ドア開閉操作装置
【課題】ドア本体から離れた位置から身を乗り出すことなく容易にドア本体の開閉操作を行うことのできるドア開閉操作装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るドア開閉操作装置は、鍵箱11に出没可能に設けられたラッチ12と係合してロック状態を維持する制御レバー26,27と、ドアハンドルの押し・引き操作に連動して制御レバー26,27とラッチ12との係合状態を解除する伝達部材28,29と、ドアハンドルとは独立した離間位置に配置されて引き下げ可能な遠隔操作用のハンドルと、ハンドルと伝達部材28,29との間に架設されたワイヤ42と、遠隔操作用のハンドルの引き下げ操作によってワイヤ42にドアハンドルによる押し・引き操作と同一の押し・引き作用を発生させる複数のローラと、を備えていることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係るドア開閉操作装置は、鍵箱11に出没可能に設けられたラッチ12と係合してロック状態を維持する制御レバー26,27と、ドアハンドルの押し・引き操作に連動して制御レバー26,27とラッチ12との係合状態を解除する伝達部材28,29と、ドアハンドルとは独立した離間位置に配置されて引き下げ可能な遠隔操作用のハンドルと、ハンドルと伝達部材28,29との間に架設されたワイヤ42と、遠隔操作用のハンドルの引き下げ操作によってワイヤ42にドアハンドルによる押し・引き操作と同一の押し・引き作用を発生させる複数のローラと、を備えていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉操作装置、特に、ドア本体に直接装着されるドアハンドルとは別に、ドア本体から離間した位置に開閉操作用のハンドルを配置したドア開閉操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドア縦縁部の一方にヒンジ機構を介して建物の出入口開口縁部に回動可能に設置されたドア本体は、ドア縦縁部の他方に配置されたドアハンドルの押し・引き操作に連動して戸先から突出したラッチによるストライクとの係合状態を解除しつつドアを開扉するドア開閉操作装置が周知である。
【0003】
また、ドア本体の一面側上部には、自動且つ緩やかにドア本体を閉扉するためのドアクローザを配置したものも周知である。このドアクローザはドアを開扉状態から閉扉状態とする際に、人手による操作や電気的な動力を用いることなくドア本体を閉扉することを目的としている。
【0004】
しかしながら、図8に示すように、車椅子Sを利用した障害者等にあっては、ドア本体1の開扉操作と車椅子Sの運転操作とを同時に行う必要がある。特に、ドア本体1が一方側にのみ回動するタイプの場合にあっては、出入り方向によってはドアハンドル2を握持したままドア本体1を引き寄せるために車椅子Sを後退させないとならず、ドア本体1の開扉操作と車椅子Sの後退操作とを同時に行うのは非常に不便であった。
【0005】
そこで、ドア本体1がある程度の回動角度(例えば、45°以上)にまで手動操作によって回動した場合には、ドア本体1が人手による操作や電気的な動力を用いることなく、ドア本体1を開扉する自動開扉機能を具備したドアクローザ3が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−002124号公報参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したドアクローザ3にあっても、ドア本体1を所定角度にまで回動させるまでは、ドア本体1に設けられたドアハンドル2を握持してドア開扉操作をしなければならず、車椅子Sを利用している人にとっては、ドア開扉操作と同時に車椅子を前進・後退操作しなければならないという不便さは依然として残っていた。
【0008】
また、ドアハンドル2はドア本体1に近接した状態でドア本体1に設けられていることから、車椅子Sの先端(足元)がドア本体1に当接する直前まで前進させたとしても、ドアハンドル2の設置高さが比較的高いことと相俟って、単に手を伸ばしただけではドアハンドル2に届かず、身を乗り出すようにしないとならないという問題も生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、ドア本体から離れた位置で身を乗り出すことなく容易にドア本体の開閉操作を行うことができ、しかも、ドア本体の開閉操作と車椅子の前進・後退操作とを同時行う手間を軽減することができるドア開閉操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鍵箱に出没可能に設けられたラッチと、前記鍵箱に設けられて前記ラッチと係合してロック状態を維持する制御レバーと、ドアハンドルの押し・引き操作に連動して前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除する伝達部材と、を備えたドア開閉操作装置において、前記ドアハンドルとは独立した離間位置に配置されて引き下げ可能な遠隔操作用のハンドルと、該ハンドルと前記伝達部材との間に架設されたワイヤと、前記遠隔操作用のハンドルの引き下げ操作によって前記ワイヤに前記ドアハンドルによる押し・引き操作と同一の押し・引き作用を発生させる複数のローラと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明のドア開閉操作装置は、ドア本体が所定角度以上に開扉している際には前記ドア本体をさらに開扉方向に回動させるドアクローザを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のドア開閉操作装置は、前記ワイヤと前記伝達部材との間に動作変換機構を備え、該動作変換機構は、前記ワイヤが枢設される水平回転可能なレバーと、該レバーの水平回転動作に伴ってスライド可能なように設けられるカムスライダーと、該カムスライダーのスライド動作に伴って昇降可能に設けられ、前記伝達部材が係合するアームと、を備え、前記遠隔操作用のハンドルを引き下げ操作すると、前記ワイヤを介して前記レバーが水平回転し、前記カムスライダーがスライドすることにより、前記アームが上昇し、前記伝達部材が前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除させるように動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のドア開閉操作装置によれば、ドア本体から離れた位置で身を乗り出すことなく容易にドア本体の開閉操作を行うことができ、しかも、ドア本体の開閉操作と車椅子の前進・後退操作とを同時行う手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用される鍵箱の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用されるドアハンドルの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア閉扉状態の要部の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア開扉状態の要部の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア完全開扉状態の要部の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示し、(A)はドア押し側のワイヤ変化の説明図、(B)はドア引き側のワイヤ変化の説明図、(C)はリンク部材の説明図である。
