説明

ドライバ状態確認装置

【課題】運転者に煩わしさを与えることなく該運転者の状態を確認すること。
【解決手段】ドライバ状態確認装置1は、所定の運転操作が行われたかを判定して車両の運転者の状態を確認する装置である。この装置1は、所定の運転操作が所定の制限時間内に検出されたか否かを判定するドライバ状態判定部12と、車両の走行を支援するLKA2又はACC3が作動しているか否かを判定する動作判定部11と、LKA2又はACC3が作動していると判定された場合に上記制限時間を長くする制限時間調整部12aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の運転操作を検出して運転者の状態を確認するドライバ状態確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の運転操作を検出して、運転者の状態を確認したり運転者を覚醒させたりする技術が知られている。例えば下記特許文献1には、運転者の意識レベルの低下を防止するための警報を発する安全装置が記載されている。この安全装置では、警報装置の起動を制御する積分回路に対して電圧が徐々に送られ、電圧積分値が所定の設定値に達すると警報装置が作動する。ただし、その電圧送信時に所定の操作(例えば、ウィンドウ開閉スイッチの操作、ギヤチェンジ、ブレーキ操作、ステアリング操作、アクセル操作など)に関する一定の量又は頻度が検出されると電圧送信がリセットされる。また、専用のリセットスイッチが操作されると電圧送信がリセットされる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭50−135738号公報
【特許文献2】特開昭62−014420号公報
【特許文献3】特開昭54−024569号公報
【特許文献4】特開2004−336884号公報
【特許文献5】特開2004−203281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の安全装置では警報装置を作動させるための設定値が固定されているので、運転者の状態確認が現実の運転環境に関係なく一律に行われてしまう。その結果、例えば運転者にとって必要のない場面で警報が鳴る等の現象が起こり得、結果として運転者に煩わしさを与えてしまうことになりかねない。
【0005】
そこで本発明は、運転者に煩わしさを与えることなく該運転者の状態を確認することが可能なドライバ状態確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドライバ状態確認装置は、所定の運転操作が行われたかを判定して車両の運転者の状態を確認する装置であって、所定の運転操作が所定の制限時間内に検出されたか否かを判定する第1判定手段と、車両の走行を支援する走行支援手段が作動しているか否かを判定する第2判定手段と、走行支援手段が作動していると第2判定手段により判定された場合に制限時間を長くする時間調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような発明によれば、車両の走行を支援する走行支援手段が作動している場合には、所定の運転操作の有無を判断するための制限時間がより長く設定される。走行支援手段が作動していればそうでないときよりも車両の安全性が高いといえるので、制限時間を長くして運転者の状態を確認する頻度を下げることが可能である。そして、このように制限時間を調整することで、運転者に煩わしさを与えることなく該運転者の状態を確認することが可能になる。
【0008】
本発明のドライバ状態確認装置では、時間調整手段が、作動していると判定された走行支援手段の種類に応じて設定された値を制限時間に加算することで該制限時間を長くしてもよい。
【0009】
この場合には、制限時間の増分幅が走行支援手段の種類毎に細かく設定されるので、現実の運転環境(車両内機器の作動状況)に合わせてより柔軟に運転者の状態を確認することができる。
【発明の効果】
【0010】
このようなドライバ状態確認装置によれば、車両の走行を支援する走行支援手段が作動している場合には、所定の運転操作を検出する際の制限時間が長く設定されるので、運転者に煩わしさを与えることなく該運転者の状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るドライバ状態確認装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すドライバ状態確認装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
まず、実施形態に係るドライバ状態確認装置1の機能及び構成を説明する。ドライバ状態確認装置1は、車両に搭載され、運転者が覚醒しているか否かを確認するための装置である。具体的には、ドライバ状態確認装置1は所定の運転操作を検出するか又は運転者が応答要求に対して所定の応答操作をした場合に、その運転者が覚醒していると判断する。
【0014】
