説明

ドライブシャフトのダイナミックダンパ取付構造

【課題】ドライブシャフトが破断した場合でもドライブシャフトの振れ回りを防止できるドライブシャフトのダイナミックダンパ取付構造を提供する。
【解決手段】ドライブシャフトの長さ方向中間部に取り付けられたダイナミックダンパであって、ドライブシャフト1の長さ方向中間部に最弱部11が形成されている。ドライブシャフト1が最弱部11で破断したとき、破断部の振れ回りをマス部21が規制できるように、マス部21は剛性を有する金属材料により形成され、かつ最弱部を中心として所定の軸方向領域に亘って覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイナミックダンパへのダイナミックダンパの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、変速機のデファレンシャルギヤと駆動輪との間にドライブシャフトを設け、このドライブシャフトによって駆動力を駆動輪に伝達する車両が知られている。ドライブシャフトの回転に伴う騒音や振動を抑制するために、ドライブシャフトの長さ方向中間部にダイナミックダンパを設けたものがある。
【0003】
一般に、ダイナミックダンパは、ドライブシャフトの外径より所定量だけ大径とした円筒状のマス部と、マス部の軸方向両側に弾性支持部とを形成し、弾性支持部をドライブシャフトに固定した構造のものである。
【0004】
従来のドライブシャフトでは、軸方向両端のジョイントブーツ内に位置する部位が細くなっていることが多く、万一駆動輪への異常な負荷によってドライブシャフトが破断した場合、このジョイント部で破断する可能性が高い。この場合、車両速度が高く、シャフトの回転速度が高いと、ジョイントブーツが破れてシャフトが振れ回り、周辺部品(例えばブレーキホース等)にダメージを与える可能性がある。一方、両端部が最弱部でないドライブシャフトを使用した場合には、ドライブシャフトがどの部位で破断するかは不明である。そのため、上記と同様に破断部位でシャフトが振れ回り、周辺部品にダメージを与える可能性がある。
【0005】
特許文献1には、ドライブシャフトの長さ方向中間部に環状凹溝を形成し、左右対称のダイナミックダンパの中心部内周面に環状凸部を形成し、この環状凸部をドライブシャフトの環状凹溝に嵌合し、締結バンドを不要としたものが開示されている。
【0006】
特許文献2には、ドライブシャフトの長さ方向中間部に所定長さの小径部を形成し、この小径部を跨いでダイナミックダンパを装着し、ダイナミックダンパの軸方向両端部を締結バンドでドライブシャフトの外周部に締結する構造が開示されている。
【0007】
特許文献1では、ドライブシャフトの環状凹溝が最弱部であると仮定した場合、ドライブシャフトが環状凹溝の部分で破断すると、破断部がダイナミックダンパから簡単に抜けてしまう。そのため、ダイナミックダンパがドライブシャフトの破断部を保持することができず、ドライブシャフトの振れ回り防止ができない。
【0008】
特許文献2では、小径部が最弱部であると仮定しても、小径部が所定の長さを有するので、小径部のどの箇所で破断するかは不明である。小径部の外周をダイナミックダンパで覆っているが、小径部の端部で破断した場合には、破断部がマス部から外れて屈曲自在となるため、ドライブシャフトの振れ回りを防止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−132027号公報
【特許文献2】特開平8−28627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ドライブシャフトが破断する場合であっても、ドライブシャフトの振れ回りを防止できるドライブシャフトのダイナミックダンパ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、ドライブシャフトの外周を覆う円筒状のマス部と、当該マス部の軸方向両側に形成された弾性支持部とを一体に有し、前記弾性支持部をドライブシャフトに支持することにより、ドライブシャフトの長さ方向中間に取り付けられたダイナミックダンパの取付構造において、前記ドライブシャフトの長さ方向中間部に、当該ドライブシャフトの最弱部が形成され、前記マス部は剛性を有する金属材料により形成され、前記ドライブシャフトが前記最弱部で破断したとき、当該ドライブシャフトの破断部の振れ回りを前記マス部が規制できるように、前記マス部は前記最弱部を中心として所定の軸方向領域に亘ってドライブシャフトの外周を覆っていることを特徴とする、ドライブシャフトのダイナミックダンパ取付構造を提供する。
【0012】