【図8】従来のドア開閉操作装置を示す要部の説明図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の説明図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置に適用される鍵箱の要部のみを示す断面図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の鍵箱の制御レバーを示す側面図である。
【図12】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の動作変換機構を示す平面図である。
【図13】図12のA−A断面図である。
【図14】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明のドア開閉操作装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の説明図、図2は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用される鍵箱の断面図、図3は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用されるドアハンドルの断面図、図4は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア閉扉状態の要部の説明図、図5は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア開扉状態の要部の説明図、図6は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア完全開扉状態の要部の説明図、図7は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示し、図7(A)はドア押し側のワイヤ変化の説明図、図7(B)はドア引き側のワイヤ変化の説明図、図7(C)はリンク部材の説明図である。
【0017】
図1において、建物内の出入口にヒンジ機構(図示せず)を介して回動可能に取り付けられたドア本体10には、その一方のドア縦縁部(戸先)10aに内設された鍵箱11と、鍵箱11に回動変位可能に保持されたラッチ12と、鍵箱11に設けられてドア本体10の両面で開閉を操作するドアハンドル13,14と、ドア本体10の開閉を補助するドアクローザ15と、ドア本体10から離間した位置でドアハンドル13,14とは独立してドア本体10の開閉を操作する遠隔ドアハンドル16,17と、が設置されている。
【0018】
鍵箱11は、図2に示すように、ドア縦縁部10aに固定される化粧板18と、化粧板18に重合される補強板19と、補強板19に固定される鍵箱本体20と、鍵箱本体20の内部で回動可能に支持されてその一部が鍵箱11から出没可能とされたラッチ12と、補強板19に固定されたラッチガイド21と、ラッチガイド21に固定されてラッチ12を覆うラッチ収納空間22を形成するバネ受23と、バネ受23に一端が弾接支持されたコイルバネ24と、コイルバネ24の他端が弾接してラッチ12を突出方向に付勢するラッチ受25と、バネ受23の上下に配置された制御レバー26,27と、ドアハンドル13,14の操作によって制御レバー26,27を回動させる伝達部材28,29と、一方の伝達部材28に下端が係合するアーム部材30と、を備えている。
【0019】
ラッチ12は、平面視略平行四辺形のブロック体から構成され、鍵箱11のラッチガイド21の開口21aから先端の一部が出没可能とされ、開口21aから外方に突出しているときに対向するドア開口縁部に設けられたストライク(図示せず)と係合することで閉扉状態が維持される。また、ラッチ12はラッチ収納空間22に収納され、化粧板18に垂直な前後方向(紙面左右方向)に移動可能に、かつ、ラッチ12の平行四辺形の中心軸(平行四辺形の対角線の交点を鉛直に貫通する軸)の回りを回動可能に案内されている。
【0020】
制御レバー26,27は、鍵箱11の上下に一対設けられており、略水平方向に伸びる操作アーム部26a,27aと、操作アーム部26a,27aの略中央付近から互いに接近する方向に突出して端部が重なり合う連結アーム部26b,27bと、連結アーム部26b,27bに形成された長孔27c(一方のみ図示)に係合する連結ピン31と、を備えている。また、制御レバー26,27は、バネ受23の上下面に形成されたスリット23a,23bを通って、ラッチ12に係合可能に臨んでいる。さらに、各制御レバー26,27は、鍵箱11にレバー支持軸32,33を介して回動可能に支承されている。また、一方(図示下方)のレバー支持軸33には、一対の制御レバー26,27によってラッチ12を挟みつけるように係合状態を維持するためのロックバネ34が巻装されている。これにより、ラッチ12の回動が規制され、ドア本体10の不測な開扉が阻止されている。
【0021】
ドアハンドル13,14は、図3に示すように、ドア本体10の両面に固定されたハンドルベース35,36と、ハンドルベース35,36に支持されて開閉操作する人が握持するハンドル本体37,38と、ハンドル本体37,38の操作によって回動する解除アーム39,40と、を備え、ドア本体を開扉する際のハンドル本体37,38の押し・引き操作に連動して解除アーム39,40の先端が上方に変位する。
【0022】
この解除アーム39,40の先端は、鍵箱11に形成された開口11aを貫通して伝達部材28,29の間に位置している。これにより、図1及び図3において、ドアハンドル13の場合には押し操作によって解除アーム39の先端が上方に回動変位し、ドアハンドル14の場合には引き操作によって解除アーム40の先端が上方に回動変位する。そして、解除アーム39,40が上方に変位すると、伝達部材28と一体に下端フランジ部28aが上方に変位し、制御レバー27がレバー支持軸33を回動支点としてロックバネ34の付勢に抗して回動し、制御レバー26,27とラッチ12との係合状態が解除されるようになっている。
【0023】
このようにドアハンドル13,14を押し・引き操作することにより、鍵箱11の内部の各構成部材が上記した一連の動作を行い、制御レバー26,27とラッチ12との係合が解除され、ラッチ12の回動変位が許容され、ドア本体10が開扉可能な状態となる。
【0024】
ドアクローザ15は、本出願人による特許出願(特願2006−171867)に記載されているように、ドア本体10の支持側端縁付近に突設された作動腕の先端に、突出時に緩衝される型式のスプリングダンパーのピストンの先端をリンク結合すると共に、スプリングダンパーのシリンダの基端をドア枠に揺動可能に支承した構成を有している。そして、このドアクローザ15は、人為的な開閉操作荷重が加わっていない状態では、ドア本体10が所定開扉角度(例えば、45°未満)の場合にはドア本体10を緩やかに閉扉方向に回動させ、ドア本体10が所定開扉角度(例えば、45°以上)の場合にはドア本体10を緩やかに開扉方向に回動させる。
