説明

ドライアイ治療用具

【課題】 より効果的にマイボーム腺の機能改善を図る。
【解決手段】 ドライアイ治療用具1は、目及び目の周辺を覆った状態で顔面に装着される用具本体10と、この用具本体10を顔面に装着する固定用ベルト14と、用具本体10に収納されるエアバック18と、このエアバック18に対してエアを出し入れすることにより該エアバック18を間欠的に膨張させる電動エアポンプおよび電磁バルブ等のエアバック駆動手段とを備えている。なお、電動エアポンプおよび電磁バルブは、用具本体10とは別体のコントローラ25に収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼瞼縁にある涙液の油層成分の分泌腺の機能を促すことによりドライアイの改善に役立つドライアイ治療用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のパソコンの普及により、企業等ではオフィスワークの一形態として冷暖房が完備された室内で長時間ディスプレイ装置に向かって作業を行うシーンが増えており、これにより角膜や結膜が乾燥して目に不快感を覚えるドライアイが急増している。これは、ディスプレイ装置の凝視による瞬き回数の減少と空気の乾燥により涙量が不足することに因るものと考えられる。
【0003】
また、眼瞼縁にあるマイボーム腺とよばれる外分泌腺の機能不全もその要因の一つとして挙げられる。すなわち、涙液は、その主成分である水層を眼球側のムチン層と表面側(眼球側とは反対側)の油層との間に挟み込んだ三層からなり、これらの層のうちマイボーム腺から分泌される油分を主成分として形成される油層は水層の蒸発を防止する役割を果たしているが、何らかの原因でマイボーム腺が詰まる場合があり、このような場合には油分の分泌が不足して油層の形成が不完全となり、その結果、水層が蒸発し易くなりドライアイを引き起こしてしまう。
【0004】
そこで、近年では、眼瞼部分を温めることによりその温熱効果によってマイボーム腺に詰まった固形の分泌物を溶かし、マイボーム腺の機能改善を図るようにしたリング状のワイヤーヒータ内蔵のアイマスクが提案されている(特許文献1)。このアイマスクでは、さらにマスク自体にプラスチックの芯材を設けることにより目及び目の周辺に対して軽い圧迫刺激を与え、これによりマイボーム腺からの油分の分泌を促すような工夫もなされている。
【特許文献1】特開2000−225141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイボーム腺の機能改善を図る上では、上記のように眼瞼部分に対する温熱効果が有効であるが、それにも増してマイボーム腺に対する圧迫刺激がより効果的であることが近年の試験研究の成果として分ってきた。この点、上記従来のアイマスクは、目及び目の周辺に対して軽い圧迫刺激を与え得るように構成されているため有効ではあるが、マスク自体に厚みを持たせて目及び目の周辺を軽く均一に押えるだけのものに過ぎないため、ドライアイが改善される程度にマイボーム腺から十分に油分を分泌させ得るものではなかった。従って、この点に改良の余地が残されている。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、より効果的にマイボーム腺の機能を改善することができ、これによってドライアイの改善に役立つドライアイ治療用具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本願出願人は試験研究を繰り返した結果、眼瞼縁に対して連続的に圧迫刺激を与えるよりも間欠的に圧迫刺激を与える方がマイボーム腺に対する刺激効果が高く、マイボーム腺の機能が改善される、つまり油分の分泌が良くなることを見出した。そして、この事実に基づき次のような治療用具を考えついた。すなわち、本発明に係るドライアイ治療用具は、エアバックを備え、かつ目及び目の周辺を覆う状態で顔面に密着させる用具本体と、この用具本体の前記エアバックに対してエアを出し入れすることにより該エアバックを間欠的に膨張させるエアバック駆動手段とを備えているものである(請求項1)。
【0008】
この治療用具は、目及び目の周辺を覆うように用具本体を顔面に密着させた状態で用いる。そして、この状態でエアバック駆動手段を作動させると、用具本体に設けられたエアバックが膨縮を繰り返し(つまり間欠的に膨張し)、その結果、眼瞼縁に間欠的な圧迫刺激が与えられてマイボーム腺の機能が改善される。
