説明

ドキュメント処理装置

【課題】 複数のスタッフが共同でドキュメントを作成する作業を支援できるドキュメント処理装置を提供する。
【解決手段】 処理対象となった複数ページのドキュメントについて、対象部分を特定する情報と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れ、当該入力された各関連情報に含まれる宛先情報を抽出し、抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページをドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成して、当該生成した部分ドキュメントと、関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信するドキュメント処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドキュメントの共同制作作業を支援するドキュメント処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
書籍を始めとする印刷物等、近年の多くのドキュメントは、複数のスタッフの共同作業によって作成されている。例えば、カメラマンが撮影した写真と、ライターが記述した文章とをデザイナがレイアウトし、さらにカットなどを描き添えて、原稿を作成する。また、編集者が当該原稿を確認し、修正を要する部分があれば、原稿に赤色のペンで修正依頼を描き加えてカメラマンやライター、デザイナなどに戻して修正依頼を行うことになっている。
【0003】
従来、ここで赤色のペン入れ(いわゆる「赤入れ」)を行った原稿をライターなどに戻す作業は、ファクシミリなどを利用して行われていた。また、近年では原稿を電子的に例えば電子メールなどを用いて授受する、いわゆるリモートプルーフも試みられている。
【特許文献1】特開平09−153911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の赤入れの方法では、修正依頼の数が多くなると、赤入れ済みのドキュメントを受け入れたライターやデザイナの側で、修正依頼を見落とす可能性が高くなる。特に、編集者は原稿全体をチェックするため、ライターやデザイナなど、各担当者ごとの修正依頼を記述するのではなく、すべての修正依頼を記述してしまう。
【0005】
つまり、ライター側で受け取った赤入れ後の原稿には、デザイナ向けの修正依頼も含まれているのである。さらに編集者は、原稿の量が多くなるほど、どの担当者の分を修正したのかを把握することが困難になり、例えばデザイナ向けの修正がなくても、デザイナに赤入れ後の原稿を配信してしまうなどの場合も生じていた。この場合、赤入れ後の原稿を受領したデザイナは、自己担当分の修正個所がないことを一々確認しなければならず、利便性が低い。
【0006】
そこで例えば、修正依頼自体を別の用紙に書き出して、各担当者ごとに分類して記述できるのであれば、特許文献1に開示されているような技術(宛先ごとに内容の異なる電子メールを送信するための技術)を利用できる可能性もある。しかしながら、赤入れは、原稿上のレイアウトについての修正依頼までも含むものであるから、個々の修正を別の用紙に書き出せば済むというものでもない。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、赤入れなど、複数のスタッフが共同でドキュメントを作成する作業を支援できるドキュメント処理装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ドキュメント処理装置であって、処理対象となった複数ページのドキュメントについて、対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れる手段と、前記入力された各関連情報に、その宛先となる宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を抽出する宛先抽出手段と、前記抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成手段と、前記生成した部分ドキュメントと、前記関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信する送信制御手段と、を含むことを特徴としている。
【0009】
ここで前記送信制御手段は、宛先情報ごとに生成された部分ドキュメントを送信する際に、当該部分ドキュメントに対応する宛先情報を含む関連情報を選択して送信することとしてもよい。
【0010】
また、前記部分ドキュメント生成手段は、前記抽出したページのうち、各ページに含まれる関連情報の対象部分以外の部分を隠蔽して、前記部分ドキュメントを生成することとしてもよい。さらに、この場合、前記隠蔽した対象部分以外の部分の送信要求を受け入れて、当該隠蔽した対象部分以外の部分を送信する手段を含むこととしてもよい。
【0011】
さらに、部分ドキュメントの送信先から部分ドキュメントに含まれていない残部の送信要求を受け入れる手段と、前記残部の送信要求を受けたときに、前記ドキュメントのうち、部分ドキュメントとして抽出した部分を除く、残部ドキュメントを生成する手段と、前記残部ドキュメントを、前記残部の送信要求元へ送信する手段と、を含んでもよい。
【0012】
さらに、本発明の別の態様に係るドキュメント処理方法は、コンピュータを用い、処理対象となった複数ページのドキュメントについて、対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れ、前記入力された各関連情報に、その宛先となる宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を抽出し、前記抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成し、前記生成した部分ドキュメントと、前記関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信することを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の別の態様に係るプログラムは、コンピュータに、処理対象となった複数ページのドキュメントについて、対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れる手順と、前記入力された各関連情報に、その宛先となる宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を抽出する手順と、前記抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する手順と、前記生成した部分ドキュメントと、前記関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信する手順と、を実行することを特徴としている。