【0025】
遠隔ドアハンドル16は、図1,図4乃至図6に示すように、ドア本体10を押す方向に開扉するように構成されており、ドア本体10から離れた建物壁面付近に位置して下方に引っ張り操作可能な押側ハンドル41と、押側ハンドル41とアーム部材30との間に架設された押側ワイヤ42と、建物に回転可能に固定された複数の建物固定押側ローラ43,44,45と、ドア本体10にブラケット46を介して回転可能に固定された複数のドア固定押側ローラ47,48,49と、を備えている。
【0026】
遠隔ドアハンドル17は、ドア本体10を引く方向に開扉するように構成されており、ドア本体10から離れた建物壁面付近に位置して下方に引っ張り操作可能な引側ハンドル50と、引側ハンドル50とアーム部材30との間に架設された引側ワイヤ51と、建物に回転可能に固定された複数の建物固定引側ローラ52,53,54と、ドア本体10に回転可能に固定された複数のドア固定引側ローラ55,56と、を備えている。
【0027】
このような構成を備えたドア開閉操作装置において、例えば、車椅子Sを利用した人がドア本体10から離れた位置から各ハンドル41,50を引き下げると、その引き下げ操作に連動してワイヤ42,51を介してアーム部材30が引き上げられることにより、伝達部材28が下端フランジ部28aと一体に上方に変位する。この伝達部材28の下端フランジ部28aの上方への変位により、制御レバー27はレバー支持軸33を回動支点としてロックバネ34の付勢に抗して回動する。この時、連結ピン31が長孔27cに案内されて変位するため、制御レバー27はこの連結ピン31の変位に連動してレバー支持軸32を回動支点として回動する。これにより、制御レバー26,27とラッチ12との係合状態が解除され、ラッチ12の回動変位が許容され、ラッチ12とストライクとの係合が解除され、図4に示すドア閉扉状態から、図5に示す開扉状態へとドア本体10を回動させることができる。
【0028】
そして、ドア本体10が所定角度(例えば、45°)以上回動するように、各ハンドル41,50が引き下げられると、ドアクローザ15の開扉作用により、図6に示すように、自動的に完全開扉状態とすることができ、車椅子Sを利用した人であっても、ドア本体10の開放操作と車椅子Sの後退操作とを同時に行うことなく、ドア開扉操作を行うことができる。
【0029】
ところで、各ハンドル41,50は、ドア本体10の開度によって、建物固定各ローラ45,54とドア固定各ローラ47(又は48),55との相対距離が変化するため、その変化に応じて上下する。したがって、図7(A)に示すように、押側の各ローラ45,47(又は48)との相対距離と、図7(B)に示すように、引側の各ローラ54,55との相対距離とは、その変化量が同じとなるように配置するのか好ましい。
【0030】
また、閉扉状態から45°の開扉状態との間での押側の各ローラ45,47(又は48)との相対距離及び引側の各ローラ54,55との相対距離は、完全開扉状態と45°の開扉状態との間での押側の各ローラ45,47(又は48)との相対距離及び引側の各ローラ54,55との相対距離と同じとするのが好ましい。
【0031】
また、各ハンドル41,50は、その中間地点である45°付近で最下位置にあり、その前後の開扉位置及び閉扉位置では、それより上方の位置にある。したがって、ドア本体10が完全開扉状態にあるときでも、各ハンドル41,50を引き下げることにより、ドア本体10がドアクローザ15の開扉方向の付勢に抗して閉扉方向に回動し、ドア本体10が45°未満の位置にまで手動で閉扉操作されると、それ以降はドアクローザ15の閉扉方向への引き寄せ作用によってドア本体10を閉扉状態とすることができる。
【0032】
なお、遠隔操作ハンドル16,17によるドア本体10の開閉操作のための引き下げ量はアーム部材30による伝達部材28の押し上げ量に比べてはるかに大きいことから、この差を対比して、図7(C)に示すように、回動軸57の位置を対比量に合わせた位置としたリンク部材58をドア本体10の内部に設けるのが好ましい。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態に係るドア開閉操作装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明のドア開閉操作装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【0034】
図9は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の説明図、図10は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置に適用される鍵箱の要部のみを示す断面図、図11は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の鍵箱の制御レバーを示す側面図、図12は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の動作変換機構を示す平面図、図13は図12のA−A断面図、図14は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の作用を示す説明図である。
【0035】
図9において、建物内の出入口にヒンジ機構(図示せず)を介して回動可能に取り付けられたドア本体60には、その一方のドア縦縁部(戸先)60aに内設された鍵箱61と、鍵箱61に回動変位可能に保持されたラッチ62と、鍵箱61に設けられてドア本体60の両面で開閉を操作するドアハンドル63,64と、ドア本体60の開閉を補助するドアクローザ65と、ドア本体60から離間した位置でドアハンドル63,64とは独立してドア本体60の開閉を操作する遠隔操作手段66と、が設置されている。
【0036】
鍵箱61は、図10に示すように、鍵箱本体67の内部で回動可能に支持されてその一部が鍵箱本体67から出没可能とされたラッチ62と、ラッチ62に係合可能且つ鉛直方向に回転可能に設けられた制御レバー68と、制御レバー68をラッチ62側に付勢するロックバネ69と、制御レバー68に係合可能且つ鉛直方向に回転可能に設けられた伝達部材70と、を備えている。
【0037】
ラッチ62は、平面視略平行四辺形のブロック体から構成され、鍵箱本体67の外方に突出しているときに対向するドア開口縁部に設けられたストライク(図示せず)と係合することで閉鎖状態が維持される。
【0038】
制御レバー68は、制御レバー支持軸71を挟んで、一端側に形成されたラッチ62に係合するラッチ係合部72と、他端側に形成された伝達部材70が係合する伝達部材係合部73とを備えており、伝達部材係合部73は、図11に示されているように、直角に屈曲して水平に形成されている。
【0039】
伝達部材70は、伝達部材支持軸74を挟んで、一端側に形成された制御レバー68に係合する制御レバー係合部75と、鍵箱本体67の外部に突出するアーム係合部76とを備えて構成されている。
【0040】
なお、ドアハンドル63,64、及びドアクローザ65は、上記した一実施形態に係るドア開閉操作装置の場合と同様の構成を有しているため、ここでの説明は省略する。
【0041】
