説明

ドップラーセンサ付き照明器具

【課題】 蛍光灯で発生した輻射ノイズがドップラーセンサに入射しにくいドップラーセンサ付き照明器具を提供する。
【解決手段】 平板状のカバー4において蛍光灯2に向けられた面を含む仮想平面を第1平面P1と定義する。蛍光灯2の発光部の中心軸Oに直交する断面であってドップラーセンサ5の送受信部51を含む断面におけるドップラーセンサ5の検出範囲の境界線であって蛍光灯2に近い側の境界線52と上記の第1平面P1の垂線とがなす角θと、上記中心軸Oと第1平面P1との距離dと、上記発光部の半径rと、第1平面P1と上記送受信部51との距離yと、上記中心軸Oを含み第1平面P1に直交する第2平面P2と上記送受信部51との距離xとが、次式


の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラーセンサ付き照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドップラーセンサによって人体を検出するとともに、人体の検出に応じて光源の点灯・消灯を切り替えるドップラーセンサ付き照明器具が提供されている(例えば、特許文献1参照)。この種の照明器具においては、光源の点灯・消灯の切り替えが手動で行われる場合に比べ、使用者が光源を消灯させる操作をし忘れることによる無駄な電力消費が抑えられる。
【0003】
上記のドップラーセンサは、例えばミリ波のような電波(送信波)を検出範囲に送信(照射)するとともに、検出範囲で反射された電波(反射波)を受信し、この受信によって得られた電気信号と、上記の送信波と同じ周波数の電気信号とを混合(乗算)し、得られた電気信号から人体の移動速度に対応する周波数帯の成分を抽出することで、ドップラー信号を得る。このドップラー信号の振幅を所定の判定閾値と比較することで、検出範囲内における人体の有無を判定することができる。
【0004】
人体を検出するセンサしては他には例えば人体から放射される熱線を検出する熱線センサ(いわゆるPIRセンサ)がある。ドップラーセンサは、熱線センサと比較すると、環境の温度変化の影響を受けにくいという利点や、比較的に遠距離の人体を検出することができるという利点がある。上記利点により、ドップラーセンサは、熱線センサに比べ、温度変化が激しい場所での使用や、天井が高い建物内で天井に取り付けられるような使用形態に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−168778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の照明器具としては、図3及び図4に示すように、光源として、円柱形状の発光部を有する直管型の蛍光灯2を用いるとともに、この蛍光灯2を保持して壁面等の施工面(図示せず)に固定される器具本体3と、この器具本体3との間に蛍光灯2を挟むカバー4とを有する照明器具1がある。
【0007】
蛍光灯2は具体的には交流電力で点灯される熱陰極型の放電灯であり、このような蛍光灯2は周知であるので詳細な図示並びに説明は省略する。
【0008】
以下、図3及び図4の照明器具1について具体的に説明する。
【0009】
器具本体3は細長い直方体形状であって、蛍光灯2を点灯させる点灯装置(図示せず)とこの点灯装置に電気的に接続されたソケット(図示せず)とを保持している。点灯装置としては例えば周知の銅鉄安定器や電子安定器を用いることができる。点灯装置はドップラーセンサ5の出力に基いて検出範囲内の人体の有無を判定するとともに、蛍光灯2の消灯中に検出範囲内に人体が存在すると判定されれば蛍光灯2を点灯させ、蛍光灯2の点灯中に検出範囲内に人体が存在しないと判定される状態の継続時間が所定の制御遅れ時間に達したときに蛍光灯2を消灯させる。また、ソケットは蛍光灯2の発光部の軸方向の両端にそれぞれ設けられた口金(図示せず)に一対一に対応して器具本体3の長手方向の両端部に1個ずつ計2個保持され、それぞれ1個ずつの口金に対して着脱自在に結合する。すなわち、各口金にそれぞれソケットが結合した状態ではソケットを介して蛍光灯2と点灯装置との電気的な接続が達成され、この状態では器具本体3の長手方向と蛍光灯2の発光部の軸方向が一致する。上記のような点灯装置やソケットはいずれも周知技術で実現可能であるので詳細な図示並びに説明は省略する。