【0014】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ドキュメント表示装置であって、複数ページのドキュメントを受信し、当該ドキュメントのうちから対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報とを抽出する手段と、前記入力された各関連情報に、予め自己の宛先として設定されている宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成手段と、前記生成した部分ドキュメントを利用者に提示する手段と、を含むことを特徴としている。
【0015】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ドキュメント表示方法であって、コンピュータを用い、複数ページのドキュメントを受信し、当該ドキュメントのうちから対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報とを抽出する工程と、前記入力された各関連情報に、予め自己の宛先として設定されている宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成工程と、前記生成した部分ドキュメントを利用者に提示する工程と、を含むことを特徴としている。
【0016】
さらに、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、ドキュメント表示プログラムであって、コンピュータに、複数ページのドキュメントを受信し、当該ドキュメントのうちから対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報とを抽出する手順と、前記入力された各関連情報に、予め自己の宛先として設定されている宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成手順と、前記生成した部分ドキュメントを利用者に提示する手順と、を実行させることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係るドキュメント処理装置1は、図1に示すように、ドキュメントの作成に関与する各担当者側に配置されたドキュメント表示装置2にネットワークを介して接続されている。ドキュメント処理装置1は、制御部11と記憶部12とハードディスク部13と操作部14と表示部15と通信部16とを含んで構成されている。また、ドキュメント表示装置2は、制御部21と記憶部22とハードディスク部23と操作部24と表示部25と通信部26とを含む。
【0018】
ドキュメント処理装置1の制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等であり、記憶部12に格納されているプログラムに従って動作しており、対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れる処理と、入力された各関連情報に、その宛先となる宛先情報が含まれているときに、当該宛先情報を抽出する宛先抽出処理と、この抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページをドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成処理と、この生成した部分ドキュメントと、受け入れた関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信する送信制御処理とを実行している。これらの各処理については、後に詳しく述べる。
【0019】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)等で実現され、制御部11によって実行されるプログラムを格納している。また、この記憶部12は、制御部11の処理の実行に必要となる種々の情報を保持するワークメモリとしても動作する。
【0020】
ハードディスク部13は、制御部11によって実行されるプログラムを格納している。またこのハードディスク部13は、処理対象となったドキュメントなどを保持している。
【0021】
操作部14は、キーボードやマウスなどであり、利用者の操作の内容を受け入れて制御部11に出力する。表示部15は、ディスプレイ等であり、制御部11から入力される指示に従って利用者に提示するべき情報を表示する。
【0022】
通信部16は、ネットワークに接続されており、ドキュメント表示装置2から種々のデータを受信して制御部11に出力する。またこの通信部16は、制御部11から入力される指示に従い、種々のデータをその宛先となったドキュメント表示装置2に送出する。
【0023】
ドキュメント表示装置2の制御部21は、CPU等であり、記憶部22に格納されているプログラムに従って動作しており、ドキュメントと関連情報とを表示する処理(関連情報表示処理)を実行している。この処理の具体的な内容については、後に詳しく述べる。
【0024】
記憶部22は、RAMや、ROM等で実現され、制御部21によって実行されるプログラムを格納している。また、この記憶部22は、制御部21の処理の実行に必要となる種々の情報を保持するワークメモリとしても動作する。
【0025】
ハードディスク部23は、制御部21によって実行されるプログラムを格納している。またこのハードディスク部23は、処理対象となったドキュメントなどを保持している。
【0026】
操作部24は、キーボードやマウスなどであり、利用者の操作の内容を受け入れて制御部21に出力する。表示部25は、ディスプレイ等であり、制御部21から入力される指示に従って利用者に提示するべき情報を表示する。
【0027】
通信部26は、ネットワークに接続されており、ドキュメント処理装置1から種々のデータを受信して制御部21に出力する。またこの通信部26は、制御部21から入力される指示に従い、種々のデータをその宛先となったドキュメント処理装置1に送出する。
【0028】
ここで、ドキュメント処理装置1の制御部11によって行われる各処理について説明する。
【0029】
[受入処理]
制御部11は、まず処理対象となったドキュメントを表示部15に表示する。このドキュメントは例えばアドビ社のPDF(Portable Document Format)形式で作成され、一般に、複数のページからなる。制御部11は、当該形式のデータからビットマップデータを生成して、表示部15に出力する。なお、以下の説明では、ドキュメントがPDFである場合を例として説明するが、これに限られるものではない。
【0030】