遠隔操作手段66は、ドア本体60を引く方向に開放するように構成されており、ドア本体60に設けられた動作変換機構77と、ドア本体60の閉鎖位置を挟んでそれぞれ反対側に吊設された第1ハンドル78及び第2ハンドル79と、動作変換機構77と第1ハンドル78との間に設けられた第1ワイヤ80と、動作変換機構77と第2ハンドル79との間に設けられた第2ワイヤ81と、を備えて構成されている。
【0042】
動作変換機構77は、第1ワイヤ80及び第2ワイヤ81がそれぞれ枢設される水平回転可能なレバー82と、レバー82の水平回転動作に伴ってスライド可能なように設けられた一方のカムスライダー83aと、一方(図示左側)のカムスライダー83aに対向する位置に固定された他方のカムスライダー83bと、一方のカムスライダー83aのスライド動作に伴って昇降可能に設けられたアーム85と、アーム85の昇降動作を案内するアームガイド86とを備えて構成されている。
【0043】
レバー82は、平板形状を成し、レバー82の一端部には、略円筒形状のワイヤ支持具87が上下に貫挿されており、レバー82の上下において第1ワイヤ80及び第2ワイヤ81の各端部がワイヤ支持具87にそれぞれ枢設されている。また、レバー82のレバー支持軸88を挟んでレバー82の一端部の反対側の他端部には、ピン89が下方に突出するように取り付けられている。
【0044】
各カムスライダー83a,83bは、左右対称形状を有し、各カムスライダー83a,83bの遠端部にはスライド方向に直交する方向に溝部90a,90bがそれぞれ形成されており、一方のカムスライダー83aの溝部90aにレバー82のピン89が係合している。また、各カムスライダー83a,83bには、それぞれ近接方向に向かって下傾する傾斜面91a,91bが形成されている。さらに、各カムスライダー83a,83bの近端部には、半円柱形状の軸部92a,92bが突設されており、各カムスライダー83a,83bが近接方向にスライドして軸部92a,92bが重合すると、円柱形状を成すようになっている。そして、各軸部92a,92bには、コイルバネ93が周設されており、このコイルバネ93により一方のカムスライダー83aが他方のカムスライダー83bから離間する方向に付勢されている。
【0045】
なお、製造上の都合等により、他方のカムスライダー83bにも一方のカムスライダー83aと同様に、溝部90b、傾斜面91b、及び軸部92bが形成されているが、これらは必ずしも形成されていなくてもよい。また、この場合、他方のカムスライダー83bは固定されているが、一方のカムスライダー83aのスライド動作に合わせて各カムスライダー83a,83bが互いに近接離間方向にスライドするように構成してもよい。
【0046】
アーム85は、板状部材を縦長に屈曲して形成させたアーム本体フレーム94と、アーム本体フレーム94の上端部に嵌合される直方体形状のアームブロック体95とにより構成されている。アーム本体フレーム94の上端部には縦長の長孔96が形成され、アームブロック体95には長孔96に対応する位置にネジ孔97が形成されており、これにより、アーム本体フレーム94に対するアームブロック体95の上下方向の取り付け位置が調整可能となっている。また、アーム本体フレーム94の下端部には、角孔98が形成されており、この角孔98に伝達部材係合部73が鉛直方向に回転可能に係合している。
【0047】
第1ワイヤ80は、一端が第1ハンドル78に接続され、ローラ99,100及びローラ群101,102を介して、他端がレバー82のワイヤ支持具87の上端部に接続されている。また、第2ワイヤ81は、一端が第2ハンドル79に接続され、ローラ103及びローラ群101,102を介して、他端がレバー82のワイヤ支持具87の下端部に接続されている。
【0048】
このような構成を備えたドア開閉操作装置において、例えば、車椅子を利用した人がドア本体60から離れた位置において第1ハンドル78又は第2ハンドル79を引き下げると、その引き下げ操作に連動して、第1ワイヤ80又は第2ワイヤ81を介してレバー82がレバー支持軸88を支点に水平回転する。図12において二点鎖線で示すように、このレバー82の水平回転に伴い、ピン89が溝部90aに沿ってスライドし、一方(図12では左側)のカムスライダー83aが他方(図12では右側)のカムスライダー83b側にスライドすることにより、アームブロック体95がカムスライダー83aの傾斜面91aによって持ち上げられ、アーム85はアームガイド86に案内されて鉛直方向に上昇する。
【0049】
このようにアーム85が上昇することに伴い、伝達部材70は伝達部材支持軸74を支点として(図10の反時計回り方向に)回転する。そして、この伝達部材70の回転により、制御レバー68はレバー支持軸71を支点としてロックバネ69の付勢に抗して(図10の時計回り方向に)回転する。これにより、制御レバー68のラッチ係合部72とラッチ62との係合状態が解除され、ラッチ62の回動変位が許容され、ラッチ62とストライクとの係合が解除され、図14に示すように、ドア本体60を閉鎖状態(図14の実線部分参照)から開放状態(図14の二点鎖線部分参照)へと回動させることができる。
【0050】
そして、ドア本体60が所定角度(例えば、45°)以上回動するように、第1ハンドル78又は第2ハンドル79が引き下げられると、ドアクローザ65の開扉作用により、自動的にドア本体60は完全に開放された状態となり、車椅子を利用した人であっても、ドア本体60の開放操作と車椅子の後退操作とを同時に行うことなく、ドア開放操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
S…車椅子
10…ドア本体
10a…ドア縦縁部
11…鍵箱
12…ラッチ
13…ドアハンドル(押側)
14…ドアハンドル(引側)
15…ドアクローザ
16…遠隔ドアハンドル(押側)
17…遠隔ドアハンドル(引側)
26…制御レバー
27…制御レバー
28…伝達部材
29…伝達部材
30…アーム部材
41…押側ハンドル
50…引側ハンドル
61…鍵箱
62…ラッチ
68…制御レバー
70…伝達部材
78…動作変換機構
80…第1ワイヤ
81…第2ワイヤ
82…レバー
83a…カムスライダー
85…アーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉操作装置、特に、ドア本体に直接装着されるドアハンドルとは別に、ドア本体から離間した位置に開閉操作用のハンドルを配置したドア開閉操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドア縦縁部の一方にヒンジ機構を介して建物の出入口開口縁部に回動可能に設置されたドア本体は、ドア縦縁部の他方に配置されたドアハンドルの押し・引き操作に連動して戸先から突出したラッチによるストライクとの係合状態を解除しつつドアを開扉するドア開閉操作装置が周知である。
【0003】
また、ドア本体の一面側上部には、自動且つ緩やかにドア本体を閉扉するためのドアクローザを配置したものも周知である。このドアクローザはドアを開扉状態から閉扉状態とする際に、人手による操作や電気的な動力を用いることなくドア本体を閉扉することを目的としている。
【0004】