【0010】
カバー4は、例えばガラスのような透光性を有する材料からなるものであって、蛍光灯2によって照明される方向(図4での上方)から見て蛍光灯2を覆う。カバー4を設ける目的としては、例えば、蛍光灯2の保護や、蛍光灯2の光を拡散させることによる見栄えの改善などがある。カバー4は例えば細長い長方形の平板状であって、長手方向を器具本体3の長手方向に一致させ器具本体3との間に隙間を空けて適宜の金具等を介して器具本体3に連結される。つまり、カバー4において蛍光灯2に向けられる面は蛍光灯2の発光部の中心軸に平行となる。
【0011】
また、器具本体3にはドップラーセンサ5が固定されている。ドップラーセンサ5は器具本体3とカバー4との間に配置されている。ドップラーセンサ5において電波が出射する送信部であるとともに電波が入射する受信部でもある送受信部(図4での上面)51はカバー4へ向けられており、検出範囲は例えば送受信部51を頂点とする円錐台形状であってカバー4を貫通している。ドップラーセンサ5についても周知技術で実現可能であるので詳細な図示並びに説明は省略する。
【0012】
しかしながら、上記のようにドップラーセンサ5の検出範囲がカバーを貫通する場合、図4に矢印A1で示すように蛍光灯2で発生した輻射ノイズがカバー4で反射して送受信部51に入射し、これが誤判定の原因となることがあった。
【0013】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、蛍光灯で発生した輻射ノイズがドップラーセンサに入射しにくいドップラーセンサ付き照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のドップラーセンサ付き照明器具は、平板状のカバーと、円柱形状の発光部を有し前記発光部の中心軸を前記カバーに平行として前記カバーの厚さ方向の一方側に配置された直管型の蛍光灯と、前記カバーの前記一方側の面を含む第1平面に関して前記蛍光灯と同じ側に配置されるとともに、前記第1平面の一部を含む所定の検出範囲から入射する電波を受信する受信部を有するドップラーセンサとを備え、前記蛍光灯の発光部の中心軸に直交する断面であって前記受信部を含む断面における前記検出範囲の境界線であって前記蛍光灯に近い側の境界線と前記第1平面の垂線とがなす角θと、前記発光部の中心軸と前記第1平面との距離dと、前記発光部の半径rと、前記第1平面と前記受信部との距離yと、前記発光部の中心軸を含み前記第1平面に直交する第2平面と前記受信部との距離xとが、次式
【0015】
【数1】

【0016】
の条件を満たすことを特徴とする。
【0017】
このドップラーセンサ付き照明器具において、前記ドップラーセンサは、前記カバーの厚さ方向から見て少なくとも一部が前記カバーに重ならないことが望ましい。
【0018】
さらに、このドップラーセンサ付き照明器具において、前記ドップラセンサは、前記蛍光灯の発光部の軸方向の中央部付近に配置されていてもよい。
【0019】
また、このドップラーセンサ付き照明器具において、y>dであってもよい。
【0020】
さらに、このドップラーセンサ付き照明器具において、前記ドップラーセンサが前記蛍光灯よりも下側に位置するように固定して用いられてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蛍光灯で発生した輻射ノイズは少なくともカバーでの1回の反射ではドップラーセンサに入射しないので、蛍光灯で発生した輻射ノイズがドップラーセンサに入射しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図2】同上の変更例を示す説明図である。
【図3】ドップラーセンサ付き照明器具の一例を示す斜視図である。
【図4】従来例の課題を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
本実施形態の基本構成は図3及び図4に示した照明器具1と共通であるので、対応する構成には同じ符号を付して詳細な図示並びに説明は省略する。
【0025】