ドキュメント処理装置1の利用者が赤入れを行う場合、赤入れの対象となる部分(対象部分)をマウスやキーボード等で選択して特定する。そして、当該特定した位置に設定するべき赤入れの内容(修正依頼の記述などのノートデータ)を含む関連情報を入力する。つまり、制御部11は、ドキュメント上の対象位置の指定とともに、当該指定された対象位置にノートデータを関連付けるべき旨の指示入力を利用者から受けて、当該指示に従ってノートデータを含む関連情報の入力を受け入れる画面を表示する(図2)。ノートデータを関連付ける指定位置は、例えばドキュメント内のページ番号と、当該ページ番号で特定されるページ上での座標情報と、によって表すことができる。
【0031】
また、ここではノートデータを入力する欄として、修正指示の概要を表す文字列(修正指示)の入力欄と、修正の具体的内容(修正内容)を示す記述の入力欄とのそれぞれが設けられている。そして当該画面でノートデータとして入力されたテキスト等をドキュメント上の指定された位置(対象部分)に関連付ける。
【0032】
具体的にこの関連情報はPDFにおける「注釈」として保持させることができる。一例として、テキストで表記されるノートデータを関連付ける場合、ドキュメント上の指定された位置に当該テキストを関連付ける注釈の記述をドキュメント内に含める。
【0033】
本実施の形態において特徴的なことの一つは、図2に示した画面に、ノートデータの入力欄とともに、そのノートデータを含む関連情報の送信先を特定する宛先情報の入力欄が設けられていることである。制御部11は、この宛先情報の入力欄を介して入力された宛先情報と、ノートデータとを含む関連情報(ここではPDFの注釈データと同様のデータ構造を有するものとする)を生成し、ドキュメントの記述に含める。この関連情報の内容は、例えばアドビシステムズ著、株式会社ドキュメントシステム訳による「PDFリファレンス第2版」、2001年9月25日初版発行の342ページから361ページの「注釈」の項目に詳細に記述されているので、ここでの説明を省略する。
【0034】
さらに、ここで関連情報には、その状態を表す属性情報(状態属性情報)が含まれてもよい。この属性情報は例えば未読/既読の別、表示/非表示の別、さらにはアクセス権などの情報である。ここでアクセス権の情報は、例えば利用者を特定する情報(宛先情報と同様に、メールアドレスなどを用いて特定してもよい)と、当該利用者に対するアクセス権を表す情報(表示の可否など)である。なお、利用者を特定する情報として、メールアドレスの一部を利用することにより、例えば特定のメールサーバを利用する利用者群のように、複数の利用者に対するアクセス権を設定できるようにしてもよい。
【0035】
また利用者は、複写(コピー)と貼付け(ペースト)操作によって関連情報の関連付けを行うことができる。すなわち制御部11は、再利用のための複写(コピー)の指示を受けると、現在複写の対象として選択されている関連情報のうち、少なくともノートデータを除いて、例えば関連情報であることを表す情報と宛先情報とを複製関連情報として記憶部12に格納する。そして貼付け(ペースト)指示を受けたときには、当該貼付け指示があった時点でマウスカーソルがあった位置を指定位置として、図2に示した画面を表示し、ノートデータの入力を促す。このとき、図2に示した画面の宛先情報の入力欄には、コピーの指示を受けたときに記憶部12に格納した複製関連データ内の宛先情報を設定する。
【0036】
[宛先情報抽出処理]
また制御部11は赤入れ後のドキュメントを各担当者に提供するべき旨の指示を受けて、図3に示す処理を開始し、送信先リストとなる文字列のリストを記憶する領域を初期化する(S1;初期化)。そして制御部11は、ドキュメントに含まれる関連情報のうち未だ選択されていないものを一つを選択して(S2)、選択した関連情報に宛先情報が含まれているか否かを判断する(S3)。ここで関連情報に宛先情報が含まれていれば(Yesならば)、当該宛先情報と、現在の送信先リストとの論理和を演算し、その演算結果を新たな送信先リストとして記憶部12に格納する(S4)。
【0037】
具体的に、宛先情報が「A」であり、現在の送信先リストが「B,C」であれば論理和の演算結果は、「A,B,C」となり、宛先情報が「B」であり、現在の送信先リストが「B,C」であれば、論理和の演算結果は「B,C」となる。
【0038】
制御部11は、ドキュメントに未だ選択されていない関連情報があるか否かを調べ(S5)、選択されていない関連情報があれば(Yesならば)、処理S2に戻って処理を続ける。一方、この処理S5において、ドキュメントに未だ選択されていない関連情報がなければ(つまり、すべての関連データについての処理を終了したならば;Noならば)、処理を終了する。
【0039】
また、処理S3において宛先情報が含まれていない場合は、予め定めた送信先を特定する既定送信先リストと、現在の送信先リストとの論理和を演算し、その演算結果を新たな送信先リストとして記憶部12に格納し(S6)、処理S5に移行して処理を続ける。
【0040】
なお、既定送信先リストは、ドキュメントごとに予め定めておくこととしてもよい。この場合、記憶部12にドキュメントを識別する情報と、そのドキュメントに関連する既定送信先リストとを関連付けて格納しておき、制御部11は、現在処理の対象となっているドキュメントに関連する既定送信先リストを記憶部12から読出して、処理S6の処理を行う。
【0041】
また、この既定送信先リストは、例えばドキュメントに係る担当者全員としておいてもよい。この場合、制御部11は、処理S6の実行後に上記図3に示した処理を終了してもよい。
【0042】
さらに、ここでは関連データを順次読出しながら宛先情報の論理和を演算しているが、一旦関連データ全体を読出した後で重複を排除する処理(例えばUNIX(登録商標)で広く利用されているuniqコマンドと同様の処理)を実行して送信先リストを生成してもよい。
【0043】
[部分ドキュメント生成処理]
制御部11は、宛先情報抽出処理によって生成された送信先リストを参照し、送信先リスト上の宛先情報ごとに、各宛先情報に対応する部分ドキュメントを生成する。具体的に、送信先リストに抽出された宛先情報の一つを注目宛先情報として選択し、当該注目宛先情報を含む関連情報を検索する。そして検索の結果見いだされた関連情報が関連づけられているページをドキュメントから抽出して、部分ドキュメントを生成する。この処理を、送信先リストに未選択の宛先情報がなくなるまで繰返して行う。
【0044】
具体的に、1から5ページまでのドキュメントに、宛先情報「A」を含む関連データが、ドキュメントの第1、第3、第4ページに関連づけられている場合、制御部11は、この宛先情報「A」に対応する部分ドキュメントとして、1,3,4ページ目のデータのみを含む部分ドキュメントを生成する。PDF形式の場合、各ページのデータを識別するために予めページラベルなどを挿入しておいてもよい。
【0045】
[送信制御処理]