ドライバ状態確認装置1は電子制御ユニット(ECU)上で実現され、図1に示すように機能的構成要素として動作判定部11、ドライバ状態判定部12、及び応答要求部13を備えている。このドライバ状態確認装置1は、自車両が車線内を走行するように運転者を支援する車線維持支援装置(Lane Keeping Assist system:LKA)2と、先行車両と自車両との距離を一定以上に保つために運転者を支援するための車間制御装置(Adaptive Cruise Control:ACC)3という二種類の走行支援手段に接続されている。またドライバ状態確認装置1は運転に関する所定の操作インタフェース4とも接続されている。
【0015】
動作判定部11は、LKA2及びACC3が作動しているか否かを判定する手段である。具体的には、動作判定部11はLKA2又はACC3が起動したことを、これら走行支援手段から入力される信号を受信したり、あるいは自ら走行支援手段を監視してその起動を検出するなどして確認する。そして動作判定部11は、作動中の走行支援手段を特定する識別子を含む起動情報を生成してドライバ状態判定部12に出力する。
【0016】
ドライバ状態判定部12は、車両の運転者により所定の制限時間内に所定の運転操作が行われたか否かを判定し、その時間内に所定の操作が行われなかった場合には運転者に対して応答を要求する手段である。車両が発進し始めたことを契機として、ドライバ状態判定部12は時間tを計るタイマを起動する。この時間tは、車両が停止するか又は所定の運転操作が行われた場合に0にリセットされる。一方、時間tが制限時間TLに達すると、ドライバ状態判定部12は運転者の覚醒レベルが低下している可能性があると判定し、応答要求信号を生成して応答要求部13に出力する。応答要求信号を出力すると、ドライバ状態判定部12は時間tを0にリセットして再び計時を開始する。したがって、制限時間TLはドライバの状態を確認する時間間隔(確認インターバル)とも言える。
【0017】
ドライバ状態判定部12は、制限時間TLを車両の状況に応じて設定するために制限時間調整部12aを備えている。まず車両が発進し始めると、制限時間調整部12aは予め記憶している初期値T0を制限時間TLとして設定する。続いて制限時間調整部12aは、動作判定部11から入力された起動情報に基づいてどの走行支援手段が作動しているかを判定し、その判定結果に基づいて制限時間TLをT0よりも長く設定する。このために制限時間調整部12aは、LKA2が作動している場合に加算する値TLKAと、ACC3が作動している場合に加算する値TACCとを予め記憶している。したがって制限時間TLは、LKA2のみが作動中であれば(T0+TLKA)となり、ACC3のみが作動中であれば(T0+TACC)となり、これら二つの装置が作動中であれば(T0+TLKA+TACC)となる。このように制限時間TLを変更するのは、LKA2やACC3が作動していれば車両の安全性がより高く、運転者の状態を確認する頻度を下げてもよいといえるからである。
【0018】
なお、加算値TLKA,TACCが固定値である必要はなく、それらを可変値としてもよい。例えば制限時間調整部12aは、ACC3において算出された、先行車両と衝突するまでの時間(Time to Collision:TTC)に基づいて加算値TACCを設定してもよい。
【0019】
ドライバ状態判定部12は、上記のように設定される制限時間TLを用いて運転操作の有無を判定する。ドライバ状態判定部12は操作インタフェース4と接続されており、その操作インタフェース4から入力されてくる信号に基づいて、所定の運転操作が行われたか否かを判定する。
【0020】
ここで、所定の運転操作とは、車両を走行させるための操作や、運転中に行う付随的な操作のことをいう。したがって操作インタフェース4としては、ステアリング、アクセル、ブレーキ、クラッチペダル、シフトレバー、ウィンカーレバー(スイッチ)、ヘッドライトレバー(スイッチ)、オーディオ機器のスイッチ、カーナビゲーションシステムのスイッチ、エア・コンディショナーのスイッチ、ウィンドウやサンルーフの開閉スイッチなどが挙げられる。もちろん、操作インタフェース4の種類はこれらに限定されない。また、運転操作の有無の判定方法としては、例えば一定値以上のステアリング操作が行われた場合、アクセル操作量(ストローク)の変動量が一定値以上になった場合、シフトレバーが操作された場合、あるいはカーナビゲーションシステムのスイッチが押された場合などに運転操作があったと判定することが考えられるが、これらに限定されない。
【0021】
制限時間TL以内に所定の運転操作を検出した場合には、ドライバ状態判定部12は上述したように時間tを0にリセットして再度計時し始めるとともに、引き続き運転操作の検出を行う。
【0022】
一方、何らの運転操作も検出されることなく時間tが制限時間TLに達した場合には、ドライバ状態判定部12は応答要求信号を生成して応答要求部13に出力する。続いてドライバ状態判定部12は時間tを0にリセットして再度計時し、走行支援手段の作動状態に基づいて制限時間TLを上記のように再度設定した上で、引き続き運転操作の検出を行う。
【0023】
応答要求部13は、運転者に所定の応答操作を要求する手段である。応答要求信号が入力されると、応答要求部13は例えばアラームや所定のメッセージ表示などにより運転者に応答操作の必要性を通知する。