しかしながら、図8に示すように、車椅子Sを利用した障害者等にあっては、ドア本体1の開扉操作と車椅子Sの運転操作とを同時に行う必要がある。特に、ドア本体1が一方側にのみ回動するタイプの場合にあっては、出入り方向によってはドアハンドル2を握持したままドア本体1を引き寄せるために車椅子Sを後退させないとならず、ドア本体1の開扉操作と車椅子Sの後退操作とを同時に行うのは非常に不便であった。
【0005】
そこで、ドア本体1がある程度の回動角度(例えば、45°以上)にまで手動操作によって回動した場合には、ドア本体1が人手による操作や電気的な動力を用いることなく、ドア本体1を開扉する自動開扉機能を具備したドアクローザ3が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−002124号公報参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したドアクローザ3にあっても、ドア本体1を所定角度にまで回動させるまでは、ドア本体1に設けられたドアハンドル2を握持してドア開扉操作をしなければならず、車椅子Sを利用している人にとっては、ドア開扉操作と同時に車椅子を前進・後退操作しなければならないという不便さは依然として残っていた。
【0008】
また、ドアハンドル2はドア本体1に近接した状態でドア本体1に設けられていることから、車椅子Sの先端(足元)がドア本体1に当接する直前まで前進させたとしても、ドアハンドル2の設置高さが比較的高いことと相俟って、単に手を伸ばしただけではドアハンドル2に届かず、身を乗り出すようにしないとならないという問題も生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、ドア本体から離れた位置で身を乗り出すことなく容易にドア本体の開閉操作を行うことができ、しかも、ドア本体の開閉操作と車椅子の前進・後退操作とを同時行う手間を軽減することができるドア開閉操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鍵箱に出没可能に設けられたラッチと、前記鍵箱に設けられて前記ラッチと係合してロック状態を維持する制御レバーと、ドアハンドルの押し・引き操作に連動して前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除する伝達部材と、を備えたドア開閉操作装置において、前記ドアハンドルとは独立した離間位置に配置されて引き下げ可能な遠隔操作用のハンドルと、該ハンドルと前記伝達部材との間に架設されたワイヤと、前記遠隔操作用のハンドルの引き下げ操作によって前記ワイヤに前記ドアハンドルによる押し・引き操作と同一の押し・引き作用を発生させる複数のローラと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明のドア開閉操作装置は、ドア本体が所定角度以上に開扉している際には前記ドア本体をさらに開扉方向に回動させるドアクローザを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のドア開閉操作装置は、前記ワイヤと前記伝達部材との間に動作変換機構を備え、該動作変換機構は、前記ワイヤが枢設される水平回転可能なレバーと、該レバーの水平回転動作に伴ってスライド可能なように設けられるカムスライダーと、該カムスライダーのスライド動作に伴って昇降可能に設けられ、前記伝達部材が係合するアームと、を備え、前記遠隔操作用のハンドルを引き下げ操作すると、前記ワイヤを介して前記レバーが水平回転し、前記カムスライダーがスライドすることにより、前記アームが上昇し、前記伝達部材が前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除させるように動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のドア開閉操作装置によれば、ドア本体から離れた位置で身を乗り出すことなく容易にドア本体の開閉操作を行うことができ、しかも、ドア本体の開閉操作と車椅子の前進・後退操作とを同時行う手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用される鍵箱の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用されるドアハンドルの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア閉扉状態の要部の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア開扉状態の要部の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア完全開扉状態の要部の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示し、(A)はドア押し側のワイヤ変化の説明図、(B)はドア引き側のワイヤ変化の説明図、(C)はリンク部材の説明図である。
【図8】従来のドア開閉操作装置を示す要部の説明図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の説明図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置に適用される鍵箱の要部のみを示す断面図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の鍵箱の制御レバーを示す側面図である。
【図12】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の動作変換機構を示す平面図である。
【図13】図12のA−A断面図である。
【図14】本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明のドア開閉操作装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の説明図、図2は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用される鍵箱の断面図、図3は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置に適用されるドアハンドルの断面図、図4は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア閉扉状態の要部の説明図、図5は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア開扉状態の要部の説明図、図6は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示すドア完全開扉状態の要部の説明図、図7は本発明の一実施形態に係るドア開閉操作装置の作用を示し、図7(A)はドア押し側のワイヤ変化の説明図、図7(B)はドア引き側のワイヤ変化の説明図、図7(C)はリンク部材の説明図である。
【0017】
図1において、建物内の出入口にヒンジ機構(図示せず)を介して回動可能に取り付けられたドア本体10には、その一方のドア縦縁部(戸先)10aに内設された鍵箱11と、鍵箱11に回動変位可能に保持されたラッチ12と、鍵箱11に設けられてドア本体10の両面で開閉を操作するドアハンドル13,14と、ドア本体10の開閉を補助するドアクローザ15と、ドア本体10から離間した位置でドアハンドル13,14とは独立してドア本体10の開閉を操作する遠隔ドアハンドル16,17と、が設置されている。