【0009】
なお、エアバックは、結果的にマイボーム腺の機能を改善させ得るように目及び目の周辺を圧迫できるものであればよいが、マイボーム腺に対してより効果的に圧迫刺激を与えるには、膨張状態において眼瞼縁を直接圧迫するようにエアバックが設けられているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
また、上記の治療用具においては、用具本体に、眼瞼縁を加温可能なヒータが設けられているのがより好ましい(請求項3)。
【0011】
この構成によると、マイボーム腺に対してエアバックによる圧迫刺激のみならず、ヒータによる温熱効果を与えることが可能となり、マイボーム腺の機能改善をより効果的に図ることが可能となる。
【0012】
この場合、ヒータの温度を変更可能な温度変更手段を備えているのが好ましく(請求項4)、これによれば被施療者に最適な温熱効果を与えることが可能となる。なお、このようにヒータを設ける場合には、用具本体のうちヒータよりも顔面側の部分に、該ヒータの赤外線から眼を保護する保護部材が設けられているのが好ましい(請求項5)。
【0013】
また、上記のドライアイ治療用具においては、用具本体のうちエアバックを挟んで顔面側とは反対側に背面板が設けられるとともにこの背面板に固定用ベルトが連結され、用具本体を目及び目の周辺に沿わせて前記固定用ベルトを頭部に装着することにより前記用具本体が顔面に密着した状態で保持されるように構成されているのが好ましい(請求項6)。
【0014】
この構成によると、固定用ベルトを介して頭部に拘束される背面板と顔面との間でエアバックが膨張することとなる。そのため、エアバックが膨張するに伴いその膨張圧が有効に眼瞼縁に作用するようになり、より確実に圧迫刺激を与えることが可能となる。
【0015】
なお、エアバックは片眼だけを覆うものであってもよいが、例えば両眼を一体的に覆うアイマスク形状のものであれば(請求項7)、両眼のマイボーム腺に対して同時に圧迫刺激を与えることが可能となるため効率よく治療を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記のような請求項1〜9に係る治療用具によると、眼瞼縁に対して間欠的に圧迫刺激を与えることができるため、より効果的にマイボーム腺の機能を改善することができる。従って、涙液の水層の蒸発原因となる油層の形成不良を効果的に解消することができ、これによってドライアイの症状が出ている場合にはその症状を改善することができ、またドライアイに至っていない場合には発症に至るのを有効に予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は本発明に係るドライアイ治療用具を概略的に示している。同図に示すように、ドライアイ治療用具1(以下、治療用具1と略す)は、両眼を一体に覆うアイマスク型の用具本体10とコントローラ25とを有しており、この用具本体10を目及び目の周辺に密着させた状態で顔面に装着し、コントローラ25の操作に基づき治療を行うように構成されている。治療用具1の装着は、用具本体10の両端にそれぞれ設けられた固定用ベルト14を頭部に巻きつけ、後頭部で両ベルト14の末端部分に設けられた面ファスナー15を互いに止め合わせることにより行うようになっている。
【0019】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、特に指示する場合を除き、用具本体10を顔面に装着した状態に基づいて治療用具1の各部の説明を行うものとする。
【0020】
前記用具本体10は、図2に示すように、顔面への装着方向(図2の左右方向;以下単に装着方向という)に互いに重なり合う扁平な二つの袋体12a,12b(第1袋体12a、第2袋体12bという)を有している。
【0021】
外側の袋体12a、すなわち顔面側とは反対側に位置する第1袋体12aには、例えば樹脂材料等、ある程度硬質で、かつ軽量の材料からなるアイマスク型の背面板16が収納されている。この背面板16の両端には第1袋体12aを介して前記固定用ベルト14がそれぞれ連結されており、これによって後記エアバック18を背面板16で顔面側に押え込むように構成されている。
【0022】
一方、第2袋体12bには、外側から順にエアバック18、ヒータ20および保護シート22(本発明に係る保護部材に相当)が重ねられた状態で一体に収納されている。
【0023】