【0024】
この通知を受けた運転者が所定のインタフェース(例えば応答用スイッチ)を操作することで応答すれば、ドライバ状態判定部12は運転者の覚醒レベルは通常の範囲であると判定する。一方、応答要求を通知した後も運転者から何らの入力もない場合には、ドライバ状態判定部12は運転者の覚醒レベルが下がっていると判定する。
【0025】
次に、図2を用いて、車両が発進した時点からのドライバ状態確認装置1の動作を説明する。車両が発進すると、ドライバ状態判定部12が時間tのタイマを起動して計時し始めると共に(ステップS1)、制限時間調整部12aが制限時間TLの設定を行う。具体的には、制限時間調整部12aはまず制限時間TLを初期値T0に設定し(ステップS2)、続いて制限時間調整部12aは、動作判定部11から入力された起動情報に基づいて、LKA2が作動中であれば(ステップS3;YES)制限時間TLに値TLKAを加算し(ステップS4)、ACC3が作動中であれば(ステップS5;YES)制限時間TLに値TACCを加算する(ステップS6)。
【0026】
このように設定された制限時間TLを用いてドライバ状態判定部12は運転者の状態を判定する。このとき、操作インタフェース4からの信号に基づいて所定の運転操作を検出した場合には(ステップS7;YES)、ドライバ状態判定部12は時間tを0に一旦リセットして引き続き運転者の状態を監視する(ステップS8)。この場合、運転者には特別な応答操作は要求されず、運転者は通常の運転操作を続けることができる。
一方、その時間tが制限時間TLに達した場合には(ステップS9;YES)、ドライバ状態判定部12は運転者の覚醒レベルが一定値以下に下がった可能性があると判定し、応答要求部13が所定の応答要求を運転者に向けて出力する(ステップS10)。このとき、ドライバ状態判定部12は時間tを0に一旦リセットした上で(ステップS11)、再びステップS1から処理を繰り返す。
【0027】
なお、走行していた車両が止まった場合にはドライバ状態確認装置1も停止し、再び車両が発進したら図2に示す処理が再び最初から実行される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両の走行を支援するLKA2又はACC3が作動している場合には、所定の運転操作の有無を判断するための制限時間(確認インターバル)TLがより長く設定される。このように制限時間TLを調整することで、覚醒レベルが通常の運転者に煩わしさを与えることなく該運転者の状態を確認することが可能になる。
【0029】
また本実施形態によれば、制限時間TLの増分幅が走行支援手段の種類毎に細かく設定される。例えば、LKA2のみが作動している場合とACC3のみが作動している場合とで制限時間TLを異ならせることができる。また、両者が作動していれば制限時間TLはより長く設定される。このように制限時間TLを設定することで、現実の運転環境(車両内機器の作動状況)に合わせてより柔軟に運転者の状態を確認することができる。
【0030】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0031】
上記実施形態では走行支援手段としてLKA2及びACC3を示したが、ドライバ状態確認装置はこれらのうちどちらか一方のみと接続されていてもよい。また、走行支援手段の種類は上記のものに限定されない。
【0032】
上記実施形態では制限時間TLの増分幅を走行支援手段の種類に応じて細かく設定したが、制限時間を長くする方法はこれに限定されない。例えば、時間調整手段は作動中の走行支援手段の個数や種類に依らず常に一定の時間を制限時間に加算してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…ドライバ状態確認装置、2…車線維持支援装置(LKA)、3…車間制御装置(ACC)、4…操作インタフェース、11…動作判定部(第2判定手段)、12…ドライバ状態判定部(第1判定手段)、12a…制限時間調整部(時間調整手段)、13…応答要求部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の運転操作が行われたか否かを判定して車両の運転者の状態を確認するドライバ状態確認装置であって、
前記所定の運転操作が所定の制限時間内に検出されたか否かを判定する第1判定手段と、
前記車両の走行を支援する走行支援手段が作動しているか否かを判定する第2判定手段と、
前記走行支援手段が作動していると前記第2判定手段により判定された場合に前記制限時間を長くする時間調整手段と、
を備えることを特徴とするドライバ状態確認装置。
【請求項2】
前記時間調整手段が、作動していると判定された前記走行支援手段の種類に応じて設定された値を前記制限時間に加算することで該制限時間を長くする、
請求項1に記載のドライバ状態確認装置。


【図1】
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【図2】
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