制御部11は、宛先情報抽出処理によって生成された送信先リストを参照し、送信先リスト上の各宛先情報に対して、対応する部分ドキュメントと、関連情報とを送信する(なお、ドキュメント自体に関連情報が含まれているときには、関連情報を別途送信する必要はない)。また、制御部11は、抽出された宛先情報の各々を注目宛先情報として、注目宛先情報を含む関連情報を選択し、選択した関連情報と、注目宛先情報に対応する部分ドキュメントとを当該注目宛先情報によって特定される送信先に送信することとしてもよい。
【0046】
[動作例]
つまり本実施の形態のドキュメント処理装置1は次のように動作する。ここではハードディスク部13が、ドキュメントを識別する情報と、送信先を識別する情報(送信先の利用者名など)と、送信先を特定する宛先情報としての電子メールアドレスとを関連付けたアドレス帳データを格納しているものとする。
【0047】
編集者は、受領したPDFドキュメントを表示させ、ここで修正したい場所を見つけると、当該修正個所に修正依頼を表すノートデータを関連付ける旨の指示を入力する。このとき編集者は、当該修正依頼とともに、その修正依頼の相手先の電子メールアドレスを宛先情報として入力する。なお、図2の画面を提示する際、制御部11は記憶部12に格納されているアドレス帳データに含まれる電子メールアドレスを提示してもよい。利用者は、当該提示された電子メールアドレスから宛先を選択して入力できるようになる。これら入力されたノートデータと宛先情報とは、修正個所を特定する情報とともに、関連情報としてPDFドキュメント内に含められる。
【0048】
編集者は、赤入れ(修正個所の確認)を完了すると、関連情報の送信指示を行う。制御部11は当該送信指示を受けて、宛先情報抽出処理を実行する。例えば編集者が、ライター宛の修正依頼と、カメラマン宛の修正依頼とを表すノートデータ(関連情報)をそれぞれ関連付けた場合、制御部11は、これらライター宛の修正依頼と、カメラマン宛の修正依頼とを見いだして、ライターの電子メールアドレス(例えば「writer@xxx.yyy.zzz」)と、カメラマンの電子メールアドレス(例えば「camera@yyy.zzz.xxx」)とを含む送信先リストを生成する。
【0049】
制御部11は、次に、送信先リストを参照しながら、当該送信先リスト上の各宛先情報に対応する部分ドキュメントを生成する。例えばドキュメントが4ページからなるパンフレットの原稿であり、編集者が、ライター宛の修正依頼をその1ページ目と2ページ目に関連付け、カメラマン宛の修正依頼を2ページ目に関連付けた場合、制御部11は、ライターの宛先情報に対応する部分ドキュメントとして、4ページのドキュメントから1,2ページ目のみを抽出して、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する。同様に、カメラマンの宛先情報に対応する部分ドキュメントとして、4ページのドキュメントから2ページ目のみを抽出して、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する。
【0050】
そして制御部11は、送信先リストに含まれる各宛先に対して、対応する部分ドキュメントと関連情報とを送信する。この場合ライターには、カメラマン宛の修正依頼をも送信されることとなるが、修正依頼の対象とならないデザイナに対しては関連情報は送信されない。
【0051】
制御部11はさらに、抽出された宛先情報ごとに(つまり各部分ドキュメントに対応する宛先情報ごとに)、当該宛先情報を含む関連情報を選択して、部分ドキュメントとともに送信することとしてもよい。この場合は、各宛先に送信される関連情報が異なるものとなり、ライターに対してはライター宛の修正個所のみが送信され、カメラマンにはカメラマン宛の修正個所のみが送信されることになる。
【0052】
このように本実施の形態によると、宛先情報ごとに、例えばライターにはライター宛の修正依頼が関連付けられたページのみが抽出されて送信されることになり、各担当者が修正を要する部分を容易に見つけ出すことができるようになる。
【0053】
[宛先情報の指定がない場合]
さらに制御部11は、編集者から宛先情報を含まない修正依頼が入力されたときには、既定送信先リストとして、例えば記憶部12に格納されているアドレス帳データから、処理の対象となっているドキュメントに関連付けられた宛先情報をすべて抽出し(つまり、当該ドキュメントに係る担当者全員を宛先として)、当該抽出した宛先情報に対して、対応する部分ドキュメントを生成し、当該生成した部分ドキュメントと関連情報とを送信する。また別に既定送信先リストが設定されているときには、当該別に設定された既定送信先リストに含まれる宛先情報をすべて抽出し当該抽出した宛先情報に対して、上記生成した部分ドキュメントと関連情報とを送信することになる。従ってこの場合は、関連情報としての修正依頼が関連付けられているページが、その宛先情報の内容を問わずに抽出されて部分ドキュメントとなり、当該部分ドキュメントが各送信先に送信されることになる。
【0054】
[関連情報表示処理]
次に、ドキュメント表示装置2の制御部21における関連情報表示処理について説明する。制御部21は、ドキュメント処理装置1から部分ドキュメントと関連情報と(部分ドキュメントに関連情報が含まれている場合は、部分ドキュメント)を受信すると、これをハードディスク部23に格納して保持する。具体的に、部分ドキュメントと関連情報とは、電子メールの添付ファイルとして受信される。制御部21は、利用者から当該関連情報を表示するべき旨の指示を受けると、部分ドキュメントと関連情報とを表示する処理を行う。
【0055】
本実施の形態では部分ドキュメントがPDFを用いて記述され、関連情報は当該PDF内の注釈データとして記述されるので、利用者が電子メールに添付されたPDFファイルを開く指示を行ったときに、制御部21が、PDF表示プログラムの処理に基づいてこのPDFファイルを読出して表示部25に部分ドキュメントを表示することになる。この表示時に、関連情報としての注釈のノートデータも併せて表示される。
【0056】
なお関連情報の表示は、例えば図4に示すように、部分ドキュメントに付された付箋のメタファーとして、ドキュメントのページの表示領域からはみ出して表示してもよい。
【0057】
[表示/非表示の制御]
ドキュメント表示装置2の制御部21は、さらに、各関連情報に含まれる宛先情報に基づき、当該宛先情報に関係する所定の表示条件を満足するか否かによって、各関連情報を表示するか否かを決定し、表示すると決定した関連情報のみを表示するようにしてもよい。
【0058】
具体的に所定の表示条件としては、ドキュメント表示装置2の利用者の電子メールアドレス(受入側識別情報に相当する)と宛先情報とが一致するとの条件などがある。また、宛先情報の一部が所定の文字列に一致しているとの条件であってもよい。例えば宛先情報としての電子メールアドレスのうち、ドメイン名以下の部分(例えば「user@host.domain.co.jp」のうち「domain.co.jp」の部分など)の文字列が所定の文字列に一致しているときに、当該関連情報を表示すると決定する。
