しても、このオープンレバー22の揺動が無効化されてラッチ機構に伝達されず、当該ラッチ機構が解除動作されることがない。従って、ラッチ機構がストライカと噛み合った状態においてはアウトサイドハンドル10の開ドア操作によってもその噛み合い状態が解除されず、ドアDが閉成状態に維持されることになる。
【0020】
図4からも明らかなように、この切換レバー24には、係合溝26、レバー復帰バネ27及びバネ作用片28が設けてある。係合溝26は、室外側に延在するレバー軸部25の端面から形成したスリット状の切欠である。この係合溝26には、ハウジング21に設けた筒孔30を通じて上述したトルクケーブル15の係合片17aが嵌合している。ハウジング21の筒孔30は、トルクケーブル15のアウタチューブ16を収容することのできる内径を有した円筒状を成すものである。この筒孔30の内周面には、インナケーブル17の係合片17aが切換レバー24の係合溝26に嵌合した場合にアウタチューブ16の係合凹部16aに係合し、該アウタチューブ16の筒孔30からの脱落を阻止する爪片31が設けてある。
【0021】
レバー復帰バネ27は、図3に示すように、弾性線状材の中間部を螺旋状に巻回する一方、両端部を径外方向に向けて突出したゼンマイ形状のバネであり、中間部をレバー軸部25の周囲に配置する一方、両端部をそれぞれハウジング21のバネ係合片40に押圧係合させた状態で切換レバー24とハウジング21との間に配置してある。ハウジング21のバネ係合片40は、切換レバー24が中立位置にある場合に該切換レバー24によって覆われる位置に形成した弧状の突条部である。このレバー復帰バネ27は、上述したキーシリンダ11のシリンダ復帰バネ12よりもさらにバネ定数を小さく設定したものである。
【0022】
バネ作用片28は、切換レバー24において室内側に位置する端面からハウジング21に向けて設けた突出部である。このバネ作用片28は、切換レバー24が中立位置にある場合にハウジング21のバネ係合片40よりもレバー軸部25側においてレバー復帰バネ27の2つの端部間に突出する態様で配設してある。
【0023】
レバー復帰バネ27が中立位置にある場合、図3に示すように、バネ作用片28はレバー復帰バネ27の2つの端部からそれぞれ離隔した位置に占位している。この状態から外力を加えて切換レバー24をロック位置、もしくはアンロック位置に揺動させた場合には、図5及び図6に示すように、バネ作用片28がレバー復帰バネ27の端部に係合し、当該レバー復帰バネ27の弾性力に抗して移動することになる。従って、レバー復帰バネ27の外力を除去すれば、レバー復帰バネ27の弾性復元力によって切換レバー24が中立位置に復帰することになる。
【0024】
さらに、上記ドアロック装置には、ハウジング21の筒孔30の周囲にシャッタスプリング50が設けてある。シャッタスプリング50は、図7に示すように、弾性線状体を適宜成形することによって構成したもので、巻回部51、支持部52、係止部53及び阻止部54を有している。巻回部51は、弾性線状体を複数回巻いて構成した部分である。支持部52は、巻回部51から径外方向に延在した後、ハウジング21のスリット21aに挿入された支持部分である。係止部53は、巻回部51から径外方向に向けて延在した後、支持部52から離隔する方向に向けて屈曲した部分である。阻止部54は、係止部53の延在端部において湾曲した部分である。このシャッタスプリング50は、支持部52に対して係止部53を弾性的に近接させた状態でハウジング21の周壁と筒孔30の周囲に設けたストッパ突起32との間に装着してある。この状態においては、図8に示すように、シャッタスプリング50の阻止部54が筒孔30の爪片31と同じ高さ位置において筒孔30の切欠30aから内部に突出し、アウタチューブ16の係合凹部16aに係合している。
【0025】
上記のように構成したドアロック装置では、キー操作によってキーシリンダ11を回転させると、この回転力がトルクケーブル15を通じてロック機構20の切換レバー24に伝達され、切換レバー24が中立位置からアンロック位置、もしくはロック位置に揺動することでロック機構20がアンロック状態とロック状態とに切り換わることになる。
【0026】
一方、キー操作力を除去した場合には、シリンダ復帰バネ12によってキーシリンダ11が常態位置に復帰する。さらにキーシリンダ11の復帰移動がトルクケーブル15を通じて切換レバー24に伝達されるばかりでなく、レバー復帰バネ27によって切換レバー24が中立位置に復帰することになる。
【0027】
この結果、デザインレイアウトの自由度を高めるべくトルクケーブル15を湾曲させ、動力伝達効率が100%を大きく下回った状態であっても、常に切換レバー24が中立位置に確実に復帰することになり、引き続きキー操作を行った場合にロック機構20を正確に切り換えることが可能となる。
【0028】
ところで、上記のようにハウジング21の内部にロック機構20を収容させるようにしたドアロック装置においては、ハウジング21からトルクケーブル15を引き抜いた場合、筒孔30を通じて切換レバー24が外部に露出した状態となり、この切換レバー24を直接操作すればロック機構20をアンロック状態に切り換えることが可能となる虞れがある。
【0029】