本実施形態は、図1に示すように、蛍光灯2からの輻射ノイズがカバー4で反射してもドップラーセンサ5の送受信部51に入射しないように蛍光灯2とカバー4とドップラーセンサ5との位置関係が決定されていることを特徴とする。
【0026】
以下の説明では、カバー4において蛍光灯2とドップラーセンサ5とに向けられた面(図1での下面)を含む仮想平面である第1平面P1と、蛍光灯2の発光部の中心軸Oを含み第1平面P1に直交する仮想平面である第2平面P2とを用いる。
【0027】
まず、蛍光灯2の発光部の中心軸Oと第1平面P1との距離(すなわちカバー4との距離)を以下では基準距離dと呼ぶ。また、ドップラーセンサ5の送受信部51を含み且つ蛍光灯2の発光部の中心軸Oに直交する断面において検出範囲の境界線(輪郭)であって蛍光灯2に近い側の境界線52と、送受信部51から第1平面P1への垂線とがなす角を以下では限界入射θと呼ぶ。
【0028】
蛍光灯2で発生した輻射ノイズがドップラーセンサ5に影響を与える可能性があるのは、蛍光灯2から出射した輻射ノイズがカバー4での反射後にドップラーセンサ5の送受信部51に対して限界入射角θ以下の入射角で入射する場合である。以下、この条件を考える。
【0029】
ドップラーセンサ5の送受信部51と第2平面P2との距離をxとおき、ドップラーセンサ5の送受信部51と第1平面P1との距離をyとおく。そして、図1に示すように蛍光灯2から発光部の断面の接線方向に出射して第1平面P1に対し限界入射角θ(0<θ<90)で入射して反射された輻射ノイズが送受信部51において蛍光灯2に近い側の端に入射するようなドップラーセンサ5の位置(以下、「限界入射位置」と呼ぶ。)を上記のxとyとで表現することを考える。つまり、上記の限界入射位置よりもxが大きい又はyが小さいとき、上記の輻射ノイズはドップラーセンサ5の動作に影響しないことになる。
【0030】
以下、蛍光灯2の発光部の中心軸Oに直交し且つドップラーセンサ5の送受信部51を含む断面上で、上記のxとyとが満たすべき条件を求める。
【0031】
まず、上記断面と第1平面P1と第2平面P2との交点をAとおく。また、蛍光灯2の発光部の断面に対する接線であって、傾きの方向がドップラーセンサ5に向かって第1平面P1に近付く方向(図1での右上がり方向)であり、第1平面P1の垂線とのなす角が限界入射角θとなるような接線のうち、ドップラーセンサ5の送受信部51に近い側の接線に関し、第1平面P1との交点をQとおき、蛍光灯2の発光部との接点をPとおく。つまりAO=dであり、OPは蛍光灯2の発光部の半径rに一致する。
【0032】
すると、xが満たすべき条件は、x>AQ+ytanθと表される。
【0033】
さらに、第1平面P1と平行であって且つ上記の中心軸Oを含むような仮想平面である第3平面P3を考え、第3平面P3と上記の接線との交点をBとおき、上記の点Qから第3平面P3に降ろした垂線と第3平面P3との交点をCとおく。すると、三角形QBCと三角形OBPとの相似から、角BOPは角BQCすなわち限界入射角θに等しいから、線分OBの長さはr/cosθと表される。従って、AQ=OC=BC+OB=dtanθ+r/cosθとなる。
【0034】
これをx>AQ+ytanθに代入すると、蛍光灯2から出射した輻射ノイズがカバー4での反射後にドップラーセンサ5の送受信部51に対して限界入射角θ以下の入射角で入射することを防ぐために、満たされるべき条件は次式のようになる。
【0035】
【数2】

【0036】
言い換えると、仮に蛍光灯2をカバー4の内面(第1平面P1)に関して対称な位置に配置したとしてもドップラーセンサ5の検出範囲に入らないように、蛍光灯2とカバー4とドップラーセンサ5との位置関係を決定している。
【0037】
上記構成によれば、蛍光灯2で発生した輻射ノイズは少なくともカバー4での1回の反射ではドップラーセンサ5に入射しないので、蛍光灯2で発生した輻射ノイズがドップラーセンサ5に入射しにくい。
【0038】
なお、小型化の観点では、xは上記範囲内で可能な限り小さくされることが望ましい。
【0039】