【0059】
このようにすると、ドキュメント処理装置1から、受信した部分ドキュメント内に、他者宛の関連情報が含まれている場合にも、そのうち自己宛(予め設定された自己のアドレス情報宛)の関連情報や自社宛の関連情報など、宛先情報に応じて関連情報を選択的に表示させることができる。
【0060】
また、各関連情報に含まれる状態属性情報により、非表示の属性となっているものを表示しないように制御してもよい。具体的に、制御部21は、部分ドキュメントに関連づけられている関連情報の各々について、その状態属性情報を参照し、当該状態属性情報により表示する旨の属性情報(本発明の表示設定に相当する)を含む関連情報を選択する。そして選択した関連情報のうち、上記宛先情報に関係する所定条件を満足する関連情報を表示する。
【0061】
[一覧表示]
ドキュメント表示装置2の制御部21は、また、関連情報の一覧を生成して提示してもよい。具体的に制御部21は、ドキュメント処理装置1から受信した部分ドキュメントに関連づけられている関連情報を抽出する。そして抽出した関連情報を、それに含まれる校数情報の順に並べ替え、さらに同一校数内では部分ドキュメント内の記述順(ページの順となる)に並べ替えて、一覧表情報を生成する。そして制御部21は、この一覧表情報を表示部25に表示する。
【0062】
具体的に、この一覧表情報は図5に示すように、部分ドキュメントを識別する情報と、校数情報と、関連情報ごとの識別子と、関連情報が関連づけられている部分ドキュメント上のページ(元のドキュメントにおけるページ番号でもよい)と、関連情報の内容(修正指示や修正内容など)とをリスト表示したものである。
【0063】
さらに、この一覧表示の際にも、上記の表示/非表示の制御を行うこととしてもよい。表示/非表示の制御を行うことで、一覧表示においても、例えば宛先情報に応じた選択的表示が行われるようになる。
【0064】
[ドキュメントの修正に関する動作]
ドキュメント表示装置2の利用者は、関連情報に含まれる修正指示等に対応して、ドキュメントの内容を修正する指示を入力する。制御部21は、入力された修正指示に応答して、部分ドキュメントの内容を変更してハードディスク部23に上書き保存する。この際、修正指示により内容を変更した位置に関連づけられた関連情報については、その状態属性情報を「非表示」に変更してもよい。また、利用者は、各関連情報の表示/非表示の設定を変更するべき旨の指示を明示的に入力してもよい。
【0065】
さらにこれら状態属性情報は、利用者を識別する情報(例えば宛先情報そのものなど)に応じて複数設定されてもよい。例えば図6に示すように、アクセス権の設定として表示/非表示の設定を利用者毎に異ならせておけば、次のような処理が実現できる。
【0066】
すなわち、校正を担当する編集者Aが、ドキュメント処理装置1を操作して校正個所に関連情報を関連づけ、これを各担当者に送信する。このとき、ライターの修正個所に係る関連情報の状態属性情報は、例えばライターについては「表示」、デザイナ等については「非表示」、編集者A自身については「表示」と設定しておく。
【0067】
ライターの利用するドキュメント表示装置2は、当該関連情報とともにドキュメントを受信する。そしてドキュメント表示装置2の制御部21は、各関連情報のうち、ライター(ドキュメント表示装置2の利用者)に対応した状態属性情報が「表示」に設定されている関連情報を表示部25に表示する。
【0068】
ライターは、表示されている関連情報を参照しながら、ドキュメントを修正する。そして修正を完了した関連情報の状態属性情報を非表示と設定する。このとき、ドキュメント表示装置2の制御部21は、ライター(ドキュメント表示装置2の利用者)に対応した状態属性情報を「非表示」に設定する。つまり、編集者Aに対応する状態属性情報は「表示」のままとなる。
【0069】
そしてライターが修正後の部分ドキュメントを関連情報とともに編集者Aに返信すると、編集者A側のドキュメント処理装置1の制御部11が、ドキュメント表示装置2の制御部21の関連情報表示処理と同様の表示処理を行い、各関連情報のうち、編集者A(ドキュメント処理装置1の利用者)に対応した状態属性情報が「表示」に設定されている関連情報を表示部15に表示する。
【0070】
これにより、ライター側で修正して「非表示」に設定した関連情報も、編集者A側では再度表示されるようになり、編集者Aは、修正が正しく行われているか否かを確認できるようになる。なお、ドキュメント処理装置1の制御部11は、他の宛先情報に関連づけられた状態属性情報が「表示」になっているか否かに応じて、関連情報の表示態様を異ならせてもよい。例えば、ライターに対応する状態属性情報が「表示」になっている関連情報については、当該関連情報に含まれるノートデータの文字列を、薄い青色で塗りつぶした矩形内に表示したものとし、ライターに対応する状態属性情報が「非表示」になっている関連情報については、薄い黄色で塗りつぶした矩形内に当該ノートデータの文字列を表示したものとするなど、色を違えて表示してもよい。
【0071】
[残部送信要求]
ドキュメント処理装置1の制御部11は、部分ドキュメントの送信先であるドキュメント表示装置2側から、部分ドキュメントに含まれていない残部の送信要求を受け入れて、部分ドキュメントとして抽出した部分を除く、残部ドキュメントを生成して送信要求元であるドキュメント表示装置2へ送信してもよい。
【0072】
具体的に、部分ドキュメントを受信したドキュメント表示装置2の利用者は、残りのページを参照したいときに、残部を送信するよう要求する指示操作を行う。ドキュメント表示装置2の制御部21は、この指示操作に応じて、部分ドキュメントを特定する情報(元のドキュメントの名称などでよい)と、利用者の宛先情報とを含む残部送信要求をドキュメント処理装置1側に送信する。
【0073】
ドキュメント処理装置1の制御部11では、この残部送信要求からドキュメントを特定する情報と利用者の宛先情報とを抽出して、特定されたドキュメントのうち、抽出した宛先情報を含む関連情報が関連づけられていないページを抽出して、残部ドキュメントを生成し、当該残部ドキュメントをドキュメント表示装置2へ送信する。
【0074】
ドキュメント表示装置2では、既に受信している部分ドキュメントと残部ドキュメントとを合成して、元のドキュメントを再生する。具体的に、部分ドキュメントや残部ドキュメントがPDFで記述されている場合、部分ドキュメントの末尾に残部ドキュメントを付加し、文書構造の記述などを調整する。この調整方法等は、複数のPDFファイルを結合して一つのPDFファイルを生成する公知の方法を採用できるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0075】
[ドキュメントの要素ごとの関連づけ]