【0018】
鍵箱11は、図2に示すように、ドア縦縁部10aに固定される化粧板18と、化粧板18に重合される補強板19と、補強板19に固定される鍵箱本体20と、鍵箱本体20の内部で回動可能に支持されてその一部が鍵箱11から出没可能とされたラッチ12と、補強板19に固定されたラッチガイド21と、ラッチガイド21に固定されてラッチ12を覆うラッチ収納空間22を形成するバネ受23と、バネ受23に一端が弾接支持されたコイルバネ24と、コイルバネ24の他端が弾接してラッチ12を突出方向に付勢するラッチ受25と、バネ受23の上下に配置された制御レバー26,27と、ドアハンドル13,14の操作によって制御レバー26,27を回動させる伝達部材28,29と、一方の伝達部材28に下端が係合するアーム部材30と、を備えている。
【0019】
ラッチ12は、平面視略平行四辺形のブロック体から構成され、鍵箱11のラッチガイド21の開口21aから先端の一部が出没可能とされ、開口21aから外方に突出しているときに対向するドア開口縁部に設けられたストライク(図示せず)と係合することで閉扉状態が維持される。また、ラッチ12はラッチ収納空間22に収納され、化粧板18に垂直な前後方向(紙面左右方向)に移動可能に、かつ、ラッチ12の平行四辺形の中心軸(平行四辺形の対角線の交点を鉛直に貫通する軸)の回りを回動可能に案内されている。
【0020】
制御レバー26,27は、鍵箱11の上下に一対設けられており、略水平方向に伸びる操作アーム部26a,27aと、操作アーム部26a,27aの略中央付近から互いに接近する方向に突出して端部が重なり合う連結アーム部26b,27bと、連結アーム部26b,27bに形成された長孔27c(一方のみ図示)に係合する連結ピン31と、を備えている。また、制御レバー26,27は、バネ受23の上下面に形成されたスリット23a,23bを通って、ラッチ12に係合可能に臨んでいる。さらに、各制御レバー26,27は、鍵箱11にレバー支持軸32,33を介して回動可能に支承されている。また、一方(図示下方)のレバー支持軸33には、一対の制御レバー26,27によってラッチ12を挟みつけるように係合状態を維持するためのロックバネ34が巻装されている。これにより、ラッチ12の回動が規制され、ドア本体10の不測な開扉が阻止されている。
【0021】
ドアハンドル13,14は、図3に示すように、ドア本体10の両面に固定されたハンドルベース35,36と、ハンドルベース35,36に支持されて開閉操作する人が握持するハンドル本体37,38と、ハンドル本体37,38の操作によって回動する解除アーム39,40と、を備え、ドア本体を開扉する際のハンドル本体37,38の押し・引き操作に連動して解除アーム39,40の先端が上方に変位する。
【0022】
この解除アーム39,40の先端は、鍵箱11に形成された開口11aを貫通して伝達部材28,29の間に位置している。これにより、図1及び図3において、ドアハンドル13の場合には押し操作によって解除アーム39の先端が上方に回動変位し、ドアハンドル14の場合には引き操作によって解除アーム40の先端が上方に回動変位する。そして、解除アーム39,40が上方に変位すると、伝達部材28と一体に下端フランジ部28aが上方に変位し、制御レバー27がレバー支持軸33を回動支点としてロックバネ34の付勢に抗して回動し、制御レバー26,27とラッチ12との係合状態が解除されるようになっている。
【0023】
このようにドアハンドル13,14を押し・引き操作することにより、鍵箱11の内部の各構成部材が上記した一連の動作を行い、制御レバー26,27とラッチ12との係合が解除され、ラッチ12の回動変位が許容され、ドア本体10が開扉可能な状態となる。
【0024】
ドアクローザ15は、本出願人による特許出願(特願2006−171867)に記載されているように、ドア本体10の支持側端縁付近に突設された作動腕の先端に、突出時に緩衝される型式のスプリングダンパーのピストンの先端をリンク結合すると共に、スプリングダンパーのシリンダの基端をドア枠に揺動可能に支承した構成を有している。そして、このドアクローザ15は、人為的な開閉操作荷重が加わっていない状態では、ドア本体10が所定開扉角度(例えば、45°未満)の場合にはドア本体10を緩やかに閉扉方向に回動させ、ドア本体10が所定開扉角度(例えば、45°以上)の場合にはドア本体10を緩やかに開扉方向に回動させる。
【0025】
遠隔ドアハンドル16は、図1,図4乃至図6に示すように、ドア本体10を押す方向に開扉するように構成されており、ドア本体10から離れた建物壁面付近に位置して下方に引っ張り操作可能な押側ハンドル41と、押側ハンドル41とアーム部材30との間に架設された押側ワイヤ42と、建物に回転可能に固定された複数の建物固定押側ローラ43,44,45と、ドア本体10にブラケット46を介して回転可能に固定された複数のドア固定押側ローラ47,48,49と、を備えている。
【0026】
遠隔ドアハンドル17は、ドア本体10を引く方向に開扉するように構成されており、ドア本体10から離れた建物壁面付近に位置して下方に引っ張り操作可能な引側ハンドル50と、引側ハンドル50とアーム部材30との間に架設された引側ワイヤ51と、建物に回転可能に固定された複数の建物固定引側ローラ52,53,54と、ドア本体10に回転可能に固定された複数のドア固定引側ローラ55,56と、を備えている。
【0027】
このような構成を備えたドア開閉操作装置において、例えば、車椅子Sを利用した人がドア本体10から離れた位置から各ハンドル41,50を引き下げると、その引き下げ操作に連動してワイヤ42,51を介してアーム部材30が引き上げられることにより、伝達部材28が下端フランジ部28aと一体に上方に変位する。この伝達部材28の下端フランジ部28aの上方への変位により、制御レバー27はレバー支持軸33を回動支点としてロックバネ34の付勢に抗して回動する。この時、連結ピン31が長孔27cに案内されて変位するため、制御レバー27はこの連結ピン31の変位に連動してレバー支持軸32を回動支点として回動する。これにより、制御レバー26,27とラッチ12との係合状態が解除され、ラッチ12の回動変位が許容され、ラッチ12とストライクとの係合が解除され、図4に示すドア閉扉状態から、図5に示す開扉状態へとドア本体10を回動させることができる。
【0028】
そして、ドア本体10が所定角度(例えば、45°)以上回動するように、各ハンドル41,50が引き下げられると、ドアクローザ15の開扉作用により、図6に示すように、自動的に完全開扉状態とすることができ、車椅子Sを利用した人であっても、ドア本体10の開放操作と車椅子Sの後退操作とを同時に行うことなく、ドア開扉操作を行うことができる。
【0029】
ところで、各ハンドル41,50は、ドア本体10の開度によって、建物固定各ローラ45,54とドア固定各ローラ47(又は48),55との相対距離が変化するため、その変化に応じて上下する。したがって、図7(A)に示すように、押側の各ローラ45,47(又は48)との相対距離と、図7(B)に示すように、引側の各ローラ54,55との相対距離とは、その変化量が同じとなるように配置するのか好ましい。