エアバック18は、例えばビニール製の袋体であって両眼およびその周囲を一体に覆うアイマスク型の形状をしている。このエアバック18は、エアパイプ19および電磁バルブ39を介して電動エアポンプ40に接続されており(図3参照)、エアの給排切換えに応じて前記装着方向に膨縮(膨張・縮小)し、その膨張状態において両眼とその周囲の部分、特に眼瞼縁を直接圧迫し得るようになっている。
【0024】
ヒータ20は、例えばカーボンファイバーからなるワイヤーヒータで、図1に示すように両眼の部分にそれぞれ対応して設けられている。各ヒータ20は、例えば前記エアバック18の顔面側の面に貼付けられ状態で設けられており、リード線21を介して上記コントローラ25から電力供給を受けることにより大凡30〜45°Cの温度範囲内において発熱するようになっている。なお、ヒータ20は、顔面に沿って波形に引き回された状態で例えば一対の樹脂フィルム等の間に挟み込まれており、これにより全体として平板状に構成され、閉眼時の眼瞼の一部又は全部を覆い得るようになっている。
【0025】
保護シート22は、眼への赤外線の照射を緩和することにより眼を保護するためのもので、例えばアルミ箔からなり、前記各ヒータ20を顔面側から覆うように前記エアバック18に貼付けられた状態で設けられている。
【0026】
前記コントローラ25は、図1に示すように用具本体10とは別体に設けられており、上記エアパイプ19およびリード線21を含む操作用ライン24を介して用具本体10に連結されている。
【0027】
図3は、コントローラ25の構成をブロック図で示している。この図に示すようにコントローラ25には、電磁バルブ39、電動エアポンプ40およびこれらの駆動回路36,37と、前記ヒータ20の駆動回路38と、表示装置26と、操作スイッチ27(以後SW27という)と、制御部30とが一体に設けられている。
【0028】
制御部30は、周知のCPU31と、そのCPU31を制御する種々のプログラムなどを予め記憶するROM32と、装置動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM33と、入出力インタフェース34等とから構成されている。入出力インタフェース34には、上記SW27、表示装置26および各駆動回路36,37,38が接続されており、被施療者による動作指示がSW27の操作により制御部30に入力されると、この動作指示に対応した制御信号が制御部30から各駆動回路36,37,38に出力され、これによって被施療者による動作指示に従って用具本体10が作動するようになっている。
【0029】
SW27としては、図1に示すように電源SW27a、治療の時間選択SW27b、エアバック18の圧力選択SW27c、ヒータ20の温度設定SW27dおよびスタートSW27eが設けられている。ここで、治療時間としては例えば5分、10分、15分のうちから選択可能となっている。また、エアバック18の圧力としては高(50000〜60000Pa)、低(20000〜30000Pa)のいずれかを、さらにヒータ20の温度としては高(40〜43°C)、低(37〜39°C)のいずれかを選択可能となっている。そして、被施療者が前記表示装置26に表示される選択内容表示を見ながら各SW27b,27c,27dを操作することにより所望の条件で用具本体10を作動させ得るようになっている。なお、当実施形態では、温度設定SW27dおよび表示装置26等により本発明に係る温度変更手段が構成されている。
【0030】
駆動回路36,37,38は、コントローラ25に内蔵される図外のバッテリに接続されており、入出力インタフェース34を介して制御部30から出力される制御信号に応じた電流をそれぞれ上記電磁バルブ39、電動エアポンプ40およびヒータ20に供給するものである。
【0031】
電動エアポンプ40、電磁バルブ39および上記エアパイプ19は本発明に係るエアバック駆動手段を構成するもので、電磁バルブ39の切換えに応じて上記エアバック18に対してエアの給排を行うものである。詳しくは、エアバック18と電磁バルブ39との間には前記エアパイプ19として供給側と排出側の2本のエアパイプ(供給側パイプ、排出側パイプという)が設けられており、エアバック18を膨張させる際には、排出パイプを閉じた状態で、電動エアポンプ40により外気(エア)を取込みつつ供給側パイプを通じてエアバック18に供給し、一方、エアバック18を収縮させる際には、供給側パイプを閉じた状態で、電動エアポンプ40により排出側パイプを通じてエアバック18内のエアを吸い出しつつそのエアを外部放出するように電磁バルブ39が切換制御されるようになっている。なお、当実施形態では電動エアポンプ40によるエアの給排量は18L/minに設定されており、これによりエアバック18が3秒かけてゆっくりと膨張し、その後3秒かけてゆっくりと収縮することにより6秒間隔で間欠的にエアバック18が膨張するようになっている。