ここまでの説明では、関連情報は、ドキュメント内に含まれ、ドキュメント(実際には、このドキュメントから一部ページを抽出した部分ドキュメント)上の指定された位置に重ね合わせて表示されることとなっていたが、関連情報を関連付する対象部分は、ドキュメントに含まれるドキュメント要素(テキストや図形などの要素)であってもよい。すなわち、ライターが作成したテキストやカメラマンが撮影した写真など、個々のドキュメント要素ごとに、これらを編集してドキュメントを作成する編集者がその作成者を特定する情報(例えば宛先情報)を含めてドキュメントの形式(例えばPDF形式)に変換する。
【0076】
具体的には、PDFに含まれるテキストや写真、絵柄といったドキュメント要素を表すオブジェクト(obj)ごとに、例えばコメントとしてそのオブジェクトに係るドキュメント要素の作成者の宛先情報を含めてもよい。これによりドキュメント要素ごとにその作成者を特定する情報を関連付けることができる。
【0077】
ドキュメント処理装置1の利用者は、関連情報をドキュメントに関連付ける際に、当該ドキュメントに含まれるドキュメント要素のいずれかに関連情報を関連付けるよう指示する。すると、ドキュメント処理装置1の制御部11は、関連付けの対象となったドキュメント要素の記述から、当該ドキュメント要素の作成者を特定する情報があるか否かを調べる。そして当該ドキュメント要素の作成者を特定する情報があれば、当該情報を抽出する。
【0078】
制御部11は、図2に示したのと同様の画面(関連情報入力用の画面)を表示する。このときドキュメント要素の作成者を特定する情報が抽出されていれば、関連情報の送信先を特定する宛先情報の入力欄に当該抽出した情報によって特定される作成者の宛先情報を設定する。具体的にドキュメント要素の作成者を特定する情報を宛先情報そのものとしておけば、制御部11は、宛先情報の入力欄に抽出した宛先情報をそのまま設定する。
【0079】
制御部11は、関連情報入力用の画面を介して入力されたテキスト等を指定されたドキュメント要素に関連付けて関連情報を生成し、この関連情報をドキュメントに含める。具体的にはドキュメント要素を識別する情報として、例えばドキュメント要素ごとにオブジェクト識別番号が付与されている場合、関連付けの対象となったドキュメント要素のオブジェクト識別番号を含んだ関連情報を生成する。なお、ここではドキュメント要素は、ドキュメント中のオブジェクト(テキストや図形など)の単位としていたが、これに限られず、例えばテキストの一部文字列を関連付けの対象となるドキュメント要素としてもよい。この場合は、当該文字列部分を特定する情報(例えば文字列のテキスト内の位置)に関連情報を関連付けし、また、当該文字列部分を含むテキスト等のオブジェクトに関連づけられている宛先情報(作成者を特定する情報)を、関連情報に含める。
【0080】
さらに、ドキュメント要素に関連付けを行う場合は、制御部11は、宛先情報ごとに、当該宛先情報に係るものとして抽出した各関連情報について、当該各関連情報に係るドキュメント要素と、当該各関連情報に係るドキュメント要素以外のドキュメント要素とを互いに異なる態様で表示させる所定処理を実行してもよい。
【0081】
具体的に、制御部11は部分ドキュメントの生成処理において、送信先リストに含まれる宛先情報の一つを注目宛先情報として選択し、当該注目宛先情報を含む関連情報を検索する。そして検索の結果見いだされた関連情報が関連づけられているページをドキュメントから抽出し、抽出した各ページに含まれる関連情報の対象部分(関連情報に係るドキュメント要素)以外の部分(対象外部分)を隠蔽する。具体的には、当該対象外部分に係る記述を削除して、表示されないようにしてもよいし、矩形などの図形を表示するための記述に置換えてもよい。
【0082】
また、完全に隠蔽されなくとも、視認困難となるように、例えば解像度を低減して表示させる指示に置換えてもよい。一例として、送信先ごとに、当該送信先の宛先情報を含む関連情報が関連付けされたドキュメント要素については、出力側の最高解像度で出力させ、それ以外のドキュメント要素(対象外部分のドキュメント要素)については、72dpi(dot par inch)以下の解像度でのみ出力可能として設定してもよい。
【0083】
また、別の例では、対象外部分のドキュメント要素については、当該ドキュメント要素内の文字や図形の色が薄くなるように色指定の記述を追記してもよい。
【0084】
この制御部11の処理により、例えばライター側で受信した部分ドキュメントと関連情報とをドキュメント表示装置2で表示させると、その制御部21が、ドキュメント要素ごとの指示に従って、ライター宛の修正個所に関連付けられたドキュメント要素は元のドキュメントの色通りの色で表示し、それ以外のドキュメント要素は、元の色よりも薄い色に調整して表示する。関連情報の受信側は、指示のある箇所とそうでない箇所とが互いに異なる態様で(つまり指示のない箇所が隠蔽されて)表示され、指示のある箇所をより容易に認識できるようになる。
【0085】
さらにこの場合も、ドキュメント処理装置1の制御部11は、部分ドキュメントに対応する宛先情報を含む関連情報を選択的に送信することとして、例えばライターに対してはライター宛の修正個所のみを送信するようにしてもよい。
【0086】
なお、ここではドキュメント処理装置1側で、関連情報の関連付けられたドキュメント要素と、それ以外のドキュメント要素との表示態様を異ならせるようにドキュメントの記述を書き換える例について説明したが、ドキュメント表示装置2側で、関連情報の関連付けられたドキュメント要素と、それ以外のドキュメント要素との表示態様を異ならせる処理を行ってもよい。
【0087】
すなわち、ドキュメント表示装置2の制御部21は、利用者の電子メールアドレスなど、利用者に係る宛先情報を含む関連情報が関連付けされているドキュメント要素については、表示部25の最高解像度で表示出力し、それ以外のドキュメント要素については、表示しない(あるいは、当該ドキュメント要素の占める領域を矩形等の簡易図形で表したり、空白としたりする)ようにしてもよい(図7)。
【0088】
本実施の形態において特徴的なことの一つは、このように表示態様を異ならせるなど、宛先情報を含む関連情報が関連づけられていない、対象外部分を隠蔽したときであっても、ページ内のレイアウトを維持しておくことである。これにより、実際のドキュメント上での見栄えを確認しながら、担当者が作業できるようになる。
【0089】
[追加部分の送信処理]
ドキュメント処理装置1の制御部11が対象外部分を隠蔽した部分ドキュメントを生成して送信した場合、ドキュメント表示装置2側では、当該隠蔽された部分を要求するようにしてもよい。すなわち、ドキュメント表示装置2の利用者は、表示されている部分ドキュメント上のページ内で隠蔽されている部分を要求する指示操作を行い、ドキュメント表示装置2の制御部21が、この指示操作に応じて、部分ドキュメントを特定する情報(元のドキュメントの名称などでよい)と、表示中のページを特定する情報(要求する隠蔽部分を含むページを特定する情報)と、利用者の宛先情報とを含む残部送信要求をドキュメント処理装置1側に送信する。