【0030】
また、閉扉状態から45°の開扉状態との間での押側の各ローラ45,47(又は48)との相対距離及び引側の各ローラ54,55との相対距離は、完全開扉状態と45°の開扉状態との間での押側の各ローラ45,47(又は48)との相対距離及び引側の各ローラ54,55との相対距離と同じとするのが好ましい。
【0031】
また、各ハンドル41,50は、その中間地点である45°付近で最下位置にあり、その前後の開扉位置及び閉扉位置では、それより上方の位置にある。したがって、ドア本体10が完全開扉状態にあるときでも、各ハンドル41,50を引き下げることにより、ドア本体10がドアクローザ15の開扉方向の付勢に抗して閉扉方向に回動し、ドア本体10が45°未満の位置にまで手動で閉扉操作されると、それ以降はドアクローザ15の閉扉方向への引き寄せ作用によってドア本体10を閉扉状態とすることができる。
【0032】
なお、遠隔操作ハンドル16,17によるドア本体10の開閉操作のための引き下げ量はアーム部材30による伝達部材28の押し上げ量に比べてはるかに大きいことから、この差を対比して、図7(C)に示すように、回動軸57の位置を対比量に合わせた位置としたリンク部材58をドア本体10の内部に設けるのが好ましい。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態に係るドア開閉操作装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明のドア開閉操作装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【0034】
図9は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の説明図、図10は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置に適用される鍵箱の要部のみを示す断面図、図11は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の鍵箱の制御レバーを示す側面図、図12は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の動作変換機構を示す平面図、図13は図12のA−A断面図、図14は本発明の別の実施形態に係るドア開閉装置の作用を示す説明図である。
【0035】
図9において、建物内の出入口にヒンジ機構(図示せず)を介して回動可能に取り付けられたドア本体60には、その一方のドア縦縁部(戸先)60aに内設された鍵箱61と、鍵箱61に回動変位可能に保持されたラッチ62と、鍵箱61に設けられてドア本体60の両面で開閉を操作するドアハンドル63,64と、ドア本体60の開閉を補助するドアクローザ65と、ドア本体60から離間した位置でドアハンドル63,64とは独立してドア本体60の開閉を操作する遠隔操作手段66と、が設置されている。
【0036】
鍵箱61は、図10に示すように、鍵箱本体67の内部で回動可能に支持されてその一部が鍵箱本体67から出没可能とされたラッチ62と、ラッチ62に係合可能且つ鉛直方向に回転可能に設けられた制御レバー68と、制御レバー68をラッチ62側に付勢するロックバネ69と、制御レバー68に係合可能且つ鉛直方向に回転可能に設けられた伝達部材70と、を備えている。
【0037】
ラッチ62は、平面視略平行四辺形のブロック体から構成され、鍵箱本体67の外方に突出しているときに対向するドア開口縁部に設けられたストライク(図示せず)と係合することで閉鎖状態が維持される。
【0038】
制御レバー68は、制御レバー支持軸71を挟んで、一端側に形成されたラッチ62に係合するラッチ係合部72と、他端側に形成された伝達部材70が係合する伝達部材係合部73とを備えており、伝達部材係合部73は、図11に示されているように、直角に屈曲して水平に形成されている。
【0039】
伝達部材70は、伝達部材支持軸74を挟んで、一端側に形成された制御レバー68に係合する制御レバー係合部75と、鍵箱本体67の外部に突出するアーム係合部76とを備えて構成されている。
【0040】
なお、ドアハンドル63,64、及びドアクローザ65は、上記した一実施形態に係るドア開閉操作装置の場合と同様の構成を有しているため、ここでの説明は省略する。
【0041】
遠隔操作手段66は、ドア本体60を引く方向に開放するように構成されており、ドア本体60に設けられた動作変換機構77と、ドア本体60の閉鎖位置を挟んでそれぞれ反対側に吊設された第1ハンドル78及び第2ハンドル79と、動作変換機構77と第1ハンドル78との間に設けられた第1ワイヤ80と、動作変換機構77と第2ハンドル79との間に設けられた第2ワイヤ81と、を備えて構成されている。
【0042】
動作変換機構77は、第1ワイヤ80及び第2ワイヤ81がそれぞれ枢設される水平回転可能なレバー82と、レバー82の水平回転動作に伴ってスライド可能なように設けられた一方のカムスライダー83aと、一方(図示左側)のカムスライダー83aに対向する位置に固定された他方のカムスライダー83bと、一方のカムスライダー83aのスライド動作に伴って昇降可能に設けられたアーム85と、アーム85の昇降動作を案内するアームガイド86とを備えて構成されている。
【0043】
レバー82は、平板形状を成し、レバー82の一端部には、略円筒形状のワイヤ支持具87が上下に貫挿されており、レバー82の上下において第1ワイヤ80及び第2ワイヤ81の各端部がワイヤ支持具87にそれぞれ枢設されている。また、レバー82のレバー支持軸88を挟んでレバー82の一端部の反対側の他端部には、ピン89が下方に突出するように取り付けられている。
【0044】
各カムスライダー83a,83bは、左右対称形状を有し、各カムスライダー83a,83bの遠端部にはスライド方向に直交する方向に溝部90a,90bがそれぞれ形成されており、一方のカムスライダー83aの溝部90aにレバー82のピン89が係合している。また、各カムスライダー83a,83bには、それぞれ近接方向に向かって下傾する傾斜面91a,91bが形成されている。さらに、各カムスライダー83a,83bの近端部には、半円柱形状の軸部92a,92bが突設されており、各カムスライダー83a,83bが近接方向にスライドして軸部92a,92bが重合すると、円柱形状を成すようになっている。そして、各軸部92a,92bには、コイルバネ93が周設されており、このコイルバネ93により一方のカムスライダー83aが他方のカムスライダー83bから離間する方向に付勢されている。
【0045】
なお、製造上の都合等により、他方のカムスライダー83bにも一方のカムスライダー83aと同様に、溝部90b、傾斜面91b、及び軸部92bが形成されているが、これらは必ずしも形成されていなくてもよい。また、この場合、他方のカムスライダー83bは固定されているが、一方のカムスライダー83aのスライド動作に合わせて各カムスライダー83a,83bが互いに近接離間方向にスライドするように構成してもよい。
【0046】