【0032】
次に、以上のように構成された治療用具1の使用方法と作用効果について説明する。
【0033】
治療用具1を使用するには、まず、電源SW27aをONし、表示装置26を見ながらSW27b〜W27dを操作することにより被施療者が治療時間、エアバック18の圧力およびヒータ20の温度をそれぞれ設定する。
【0034】
この動作設定が完了した後、用具本体10を装着する。用具本体10の装着は、上述した通り用具本体10を眼の部分に密着させて固定用ベルト14を頭部に巻きつけ、後頭部で両ベルト14を互いに止め合わせることにより行う。こうして用具本体10の装着が完了した後、スタートSW27eをONする。この際、被施療者は手探りでスタートSW27eを操作することとなるため、スタートSW27eは他のスイッチ27b等と容易に判別することができるように設けられている。
【0035】
スタートSW27eをONすると、電動エアポンプ40が作動してエアバック18にエアが供給され、これにより該エアバック18が膨張し、被施療者の目及び目の周辺に対して圧迫刺激が与えられる。そしてその後、電磁バルブ39が切換えられ、エアバック18内のエアが強制的に排気されることによりエアバック18が収縮状態となり、以後、このエアバック18の膨張と収縮とが設定周期で繰り返されることにより、被施療者の目及び目の周辺に対して断続的に圧迫刺激が与えられることとなる。この際、設定圧力に対応したタイミングで電磁バルブ39が切換えられることによりエアバック18の膨張率が制御され、その結果、被施療者により設定された圧力(高又は低)で圧迫刺激が与えられることとなる。なお、エアバック18は、固定用ベルト14を介して頭部に拘束される背面板16と顔面との間に設けられ、背面板16により顔面側に押え込まれるようになっているため、エアバック18が膨張すると、これに伴いその膨張圧が有効に目及び目の周辺に作用することとなる。
【0036】
また、スタートSW27eをONすると、エアバック18の膨縮動作に加えてヒータ20への通電が開始される。これによりヒータ20が発熱し、被施療者の目及び目の周辺に対し、上記の圧迫刺激に加えて温熱効果が与えられることとなる。このときも、設定温度に応じた電流がヒータ20に供給されることにより、被施療者により設定された温度(高又は低)で目及び目の周辺が温められることとなる。
【0037】
そして、予め被施療者により設定された時間が経過すると、エアバック18が収縮状態に戻されて電動エアポンプ40が停止するとともにヒータ20への電力供給が停止され、これにより治療用具1が停止状態となる。これにより治療が終了する。
【0038】
以上のような治療用具1によると、上記の通り目及び目の周辺、特に眼瞼縁に対してエアバック18による圧迫刺激を与えるとともにヒータ20による温熱効果を与えることができるので、これら双方の効果によりマイボーム腺の機能を改善すること、つまりマイボーム腺からの油分の分泌を促すことができる。
【0039】
特に、この治療用具1では、眼瞼縁に対する圧迫刺激に関し、上記の通りエアバック18の膨縮により間欠的に圧迫刺激を与えるように構成されているため、従来のように連続的に圧迫刺激を与えるだけの治療用具と比べると、より一層効果的にマイボーム腺からの油分の分泌を促すことができる。従って、涙液の水層の蒸発原因となる油層の形成不良を効果的に解消することができ、これによってドライアイの症状が出ている場合にはその症状を改善することができ、またドライアイに至っていない場合には発症に至るのを有効に予防することができるという効果がある。なお、エアバック18は、上述の通り3秒かけてゆっくりと膨張し、その後3秒かけてゆっくりと収縮するように構成されているので、急激な圧迫刺激を眼に与えることもない。
【0040】
また、この治療用具1では、エアバック18の圧力およびヒータ20の温度をそれぞれ高、低のいずれかのレベルに設定できるようになっているので、被施療者毎にドライアイを改善するのに最適な条件で用具本体10を作動させることができる。
【0041】