【0090】
ドキュメント処理装置1の制御部11では、この残部送信要求からドキュメントとページとを特定する情報と、利用者の宛先情報とを抽出して、特定されたドキュメントのページ上で、抽出した宛先情報を含む関連情報に係るドキュメント要素以外のドキュメント要素(対象外部分)のみを抽出して、追加部分データを生成し、当該追加部分データをドキュメント表示装置2へ(宛先情報で特定される送信先に)送信する。
【0091】
ドキュメント表示装置2では、表示中のページのデータと、受信した追加部分データとを合成して、元のページを再生する。具体的には、隠蔽の処理において書換えられた部分を追加部分データに含まれるデータで置換える(この置換えを容易にするため、各ドキュメント要素にドキュメント要素の識別子を関係付けておいてもよい)。
【0092】
なお、ドキュメント表示装置2の制御部21は、部分ドキュメントを表示する際に、利用者の指示を受けなくても、ドキュメントのうち部分ドキュメント以外の部分全体を追加部分として、当該追加部分の送信要求を送信するようにしてもよい。この場合、利用者が部分ドキュメントを参照している間に、いわばバックグラウンドの処理として追加部分を受信することになる。そして制御部21は、受信が完了したときに、予め受信している部分ドキュメントに合成して、ドキュメント全体を再現して表示する。
【0093】
[アクセス権への配慮]
なお、この追加部分データの生成において、ドキュメント処理装置1では、予めドキュメントを構成するドキュメント要素の各々に関連付けてアクセス権情報を設定しておき、隠蔽された部分の要求を受けたときに、当該要求された部分に係るアクセス権情報を取得して、要求元に対して送信可能であるか否かを判断してもよい。
【0094】
この場合、隠蔽部分のドキュメント要素に関連付けられたアクセス権情報から、その要求元の宛先情報に対するアクセス権が「読出し禁止」を表すものとなっている場合は、制御部11は、追加部分データに当該隠蔽部分を含めずに送信する。
【0095】
[他の変形例]
また、ここではドキュメント処理装置1側で宛先情報ごとの関連情報に係るページを抜粋して送信する例について述べたが、これに代えて、ドキュメント処理装置1側では、ドキュメント全体と、少なくとも送信先を特定する宛先情報に関する関連情報(すべての関連情報であってもよい)とを送信し、ドキュメント表示装置2側で、利用者の宛先情報に対応する関連情報に係るページを選択的に表示するようにしてもよい。
【0096】
具体的に、この変形例に係るドキュメント処理装置及びドキュメント表示装置は、図1に示したものと同様の構成をとるものであるが、制御部11,21での処理の内容が少々異なる。すなわち、制御部11は、既に説明した受入処理を行い、処理対象となったドキュメントに対して、入力された関連情報を関連付けて出力する。例えば、処理対象となったドキュメントにPDFの注釈データと同様の関連情報を含める。ここでこの関連情報には、既に説明したように、関連情報の送信先を特定する宛先情報が含まれる。本変形例では、制御部11は、この受入処理後のドキュメントをそのままドキュメント表示装置2側に送信する。
【0097】
ドキュメント表示装置2の制御部21では、当該ドキュメント処理装置1が送信したドキュメントを受信する。そして、当該ドキュメントから関連情報を取り出す。そして、取り出した関連情報に宛先情報が含まれているか否かを調べ、含まれているときには、当該宛先情報が、自己の宛先を表すもの(予め設定された自己のアドレス情報(利用者のメールアドレス等))であるか否かを調べる。
【0098】
ここで、宛先情報が含まれていない場合、又は含まれている宛先情報が自己の宛先を表すものであった場合には、制御部21は、当該宛先情報を含む関連情報を取り出す。そして制御部21は、当該取り出した関連情報の対象部分を含むページを受信したドキュメントから抽出して、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する。そして制御部21は、当該生成した部分ドキュメントを表示する。なお、制御部21は、関連情報の一覧を表示する処理では、上記処理で取り出した関連情報の一覧を表示する。また、表示/非表示の処理等は、既に説明したのと同様に行われる。
【0099】
[送信態様の選別]
このように本実施の形態では、(1)ドキュメント処理装置1が宛先ごとに、当該宛先に係る関連情報を含むページ等を抜粋して送信し、ドキュメント表示装置2が当該抜粋された部分ドキュメントを表示するか、(2)ドキュメント処理装置1が宛先を特定する情報を含む関連情報とともにドキュメント全体を送信し、ドキュメント表示装置2側で各関連情報に含まれる宛先の情報を参照しながら、予め定められた条件を満足する宛先に係る関連情報を含むページ等を抜粋して表示することになる。
【0100】
ここで、ドキュメント処理装置1の制御部11は、予め定めたルールに従って、上記(1)、(2)のいずれの方法で送信するかを決定してもよい。例えば、宛先情報ごとに予めどちらの方法で送信するかを設定しておいてもよい。例えば、デザイナー宛には、全体のカラーバランスを検討させる必要性から、(2)のように、ドキュメントの全体を送信するよう設定し、ライター宛には、(1)のように、部分的な送信とするよう設定してもよい。
【0101】
また、宛先情報ではなく、通信環境によってどちらの送信方法とするかを設定してもよい。例えば通信速度の速い環境では、(2)のようにドキュメントの全体を送信することとし、速度の遅い環境や送受信可能なファイルサイズに制限がある環境では、(1)のようにドキュメントの一部を送信するようにする。また、通信エラーの発生頻度を調べ(通信部16,26からの情報によって調べることができる)、通信エラーの発生頻度が所定のしきい値を越える場合は、(1)のようにドキュメントの一部を送信することとしてもよい。
【0102】
さらに、関連情報が関連づけられているページ数が、ドキュメント全体のページ数に占める割合によってどちらの送信方法とするかを設定してもよい。この場合、制御部11は、関連情報が関連づけられているページ数をカウントし、ドキュメント全体のページ数で除して、割合を算出する。ここで割合が全体の8割以上である場合(例えば10ページのドキュメントのうち、9ページに関連情報が関連づけられている場合)には、(2)のようにドキュメントの全体を送信することとし、そうでなければ、(1)のようにドキュメントの一部を送信するようにする。
【0103】
ここで割合は、宛先情報ごとに算出してもよい。例えばしきい値が8割であるとき、ライター宛の関連情報が10ページ中9ページにあり、カメラマン宛の関連情報が10ページ中7ページにある場合、ライター宛には(2)のようにドキュメントの全体を送信し、カメラマン宛には(1)のようにドキュメントの一部を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の形態に係るドキュメント処理装置及びドキュメント表示装置の構成ブロック図である。