また、カバー4がドップラーセンサ5の動作に与える影響をより低く抑えるためには、図2に示すように、カバー4の厚さ方向(図2での左右方向)から見てドップラーセンサ5の送受信部51の少なくとも一部がカバー4に重ならないように(つまり、照明器具1の外側から見てドップラーセンサ5の送受信部51の全体がカバー4に覆われることがないように)、カバー4の寸法形状及びカバー4とドップラーセンサ5との位置関係がそれぞれ決定されていることが望ましい。
【0040】
さらに、図2の例ではy>dとされている。また、図2の照明器具1は、ドップラーセンサ5が蛍光灯2よりも下側に位置するような向きで壁面6に取り付けられている。また、蛍光灯2の発光部の軸方向(図1や図2での紙面に直交する方向)でのドップラーセンサ5の配置としては、例えば蛍光灯2の発光部の軸方向の中央部付近に配置することができる。このように、上式を満たす範囲内で、蛍光灯2とドップラーセンサ5との位置関係は、意匠性等を考慮して適宜変更することができる。
【0041】
各部寸法の具体的な数値の一例を挙げると、蛍光灯2の発光部の半径rが13mm、基準距離dが27mm、限界入射角θが30°、第1平面P1と送受信部51との間の距離yが49mmである場合には、第2平面P2と送受信部51との間の距離xは74mm以上とされる。
【0042】
また、カバー4における反射を抑えるためには、カバー4の厚さは、ドップラーセンサ5が送信する電波の、カバー4中での半波長の整数倍とされることが望ましい。例えば、カバー4の材料を比誘電率が6.2の強化ガラスとし、ドップラーセンサ5が送信する電波の周波数を24.15GHz(波長12.4mm)とすると、カバー4中での上記電波の半波長は12.4/(2・√6.2)≒2.5mmとなるから、カバー4の厚さは例えば2.5mmの2倍の5mmとすればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 照明器具
2 蛍光灯
4 カバー
5 ドップラーセンサ
51 送受信部(受信部)
52 境界線
O 中心軸
P1 第1平面
P2 第2平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のカバーと、
円柱形状の発光部を有し前記発光部の中心軸を前記カバーに平行として前記カバーの厚さ方向の一方側に配置された直管型の蛍光灯と、
前記カバーの前記一方側の面を含む第1平面に関して前記蛍光灯と同じ側に配置されるとともに、前記第1平面の一部を含む所定の検出範囲から入射する電波を受信する受信部を有するドップラーセンサとを備え、
前記蛍光灯の発光部の中心軸に直交する断面であって前記受信部を含む断面における前記検出範囲の境界線であって前記蛍光灯に近い側の境界線と前記第1平面の垂線とがなす角θと、前記発光部の中心軸と前記第1平面との距離dと、前記発光部の半径rと、前記第1平面と前記受信部との距離yと、前記発光部の中心軸を含み前記第1平面に直交する第2平面と前記受信部との距離xとが、次式
【数1】

の条件を満たすことを特徴とするドップラーセンサ付き照明器具。
【請求項2】
前記ドップラーセンサは、前記カバーの厚さ方向から見て少なくとも一部が前記カバーに重ならないことを特徴とする請求項1記載のドップラーセンサ付き照明器具。
【請求項3】
前記ドップラセンサは、前記蛍光灯の発光部の軸方向の中央部付近に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のドップラーセンサ付き照明器具。
【請求項4】
y>dであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のドップラーセンサ付き照明器具。
【請求項5】
前記ドップラーセンサが前記蛍光灯よりも下側に位置するように固定して用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のドップラーセンサ付き照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−112745(P2012−112745A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260885(P2010−260885)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】