その上、この治療用具1では、ヒータ20に保護シート22を重ねて設けることによりヒータ20から眼への赤外線の照射を緩和するように構成されているので、マイボーム腺に対して温熱効果を与える一方で眼を確実に保護することができるという効果もある。
【0042】
表1に、上述した治療用具1を使用した場合の臨床結果を示す。
【0043】
この表は、マイボーム腺機能障害のあるドライアイ患者15名を5名ずつのグループに分け、グループ毎に下記の試験1〜試験3を、3日間、1日2回(朝・晩)、1回10分間実施した後に、涙液破壊時間(BUT;break up time of tear)、マイボーム腺分泌物の所見(分泌低下の程度観察)および自覚症状の経過観察を行った結果である。
・試験1;治療用具1を装着し、エアバック18のみ作動
・試験2;治療用具1を装着し、エアバック18及びヒータ20を作動
・試験3;治療用具1を装着し、エアバック18及びヒータ20ともに停止
なお、BUT値は、試験開始日および終了日に、眼の表面をフルオレセイン試薬にて染色し、細隙灯顕微鏡を用いて測定を行った。また、マイボーム腺分泌所見および自覚症状は、それぞれ以下の評価基準に従って評価した。
〈マイボーム腺分泌所見の評価基準〉
0;軽い圧迫で圧出される。透明、分泌過剰なし。
1;軽い圧迫で圧出される。混濁あり。
2;強い圧迫にて出る。混濁あり(典型例:歯磨き粉状態に圧出される)。
3;強く圧迫しても出ない。
【0044】
〈自覚症状の評価基準〉
0;乾燥感が全くない。
1;時々乾燥感があるが、日常生活に支障はない。
2;あまりひどくないが、常時乾燥感がある。
3;常時気になり憂鬱である。日常生活はなんとか普通にできる。
4;ひどく辛いが何とか我慢できる。日常生活に多大な影響がある。
5;我慢できない程辛い。
【0045】
【表1】

【0046】
この結果に示される通り、治療用具1を装着してエアバック18を作動させた場合(試験1,2)には、BUT、マイボーム腺分泌所見および乾燥感の自覚症状ともに大幅に改善されており、治療用具1を装着し眼瞼縁を間欠的に圧迫することによりマイボーム腺からの油分の分泌が効果的に促され、涙を安定形成していることが考察できる。
【0047】
ところで、以上説明した治療用具1は、本発明に係るドライアイ治療用具の好ましい実施形態であって、その具体的な構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態の治療用具1では、用具本体10に、両眼を一体に覆うアイマスク型のエアバック18が設けられ、さらに両眼に対応する箇所にヒータ20が設けられることにより両眼に対して同時に圧迫刺激や温熱効果を与え得るように構成されているが、用具本体10を眼帯型の形状とし、片眼だけに圧迫刺激や温熱効果を与えるような構成としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、固定用ベルト14により用具本体10を顔面に装着(保持)した状態で治療を行うように治療用具1が構成されているが、例えば固定用ベルト14を省略し、用具本体10を顔面に密着させて両手で支えた状態で治療を行うように構成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、マイボーム腺に温熱効果を与えるべく用具本体10にヒータ20を設けているが、温熱刺激に敏感な被施療者向けに、ヒータ20を省略した構成としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、エアバック18による膨張圧を確実にマイボーム腺に作用させるべく、用具本体10に背面板16を設け、膨張するエアバック18を外側から顔面側に押さえ込むように構成しているが、例えば用具本体10の素材自体をある程度硬質のものとすることにより背面板16を省略するようにしてもよい。勿論、固定用ベルト14の固定力だけでエアバック18による膨張圧を確実にマイボーム腺に作用させることができる場合には背面板16を省略するようにしてもよい。
【0052】
また、エアバック18のうち眼球部分に凹みを持たせる(ドーナッツ型に形成する)等して眼球部分の圧力がその周囲よりも若干低くなるように構成してもよい。このような構成によると眼球が不意に強く圧迫されるのを防止することができるため、例えば眼圧の高い被施療者なども安心して使用することが可能となる。
【0053】