アーム85は、板状部材を縦長に屈曲して形成させたアーム本体フレーム94と、アーム本体フレーム94の上端部に嵌合される直方体形状のアームブロック体95とにより構成されている。アーム本体フレーム94の上端部には縦長の長孔96が形成され、アームブロック体95には長孔96に対応する位置にネジ孔97が形成されており、これにより、アーム本体フレーム94に対するアームブロック体95の上下方向の取り付け位置が調整可能となっている。また、アーム本体フレーム94の下端部には、角孔98が形成されており、この角孔98に伝達部材係合部73が鉛直方向に回転可能に係合している。
【0047】
第1ワイヤ80は、一端が第1ハンドル78に接続され、ローラ99,100及びローラ群101,102を介して、他端がレバー82のワイヤ支持具87の上端部に接続されている。また、第2ワイヤ81は、一端が第2ハンドル79に接続され、ローラ103及びローラ群101,102を介して、他端がレバー82のワイヤ支持具87の下端部に接続されている。
【0048】
このような構成を備えたドア開閉操作装置において、例えば、車椅子を利用した人がドア本体60から離れた位置において第1ハンドル78又は第2ハンドル79を引き下げると、その引き下げ操作に連動して、第1ワイヤ80又は第2ワイヤ81を介してレバー82がレバー支持軸88を支点に水平回転する。図12において二点鎖線で示すように、このレバー82の水平回転に伴い、ピン89が溝部90aに沿ってスライドし、一方(図12では左側)のカムスライダー83aが他方(図12では右側)のカムスライダー83b側にスライドすることにより、アームブロック体95がカムスライダー83aの傾斜面91aによって持ち上げられ、アーム85はアームガイド86に案内されて鉛直方向に上昇する。
【0049】
このようにアーム85が上昇することに伴い、伝達部材70は伝達部材支持軸74を支点として(図10の反時計回り方向に)回転する。そして、この伝達部材70の回転により、制御レバー68はレバー支持軸71を支点としてロックバネ69の付勢に抗して(図10の時計回り方向に)回転する。これにより、制御レバー68のラッチ係合部72とラッチ62との係合状態が解除され、ラッチ62の回動変位が許容され、ラッチ62とストライクとの係合が解除され、図14に示すように、ドア本体60を閉鎖状態(図14の実線部分参照)から開放状態(図14の二点鎖線部分参照)へと回動させることができる。
【0050】
そして、ドア本体60が所定角度(例えば、45°)以上回動するように、第1ハンドル78又は第2ハンドル79が引き下げられると、ドアクローザ65の開扉作用により、自動的にドア本体60は完全に開放された状態となり、車椅子を利用した人であっても、ドア本体60の開放操作と車椅子の後退操作とを同時に行うことなく、ドア開放操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
S…車椅子
10…ドア本体
10a…ドア縦縁部
11…鍵箱
12…ラッチ
13…ドアハンドル(押側)
14…ドアハンドル(引側)
15…ドアクローザ
16…遠隔ドアハンドル(押側)
17…遠隔ドアハンドル(引側)
26…制御レバー
27…制御レバー
28…伝達部材
29…伝達部材
30…アーム部材
41…押側ハンドル
50…引側ハンドル
61…鍵箱
62…ラッチ
68…制御レバー
70…伝達部材
78…動作変換機構
80…第1ワイヤ
81…第2ワイヤ
82…レバー
83a…カムスライダー
85…アーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵箱に出没可能に設けられたラッチと、前記鍵箱に設けられて前記ラッチと係合してロック状態を維持する制御レバーと、ドアハンドルの押し・引き操作に連動して前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除する伝達部材と、を備えたドア開閉操作装置において、
前記ドアハンドルとは独立した離間位置に配置されて引き下げ可能な遠隔操作用のハンドルと、該ハンドルと前記伝達部材との間に架設されたワイヤと、前記遠隔操作用のハンドルの引き下げ操作によって前記ワイヤに前記ドアハンドルによる押し・引き操作と同一の押し・引き作用を発生させる複数のローラと、を備えていることを特徴とするドア開閉操作装置。
【請求項2】
ドア本体が所定角度以上に開扉している際には前記ドア本体をさらに開扉方向に回動させるドアクローザを備えていることを特徴とするドア開閉操作装置。
【請求項3】
前記ワイヤと前記伝達部材との間に動作変換機構を備え、該動作変換機構は、
前記ワイヤが枢設される水平回転可能なレバーと、
該レバーの水平回転動作に伴ってスライド可能なように設けられるカムスライダーと、
該カムスライダーのスライド動作に伴って昇降可能に設けられ、前記伝達部材が係合するアームと、
を備え、前記遠隔操作用のハンドルを引き下げ操作すると、前記ワイヤを介して前記レバーが水平回転し、前記カムスライダーがスライドすることにより、前記アームが上昇し、前記伝達部材が前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除させるように動作することを特徴とする請求項1又は2に記載のドア開閉操作装置。
【請求項1】
鍵箱に出没可能に設けられたラッチと、前記鍵箱に設けられて前記ラッチと係合してロック状態を維持する制御レバーと、ドアハンドルの押し・引き操作に連動して前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除する伝達部材と、を備えたドア開閉操作装置において、
前記ドアハンドルとは独立した離間位置に配置されて引き下げ可能な遠隔操作用のハンドルと、該ハンドルと前記伝達部材との間に架設されたワイヤと、前記遠隔操作用のハンドルの引き下げ操作によって前記ワイヤに前記ドアハンドルによる押し・引き操作と同一の押し・引き作用を発生させる複数のローラと、を備えていることを特徴とするドア開閉操作装置。
【請求項2】
ドア本体が所定角度以上に開扉している際には前記ドア本体をさらに開扉方向に回動させるドアクローザを備えていることを特徴とするドア開閉操作装置。
【請求項3】
前記ワイヤと前記伝達部材との間に動作変換機構を備え、該動作変換機構は、
前記ワイヤが枢設される水平回転可能なレバーと、
該レバーの水平回転動作に伴ってスライド可能なように設けられるカムスライダーと、
該カムスライダーのスライド動作に伴って昇降可能に設けられ、前記伝達部材が係合するアームと、
を備え、前記遠隔操作用のハンドルを引き下げ操作すると、前記ワイヤを介して前記レバーが水平回転し、前記カムスライダーがスライドすることにより、前記アームが上昇し、前記伝達部材が前記制御レバーと前記ラッチとの係合状態を解除させるように動作することを特徴とする請求項1又は2に記載のドア開閉操作装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−226242(P2011−226242A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213431(P2010−213431)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】
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