本発明では、ドライブシャフトのダイナミックダンパ取付部に予め最弱部を形成しておき、万一ドライブシャフトが破断する場合であっても、必ずこの最弱部で破断するように設定してある。ダイナミックダンパのマス部は剛性を有する金属材料により形成され、このマス部はドライブシャフトの最弱部を中心として所定の軸方向領域に亘って覆っている。そのため、ドライブシャフトが最弱部で破断したとき、その破断部の振れ回りをマス部が規制できる。破断した一方のドライブシャフト部分と他方のドライブシャフト部分との間に相対回転が生じるが、その相対回転はダイナミックダンパの弾性支持部の滑りにより許容できる。その結果、破断部の振れ回りによる周辺部品へのダメージを防止することができる。なお、ドライブシャフトが破断すると共に駆動力が伝達されなくなるので、破断したことを直ちに知ることができる。
【0013】
ダイナミックダンパの両端部に形成された弾性支持部は、ドライブシャフトに支持されるが、この支持部がドライブシャフトに対して軸方向にずれると、ドライブシャフトの破断部がダイナミックダンパのマス部から外れる可能性がある。そこで、ドライブシャフトの最弱部を挟んでその両側の部位に周溝又は周状リブを形成しておき、弾性支持部をこの周溝又は周状リブに嵌合し、かつその外周を締結バンドにより締結するのがよい。ドライブシャフトが破断したとき、破断の部両側にはダイナミックダンパに対して抜け方向の力が作用する。これに対し、ダイナミックダンパの弾性支持部がドライブシャフトの周溝又は周状リブに嵌合し、かつ締結バンドにより締結されているので、周溝又は周状リブから外れることがなく、ダイナミックダンパのマス部は常に破断部を覆うことができる。その結果、破断部の振れ回りをさらに効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明にかかるダイナミックダンパ取付構造によれば、ドライブシャフトが最弱部で破断したとき、剛性を有するダイナミックダンパのマス部が最弱部を中心として所定の軸方向領域に亘って覆っているため、破断部の振れ回りをマス部が規制できる。その結果、破断部の振れ回りによる周辺部品へのダメージを無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるダイナミックダンパを取り付けたドライブシャフトの一例の全体図である。
【図2】図1に示すドライブシャフトの要部の拡大断面図である。
【図3】図2に示すドライブシャフトの要部の破断状態の拡大断面図である。
【図4】ドライブシャフトの第2実施例の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係るドライブシャフトの一実施例を示す。このドライブシャフト1は、独立懸架式前輪駆動車に用いられるものであり、一端軸部2(例えば左側軸部)がデファレンシャルギヤに連結され、他端軸部3(例えば右側軸部)が駆動輪(前輪)に連結される。一端軸部2は、ドライブシャフト1に対してユニバーサルジョイント4を介して角度変化自在に連結されており、他端軸部3もユニバーサルジョイント5を介して角度変化自在に連結されている。ユニバーサルジョイント4,5はそれぞれブーツ6,7によって覆われている。
【0017】
ドライブシャフト1の長さ方向中間部には、図2に示すように、括れ部11が形成され、この括れ部11がドライブシャフト全体の中で最弱部となっている。括れ部11はドライブシャフト1に外周溝を形成することにより構成したものであり、その軸方向寸法Sは短く(例えば5cm以下)に設定されている。したがって、万一ドライブシャフト1が破断する場合には、この括れ部11で必ず破断するように設定されている。括れ部11を挟んでその両側の部位には周溝部12,13が形成されている。この周溝部12,13は、ドライブシャフト1の外周に形成された二対のリブ12a,12b、13a,13bの間で構成されている。
【0018】
ドライブシャフト1の長さ方向中間部には、括れ部11の外周を覆うようにダイナミックダンパ20が取り付けられている。このダイナミックダンパ20は、ドライブシャフト1の外周を覆う円筒状のマス部21と、このマス部21の周囲を覆うゴム状弾性体22とで構成されている。マス部21は剛性と重量とを有する金属材料(例えば鉄)により円筒状に形成され、通常走行時にはドライブシャフト1の騒音や振動を抑制し、ドライブシャフト1の破断時には振れ回りを抑制する機能を有する。なお、マス部21は円筒部品で構成する必要はなく、例えば平板状金属板を円筒状に曲げ加工することにより、略円筒状に形成したものでもよい。したがって、軸方向にスリットを有していてもよい。マス部21の内径はドライブシャフト1の外径に比べて大きく、マス部21の軸方向寸法Lは括れ部11の軸方向寸法Sより十分に長く設定されている。この実施例では、マス部21の内周側をゴム状弾性体22の部分22cが覆っており、部分22cの内周面とドライブシャフト1の外周面との間には所定の隙間δが形成されている。隙間δ及び寸法Lは、ドライブシャフト1が括れ部11で破断したとき、その破断部がマス部21から外れることがなく、破断部の振れ回りをマス部21が規制できるような寸法に設定されている。なお、マス部21の内周面をゴム状弾性体22の部分22cが覆うことなく、マス部21が内面に露出していてもよい。