しかしながら、上述したドアロック装置によれば、トルクケーブル15を引き抜いた場合、シャッタスプリング50の阻止部54が筒孔30の内部に突出した状態となり、切換レバー24を直接操作する事態を有効に防止することができる。つまり、図8に示す状態からトルクケーブル15を引き抜くと、図9に示すように、アウタチューブ16の係合凹部16aに嵌合した阻止部54がトルクケーブル15とともに移動し、やがて係止部53とストッパ突起32との係合状態が解除された状態となる。その後、トルクケーブル15が完全に引き抜かれた場合には、図10及び図11に示すように、シャッタスプリング50の弾性力により阻止部54が筒孔30の切欠30aを通じて内部に突出し、その状態を維持する。従って、悪意のあるものが筒孔30を通じて直接切換レバー24を操作しようとしてもこれを防止することが可能となり、適用する車両本体Bの防盗性を向上させることができるようになる。
【0030】
しかも、ドアロック装置を組み立てる場合には、図7及び図8に示す状態からアウタチューブ16を筒孔30に挿入すれば、シャッタスプリング50の阻止部54が筒孔30から一旦弾性的に退避した後、係合凹部16aに自動的に嵌合することになるため、組立作業制を何等損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態であるドアロック装置を適用したドアを車両の正面側から見た概念図である。
【図2】図1に示したドアロック装置を適用した車両を示す概念図である。
【図3】図1に示したドアロック装置を室内側から見た概念図である。
【図4】図3における IV−IV 線断面図である。
【図5】図1に示したドアロック装置の切換レバーが揺動した状態を示す概念図である。
【図6】図1に示したドアロック装置の切換レバーが揺動した状態を示す概念図である。
【図7】図1に示したドアロック装置を室外側から見た概念図である。
【図8】図1に示したドアロック装置と連係手段との連係状態を示す要部断面側面図である。
【図9】図8に示した状態から連係手段が脱落する途中の状態を示す要部断面側面図である。
【図10】図9に示した状態から連係手段が脱落した状態を示す要部断面側面図である。
【図11】図1に示したドアロック装置を室外側から見た概念図である。
【符号の説明】
【0032】
10 アウトサイドハンドル
11 キーシリンダ
12 シリンダ復帰バネ
15 トルクケーブル
20 ロック機構
24 切換レバー
27 レバー復帰バネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切換レバーが中立位置からロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を無効化する一方、切換レバーが中立位置からアンロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を有効化するロック機構と、キー操作力をロック機構の切換レバーに伝達してこれを揺動させる連係手段とを備えたドアロック装置において、
前記連係手段にキーによる操作力が作用していない場合に前記切換レバーを中立位置に保持する常態保持手段を設けたことを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
切換レバーをハウジングの内部に収容し、これらハウジングと切換レバーとの間に常態保持手段としてレバー復帰バネを介在させたことを特徴とする請求項1に記載のドアロック装置。
【請求項3】
前記連係手段は、キー操作によって回転するキーシリンダと切換レバーとの間に介在するものであり、前記レバー復帰バネは、キーシリンダが備えるシリンダ復帰バネよりもバネ定数を小さく設定したものであることを特徴とする請求項2に記載のドアロック装置。
【請求項1】
切換レバーが中立位置からロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を無効化する一方、切換レバーが中立位置からアンロック位置に揺動した場合にドアハンドルによる開ドア操作を有効化するロック機構と、キー操作力をロック機構の切換レバーに伝達してこれを揺動させる連係手段とを備えたドアロック装置において、
前記連係手段にキーによる操作力が作用していない場合に前記切換レバーを中立位置に保持する常態保持手段を設けたことを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
切換レバーをハウジングの内部に収容し、これらハウジングと切換レバーとの間に常態保持手段としてレバー復帰バネを介在させたことを特徴とする請求項1に記載のドアロック装置。
【請求項3】
前記連係手段は、キー操作によって回転するキーシリンダと切換レバーとの間に介在するものであり、前記レバー復帰バネは、キーシリンダが備えるシリンダ復帰バネよりもバネ定数を小さく設定したものであることを特徴とする請求項2に記載のドアロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−233700(P2006−233700A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53358(P2005−53358)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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