また、上記実施形態では、6秒間隔でエアバック18を膨張させるようにしているが、これより短い時間、あるいは長い時間でエアバック18を膨張させたり、あるいは膨張後、その状態を一定時間(例えば1秒間)保持した後に収縮させるようにしてもよい。また、膨張過程で一時的(例えば1秒間)にエアの供給を停止させてエアバック18を段階的に膨張させることにより、眼瞼縁に対して段階的に圧迫刺激を与えるようにしてもよい。また、エアバックの膨縮周期を変更可能に構成してもよい。これによれば被施療者の年齢、性別、症状等に応じた最適な圧迫刺激を与えることが可能となる。要は、エアバック18を間欠的に膨張させるものであればよく、その具体的な膨縮のさせ方は、マイボーム腺に対して効果的に刺激を与え得るように適宜選定すればよい。
【0054】
また、上記実施形態では、エアバック駆動手段として電動エアポンプ40および電磁バルブ39等を設け、電磁バルブ39の切換えに応じてエアバック18に対するエアの給排を電動エアポンプ40により行うように構成しているが、例えばポンプとしてベローズ型ポンプを用い、ベローズの伸縮に伴いその内部エアをエアバック18に対して出し入れするように構成してもよい。この構成によると電磁バルブ39が不要となり、またエアパイプ19が一本で済むため治療用具1の構成を簡略化することができるという利点がある。
【0055】
また、上記実施形態では、治療時間、エアバック18の圧力およびヒータ20の温度を特定の値から選択設定するようになっているが、例えば一定の範囲内で無段階に設定できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るドライアイ治療用具を示す斜視概略図である。
【図2】ドライアイ治療用具を示す側面略図(固定用ベルトを省略した状態)である。
【図3】コントローラの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ドライアイ治療用具
10 用具本体
14 固定用ベルト
18 エアバック
20 ヒータ
25 コントローラ
26 表示装置
27 操作スイッチ(SW)
30 制御部
39 電磁バルブ
40 電動エアポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイの治療に用いる治療用具であって、
エアバックを備え、かつ目及び目の周辺を覆う状態で顔面に密着させる用具本体と、この用具本体の前記エアバックに対してエアを出し入れすることにより該エアバックを間欠的に膨張させるエアバック駆動手段とを備えていることを特徴とするドライアイ治療用具。
【請求項2】
請求項1に記載のドライアイ治療用具において、
前記エアバックは、その膨張状態において眼瞼縁を直接圧迫するように設けられていることを特徴とするドライアイ治療用具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドライアイ治療用具において、
前記用具本体に、眼瞼縁を加温可能なヒータが設けられていることを特徴とするドライアイ治療用具。
【請求項4】
請求項3に記載のドライアイ治療用具において、
前記ヒータの温度を変更可能な温度変更手段を備えていることを特徴とするドライアイ治療用具。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のドライアイ治療用具において、
前記用具本体のうちヒータよりも顔面側の部分に、該ヒータの赤外線から眼を保護する保護部材が設けられていることを特徴とするドライアイ治療用具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載のドライアイ治療用具において、
前記用具本体のうちエアバックを挟んで顔面側とは反対側に背面板が設けられるとともにこの背面板に固定用ベルトが連結され、用具本体を目及び目の周辺に沿わせて前記固定用ベルトを頭部に装着することにより前記用具本体が顔面に密着した状態で保持されるように構成されていることを特徴とするドライアイ治療用具。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のドライアイ治療用具において、
前記エアバックは両眼を一体的に覆うアイマスク形状であることを特徴とするドライアイ治療用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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