【0019】
マス部21の軸方向両側には、弾性体22によって弾性支持部22a,22bが一体に形成されている。弾性支持部22a,22bはドライブシャフト1の周溝部12,13にそれぞれ嵌合され、弾性支持部22a,22bの外周を締結バンド25,26で締結することにより、弾性支持部22a,22bはドライブシャフト1に対して軸方向移動不能に取り付けられている。
【0020】
ここで、ドライブシャフト1が破断した場合のダイナミックダンパ20の機能について、図3を参照しながら説明する。走行中、駆動輪への異常な負荷が作用すると、ドライブシャフト1が破断する可能性がある。その場合、ドライブシャフト1は、図3に示すように、最弱部である括れ部11で必ず破断する。ドライブシャフト1のうち、破断された一方側は駆動源によって駆動されるが、他方側は従動側であるため、相対回転が生じる。その際、ドライブシャフト1に装着された弾性支持部22a,22bの一方がドライブシャフト1に対して滑るので、ドライブシャフト1はダイナミックダンパ20の部位で空転する。ドライブシャフト1が破断すると、破断部の両側にはダイナミックダンパ20に対して抜け方向の力が作用するが、ダイナミックダンパ20の弾性支持部22a,22bが周溝部12,13に嵌合し、その外周を締結バンド25,26で締結しているので、弾性支持部22a,22bは周溝部12,13から外れることはない。破断したドライブシャフト1は破断部で折れ曲がる可能性があるが、その所定角度以上の折れ曲がりを剛性のあるダイナミックダンパ20のマス部21で規制するので、ドライブシャフト1が振れ回ることがない。その結果、破断時のドライブシャフト1の振れ回りによる周辺部品へのダメージを予防でき、二次不具合を無くすことができる。
【0021】
図4は、本発明の第2実施例を示す。第1実施例(図2)と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施例では、最弱部11の両側に周状リブ14,15を設け、これらリブ14,15の外側にダイナミックダンパ20の弾性支持部22a,22bを嵌合させ、弾性支持部22a,22bの外周を締結バンド25,26で締結したものである。この場合も、ドライブシャフト1の破断時に弾性支持部22a,22bが周状リブ14,15から外れるのを防止できる。
【0022】
なお、破断時における弾性支持部22a,22bの軸方向ずれを規制するために、周溝部12,13や周状リブ14,15を設けたが、周溝及びリブに代えて段差部を形成してもよいし、弾性支持部をドライブシャフトに対して加硫接着などで接着固定してもよい。
【0023】
ドライブシャフト1の最弱部11としては、実施例のような外周溝を形成した括れ部に限るものではなく、例えば周方向の一部に切欠や凹部を形成したり、半径方向に貫通する孔などを形成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 ドライブシャフト
2,3 軸部
4,5 ユニバーサルジョイント
11 括れ部(最弱部)
12,13 周溝部
14,15 周状リブ
20 ダイナミックダンパ
21 マス部
22 ゴム状弾性体
22a,22b 弾性支持部
25,26 締結バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブシャフトの外周を覆う円筒状のマス部と、当該マス部の軸方向両側に形成された弾性支持部とを一体に有し、前記弾性支持部をドライブシャフトに支持することにより、ドライブシャフトの長さ方向中間部に取り付けられたダイナミックダンパの取付構造において、
前記ドライブシャフトの長さ方向中間部に、当該ドライブシャフトの最弱部が形成され、
前記マス部は剛性を有する金属材料により形成され、
前記ドライブシャフトが前記最弱部で破断したとき、当該ドライブシャフトの破断部の振れ回りを前記マス部が規制できるように、前記マス部は前記最弱部を中心として所定の軸方向領域に亘ってドライブシャフトの外周を覆っていることを特徴とする、ドライブシャフトのダイナミックダンパ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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