【図2】関連情報の入力インタフェースの例を表す説明図である。
【図3】関連情報の送信に係る処理例を表すフローチャート図である。
【図4】関連情報の表示例を表す説明図である。
【図5】関連情報の一覧表の表示例を表す説明図である。
【図6】状態属性情報の内容例を表す説明図である。
【図7】対象外の部分を隠蔽する例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0105】
1 ドキュメント処理装置、2 ドキュメント表示装置、11,21 制御部、12,22 記憶部、13,23 ハードディスク部、14,24 操作部、15,25 表示部、16,26 通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となった複数ページのドキュメントについて、対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れる手段と、
前記入力された各関連情報に、その宛先となる宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を抽出する宛先抽出手段と、
前記抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成手段と、
前記生成した部分ドキュメントと、前記関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信する送信制御手段と、
を含むことを特徴とするドキュメント処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドキュメント処理装置であって、
前記送信制御手段は、宛先情報ごとに生成された部分ドキュメントを送信する際に、当該部分ドキュメントに対応する宛先情報を含む関連情報を選択して送信することを特徴とするドキュメント処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドキュメント処理装置において、
前記部分ドキュメント生成手段は、前記抽出したページのうち、各ページに含まれる関連情報の対象部分以外の部分を隠蔽して、前記部分ドキュメントを生成することを特徴とするドキュメント処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のドキュメント処理装置において、
さらに、前記隠蔽した対象部分以外の部分の送信要求を受け入れて、当該隠蔽した対象部分以外の部分を送信する手段を含むことを特徴とするドキュメント処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のドキュメント処理装置において、
さらに、部分ドキュメントの送信先から部分ドキュメントに含まれていない残部の送信要求を受け入れる手段と、
前記残部の送信要求を受けたときに、前記ドキュメントのうち、部分ドキュメントとして抽出した部分を除く、残部ドキュメントを生成する手段と、
前記残部ドキュメントを、前記残部の送信要求元へ送信する手段と、
を含むことを特徴とするドキュメント処理装置。
【請求項6】
コンピュータを用い、
処理対象となった複数ページのドキュメントについて、対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れ、
前記入力された各関連情報に、その宛先となる宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を抽出し、
前記抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成し、
前記生成した部分ドキュメントと、前記関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信することを特徴とするドキュメント処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
処理対象となった複数ページのドキュメントについて、対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報との入力を、少なくとも一つ受け入れる手順と、
前記入力された各関連情報に、その宛先となる宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を抽出する手順と、
前記抽出された各宛先情報に対応して、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する手順と、
前記生成した部分ドキュメントと、前記関連情報とを、対応する宛先情報によって特定される送信先に対して送信する手順と、
を実行することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
複数ページのドキュメントを受信し、当該ドキュメントのうちから対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報とを抽出する手段と、
前記抽出された各関連情報に、予め自己の宛先として設定されている宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成手段と、
前記生成した部分ドキュメントを利用者に提示する手段と、
を含むことを特徴とするドキュメント表示装置。
【請求項9】
コンピュータを用い、
複数ページのドキュメントを受信し、当該ドキュメントのうちから対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報とを抽出する工程と、
前記入力された各関連情報に、予め自己の宛先として設定されている宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成工程と、
前記生成した部分ドキュメントを利用者に提示する工程と、
を含むことを特徴とするドキュメント表示方法。
【請求項10】
コンピュータに、
複数ページのドキュメントを受信し、当該ドキュメントのうちから対象部分を特定する指示と、当該対象部分に関連づける関連情報とを抽出する手順と、
前記入力された各関連情報に、予め自己の宛先として設定されている宛先情報が含まれているときには、当該宛先情報を含む関連情報に関連付けられた対象部分を含むページを前記ドキュメントから抽出し、当該抽出したページからなる部分ドキュメントを生成する部分ドキュメント生成手順と、
前記生成した部分ドキュメントを利用者に提示する手順と、
を実行させることを特徴とするドキュメント表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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